(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398109
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】移乗介助・起立介助等補助具
(51)【国際特許分類】
A61G 7/12 20060101AFI20180920BHJP
A41F 9/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
A61G7/12
A41F9/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-185259(P2016-185259)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47103(P2018-47103A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2016年9月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】715005239
【氏名又は名称】株式会社エナジーフロント
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛慈
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−013304(JP,A)
【文献】
特開2001−299814(JP,A)
【文献】
特開2006−144140(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0270881(US,A1)
【文献】
国際公開第2015/142845(WO,A1)
【文献】
登録実用新案第3155229(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3159529(JP,U)
【文献】
特開2003−235898(JP,A)
【文献】
米国特許第4944057(US,A)
【文献】
特開平11−081010(JP,A)
【文献】
米国特許第07627912(US,B1)
【文献】
米国特許第07627911(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0019015(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/10− 7/12,1/00
A41D 13/12, 1/06
A41F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者の膝付近あるいは膝から踝までの下腿部の少なくとも前面および側面を包み支える膝固定具と、被介助者の少なくとも臀部あるいは腰部から大腿部までが抜け落ちないように面的に包み支える布またはシートあるいは網から構成される腰保持部と、移乗介助・起立介助における引き上げ動作中には被介助者の大腿骨大転子部の上下に、かつ着座時には被介助者の大腿骨大転子部の前後となるように2点の結合端点がそれぞれ前記腰保持部の腰の側部と大腿側部に取り付けられている左右一対の牽引バンドからなり、介助時には膝固定部から伸びる結合ベルトを前記腰保持部左右にある牽引バンドと腰保持部のなす輪を通過して前記左右それぞれの結合ベルト自身または前記膝固定部と再結合させることにより左右一対の結合ベルトの輪を形成することにより、膝固定部と腰保持部と牽引バンドの3要素が結合された状態となることを特徴とする移乗介助・起立介助等補助具。
【請求項2】
上記膝固定部が膝から臑、或は下腿部に巻き付けて使用する布またはバンドからなり、介助時以外は容易に前記膝固定部の巻き付けを解除すること、かつ牽引バンドと前記腰保持部が形成する輪を通る前記結合ベルトを切り離すことにより、前記膝固定部を前記牽引バンド及び前記腰保持部から取り外せることを特徴とする請求項1に記載の移乗介助・起立介助等補助具。
【請求項3】
上記腰保持部がクッションまたはズボンの一部を形成し、当該クッションまたはズボンは牽引バンドと常時一体化しており、介助時以外でも被介助者が着座状態あるいは身につけた状態でいられるが、着座状態においても牽引ベルトが側部に露出しており、着座状態における牽引ベルトの取り付け位置が腸骨側が高く大腿側は低くなっていることにより、被介助者と向かい合う介助者にとって斜め手前方向に引き上げやすくなっていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の移乗介助・起立介助等補助具。
【請求項4】
牽引バンドの引き上げ介助時の掴み位置が鳩尾よりも高くならないようにバンド長が制限または調整可能であることを特徴する請求項1〜3のいずれか1項に記載の移乗介助・起立介助等補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者等のベッドからの車椅子移乗、リフトや椅子等への座り変え時に、着座姿勢の被介助者を起立させ、移乗先に誘導し、着座させる際に利用する起立補助に関するものである。
【背景技術】
【0002】
