特許第6398105号(P6398105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398105
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ヒンジ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20180920BHJP
   G03B 27/62 20060101ALN20180920BHJP
   G03G 15/00 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   F16C11/04 F
   !G03B27/62
   !G03G15/00 550
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-63927(P2014-63927)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-183840(P2015-183840A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年3月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592264101
【氏名又は名称】下西技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−333971(JP,A)
【文献】 特開2014−029181(JP,A)
【文献】 特開2001−154287(JP,A)
【文献】 実開平01−153542(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/04
G03B 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、
一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物に固定される本体部と、
前記本体部の一端部に回動可能に連結されるとともに前記本体部の側にカム部が形成され、前記第二連結対象物に固定されるウイング部と、
前記収容室に収容され、前記収容室の内壁面に当接しつつ前記ウイング部に対して近接離間する方向に移動可能であって、前記ウイング部に対向する面において前記カム部に対向する部分にはカム受け部が形成され、前記収容室の底面に対向する面と前記ウイング部に対向する面とを連通する孔部が開口されるスライド部材と、
前記収容室に収容され、一端部が前記収容室の底面に当接するとともに他端部が前記スライド部材において前記収容室の底面に対向する面に当接し、前記スライド部材を前記ウイング部に接近する方向に付勢し、前記カム受け部を前記カム部に当接させることにより前記ウイング部を本体部に対して開く方向に回動させる巻きバネと、
前記収容室に収容されるとともに前記巻きバネで囲まれる位置に配置され、一端部が前記収容室の底面に当接し、他端部が前記孔部に対応する位置に配置され、一端部から他端部までの距離が小さくなる方向に収縮させる外力が作用したときに反力を発生させるダンパと、
前記スライド部材の内部において、前記スライド部材の移動方向と同じ方向に摺動可能に収容される摺動部材と、を備え、
前記摺動部材は、前記ウイング部の方向に突出する突出部を備えるとともに、前記突出部と反対側は前記ダンパの他端部と連結され、
前記突出部は、前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも大きい状態において、前記孔部を介して前記スライド部材の外側に延出せず、前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも小さい状態において、前記孔部を介して前記スライド部材の外側に延出し、前記突出部の先端部が前記カム部に当接し、
前記孔部は前記カム受け部よりも前記本体部と前記ウイング部との回動軸に近い側に形成され、
前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも小さい状態において、前記突出部の先端部が前記カム受け部よりも前記本体部と前記ウイング部との回動軸に近い側で前記カム部に当接することによって、前記ウイング部に対して離間する方向への前記スライド部材の移動量よりも前記ダンパの収縮量を大きくすることを特徴とする、ヒンジ。
【請求項2】
前記本体部は円筒状に形成され、前記孔部は前記スライド部材の軸心部分に開口されることを特徴とする、請求項1に記載のヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの連結対象物を回動可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二つの連結対象物を回動可能に連結するためのヒンジが用いられている。このようなヒンジにおいては、第一連結対象物に対して第二連結対象物を閉じる方向に回動させた際に、ダンパによる緩衝効果を有効に利用するための技術が知られている。例えば、スライド部材にアーム孔を開口するとともにアーム部材を回動可能に連結し、このアーム部材をカムに当接可能とするとともにアーム孔を通じてダンパの他端部に当接可能とする構成などである(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−247954号公報
