(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記培地交換部は、前記インキュベータ部に隣接して設けられており、前記培養容器が前記インキュベータ部に収容されたまま、前記培地交換用カートリッジを介して前記培養容器の培地交換が可能である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養装置。
前記液供給流路は、前記培地供給部に連結可能な第1流入口と、前記培養容器の流入口に連結可能な第1流出口と、前記第1流入口と前記第1流出口とを連通する液貯蔵室と、前記液貯蔵室に連通する通気口と、を有し、
前記液回収流路は、前記培養容器の流出口に連結可能な第2流入口と、前記培地回収部に連結可能な第2流出口と、前記第2流入口と前記第2流出口とを連通する複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含む曲線流路と、を有する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の細胞培養装置。
前記液供給流路は、前記培地供給部に連結可能な第1流入口と、前記培養容器の流入口に連結可能な第1流出口と、前記第1流入口と前記第1流出口とを連通する液貯蔵室と、前記液貯蔵室に連通する通気口と、を有し、
前記液回収流路は、前記培養容器の流出口に連結可能な第2流入口と、前記培地回収部に連結可能な第2流出口と、前記第2流入口と前記第2流出口とを連通する複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含む曲線流路と、を有する
ことを特徴とする請求項10に記載の培地交換用カートリッジ。
液供給流路および液回収流路を有する培地交換用カートリッジを培地供給部に連結し、前記培地供給部から前記液供給流路に液体培地を供給し、前記培地交換用カートリッジを前記培地供給部から分離する培地供給工程と、
前記培地交換用カートリッジを閉鎖系の培養容器に連結し、前記液供給流路内の液体培地を前記培養容器内に流入させるとともに前記培養容器内の液体培地を前記液回収流路内に流出させ、前記培地交換用カートリッジを前記培養容器から分離する培地交換工程と、 前記培地交換用カートリッジを培地回収部に連結し、前記液回収流路から前記培地回収部に液体培地を回収し、前記培地交換用カートリッジを前記培地回収部から分離する培地回収工程と、
を備えたことを特徴とする培地交換方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から提供されている培地交換機構では、培地交換ステージ周辺に培地貯蔵容器や回収容器、培地温度調整器、培地用時調整器などの他の機器が集中するため、物理的な制約により培養容器と培地貯蔵容器等をつなぐ液流路が冗長化する。また、この液流路の内壁には使用しているうちに徐々にタンパクが付着して汚染されるため、液流路を定期的に交換する必要があるが、この液流路がチューブであることから交換の自動化が困難であり、また機器集中のために作業性の確保も難しい。
【0005】
さらに、従来から提供されている培地交換機構では、1つの培養容器に対して培地供給、培地交換、培地回収、流路洗浄の一連の処理を終えるまで、次の培養容器に対する処理を開始することができず、複数の培養容器を処理する場合の作業時間が長時間化する。
【0006】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、液流路の短縮化および自動交換が可能な細胞培養装置、培地交換用カートリッジ、および培地交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による細胞培養装置は、
閉鎖系の培養容器を収容可能なインキュベータ部と、
液供給流路および液回収流路を有し、前記培養容器に対して着脱可能な培地交換用カートリッジと、
前記培地交換用カートリッジの前記液供給流路に液体培地を供給する培地供給部と、
前記培地交換用カートリッジが前記培養容器に連結された状態で、前記液供給流路内の液体培地を前記培養容器内に流入させるとともに前記培養容器内の液体培地を前記液回収流路に流出させる培地交換部と、
前記培地交換用カートリッジの前記液回収流路から液体培地を回収する培地回収部と、を備え、
前記培地交換用カートリッジは、前記培地供給部と前記培地交換部と前記培地回収部との間で移動可能である。
【0008】
本発明による細胞培養装置は、
前記培地交換用カートリッジを、前記培地供給部と前記培地交換部と前記培地回収部との間で移動させるカートリッジ搬送部をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明による細胞培養装置において、
前記培地交換用カートリッジの前記液供給流路および前記液回収流路をそれぞれ洗浄する流路洗浄部をさらに備え、
前記培地交換用カートリッジは、前記培地供給部と前記培地交換部と前記培地回収部と前記流路洗浄部との間で移動可能であってもよい。
【0010】
本発明による細胞培養装置において、
前記培地交換部は、前記インキュベータ部に隣接して設けられており、前記培養容器が前記インキュベータ部に収容されたまま、前記培地交換用カートリッジを介して前記培養容器の培地交換が可能であってもよい。
【0011】
本発明による細胞培養装置において、
前記培地回収部には、回収された液体培地を分析する培地分析部が設けられていてもよい。
【0012】
本発明による細胞培養装置は、
未使用の前記培地交換用カートリッジを複数保管するカートリッジ保管部と、
使用済みの前記培地交換用カートリッジを回収するカートリッジ回収部と、
をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明による細胞培養装置において、
前記液供給流路は、前記培地供給部に連結可能な第1流入口と、前記培養容器の流入口に連結可能な第1流出口と、前記第1流入口と前記第1流出口とを連通する液貯蔵室と、前記液貯蔵室に連通する通気口と、を有し、
前記液回収流路は、前記培養容器の流出口に連結可能な第2流入口と、前記培地回収部に連結可能な第2流出口と、前記第2流入口と前記第2流出口とを連通する複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含む曲線流路と、を有してもよい。
【0014】
本発明による細胞培養装置において、
前記曲線流路は、蛇行状または渦巻き状の形状を有してもよい。
【0015】
本発明による細胞培養装置において、
前記第1流出口と前記第2流入口とは互いに隣接して設けられていてもよい。
【0016】
本発明による培地交換用カートリッジは、
液供給流路および液回収流路を備え、
閉鎖系の培養容器に対して着脱可能であるとともに、細胞培養装置の培地供給部と培地交換部と培地回収部との間で移動可能である。
【0017】
本発明による培地交換用カートリッジにおいて、
