(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のエンクロージャーと前記第2のエンクロージャーとは、前記外筐体の底面側に配置された緩衝部材を介して互いに突き合わされていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカー装置。
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットは、それぞれシール部材を介して前記エンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられていることを特徴とする請求項6〜8の何れか一項に記載のスピーカー装置。
前記複数の枝部が互いに同じ長さを有し、且つ、前記複数の枝部の隣り合う間の角度が互いに等しくなるように、前記複数の枝部が前記柱部から分岐して設けられていることを特徴とする請求項11に記載のスピーカーシステム。
前記複数のスピーカー装置が正多面体の各頂点に位置するように、前記複数の枝部が前記柱部から分岐して設けられていることを特徴とする請求項11に記載のスピーカーシステム。
前記スピーカーユニットは、シール部材を介して前記エンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられていることを特徴とする請求項11〜14の何れか一項に記載のスピーカーシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述したスピーカー装置では、エンクロージャーの開口端を介して内筐体から外筐体へと伝わる振動が発生するため、この振動が音響再現性や、設置面上に設置されたときの設置安定性に与える影響等についても考慮することが求められる。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、音響再現性及び設置安定性に優れたスピーカー装置及びスピーカーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 電気信号を振動に変換して音響を発する第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットと、
前記第1のスピーカーユニットの背面側を覆う第1のエンクロージャーと、
前記第2のスピーカーユニットの背面側を覆う第2のエンクロージャーとを備え、
前記第1のエンクロージャー及び前記第2のエンクロージャーは、一端が開口した有底筒状の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に空隙が設けられた二重構造を有し、
前記内筐体は、前記開口端の内側の内周面から全周に亘って突出された段差部を有し、
前記第1のスピーカーユニットは、前記第1のエンクロージャーの前記開口端から前記内筐体の内側に嵌め込まれた状態で
、前記段差部に接触するシール部材を介して取り付けられ、
前記第2のスピーカーユニットは、前記第2のエンクロージャーの前記開口端から前記内筐体の内側に嵌め込まれた状態で
、前記段差部に接触するシール部材を介して取り付けられ、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットは、周方向に並んで配置され、軸線方向に延長されると共に、縮径方向に弾性変形可能とされた複数のフック片を有し、
前記シール部材は、前記複数のフック片の外周部に架け渡された状態で取り付けられ、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットが前記内筐体の内側に嵌め込まれた状態において、前記複数のフック片が弾性変形した状態で前記段差部に係止されると共に、前記シール部材が弾性変形した状態で前記段差部に密着した状態となり、
前記第1のエンクロージャーと前記第2のエンクロージャーとは、前記外筐体の底面側を互いに突き合わせた状態で配置されていることを特徴とするスピーカー装置。
〔2〕 前記第1のエンクロージャーと前記第2のエンクロージャーとは、前記外筐体の底面側に配置された緩衝部材を介して互いに突き合わされていることを特徴とする前記〔1〕に記載のスピーカー装置。
〔3〕 前記第1のエンクロージャー及び前記第2のエンクロージャーを支持する支持脚と備え、
前記支持脚は、前記第1のエンクロージャーと前記第2のエンクロージャーとの突き合わせ部分を保持することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載のスピーカー装置。
〔4〕 前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットには、互いに同じスピーカーユニットを用い、
前記第1のエンクロージャー及び前記第2のエンクロージャーには、互いに同じエンクロージャーを用い、
前記第1のスピーカーユニットと前記第2のスピーカーユニットとは、互いに同じ音響を同時に発することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載のスピーカー装置。