【特許文献2】特開2014−29181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献に記載の如く、アーム部材をスライド部材に回動可能に配設し、このアーム部材をダンパに当接させる構成とした場合、アーム部材を回動可能とするための構成として回動軸等が必要となる。つまり、ヒンジ全体の構成が複雑となり、コスト増の原因となっていた。また、アーム部材を回動させるために必要な構成のスペースを確保する必要があるため、ヒンジの形状が制限されていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ダンパによる緩衝効果を有効に利用すると同時に、構成を簡素化してコストを抑制し、形状の自由度を増加させることのできるヒンジを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、第一連結対象物に第二連結対象物を回動可能に連結するヒンジであって、一端部に開口するとともに他端部に底面を有する収容室が形成され、前記第一連結対象物に固定される本体部と、前記本体部の一端部に回動可能に連結されるとともに前記本体部の側にカム部が形成され、前記第二連結対象物に固定されるウイング部と、前記収容室に収容され、前記収容室の内壁面に当接しつつ前記ウイング部に対して近接離間する方向に移動可能であって、前記ウイング部に対向する面において前記カム部に対向する部分にはカム受け部が形成され、前記収容室の底面に対向する面と前記ウイング部に対向する面とを連通する孔部が開口されるスライド部材と、前記収容室に収容され、一端部が前記収容室の底面に当接するとともに他端部が前記スライド部材において前記収容室の底面に対向する面に当接し、前記スライド部材を前記ウイング部に接近する方向に付勢し、前記カム受け部を前記カム部に当接させることにより前記ウイング部を本体部に対して開く方向に回動させる巻きバネと、前記収容室に収容されるとともに前記巻きバネで囲まれる位置に配置され、一端部が前記収容室の底面に当接し、他端部が前記孔部に対応する位置に配置され、一端部から他端部までの距離が小さくなる方向に収縮させる外力が作用したときに反力を発生させるダンパと、前記スライド部材の内部において、前記スライド部材の移動方向と同じ方向に摺動可能に収容される摺動部材と、を備え、前記摺動部材は、前記ウイング部の方向に突出する突出部を備えるとともに、前記突出部と反対側は前記ダンパの他端部と連結され、前記突出部は、前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも大きい状態において、前記孔部を介して前記スライド部材の外側に延出せず、前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも小さい状態において、前記孔部を介して前記スライド部材の外側に延出し、前記突出部の先端部が前記カム部に当接し、前記孔部は前記カム受け部よりも前記本体部と前記ウイング部との回動軸に近い側に形成され、前記本体部に対する前記ウイング部の回動角度が所定角度よりも小さい状態において、前記突出部の先端部が前記カム受け部よりも前記本体部と前記ウイング部との回動軸に近い側で前記カム部に当接することによって、前記ウイング部に対して離間する方向への前記スライド部材の移動量よりも前記ダンパの収縮量を大きくすることを特徴とすることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2においては、前記本体部は円筒状に形成され、前記孔部は前記スライド部材の軸心部分に開口されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ヒンジにおいてダンパによる緩衝効果を有効に利用すると同時に、その構成を簡素化してコストを抑制し、ヒンジ形状の自由度を増加させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るヒンジを具備する複合機を示す左側面図。
図2】同じくヒンジを示す斜視図。
図3】同じくヒンジを示す左側面図。
図4】同じくヒンジを示す正面図。
図5】同じく閉塞状態のヒンジを示す左側面断面図。
図6】同じく開放状態のヒンジを示す左側面断面図。
図7】同じく閉塞状態間際のヒンジを示す左側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、図1から図5を用いて、本発明の一実施形態に係るヒンジ10、及び、ヒンジ10が配設される複合機1について説明する。なお、本発明に係るヒンジは複合機にのみ適用されるものではなく、他のあらゆる連結対象物を連結することが可能である。
【0013】
図1に示す如く、複合機1は事務機器の実施の一形態であり、本体2、原稿圧着板3、及びヒンジ10を具備する。ヒンジ10は本実施形態における二つの連結対象物である複合機1の本体2に原稿圧着板3を回動可能に連結する。
【0014】
本体2は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
制御装置は複合機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、印刷装置およびADFの動作を制御する。
また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は、制御装置が記憶した画像情報に基づいて紙に画像を印刷する。
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機1の動作状況等に係る情報を表示する。
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機1に対する指示等を入力する際に操作するものである。表示装置および入力装置は本体2の上面前端部に配置される。
【0015】