前記液供給流路は、前記培地供給部に連結可能な第1流入口と、前記培養容器の流入口に連結可能な第1流出口と、前記第1流入口と前記第1流出口とを連通する液貯蔵室と、前記液貯蔵室に連通する通気口と、を有し、
前記液回収流路は、前記培養容器の流出口に連結可能な第2流入口と、前記培地回収部に連結可能な第2流出口と、前記第2流入口と前記第2流出口とを連通する複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含む曲線流路と、を有してもよい。
【0018】
本発明による培地交換用カートリッジにおいて、
前記曲線流路は、蛇行状または渦巻き状の形状を有してもよい。
【0019】
本発明による培地交換用カートリッジにおいて、
前記第1流出口と前記第2流入口とは互いに隣接して設けられていてもよい。
【0020】
本発明による培地交換方法は、
液供給流路および液回収流路を有する培地交換用カートリッジを培地供給部に連結し、前記培地供給部から前記液供給流路に液体培地を供給し、前記培地交換用カートリッジを前記培地供給部から分離する培地供給工程と、
前記培地交換用カートリッジを閉鎖系の培養容器に連結し、前記液供給流路内の液体培地を前記培養容器内に流入させるとともに前記培養容器内の液体培地を前記液回収流路内に流出させ、前記培地交換用カートリッジを前記培養容器から分離する培地交換工程と、 前記培地交換用カートリッジを培地回収部に連結し、前記液回収流路から前記培地回収部に液体培地を回収し、前記培地交換用カートリッジを前記培地回収部から分離する培地回収工程と、
を備える。
【0021】
本発明による培地交換方法は、
前記培地回収工程の後、前記培地交換用カートリッジの前記液供給流路および前記液回収流路をそれぞれ洗浄する洗浄工程をさらに備えてもよい。
【0022】
本発明による培地交換方法において、
前記培地交換工程は、前記培養容器がインキュベータ部に収容された状態で行われてもよい。
【0023】
本発明による培地交換方法は、
前記培地回収工程の後、回収された液体培地を分析する培地分析工程をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所定量の液体培地を収容可能な培地交換用カートリッジが培地供給部と培地交換部と培地回収部との間で移動することで、培養容器が培地供給部および培地回収部から分離された状態で培地交換を行うことができる。このため、液流路の短縮化が可能である。また、液流路が培地交換用カートリッジ、すなわちカートリッジ式の部品に形成されているため、液流路の交換の自動化が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について具体例を説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0027】
本実施の形態による培養装置は、あらゆる細胞を培養するために用いることができ、(ヒト)iPS細胞、(ヒト)ES細胞等の多能性幹細胞、骨髄間質細胞(MSC)等の軟骨細胞、樹状細胞等の様々な細胞を培養する際に用いることができる。本実施の形態では、以下、iPS細胞を自動で培養する自動培養システムを用いて説明するが、これはあくまでも一例であることには留意が必要である。つまり、本実施の形態のように自動で細胞を培養するものでなくても、本実施の形態による培養装置を用いることができることには留意が必要である。
【0028】
<全体構成>
まず、本実施の形態による自動培養システムの装置構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、本実施の形態による自動培養システムは、原料細胞を保管する原料保管装置10と、細胞等を密閉状態で収容した搬送容器70(
図3参照)を搬送する容器搬送部60と、容器搬送部60で搬送された搬送容器70を受け取り、搬送容器70から細胞を収容した閉鎖系の培養容器75を取り出し、取り出した培養容器75内の細胞を内部で培養する細胞培養装置20,30と、を備えている。
【0030】
本実施の形態では、上述したようにiPS細胞を用いた態様で説明することから、原料保管装置10はiPS細胞を樹立するiPS細胞樹立装置11を含んでいる。なお、原料保管装置10は、他にも、ユニット恒温槽、遠心分離機、自動血球計数装置、自動磁気細胞分離器、フローサイトメーター、遺伝子導入装置等を含んでいる。
【0031】
本実施の形態の細胞培養装置20,30は、iPS細胞を自動で培養する複数(
図1に示した態様では4つ)のiPS細胞自動培養装置20と、iPS細胞から分化した分化細胞を自動で培養する複数(
図1に示した態様では8つ)の分化細胞自動培養装置30と、を有している。なお、本実施の形態において、単に「細胞培養装置」と述べたときは、iPS細胞自動培養装置20、分化細胞自動培養装置30、又は、iPS細胞自動培養装置20及び分化細胞自動培養装置30の両方のことを意味している。また、特に断りが無い限り、本実施の形態において単に「細胞」と述べたときは、iPS細胞の元となる体細胞等の原料細胞、iPS細胞、分化細胞、又は、原料細胞、iPS細胞及び分化細胞のいずれか2つもしくは全部のことを意味している。
【0032】
図3に示すように、搬送容器70は培養容器75を載置するための複数(
図3では8つ)の棚71を有しており、各棚71に培養容器75が載置される。そして、複数の培養容器75が搬送容器70内に収容された状態で、搬送容器70が容器搬送部60によって搬送されることとなる。
【0033】
iPS細胞自動培養装置20は、
図1に示すように筐体22と、
図2に示すように、iPS細胞の培養に伴って変化する液体培地成分を分析する培地分析部24と、iPS細胞を検査するとともに状態の悪いiPS細胞の除去を行う細胞検査除去部25と、液体培地やタンパク質分解酵素を含む液体等を保管するとともに供給し、iPS細胞を播種する前の前処理を行ったり、iPS細胞を播種したり、iPS細胞を回収したりする液体保管供給部26と、培養容器75を保持し、温度、湿度及び気体濃度のいずれか一つ又はこれらの全てを自動で調整するインキュベータ部27と、iPS細胞自動培養装置20内で用いられた使用済み液体培地、使用済み洗浄液、使用済み試薬等を含む廃液を筐体22から下方に排出するための排出部28と、を有している。また、iPS細胞自動培養装置20は、iPS細胞自動培養装置20内で培養容器75等を搬送する装置内搬送部23も有している。なお、上述した液体保管供給部26は、培養容器75の上下を反転させる機能も有している。ちなみに、本実施の形態のように閉鎖系の培養容器75を用いる場合には、インキュベータ部27内の湿度の管理に関しては開放系の培養容器を用いる場合に比べて厳密なレベルでの管理が必ずしも必要ではないことから、細胞培養環境の管理を簡素化することができる。また、このような閉鎖系の培養容器75を採用することで、空気中からのコンタミネーションが起こるおそれがなく、搬送も容易となる。
