特許第6398132号(P6398132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398132
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】水処理装置、及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20180920BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20180920BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20180920BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20180920BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   C02F1/44 C
   C02F5/00 610F
   C02F5/00 610J
   C02F5/00 620B
   C02F5/08 C
   B01D61/04
   B01D65/02 500
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-545103(P2016-545103)
(86)(22)【出願日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2014072164
(87)【国際公開番号】WO2016030945
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2017年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 英夫
(72)【発明者】
【氏名】松井 克憲
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 貴一
(72)【発明者】
【氏名】河田 匡仙
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−202586(JP,A)
【文献】 特開平08−052462(JP,A)
【文献】 特開2014−128767(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0016922(US,A1)
【文献】 特開2011−031121(JP,A)
【文献】 特開平07−068259(JP,A)
【文献】 特開2012−176343(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/129383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00−71/82
C02F1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次ケーシングと、前記一次ケーシング内を一次通液部と一次透過部とに区画する一次逆浸透膜と、を有する一次逆浸透膜装置と、
処理対象である被処理液を前記一次通液部に送る被処理液ラインと、
前記被処理液ラインを介して、前記被処理液を前記一次通液部に圧送する一次給水装置と、
二次ケーシングと、前記二次ケーシング内を二次通液部と二次透過部とに区画する二次逆浸透膜と、を有する二次逆浸透膜装置と、
前記被処理液が前記一次逆浸透膜装置を通過することで得られた一次処理液を前記二次通液部に送る一次処理液ラインと、
前記一次処理液ライン中に設けられ、前記一次処理液の浸透圧より高い圧力で、前記一次処理液を前記二次透過部に圧送する二次給水装置と、
前記被処理液ラインと、前記一次処理液ライン中で前記一次逆浸透膜装置と前記二次給水装置との間の位置とを接続して、前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置に対してバイパスさせるバイパスラインと、
前記被処理液ラインから前記一次逆浸透膜装置の前記一次通液部に前記被処理液を送り、前記一次逆浸透膜装置からの前記一次処理液を前記二次給水装置に送る通常運転状態を含む運転状態を、前記被処理液ラインから前記バイパスラインを介して前記被処理液を前記二次給水装置に送るバイパス運転状態にするバイパス切替装置と、
を備え、
前記一次給水装置は、被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記被処理液を前記一次通液部に圧送する給水装置であり、
前記一次処理液ラインは、前記一次ケーシングの前記一次通液部側に接続されていると共に、前記二次ケーシングの前記二次通液部側に接続されている、
水処理装置
【請求項2】
請求項1に記載の水処理装置において、
前記一次ケーシングには、前記一次通液部と外部とを連通させる被処理液流入口及び一次処理液流出口と、前記一次透過部と外部とを連通させる透過液流出口とが形成され、
前記被処理液ラインは、前記被処理液流入口に接続され、前記一次処理液ラインは、前記一次処理液流出口に接続されている、
水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理装置において、
溶質濃度が前記被処理液の溶質濃度よりも低い逆洗液を、前記透過液流出口から前記一次透過部に送る逆洗装置と、
前記一次透過部に送られて前記一次逆浸透膜を通過し、前記一次通液部に至った前記逆洗液を含む液体を、前記被処理液ライン又は前記一次処理液ラインを介して、外部に排出する洗浄液排出ラインと、
を備える水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理装置において、
前記被処理液が前記被処理液ラインから前記被処理液流入口を経て前記一次通液部内に送られ、前記一次通液部からの前記一次処理液が前記一次処理液ラインを介して前記二次給水装置に送られる通常運転状態と、前記逆洗装置から前記一次透過部に送られて前記一次逆浸透膜を経て前記一次通液部に至った前記逆洗液を含む液体が、前記被処理液ライン又は前記一次処理液ラインを介して、前記洗浄液排出ラインから外部に排出される逆洗状態との間で、運転状態を切り替える逆洗切替装置を備える、
水処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理装置において、
前記洗浄液排出ラインは、前記被処理液ラインに接続され、
前記被処理液ラインと前記一次処理液ラインとを接続して、前記被処理液ラインを通ってきた前記被処理液を、前記一次処理液ラインを介して、前記一次処理液流出口から前記一次通液部に導く逆通液ラインを備え、
前記洗浄液排出ラインは、前記被処理液ライン中であって、前記逆通液ラインが接続されている位置よりも前記被処理液流入口側の位置に接続され、
前記逆洗切替装置は、前記逆洗装置から前記逆洗液が前記一次透過部に送られると共に、前記被処理液が、前記被処理液ラインから前記逆通液ライン、前記一次処理液ライン、及び前記一次処理液流出口を経て前記一次通液部内に送られ、前記被処理液流入口から流出した前記被処理液及び前記逆洗液が前記洗浄液排出ラインから外部に排出される前記逆洗状態と、前記通常運転状態との間で、運転状態を切り替える、
水処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の水処理装置において、
前記被処理液ライン中の圧力と、前記一次処理液ライン中であって前記二次給水装置よりも前記一次逆浸透膜装置側の位置での圧力との圧力差を検知する差圧計と、
前記通常運転状態で前記差圧計により検知された前記圧力差が予め定められた値以上になると、前記逆洗切替装置に対して、前記通常運転状態から前記逆洗状態への切替えを指示する制御装置と、
を備える水処理装置。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか一項に記載の水処理装置において、
複数の前記一次逆浸透膜装置を備え、
前記被処理液ラインは、前記一次給水装置に接続されている被処理液主ラインと、前記被処理液主ラインから複数の前記一次逆浸透膜装置毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置の前記被処理液流入口に接続されている被処理液分岐ラインと、を有し、
前記一次処理液ラインは、前記二次給水装置に接続されている一次処理液主ラインと、前記一次処理液主ラインから複数の前記一次逆浸透膜装置毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置の前記一次処理液流出口に接続されている一次処理液分岐ラインと、を有し、
前記バイパスラインは、前記一次給水装置からの前記被処理液を、複数の前記一次逆浸透膜装置の全てに対してバイパスさせる、
水処理装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水処理装置において、
前記一次逆浸透膜装置と前記二次逆浸透膜装置とは、同一形式の逆浸透膜装置である、
水処理装置。
【請求項9】
ケーシングと、前記ケーシング内を通液部と透過部とに区画する逆浸透膜と、を有し、前記ケーシングには、前記通液部と外部とを連通させる第一口及び第二口と、前記透過部と外部とを連通させる第三口とが形成されている複数の逆浸透膜装置を備えている水処理装置の運転方法において、
複数の前記逆浸透膜装置のうち、少なくとも一の逆浸透膜装置を一次逆浸透膜装置とし、残りの逆浸透膜装置を二次逆浸透膜装置とし、
処理対象である被処理液を前記一次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部内に圧送し、前記被処理液が前記一次逆浸透膜装置を通過した液を一次処理液として、前記一次処理液の浸透圧より高い圧力で、前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記二次逆浸透膜装置の前記通液部内に圧送する通常運転工程と、
前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置に対してバイパスさせて、前記被処理液の浸透圧より高い圧力で、前記被処理液を前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記二次逆浸透膜装置の前記通液部内に圧送するバイパス運転工程と、
前記通常運転工程の実行中の運転状態である通常運転状態を含む運転状態を、前記バイパス工程の実行中の運転状態であるバイパス運転状態にするバイパス切替工程と、
を実行し、
前記通常運転工程では、前記被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記一次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部に前記被処理液を圧送し、前記被処理液が前記一次通液部を通過して前記第二口から排出された液を前記一次処理液として前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部に圧送する、
水処理装置の運転方法。
【請求項10】
請求項9に記載の水処理装置の運転方法において、
溶質濃度が前記被処理液の溶質濃度よりも低い逆洗液を、前記一次逆浸透膜装置の前記第三口から前記透過部に送り、前記一次逆浸透膜装置の前記逆浸透膜を通過して前記通液部に至った前記逆洗液を含む液体を、外部に排出する逆洗工程を実行する、
水処理装置の運転方法。
【請求項11】
請求項10に記載の水処理装置の運転方法において、
前記逆洗工程では、前記一次逆浸透膜装置の前記第二口から前記通液部内に前記被処理液を送り、前記一次逆浸透膜装置の前記通液部に至った前記逆洗液と共に、前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置の前記第一口を経て外部に排出する、