原稿圧着板3は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を当該原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、当該原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
原稿圧着板3は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置し、当該原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、当該原稿読み取り装置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0016】
本実施形態における「原稿圧着板3の(本体2に対する)閉塞状態(閉じている状態)」は、図1に示す如く原稿圧着板3が本体2の上側近傍に位置する状態を指す。
また、「原稿圧着板3の(本体2に対する)開放状態(開いている状態)」は、原稿圧着板3が本体2に対して回動することにより、原稿圧着板3の下面および本体2の上面が離間した状態を指す。
【0017】
加えて、ヒンジ10の閉塞状態、開放状態についても、原稿圧着板3の閉塞状態及び開放状態に対応した状態を指すものである。即ち、ヒンジ10の閉塞状態とは、図3から図5に示す如くウイング部40がケース20から前方に向かって延出され、ウイング部40とケース20とが近接した状態を指す。また、ヒンジ10の開放状態とは、図6に示す如くウイング部40がケース20から上方に向かって延出され、ウイング部40とケース20とが離間した状態を指す。
【0018】
以下の説明では、図1に示す如く原稿圧着板3が本体2と当接しているときの原稿圧着板3の本体2に対する回動角度θを「0度」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動するときに回動角度θが増加する(回動角度θの値が正になる)ものとして、原稿圧着板3及びヒンジ10の回動角度θを定義する。
【0019】
以下では便宜上、ヒンジ10が複合機1に取り付けられ、かつ、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているとき(本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ=0度のとき)の複合機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準とし、原稿圧着板3が本体2に対して閉じているときの複合機1の上下方向、前後方向および左右方向がそれぞれヒンジ10の上下方向、前後方向および左右方向に対応するものとして、ヒンジ10を構成する各部材を説明する。
【0020】
図2から図5に示す如く、ヒンジ10はケース20、スライダ31、巻きバネ33、ダンパ34、摺動部材35、ウイング部40、回動ピン50等を具備する。
【0021】
ケース20は本発明に係る本体部の実施の一形態であり、その下部が中空の円筒状に形成されて本体2に固定される。
本実施形態のケース20は樹脂材料を一体成形することにより製造される。
ウイング部40は原稿圧着板3に固定されるとともに、回動ピン50を介してケース20の上端部に回動可能に連結される。これにより、ヒンジ10は複合機1の本体2に対して原稿圧着板3を回動可能に連結するのである。また、ウイング部40には原稿圧着板3から、その重力により生じる重量トルクを原稿圧着板3が閉じる方向(下方)に付与される。
【0022】
図2から図5に示す如く、ケース20は下部が円筒状に形成された部材であり、その内部には、側壁及び底部で囲まれる円柱形状の空間が形成される。即ち、ケース20は上端部が開口するとともに下端部に底面を有するスライダ収容室21が形成されている。
【0023】
ケース20の上端面には、左右両端部から上方に延出する支持板23・23が立設されており、支持板23・23の上側部には左右方向に連通する連通孔23aが開口されている。そして、支持板23の連通孔23a及びウイング部40の後端部に、左側方から回動ピン50が挿通される。これにより、ウイング部40はケース20に対して回動可能に連結されるのである。
【0024】
支持板23・23には、回動ピン50の後方に規制ピン24が挿通されている。規制ピン24は、図6に示す如くウイング部40の回動角度を最大約60度に規制する。規制ピン24を配設する位置を変更することにより、ウイング部40の最大回動角度を変更することができる。また、回動ピン50が抜けるなどによりウイング部40がケース20から離脱した場合でも、スライダ31がケース20から飛び出ることを防止している。
【0025】
ウイング部40はその一端部(図3及び図5における後端部)が回動ピン50によりケース20の上端部に回動可能に連結された部材である。原稿圧着板3が閉じている状態にあるときのウイング部40におけるケース20側の面(図3及び図5における下面)には、スライダ収容室21に対応するカム部であるスライダカム41が、外側に突出した曲面形状に形成されている。
【0026】
本実施形態のウイング部40は樹脂材料を一体成形することにより製造される。なお、ウイング部40の表面を板金で補強すること等により、強度をより高めた構成とすることもできる。また、ウイング部40の表面を板金で補強した場合は、板金に導通性を持たせる構成とすることも可能である。
【0027】
図5に示す如く、スライダ収容室21には、スライド部材であるスライダ31、付勢部材である巻きバネ33、流体ダンパであるダンパ34、及び、摺動部材35が収容されている。図5から図7に示す如く、スライダ31はウイング部40に近接離間する方向である上下方向に移動可能に構成される。具体的には、スライダ31の外周形状は平面視においてスライダ収容室21の内周形状と略同形状である円筒状に形成されることにより、スライダ収容室21の内壁面に当接しつつ、その内部を上下に摺動可能とされるのである。