【0034】
上述した液体保管供給部26は、液体培地を図示しない流入口から培養容器75内に適宜供給することで、培養容器75内の古い液体培地を新しい液体培地に自動で入れ替える。また、細胞検査除去部25は、取得されたiPS細胞の情報に基づいて、培養容器75の図示しないフィルムの表面に塗られたECM(Extracellular matrix)から不良iPS細胞を選択的に剥離させる。その後で、液体保管供給部26が液体培地を流入口から培養容器75内に供給することで、浮遊した不良iPS細胞を図示しない流出口を介して培養容器75から押し出す。なお、培養容器75内のiPS細胞を選択的に剥離させる手法としては、iPS細胞に超音波や光をあてるという手法、培養容器75の外方から物理的な力を与える手法等をとることができる。また、このような手法を用いる際には、タンパク質分解酵素を併用してもよい。
【0035】
また、液体保管供給部26は、タンパク質分解酵素を流入口から培養容器75内に適宜供給することで培養容器75のフィルムの表面に塗られたECMからiPS細胞を剥離させる。その後で、液体保管供給部26が液体培地を流入口から培養容器75内に供給することで、浮遊したiPS細胞が流出口を介して培養容器75から押し出される。押し出されたiPS細胞は、薄めて懸濁液とした後で複数の別の培養容器75内に収容される(播種される)。このようにして、iPS細胞自動培養装置20はiPS細胞の継代を自動で行う。
【0036】
iPS細胞自動培養装置20内の温度は、インキュベータ部27によって、例えば温度が約37℃となるように調整される。また、iPS細胞自動培養装置20内の気体濃度は、インキュベータ部27によって、二酸化炭素や窒素を適宜加えることで調整される。また、必要に応じて、インキュベータ部37によって湿度が約100%となるように調整されてもよい。
【0037】
分化細胞自動培養装置30は、
図1に示すように筐体32と、
図2に示すように、分化細胞の培養に伴って変化する液体培地成分を分析する培地分析部34と、分化細胞を検査するとともに状態の悪い分化細胞の除去を行う細胞検査除去部35と、液体培地やタンパク質分解酵素を含む液体等を保管するとともに供給し、分化細胞を播種する前の前処理を行ったり、分化細胞を播種したり、分化細胞を回収したりする液体保管供給部36と、培養容器75を保持し、温度、湿度及び気体濃度のいずれか一つ又はこれらの全てを自動で調整するインキュベータ部37と、分化細胞自動培養装置30内で用いられた使用済み液体培地、使用済み洗浄液、使用済み試薬等を含む廃液を筐体32から下方に排出するための排出部38と、を有している。また、分化細胞自動培養装置30は、分化細胞自動培養装置30内で培養容器75等を搬送する装置内搬送部33も有している。
【0038】
上述した液体保管供給部36は、液体培地を流入口から培養容器75に適宜供給することで、培養容器75内の古い液体培地を新しい液体培地に自動で入れ替える。また、細胞検査除去部35は、取得された分化細胞の情報に基づいて、培養容器75のフィルム77の表面に塗られたECMから不良分化細胞を選択的に剥離させる。その後で、液体保管供給部36が液体培地を流入口から培養容器75内に供給することで、浮遊した不良分化細胞を流出口を介して培養容器75から押し出す。なお、培養容器75内の分化細胞を選択的に剥離させる手法としては、分化細胞に超音波や光をあてるという手法、培養容器75の外方から物理的な力を与える手法等をとることができる。また、このような手法を用いる際には、タンパク質分解酵素を併用してもよい。
【0039】
また、液体保管供給部36は、タンパク質分解酵素を流入口から培養容器75内に適宜供給することで培養容器75のフィルムの表面に塗られたECMから分化細胞を剥離させる。その後で、液体保管供給部36が液体培地を流入口から培養容器75内に供給することで、浮遊した分化細胞が流出口を介して培養容器75から押し出される。押し出された分化細胞は、薄めて懸濁液とした後で複数の別の培養容器75内に収容される(播種される)。このようにして、分化細胞自動培養装置30は分化細胞の継代を自動で行う。
【0040】
分化細胞自動培養装置30内の温度は、インキュベータ部37によって、例えば温度が約37℃となるように調整される。また、分化細胞自動培養装置30内の気体濃度は、インキュベータ部37によって、二酸化炭素や窒素や酸素を適宜加えることで調整される。なお、分化細胞自動培養装置30の液体保管供給部36は、分化を誘導させる際に、分化誘導因子を含む液体培地を供給してもよい。また、必要に応じて、インキュベータ部37によって湿度が約100%となるように調整されてもよい。
【0041】
図2に示すように、iPS細胞自動培養装置20は、培地分析部24、細胞検査除去部25、液体保管供給部26、インキュベータ部27、排出部28、装置内搬送部23の各々に通信接続され、これらを制御する制御部29を有する。この制御部29は、iPS細胞自動培養装置20に関して、ステータスを管理したり、ログを管理したり、培養スケジュールを管理したり、ユーザインターフェース機能を果たしたりする。また、分化細胞自動培養装置30は、培地分析部34、細胞検査除去部35、液体保管供給部36、インキュベータ部37、排出部38、装置内搬送部33の各々に通信接続され、これらを制御する制御部39を有する。この制御部39は、分化細胞自動培養装置30に関して、ステータスを管理したり、ログを管理したり、培養スケジュールを管理したり、ユーザインターフェース機能を果たしたりする。
【0042】
なお、上述したiPS細胞樹立装置11も、iPS細胞自動培養装置20及び分化細胞自動培養装置30と同様の構成となっている。つまり、iPS細胞樹立装置11は、
図1に示すように筐体12bと、
図2に示すように、液体培地を分析する培地分析部14と、原料細胞を検査するとともに状態の悪い原料細胞の除去を行う細胞検査除去部15と、液体培地やタンパク質分解酵素を含む液体等を保管するとともに供給する液体保管供給部16と、筐体12b内の温度、湿度及び気体濃度のいずれか一つ又はこれらの全てを自動で調整するインキュベータ部17と、iPS細胞樹立装置11内で用いられた使用済み液体培地、使用済み洗浄液、使用済み試薬等を含む廃液を筐体12bから下方に排出するための排出部18と、を有している。また、iPS細胞樹立装置11は、iPS細胞樹立装置11内で培養容器75等を搬送する装置内搬送部13も有している。また、iPS細胞樹立装置11は、培地分析部14、細胞検査除去部15、液体保管供給部16、インキュベータ部17、排出部18、装置内搬送部13の各々に通信接続され、これらを制御する制御部19を有する。なお、各制御部19,29,39は、例えばパソコン等の外部装置90に接続されている。
【0043】
本実施の形態の容器搬送部60は、
図3に示すように、搬送容器70を下方にぶら下げるようにして保持する保持部61を有し、天井に設けられたレール65に沿って移動するようになっている。
