(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
[第1の実施の形態]
{1.スタータジェネレータの構成}
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電動発電機2を用いるエンジンユニット200の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、エンジンユニット200は、エンジン1とスタータジェネレータ100とを備える。スタータジェネレータ100は、電動発電機2と、コントローラ3と、インバータ4とを備える。スタータジェネレータ100は、エンジン1に取り付けられる。
【0031】
エンジン1は、図示しない自動車などの車両あるいは航空機の動力源である。電動発電機2の回転軸は、エンジン1の回転軸に連結される。電動発電機2は、エンジン1が駆動を開始する際の動力を供給する。また、電動発電機2は、エンジン1の回転軸の回転に応じて発電し、発電した電力を図示しないバッテリと負荷に供給する。なお、電動発電機2の回転軸は、エンジン1の回転軸にギアなどを介して間接的に連結されてもよい。
【0032】
コントローラ3は、入力されるトルク指令41及び速度指令42に基づいて、電動発電機2の動作を制御する。コントローラ3は、トルク指令41、速度指令42、及び後述する回転子の回転位置θに応じた制御信号43をインバータ4に供給する。また、コントローラ3は、電動発電機2に供給される電流i
u及びi
wをインバータ4から受け、その受けた電流を用いて、制御信号43を調整する。
【0033】
インバータ4は、コントローラ3からの制御信号43に応じた電流を電動発電機2に供給する。
図1において、電動発電機2に供給される電流は、三相交流に応じた電流であり、i
u、i
v、及びi
wと表示する。
【0034】
{2.電動発電機の構成}
図2は、電動発電機2の断面図である。
図2に示すように、電動発電機2は、インナーロータ型であり、固定子5と、回転子6とを備える。回転子6は、回転軸Aを中心に回転する。固定子5は、回転子6の外周側に配置される。
【0035】
固定子5は、固定子コア51と、巻線52と、6個のティース53a〜53fとを備える。なお、
図2において、一部の巻線52の符号の表示を省略している。
【0036】
固定子コア51は、中空の円筒形状であり、電磁鋼板、圧粉材、アモルファスなどの磁性材料により形成される。ティース53a〜53fが、固定子コア51の内周側に設けられる。以下、ティース53a〜53fを総称する場合、「ティース53」と記載する。巻線52は、集中巻によりティース53a〜53fの各々に巻かれる。スロット54は、互いに隣り合う2つのティース53の間の空間である。なお、一部のスロット54の符号の表示を省略している。
【0037】
回転子6は、回転子コア61と、8個の永久磁石62a〜62hとを備える。回転子コア61は、円柱形状であり、回転軸Aを中心に回転する。回転軸Aは、エンジン1の回転軸に連結される。回転子コア61は、電磁鋼板、圧粉材、アモルファスなどの磁性材料により形成される。
【0038】
永久磁石62a〜62hは、回転子コア61の周方向に沿って配置され、周方向に着磁される。以下、永久磁石62a〜62hを総称する場合、「永久磁石62」と記載する。永久磁石62は、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライトコアなどを、永久磁石62a〜62hとして使用可能である。永久磁石62の形状は、直方体である。
【0039】
永久磁石62は、互いに周方向において隣接する他の永久磁石と反対方向に着磁される。例えば、永久磁石62aの一方(反時計回り方向)側は、N極であり、他方(時計回り方向)側は、S極である。永久磁石62aの反時計回り側に隣接する永久磁石62bにおいて、N極は、永久磁石62a側であり、S極は、永久磁石62c側である。
【0040】
また、永久磁石62bと回転軸Aとの距離は、永久磁石62aと永久磁石62bとの間隔よりも大きい。この関係は、周方向において互いに隣接する2つの永久磁石において同様に成り立つ。これにより、回転子6の永久磁石62よりも内周側の領域において磁気飽和の発生が抑制される。この理由については後述する。
【0041】
電動発電機2のスロットコンビネーションを
図3に示す。Pは、回転子6の極数を示し、4の倍数である。ここで、極数とは、回転子6内に形成される磁極68の数を示す。磁極68とは、回転子6において周方向に互いに隣接する2つの永久磁石の間の領域である。回転子6の外部からの磁束は、磁極68を経由して回転子6内に入り込む。また、回転子6内の磁束は、磁極68を経由して、回転子6の外へ出る。
図2に示す電動発電機2の場合、磁極68の数(極数)は、8である。Sは、固定子5のスロット数である。極数Pとスロット数Sとの関係は、下記の式(1)を満たす。
【0043】
電動発電機2が上記式(1)の要件を満たし、かつ、負荷状態において永久磁石62aがティース53aに対向する場合、ティース53aで発生する磁束と永久磁石62aの磁束とが合成された磁束は、永久磁石62aと永久磁石62bとの間における磁極68における飽和磁束以上となる。また、無負荷状態において、永久磁石62aの磁束は、回転子6内で短絡する。この結果、負荷状態において、無負荷状態における磁路と異なる磁路が形成される。電動発電機2で形成される磁路の詳細は、後述する。