〔5〕 前記第1のスピーカーユニットは、シール部材を介して前記第1のエンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられ、
前記第2のスピーカーユニットは、シール部材を介して前記第2のエンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられていることを特徴とする前記〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載のスピーカー装置。
〔6〕 電気信号を振動に変換して音響を発する第1のスピーカーユニット及び第2のスピーカーユニットと、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットの背面側を覆うエンクロージャーとを備え、
前記エンクロージャーは、両端が開口した筒状の外筐体と、一端が開口した有底筒状の第1の内筐体及び第2の内筐体とを有し、前記外筐体の一端側から前記第1の内筐体と、他端側から前記第2の内筐体とをそれぞれ内側に収容した状態で、それぞれの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記第1の内筐体及び前記第2の内筐体との間に空隙が設けられた二重構造を有し、
前記第1の内筐体及び前記第2の内筐体は、前記開口端の内側の内周面から全周に亘って突出された段差部を有し、
前記第1のスピーカーユニットは、一方の前記開口端から前記第1の内筐体の内側に嵌め込まれた状態で
、前記段差部に接触するシール部材を介して取り付けられ、
前記第2のスピーカーユニットは、他方の前記開口端から前記第2の内筐体の内側に嵌め込まれた状態で
、前記段差部に接触するシール部材を介して取り付けられ
、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットは、周方向に並んで配置され、軸線方向に延長されると共に、縮径方向に弾性変形可能とされた複数のフック片を有し、
前記シール部材は、前記複数のフック片の外周部に架け渡された状態で取り付けられ、
前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットが前記第1の内筐体及び前記第2の内筐体の内側に嵌め込まれた状態において、前記複数のフック片が弾性変形した状態で前記段差部に係止されると共に、前記シール部材が弾性変形した状態で前記段差部に密着した状態となることを特徴とするスピーカー装置。
〔7〕 前記エンクロージャーを支持する支持脚と備え、
前記支持脚は、前記エンクロージャーの一端側と他端側との間の中間位置を保持することを特徴とする前記〔6〕に記載のスピーカー装置。
〔8〕 前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットには、互いに同じスピーカーユニットを用い、
前記第1のスピーカーユニットと前記第2のスピーカーユニットとは、互いに同じ音響を同時に発することを特徴とする前記〔6〕又は〔7〕に記載のスピーカー装置。
〔9〕 前記第1のスピーカーユニット及び前記第2のスピーカーユニットは、それぞれシール部材を介して前記エンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられていることを特徴とする前記〔6〕〜〔8〕の何れか一項に記載のスピーカー装置。
〔10〕 前記空隙が真空層を形成していることを特徴とする前記〔1〕〜〔9〕の何れか一項に記載のスピーカー装置。
〔11〕 電気信号を振動に変換して音響を発するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットの背面側を覆うエンクロージャーとを含む複数のスピーカー装置と、
前記複数のスピーカー装置を支持する支持脚と備え、
前記エンクロージャーは、一端が開口した有底筒状の外筐体及び内筐体を有し、前記外筐体の内側に前記内筐体を収容した状態で互いの開口端が接合されると共に、前記外筐体と前記内筐体との間に空隙が設けられた二重構造を有し、
前記内筐体は、前記開口端の内側の内周面から全周に亘って突出された段差部を有し、
前記スピーカーユニットは、前記エンクロージャーの前記開口端から前記内筐体の内側に嵌め込まれた状態で
、前記段差部に接触するシール部材を介して取り付けられ、
前記スピーカーユニットは、周方向に並んで配置され、軸線方向に延長されると共に、縮径方向に弾性変形可能とされた複数のフック片を有し、
前記シール部材は、前記複数のフック片の外周部に架け渡された状態で取り付けられ、
前記スピーカーユニットが前記内筐体の内側に嵌め込まれた状態において、前記複数のフック片が弾性変形した状態で前記段差部に係止されると共に、前記シール部材が弾性変形した状態で前記段差部に密着した状態となり、
前記支持脚は、前記複数のスピーカー装置の前記外筐体の底面側をそれぞれ支持する複数の枝部と、前記複数の枝部を支持する柱部とを有することを特徴とするスピーカーシステム。
〔12〕 前記複数の枝部が互いに同じ長さを有し、且つ、前記複数の枝部の隣り合う間の角度が互いに等しくなるように、前記複数の枝部が前記柱部から分岐して設けられていることを特徴とする前記[11]に記載のスピーカーシステム。