【0044】
図1に示すように、iPS細胞自動培養装置20は、搬送容器70から培養容器75を搬入するための搬入部21を有している。この搬入部21は、培養容器75に収容されたiPS細胞を搬入するとともに培養されたiPS細胞を搬出するための細胞用搬入出部(図示せず)と、他の密閉容器に収容された資材を搬入するための資材用搬入部(図示せず)と、を有していてもよい。同様に、
図1に示すように、分化細胞自動培養装置30は、搬送容器70から培養容器75を搬入するための搬入部31を有している。この搬入部31も、培養容器75に収容されたiPS細胞を搬入するとともに培養された分化細胞を搬出するための細胞用搬入出部(図示せず)と、他の密閉容器に収容された資材を搬入するための資材用搬入部(図示せず)と、を有していてもよい。本実施の形態において資材とは、液体培地、試薬、洗浄液、培養プレート、バイアル、フィルタ、針等である。また、
図1に示すように、iPS細胞樹立装置11も、搬送容器70を搬入するための搬入部12aを有している。
【0045】
本実施の形態の自動培養システムは、
図1に示すように、搬送容器70内を殺菌するための殺菌装置1と、iPS細胞自動培養装置20で培養されたiPS細胞を所定のタイミングで搬入部81から受け取り、iPS細胞を検査するiPS細胞分析装置80と、分化細胞自動培養装置30で培養された分化細胞を所定のタイミングで搬入部86から受け取り、分化細胞を検査する分化細胞分析装置85と、自動培養装置20,30で培養されたiPS細胞、分化細胞、又は、iPS細胞及び分化細胞の両方を搬入部41から受け取り冷凍保存する冷凍保存装置40と、を備えている。なお、冷凍保存装置40は複数個設けられていてもよいし、部屋全体が冷やされており部屋自体が冷凍庫として機能してもよい。そして、部屋に冷凍保存装置40が複数個設けられている場合や部屋自体が冷凍庫として機能するような場合には、当該部屋の天井にレール65が設けられ、このレール65に沿って容器搬送部60が移動できるようになってもよい。
【0046】
上述した殺菌装置1の一例としては、搬送容器70内に過酸化水素ガスや高温ガス等の殺菌ガスを供給することで殺菌するものを挙げることができる。また、殺菌装置1の別の例としては、搬送容器70を閉状態としたまま外部から例えばγ線や紫外線を照射することで搬送容器70内を殺菌するものも挙げることができる。ちなみに、外部から搬送容器70が搬入される前に、搬送容器70の内部が例えばγ線や紫外線を用いて殺菌されてもよい。なお、液体培地等はγ線や紫外線で破損してしまうタンパク質等を含有している場合がある。この場合は、過酸化水素ガスや高温ガス等の殺菌ガスで殺菌することが望ましい。
【0047】
<液体保管供給部およびインキュベータ部近辺の構成>
次に、上述した液体保管供給部およびインキュベータ部近辺の構成について説明する。
【0048】
以下では、iPS細胞樹立装置11の液体保管供給部16、iPS細胞自動培養装置20の液体保管供給部26及び分化細胞自動培養装置30の液体保管供給部36のいずれか1つ、いずれか2つ、又は、全てのことを「液体保管供給部110」と示して説明する。なお、本実施の形態では、iPS細胞樹立装置11の液体保管供給部16、iPS細胞自動培養装置20の液体保管供給部26及び分化細胞自動培養装置30の液体保管供給部36の各々は同様の構成となっている。
【0049】
また以下では、iPS細胞樹立装置11のインキュベータ部17、iPS細胞自動培養装置20のインキュベータ部27及び分化細胞自動培養装置30のインキュベータ部37のいずれか1つ、いずれか2つ、又は、全てのことを「インキュベータ部101」と示して説明する。なお、本実施の形態では、iPS細胞樹立装置11のインキュベータ部17、iPS細胞自動培養装置20のインキュベータ部27及び分化細胞自動培養装置30のインキュベータ部37の各々は同様の構成となっている。
【0050】
また以下では、iPS細胞樹立装置11の培地分析部14、iPS細胞自動培養装置20の培地分析部24及び分化細胞自動培養装置30の培地分析部34のいずれか1つ、いずれか2つ、又は、全てのことを「培地分析部106」と示して説明する。なお、本実施の形態では、iPS細胞樹立装置11の培地分析部14、iPS細胞自動培養装置20の培地分析部24及び分化細胞自動培養装置30の培地分析部34の各々は同様の構成となっている。
【0051】
図4は、液体保管供給部110およびインキュベータ部101近辺の構成を示す概略平面図である。
図4に示すように、液体保管供給部110は、液供給流路201および液回収流路202(
図5A参照)を有し培養容器75に対して着脱可能な培地交換用カートリッジ200と、培地交換用カートリッジ200の液供給流路201に液体培地を供給する培地供給部102と、培地交換用カートリッジ200が培養容器75に連結された状態で、液供給流路201内の液体培地を培養容器75内に流入させるとともに培養容器75内の培地を液回収流路202に液体流出させる培地交換部103と、培地交換用カートリッジ200の液回収流路202から液体培地を回収する培地回収部104と、培地供給部102と培地交換部103と培地回収部104との間で培地交換用カートリッジ200を移動させるカートリッジ搬送部109と、を備えている。
図4において、細い矢印は培地交換用カートリッジ200の移動する向きを示しており、太い矢印は液体培地の移動する向きを示している。
【0052】
また本実施の形態では、回収された液体培地の成分を分析する培地分析部106が培地回収部104に設けられている。
【0053】
さらに本実施の形態では、
図4に示すように、培地交換用カートリッジ200の液供給流路201および液回収流路202をそれぞれ洗浄する流路洗浄部105が設けられている。カートリッジ搬送部109は、培地供給部102と培地交換部103と培地回収部104と流路洗浄部105との間で培地交換用カートリッジ200を移動させるようになっている。
【0054】
また本実施の形態では、
図4に示すように、未使用の培地交換用カートリッジ200を複数保管するカートリッジ保管部107と、使用済みの培地交換用カートリッジを回収するカートリッジ回収部108と、がさらに設けられている。カートリッジ搬送部109は、定期的に、使用済みの培地交換用カートリッジ200をカートリッジ回収部108へ排出するとともに、未使用の培地交換用カートリッジ200をカートリッジ保管部107から取り出すようになっている。
【0055】
カートリッジ搬送部109としては、たとえば、カートリッジ式の部品を把持可能なハンドを有する、それ自体は公知の搬送ロボットを用いることができる。
【0056】
<培地交換用カートリッジの構成>
次に、
図5Aを参照して、培地交換用カートリッジ200の構成について詳しく説明する。
【0057】
本実施の形態では、