【0044】
図4は、回転子6内の永久磁石の数と、ティース53に対向する永久磁石の数との関係を示すテーブルである。
図4に示すように、回転子6内における永久磁石の数Mと、ティース53に対向する永久磁石の数Fとの関係は、以下の式(2)を満たす。
【0046】
なお、永久磁石の数Mは、極数Pに一致し、4の倍数である。また、
図4及び式(2)より、永久磁石の数Mに関係なく、永久磁石62は、4個おきにティース53に対向する。つまり、ティース53に対向する2個の永久磁石62の間に存在する永久磁石の数は、永久磁石の数Mに関係なく一定(3個)である。
図2に示す構成(P=8)の場合、永久磁石62a及び62eが、ティース53a及び53dにそれぞれ対向する。永久磁石62aと永久磁石62eとの間に位置する永久磁石62b〜62dと永久磁石62f〜62hとは、ティース53に対向しない。
【0047】
{3.電動発電機2の磁路の変化}
図2に示す構成を有する電動発電機2で形成される磁路を、無負荷状態及び負荷状態に分けて説明する。負荷状態は、回転子6が回転しているときに電流が固定子5に供給されている状態である。無負荷状態は、回転子6が回転しているときに電流が固定子5に供給されていない状態である。
【0048】
{3.1.無負荷状態の磁路}
以下、永久磁石62a及び62bを例にして、無負荷状態において電動発電機2に形成される磁路を説明する。
【0049】
図5は、永久磁石62a及び62b付近における回転子6の部分拡大図である。無負荷状態では、回転子6がエンジン1の駆動により回転しているが、固定子5が励磁されない。この状態では、永久磁石62aの磁束は、永久磁石62aよりも回転子6の内周側の領域63aを通過する磁路67aを形成する。永久磁石62aの磁束は、磁路67aを形成して回転子6内で短絡するため、回転子6から漏洩しない。
【0050】
永久磁石62aは、回転子コア61の中に埋め込まれ、回転子6の外側に露出していない。従って、実際には、永久磁石62aの一部の磁束は、永久磁石62aよりも回転子コア61の外周側の領域64aを通過する。しかし、外周側の領域64aの径方向の長さは、内周側の領域63aの径方向の長さよりも短いため、外周側の領域64aは、永久磁石62aの磁束により飽和する。この結果、永久磁石62aの磁束の大部分は、磁路67aを形成する。
【0051】
永久磁石62bの磁束も、永久磁石62aと同様に、磁路67bを形成して、回転子コア61内で短絡する。磁路67bが、永久磁石62bよりも回転子6の内周側の領域63bを通過するため、永久磁石62bの磁束は、回転子6から漏洩しない。
【0052】
上述のように、永久磁石62a及び62bの形状は、直方体であるため、回転子コア61における永久磁石62aと永久磁石62bとの間の領域(磁極68)の幅(周方向の長さ)は、回転子6の内周側に進むにしたがって狭くなる。つまり、磁極68の幅は、永久磁石62a及び62bの最も内周側で最小となる。磁極68の幅が最小となる永久磁石62aと永久磁石62bとの間の領域を、以下、狭窄領域66と呼ぶ。
【0053】
図5に示すように、永久磁石62a及び62bの磁束が、無負荷状態において、狭窄領域66を通過する。無負荷状態において、磁気飽和が狭窄領域66で発生した場合、永久磁石62a及び62bの磁束は、回転子6から漏洩するおそれがある。無負荷状態における磁気飽和の発生を防ぐために、永久磁石62a及び62bの合成磁束が狭窄領域66における飽和磁束よりも小さくなるように、狭窄領域66の幅が設定される。
【0054】
図6Aは、無負荷状態において永久磁石62a〜62hの各々が形成する磁路を示す図である。永久磁石62c〜62hの磁束により形成される磁路67c〜67hは、磁路67a及び67bと同様に、永久磁石62c〜62hよりも回転子6の内周側の領域を通過して短絡する。従って、永久磁石62の磁束は、無負荷状態において回転子6から漏洩しない。
【0055】
図6Bは、無負荷状態における、回転子6の回転速度と巻線52で発生する電圧(線間電圧)との関係を示すグラフである。
図6Bにおいて、1点鎖線は、従来の電動発電機における回転子の回転速度と線間電圧との関係を示す。実線は、電動発電機2における回転子の回転速度と線間電圧との関係を示す。
【0056】
図6Bに示すように、無負荷状態における電動発電機2の線間電圧が、従来の電動発電機の線間電圧よりも大幅に低くなっている。永久磁石62の磁束が、電動発電機2の回転子6内で短絡することにより、回転子6からの磁束の漏洩を抑制できているためである。
【0057】
{3.2.負荷状態の磁路}
インバータ4が巻線52に電流を供給することにより、電動発電機2は、無負荷状態から負荷状態に移行する。負荷状態への移行により、電動発電機2内の磁路は、
図6Aに示す経路から変化する。
【0058】
負荷状態は、上述のように、電流が巻線52に供給された状態であり、電動発電機2が電動機として動作する場合と、発電機として動作する場合とを含む。負荷状態において形成される磁路は、両者の場合で共通である。
【0059】
電動発電機2が電動機として動作する場合、コントローラ3は、インバータ4を用いて、三相交流を従来と同様に固定子5に供給する。すなわち、インバータ4は、電流i
u,i
v及びi
wを巻線52に供給する。
【0060】
電動発電機2が発電機として動作する場合も、コントローラ3は、三相交流を固定子5に供給する。ただし、固定子5に供給される電流の向きは、電動発電機2が電動機として動作するときに供給される電流の向きと反対である。つまり、巻線52に供給される電流は、−i