〔13〕 前記複数のスピーカー装置が正多面体の各頂点に位置するように、前記複数の枝部が前記柱部から分岐して設けられていることを特徴とする前記〔11〕に記載のスピーカーシステム。
〔14〕 前記複数のスピーカー装置には、互いに同じスピーカー装置を用い、
前記複数のスピーカー装置は、互いに同じ音響を同時に発することを特徴とする前記〔11〕〜〔13〕の何れか一項に記載のスピーカーシステム。
〔15〕 前記スピーカーユニットは、シール部材を介して前記エンクロージャーとは非接触な状態で取り付けられていることを特徴とする前記〔11〕〜〔14〕の何れか一項に記載のスピーカーシステム。
〔16〕 前記複数の枝部と前記柱部との集合部分に緩衝部材が設けられていることを特徴とする前記〔11〕〜〔15〕の何れか一項に記載のスピーカーシステム。
〔17〕 前記空隙が真空層を形成していることを特徴とする〔11〕〜〔16〕の何れか一項に記載のスピーカーシステム。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、音響再現性及び設置安定性に優れたスピーカー装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
(スピーカー装置)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1及び
図2に示すスピーカー装置1Aについて説明する。なお、
図1は、スピーカー装置1Aの構成を示す側面図である。
図2は、
図1に示すスピーカー装置1Aの要部の構成を示す断面図である。
【0013】
スピーカー装置1Aは、
図1及び
図2に示すように、電気信号を振動に変換して音響を発する第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bと、第1のスピーカーユニット2Aの背面側を覆う第1のエンクロージャー3Aと、第2のスピーカーユニット2Bの背面側を覆う第2のエンクロージャー3Bと、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bを支持する支持脚4と備えている。
【0014】
本実施形態では、
図3に示すように、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bとして、互いに同じスピーカーユニット2を用いている。すなわち、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bは、互いに同じ形状であり、なお且つ、互いに同じ出力を有している。また、本実施形態では、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bとして、互いに同じ材質及び形状のエンクロージャー3を用いている。
【0015】
したがって、スピーカー装置1Aは、エンクロージャー3にスピーカーユニット2が嵌め込まれた2つのスピーカー装置1を組み合わせた構成である。なお、
図3は、スピーカー装置1の構成を示す断面図である。
【0016】
第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bは、その構成について特に限定されるものではなく、一般的なスピーカーユニットを用いることができる。一般に、スピーカーユニット2は、磁気回路11と、磁気回路11の磁気ギャップ中で移動自在とされたボイスコイル12と、ボイスコイル12に取り付けられた振動板13と、磁気回路11及び振動板13を支持するフレーム14とを有して、ボイスコイル12に電気信号を供給し、この電気信号に応じて振動板13を振動させることによって、音響を発することが可能となっている。
【0017】
第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、例えばステンレス鋼等からなり、一端が開口した有底筒状の外筐体5及び内筐体6を有している。第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、外筐体5の内側に内筐体6を収容した状態で互いの開口端3aが接合されると共に、これら外筐体5と内筐体6との間に真空層7が設けられた真空二重構造を有している。真空層7は、例えば、高真空に減圧(真空引き)されたチャンバー内で、外筐体5の底面中央部に設けられた脱気孔(図示せず。)を塞ぐことによって形成することができる。
【0018】
第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、円形状の底面部3bと、底面部3bの外周から起立した円筒状の胴部3cと、胴部3cの一端(開口端3a)において開口した円形状の開口部3dとを有している。
【0019】
また、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、外筐体5の底面部3bと胴部3cとを形成する底端部3eを接合した構造を有している。一方、内筐体6は、胴部と底面部とを溶接せずに、絞り加工等により胴部と底面部とを一体に成形すると、溶接不良や溶接痕等が生じないため望ましい。
【0020】