水処理装置の運転方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の水処理装置の運転方法において、
前記通常運転状態と、前記逆洗工程の実行中の運転状態である逆洗状態との間で、運転状態を切り替える逆洗切替工程を実行する、
水処理装置の運転方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれか一項に記載の水処理装置の運転方法において、
前記水処理装置は、複数の前記一次逆浸透膜装置を備えており、
複数の前記一次逆浸透膜装置のうちの一以上の第一サブ装置群に対して、前記逆洗工程を実行している際には、他の一次逆浸透膜装置である第二サブ装置群に対して、前記被処理液を前記第二サブ装置群の前記第一口を経て前記通液部内に送り、前記通液部からの前記一次処理液を前記二次逆浸透膜装置へ圧送する通常運転工程を実行し、
前記バイパス運転工程では、前記被処理液を、複数の前記一次逆浸透膜装置の全てに対してバイパスさせる、
水処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜を用いて、処理対象である被処理液から溶質を除去して、溶質濃度の低い液を得る水処理装置、及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から淡水を得るためや工業用水を浄化して上水を得るための水処理装置として、逆浸透膜装置を備えた水処理装置がある。
【0003】
このような水処理装置としては、以下の特許文献1に記載されている処理装置がある。この処理装置は、処理対象である被処理液の流れに対して、複数の逆浸透膜装置を直列的に接続している。また、この処理装置では、有機物が逆浸透膜等に付着又は堆積を抑制するために、複数の逆浸透膜装置よりも上流側に殺菌剤やアルカリ液を添加する装置が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−238051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、確かに、逆浸透膜等への菌類の付着を抑制し、処理能力の低下を防ぐことができる。このため、水処理を長期間にわたって継続できる。しかしながら、水処理をより長期間にわたって継続できる技術が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、水処理を長期間にわたって継続できる水処理装置、及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての水処理装置は、
一次ケーシングと、前記一次ケーシング内を一次通液部と一次透過部とに区画する一次逆浸透膜と、を有する一次逆浸透膜装置と、処理対象である被処理液を前記一次通液部に送る被処理液ラインと、前記被処理液ラインを介して、前記被処理液を前記一次通液部に圧送する一次給水装置と、二次ケーシングと、前記二次ケーシング内を二次通液部と二次透過部とに区画する二次逆浸透膜と、を有する二次逆浸透膜装置と、前記被処理液が前記一次逆浸透膜装置を通過することで得られた一次処理液を前記二次通液部に送る一次処理液ラインと、前記一次処理液ライン中に設けられ、前記一次処理液の浸透圧より高い圧力で、前記一次処理液を前記二次透過部に圧送する二次給水装置と、前記被処理液ラインと、前記一次処理液ライン中で前記一次逆浸透膜装置と前記二次給水装置との間の位置とを接続して、前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置に対してバイパスさせるバイパスラインと、前記被処理液ラインから前記一次逆浸透膜装置の前記一次通液部に前記被処理液を送り、前記一次逆浸透膜装置からの前記一次処理液を前記二次給水装置に送る通常運転状態を含む運転状態を、前記被処理液ラインから前記バイパスラインを介して前記被処理液を前記二次給水装置に送るバイパス運転状態にするバイパス切替装置と、を備えている。前記一次給水装置は、被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記被処理液を前記一次通液部に圧送する給水装置であり、前記一次処理液ラインは、前記一次ケーシングの前記一次通液部側に接続されていると共に、前記二次ケーシングの前記二次通液部側に接続されている。
【0008】
当該水処理装置の通常運転状態では、被処理液が被処理液ラインを介して一次給水装置により、一次逆浸透膜装置の一次通液部内に圧送させる。被処理液が一次逆浸透膜装置を通過することで得られた一次処理液は、一次処理液ラインを介して二次給水装置により、一次処理液の浸透圧より高い圧力で、二次逆浸透膜装置の二次通液部内に圧送させる。このため、二次通液部内に圧送させた一次処理液の一部は、二次逆浸透膜を逆浸透し、透過液として二次透過部内に至る。また、二次通液部内に圧送させた一次処理液のうちで、二次透過部内に至らなかった一次処理液は、溶質が濃縮されて二次通液部から排出される。
【0009】
当該水処理装置の通常運転状態では、二次逆浸透膜装置よりも上流側に配置されている一次逆浸透膜装置の一次通液部内には、異物が堆積し易い。このため、一次逆浸透膜装置の処理能力は、次第に低下する。特に、一次通液部内に異物が固着等してしまって、一次逆浸透膜装置の処理能力が低下した場合には、この一次逆浸透膜装置を交換する、又は一次逆浸透膜装置を分解修理する、必要性が生じる。
【0010】
そこで、当該水処理装置では、以上のような必要性が生じた場合、バイパス切替装置により、通常運転状態の一次逆浸透膜装置をバイパス運転状態に切り替える。
【0011】
バイパス運転状態では、被処理液が一次逆浸透膜装置内に流入しなくなり、バイパスライン及び一次処理液ラインを介して、二次給水装置により、二次逆浸透膜装置の二次通液部内に圧送させる。二次通液部内に圧送された被処理液は、前述の一次処理液同様に、二次逆浸透膜装置により処理される。
【0012】
このバイパス運転状態では、前述したように、一次逆浸透膜装置に被処理液が流入しない。このため、このバイパス運転状態では、例えば、一次逆浸透膜装置を他の一次逆浸透膜装置に交換する、又は、一次逆浸透膜装置を分解修理することができる。
【0013】
以上のように、当該水処理装置のバイパス運転状態では、二次逆浸透膜装置により被処理液の処理を実行しつつも、一次逆浸透膜装置を他の一次逆浸透膜装置に交換等することができる。このため、当該水処理装置では、長期間にわたって水処理を継続することができる。また、バイパス運転状態は、一次逆浸透膜装置を他の一次逆浸透膜装置に交換等するための運転状態であるため、このバイパス運転状態を実行する工程は、通常運転状態を実行する工程の合間に一時的に実行される。このため、このバイパス運転状態を実行しても、複数の二次逆浸透膜装置の二次通液部に大量の異物が堆積してしまうことを避けることができ、二次逆浸透膜装置の処理能力の低下を抑えることができる。
当該水処理装置の一次逆浸透膜装置では、被処理液が一次逆浸透膜を逆浸透せず、一次通液部を通過する。このため、この一次逆浸透膜装置では、一次逆浸透膜装置で被処理液が一次逆浸透膜を逆浸透する場合に比べて、一次逆浸透膜装置における、流入した液体を流出させる能力、つまり処理能力の低下を抑えることができる。よって、当該水処理装置では、より長期間にわたって水処理を継続することができる。
【0016】
前記一次給水装置が被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記被処理液を前記一次通液部に圧送する、いずれかの前記水処理装置において、前記一次ケーシングには、前記一次通液部と外部とを連通させる被処理液流入口及び一次処理液流出口と、前記一次透過部と外部とを連通させる透過液流出口とが形成され、前記被処理液ラインは、前記被処理液流入口に接続され、前記一次処理液ラインは、前記一次処理液流出口に接続されていてもよい。
【0017】
前記ケーシングに透過液流出口が形成されている前記水処理装置において、溶質濃度が前記被処理液の溶質濃度よりも低い逆洗液を、前記透過液流出口から前記一次透過部に送る逆洗装置と、前記一次透過部に送られて前記一次逆浸透膜を通過し、前記一次通液部に至った前記逆洗液を含む液体を、前記被処理液ライン又は前記一次処理液ラインを介して、外部に排出する洗浄液排出ラインと、を備えてもよい。
【0018】
当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置内を逆洗できる。このため、当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置の処理能力が低下しても、その処理能力を容易に回復することができる。
【0019】
前記逆洗装置を備えている前記水処理装置において、前記被処理液が前記被処理液ラインから前記被処理液流入口を経て前記一次通液部内に送られ、前記一次通液部からの前記一次処理液が前記一次処理液ラインを介して前記二次給水装置に送られる通常運転状態と、前記逆洗装置から前記一次透過部に送られて前記一次逆浸透膜を経て前記一次通液部に至った前記逆洗液を含む液体が、前記被処理液ライン又は前記一次処理液ラインを介して、前記洗浄液排出ラインから外部に排出される逆洗状態との間で、運転状態を切り替える逆洗切替装置を備えてもよい。
【0020】
当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置の運転状態を容易に逆洗状態に切り替えることができる。
【0021】
前記逆洗切替装置を備えている前記水処理装置において、前記洗浄液排出ラインは、前記被処理液ラインに接続され、前記被処理液ラインと前記一次処理液ラインとを接続して、前記被処理液ラインを通ってきた前記被処理液を、前記一次処理液ラインを介して、前記一次処理液流出口から前記一次通液部に導く逆通液ラインを備え、前記洗浄液排出ラインは、前記被処理液ライン中であって、前記逆通液ラインが接続されている位置よりも前記被処理液流入口側の位置に接続され、前記逆洗切替装置は、前記逆洗装置から前記逆洗液が前記一次透過部に送られると共に、前記被処理液が、前記被処理液ラインから前記逆通液ライン、前記一次処理液ライン、及び前記一次処理液流出口を経て前記一次通液部内に送られ、前記被処理液流入口から流出した前記被処理液及び前記逆洗液が前記洗浄液排出ラインから外部に排出される前記逆洗状態と、前記通常運転状態との間で、運転状態を切り替えてもよい。
【0022】
一次逆浸透膜装置内では、一次通液部内の上流側の部分、言い換えると、一次通液部内の被処理液流入口側の部分で、多くの異物が捕捉され、この部分に多くの異物が堆積する。当該水処理装置での逆洗状態では、被処理液が一次通液部内を一次処理流出口側から被処理液流入口側へ流れ、通常運転状態とは逆向きに流れる。このため、当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置の一次通液部内に堆積した異物を効率的に排除することができる。
【0023】
前記逆洗切替装置を備えている前記水処理装置において、予め定められた条件を満たすと、前記逆洗切替装置に対して、前記通常運転状態から前記逆洗状態への切替えを指示する制御装置を備えてもよい。
【0024】
また、前記逆洗切替装置を備えている前記水処理装置において、前記被処理液ライン中の圧力と、前記一次処理液ライン中であって前記二次給水装置よりも前記一次逆浸透膜装置側の位置での圧力との圧力差を検知する差圧計と、前記通常運転状態で前記差圧計により検知された前記圧力差が予め定められた値以上になると、前記逆洗切替装置に対して、前記通常運転状態から前記逆洗状態への切替えを指示する制御装置と、を備えてもよい。
【0025】
一次逆浸透膜装置の一次通液部内に異物の堆積量が増えると、この一次通液部内を流れる被処理液の抵抗が大きくなって、一次逆浸透膜装置の被処理液流入口に流れ込む被処理液の圧力と一次処理液流出口から流出した一次処理液の圧力との圧力差が大きくなると共に、この一次通液部を通過する液の流量が少なくなる。そこで、当該水処理装置では、通常運転状態で、被処理液ライン中の圧力と一次処理液ライン中であって二次給水装置よりも一次逆浸透膜装置側の位置での圧力との圧力差が予め定めた値以上になると、一次逆浸透膜装置の運転状態を逆洗状態に切り替え、一次逆浸透膜装置内を逆洗して、一次通液部を通過する液の流量の回復を図る。