図5Aに示すように、液供給流路201は、培地供給部102に連結可能な第1流入口211と、培養容器75の流入口に連結可能な第1流出口212と、第1流入口211と第1流出口212とを連通する液貯蔵室213と、液貯蔵室213に連通する通気口214と、を有している。通気口214には外気からの異物の侵入を防止するためのフィルタ218が取付けられている。
【0058】
液貯蔵室213の容量は、培養容器75の容量の1〜1.5倍程度であり、培養容器75の容量より大きいほうが好ましい。具体的には例えば30mlである。
図5Aに示すように、第1流入口211と液貯蔵室213との間の流路には開閉可能なバルブ215が設けられている。また、液貯蔵室213と第1流出口212との間の流路にも開閉可能なバルブ216が設けられている。さらに、液貯蔵室213と通気口214との間の流路にも開閉可能なバルブ217が設けられている。各バルブ215、216、217を閉じることで、液貯蔵室213が密閉される。
【0059】
一方、液回収流路202は、培養容器75の流出口に連結可能な第2流入口221と、培地回収部104に連結可能な第2流出口222と、第2流入口221と第2流出口222とを連通する、複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含む曲線流路223と、を有している。曲線流路223は、複数の屈曲箇所または湾曲箇所を含むことで、流路口径を小さく、かつ流路長を長く形成することができ、これにより、培養容器75から流出される古い培地と新しい培地とを流路に沿って混ざらないように回収することができる。
【0060】
なお、
図5Aに示す例では、曲線流路223は蛇行状の形状を有しているが、古い培地と新しい培地とを流路に沿って混ざらないように回収できるならば、蛇行状の形状を有していることは必ずしも必須では無く、たとえば
図5Bに示すように、渦巻き状の形状を有していてもよい。
【0061】
曲線流路223の容量は、培養容器75の容量の1〜1.5倍程度であり、培養容器75の容量より大きいほうが好ましい。具体的には例えば30mlである。曲線流路223内での乱流の発生を抑制するために、曲線流路223の口径は4mm以下であることが好ましい。
図5Aに示すように、第2流入口221と曲線流路223との間の流路には開閉可能なバルブ225が設けられている。また、曲線流路223と第2流出口222との間の流路にも開閉可能なバルブ226が設けられている。各バルブ225、226を閉じることで、曲線流路223が密閉される。
【0062】
なお
図5Aおよび
図5Bに示す例では、第2流入口221から第2流出口222までの全体が細い曲線流路223となっているが、
図5Cに示すように、古い培地と新しい培地との液の混合が起きない範囲(例えば回収容量の1/2以内)で、第2流入口221から第2流出口222までの流路の一部をタンク状の流路224とし、残りの部分を細い曲線流路223としてもよい。第2流入口221から第2流出口222までの流路のコンダクタンスを考えると、流路の一部をタンク状の流路224とするほうが好ましい。
【0063】
第1流出口212と第2流入口221とは互いに隣接して設けられている。これにより、第1流出口212および第2流入口221をそれぞれ培養容器75の流入口および流出口に容易に連結することができる。
【0064】
以下では、第1流入口211と液貯蔵室213との間のバルブ215、液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216、液貯蔵室213と通気口214との間のバルブ217、第2流入口221と曲線流路223との間のバルブ225、および曲線流路223と第2流出口222との間のバルブ226のいずれか1つ、いずれか2つ以上、または全てのことを「バルブ240」と示して説明する。なお、本実施の形態では、各バルブ215、216、217、225、226は同様の構成となっている。
【0065】
図6Aは、バルブ240の構造を示す概略平面図であり、
図6Bは、
図6Aのバルブ240のA−A線に沿った断面図である。
【0066】
図6Aおよび
図6Bに示すように、バルブ240は、一対の流路243、244が形成された本体241と、本体241の上面に固定されたシート状の弁体242と、を有している。弁体242は、エラストマーからなり、その周縁部242aにおいて本体241の上面に接着されている。一方の流路243の一端部243aと他方の流路244の一端部244aとは、それぞれ、弁体242の周縁部242aの内側の領域において、本体241の上面に開口している。通常、シート状の弁体242の復元力(弾性力)により弁体242の下面が本体241の上面に密着されている。そのため、一方の流路243の一端部243aと他方の流路244の一端部244aとはそれぞれ弁体242により閉塞され、その結果、一方の流路243は他方の流路244から遮断されている。
【0067】
図7A〜
図7Cを参照して、バルブ240の動作を説明する。
【0068】
バルブ240を開く場合には、まず、
図7Aに示すように、弁体242の周縁部242aの上面に筒状のバルブ駆動機構249が押し当てられ、次に、
図7Bに示すように、バルブ駆動機構249の内部が真空引きされ、弁体242の周縁部242aの内側の領域が上方に膨らむように変形される。これにより、弁体242が一方の流路243の一端部243aと他方の流路244の一端部244aとから離間され、弁体242の周縁部242aの内側の領域において、一方の流路243は他方の流路244に連通される。
【0069】
次に、バルブ240を閉じる場合には、
図7Cに示すように、バルブ駆動機構249の内部が大気圧に復帰され、弁体242の復元力により弁体242の下面が本体241の上面に密着される。これにより、一方の流路243の一端部243aと他方の流路244の一端部244aとはそれぞれ弁体242により閉塞され、その結果、一方の流路243は他方の流路244から遮断される。
【0070】
以上のような構成の培地交換用カートリッジ200は、たとえばポリスチレン等の硬質樹脂を射出成形することにより製造され得る。この場合、バルブ240の部分は硬質樹脂とエラストマーとから二色成型法により形成することができる。なお、培地交換用カートリッジ200の製造方法は、射出成形に限定されず、たとえば3Dプリンタを用いた積層造形法により製造されてもよい。
【0071】
<培地交換方法>
次に、
図4および
図8A〜
図11Dを参照して、培地交換用カートリッジ200を用いた培地交換方法について説明する。
図8A〜
図11Dにおける太線は、液体が通っている状態の流路を示している。
まず、
図4に示すように、カートリッジ搬送部109により、培地交換用カートリッジ200がカートリッジ保管部107から取り出されて、培地供給部102へと移動される。
【0072】
培地供給部102では、
図8Aに示すように、培地交換用カートリッジ200の第1流入口211に培地貯蔵容器102aが連結される。そして、