第1のスピーカーユニット2Aは、第1のエンクロージャー3Aの開口端3aを閉塞するように、開口端3aから内筐体6の内側に嵌め込まれた状態で取り付けられている。同様に、第2のスピーカーユニット2Bは、第2のエンクロージャー3Bの開口端3aを閉塞するように、開口端3aから内筐体6の内側に嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【0021】
また、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bは、シール部材8を介してそれぞれのエンクロージャー3A,3Bとは非接触な状態で取り付けられている。
【0022】
シール部材8は、例えばシリコーンゴム等のゴムやエラストマーなど弾性部材からなり、リング状に形成されている。シール部材8は、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの外周部に取り付けられて、内筐体6の内側に嵌め込まれた際に、弾性変形しながら内筐体6の内周面に全周に亘って密着した状態となる。これにより、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3B内に放出される音響が外部に漏れ出るのを防ぐと共に、不要な振動が第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bから第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bへと伝わるのを防ぐことができる。
【0023】
具体的に、内筐体6には、リング状の段差部15が開口端3a側の内周面から全周に亘って突出して設けられている。一方、シール部材8は、肉厚が一定ではなく、段差部15の頂上側の平坦面部15aに接触した薄肉の第1のシール部8aと、段差部15の入側の傾斜面部15bに接触した厚肉の第2のシール部8bとを有している。シール部材8は、肉厚を変えることで、スピーカーユニット2とエンクロージャー3とを確実に密着した状態とすることができる。
【0024】
シール部材8は、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bにそれぞれ取り付けられている。具体的に、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bは、それぞれフレーム14の外周部に一端が接続された円筒部材16を有している。円筒部材16の他端には、軸線方向に延長されると共に、縮径方向に弾性変形可能な複数のフック片17が設けられている。複数のフック片17は、円筒部材16の周方向に並んで設けられている。シール部材8は、各フック片17の外周部に架け渡された状態で取り付けられている。
【0025】
これにより、第1のスピーカーユニット2Aと第1のエンクロージャー3Aとの間をシール部材8により密閉することができる。同様に、第2のスピーカーユニット2Bと第2のエンクロージャー3Bとの間をシール部材8により密閉することができる。
【0026】
なお、本実施形態のスピーカー装置1Aでは、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3B内に放出される音響によって、内筐体6に不要な振動(共振など。)が発生するのを防ぐため、内筐体6の内側に、例えばスポンジなどの吸音材を配置してもよい。また、外筐体5及び内筐体6に振動による共振が生じないように、共振点をずらすための部材等を貼り付けることも可能である。
【0027】
第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとは、
図1及び
図2に示すように、外筐体5の底面側を互いに突き合わせた状態で配置されている。具体的に、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとは、互いの外筐体5の底端部3e同士を突き合わせた状態で、支持脚4に対して一体に取り付けられている。なお、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとは、互いの底端部3eを接着剤により一体に接合した構成としてもよい。
【0028】
支持脚4は、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとの突き合わせ部分を保持する保持枠4aと、保持枠4aを支持する柱部4bと、柱部4bを支持する脚部4cとを有している。保持枠4aは、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの胴部3cに対応して、円形枠状に形成されている。柱部4bは、脚部4cの中央から立設した状態で、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bが水平となるように、保持枠4aと接続されている。脚部4cは、設置面上に設置されたときの設置安定性を確保するため、柱部4bを中心に周囲に脚を伸ばした形状を有している。
【0029】