【0026】
前記制御装置を備えている、いずれかの前記水処理装置において、前記制御装置は、前記バイパス切替装置に対して、前記通常運転状態から前記バイパス運転状態への切替え、及び前記バイパス運転状態から前記通常運転状態への切替えを指示してもよい。
【0027】
当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置の運転状態を容易にバイパス運転状態に切り替えることができる。
【0028】
前記逆洗装置を備えている、いずれかの前記水処理装置において、前記逆洗装置は、前記一次逆浸透膜装置よりも高い位置に配置され、前記逆洗液が貯められる逆洗液タンクと、前記逆洗液タンクと前記透過液流出口とを接続する逆洗液ラインと、を有してもよい。
【0029】
当該水処理装置では、一次透過部内の逆洗液は、正浸透圧により一次逆浸透膜を正浸透して、一次通液部内に流入する。また、当該水処理装置では、逆洗液タンク内の逆洗液の水位と一次透過部内の逆洗液の水位との水位差分の液圧が一次透過部内の逆洗液にかかる。このため、当該水処理装置では、逆洗液をポンプ等で昇圧しなくても、一次透過部内の空気溜まり等を防ぐことができる。よって、当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置内の逆洗による消費電力を抑えることができる。
【0030】
前記逆洗装置を備えている、いずれかの前記水処理装置において、前記一次処理液が前記二次逆浸透膜装置の前記二次逆浸透膜を通過することで得られた透過液を前記逆洗液として前記逆洗装置に送る透過液供給ラインを備えてもよい。
【0031】
透過液は、被処理液に比べて、溶質濃度がはるかに低いため、一次逆浸透膜を正浸透し易い。よって、当該水処理装置では、透過液を逆洗液として利用することで、効率的に逆洗を行うことができる。しかも、当該水処理装置では、当該水処理装置自身で造水した透過液を用いるので、逆洗液を確保するためのコストを抑えることができる。
【0032】
以上のいずれかの前記水処理装置において、前記一次通液部内の生物を死滅させるための殺菌剤を、前記一次通液部に供給する殺菌剤供給装置を備えてもよい。
【0033】
当該水処理装置では、一次通液部内に菌類等の生物が繁殖しても、これを排除することができる。なお、殺菌剤供給装置は、前記一次通液部及び前記二次通液部内に前記殺菌剤を供給してもよい。
【0034】
以上のいずれかの前記水処理装置において、前記二次通液部内のスケールを除去するための酸性剤を、前記二次通液部に供給する酸性剤供給装置を備えてもよい。
【0035】
当該水処理装置では、二次通液部内にスケールが堆積しても、これを排除することができる。なお、酸性剤供給装置は、前記一次通液部内及び前記二次通液部内に前記酸性剤を供給してもよい。
【0036】
前記一次逆浸透膜装置の前記ケーシングに被処理液流入口及び一次処理液流出口が形成されている、いずれかの前記水処理装置において、複数の前記一次逆浸透膜装置を備え、前記被処理液ラインは、前記一次給水装置に接続されている被処理液主ラインと、前記被処理液主ラインから複数の前記一次逆浸透膜装置毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置の前記被処理液流入口に接続されている被処理液分岐ラインと、を有し、前記一次処理液ラインは、前記二次給水装置に接続されている一次処理液主ラインと、前記一次処理液主ラインから複数の前記一次逆浸透膜装置毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置の前記一次処理液流出口に接続されている一次処理液分岐ラインと、を有し、前記バイパスラインは、前記一次給水装置からの前記被処理液を、複数の前記一次逆浸透膜装置の全てに対してバイパスさせるラインであってもよい。
【0037】
当該水処理装置では、被処理液に対して、複数の一次逆浸透膜装置が並列的に配置されることになる。このため、当該水処理装置では、複数の一次逆浸透膜装置のうち、いずれかの能力が低下し、この一の一次逆浸透膜装置の能力回復処理を施している間も、他の一次逆浸透膜装置を通常運転状態にしておくことができる。このため、当該水処理装置では、より長期間にわたって水処理を継続できる。
【0038】
以上のいずれかの前記水処理装置において、前記一次逆浸透膜装置と前記二次逆浸透膜装置とは、同一形式の逆浸透膜装置であってもよい。
【0039】
当該水処理装置では、一次逆浸透膜装置の異物堆積性と二次逆浸透膜装置の異物堆積性が同じであるため、二次逆浸透膜装置の二次通液部内に堆積し得る異物の一次逆浸透膜装置による捕捉性を高めることができる。なお、二次逆浸透膜装置の二次通液部内に堆積し得る異物の一次逆浸透膜装置による捕捉性を高めるためには、さらに、一次逆浸透膜と二次逆浸透膜とが同一材料で形成されていることや、一次通液部の流路を確保する部材と二次通液部の流路を確保する部材とが同一形式で且つ同一材料で形成されていることが好ましい。
【0040】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての水処理装置の運転方法は、
ケーシングと、前記ケーシング内を通液部と透過部とに区画する逆浸透膜と、を有し、前記ケーシングには、前記通液部と外部とを連通させる第一口及び第二口と、前記透過部と外部とを連通させる第三口とが形成されている複数の逆浸透膜装置を備えている水処理装置の運転方法において、複数の前記逆浸透膜装置のうち、少なくとも一の逆浸透膜装置を一次逆浸透膜装置とし、残りの逆浸透膜装置を二次逆浸透膜装置とし、処理対象である被処理液を前記一次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部内に圧送し、前記被処理液が前記一次逆浸透膜装置を通過した液を一次処理液として、前記一次処理液の浸透圧より高い圧力で、前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記二次逆浸透膜装置の前記通液部内に圧送する通常運転工程と、前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置に対してバイパスさせて、前記被処理液の浸透圧より高い圧力で、前記被処理液を前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記二次逆浸透膜装置の前記通液部内に圧送するバイパス運転工程と、前記通常運転工程の実行中の運転状態である通常運転状態を含む運転状態を、前記バイパス工程の実行中の運転状態であるバイパス運転状態にするバイパス切替工程と、を実行する。前記通常運転工程では、前記被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記一次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部に前記被処理液を圧送し、前記被処理液が前記一次通液部を通過して前記第二口から排出された液を前記一次処理液として前記二次逆浸透膜装置の前記第一口から前記通液部に圧送する。
【0042】
また、前記被処理液の浸透圧以下の圧力で、前記一次逆浸透膜装置の前記通液部に前記被処理液を圧送する、前記水処理装置の運転方法において、溶質濃度が前記被処理液の溶質濃度よりも低い逆洗液を、前記一次逆浸透膜装置の前記第三口から前記透過部に送り、前記一次逆浸透膜装置の前記逆浸透膜を通過して前記通液部に至った前記逆洗液を含む液体を、外部に排出する逆洗工程を実行してもよい。
【0043】
前記逆洗工程を実行する前記水処理装置の運転方法において、前記逆洗工程では、前記一次逆浸透膜装置の前記第二口から前記通液部内に前記被処理液を送り、前記一次逆浸透膜装置の前記通液部に至った前記逆洗液と共に、前記被処理液を前記一次逆浸透膜装置の前記第一口を経て外部に排出してもよい。
【0044】
また、前記逆洗工程を実行する、いずれかの前記水処理装置の運転方法において、前記通常運転状態と、前記逆洗工程の実行中の運転状態である逆洗状態との間で、運転状態を切り替える逆洗切替工程を実行してもよい。
【0045】
前記逆洗切替工程を実行する前記水処理装置の運転方法において、前記通常運転状態で、前記一次逆浸透膜装置の前記第一口から流入する前記被処理液の圧力と前記第二口から流出した前記一次処理液の圧力との圧力差を検知する圧力差検知工程を実行し、前記逆洗切替工程では、前記圧力差検知工程で検知された前記圧力差が予め定められた値以上になると、前記通常運転状態から前記逆洗状態への切替えを実行してもよい。
【0046】
前記逆洗工程を実行する、いずれかの前記水処理装置の運転方法において、前記逆洗工程では、前記一次処理液が前記二次逆浸透膜装置の前記逆浸透膜を通過することで得られた透過液を前記逆洗液として利用してもよい。
【0047】
前記逆洗工程を実行する、いずれかの前記水処理装置の運転方法において、前記水処理装置は、複数の前記一次逆浸透膜装置を備えており、複数の前記一次逆浸透膜装置のうちの一以上の第一サブ装置群に対して、前記逆洗工程を実行している際には、他の一次逆浸透膜装置である第二サブ装置群に対して、前記被処理液を前記第二サブ装置群の前記第一口を経て前記通液部内に送り、前記通液部からの前記一次処理液を前記二次逆浸透膜装置へ圧送する通常運転工程を実行し、前記バイパス運転工程では、前記被処理液を、複数の前記一次逆浸透膜装置の全てに対してバイパスさせてもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明の一態様では、水処理を長期間にわたって継続できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】本発明に係る第一実施形態における水処理装置の系統図である。
図2】本発明に係る第一実施形態における逆浸透膜装置の要部展開斜視図である。
図3図2におけるIII−III線断面図である。
図4】本発明に係る第一実施形態における一次処理系の系統図(通常運転状態)である。
図5】本発明に係る第一実施形態における一次処理系の系統図(逆洗状態)である。
図6】本発明に係る第一実施形態における一次処理系の系統図(バイパス運転状態)である。
図7】本発明に係る第二実施形態における一次処理系の系統図(通常運転状態)である。
図8】本発明に係る第二実施形態における一次処理系の系統図(逆洗状態)である。
図9】本発明に係る第二実施形態における一次処理系の系統図(バイパス運転状態)である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る水処理装置の各種実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
「第一実施形態」
本発明に係る水処理装置の第一実施形態について、図1図6を用いて説明する。
【0052】
本実施形態の水処理装置は、被処理液としての海水を濃縮液と淡水とに分離して、処理水としての淡水を得る装置である。但し、本発明において、被処理液は、海水でなくてもよく、例えば、河川水や工業廃水等であってもよい。
【0053】
本実施形態の水処理装置は、図1に示すように、被処理液である海水SWを一次処理して一次処理液W1を得る一次処理系10と、一次処理液W1を二次処理して淡水である透過液PW及び濃縮液である二次処理液S2を得る二次処理系70と、一次処理系10及び二次処理系70における各種弁等の動作を制御する制御装置1と、を備えている。
【0054】
一次処理系10及び二次処理系70は、いずれも、逆浸透膜装置を備えている。この逆浸透膜装置80は、図2及び図3に示すように、スパイラル形式の逆浸透膜装置で、集液管95と、逆浸透膜86を有する複数の膜ユニット85と、これらを覆う円筒状のケーシング81と、を有する。