起立補助具は一般に、起立困難な被介助者の起立、車椅子移乗、リフトや椅子への座り変えの際に利用される。介助者の身体状況に応じて、全体重を支えるリフト装置、車椅子などに付随した起立補助機構、バネを用いた跳ね上がり座面、介助者によって引き起こすための牽引バンド(特許文献1および特許文献2)、介助用着衣(特許文献3)、足を固定して引き起こす補助具(特許文献4)などが開示されている。
【0003】
これらのうち牽引バンド、介護用着衣、および足を固定して引き起こす補助具は他の方法に比べて安価であり、軽量で持ち運びが可能なために多様な場面での使用が可能である利点を有する。
【0004】
特許文献1に示す牽引バンドでは、着座姿勢にある被介助者にウエストバンドを装着し、次いで上記ウエストバンドに牽引バンドを斜め上方に向けて引き起こすことにより、介助者を起立姿勢に導く。
【0005】
特許文献2に示す牽引バンドでは、特許文献1のウエストバンドに代わり腰当てバンドと尻当てバンドからなる介助バンド本体を有し、介助バンド本体に取り付けられた牽引バンドを斜め上方に引き起こすことにより、介助者を起立姿勢に導く。
【0006】
特許文献3に示す介護者及び要介護者用着衣では、介護者のエプロンおよび要介護者のズボンにバンド状の掴み部をつけることにより、起立介助を容易にする。
【0007】
特許文献4に示す足を固定して引き起こす補助具では、すね当てのような器具で介助者と被介助者のすねをつなぐ事で、脚力のない被介助者が膝で自らの体重を支えられず膝を屈してしまうことを防止して起立介助を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004―514503号公報
【特許文献2】登録実用新案第3155229号公報
【特許文献3】特開平11―81010号公法
【特許文献4】特開2004―41631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の方法にあっては、介助者が牽引バンドを掴み、被介助者を引き起こすことが可能な点では有益であるが、装着において被介助者を持ち上げなければならず作業者の負担が大きい上、バンドの狭い面積で被介護者に圧力がかかり骨の脆い高齢者では骨折のリスクがあり、引き起こし動作中には被介助者が不安定になりやすい問題がある。
【0010】
この不具合を解消するために考案された特許文献2に開示の方法にあっては、方向を間違えずに被介助者に比較的簡単に装着することができ、安定な引き起こし動作を可能にする点で有益であるが、装着作業の煩わしさが消えたわけではなく、習熟の必要な特殊道具の域を出ない。自らの身体を使って引き起こす作業に慣れている介助者にとっては作業の軽減には必ずしも寄与しない場合がある。
【0011】
常時装着を可能にするために考案された特許文献3に開示されている方法では、介助者の着用する衣類やエプロン、被介助者の着用しているズボンの腰側部と背部に持ち手をつけている。介助者は腰背部の持ち手を片手で掴み、もう一方の手で腰側部の持ち手を掴む。これは装着の手間を省く点では有益であるが、腰背面を持って引き上げる方法は被介助者の股に衣類が食い込み、肉体的精神的苦痛を生じさせることもあり、必ずしも好ましい方法ではない。
【0012】
自分の体重を膝で支えることが困難である立位が保てない被介助者に対して移乗介助を可能にするために考案された特許文献4に開示されている膝支えカフとそれをつなぐプレートで構成される介助具では、被介助者の膝を固定してそこに介助者の膝を押し当てることにより被介助者が前方にしゃがみ込むことを防止する。これは牽引ベルトや介助用衣類の欠点を一部補う優れた方法であるが、介助具がずり落ちず締め付け過ぎないように被介助者の脚にぴったりとあったサイズで作る必要があり、構造上の自由度が少ない。すなわち、膝サポーターをするなど多様な脚の太さの被介助者に適用する汎用性に欠け、緩い締め付けでは滑り易いシャワー介助での使用では外れるリスクがある。
【0013】
そこで本発明では、上記の装着作業の煩わしさを解消し、被介護者が日常的に身につけることが可能なクッション、衣類或はサポーター類似形状で、いつでも起立支援することを可能にする特徴をもち、膝を固定する機能と一体化させることで立位を保持できない被介助者に対しても容易に介助できる移乗介助・起立介助等補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、被介助者にとって常時装着しても不快とならないクッションや座布団、或はパンツ様衣類またはサポーター様の臀部を包む座面部を有し、介助者が掴む引き起こし用の牽引バンドを側面に有することにより、引き起こし動作において被介助者の腰から大腿を包み支えることで移乗介助・起立介助において被介助者の腰を安定して支える腰保持部として機能する。
【0015】
上記の側部両面に取り付けられる牽引バンドは、介助者の掴み位置が着座状態の被介助者の鳩尾よりも低い位置にくるようにする。これは被介助者の臀部を前方斜め前に引くことで尻を浮かすために必要である。
【0016】
上記の側部両面に取り付けられる牽引バンドは左右の腰側部に一対、或は左右それぞれに付ける牽引バンドの一端を大腿骨頸部大転子付近あるいはより上方の腸骨付近の腰側部にとりつけ、他端を起立時には大腿骨中心付近に固定する。これらにより、重心を効果的に移動させる。
【0017】