u、−i
v及び−i
wとなる。固定子5に供給される電流の大きさは、電動発電機2が電動機として動作するときに供給される電流よりも小さい。この理由については、後述する。
【0061】
図7は、負荷状態においてティース53で発生する磁束の向きを示す図である。電流が巻線52に流れた場合、ティース53a〜53fには、矢印55a〜55hで示す向きの磁束が発生する。具体的には、ティース53a及び53dには、外周側から内周側に向く磁束が発生し、ティース53b、53c、53e及び53fには、内周側から外周側に向く磁束が発生する。つまり、永久磁石62aに対向するティース53aで発生する磁束と、永久磁石62eに対向するティース53dで発生する磁束は、回転子6が位置する方向に向いている。
【0062】
以下、負荷状態において形成される磁路を、ティース53aで発生する磁束を例にして説明する。
【0063】
ティース53aで発生する磁束は、(1)ティース53a、回転子6の内周側の領域63a及び63b(
図5参照)、ティース53bを経由する第1の磁路と、(2)ティース53a、永久磁石62h、ティース53fを経由する第2の磁路とを形成する。以下、第1の磁路と、第2の磁路とについて具体的に説明する。
【0064】
(1)第1の磁路
図8は、ティース53aで発生した磁束(励磁磁束)と、永久磁石62aの磁束とが合成された磁束(第1の合成磁束)により形成される磁路を示す図である。
図8に示す磁路は、第1の磁路が形成される前の段階で形成される。
【0065】
電流が巻線52に流れ始める初期段階において、励磁磁束の量は、比較的小さい。この場合、励磁磁束は、ティース53aから永久磁石62a及び62hの間の磁極68を通過して、永久磁石62aのS極に流入する(矢印311)。矢印55aで示すようにティース53aの内周側がN極であり、かつ、永久磁石62aがティース53aに対向している。このとき、磁気抵抗は、回転子6における永久磁石62aのN極側の領域よりも、永久磁石62aのS極側の領域の方が小さいため、励磁磁束は、ティース53aにおけるティース53f側の領域から永久磁石62aのS極に流入する。
【0066】
永久磁石62aのS極に流入した励磁磁束と、永久磁石62aの磁束とが合成されることにより、第1の合成磁束が発生する。固定子5と回転子6との間のエアギャップの磁気抵抗は、狭窄領域66の磁気抵抗よりも大きい。この結果、第1の合成磁束は、永久磁石62bよりも内周側の領域63bと、永久磁石62b及び62cの間の磁極68とを経由して、ティース53bに達する(矢印313)。ティース53bには、内周側から外周側へ向かう磁束が発生しているため、第1の合成磁束は、矢印55bに沿ってティース53bを通過し(矢印314)、ティース53aに戻る(矢印315)。この結果、矢印311〜315を通過する磁路が形成される。
【0067】
その後、巻線52に流れる電流が増加するにつれて、励磁磁束が増加する。第1の合成磁束と永久磁石62bの磁束の総和が狭窄領域66の飽和磁束以上となったとき、励磁磁束は、永久磁石62aのS極に新たに流入することができない。
【0068】
図9は、狭窄領域66で磁気飽和が発生した後に形成される磁路を示す図である。新たに発生した励磁磁束は、永久磁石62aのS極に入ることができないため、内周側の領域63a及び63bと、永久磁石62b及び62cの間の磁極68を通過して、ティース53bに達する(矢印316)。この理由は、内周側の領域63aの磁気抵抗が狭窄領域66の磁気抵抗よりも小さいためである。この結果、矢印316、314、315の順に周回する第1の磁路が形成される。
【0069】
なお、
図8を用いて説明した磁路は、第1の磁路が形成された後も消滅することなく存在する。従って、
図8に示す磁路と、
図9に示す第1の磁路と、磁路67bとが、内周側の領域63bを通過する。しかし、永久磁石62bと回転軸Aとの距離が狭窄領域66の周方向の幅よりも大きいため、内周側の領域63bで磁気飽和は発生しない。内周側の領域63bで磁気飽和を発生させないためには、永久磁石62bと回転軸Aとの距離を極力大きくすることが望ましい。具体的には、永久磁石62bと回転軸Aとの距離が、狭窄領域66の幅よりも大きければよい。
【0070】
(2)第2の磁路
図10は、励磁磁束と永久磁石62hの磁束とが合成された磁束(第2の合成磁束)により形成される第2の磁路を示す図である。
【0071】
図10に示すように、ティース53aから回転子6に流入した励磁磁束の一部は、永久磁石62a及び62hの間の磁極を通過して、永久磁石62aのS極ではなく、永久磁石62hのS極に流入する(矢印321)。永久磁石62hのS極に流入した励磁磁束が永久磁石62hの磁束と合成されることにより、第2の合成磁束が発生する。
【0072】
矢印55fで示すように、ティース53fで発生する磁束が内周側から外周側に向いているため、第2の合成磁束は、永久磁石62g及び62hの間の磁極とエアギャップとを通過して、ティース53fに流入する(矢印322)。その後、第2の合成磁束は、固定子コア51を経由して(矢印323)、ティース53aに達する。このようにして、矢印321〜323の順に周回する第2の磁路が形成される。
【0073】
第1の磁路だけでなく、第2の磁路が形成されることにより、負荷状態において、磁束が内周側の領域63b(