【0055】
円筒状のケーシング81の一方の端部には、処理対象となる液が流入する被処理液流入口(第一口)82が形成され、円筒状のケーシング81の他方の端部には、逆浸透膜86を通過しなかった液が流出する処理液流出口(第二口)83と、逆浸透膜86を通過した液である透過液が流出する透過液流出口(第三口)84とが形成されている。
【0056】
集液管95は、円筒状のケーシング81の中心軸に沿って配置されている。この集液管95には、外周側から内周側に向かって貫通する複数の集液孔96が形成されている。また、この集液管95の端部で、ケーシング81の前述の他方の端部側の端部は、透過液流出口84に接続されている。
【0057】
膜ユニット85は、袋状の逆浸透膜86と、袋状の逆浸透膜86内に配置されて逆浸透膜86を通過した透過液の流路を確保する透過液流路部材87と、袋状の逆浸透膜86の外面に沿って配置され処理対象となる液の流路を確保するメッシュスペーサ88と、を有する。よって、本実施形態の逆浸透膜装置80は、袋状の逆浸透膜86の内側が透過部92を成し、袋状の逆浸透膜86の外側が通液部91を成す。
【0058】
複数の膜ユニット85は、集液管95に対してスパイラル状に巻き付けられている。各膜ユニット85の袋状の逆浸透膜86の内側の部分は、集液管95の集液孔96に連通している。よって、透過部92は、ケーシング81の透過液流出口84を介して外部と連通している。また、各膜ユニット85の袋状の逆浸透膜86の外側の部分、つまり通液部91は、ケーシング81の被処理液流入口82を介して外部と連通していると共に、ケーシング81の処理液流出口83を介して外部と連通している。
【0059】
一次処理系10は、図1に示すように、以上で説明した逆浸透膜装置80である複数の一次逆浸透膜装置80Sの他に、被処理液である海水SWを汲み上げて一次逆浸透膜装置80Sに海水SWを圧送する一次給水ポンプ(一次給水装置)11と、一次給水ポンプ11が吸い込む海水SW中の異物を除去するストレーナ12と、一次給水ポンプ11からの海水SW中に含まれている微細な異物を除去するカートリッジフィルタ13と、一次逆浸透膜装置80Sに供給される海水SW中に存在する菌類等の生物を死滅させるための殺菌剤を供給する殺菌剤供給装置20と、一次逆浸透膜装置80S内の無機スケール等を除去するための酸性剤を供給する酸性剤供給装置30と、一次逆浸透膜装置80S内を逆洗する逆洗装置40と、を備えている。
【0060】
なお、以下では、一次逆浸透膜装置80Sのケーシング81を一次ケーシング81、逆浸透膜86を一次逆浸透膜86s、一次逆浸透膜装置80Sの通液部91を一次通液部91s、一次逆浸透膜装置80Sの透過部92を一次透過部92s、一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82を被処理液流入口82s、一次逆浸透膜装置80Sの処理液流出口83を一次処理液流出口83s、一次逆浸透膜装置80Sの透過液流出口84を透過液流出口84sとする。
【0061】
一次給水ポンプ11の吸込口には、被処理液吸込ライン51が接続されている。この被処理液吸込ライン51には、前述のストレーナ12が設けられている。一次給水ポンプ11の吐出口と、一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sとは、被処理液吐出ライン(被処理液ライン)52で接続されている。複数の一次逆浸透膜装置80Sは、この被処理液吐出ライン52に対して並列的に接続されている。このため、被処理液吐出ライン52は、一次給水ポンプ11に接続されている被処理液吐出主ライン52mと、被処理液吐出主ライン52mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sに接続されている被処理液分岐ライン52bと、を有する。被処理液吐出主ライン52mには、前述のカートリッジフィルタ13が設けられている。また、複数の被処理液分岐ライン52bには、それぞれ、被処理液流入仕切弁61が設けられている。
【0062】
一次給水ポンプ11は、一次逆浸透膜装置80Sの一次逆浸透膜86sに対する海水SWの浸透圧以下の圧力で、この海水SWを一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に圧送する。海水SWの浸透圧は、ほぼ30barである。このため、一次給水ポンプ11は、その吐出圧が、例えば、5bar程度で運転される。
【0063】
殺菌剤供給装置20は、殺菌剤が貯められる殺菌剤タンク21と、殺菌剤タンク21と被処理液吐出ライン52とを接続する殺菌剤ライン22と、殺菌剤タンク21内の殺菌剤を被処理液吐出ライン52内に圧送する殺菌剤ポンプ25と、を有する。殺菌剤ライン22は、殺菌剤タンク21に接続されている殺菌剤主ライン22mと、殺菌剤主ライン22mから複数の被処理液分岐ライン52b毎に分岐して、対応する被処理液分岐ライン52bに接続されている殺菌剤分岐ライン22bと、を有する。殺菌剤主ライン22mには、殺菌剤ポンプ25及び殺菌剤仕切弁26が設けられている。また、各殺菌剤分岐ライン22bには、殺菌剤流量調節弁27が設けられている。本実施形態では、殺菌剤として、例えば、次亜塩素酸などの塩素系の殺菌剤を用いている。但し、殺菌剤としては、菌類等の生物を死滅させることが可能であれば、被処理液の種類に合せて如何なる薬剤を殺菌剤として用いてもよい。
【0064】
酸性剤供給装置30は、酸性剤が貯められる酸性剤タンク31と、酸性剤タンク31と被処理液吐出ライン52とを接続する酸性剤ライン32と、酸性剤タンク31内の酸性剤を被処理液吐出ライン52内に圧送する酸性剤ポンプ35と、を有する。酸性剤ライン32は、酸性剤タンク31に接続されている酸性剤主ライン32mと、酸性剤主ライン32mから複数の被処理液分岐ライン52b毎に分岐して、対応する被処理液分岐ライン52bに接続されている酸性剤分岐ライン32bと、を有する。酸性剤主ライン32mには、酸性剤ポンプ35及び酸性剤仕切弁36が設けられている。また、各酸性剤分岐ライン32bには、酸性剤流量調節弁37が設けられている。本実施形態では、酸性剤として、例えば、硫酸水溶液を用いている。但し、酸性剤としては、被処理液が海水SWの場合、海水SW中の無機イオン、例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどが析出して逆浸透膜86に付着したスケールを溶解して除去できれば、塩酸、硝酸等の他の薬剤を酸性剤として用いてもよい。
【0065】
逆洗装置40は、逆洗液BWが貯められる逆洗液タンク41と、逆洗液タンク41と一次逆浸透膜装置80Sの透過液流出口84sとを接続する逆洗液ライン42と、この逆洗液ライン42に設けられている逆洗液仕切弁46と、を有する。逆洗液タンク41は、一次逆浸透膜装置80Sよりも高い位置に設けられている。逆洗液ライン42は、逆洗液タンク41に接続されている逆洗液主ライン42mと、逆洗液主ライン42mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐して各一次逆浸透膜装置80Sの透過液流出口84sに接続されている逆洗液分岐ライン42bと、を有する。各逆洗液分岐ライン42bには、前述の逆洗液仕切弁46が設けられている。
【0066】
一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sには、この一次処理液流出口83sから流出した一次処理液W1を二次処理系70に導く一次処理液ライン55が接続されている。この一次処理液ライン55は、複数の一次逆浸透膜装置80Sから流出した一次処理液W1を、後述の二次給水ポンプ71に導く一次処理液吸込ライン56と、二次給水ポンプ71で昇圧された一次処理液W1を二次処理系70に導く一次処理液吐出ライン73と、を有する。一次処理液吸込ライン56は、二次給水ポンプ71の吸込口に接続されている一次処理液吸込主ライン56mと、一次処理液吸込主ライン56mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sに接続されている一次処理液分岐ライン56bと、を有する。各一次処理液分岐ライン56bには、洗浄液排出ライン58が接続されている。この洗浄液排出ライン58には、洗浄液仕切弁63が設けられている。また、各一次処理液分岐ライン56b中で、洗浄液排出ライン58が接続されている位置よりも二次処理系70側には、一次処理液仕切弁62が設けられている。
【0067】
一次処理系10は、さらに、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力とこの一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPを検知する差圧計89を備えている。差圧計89は、複数の一次逆浸透膜装置80S毎に設けられている。各差圧計89は、被処理液分岐ライン52b中で被処理液流入仕切弁61よりも一次逆浸透膜装置80S側の位置の圧力と、一次処理液分岐ライン56b中で洗浄液排出ライン58が接続されている位置よりも一次逆浸透膜装置80S側の位置の圧力との圧力差ΔPを検知する。言い換えると、各差圧計89は、一次逆浸透膜装置80S毎に、被処理液流入口82sから一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と、一次通液部91sから一次処理液流出口83sを経て流出する一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPを検知する。
【0068】
一次処理系10は、さらに、被処理液吐出主ライン52mと一次処理液吸込主ライン56mとを接続して、海水SWを全ての一次逆浸透膜装置80Sに対してバイパスさせるバイパスライン59と、このバイパスライン59に設けられているバイパス仕切弁65と、を備えている。
【0069】
二次処理系70は、先に説明した逆浸透膜装置80である複数の二次逆浸透膜装置80Mの他に、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sから流出した一次処理液W1を二次逆浸透膜装置80Mに圧送する前述の二次給水ポンプ(二次給水装置)71と、二次逆浸透膜装置80Mの逆浸透膜86である二次逆浸透膜86mを通過した透過液PWを淡水として、多場所へ圧送する透過液ポンプ72と、を備えている。
【0070】
なお、以下では、二次逆浸透膜装置80Mのケーシング81を二次ケーシング81、逆浸透膜86を二次逆浸透膜86m、二次逆浸透膜装置80Mの通液部91を二次通液部91m、二次逆浸透膜装置80Mの透過部92を二次透過部92m、二次逆浸透膜装置80Mの被処理液流入口82を被処理液流入口82m、二次逆浸透膜装置80Mの処理液流出口83を二次処理液流出口83m、二次逆浸透膜装置80Mの透過液流出口84を透過液流出口84mとする。
【0071】
二次給水ポンプ71は、前述の一次処理液ライン55中に設けられている。言い換えると、二次給水ポンプ71の吸込口には、一次処理液ライン55の一次処理液吸込主ライン56mが接続され、二次給水ポンプ71の吐出口には、一次処理液ライン55の一次処理液吐出ライン73が接続されている。この二次給水ポンプ71は、二次逆浸透膜装置80Mの二次逆浸透膜86mに対する一次処理液W1の浸透圧より高い圧力で、この一次処理液W1を二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送する。一次処理液W1の浸透圧は、被処理液である海水SWの浸透圧と同じく、ほぼ30barである。このため、二次給水ポンプ71は、その吐出圧が、例えば、この30barよりも高い65bar程度で運転される。一次処理液吐出ライン73は、複数の二次逆浸透膜装置80Mのうちの第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの被処理液流入口82mに接続されている。
【0072】