図8Bに示すように、第1流入口211と液貯蔵室213との間のバルブ215と、液貯蔵室213と通気口214との間のバルブ217とが、それぞれ開かれる。一方、液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216は閉じられる。この状態で、培地貯蔵容器102aから第1流入口211を介して液体培地が供給される。液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216が閉じられているため、供給された液体培地は液貯蔵室213内に貯蔵される。その後、第1流入口211と液貯蔵室213との間のバルブ215と、液貯蔵室213と通気口214との間のバルブ217も、それぞれ閉じられ、液貯蔵室213が密閉される。なお、培地供給部102にはバルブ駆動機構249が設けられており、ここで動作するバルブ215、217はバルブ駆動機構249により開閉される。
【0073】
次に、
図4に示すように、カートリッジ搬送部109により、培地交換用カートリッジ200は、液貯蔵室213内に培地を収容した状態で、培地供給部102から分離されて、培地交換部103へと移動される。培地交換部103に隣接するインキュベータ部101には、培養容器75が予め収容されている。
【0074】
培地交換部103では、
図9Aに示すように、培地交換用カートリッジ200の第2流出口222に減圧ポンプが連結される。そして、培養容器75がインキュベータ部101に収容された状態で、
図9Bに示すように、培地交換用カートリッジ200の第1流出口212および第2流入口221がそれぞれ培養容器75の流入口および流出口に連結される。次いで、液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216と、液貯蔵室213と通気口214との間のバルブ217と、第2流入口221と曲線流路223との間のバルブ225と、曲線流路223と第2流出口222との間のバルブ226とが、それぞれ開かれるとともに、減圧ポンプにより第2流出口222を介して曲線流路223が減圧される。これにより、培養容器75内の古い培地が第2流入口221から曲線流路223内に流出されるとともに、液貯蔵室213内の新しい培地が第1流出口212から培養容器75内に流入される。その後、第2流入口221と曲線流路223との間のバルブ225と、曲線流路223と第2流出口222との間のバルブ226とが、それぞれ閉じられ、曲線流路223が密閉される。なお、培地交換部103にはバルブ駆動機構249が設けられており、ここで動作するバルブ216、217、225、226はバルブ駆動機構249により開閉される。
【0075】
本実施の形態では、培養容器75がインキュベータ部101から取り出されること無く、培養容器75がインキュベータ部101に収容されたまま培地交換が行われる。そのため、培養容器75内の細胞に対する環境変動を顕著に低減することができる。
【0076】
次に、
図4に示すように、カートリッジ搬送部109により、培地交換用カートリッジ200は、曲線流路223内に培地を収容した状態で、培地交換部103および培養容器75から分離されて、培地回収部104へと移動される。
【0077】
培地回収部104では、
図10Aに示すように、培地交換用カートリッジ200の第2流出口222に加圧ポンプ(図示せず)が連結される。培養容器75に新しい培地を供給して培養容器75内を完全に新しい培地に置き換えるためには、培養容器75に供給される培地の容量は培養容器75の容量より大きいほうが好ましい。ここで、培養容器75へ供給される新しい培地の容量が培養容器75の容量より大きい場合、曲線流路223の第2流入口221側には、液貯蔵室213から培養容器75に供給された新しい培地が収容されている。また、新しい培地と古い培地の境界部は一部が混合状態となっている可能性がある。そのため、第2流出口222と曲線流路223との間のバルブ226と、曲線流路223と第2流入口221との間のバルブ225とが、それぞれ開かれるとともに、加圧ポンプにより曲線流路223が第2流出口222側から加圧され、曲線流路223の第2流入口221側に収容された新しい培地と、新しい培地と古い培地との混合部とが、第2流入口221から外部に押し出されて排出される。新しい培地を含む培地がすべて第2流入口221から排出された後、加圧ポンプによる加圧が停止される。
【0078】
次に、
図10Bに示すように、培地交換用カートリッジ200の第2流入口221に培地分析部106が連結される。そして、第2流出口222と曲線流路223との間のバルブ226と、曲線流路223と第2流入口221との間のバルブ225とが、それぞれ開かれた状態で、加圧ポンプにより曲線流路223が第2流出口222側から再び加圧される。これにより、曲線流路223内の古い培地が第2流入口221から培地分析部106へと押し出されて回収される。培地分析部106では回収した古い液体培地の成分が分析される。なお、培地回収部104にはバルブ駆動機構249が設けられており、ここで動作するバルブ225、226はバルブ駆動機構249により開閉される。
【0079】
次に、
図4に示すように、カートリッジ搬送部109により、培地交換用カートリッジ200は、培地回収部104および培地分析部106から分離されて、流路洗浄部105へと移動される。
【0080】
流路洗浄部105では、
図11Aに示すように、培地交換用カートリッジ200の第1流入口211および第2流出口222に三方弁105bを介して洗浄液貯蔵容器105aが連結される。そして、
図11Bに示すように、第1流入口211と液貯蔵室213との間のバルブ215と、液貯蔵室213と通気口214との間のバルブ217とが、それぞれ開かれる。一方、液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216は閉じられる。この状態で、三方弁105bにより洗浄液貯蔵容器105aと第1流入口211とが連通され、洗浄液貯蔵容器105aから第1流入口211を介して洗浄液が供給される。液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216が閉じられているため、供給された洗浄液は液貯蔵室213内に溜められる。液貯蔵室213内に洗浄液が充填された後、三方弁105bにより洗浄液貯蔵容器105aと第1流入口211との間の流路が閉じられる。
【0081】
次に、
図11Cに示すように、培地交換用カートリッジ200の第1流入口211および第2流出口222に廃液容器105cが連結されるとともに、通気口214に加圧ポンプ(図示せず)が連結される。次いで、液貯蔵室213と第1流出口212との間のバルブ216が開かれるとともに、加圧ポンプにより液貯蔵室213内が加圧され、液貯蔵室213内の洗浄液が第1流出口212から廃液容器105cへと押し出されて排出される。
【0082】
次に、