以上のような構成を有するスピーカー装置1Aでは、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から放出される音響によって第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの内筐体6が振動しても、真空層7によって内筐体6から外筐体5への振動の伝播が阻止される。これにより、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bを介して外部に伝播する振動を抑制することができる。さらに、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの軽量化を図ることも可能である。
【0030】
ところで、本実施形態のスピーカー装置1Aでは、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとが、外筐体5の底面側を互いに突き合わせた状態で配置されている。具体的には、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとの互いの外筐体5の底端部3e同士が突き合わされている。
【0031】
この場合、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から放出される音響によって第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの内筐体6が振動したときに、第1のエンクロージャー3Aの開口端3aを介して内筐体6から外筐体5へと伝わる振動と、第2のエンクロージャー3Bの開口端3aを介して内筐体6から外筐体5へと伝わる振動とが互いに打ち消し合う。
【0032】
これにより、本実施形態のスピーカー装置1Aでは、不要な振動を抑制できるため、優れた音響再現性と設置安定性とを得ることが可能である。
【0033】
具体的に、本実施形態のスピーカー装置1Aを用いて、第1のスピーカーユニット2Aのみに、100Hzの電気信号を流したところ、第1のエンクロージャー3Aの外面(外筐体5)を触ると、微妙に振動していることを確認した。その後、第2のスピーカーユニット2Bにも同時に同じ電気信号を流したところ、第1のエンクロ−ジャー3Aの振動が収まることを確認した。また、第2のエンクロージャー3Bも同様に振動していないことを確認した。さらに、この状態から、第1のスピーカーユニット2Aへの電気信号を止め、第2のスピーカーユニット3Bのみに電気信号を流したところ、第2のエンクロージャー3Bの外面(外筐体5)が振動していることを確認した。
【0034】
次に、電気信号を1000Hzに変更して同じ操作を行ったところ、一方のスピーカーユニット2A(2B)のみに電気信号を流した場合には、電気信号を流した方のエンクロージャー3A(3B)のみが振動し、両方のスピーカーユニット2A,2Bに電気信号を流した場合には、両方のエンクロージャー3A,3Bの振動が収まることを確認した。また、一方のスピーカーユニット2A(2B)のみに電機信号を流した場合の振動は、低周波数であるほど顕著であることを確認した。
【0035】
(変形例)
なお、第1の実施形態では、上記
図1及び
図2に示すスピーカー装置1Aの構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0036】
具体的に、上記スピーカー装置1Aでは、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの形状を、例えば
図4及び
図5に示すような形状とすることが可能である。すなわち、
図4及び
図5に示す第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、互いに突き合わされた底面部3e側において縮径された形状を有している。なお、
図4は、スピーカー装置1Aの変形例を示す側面図である。
図5は、
図4に示すスピーカー装置1Aの要部の構成を示す断面図である。
【0037】
一方、上記スピーカー装置1Aでは、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの形状を、例えば
図6及び
図7に示すような形状とすることが可能である。すなわち、
図6及び
図7に示す第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bは、互いに突き合わされた底面部3e側において拡径された形状を有している。なお、
図6は、スピーカー装置1Aの変形例を示す側面図である。
図7は、
図6に示すスピーカー装置1Aの要部の構成を示す断面図である。
【0038】
このように、上記スピーカー装置1Aでは、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの形状について、適宜変更を加えることが可能である。また、第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの形状を変更するのに合わせて、支持脚4についても適宜変更を加えることが可能である。
【0039】
また、上記スピーカー装置1Aは、例えば
図8及び