複数の二次逆浸透膜装置80Mの各二次通液部91mは、二次処理液ライン97により直列的に接続されている。具体的に、複数の二次逆浸透膜装置80Mのうち、第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの被処理液流入口82mには、前述したように、一次処理液吐出ライン73が接続されている。この第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次処理液流出口83mと、第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの被処理液流入口82mとは、二次処理液ライン97で接続されている。また、この第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次処理液流出口83mと、第三段目の二次逆浸透膜装置の被処理液流入口82mとは、二次処理液ライン97で接続されている。最終段の二次逆浸透膜装置80Mcの二次処理液流出口83mには、濃縮液ライン98が接続されている。
【0073】
前述の透過液ポンプ72には、複数の二次逆浸透膜装置80Mの各二次逆浸透膜86mを通過した透過液PWが透過液ライン74を介して送られる。この透過液ライン74は、透過液ポンプ72の吐出口に接続されている透過液吐出ライン76と、透過液ポンプ72の吸込口に接続されている透過液吸込主ライン75mと、この透過液吸込主ライン75mから複数の二次逆浸透膜装置80M毎に分岐している透過液吸込分岐ライン75bと、を有する。各透過液吸込分岐ライン75bは、二次逆浸透膜装置80Mの透過液流出口84mに接続されている。
【0074】
透過液吐出ライン76と、一次処理系10の逆洗液タンク41とは、透過液PWを逆洗液として逆洗液タンク41に送る透過液供給ライン77で接続されている。この透過液供給ライン77には、透過液流量調節弁78が設けられている。
【0075】
なお、本実施形態において、バイパス切替装置は、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、及びバイパス仕切弁65を有して構成されている。また、逆洗切替装置は、一次処理液仕切弁62、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して構成されている。
【0076】
以上で説明した水処理装置の動作について説明する。
まず、被処理液である海水SWを淡水化する通常運転工程について説明する。
【0077】
通常運転工程の実行中の運転状態である通常運転状態では、図4に示すように、各被処理液流入仕切弁61及び各一次処理液仕切弁62がいずれも開いている。一方、この通常運転状態では、殺菌剤仕切弁26、各殺菌剤流量調節弁27、酸性剤仕切弁36、各酸性剤流量調節弁37、各逆洗液仕切弁46、各洗浄液仕切弁63、さらに、バイパス仕切弁65が閉じている。
【0078】
一次給水ポンプ11で汲み上げられた海水SWは、ストレーナ12、カートリッジフィルタ13、被処理液吐出主ライン52m、複数の被処理液分岐ライン52bを介して、各一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sから各一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。但し、この海水SWは、一次給水ポンプ11により、海水SWの浸透圧以下で、一次通液部91s内に圧送される。このため、この海水SWは、一次逆浸透膜86sを逆浸透せず、一次通液部91sを通過して一次処理液W1として、一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから一次処理液分岐ライン56bに流出する。
【0079】
海水SWの菌類や無機物等の異物であって、ストレーナ12やカートリッジフィルタ13を通過した異物は、一次通液部91sを通過する過程で、一次通液部91s内の流路を確保するためのメッシュスペーサ88(図2及び図3参照)や、一次逆浸透膜86sの一次通液部91s側に付着する。このため、一次処理液ライン55を流れる一次処理液W1中には、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内の流路を確保するためのメッシュスペーサ88や、二次逆浸透膜86mの二次通液部91m側に付着し得る異物の量が極めて少なくなる。
【0080】
複数の一次逆浸透膜装置80S毎の一次処理液分岐ライン56bに流出した一次処理液W1は、図1に示すように、一次処理液吸込主ライン56mを介して、二次給水ポンプ71に流入する。この一次処理液W1は、二次給水ポンプ71より、一次処理液W1の浸透圧を超える圧力で、第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次通液部91m内に圧送される。このため、第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次通液部91m内に送られた一次処理液W1の一部は、この第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次逆浸透膜86mを逆浸透し、第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次透過部92m内に至る。第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次通液部91m内に送られた一次処理液W1のうちで、二次透過部92mに至らなかった一次処理液W1は、第一段目の二次逆浸透膜装置80Maの二次処理液流出口83mから二次処理液ライン97を介して第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次通液部91m内に流入する。一次処理液W1が各二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91mを通過する過程での圧力損失は、1bar未満である。このため、第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次通液部91m内に送られた一次処理液W1の一部は、この第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次逆浸透膜86mを逆浸透し、第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次透過部92m内に至る。第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次通液部91m内に送られた一次処理液W1のうちで、二次透過部92mに至らなかった一次処理液W1は、第二段目の二次逆浸透膜装置80Mbの二次処理液流出口83mから二次処理液ライン97を介して第三段目の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に流入する。以下、同様に、第三段目の二次逆浸透膜装置80M以降の二次逆浸透膜装置80Mでも、同様に、一次処理液W1が処理される。
【0081】
最終段の二次逆浸透膜装置80Mcの二次通液部91mから流出した処理液である二次処理液S2は、濃縮液ライン98に流入し、この濃縮液ライン98を介して、例えば、海や処理場等に排出される。
【0082】
一方、複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次透過部92mに至った透過液PWは、淡水として、複数の二次逆浸透膜装置80M毎に設けられている透過液吸込分岐ライン75b、透過液吸込主ライン75mを経て、透過液ポンプ72内に流入する。透過液ポンプ72内に流入した透過液PWは、この透過液ポンプ72で昇圧されて、透過液吐出ライン76を経て多場所へ送られる。
【0083】
透過液ポンプ72で昇圧された透過液PWの一部は、透過液吐出ライン76に接続されている透過液供給ライン77を介して、逆洗液タンク41に供給される。この逆洗液タンク41には、例えば、液面計が設けられている。透過液供給ライン77に設けられている透過液流量調節弁78は、この液面計で検知された逆洗液タンク41内の逆洗液レベルが予め定められたレベル以下になると開き、透過液ポンプ72で昇圧された透過液PWの一部が逆洗液タンク41に供給される。
【0084】
一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に配置されているメッシュスペーサ88や、一次逆浸透膜86sの一次通液部91s側に、海水SWの菌類や無機物等の異物の付着量が増えると、この一次通液部91s内を流れる海水SWの抵抗が大きくなって、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが大きくなると共に、この一次通液部91sを通過する液の流量が少なくなる。このため、水処理装置全体での水処理能力が低下する。
【0085】
そこで、本実施形態では、複数の差圧計89のうち、いずれかの差圧計89で検知された圧力差ΔPが予め定められた値以上になると、制御装置1が、図5に示すように、この差圧計89で圧力差ΔPが検知された一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力すると共に、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63に対して開指令を出力する(逆洗切替工程)。なお、逆洗切替装置は、前述したように、一次処理液仕切弁62、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して構成される。
【0086】
具体的に、制御装置1は、まず、一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する洗浄液仕切弁63に対して開指令を出力すると共に、一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力する。制御装置1は、その後、一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する逆洗液仕切弁46に対して開指令を出力する。
【0087】
海水SWは、通常運転状態と同様、被処理液吐出主ライン52m、複数の被処理液分岐ライン52bを介して、各一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sから各一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。この海水SWは、一次通液部91sを通過して一次処理液W1として、各一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから各一次処理液分岐ライン56bに流出する。
【0088】
一の一次逆浸透膜装置80Sから、この一次処理液分岐ライン56bに対応する一次処理液分岐ライン56bに流出した一次処理液W1は、洗浄液排出ライン58及び洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。
【0089】
また、逆洗タンク内の逆洗液BWは、逆洗液主ライン42m、一の一次逆浸透膜装置80Sに接続されている逆洗液分岐ライン42b、この逆洗液分岐ライン42bに設けられている逆洗液仕切弁46を介して、一の一次逆浸透膜装置80Sの透過液流出口84sから一次透過部92s内に流入する。
【0090】