【0028】
スライダ31の上面には、ウイング部40のスライダカム41と対向する部分にカム受け部が形成される。本実施形態においては、円筒状の金属部材であるカム受け部材31aがカム受け部として軸心方向を左右に向けて配設されている。カム受け部とスライダとは一体的に形成することも可能である。また、スライダ31の下面には、巻きバネ33の上端部を挿入可能なバネ受け穴31bが形成されている。また、スライダ31の上底部には、スライダ収容室21の底面に対向する面である下面と、ウイング部40のスライダカム41に対向する面である上面とを連通する孔部31cが開口されている。本実施形態において、孔部31cはスライダ31の軸心部分に開口されている。
【0029】
なお、スライダ収容室21の内周面にはスライダ31の移動方向である上下方向に沿って図示しないスライダ溝が形成されており、スライダ31の外周面には図示しない突起部が形成されている。そして、スライダ31はスライダ溝に突起部を挿入した状態でスライダ収容室21に収容されている。これにより、スライダ収容室21の内部におけるスライダ31の周方向への移動(軸心回りの回転)を規制している。
【0030】
巻きバネ33は、スライダ31をウイング部40に接近する方向である上方に付勢している。具体的には、巻きバネ33はその上端部がスライダ31のバネ受け穴31bに挿入されるとともに下端部がスライダ収容室21の底面に当接されている。換言すれば、巻きバネ33はスライダ31とスライダ収容室21の底面との間に介挿されているのである。即ち、スライダ31は巻きバネ33が圧縮された際の弾性力により、上方に付勢される。これにより、図5に示す如く、巻きバネ33はスライダ31のカム受け部材31aをスライダカム41に当接させて、ウイング部40をケース20に対して開く方向に回動させる(ウイング部40に対して、回動ピン50を中心として回動させるトルクを付与する)。換言すれば、カム受け部材31aがスライダカム41と当接することにより、ウイング部40には原稿圧着板3から受ける重量トルクに反して、原稿圧着板3を開放する方向にスライダ31から開放トルクが付与されるのである。
【0031】
ダンパ34はその内部に非圧縮性の流体の一種であるシリコンオイルが充填された流体ダンパである。ダンパ34はスライダ収容室21に収容されるとともに巻きバネ33で囲まれる位置に配置される。ダンパ34はその上端部からピストンロッド34aが延出される。図5に示す如く、ダンパ34はその一端部である下端部がスライダ収容室21の底面に当接し、他端部である上端部が孔部31cに対応する位置に配置される。即ち、ダンパ34は、ピストンロッド34aが孔部31cの真下に位置するように配置される。
【0032】
そして、ダンパ34は、一端部から他端部までの距離(ピストンロッド34aの上端部から底面までの距離)が小さくなる方向である下方に収縮させる外力が作用したときに反力を発生させるように構成されている。具体的には、ピストンロッド34aはダンパ34の内部で図示しないピストンに連結されており、ピストンには連通孔が形成されている。ピストンロッド34aが押し下げられた場合、連通孔を通過するシリコンオイルの粘性抵抗により反力(ピストンロッド34aを上方に押し返す力)が発生し、当該反力によりピストンロッド34aが下方に移動する速度が小さくなる(ダンパ34による緩衝効果が発生する)。
【0033】
摺動部材35は、スライダ31の内部において、スライダ31の移動方向と同じ上下方向に摺動可能に収容される樹脂製の部材である。摺動部材35は、ウイング部40の方向(上方)に突出する突出部35aを備える。また、摺動部材35における突出部35aと反対側である下面はダンパ34のピストンロッド34aと連結される。そして、突出部35aは図5に示す如く、スライダ31の孔部31cを介してスライダ31の外側に延出される。さらに、ウイング部40がケース20に近接する回動域(図5及び図7を参照)において、突出部35aの先端部はスライダカム41に当接する。本実施形態において、孔部31cはカム受け部材31aよりも回動ピン50に近い側に形成されているため、摺動部材35の突出部35aはカム受け部材31aよりも回動ピン50に近い側でスライダカム41に当接する。
【0034】
次に、図5から図7を用いて原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動するときのヒンジ10の挙動について説明する。
【0035】
図6に示す如く、回動角度が約60度のとき、ウイング部40におけるスライダカム41の後面がケース20の後板の上端面及び規制ピン24に当接するので、ウイング部40はケース20に対してこれ以上開く方向に(左側面視で反時計回りに)回動することができない。
従って、本実施形態では、ヒンジ10が図6に示す状態のとき、原稿圧着板3は本体2に対して最も大きく開いた状態となる(原稿圧着板3は本体2に対してこれ以上開く方向に回動することができない)。
【0036】
図5から図7に示す如く、本実施形態では、回動角度に関わらず(0度≦θ≦60度のとき)、スライダ31のカム受け部材31aはスライダカム41に当接する。
【0037】
本実施形態では、(A)10度<θ≦60度のときには「ウイング部40に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ10を閉じようとする回転力(ウイング部40をケース20に対して右側面視で時計回りに回動させようとする回転力)」と「巻きバネ33の付勢力に起因してヒンジ10を開こうとする回転力(ウイング部40をケース20に対して右側面視で反時計回りに回動させようとする回転力)」とが概ね平衡する。
また、本実施形態では、(B)0度≦θ≦10度のときには「ウイング部40に固定された原稿圧着板3の自重に起因してヒンジ10を閉じようとする回転力」が「巻きバネ33の付勢力に起因してヒンジ10を開こうとする回転力」よりも大きくなる。