図9参照)に集中しない。このため、磁気飽和が狭窄領域66以外の領域で発生することを防ぐことができる。その結果、巻線52に流れる電流の上限を大きくすることができるため、電動発電機2の出力を向上させることができる。
【0074】
図11は、負荷状態の電動発電機2において形成される磁路を示す図である。
図11において、矢印31及び32は、上述した第1の磁路及び第2の磁路に対応する。矢印35は、第1の磁路が形成される前の段階で形成される磁路(矢印312及び313)に対応する。
【0075】
また、
図11に示すように、永久磁石62eが対向するティース53dで発生する磁束も、上記と同様の原理により、磁路33及び34を形成する。すなわち、ティース53dで発生する一部の磁束は、永久磁石62e及び62fよりも回転子6の内周側の領域と、ティース53eを経由して、ティース53dに戻る磁路33を形成する。この磁路は、上記の第1の磁路に対応する。また、ティース53dで発生する一部の磁束は、永久磁石62dとティース53cとを経由してティース53dに戻る磁路34を形成する。この磁路は、上記の第2の磁路に対応する。矢印36は、磁路33が形成される前の段階で形成される磁路に対応する。
【0076】
電動発電機2は、電動機及び発電機のいずれとして動作する場合であっても、磁路31〜34を形成する磁束により発生する磁気吸引力に基づくトルクを利用することができる。回転子6の回転に応じて、磁路31〜34を形成する磁束は、エアギャップ付近で引き伸ばされる。この結果、引き伸ばされた磁束が元の長さに戻るように縮むことにより、上記の磁気吸引力に基づくトルク(第1のトルク)が発生する。
【0077】
また、ティース53で発生する磁束の向きは、巻線52に流れる電流の向きにより変化する。従って、負荷状態において永久磁石62とティース53との間にはたらく反発力、永久磁石62とティース53との間にはたらく吸引力に基づくトルク(第2のトルク)が発生する。
【0078】
従って、電動発電機2は、モータとして動作する場合、第1のトルク及び第2のトルクを利用して回転子6を回転させることができる。その結果、回転子6のトルクを増大させることができるため、モータとしての定格出力を増大させることができる。
【0079】
一方、電動発電機2が発電機として動作する場合、電動発電機2は、第1のトルク及び第2のトルクを利用して発電することができる。従って、コントローラ3は、第1の合成磁束が狭窄領域66の飽和磁束以上になる電流を巻線52に供給すればよい。この結果、電動発電機2が発電機として動作する場合に巻線52に供給される電流は、電動発電機2が電動機として動作する場合に巻線52に供給される電流よりも小さくなる。
【0080】
以上説明したように、無負荷状態において、永久磁石62の磁束は、回転子コア61内で他の永久磁石を通過することなく短絡し、負荷状態において、固定子5及び回転子コア61内を通過する。従って、負荷状態及び無負荷状態において、永久磁石62により発生する界磁を調整することができる。
【0081】
なお、永久磁石62は、
図12に示すように、固定子5と回転子6との間の空間(エアギャップ)に露出していてもよい。これにより、永久磁石62と回転軸Aとの距離が最大となるため、狭窄領域66を通過可能な磁束の量も最大となり、永久磁石62の内周側の領域を通過可能な磁束の量も最大となる。これにより、電動発電機2の出力を向上させることができる。この場合、
図12に示すように、回転子コア61に嵌め込まれた永久磁石62が、回転子6の回転による遠心力により飛び出さないように、永久磁石62の外周面の一部を覆うリブ611を回転子コア61に取り付ければよい。
図12に示すようなリブを回転子コア61に設ける場合、永久磁石62の固定子5側の面と固定子5との距離は、回転子6と固定子5との距離よりも大きくなる。また、
図12に示すようなリブを回転子コア61に設ける場合、永久磁石の固定子5側の面が、磁束を透過する素材により覆われていてもよい。
【0082】
[第2の実施の形態]
図13は、第2の実施の形態に係る電動発電機2の断面図である。
図13に示すように、本実施の形態において、電動発電機2は、固定子8と、回転子9とを備える。
【0083】
回転子9は、回転子コア91と、8つの永久磁石92a〜92hとを備える。永久磁石92a〜92hは、
図2に示す永久磁石62a〜62hに対応する。以下、永久磁石92a〜92hを総称する場合、「永久磁石92」と記載する。上記実施の形態と異なり、永久磁石92の磁束は、無負荷状態において、回転子9から漏洩する。
【0084】
図14は、
図13に示す固定子8の断面図である。固定子8は、無負荷状態において発生する誘起電圧をキャンセルする。
図14に示すように、固定子8は、固定子コア81と、主ティース83a〜83fと、補助ティース84a〜84fと、主巻線85a〜85fと、補助巻線86a〜86fとを備える。
【0085】
主ティース83a〜83fの幅は、補助ティース84a〜84fの幅よりも広い。ただし、
図13及び
図14では、主ティース83a〜83fと補助ティース84a〜84fとの比を誇張して表示し、補助ティース84a〜84fの幅を大きく示している。
【0086】
主巻線85a〜85fは、集中巻により、主ティース83a〜83fの各々に巻かれる。補助巻線86a〜86fは、集中巻により、補助ティース84a〜84fの各々に巻かれる。補助巻線86a〜86fは、主巻線85a〜85fと反対向きに巻かれる。
