【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、この目的は、接点が、旋回接合部を含みかつ回転軸が垂直に延びる共通の旋回面において可動であり、少なくとも1つのジョーまたは分岐部が旋回面に対し平行に延びる面、たとえば平行面の方向に部分的に変位することで、達成される。
【0012】
そのような整復鉗子は、骨の曲線に、より良好に適合する。この改良された適合性は、鉗子において角度を変化させても達成される。
【0013】
したがって、2回以上角度をつけた鉗子の下側ジョーが提供される。基本的には、下側ジョーはおよそ90°偏位しており、この90°の偏位が接続片を通じて2面に渡る。
【0014】
好適な実施形態がサブクレーム中に主張され、以下に詳述される。
【0015】
たとえば、2つのジョーのうち1つだけが旋回面に対し平行に延びる面、つまり平行面の方向に向きを付けられていると好適である。その場合は2つのジョーのうちの他方、たとえば第2のジョーを有する第2のロッドは、直線構成にされるか、または少なくとも第2のロッドおよび/または第2のジョーの長手方向軸線をとり、かつ旋回面と一致し得る作業面に配置される。そうすれば、そのような整復鉗子の片方は特に費用対効果よく製造される。
【0016】
当然ながら、両方のジョーが旋回面から離れ、旋回面に戻ってもよい。
【0017】
好ましい直線部分が旋回面に対し平行な面に延びるように配置するのも好適である。その場合、直線部分は、各ジョー、たとえば第1のジョーの構成部である。
【0018】
端部分、つまり2つのジョーの自由端の部分が互いに対し平行に向けられ、互いに上下に揃えられていると、好適であり得る。
【0019】
好適な実施形態はまた、第1のジョーが下側分岐部として、第2のジョーが上側分岐部としてそれぞれ構成され、旋回面では下側分岐部の自由端が上側分岐部の下に配置されていることも特徴とする。そうすれば、より容易に上述したように揃えることができる。
【0020】
第2のジョーが完全にまたは少なくとも主として旋回面に配置されている場合、トルクの発生が大幅に防止される。
【0021】
加えて、第2のジョーが、旋回面において旋回接合部と第2のジョーの自由端との間で1つ、2つまたは3つ以上の方向変化部分を含むと好適である。そうすれば、方向変化部分は特定の面でジョーの向きを変え、治療する骨、たとえばヒトの指骨の効果的な把持および/または後ろ側の係合が可能になる。
【0022】
骨に対し整復鉗子が平行方向である場合に個々のジョー構成要素が骨に沿ってそこから最低限の距離で案内されることができるように、方向変化部分で第2のジョーが方向の変化、およそ75°からおよそ115°、好ましくはおよそ85°、およそ90°またはおよそ95°の曲げまたは急な曲げを示すと好適である。
【0023】
方向変化部分が、切粉取り(chip removing)過程、たとえばミリングにより、または曲げ過程により、作製されるとき、製造が簡易化され得る。ここではミリングの変形が特に好ましい。
【0024】
骨からの組織剥離は、第1のジョーおよび/または第2のジョーを旋回接合部から各自由端まで連続的もしくは非連続的に部分的/段階的に細くすれば、非常に小さい面積に限定することができる。
【0025】
第1のジョーが、旋回面に対し平行に延びる面において旋回接合部と第1のジョーの自由端との間に1つ、2つまたは3つ以上の向き変化部分を含む場合、骨を治療する指は低侵襲手術で済む。剥離を行う部分の面積は小さいままである。
【0026】
第1のジョーの向き変化部分が、方向の変化、およそ75°からおよそ115°、好ましくはおよそ85°、およそ90°またはおよそ95°の曲げまたは急な曲げを示すと好適である。
【0027】
この場合、方向変化部分と向き変化部分が、各ジョーに同じ向き変化/方向変化/偏向をさせると好適である。最終分析では、2つのジョーは少なくともある部分において対称的かまたは同一であるように構成され得る。
【0028】
好適な実施形態はまた、第1のジョーが端の近位の接続片および/または旋回接合部の近位の接続片を含むことも特徴とする。そうすれば2つの接続片は旋回面を平行面に接続する。
【0029】
この点において、接続片が旋回面に対して交差する方向に向きを付けられていること、好ましくは旋回面に対してほぼ直交する方向かまたはおよそ45°の角度が好適である。ここでは、端の近位の接続片がもっとも近くのジョー部分に対し90°の角度を示し、かつ旋回接合部の近位の接続片がそのもっとも近くのジョー部分に対しおよそ45°の角度を示すと好適である。