図9に示すように、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとが、外筐体5の底面側に配置された緩衝部材(スペーサー)9を介して互いに突き合わされた構成としてもよい。なお、
図8は、スピーカー装置1Aの変形例を示す側面図である。
図9は、
図8に示すスピーカー装置1Aの要部の構成を示す断面図である。
【0040】
この場合、第1のエンクロージャー3Aの開口端3aを介して内筐体6から外筐体5へと伝わる振動と、第2のエンクロージャー3Bの開口端3aを介して内筐体6から外筐体5へと伝わる振動とが緩衝部材9を介して互いに打ち消し合う。また、緩衝部材9は、底端部3eと底面部3bとで構成される閉空間内に隙間がないように配置することが好ましい。これにより、
図8及び
図9に示すスピーカー装置1Aでは、緩衝部材9により不要な振動を抑制できるため、優れた音響再現性と設置安定性とを得ることが可能である。なお、緩衝部材9の材質については、振動を減衰(吸収)するものであればよく、例えばエラストマーや樹脂などを用いることができる。
【0041】
さらに、上記スピーカー装置1Aでは、例えば
図10に示すように、支持脚4の保持枠4aの内側に保持された緩衝部材9を介して、第1のエンクロージャー3Aと第2のエンクロージャー3Bとの底面側が互いに突き合わされた構成としてもよい。
【0042】
[第2の実施形態]
(スピーカー装置)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図11及び
図12に示すスピーカー装置1Bについて説明する。なお、
図11は、スピーカー装置1Bの構成を示す側面図である。
図12は、
図11に示すスピーカー装置1Bの要部の構成を示す断面図である。また、以下の説明では、上記スピーカー装置1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0043】
スピーカー装置1Bは、
図11及び
図12に示すように、電気信号を振動に変換して音響を発する第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bと、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側を覆うエンクロージャー3Cと、エンクロージャー3Cを支持する支持脚4と備えている。
【0044】
すなわち、このスピーカー装置1Bは、上記スピーカー装置1Aが備える第1のエンクロージャー3A及び第2のエンクロージャー3Bの代わりに、エンクロージャー3Cを備えた構成である以外は、上記スピーカー装置1Aと基本的に同じ構成である。
【0045】
エンクロージャー3Cは、両端が開口した円筒状の外筐体5Aと、一端が開口した有底筒状の第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bとを有している。エンクロージャー3Cは、外筐体5Aの一端側から第1の内筐体6Aと、他端側から第2の内筐体6Bとをそれぞれ内側に収容した状態で、それぞれの開口端3aが接合されると共に、外筐体5Aと第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bとの間に真空層7が設けられた真空二重構造を有している。また、エンクロージャー3Cは、円筒状の胴部3cと、胴部3cの両端(開口端3a)において開口した円形状の開口部3dとを有している。
【0046】
第1の内筐体6Aと第2の内筐体6Bとは、外筐体5Aの内側で互いに離間した状態で配置されている。さらに、第1の内筐体6Aと第2の内筐体6Bとは、真空層7を挟んで互いの底面側を対向させている。
【0047】
第1のスピーカーユニット2Aは、一方の開口端3aから第1の内筐体6Aの内側に嵌め込まれた状態で取り付けられている。同様に、第2のスピーカーユニット2Bは、他方の開口端3aから第2の内筐体6Bの内側に嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【0048】
また、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bは、シール部材8を介してそれぞれのエンクロージャー3Cとは非接触な状態で取り付けられている。これにより、不要な振動が第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bからエンクロージャー3Cへと伝わるのを防ぐことができる。
【0049】
支持脚4は、エンクロージャー3Cの一端側と他端側との間の中間位置を保持している。すなわち、支持脚4の保持枠4aは、エンクロージャー3Cの胴部3cの中間部分を保持している。
【0050】
以上のような構成を有するスピーカー装置1Bでは、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から放出される音響によってエンクロージャー3Cの第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bが振動しても、真空層7によって第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bから外筐体5Aへの振動の伝播が阻止される。これにより、エンクロージャー3Cを介して外部に伝播する振動を抑制することができる。さらに、エンクロージャー3の軽量化を図ることも可能である。