換言すれば、スライダ31のカム受け部材31a(の曲面)の形状、及び、ウイング部40のスライダカム41の形状等は、上記(A)および(B)の要件を満たすように定められる。
従って、10度<θ≦60度のときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θが保持され、θ≦10度のときに作業者が原稿圧着板3から手を離した場合には原稿圧着板3が自重で本体2に対して閉じる方向に回動する。図6に示す如く、回動角度θ=60度のとき、ピストンロッド34aは最大長さにまで延出されているため、摺動部材35はウイング部40のスライダカム41には当接しない。
【0038】
図6に示す状態からさらに原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動するとき(ウイング部40がケース20に対して閉じる方向に回動するとき)、スライダ31は巻きバネ33の付勢力に抗して下方に移動する(押し下げられる)。
【0039】
図7に示す如く、原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動する(ウイング部40がケース20に対して閉じる方向に回動する)ことにより回動角度θが10度付近になったとき、スライダカム41は摺動部材35の突出部35aに当接する。
【0040】
図7に示す状態からさらに原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動するとき(ウイング部40がケース20に対して閉じる方向に回動するとき)、スライダ31は巻きバネ33の付勢力に抗して下方に移動する(押し下げられる)。この際、回動角度が0度(図7中においてカム受け部材31aを二点鎖線で示した状態)になるまでのスライダ31の移動量は図7中に示す幅D1となる。
また、図7に示す状態からさらに原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動するとき、摺動部材35が下方に移動するため、ダンパ34のピストンロッド34aを下方に押す(ダンパ34の他端部をダンパ34の一端部に向かって押す)。その結果、ダンパ34は収縮し、原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動する速度が小さくなる(ダンパ34による緩衝効果が発生する)。この際、回動角度が0度(図7中において摺動部材35を二点鎖線で示した状態)になるまでの摺動部材35の移動量(ダンパ34の圧縮長さ)は図7中に示す幅D2となる。
【0041】
図5に示す如く、原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動する(ウイング部40がケース20に対して閉じる方向に回動する)ことにより回動角度θが0度になったとき、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接する。
従って、原稿圧着板3はそれ以上本体2に対して閉じる方向に回動することができない。
【0042】
本実施形態に係るヒンジ10によれば上記の如く構成することにより、回動角度θが約10度以下で原稿圧着板3が本体2に対して閉じる方向に回動するときのダンパ34の収縮量D2をスライダ31の移動量D1よりも大きくすることが可能となる。詳細には、摺動部材35の突出部35aはカム受け部材31aよりも回動ピン50に近い側でスライダカム41に当接するため、スライダカム41によるカム受け部材31aの押し下げ量が小さくなる回動域(θ≦10度)においても、スライダカム41は摺動部材35を充分に押し下げることができるのである。これにより、ダンパ34による緩衝効果を(スライダ自身がダンパに当接することによりダンパを収縮させる構成よりも)有効に利用できる。
【0043】
また、本実施形態に係るヒンジ10によれば、摺動部材35を直接的にダンパ34のピストンロッド34aに連結する構成としている。このため、アーム部材をスライド部材に回動可能に配設する構成と比較した場合、アーム部材を回動可能とするための回動軸等が不要となる。つまり、ヒンジ10の全体構成を簡素化することができるため、コストを抑制することができる。また、摺動部材35を配設するために必要なスペースは、アーム部材を回動可能に配設するためのスペースと比較して小さいため、ヒンジ10の形状の自由度を増加するとともに、ヒンジ10をコンパクト化することができる。
【0044】
具体的には、アーム部材を回動可能に配設するためには、ケース及びスライダの断面形状(スライダの移動方向と直交する平面における断面形状)を矩形としてスペースを確保する必要があった。一方、本実施形態に係るヒンジ10によれば、アーム部材の回動軸等を不要とするため、ケース20の如く円筒形状とすることができるのである。
【0045】
なお、ダンパ34及びピストンロッド34aに加わる曲げモーメントを低減させるという観点から、本実施形態に係るヒンジ10の如く、孔部31cはスライダ31の軸心部分に開口することが好ましい。これにより、摺動部材35及びピストンロッド34aを介して、ダンパ34に対して軸方向の力が加えられることになるため、ダンパ34及びピストンロッド34aに加わる曲げモーメントを低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 ヒンジ
20 ケース(本体部)
31 スライダ(スライド部材)
31a カム受け部材(カム受け部)
34 ダンパ
35 摺動部材
40 ウイング部
41 スライダカム(カム部)
50 回動ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7