一次逆浸透膜装置80Sの一次透過部92s内の逆洗液(淡水)BWに含まれる溶質(食塩)濃度は、一次通液部91s内の海水SWに含まれる溶質(食塩)濃度よりも低い。このため、一次透過部92s内の逆洗液BWは、正浸透圧により一次逆浸透膜86sを正浸透して、一次通液部91s内に流入する。しかも、逆洗液タンク41は、一次逆浸透膜装置80Sよりも高い所に配置されているため、一次透過部92s内の逆洗液BWには、逆洗液タンク41内の逆洗液BWの水位と一次透過部92s内の逆洗液BWの水位との水位差分の液圧がかかる。よって、一次透過部92s内の逆洗液BWは、一次逆浸透膜86sを通過して、一次通液部91s内により流入し易くなる。この過程で、一次通液部91s内の流路を確保するためのメッシュスペーサ88や、一次逆浸透膜86sの一次通液部91s側に付着していた異物が、これらから剥がれる。この異物は、一次通液部91s内の逆洗液BW及び海水SWと共に、一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから、一次処理液吸込ライン56、洗浄液排出ライン58及び洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。すなわち、一次逆浸透膜装置80Sの運転状態が逆洗状態になり、この一次逆浸透膜装置80Sは、逆洗液BWにより逆洗される(逆洗工程)。
【0091】
一の一次逆浸透膜装置80Sを除く一次逆浸透膜装置80Sから流出した一次処理液W1は、各一次処理液分岐ライン56bを経て一次処理液吸込主ライン56mで合流し、二次給水ポンプ71により、一次処理液W1の浸透圧を超える圧力で、二次処理系70の複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送される。よって、一の一次逆浸透膜装置80Sを除く一次逆浸透膜装置80Sは、通常運転状態が維持される。このため、一の一次逆浸透膜装置80Sを逆洗しても、本実施形態の水処理装置における海水SWの淡水化処理が継続される。
【0092】
以上で説明した逆洗により、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが小さくなり、この一次通液部91sを通過する液の流量が回復すると、制御装置1は、一次処理液仕切弁62に対して開指令を出力すると共に、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63に対して閉指令を出力する(逆洗切替工程)。この結果、図4に示すように、一の一次逆浸透膜装置80Sの運転状態が通常運転状態に戻る。
【0093】
一の一次逆浸透膜装置80Sを逆洗しても、この一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが小さくならなければ、制御装置1は、殺菌剤仕切弁26、及び一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する殺菌剤流量調節弁27に対して開指令を出力すると共に、殺菌剤ポンプ25に対して駆動指令を出力する。この結果、殺菌剤タンク21内の殺菌剤が、殺菌剤主ライン22m、殺菌剤分岐ライン22b及び被処理液分岐ライン52bを介して、海水SWと共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。
【0094】
仮に、一次通液部91s内で、菌類等の生物が繁殖して、一次通液部91s内の流路を確保するためのメッシュスペーサ88や一次逆浸透膜86sの一次通液部91s側に付着していた場合、この菌類等の生物が死滅し、メッシュスペーサ88や一次逆浸透膜86sから剥がれる。死滅した生物は、一次通液部91s内に流入した海水SW及び殺菌剤と共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから、一次処理液分岐ライン56b、洗浄液排出ライン58、洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。
【0095】
一の一次逆浸透膜装置80S内を殺菌しても、この一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが小さくならなければ、制御装置1は、殺菌剤仕切弁26及び殺菌剤流量調節弁27に対して閉指令を出力すると共に、殺菌剤ポンプ25に対して停止指令を出力して、一次逆浸透膜装置80S内の殺菌処理を停止する。その上で、制御装置1は、酸性剤仕切弁36、及び一の一次逆浸透膜装置80Sに対する酸性剤流量調節弁37に対して開指令を出力すると共に、酸性剤ポンプに対して駆動指令を出力する。この結果、酸性剤タンク31内の酸性剤が、酸性剤主ライン32m、酸性剤分岐ライン32b及び被処理液分岐ライン52bを介して、海水SWと共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。
【0096】
仮に、一次通液部91s内に、無機物がスケールとして堆積していた場合、このスケールは溶解する。溶解したスケールは、一次通液部91s内に流入した海水SW及び酸性剤と共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから、一次処理液分岐ライン56b、洗浄液排出ライン58、洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。
【0097】
なお、以上では、殺菌処理の後に、無機スケール分の溶解処理を行うが、無機スケール分の溶解処理の後に、殺菌処理を行ってもよい。
【0098】
いずれか一の一次逆浸透膜装置80Sに対して、以上の逆洗、殺菌、無機スケール分の溶解処理を行っても、この一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが小さくならなければ、例えば、この一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換する、又は、一次逆浸透膜装置80Sを分解修理する、必要性が生じる。この場合、この一次逆浸透膜装置80Sに対応する被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62及び逆洗液仕切弁46を閉じ、この状態で、この一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換等する。
【0099】
また、全ての一次逆浸透膜装置80Sを一括して、他の一次逆浸透膜装置80Sに交換する、又は、各一次逆浸透膜装置80Sを分解修理する、必要性が生じる場合もある。
【0100】
そこで、このような場合、本実施形態では、例えば、水処理装置のオペレータが、制御装置1に対して、各一次逆浸透膜装置80Sの運転状態を通常運転状態からバイパス運転状態への切替えを指示する。
【0101】
制御装置1は、この切替え指示を受け付けると、図6に示すように、複数の被処理液流入仕切弁61及び複数の一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力すると共に、バイパス仕切弁65に対して開指令を出力する(バイパス切替工程)。なお、バイパス切替装置は、前述したように、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、及びバイパス仕切弁65を有して構成される。具体的に、制御装置1は、まず、複数の被処理液流入仕切弁61に対して閉指令を出力すると共に、バイパス仕切弁65に対して開指令を出力する。次に、複数の一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力する。
【0102】
この結果、被処理液吐出主ライン52mからの海水SWは、各被処理液分岐ライン52bを介して各一次逆浸透膜装置80Sに流入しなくなり、バイパスライン59、一次処理液吸込主ライン56mを介して、二次給水ポンプ71に流入する(バイパス運転工程)。
【0103】
二次給水ポンプ71に流入した海水SWは、二次給水ポンプ71により、海水SWの浸透圧を超える圧力で、二次処理系70の複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送され、以上と同様に、複数の二次逆浸透膜装置80Mにより処理される。
【0104】
バイパス運転工程の実行中の運転状態であるバイパス運転状態では、各一次逆浸透膜装置80Sに海水SWが流入しない。このため、このバイパス運転状態では、例えば、各一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換する、又は、各一次逆浸透膜装置80Sを分解修理する作業を実行する。
【0105】
以上、本実施形態では、二次逆浸透膜装置80Mの上流側に一次逆浸透膜装置80Sを配置し、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に堆積し得る異物を一次逆浸透膜装置80Sで捕捉するので、二次逆浸透膜装置80Mでの水処理能力の低下を抑えることができる。特に、本実施形態では、一次逆浸透膜装置80Sと二次逆浸透膜装置80Mとは、同形式の逆浸透膜装置80であり、両者の異物の堆積性が同じであるため、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に堆積し得る異物の一次逆浸透膜装置80Sによる捕捉性を高めることができる。また、一次逆浸透膜装置80Sでは、海水SWが一次逆浸透膜86sを逆浸透せず、一次通液部91sを通過しているだけであるため、この一次逆浸透膜装置80Sで海水SWが一次逆浸透膜86sを逆浸透する場合に比べて、一次逆浸透膜装置80Sにおける、流入した液体を流出させる能力、つまり処理能力の低下を抑えることができる。なお、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に堆積し得る異物の一次逆浸透膜装置80Sによる捕捉性を高めるためには、さらに、一次逆浸透膜86sと二次逆浸透膜86mとが同一材料で形成されていることや、一次通液部91sの流路を確保する部材と二次通液部91mの流路を確保する部材とが同一形式で且つ同一材料で形成されていることが好ましい。
【0106】
よって、本実施形態では、水処理装置の水処理能力の低下を抑えることができ、結果として水処理を長期間にわたって実行できる。
【0107】
さらに、本実施形態では、一の一次逆浸透膜装置80Sの運転状態を逆洗状態にしても、また、一の一次逆浸透膜装置80Sに対して殺菌処理や無機スケールの溶解処理を行っている状態でも、他の一次逆浸透膜装置80S及び複数の二次逆浸透膜装置80Mにより海水SWの淡水化処理を継続することができる。よって、本実施形態では、この観点からも、水処理を長期にわたって継続することができる。
【0108】
さらに、本実施形態では、複数の二次逆浸透膜装置80Mにより海水SWの淡水化処理を実行しつつも、バイパス運転工程を実行することにより、複数の一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換等することができる。このため、本実施形態では、この観点からも、長期間にわたって水処理を継続することができる。また、バイパス運転工程は、複数の一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換等するための工程であるため、通常運転工程の合間に一時的に実行される。このため、このバイパス運転工程を実行しても、複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91mに大量の異物が堆積してしまうことを避けることができ、複数の二次逆浸透膜装置80Mの処理能力の低下を抑えることができる。
【0109】
また、本実施形態の水処理装置は、一次逆浸透膜装置80Sを逆洗する逆洗装置40や、一次逆浸透膜装置80Sを殺菌する殺菌剤供給装置20、一次逆浸透膜装置80Sの無機スケール分を溶解処理する酸性剤供給装置30を備えているので、一次逆浸透膜装置80Sの処理能力が低下しても、容易にこの処理能力を回復させることができる。
【0110】
また、本実施形態の逆洗装置40では、水位差を利用して一次逆浸透膜装置80Sの一次透過部92s内の逆洗液BWに液圧をかけるため、逆洗液BWをポンプ等で昇圧しなくても、一次透過部92s内の空気溜まり等を防ぐことができる。よって、逆洗装置40では、消費電力を抑えることができる。