【0087】
図13及び14に示す固定子8は、
図3に示すスロットコンビネーションにおいて、P=8の場合に対応する。この理由は、互いに隣接する主ティースと補助ティースとの間の空間は、スロットとしてカウントされず、補助ティースを介して隣り合う2つの主ティースの間に形成される空間が、1スロットとしてカウントされるためである。すなわち、固定子8のスロット数は6であり、永久磁石92の数は8であるため、上記式(1)を満たす。
【0088】
固定子8と、
図2に示す固定子5との対応関係は、以下の通りである。固定子8のティース83a〜83fは、固定子5のティース53a〜53fに対応する。主巻線85a〜85fは、巻線52に対応する。
【0089】
図15は、
図14に示す固定子8に巻かれる主巻線及び補助巻線の結線図である。固定子8を備える電動発電機2において、並列回路数は、2である。
図15は、2つの並列回路のうち一方の並列回路を示す。
【0090】
図15に示す回路は、主巻線85a,85c,85eと、補助巻線86a〜86fとの結線図である。なお、主巻線85a,85c,85eとして複数のコイルが示されているが、これら複数のコイルの各々は、主ティースに巻かれた1巻き分のコイルを示している。
【0091】
補助巻線86fと、主巻線85aと、補助巻線86aとは直列に接続される。補助巻線86fは、端子871に接続される。電流i
uが、インバータ4から端子871に供給される。補助巻線86aは、接地される。
【0092】
補助巻線86bと、主巻線85cと、補助巻線86cとは直列に接続される。補助巻線86bは、端子872に接続される。電流i
vが、インバータ4から端子872に供給される。補助巻線86cは、接地される。
【0093】
補助巻線86dと、主巻線85eと、補助巻線86eとは直列に接続される。補助巻線86dは、端子873に接続される。電流i
wが、インバータ4から端子873に供給される。補助巻線86eは、接地される。
【0094】
図16は、無負荷状態において、回転子9から漏洩する磁束(漏洩磁束)が固定子8と鎖交した際に発生する磁路を示す図である。
図16において,主巻線85aのうち、主ティース83aに対する1巻きを、主巻線85a−1,85a−2とし、主巻線85a−1,85a−2を除く主巻線の表示を省略している。また、補助巻線86a,86fは、1巻き分のみを示している。
【0095】
以下、
図15及び
図16を参照しながら、無負荷状態において、誘起電圧がキャンセルされる理由を、永久磁石92a及び92hを例にして説明する。
【0096】
永久磁石92aの磁束は、無負荷状態において、回転子9から漏洩し、固定子8と鎖交する。漏洩磁束が固定子8と鎖交することにより、固定子8及び回転子9を通過する磁路87が形成される。磁路87は、永久磁石92a、補助ティース84a、及び主ティース83aを通過する。
【0097】
同様に、永久磁石92hの磁束が固定子8と鎖交することにより、磁路88が形成される。磁路88は、永久磁石92h、主ティース83a、及び補助ティース84fを通過する。
【0098】
回転子9は、無負荷状態においても回転を続けている。このため、磁路87及び88が形成されることにより、主巻線85a及び補助巻線86a,86fに誘起電圧が発生する。
【0099】
図15に示す矢印は、主巻線85a及び補助巻線86a,86fの各々で発生する誘起電圧の向きを示す。補助巻線86a及び86fは、主巻線85aと反対方向に巻かれているため、補助巻線86a及び86fで発生する誘起電圧の向きは、主巻線85aで発生する誘起電圧の向きと逆である。主巻線85a及び補助巻線86a,86fが直列接続されているため、主巻線85aで発生する誘起電圧は、補助巻線86a及び86fで発生する誘起電圧によりキャンセルされる。
【0100】
発動電動機2の内部が故障により短絡した場合、電動発電機2を無負荷状態に移行させる必要がある。無負荷状態においても、漏れ磁束による誘起電圧を原因とする電流が固定子8で発生することを抑制できるため、電流が、電動発電機2の内部で短絡することがないため、電動発電機2の発熱及び故障を防ぐことができる。
【0101】
図17は、負荷状態において、固定子8及び回転子9に形成される磁路を示す図である。負荷状態においては、インバータ4は、主巻線85a及び補助巻線86a,86fに電流を供給する。補助巻線86a,86fは、主巻線85aと反対向きに巻かれているため、補助巻線86a,86fで発生する磁束は、主巻線85aで発生する磁束をキャンセルする方向に作用する。
【0102】
しかし、補助ティース84a及び84fの幅は、主ティース83aの幅より小さいため、補助ティース84a,84fは、補助ティース84a,84fで発生する磁束により飽和する。従って、負荷状態では、主巻線85aで発生する磁束は、飽和した補助ティース84a,84fを通過することができない。合成された磁束は、磁路89a及び89bを通過する。磁路89aは、上記実施の形態の第1の磁路に相当し、磁路89bは、第2の磁路に相当する。磁路89を通過する磁束により、電動発電機2は、回転子9を回転させたり、回転子9の回転に応じた発電を行ったりすることが可能である。
【0103】
以上、主巻線85a及び補助巻線86a,86fを例に、無負荷状態における誘起電圧がキャンセルされる理由を説明したが、直列接続された主巻線85c及び補助巻線86b,86cについても同様である。直列接続された主巻線85e及び補助巻線86d,86eについても同様である。また、永久磁石92b〜92hについても、上記の説明が同様に成り立つ。また、本実施の形態において、回転子9に代えて回転子6を使用してもよい。