同じく、牽引バンドと臀部を包む丈夫な布地としっかり結合することにより、被介助者の体重を支える強度を保持しなければならない。
【0018】
使用時には牽引バンドと腰保持部に膝固定部を一体化させる。これは被介助者が膝折れによって前にしゃがんでしまうのを避けるとともに、牽引動作において被介助者の立位を保持しつつ梃の原理の支点として機能する。膝に巻き付ける布あるいはバンドで構成してもよく、木製・金属製・あるいはゴム製などの形状変形のない硬質の部分と、被介助者の下腿部に接触するクッション性を備えた軟質の部分から構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に掛かる発明によれば、被介助者の体重を支えうる強度の布地で少なくとも腰部または臀部あるいは腰部と臀部の両方あるいは腰部から大腿部までを包み支える布またはバンドあるいは網等から構成される腰保持部と、それにしっかりと結合した介助者が着座している被介助者を引き起こすために、
図3に示されているように起立時の大腿骨大転子部の上下かつ着座時の大腿骨大転子部の前後となるように2点の結合端点が腰側部
に取り付けられた牽引バンド、そして被介助者の膝が自由に曲がることを制限するための膝付近あるいは膝から踝までの下腿部の少なくとも前面および側面を包み支える膝固定部から構成されることにより、介助者による引き起こし動作において、被介助者が日常的に装着するクッション、パンツまたはズボン様でありながらいつでも起立介助することが可能になる。
【0020】
請求項2に掛かる発明によれば、上記の膝固定部が膝から臑、或は下腿部に巻き付けて使用する布またはバンドからなり、介助時には
図1または図4のように牽引バンドと結合ベルトで結合して一体となるが、介助時以外は容易に巻き付けを解除、あるいは膝固定部を取り外せる。これにより、立位を保持できない被介助者の膝が崩れてしゃがんでしまう動きを回避しつつ、起立介助における梃の原理の支点として機能する。取り外し可能にすることで普段は脚に対する拘束はなくなるが、使用時には直ちに全体として移乗介助・起立介助具として機能する。膝固定部に用いる布やバンドは柔軟性と強度の両方を持たせることで安定感を確保し、ある程度の幅を持たせることで被介助者や介助者への食い込みを避ける事ができる。
【0021】
請求項3に掛かる発明によれば、上記腰保持部がクッションあるいはズボンの座面の少なくとも一部を形成し、介助時以外でも被介助者が身につけた状態でいることができる。これにより介助の度に腰保持部やバンドを毎回取り付ける手間を省くことができる。膝固定部のみを介助時に取り付ければ全体としての機能を実現できる。
【0022】
請求項4に掛かる発明によれば、上記牽引バンドが左右の腰側部に一対、または左右の腸骨から大腿骨側部に一対結合し、使用時の牽引バンドの掴み位置が鳩尾よりも高くならないようにバンド長が制限または調整可能であることによって、引き起こしの力を効果的に与えることができ、かつ被介助者の股に食い込むような力がかからない。牽引バンドを掴んだ介助者が後方に体重を掛けるときに、牽引バンドは長すぎると体重移動を有効に使う事が難しいので掴み位置は鳩尾より下であることが適切である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態におけるクッション型の移乗介助・起立介助等補助具を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるズボン型の移乗介助・起立介助等補助具における、膝固定部を取り付ける前の状態を示す射視図である。
【
図3】本発明の実施形態における牽引バンド取り付け位置と骨格の関係を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態における膝固定部・腰保持部・牽引ベルトが結合された使用状態のズボン型移乗介助・起立介助等補助具の側面図である。
【
図5】本発明の実施形態における膝固定部を巻き付けた下腿部の断面図である。
【
図6】本発明の実施形態におけるクッション型およびズボン型から膝固定部を取り外し並べた正面図である。
【
図7】本発明の移乗介助・起立介助等補助具の使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、本発明の移乗介助・起立介助等補助具Aは、膝固定部1
と腰保持部にあたるクッション2と、クッションに結合した牽引バンド3とで構成される。
【0026】
また、
図1に示す牽引バンドと腰保持部の部分は、
図2に示すようにズボン様部分4と、牽引バンド3とで構成されていてもよい。また、クッション様の場合でも、ズボン様の場合のように腹部と背面を結ぶ布やベルトで補助具と被介助者の密着性ひいては安定性を高めることも可能である。
【0027】
図1および
図2のいずれの場合も、左右腰部の牽引バンド2の両端はクッション様部分2またはズボン様部分4としっかりと結合する。
図3に示すように、上端5は大腿骨頸部より上方となる腸骨付近の位置にとりつけ、下端6は大腿骨中心付近に取り付ける。下端6は大腿骨頸部付近であっても構わない。
【0028】
また、牽引バンド2の掴み位置が高すぎると介助者の体重の後方移動による引き起こしが困難になるが、