【0030】
2つの向き変化部分および/または少なくともその間に配置される部分が、旋回面に対し平行な面、つまり平行面に完全に配置される場合、製造が簡易化され得る。
【0031】
加えて、端の近位に配置される接続片の端側に、好ましくは2つのジョーに共通の旋回面に完全に配置される端部が続くと好適である。
【0032】
第1のジョーおよび/または第2のジョーに、各々のジョーから該ジョーに対し直交して突出しかつ各他方のジョーに対し方向づけられ/向きを付けられた少なくとも1つの保持要素が設けられると好適である。
【0033】
上記の概念をさらに発展させて、ジョー、たとえば第1のジョーに、旋回接合部から見たとき旋回面に2つの連続する保持要素が配置されると好適である。
【0034】
保持要素は、ペグ、棘、ピンまたはスタッドとして構成され得、好ましくは少なくともその自由端が円錐形であり得る。
【0035】
整復鉗子に上側に2本、下側に2本の4本のピンが据え付けられている場合、整復鉗子を骨に、より良好に係留することが確実になる。ピンが、特に抵抗を克服する必要なしに骨に貫通させるように構成されている場合、係留はさらに良好なものになる。整復鉗子は骨から滑って外れることがなく、骨の、より安定な位置が確保される。
【0036】
第1のロッドが旋回接合部の部分で第2のロッドと隣り合わせに配置される、つまり2本のロッドが互いに平行な別々の面に配置されるか、または2本のロッドがボックスロックを介して互いに接触していると好適である。ボックスロックは、片方のロッドの両側が他方のロッドのサブエリアで囲まれる、つまり他方のロッドに貫通されるタイプの接続部である。
【0037】
第1のジョーが、1か所または2か所の向き変化/曲げを示すか、または1か所の方向変化を示すか、または互いに直交する少なくとも2つの向き変化軸線/曲げ軸線の周りで曲げられていると好適である。
【0038】
この点において、2つの向き変化軸線/曲げ軸線が延びる面が、治療対象の骨の長手方向に対して交差する方向に測定した該骨の幅の3分の1から3分の2、好ましくは2分の1にほぼ相当する距離だけ離間していると好適である。
【0039】
旋回接合部が、回転軸を画定するピン、ジャーナルまたはねじなどの筒形の支持リング要素を備えると好都合である。
【0040】
たとえば、キャッチ機構やロック機構を有する既知のハンドル部分は、第1のロッドおよび/または第2のロッドが、旋回接合部とジョーの自由端との間に溶接シームを示すと好適である。溶接シームは、ジョーと反対方向の旋回接合部側にも設けられ得る。溶接シームは、MIG、MAGまたはWIG加工により生成されたものでよい。
【0041】
耐久性については、第1のジョーが一体成形の構成要素として構成されていると好適である。
【0042】
この場合、第2のジョーが一体成形の構成要素として構成されているのも好適である。これらの2つのサブ形態は、製造過程を簡略化にもする。
【0043】
回転軸から各ジョー自由端までのジョーの長さと、保持要素(単数または複数)の長さが、4mmから14mmの太さの円筒を把持するようにされていると、骨整復に有効であり得る。
【0044】
骨保持の信頼性は、2つのジョーの端を、骨を4点支持して保持するように構成することで向上し得る。
【0045】
第1のジョーまたは第2のジョーが、3次元的に連続的な曲げを示すことなく一連の異なる直線部分で構成されていることが好適であることに言及しておく。本発明は、本発明による整復鉗子を用いて骨、たとえば指骨および/または骨接続プレートに接触する方法にも関する。この方法は、術前計画に取って代わり得る。前側−後側ならびに側方の光線経路で、たとえば治療対象の手の中間位置の標準的な像を撮影するのに加えて、関節内骨折の場合はさらなる診断のため高解像度のコンピュータトモグラフィーが実施され得る。
【0046】
患者に手術台上で仰臥位をとらせる。手術する方の手を、前腕回内位置で側方の手の手術台に載せる。側方からのアクセスが可能になる。MCP関節のレベルを始点としPIP関節まで側方直線切開により切開する。
【0047】
前述および後述のステップと同じくまさにこの時系列で行われる次のステップでは、骨折の提示が可能になる。皮膚切開後、まずは橈骨神経、尺骨神経および正中神経の場所を確認する。斜めに走る側副靭帯の線維を2本のレトラクタで引く。骨膜は骨折に直接隣接したところだけ剥離するので、傷跡形成、靭帯癒着および骨片の脈管遮断が回避できる。