【0104】
[第3の実施の形態]
上記実施の形態では、インナーロータ型の電動発電機2について説明した。しかし、電動発電機2は、アウターロータ型であってもよい。以下、アウターロータ型の電動発電機2について、上記実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0105】
図18は、本実施の形態に係る電動発電機2の断面図である。
図18に示す電動発電機2は、アウターロータ型であり、固定子15と、回転子16とを備える。固定子15は、回転軸Aと同軸に配置される。回転子16は、回転子15の外周に配置される。
【0106】
固定子15は、固定子コア151と、巻線152と、6個のティース153a〜153fとを備える。なお、
図18において、巻線152の一部の符号の表示を省略している。
【0107】
固定子コア151は、円柱形状であり、固定子コア51(
図2参照)と同様の素材により形成される。ティース153a〜153fが、固定子コア151の外周側に設けられる。以下、ティース153a〜153fを総称する場合、「ティース153」と記載する。巻線152は、集中巻によりティース153a〜153fの各々に巻かれる。スロット154は、互いに隣り合う2つのティース153の間の空間である。なお、スロット154の一部の符号の表示を省略している。
【0108】
回転子16は、回転子コア161と、8個の永久磁石162a〜162hとを備える。回転子コア161は、中空の円柱形状であり、回転軸Aを中心に回転する。回転子コア161は、回転子コア61(
図2参照)と同様の素材により形成される。
【0109】
永久磁石162a〜162hは、回転子コア61の周方向に沿って、回転子コア61内に配置される。以下、永久磁石162a〜162hを総称する場合、「永久磁石162」と記載する。永久磁石162の素材は、永久磁石62(
図2参照)と同様である。永久磁石162は、回転子コア161の周方向に沿って着磁される。互いに周方向において隣接する2つの永久磁石は、着磁の方向が反対となる。
【0110】
アウターロータ型の電動発電機2において、周方向に互いに隣接する回転子内の領域が、磁極となる。アウターロータ型の電動発電機2におけるスロットコンビネーションは、
図3に示す通りである。つまり、極数Pとスロット数Sとの関係は、上記実施の形態と同じである。
【0111】
また、アウターロータ型の電動発電機2において、ティース153に対向する永久磁石の数と、回転子16の極数Pとの関係は、
図4に示す通りであり、上記実施の形態と同じである。極数Pに関係なく、永久磁石162は、4個ごとにティース153に対向する。
【0112】
以下、本実施の形態に係る電動発電機2における磁路の変化について説明する。
【0113】
図19は、
図18に示す電動発電機2において無負荷状態のときに形成される磁路を示す図である。以下、永久磁石162aにより形成される磁路について説明する。
【0114】
図19に示すように、永久磁石162aの磁束は、回転子コア161における永久磁石162aよりも外側の領域163を通過する磁路167aを形成する。永久磁石162aの磁束は、回転子コア161内で短絡するため、無負荷状態において回転子16から漏洩しない。
【0115】
実際には、永久磁石162aの磁束の一部は、回転子コア161における永久磁石162aよりも内側の領域164を通過する。しかし、領域164の径方向の長さは、領域163の径方向の長さよりも短い。領域164は、永久磁石162aの磁束により飽和するため、永久磁石162aの磁束の大部分は、領域163を通過して、磁路167aを形成する。
【0116】
永久磁石162b〜162hの各々の磁束も、永久磁石162aの磁束と同様に、磁路167b〜167hを形成する。
【0117】
図20は、
図18に示す電動発電機2において負荷状態のときに、ティース153で発生する磁束の向きを示す図である。
【0118】
図20に示すように、負荷状態において、ティース153a〜153fには、磁束155a〜155fが発生する。
【0119】
磁束155a及び155dの向きは、回転軸Aの方向であり、磁束155b、155c、155e及び155fの向きは、内周から外周に向く方向である。つまり、アウターロータ型の電動発電機2においても、ティース153のうち、永久磁石162aに対向するティース153aと、永久磁石162eに対向するティース153とで発生する磁束は、回転子16が位置する方向に向いている。
【0120】
図21は、
図18に示す電動発電機2において負荷状態のときに形成される磁路を示す図である。
【0121】
図21に示すように、負荷状態において、矢印131〜136で示す磁路が形成される。以下、矢印131〜136で示す磁路を、「磁路131〜136」と呼ぶ。
【0122】
磁路131〜136は、
図11に示す矢印31〜36で示す磁路に相当する。磁路131〜136が形成される過程は、上記第1の実施の形態と基本的に同じである。ただし、本実施の形態に係る電動発電機2は、アウターロータ型であるため、磁路131及び133は、回転子コア161における永久磁石162よりも外側の領域を通過する。
【0123】