【0051】
ところで、本実施形態のスピーカー装置1Bでは、エンクロージャー3の両端から第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bの内側に第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bが嵌め込まれた状態で取り付けられている。
【0052】
この場合、第1のスピーカーユニット2A及び第2のスピーカーユニット2Bの背面側から放出される音響によって第1の内筐体6A及び第2の内筐体6Bが振動したときに、エンクロージャー3Cの一方の開口端3aを介して第1の内筐体6Aから外筐体5Aへと伝わる振動と、エンクロージャー3Cの他方の開口端3aを介して第2の内筐体6Bから外筐体5Aへと伝わる振動とが互いに打ち消し合う。
【0053】
これにより、本実施形態のスピーカー装置1Bでは、不要な振動を抑制できるため、優れた音響再現性と設置安定性とを得ることが可能である。
【0054】
(変形例)
なお、第2の実施形態では、上記
図11及び
図12に示すスピーカー装置1Bの構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
具体的に、上記スピーカー装置1Bでは、エンクロージャー3Cの形状を、例えば
図13及び
図14に示すような形状とすることが可能である。すなわち、
図13及び
図14に示すエンクロージャー3Cは、支持脚4の保持枠4aの保持されるエンクロージャー3Cの中間部分において縮径された形状を有している。なお、
図13は、スピーカー装置1Bの変形例を示す側面図である。
図14は、
図13に示すスピーカー装置1Bの要部の構成を示す断面図である。
【0056】
一方、上記スピーカー装置1Bでは、エンクロージャー3Cの形状を、例えば
図15及び
図16に示すような形状とすることが可能である。すなわち、
図15及び
図16に示すエンクロージャー3Cは、支持脚4の保持枠4aの保持されるエンクロージャー3Cの中間部分において拡径された形状を有している。なお、
図15は、スピーカー装置1Bの変形例を示す側面図である。
図16は、
図15に示すスピーカー装置1Bの要部の構成を示す断面図である。
【0057】
このように、上記スピーカー装置1Bでは、エンクロージャー3Cの形状について、適宜変更を加えることが可能である。また、エンクロージャー3Cの形状を変更するのに合わせて、支持脚4についても適宜変更を加えることが可能である。
【0058】
さらに、上記スピーカー装置1Bでは、例えば
図17に示すように、支持脚4の保持枠4aの内側に保持されるエンクロージャー3Cの中間部分を縮径することによって、保持枠4aの外周面がエンクロージャー3Cの外周面と面一となる構成としてもよい。
【0059】
[第3の実施形態]
(スピーカーシステム)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図18に示すスピーカーシステム100について説明する。なお、
図18は、スピーカーシステム100の構成を示す側面図である。また、以下の説明では、上記スピーカー装置1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0060】
スピーカーシステム100は、
図18に示すように、電気信号を振動に変換して音響を発するスピーカーユニット2と、スピーカーユニット2の背面側を覆うエンクロージャー3とを含む複数(本実施形態では2つ)のスピーカー装置1と、複数のスピーカー装置1を支持する支持脚40と備えている。なお、スピーカー装置1は、
図3に示す構成と同じである。
【0061】
支持脚40は、複数のスピーカー装置1の外筐体5の底面側をそれぞれ支持する複数(本実施形態では2本)の枝部41と、複数の枝部41を支持する柱部42と、柱部42を支持する脚部43とを有している。
【0062】
複数の枝部41は、互いに同じ材質及び形状(長さや太さ)を有している。また、複数の枝部41は、隣り合う間の角度が互いに等しくなるように、柱部42から分岐して設けられている。柱部42は、脚部43の中央から立設した状態で設けられている。脚部43は、設置面上に設置されたときの設置安定性を確保するため、柱部42を中心に周囲に脚を伸ばした形状を有している。
【0063】
以上のような構成を有するスピーカーシステム100では、それぞれのスピーカー装置1において、スピーカーユニット2の背面側から放出される音響によってエンクロージャー3の内筐体6が振動しても、真空層7によって内筐体6から外筐体5への振動の伝播が阻止される。これにより、エンクロージャー3を介して外部に伝播する振動を抑制することができる。さらに、エンクロージャー3の軽量化を図ることも可能である。
【0064】
ところで、本実施形態のスピーカーシステム100では、柱部42から互いに同じ長さ且つ同じ角度で分岐した複数の枝部41によって、それぞれスピーカー装置1の外筐体5の底面側が支持されている。
【0065】