【0048】
次に行うステップは、骨折の整復である。術者の外科医が手で整復するのに加えて、Linosシステムと組み合わせて小型バックハウス鉗子が使用され得るか、または指骨折専用に開発された整復鉗子が使用され得る。その場合に整復鉗子は多くの利点をすべて示す。
【0049】
続いて、骨接合プレートを選択してから留置を行う。一例として、本発明の適応での治療は、0.8mmのTプレートを用いて実施される。骨接合プレートは常に骨折の経過と患者の解剖学的構造により選択される。必要に応じて、2つのプレート曲げ鉗子を用いて骨接合プレートを解剖学的状況に適合させる。各プレート曲げ鉗子は専用の整復鉗子サブタイプ、すなわち上側ジョー/上側分岐部に保持要素として働く1本のピンがついた鉗子であり、前記ピンはプレートの穴の内側の輪郭に合わせてある。
【0050】
プレートは0.9mmのKワイヤで一時的に固定され得る。そのためにKワイヤ専用の穴が設けられている。代わりにLinosプレート保持鉗子も使用できる。
【0051】
次に実施するステップでは、第1のコア穴が開けられる。骨折の間隙を確実に閉じるため、圧迫穴が使用できるようなねじインプラントの順序を選択することが推奨される。したがって、まずは細長い穴から離れた穴にねじを挿入する。そうするためには最初にドリルガイドと適切なコア穴ドリルによりコア穴を開ける。Linosシステムでは全プレート穴に1.5mm、2mm、2.3mmの直径の標準的な多方向固定の「スマート打込みねじ」が使用可能である。
【0052】
次にねじの長さを決定する。1.5mm、2mm、2.3mmの直径のすべての症例に使用可能なデプスゲージを用いて正しいねじの長さを決定する。ここではねじの直径にカラーコードが適用される。この後第1のねじを取り付ける。プレートはまずは、2.0mmの標準「スマート打込みねじ」で固定される。そうするために、ねじを選び、直径1.5mm、2mm、2.3mm用の対応するカラーコード付きのねじ回しで挿入する。次に、上述の技法により第2のねじを取り付ける。所望により、多方向固定ねじを使用して安定性を強化できる。プレートが正しく留置されたかどうかをX線検査で確認する。引き続いて、圧迫ねじを取り付ける。第1のねじのインプラントが成功したら、次に骨折の間隙をしっかりと閉鎖するために圧迫ねじを細長い穴に導入する。直径1.5mm、2mm、2.3mmの標準的なねじが使用される。そのためには、ドリルガイドの開放作業端に下から圧迫ドリルスリーブをはめる。すると圧迫ドリルスリーブ上の矢印は穴開け時に骨折を指す。第1のねじと同様にコア穴を開け、ねじの長さを決定する。
【0053】
この後、骨折の間隙が閉じられる。「スマート打込みねじ」は、挿入されるときに細長い穴に一体の傾斜面上を骨折の間隙に向けて滑り、間隙を閉じる。
【0054】
次いで、さらにねじを取り付ける。適切な早期機能安定性を得るために、さらにプレート穴にねじを挿入する。この手順は上記のステップに対応する。ねじの数とねじ径およびタイプの選択は、患者固有の解剖学的構造と必要な安定性による。
【0055】
次に、創傷を閉じなければならない。骨膜をきちんと閉じてから、非吸収性縫合材で皮膚の縫合を行う。
【0056】
この後、後処理が必要となる。手術後、治療した指を包帯で固定して該指にかかる横力を中和する。
【0057】
通常、患者はフォローアップ診断のため5日後と10日後に来院する。
【0058】
手術の直後から患者は機能的な運動を開始してよい。
【0059】
軟部組織の炎症が起きたり、関節や指の可動性が損なわれたりするような場合は特に、金属を除去するのが推奨される。
【0060】
ピンや棘などの保持要素は、別の状況では一体であるジョーに、別個の構成要素として、たとえばジョーの穴にプレス嵌めで挿入してもよい。
【0061】
接合部により互いに旋回可能に接続された2本の脚を備え、各脚のジョーでそれぞれの加力点が画定でき、前記加力点には、剛体力学の観点からは特に、物体が整復鉗子により把持されたときに、対象の物体に脚から働くすべての力の効果に対応する効果を有する単一の合力がかかり、2本の脚の2つの合力は同じ大きさである、整復鉗子が提供されることになるが、ここで各加力点は接合部から異なる距離だけ離れて配置されており、前記脚のうち少なくとも1本が、少なくとも部分的に、接合部と加力点により画定される面に対して交差する方向に延びている。
【0062】
以下、第1の実施形態を示す図面を参照して本発明を詳しく説明する。