本実施の形態において、電動発電機2は、電動機及び発電機のいずれとして動作する場合であっても、磁路131〜136を形成する磁束により発生する磁気吸引力に基づくトルクを利用することができる。このトルクは、上記第1のトルクに相当する。また、負荷状態において永久磁石162とティース153との間にはたらく反発力又は吸引力に基づくトルクが発生する。このトルクは、上記第2のトルクに相当する。従って、本実施の形態に係る電動発電機2は、上記実施の形態に係る電動発電機2と同様に、これらのトルクを利用して電動機又は発電機として動作することが可能である。
【0124】
なお、本実施の形態において、永久磁石162を、固定子15と回転子16との間の空間に露出させてもよい。この場合、上記実施の形態で説明したようなリブ611を用いなくてもよい。回転子16が回転するときに、永久磁石162が永久磁石162に働く遠心力により、回転子コア161に押し付けられるためである。
【0125】
以上説明したように、電動発電機2は、インナーロータ型及びアウターロータ型のいずれであってもよい。つまり、固定子が、回転軸を中心に回転する回転子に対向して配置されていればよい。
【0126】
また、上記実施の形態において、電動発電機2は、負荷状態において、上述した磁路を形成しなくてもよい。すなわち、電動発電機2は、以下の条件を満たしていればよい。つまり、複数の永久磁石は、回転子内に配置され、周方向に着磁される。周方向に互いに隣接する2つの永久磁石において、着磁方向は反対向きである。そして、各永久磁石の磁束は、無負荷状態において、回転子内で短絡する。これにより、永久磁石の磁束が、無負荷状態において回転子から漏洩することを防ぐことができる。
【0127】
[第4の実施の形態]
上記実施の形態では、回転軸を中心に回転するインナーロータ型又はアウターロータ型の電動発電機2について説明した。本実施の形態では、リニアモータについて説明する。
【0128】
図22は、本実施の形態に係るリニアモータ2aの断面図である。
図22に示すリニアモータ2aは、磁石可動型であり、固定子25と可動子26とを備える。固定子25は、矢印B方向及び矢印B方向と反対方向に延びる。以下、矢印B方向を「右方向」、矢印B方向と反対の方向を「左方向」と呼ぶ。可動子26は、固定子25の上を左右方向に移動する。
【0129】
固定子25は、固定子コア251と、巻線252と、ティース253a〜253iとを有する。固定子コア251は、左右方向に延びる部材であり、固定子コア51と同様の素材により形成される。ティース253a〜253iは、固定子コア251から上方に延びており、左右方向に等間隔に配置される。スロット254は、左右方向に互いに隣接する2つのティースの間の空間である。巻線252は、集中巻によりティース253a〜253iの各々に巻かれる。
図22において、一部の巻線252及びスロット254の符号の表示を省略している。
【0130】
なお、図示を省略しているが、固定子25は、ティース253a〜253iの他にも、左右方向に等間隔に配列された複数のティースを有している。以下、固定子コア251が有する複数のティースを総称する場合、「ティース253」と記載する。
【0131】
可動子26は、固定子25の上方に配置され、左右方向に移動可能となるように、図示せぬ支持部材により支持される。可動子26は、可動子コア261と、8個の永久磁石262a〜262hとを有する。以下、永久磁石262a〜262hを総称する場合、「永久磁石262」と記載する。
【0132】
可動子コア261は、固定子コア61と同様の素材により形成される。永久磁石262a〜262は、可動子コア261内に配置される。永久磁石262a〜262hは、永久磁石62と同様の素材に形成され、等間隔となるように左右方向に一列に並べられる。
【0133】
永久磁石262a〜262hにおいて、左右方向に互いに隣り合う2つの永久磁石は、着磁方向が反対である。例えば、互いに隣り合う永久磁石262a及び262bは、S極が対向するように配置される。従って、永久磁石262a及び262bの着磁方向は、左右方向に関して逆向きである。
【0134】
次に、リニアモータ2aにおけるスロットコンビネーションを説明する。
図23は、リニアモータ2aのスロットコンビネーションを示すテーブルである。リニアモータ2aにおいて、磁極268は、可動子26において左右方向に互いに隣接する2つの永久磁石の間の領域である。磁極268は、可動子26の外部からの磁束が可動子26内に流入可能な領域であり、可動子26内の磁束が可動子26の外に流出可能な領域である。
【0135】
なお、磁束は、永久磁石262aと可動子26の左端との間の領域265a、又は永久磁石262hと可動子26の右端との間の領域265bを経由して、可動子26から出入り可能である。しかし、領域265a,265bは、磁極としてカウントされない。これは、永久磁石262a(262h)が、可動子26の左端(右端)に露出していてもよいためである。従って、磁極268の数(極数)は、上記実施の形態と異なり、永久磁石の数(4の倍数)よりも1つ少なくなる。
【0136】
この結果、
図23に示すように、極数をP、スロット数をSとした場合、スロット数Sと極数Pとの関係は、下記の式(3)を満たす。
【0137】
S=(3/4)×(P+1) ・・・(3)
【0138】
式(3)において、スロット数Sは、8個の永久磁石262a〜262hが配置される矢印B方向の範囲R内に位置するスロット254の数である。
図22に示すリニアモータ2aの場合、スロット数Sは、6である。