【0111】
「第二実施形態」
本発明に係る水処理装置の第二実施形態について、図7図9を用いて説明する。
【0112】
本実施形態の水処理装置は、図7に示すように、第一実施形態の水処理装置と同様に、一次処理系10a、二次処理系70、及び制御装置1と、を備えている。本実施形態の二次処理系70は、第一実施形態の二次処理系70と同じである。一方、本実施形態の一次処理系10aは、第一実施形態の一次処理系10と比べて、一次逆浸透膜装置80Sを含む各種装置自体は同じであるものの、一次逆浸透膜装置80S周りの配管ラインが異なっている。
【0113】
本実施形態でも、複数の一次逆浸透膜装置80Sは、被処理液吐出ライン52に対して並列的に接続されている。被処理液吐出ライン52は、第一実施形態と同様に、一次給水ポンプ11に接続されている被処理液吐出主ライン52mと、被処理液吐出主ライン52mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sに接続されている被処理液分岐ライン52bと、を有する。各被処理液分岐ライン52bには、被処理液流入仕切弁61が設けられている。各被処理液分岐ライン52b中で被処理液流入仕切弁61が設けられている位置より一次逆浸透膜装置80S側の位置には、洗浄液排出ライン58aが接続されている。この洗浄液排出ライン58aには、洗浄液仕切弁63が設けられている。
【0114】
一次処理液ライン55は、第一実施形態と同様に、複数の一次逆浸透膜装置80Sから流出した一次処理液W1を、二次給水ポンプ71に導く一次処理液吸込ライン56と、二次給水ポンプ71で昇圧された一次処理液W1を二次処理系70に導く一次処理液吐出ライン73と、を有する。一次処理液吸込ライン56は、二次給水ポンプ71に接続されている一次処理液吸込主ライン56mと、一次処理液吸込主ライン56mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐して、各一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sに接続されている一次処理液分岐ライン56bと、を有する。各一次処理液分岐ライン56bには、一次処理液仕切弁62が設けられている。
【0115】
本実施形態の一次処理系10aは、さらに、複数の一次処理液分岐ライン56b毎に、逆通液ライン54が設けられている。この逆通液ライン54の一方の端部は、被処理液吐出主ライン52mに接続され、他方の端部は、一次処理液分岐ライン56bに接続されている。逆通液ライン54の他方の端部は、一次処理液分岐ライン56b中で、一次処理液仕切弁62が設けられている位置よりも一次逆浸透膜装置80S側に接続されている。この逆通液ライン54は、被処理液吐出ライン52と一次処理液吸込ライン56とを接続して、被処理液吐出ライン52を通ってきた海水SWを、一次処理液吸込ライン56を介して、一次処理液流出口83sから、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに導く。各逆通液ライン54には、逆通液仕切弁64が設けられている。
【0116】
差圧計89は、複数の一次逆浸透膜装置80S毎に設けられている。各差圧計89は、被処理液分岐ライン52b中で被処理液流入仕切弁61よりも一次逆浸透膜装置80S側の位置の圧力と、一次処理液分岐ライン56b中で逆通液ライン54が接続されている位置よりも一次逆浸透膜装置80S側の位置の圧力との圧力差ΔPを検知する。
【0117】
逆洗装置40の逆洗液ライン42は、第一実施形態と同様、逆洗液タンク41に接続されている逆洗液主ライン42mと、逆洗液主ライン42mから複数の一次逆浸透膜装置80S毎に分岐している逆洗液分岐ライン42bと、を有する。各逆洗液分岐ライン42bには、逆洗液仕切弁46が設けられている。
【0118】
本実施形態の殺菌剤供給装置20の殺菌剤ライン22は、第一実施形態と同様、殺菌剤タンク21に接続されている殺菌剤主ライン22mと、殺菌剤主ライン22mから分岐している複数の殺菌剤分岐ライン22bと、を有する。但し、本実施形態における各殺菌剤分岐ライン22bは、対応する逆通液ライン54に接続されている。殺菌剤主ライン22mには、殺菌剤ポンプ25及び殺菌剤仕切弁26が設けられている。また、各殺菌剤分岐ライン22bには、殺菌剤流量調節弁27が設けられている。
【0119】
本実施形態の酸性剤供給装置30の酸性剤ライン32は、第一実施形態と同様、酸性剤タンク31に接続されている酸性剤主ライン32mと、酸性剤主ライン32mから分岐している複数の酸性剤分岐ライン32bと、を有する。但し、本実施形態における各酸性剤分岐ライン32bは、対応する逆通液ライン54に接続されている。酸性剤主ライン32mには、酸性剤ポンプ35及び酸性剤仕切弁36が設けられている。また、各酸性剤分岐ライン32bには、酸性剤流量調節弁37が設けられている。
【0120】
なお、本実施形態において、バイパス切替装置は、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、及びバイパス仕切弁65を有して構成されている。また、逆洗切替装置は、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、逆通液仕切弁64、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して構成されている。
【0121】
本実施形態の通常運転状態では、図7に示すように、第一実施形態と同様、各被処理液流入仕切弁61及び各一次処理液仕切弁62が開いている。また、この通常運転状態では、第一実施形態と同様、殺菌剤仕切弁26、各殺菌剤流量調節弁27、酸性剤仕切弁36、各酸性剤流量調節弁37、各逆洗液仕切弁46、各洗浄液仕切弁63、バイパス仕切弁65が閉じている。さらに、本実施形態の通常運転状態では、各逆通液仕切弁64が閉じている。
【0122】
このため、本実施形態の通常運転状態では、第一実施形態と同様に、一次給水ポンプ11で汲み上げられた海水SWは、ストレーナ12、カートリッジフィルタ13、被処理液吐出主ライン52m、複数の被処理液分岐ライン52bを介して、各一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sから各一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。この海水SWは、一次逆浸透膜86sを逆浸透せず、一次通液部91sを通過して一次処理液W1として、各一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから各一次処理液分岐ライン56bに流出する。
【0123】
従って、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、一次逆浸透膜装置80Sで、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に堆積し得る異物を捕捉することができる。
【0124】
各一次処理液分岐ライン56bに流出した一次処理液W1は、一次処理液吸込主ライン56mで合流して、二次給水ポンプ71により、一次処理液W1の浸透圧を超える圧力で、第一実施形態と同様に、二次処理系70の複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送される。
【0125】
本実施形態でも、複数の差圧計89のうち、いずれかの差圧計89で検知された圧力差ΔPが予め定められた値以上になると、制御装置1が、図8に示すように、この差圧計89で圧力差ΔPが検知されている一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する、逆洗液仕切弁46、洗浄液仕切弁63及び逆通液仕切弁64に対して開指令を出力すると共に、被処理液流入仕切弁61及び一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力する(逆洗切替工程)。なお、前述したように、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、逆通液仕切弁64、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して逆洗切替装置が構成されている。
【0126】
具体的に、制御装置1は、まず、洗浄液仕切弁63に対して開指令を出力すると共に、一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力する。次に、制御装置1は、逆洗液仕切弁46に対して開指令を出力する。そして、制御装置1は、逆通液仕切弁64に対して開指令を出力すると共に、被処理液流入仕切弁61に対して閉指令を出力する。
【0127】
この結果、海水SWの一部は、被処理液吐出ライン52、一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する逆通液ライン54、一次処理液吸込ライン56を介して、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから一の一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内に流入する。一次通液部91sに流入した海水SWは、一の一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sから、一次処理液吸込ライン56、洗浄液排出ライン58a、洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。また、逆洗タンク内の逆洗液BW(淡水)は、逆洗液主ライン42m、一の一次逆浸透膜装置80Sに接続されている逆洗液分岐ライン42b、この逆洗液分岐ライン42bに設けられている逆洗液仕切弁46を介して、一の一次逆浸透膜装置80Sの透過液流出口84sから一次透過部92s内に流入する。一次透過部92s内の逆洗液BWは、第一実施形態と同様、一次逆浸透膜86sを正浸透して、一次通液部91s内に流入する。この過程で、一次通液部91s内の流路を確保するためのメッシュスペーサ88や、一次逆浸透膜86sの一次通液部91s側に付着していた異物が、これらから剥がれる。この異物は、一次通液部91s内の逆洗液BW及び海水SWと共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの被処理液流入口82sから、被処理液分岐ライン52b、洗浄液排出ライン58a、洗浄液仕切弁63を介して、外部へ排出される。すなわち、一の一次逆浸透膜装置80Sの運転状態が逆洗状態になり、この一次逆浸透膜装置80Sは、逆洗液BWにより逆洗される(逆洗工程)。
【0128】
一の一次逆浸透膜装置80Sを除く一次逆浸透膜装置80Sから流出した一次処理液W1は、第一実施形態と同様、各一次処理液分岐ライン56bを経て一次処理液吸込主ライン56mで合流し、二次給水ポンプ71により、一次処理液W1の浸透圧を超える圧力で、二次処理系70の複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送される。よって、一の一次逆浸透膜装置80Sを逆洗しても、一の一次逆浸透膜装置80Sを除く一次逆浸透膜装置80Sは通常運転状態が維持され、水処理装置における海水SWの淡水化処理が継続される。
【0129】
本実施形態では、逆洗状態での一次通液部91s内の液体の流れが一次処理液流出口83s側から被処理液流入口82s側への流れで、第一実施形態の流れと逆向きである。一次逆浸透膜装置80S内では、一次通液部91s内の上流側の部分、言い換えると、一次通液部91s内の被処理液流入口82s側の部分で、多くの異物が捕捉され、この部分に多くの異物が堆積する。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、一次通液部91s内に堆積した異物を効率的に排除することができる。