図11Dに示すように、第2流出口222と曲線流路223との間のバルブ226と、曲線流路223と第2流入口221との間のバルブ225とが、それぞれ開かれる。この状態で、三方弁105bにより洗浄液貯蔵容器105aと第2流出口222とが連通され、洗浄液貯蔵容器105aから第2流出口222を介して洗浄液が供給される。第2流出口222から供給される洗浄液は、曲線流路223を通過して、第2流入口221から廃液容器105cへと排出される。なお、流路洗浄部105にはバルブ駆動機構249が設けられており、ここで動作するバルブ215、216、217、225、226はバルブ駆動機構249により開閉される。
【0083】
なお、ここでは液供給流路201が洗浄された後に液回収流路202が洗浄されたが、液回収流路202が洗浄された後に液供給流路201が洗浄されてもよい。
【0084】
次に、
図4に示すように、カートリッジ搬送部109により、洗浄された培地交換用カートリッジ200は、流路洗浄部105から分離されて、培地供給部102へと戻され、次の培地交換に再利用される。
【0085】
培地交換用カートリッジ200の再利用を繰り返すと、液供給流路201および液回収流路202に徐々にタンパクが付着して汚染される。そのため、カートリッジ搬送部109により、定期的に、使用済みの培地交換用カートリッジ200がカートリッジ回収部108へと排出されるとともに、未使用の培地交換用カートリッジ200がカートリッジ保管部107から取り出される。
【0086】
<効果>
次に、上述した構成からなる本実施の形態によって達成される効果であって、まだ述べていない効果又はとりわけ重要な効果について説明する。
【0087】
本実施の形態によれば、所定量の液体培地を収容可能な培地交換用カートリッジ200が培地供給部102と培地交換部103と培地回収部104との間で移動することで、培養容器75が培地供給部102および培地回収部104から分離された状態で培地交換を行うことができる。このため、培養容器75の周辺に培地貯蔵容器102aや回収容器などの他の機器を集中して配置する必要がなく、機器集中による物理的な制約により液流路が冗長化することがない。したがって、従来の培地交換機構に比べて、液流路の短縮化が可能である。
【0088】
また本実施の形態によれば、液流路が培地交換用カートリッジ200、すなわちカートリッジ状の部品に形成されているため、市販のロボットハンドであっても容易に把持して持ち運ぶことが可能であり、液流路の交換の自動化が容易である。
【0089】
また本実施の形態によれば、複数の培地交換用カートリッジ200を使用することで、培地供給、培地交換、培地回収、流路洗浄の各処理を同時並行で行うことができる。そのため、複数の培養容器75を処理する場合の作業時間が長時間化することを抑制できる。
【0090】
また本実施の形態によれば、培養容器75がインキュベータ部101に収容されたまま培地交換を行うことで、培養容器75内の細胞に対する環境変動を顕著に低減することができる。なお、本実施の形態において、培養容器75がインキュベータ部101に収容されたまま培地交換が行われることは、必ずしも必須ではなく、培養容器75がインキュベータ部101から取り出されて不図示の培地交換ステージ上で培地交換が行われてもよい。
【0091】
また本実施の形態によれば、培地交換用カートリッジ200の液回収流路202が流路口径を小さく、かつ流路長を長く形成した曲線流路223を有しているため、培養容器75から流出される古い培地と新しい培地とを曲線流路223に沿って混ざらないように回収することができる。これにより、曲線流路223から古い培地と新しい培地とを区別して排出することができ、培養容器75内で使用された古い培地の成分を正確に分析することができる。
【0092】
<変形例>
なお、上述した本実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した本実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
【0093】
図12Aは、複数の培養容器75を収容可能な搬送容器の第1変形例の構成を示す内部上面図であり、
図12Bは、
図12Aの搬送容器の内部側面図である。
【0094】
図12Aおよび
図12Bに示す搬送容器170は、筐体171と、複数の培養容器75を保持可能なカセット180と、を有している。このうち筐体171は、下端部が開口する四角筒形状を有している。一方、カセット180は、筐体171の下端部の開口に嵌合して密閉する蓋体172と、蓋体172から鉛直上向きに延びるように設けられた支柱174と、支柱174に沿って並んで設けられた複数(図示された例では8つ)の棚173と、を有している。
【0095】
各棚173は、円板形状を有しており、水平に向けられた姿勢で支柱174に対して固定されている。各棚173の上には、複数(図示された例では4枚)の培養容器75が、支柱174を中心として回転対称(図示された例では4回対称)で載置されるようになっている。
【0096】
図12Aおよび
図12Bに示す搬送容器170は、
図3に示す搬送容器70と同様に、容器搬送部60の保持部61によってぶら下げられた状態で、iPS細胞自動培養装置20の搬入部21、分化細胞自動培養装置30の搬入部31、またはiPS細胞樹立装置11の搬入部12aへと、レール65に沿って搬送されることになる。
【0097】
この搬送容器170から培養容器75を取り出す際には、
図13に示すように、不図示の回転昇降機構によりカセット180が下方に引き下げられ、複数の培養容器75がカセット180に保持された状態で筐体171の外側に取り出される。そして、不図示のロボットハンドにより1つの棚173の上から1枚の培養容器75が把持されて取り出される。各棚173の上から1枚ずつ培養容器75が取り出された後、回転昇降機構により、カセット180が支柱174を中心として90°回転される。そして、ロボットハンドにより1つの棚173の上から次の培養容器75が把持されて取り出される。ロボットハンドによる培養容器75の取出しと、回転昇降機構によるカセット180の回転とが繰り返されることで、カセット180に保持された全ての培養容器75がロボットハンドにより取り出され得る。
【0098】
このような搬送容器170によれば、各棚173に複数の培養容器75を載置できるため、
図3に示す搬送容器70に比べて培養容器75の収納枚数を増やすことができ、より多くの培養容器75を装置内に一括で搬送することができる。
【0099】
また、各棚173の上の複数の培養容器75は支柱174を中心として回転対称で載置されているため、カセット180を支柱174を中心として回転させることで、各棚173に対して、ロボットハンドによる培養容器175のアクセスポイントを一点に共通化することができる。これにより、容器取出し機構の簡素化が可能となる。
【0100】
なお、
図12Aおよび
図12Bに示す例では、各棚173に4枚の培養容器75が載置されるようになっていたが、これに限定されない。たとえば