【0139】
可動子26内の永久磁石の数Mと、ティース253に対向する永久磁石との関係は、上記実施の形態と同様に、
図4と同様である。つまり、永久磁石262の数Mは、4の倍数であり、永久磁石262は、永久磁石の数Mに関係なく、4個おきにティース53に対向する。
【0140】
以下、本実施の形態に係るリニアモータ2aにおける磁路の変化について説明する。
【0141】
図24は、
図22に示すリニアモータ2aにおいて無負荷状態のときに形成される磁路を示す図である。以下、永久磁石262dにより形成される磁路について説明する。
【0142】
図24に示すように、永久磁石262dの磁束は、磁路267dを形成する。磁路267dは、永久磁石262dを基準にして、可動子コア261における固定子25が存在する方向の領域264と反対の領域263を通過する。永久磁石262dの磁束は、可動子コア261内で短絡するため、無負荷状態において可動子26から漏洩しない。
【0143】
実際には、永久磁石262dの磁束の一部は、領域264を通過する。しかし、領域264の上下方向の長さは、領域263の上下方向の長さよりも短い。領域264は、永久磁石262dの磁束により飽和するため、永久磁石262dの磁束の大部分は、領域263を通過して、磁路267dを形成する。
【0144】
永久磁石262dを除く永久磁石262の各々の磁束も、永久磁石262dの磁束と同様に、磁路267a〜267c,267e〜267hを形成する。
【0145】
図25は、
図22に示すリニアモータ2aにおいて負荷状態のときにティース253で発生する磁束の向きを示す図である。
【0146】
図25に示すように、負荷状態において、ティース253a〜253iには、磁束255a〜255iが発生する。上向き(可動子26が位置する方向)の磁束が、永久磁石262cが対向するティース253cと、永久磁石262gが対向するティース253fとで発生する。上向きの磁束は、3つのティースおきに発生するため、磁束255iは、上方向に向く。下向き(可動子26が位置する方向と反対方向)の磁束が、永久磁石が対向しないティース253a,253b,253d,253e,253g,253hで発生する。
【0147】
図26は、
図18に示すリニアモータ2aにおいて負荷状態のときに形成される磁路を示す図である。
【0148】
図26に示すように、負荷状態において、矢印231〜236で示す磁路が形成される。以下、矢印231〜236で示す磁路を、「磁路231〜236」と呼ぶ。
【0149】
磁路231〜236は、
図11に示す矢印31〜36で示す磁路に相当する。磁路231〜236が形成される過程は、上記第1の実施の形態と基本的に同じである。ただし、リニアモータ2aにおいて、磁路231及び233は、可動子コア261において永久磁石262よりも上の領域(永久磁石262を基準にして固定子25が位置する方向と反対の領域)を通過する。
【0150】
本実施の形態において、リニアモータ2aは、電動機及び発電機のいずれとして動作する場合であっても、磁路231〜236を形成する磁束により発生する磁気吸引力を利用することができる。また、負荷状態において永久磁石262とティース253との間にはたらく反発力又は吸引力が発生する。従って、本実施の形態に係るリニアモータ2aは、上記実施の形態に係る電動発電機2と同様に、磁気吸引力等を利用して電動機又は発電機として動作することが可能である。
【0151】
また、本実施の形態において、リニアモータ2aは、負荷状態において、上述した磁路231〜236の全てを形成しなくてもよい。すなわち、電動発電機2は、以下の条件を満たしていればよい。つまり、複数の永久磁石は、可動子内に配置され、可動子の移動方向に着磁される。移動方向に互いに隣接する2つの永久磁石において、着磁方向は反対向きである。そして、各永久磁石の磁束は、無負荷状態において、可動子内で短絡する。これにより、永久磁石の磁束が、無負荷状態において可動子から漏洩することを防ぐことができる。
【0152】
また、本実施の形態において、リニアモータ2aが磁石可動型である場合を例に説明したが、これに限られない。リニアモータ2aは、コイル可動型であってもよい。つまり、リニアモータ2aの固定子が、等間隔に配置された複数の永久磁石を備え、可動子が、固定子の位置する方向に向かって伸びるティースと、ティースに巻かれた巻線とを備えてもよい。この場合、可動子に対向する範囲に存在する永久磁石の数が、4の倍数となるとともに、リニアモータ2aが、
図23に示すスロットコンビネーションを有していればよい。
【0153】
上記実施の形態では、永久磁石の各々が1つの磁石により構成されている例を説明したが、これに限られない。例えば、複数の永久磁石(以下、便宜的に「要素磁石」と呼ぶ。)を径方向又は周方向に並べることにより、永久磁石62aを構成するようにしてもよい。この場合、永久磁石62aは、複数の要素磁石を有する。例えば、永久磁石62aは、複数の要素磁石を周方向に配列したものであってもよい。永久磁石62aは、複数の要素磁石を径方向に配列したものであってもよい。あるいは、複数の永久磁石は、周方向及び径方向の各方向に配列されることにより、永久磁石62aを構成してもよい。この場合、要素磁石は、所定の間隔を空けるようにして配置されてもよいし、他の要素磁石と密着していてもよい。
【0154】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。