図5に示すように被介助者8の鳩尾よりも低い、例えば大腿骨頸部付近の適切な位置にある本発明の起立補助具Aの牽引バンドを掴み、介助者9の体重を後方に移動させることで引き起こすことが可能となる。
【0029】
上記したように、クッションまたはズボン様部分を常時着用することが可能となり、装着する手間を省くことができる。
【0030】
図4は着座状態で膝固定部1を巻き付けた状態を示す。膝固定部は結合ベルト7で牽引ベルトと結合して一体化している。
【0031】
図5は被介助者の下腿部8に膝固定部1を巻き付けた場合の脚の断面図である。介助者の膝を膝固定部に押し当てることで膝が固定される。
【0032】
図6は膝固定部を取り外した状態を示す。膝固定部を簡単に脱着することで、介助時のみ膝を固定し、その他の場合は拘束しないことが可能になる。
【0033】
以下に、本発明に係る起立補助座面の構成部品について、詳細に説明する。
【0034】
上記クッション様またはズボン様の腰保持部は
図1および
図2に示すように、クッションや座布団、あるいは衣服として日常的に使用または着用できる形状をもち、移乗介助・起立介助での引き起こし動作時に被介助者の体重が掛かっても破れずにささえることを可能とする、デニムや帆布など丈夫な素材の布などで構成される。
【0035】
また、クッション様またはズボン様の腰保持部の形状や構造は適宜選択することが可能であり、例えば、クッションを厚くして褥瘡予防機能を持たせたり、一部にメッシュ生地を導入して通気性を保つなどしたりしても良い。また、本発明のいずれの部分も、防水素材の活用あるいは撥水処理などでシャワー介助等にも適用できる。
【0036】
上記牽引バンドは被介助者を起立介助するときに介助者が掴む持ち手であり、引き起こし動作においても切れないデニムや帆布或はナイロン等合成繊維や樹脂や皮革等により構成される。
【0037】
上記パンツまたはズボン様部分と牽引バンドは丈夫な糸および縫製方法等により被介助者の体重を支えうる強度で互いに結合しなければならない。
【0038】
牽引バンドの形状や素材は適宜選択することが可能であるが、引き起こし動作中に介助者が掴む位置が、被介助者の鳩尾よりも低い大腿骨頸部付近となるようにすることが好ましい。
【0039】
膝固定部は膝が崩れないように動きを抑制するものであり、
図4のように巻き付ける。脱着を容易にするためには
図6に示すように面ファスナー10で結合させるのが良い。牽引ベルト部および腰保持部と膝固定部を容易に脱着するには
図6に示すようにバックル11を用いることができる。勿論、脱着のためにチャックやボタン、カラビナなど様々な方法を用いることが可能である。
また、また、
図1および
図4では膝固定部と牽引ベルトが結合されているが、この結合方法に限定されるものではない。牽引ベルトを膝固定部の結合箇所とせず、腰保持部に設けた結合用のリングやベルト通し穴、あるいは備え付けのバックルなどの構造によって、腰保持部と膝固定部を結合させることもできる。
【0040】
前記のように適切な掴み位置になるように牽引バンドを取り付けることにより、
図7に示すように、介助者12が屈みすぎず仰け反りすぎない無理のない範囲で体重移動することにより被介助者を引き起こすことが可能になる。本発明のように大腿側面に付けることは、この体重移動を効果的に行う上で有効である。発明者による検討では、臀部に持ち手を付ける場合には、側部に付ける場合に比べて体重移動を十分に行うことができない。
【0041】
次に、上記した第一実施形態に係る起立補助具の使用例について以下に説明する。
【0042】
先ず、
図7(a)に示すように、本発明の起立補助具を装着状態にある被介助者13の前方から腕を伸ばした状態で介助者12は左右の各牽引バンドを掴む。このときに介助者の軸足は
図5の断面図で示されるように被介助者の下腿部に巻かれた部分に押し当て、被介助者は介助者の背中に手を回すことが好ましい。
【0043】
次に介助者は腕を適度に伸ばしたまま、被介助者側においていないもう一方の足を後方に引き、
図7(b)に示すように軸足を中心に重心を後方に移動する。方向転換する場合にはさらに軸足をもとに回転したのち被介助者を着座状態に導く。
【0044】
この引き起こしと着座において、牽引バンドの掴み位置を作用点、介助者が移動する重心を力点、膝固定部が支点となる梃の原理により容易に介助動作が行われる。すなわち前記の重心移動により、被介助者は自然に引き起こされ起立および着座に導くことが可能となり、介助者にとっては腕や腰に負担がかからない。
【0045】
また、従来の起立補助具と異なり、本発明の起立補助具は膝固定部を除き被介助者が常時使用状態にあることで装着の手間が省けるので作業の効率性が良く、また被介助者への接触面積が大きいことから起立時の安定性が高い。撥水処理や防水素材を用いれば、滑り易いシャワー介助においても有効である。
【0046】
以上、本発明の一実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【符号の説明】
【0047】
A 移乗介助・起立介助等補助具本体
1 膝固定部
2 クッション型の腰保持部
3 牽引バンド
4 ズボン型の腰保持部
5 牽引バンド上端側取り付け位置
6 牽引バンド下端側取り付け位置
7 結合ベルト
8 被介助者の下腿部断面
9 被介助者の下腿部断面
10 面ファスナー
11 バックル
12 介助者
13 被介助者