図14に示すように、各棚173に2枚の培養容器75が支柱174を中心として2回対称で載置されてもよい。ありいは、各棚173にn枚(n=3,5,6,7…)の培養容器75が支柱174を中心としてn回対称で載置されてもよい。
【0101】
次に、
図12Aおよび
図12Bに示す搬送容器170と一緒に用いられる細胞培養装置の変形例について説明する。
【0103】
図15A〜
図15Dに示す細胞培養装置100bは、
図12Aおよび
図12Bに示す搬送容器170から複数の培養容器75を保持するカセット180(
図15A〜
図15Dでは不図示)を取り出すととともに、複数の培養容器75を保持するカセット180をインキュベータ部101まで搬送する装置内搬送部111と、複数の培養容器75をカセット180に保持されたまま収容可能な複数(図示された例では16個)のインキュベータ部101と、を備えている。また、この細胞培養装置100bは、
図4に示す細胞培養装置100と同様に、培地交換用カートリッジ200を搬送するカートリッジ搬送部109と、培地供給部102と、培地交換部(
図15A〜
図15Dでは不図示)と、培地回収部104と、流路洗浄部105と、をさらに備えている。なお、
図15A〜
図15Dにおいて、培地交換用カートリッジ200は、培養容器75と連結可能な第1流出口および第2流入口の部分のみが図示されている。
【0104】
図15Cに示すように、16個のインキュベータ部101は、鉛直方向および水平方向に沿って4×4の行列状に設置されている。各インキュベータ部101は、装置内搬送部111とカートリッジ搬送部109の両方からアクセス可能となっている。また、各インキュベータ部101には、不図示のターンテーブルが設けられており、複数の培養容器75を保持するカセット180を、支柱174を中心として回転できるようになっている。
【0105】
また、
図15Cに示す例において右下に位置するインキュベータ部101には、細胞検査除去部112が連結されている。細胞検査除去部112は、連結されたインキュベータ部101から培養容器75を一枚ずつ取出して、培養容器75内の細胞を検査するとともに状態の悪い細胞の除去を行うようになっている。
【0106】
次に、
図15A〜
図15Dに示す細胞培養装置100bの使用方法について説明する。
【0107】
まず、容器搬送部60により搬送された搬送容器170が装置内搬送部111に連結され、複数の培養容器75を保持するカセット180が搬送容器170から装置内搬送部111へと取り出される。
【0108】
次に、装置内搬送部111は、複数の培養容器75を保持するカセットを1つのインキュベータ部101内に搬入する。このインキュベータ部101内は、温度、湿度及び気体濃度のいずれか一つ又はこれらの全てが自動で調整される。なお、ランニングコストの観点から、使用していない他のインキュベータ部101は、この時点では動作を停止させておくことが好ましい。
【0109】
次に、インキュベータ部101内に収容された培養容器75に対して、上述した培地交換方法と同様にして、培地交換用カートリッジ200を用いた培地交換が行われる。
【0110】
すなわち、カートリッジ搬送部109により搬送される培地交換用カートリッジ200が、培地供給部102に連結され、培地交換用カートリッジ200の液供給流路201に液体培地が供給された後、培地交換用カートリッジ200が培地供給部102から分離される。
【0111】
次に、カートリッジ搬送部109により搬送される培地交換用カートリッジ200が、インキュベータ部101内に収容された1つの棚173の上の1枚の培養容器75に連結され、液供給流路201内の液体培地が培養容器75内に供給されるとともに培養容器75内の液体培地が液回収流路202内に回収される。その後、培地交換用カートリッジ200が当該培養容器75から分離される。
【0112】
次に、カートリッジ搬送部109により搬送される培地交換用カートリッジ200が、培地回収部104に連結され、液回収流路202から培地回収部104に液体培地が回収された後、培地交換用カートリッジ200が培地回収部104から分離される。
【0113】
次に、カートリッジ搬送部109により搬送される培地交換用カートリッジが、流路洗浄部105に連結され、液供給流路201および液回収流路202がそれぞれ洗浄される。洗浄された培地交換用カートリッジ200は、流路洗浄部105から分離されて、培地供給部102へと戻され、次の培地交換に利用される。
【0114】
各棚173の上の1枚の培養容器75に対して培地交換が行われた後、インキュベータ部101に設けられたターンテーブルにより、カセット180が支柱174を中心として90°回転される。そして、各棚173の上の次の培養容器75に対して培地交換が行われる。
【0115】
このように複数の培養容器75がカセット180に保持された状態でインキュベータ部101内に収容され、カセット180が支柱174を中心として回転されることで、各棚173において、カートリッジ搬送部109による培地交換用カートリッジ200のアクセスポイントを一点に共通化することができる。これにより、カートリッジ搬送部109の簡素化が可能となる。
【0116】
装置内搬送部111は、定期的に、複数の培養容器75を保持するカセット180を、細胞検査除去部112が連結された別のインキュベータ部101へと搬送する。細胞検査除去部112は、インキュベータ部101から培養容器75を一枚ずつ取出して、培養容器75内の細胞を検査するとともに状態の悪い細胞の除去を行った後、検査済みの培養容器75をインキュベータ部101内に戻す。その後、装置内搬送部111は、検査済みの複数の培養容器75を保持するカセット180を、元のインキュベータ部101へと戻す。
【0117】
ところで、細胞培養工程においては、細胞の成長によって複数の培養容器75に分けて培養を継続させるため、複数の培養容器75を取り扱う必要がある。従来の細胞培養装置のように、装置内における培養容器75の搬送が1個ずつ行われる場合、培養の進行にともなって、基を同じにする細胞であっても、最初の培養容器75と最後の培養容器75との間に時間差が生じてしまい、培養条件が大きく異なってしまう。
【0118】
一方、
図15A〜
図15Dに示す細胞培養装置100bによれば、複数の培養容器75がカセット180に保持された状態で一括で搬送されるため、培養時間の差異を低減することができる。
【0119】
なお、
図15A〜
図15Dに示す細胞培養装置100bにおいて細胞の継代を行う場合には、増加する培養容器75の数に合わせて、使用するインキュベータ部101の数を増やしていくことが好ましい。使用するインキュベータ部101の数を徐々に増やしていくことで、ランニングコストを低減できる。
【0120】
最後になったが、上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、各実施の形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。