【0130】
以上で説明した逆洗を例えば所定時間実行すると、制御装置1は、被処理液流入仕切弁61及び一次処理液仕切弁62に対して開指令を出力すると共に、逆洗液仕切弁46、洗浄液仕切弁63及び逆通液仕切弁64に対して閉指令を出力する。この結果、図7に示すように、一の一次逆浸透膜装置80Sの運転状態が通常運転状態に戻る。
【0131】
一の一次逆浸透膜装置80Sを逆洗しても、通常運転状態において、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91sに流入する海水SWの圧力と一次通液部91sから流出した一次処理液W1の圧力との圧力差ΔPが小さくならなければ、制御装置1は、第一実施形態と同様、殺菌剤仕切弁26、及び一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する殺菌剤流量調節弁27に対して開指令を出力すると共に、殺菌剤ポンプ25に対して駆動指令を出力する。さらに、制御装置1は、通常運転状態から逆洗状態への逆洗切替工程と同様に、逆洗液仕切弁46、洗浄液仕切弁63及び逆通液仕切弁64に対して開指令を出力すると共に、被処理液流入仕切弁61及び一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力する。この結果、殺菌剤タンク21内の殺菌剤が、一の一次逆浸透膜装置80Sに対応する、殺菌剤分岐ライン22b、逆通液ライン54、及び一次処理液分岐ライン56bを介して、海水SWと共に、一の一次逆浸透膜装置80Sの一次処理液流出口83sから一次通液部91s内に流入する。
【0132】
本実施形態では、殺菌処理の状態での一次通液部91s内の液体の流れも、一次処理液流出口83s側から被処理液流入口82s側への流れで、第一実施形態の流れと逆向きである。このため、本実施形態では、第一実施形態よりも、一次通液部91s内に付着した菌類等の生物を効率的に排除することができる。
【0133】
また、本実施形態では、以上の殺菌処理と同様に、酸性剤供給装置30を駆動して、一次逆浸透膜装置80Sの無機スケール分を溶解処理する。
【0134】
本実施形態でも、例えば、水処理装置のオペレータが、制御装置1に対して、各一次逆浸透膜装置80Sの運転状態を通常運転状態からバイパス運転状態への切替えを指示する。
【0135】
制御装置1は、この切替え指示を受け付けると、第一実施形態と同様、図9に示すように、バイパス切替装置の一部を構成する複数の被処理液流入仕切弁61及び複数の一次処理液仕切弁62に対して閉指令を出力すると共に、バイパス切替装置の一部を構成するバイパス仕切弁65に対して開指令を出力する(バイパス切替工程)。なお、バイパス切替装置は、前述したように、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、及びバイパス仕切弁65を有して構成されている。
【0136】
この結果、被処理液吐出主ライン52mからの海水SWは、各被処理液分岐ライン52bを介して全ての一次逆浸透膜装置80Sに流入しなくなり、バイパスライン59、一次処理液吸込主ライン56mを介して、二次給水ポンプ71に流入する(バイパス運転工程)。
【0137】
二次給水ポンプ71に流入した海水SWは、二次給水ポンプ71により、海水SWの浸透圧を超える圧力で、二次処理系70の複数の二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に圧送され、以上と同様に、複数の二次逆浸透膜装置80Mにより処理される。
【0138】
バイパス運転工程の実行中の運転状態であるバイパス運転状態では、第一実施形態と同様、全ての一次逆浸透膜装置80Sに海水SWが流入しない。このため、このバイパス運転状態では、例えば、各一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換する、又は、各一次逆浸透膜装置80Sを分解修理する作業を実行する。
【0139】
以上、本実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏する。さらに、本実施形態では、第一実施形態よりも、一次逆浸透膜装置80Sの一次通液部91s内の異物を効率的に排除することができる。
【0140】
「変形例」
以上の各実施形態では、複数の一次逆浸透膜装置80Sを備えている。しかしながら、一次逆浸透膜装置80Sは、一つでもよい。この場合でも、複数の二次逆浸透膜装置80Mにより海水SWの淡水化処理を実行しつつも、バイパス運転工程を実行することにより、一次逆浸透膜装置80Sを他の一次逆浸透膜装置80Sに交換等することができる。
【0141】
また、以上の各実施形態において、一次逆浸透膜装置80Sと二次逆浸透膜装置80Mとは、いずれもスパイラル形式の逆浸透膜装置である。しかながら、逆浸透膜装置は、スパイラル形式でなくてもよく、例えば、中空糸形式、チューブラー形式等、各種形式の逆浸透膜装置であってもよい。また、以上の各実施形態において、一次逆浸透膜装置80Sと二次逆浸透膜装置80Mとは、同一形式の逆浸透膜装置である。しかしながら、一次逆浸透膜装置80Sと二次逆浸透膜装置80Mとは、異なる形式の逆浸透膜装置であってよい。但し、二次逆浸透膜装置80Mの二次通液部91m内に堆積し得る異物の一次逆浸透膜装置80Sによる捕捉性を高めるためには、一次逆浸透膜装置80Sと二次逆浸透膜装置80Mとが同形式であることが好ましい。
【0142】
第一実施形態の逆洗切替装置は、一次処理液仕切弁62、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して構成されている。しかしながら、逆洗切替装置は、以上の三種類の仕切弁を用いなくてもよい。例えば、一次処理液仕切弁62と洗浄液仕切弁63との代りに、これらの仕切弁の機能を有する三方弁を用いてもよい。また、第二実施形態の逆洗切替装置は、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、逆通液仕切弁64、逆洗液仕切弁46及び洗浄液仕切弁63を有して構成されている。しかしながら、この逆洗切替装置は、以上の五種類の仕切弁を用いなくてもよい。例えば、被処理液流入仕切弁61と洗浄液仕切弁63との代りに、これらの仕切弁の機能を有する三方弁を用いてもよいし、一次処理液仕切弁62と逆通液仕切弁64との代りに、これらの仕切弁の機能を有する三方弁を用いてもよい。
【0143】
以上の各実施形態のバイパス切替装置は、被処理液流入仕切弁61、一次処理液仕切弁62、及びバイパス仕切弁65を有して構成されている。しかしながら、例えば、一次逆浸透膜装置80Sが一台のみの場合、被処理液流入仕切弁61及びバイパス仕切弁65の替りに、これらの仕切弁の機能を有する三方弁を用いてもよい。また、また、例えば、一次逆浸透膜装置80Sが一台のみの場合、一次処理液仕切弁62及びバイパス仕切弁65の替りに、これらの仕切弁の機能を有する三方弁を用いてもよい。
【0144】
以上の各実施形態では、一次通液部91sの上流側と下流側との間の圧力差ΔPが予め定められた値以上になると、通常運転状態から逆洗状態への切替えを行う。しかしながら、通常運転状態から逆洗状態への切替えを定期的に行うようにしてもよい。
【0145】
以上の各実施形態では、逆洗液BWとして、二次処理系70の二次逆浸透膜装置80Mから流出した透過液PWである淡水を用いている。しかしながら、一次逆浸透膜装置80Sを逆洗するための逆洗液BWとしては、被処理液である海水SWよりも溶質(食塩)濃度が低い水であれば、淡水でなくてもよく、例えば、溶質(食塩)が多少混ざっている水でもよい。
【0146】
以上の実施形態の一次処理系には、酸性剤供給装置や殺菌剤供給装置が設けられている。しかしながら、一次処理系には、酸性剤供給装置や殺菌剤供給装置を設けなくてもよい。酸性剤供給装置は、例えば、二次処理系にのみ設けてもよい。また、以上の実施形態の二次処理系には、酸性剤供給装置、殺菌剤供給装置、逆洗装置を設けていないが、これら装置を二次処理系に設けてもよい。また、いずれかの処理系に酸性剤供給装置を設ける場合には、酸性剤の供給により酸性化した液を中和するために、還元剤供給装置を設けてもよい。また、以上の一次処理系に設けた酸性剤供給装置や殺菌剤供給装置で、二次処理系の二次逆浸透膜装置80Mを殺菌、無機スケール分の溶解処理を行ってもよい。この場合、一次処理液ライン55を介して、又は、逆通液ライン54及び一次処理液ライン55を介して、酸性剤や殺菌剤を二次逆浸透膜装置80Mに送る。なお、無機スケールの堆積量は、処理対象の液の流れの上流側の逆浸透膜装置よりも下流側の逆浸透膜装置の方が多い傾向にある。このため、酸性剤供給装置は、上流側の一次逆浸透膜装置80sの一次通液部91sに酸性剤を供給するよりも、下流側の二次逆浸透膜装置80mの二次通液部91mに酸性剤を積極的に供給し得る態様が好ましい。
【0147】
以上の各実施形態の一次給水ポンプ11は、被処理液の浸透圧以下の圧力で、この被処理液を一次逆浸透膜装置に圧送する。しかしながら、一次給水ポンプは、被処理液の浸透圧より高い圧力で、この被処理液を一次逆浸透膜装置に圧送してもよい。この場合、一次逆浸透膜を通過した透過液が二次給水ポンプを介して二次逆浸透膜装置に送られることになる。
【0148】
また、以上の実施形態では、ストレーナ12、低圧給水ポンプ11及びカートリッジフィルタ13を介して、海水SWを一次逆浸透膜装置80Sに送る。しかしながら、例えば、ストレーナ12と低圧給水ポンプ11との間に、砂ろ過装置を設ける等、一次処理系中に各種装置をさらに追加してもよい。また、逆に、一次処理系からカートリッジフィルタ13等を省いてもよい。また、ストレーナ12、低圧給水ポンプ11、カートリッジフィルタ13、さらに必要に応じて設けられる砂ろ過装置等は、その設置順序を適宜変更してもよい。具体的に、例えば、低圧給水ポンプ11をストレーナ12よりも上流側に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の一態様では、水処理を長期間にわたって継続できる。
【符号の説明】
【0150】
1:制御装置、10,10a:一次処理系、11:一次給水ポンプ(一次給水装置)、12:ストレーナ、13:カートリッジフィルタ、20:殺菌剤供給装置、30:酸性剤供給装置、40:逆洗装置、41:逆洗液タンク、42:逆洗液ライン、42m:逆洗液主ライン、42b、逆洗液分岐ライン、46:逆洗液仕切弁、51:被処理液吸込ライン、52:被処理液吐出ライン(被処理液ライン)、52m:被処理液吐出主ライン、52b:被処理液分岐ライン、54:逆通液ライン、55:一次処理液ライン、56:一次処理液吸込ライン、56m:一次処理液吸込主ライン、56b:一次処理液分岐ライン、58,58a:洗浄液排出ライン、59:バイパスライン、61:被処理液流入仕切弁、62:一次処理液仕切弁、63:逆洗液仕切弁、64:逆通液仕切弁、65:バイパス仕切弁、70:二次処理系、71:二次給水ポンプ(二次給水装置)、72:透過液ポンプ、73:一次処理液吐出ライン、74:透過液ライン、75m:透過液吸込主ライン、75b:透過液吸込分岐ライン、76:透過液吐出ライン、77:透過液供給ライン、78:透過液流量調節弁、80:逆浸透膜装置、80s:一次逆浸透膜装置、80m:二次逆浸透膜装置、81:ケーシング(一次ケーシング、二次ケーシング)、82s:被処理液流入口、82m:被処理液流入口、83s:一次処理液流出口、83m:二次処理液流出口、84s:透過液流出口、84m:透過液流出口、86s:一次逆浸透膜、86m:二次逆浸透膜、89:差圧計、91s:一次通液部、91m:二次通液部、92s:一次透過部、92m:二次透過部、97:二次処理液ライン、98:濃縮液ライン、SW:海水(被処理液)、W1:一次処理液、W2:二次処理液、PW:透過液(淡水)、BW:逆洗液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9