この場合、それぞれのスピーカー装置1において、スピーカーユニット2の背面側から放出される音響によって内筐体6が振動したときに、エンクロージャー3の開口端3aを介して内筐体6から外筐体5へと伝わる振動が、それぞれの枝部41を介して互いに打ち消し合う。
【0066】
これにより、本実施形態のスピーカーシステム100では、不要な振動を抑制できるため、優れた音響再現性と設置安定性とを得ることが可能である。
【0067】
(変形例)
なお、第3の実施形態では、上記
図18に示すスピーカーシステム100の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0068】
例えば、
図19に示すスピーカーシステム100Aのような構成であってもよい。なお、
図19は、スピーカーシステム100Aの構成を示す側面図である。すなわち、このスピーカーシステム100Aは、3つのスピーカー装置1を備えた構成であり、それぞれのスピーカー装置1は、柱部42から互いに同じ長さ且つ同じ角度で分岐した3本の枝部41によって、それぞれのエンクロージャー3(外筐体5)の底面側が支持されている。
【0069】
また、
図20に示すスピーカーシステム100Bのような構成であってもよい。なお、
図20は、スピーカーシステム100Bの構成を示す斜視図である。すなわち、このスピーカーシステム100Bは、4つのスピーカー装置1を備えた構成であり、それぞれのスピーカー装置1は、柱部42から互いに同じ長さ且つ同じ角度で分岐した4本の枝部41によって、それぞれのエンクロージャー3(外筐体5)の底面側が支持されている。さらに、4つのスピーカー装置1は、正四面体の各頂点に位置するように、複数の枝部41により支持されている。
【0070】
このように、本実施形態のスピーカーシステム100,100A,100Bでは、スピーカー装置1の数や配置等について、適宜変更を加えることが可能である。また、スピーカー装置1の数を変更するのに合わせて、複数のスピーカー装置1を平面状に配置する際には、各スピーカー装置1の枝部41の隣り合う角度が互いに等しくなるように配置する。また、複数のスピーカー装置1が正多面体の各頂点に位置するように、複数の枝部41が柱部42から分岐して設けられた構成とすることも可能である。
【0071】
また、本実施形態のスピーカーシステム100,100A,100Bでは、複数の枝部41と柱部42との集合部分に緩衝部材(図示せず。)を設け、この緩衝部材を介して複数の枝部41から柱部42へと伝わる振動を互いに打ち消し合うようにしてもよい。
【0072】
なお、本発明は、上記第1〜第3の実施形態の構成に必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本発明を適用したスピーカー装置は、上述した外筐体と内筐体との間に真空層が設けられた真空二重構造を有するエンクロージャーを用いる場合に限らず、外筐体と内筐体との間に空隙が設けられた二重構造を有するエンクロージャーを用いることも可能である。
【0073】
また、本発明を適用したスピーカー装置及びスピーカーシステムでは、エンクロージャーを保持する本体部を設け、この本体部からエンクロージャー(外筐体)の一部を露出した構成とすることが好ましい。この場合、本体部の内側でスピーカーユニットに接続された配線などを引き回すことが可能である。
【0074】
この場合、上述したエンクロージャーが真空二重構造を有するため、真空層によって内筐体から外筐体への振動の伝播が阻止されるだけでなく、外筐体から内筐体への振動の伝播も阻止できる。したがって、エンクロージャー(外筐体)の少なくとも一部を外部に露出した状態で、エンクロージャーを本体部に保持することによって、更なる小型化及び軽量化が可能である。
【0075】
また、本発明は、例えばBluetooth(登録商標)などの近距離無線規格に準じた無線通信によりパソコンやスマートフォンなどのデジタル機器で再生された音楽等をワイヤレスで聴くことができる携帯可能な小型スピーカー装置及びスピーカーシステムに適用することが可能である。この場合、上述した本発明を適用したスピーカー装置及びスピーカーシステムの構成とは別に、支持脚や本体部の内側に、バッテリーや通信モジュール、制御回路基板等を配置した構成とすればよい。
【0076】
また、本体部には、スピーカーユニットが発する音響を外部に放出する放音部や、電源のON/OFFを切り替える電源スイッチなどを設けることができる。なお、スピーカーユニットの音量調整については、上述したデジタル機器側での操作によってワイヤレスでの調整が可能であるが、本体部側にスピーカーユニットの音量を調整する音量スイッチを設けることも可能である。
【0077】
また、本体部には、それ以外にも、例えばMini−USB(登録商標)などの充電用の接続ポートや、別のスピーカー装置などに接続するためのAUX出力ジャック、別のデジタル機器などに接続するためのAUX入力ジャックなどが設けられているが、これらに特に限定されるものではない。
【0078】
また、本発明を適用したスピーカー装置及びスピーカーシステムは、上述した支持脚により設置面上に設置する場合に限らず、支持脚を介して壁面に設置したり、天井から吊り下げたりすることも可能である。この場合、振動を考慮せずに従来より安価に設置することが可能である。