特許第6398186号(P6398186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398186自在継手、自在継手の加締め及び自在継手の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398186
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】自在継手、自在継手の加締め及び自在継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/40 20060101AFI20180920BHJP
   B21D 39/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   F16D3/40 M
   B21D39/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-261217(P2013-261217)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-117760(P2015-117760A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】仲村 拓真
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】金井 知幸
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭46−1690(JP,Y1)
【文献】 特開2006−234114(JP,A)
【文献】 特開2010−242855(JP,A)
【文献】 実開平5−93627(JP,U)
【文献】 実開昭54−61160(JP,U)
【文献】 実開昭47−29140(JP,U)
【文献】 実開昭58−826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00− 9/10
B21D 39/00− 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のヨークと、
前記一対のヨークを連結する十字軸と、
前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備え、
前記ヨークには、前記軸受が嵌められる貫通穴である軸受穴と、前記軸受に対して前記十字軸の反対側に位置する前記軸受穴の内周面から当該軸受穴の内側に向かって延出する加締めとが設けられ、
前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角であり、かつ、前記加締めの前記反対側の面に連続する前記ヨークの面は前記軸受穴の内面と平行であり、
前記加締めは、前記角に対応する鋭角の突出部を有する工具を前記反対側から前記ヨークに押し付けることで形成される、自在継手。
【請求項2】
一対のヨークと、前記一対のヨークを連結する十字軸と、前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備える自在継手において前記軸受が嵌められる貫通穴である前記ヨークの軸受穴の内周面における前記軸受に対して前記十字軸の反対側から当該軸受穴の内側に向かって延出する自在継手の加締めであって、
前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角であり、かつ、前記加締めの前記反対側の面に連続する前記ヨークの面は前記軸受穴の内面と平行であり、
前記角に対応する鋭角の突出部を有する工具を前記反対側から前記ヨークに押し付けることで形成される、自在継手の加締め。
【請求項3】
一対のヨークと、前記一対のヨークを連結する十字軸と、前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備え、前記ヨークには、前記軸受が嵌められる貫通穴である軸受穴と、前記軸受に対して前記十字軸の反対側に位置する前記軸受穴の内周面から当該軸受穴の内側に向かって延出する加締めとが設けられる自在継手の製造方法であって、
前記ヨークの前記反対側から鋭角を有する工具を前記ヨークに押し付けて、前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角となり、かつ、前記加締めの前記反対側の面に連続する前記ヨークの面は前記軸受穴の内面と平行である加締めを形成する、自在継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のステアリングジョイント等として用いられる自在継手、当該自在継手の加締め及び当該自在継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置は、図13に示すように、ステアリングホイール11、ステアリングシャフト12、自在継手13A,13B、中間シャフト14、ステアリングギアユニット15、タイロッド16等を備える。運転者によって操作されるステアリングホイール11の動きは、ステアリングシャフト12、自在継手13A、中間シャフト14、自在継手13B及びステアリングギアユニット15を介してタイロッド16に伝達される。
【0003】
係るステアリング装置の自在継手として、特許文献1に記載されているような、カルダン継手と呼ばれる十字軸継手が知られている。カルダン継手は、十字軸を介して一対のヨークを連結した自在継手である。ここで、ヨークと十字軸とが回動することから、ヨークと十字軸との連結位置には軸受が設けられている。また、ヨークから軸受が脱落しないよう、ヨークに加締めが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−159864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の自在継手において軸受を係止する加締めを形成するためには大きな押圧力が必要であった。
【0006】
図14は、従来のカルダン継手における加締め21の形成方法の一例を示す図である。図14に示すように、加締め21は、軸受22に対して十字軸23の反対側からヨーク24に押し付けられる工具25により形成される。ここで、加締め21を形成する工具25の軸受22側の面25Aと、加締め21が形成される面21Aとが平行である。このような加締め21の形成方法では、加締め21の形成に要求される工具25の押圧力が大きい。このため、工具25を押し付けるための設備の大型化を免れない。また、係る大きな押圧力を必要とする加締め形成工程では、複数回の加締め形成動作における押圧力の印加と解除のサイクルタイムを縮めることが困難であり、非効率である。
【0007】
本発明は、より小さな力で加締めを形成することができる自在継手を提供することを目的とする。また、本発明は、より小さな力で形成することができる自在継手の加締めを提供することを目的とする。また、本発明は、より小さな力で加締めを形成することができる自在継手の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の自在継手は、一対のヨークと、前記一対のヨークを連結する十字軸と、前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備え、前記ヨークには、前記軸受が嵌められる貫通穴である軸受穴と、前記軸受に対して前記十字軸の反対側に位置する前記軸受穴の内周面から当該軸受穴の内側に向かって延出する加締めとが設けられ、前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角である。
【0009】
従って、軸受に対して十字軸の反対側で軸受を係止する加締めの形成時に加えられる力は、当該反対側に面する加締めの面とヨークとの間の角が鋭角となるように加えられる力である。よって、軸受穴に対する軸受の挿入方向に対して直交する平面に沿った面が当該反対側に形成される加締めに比して、加締めの形成に係る押圧力を鋭角の先端部分により集中することができる。すなわち押圧力をより集中することができる分、加締めの形成時にヨークに加えられる全体の力をより小さくすることができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。
【0010】
本発明の自在継手では、前記加締めは、前記角に対応する鋭角の突出部を有する工具を前記反対側から前記ヨークに押し付けることで形成される。
【0011】
従って、突出部の鋭角によって当該鋭角の先端部による押圧力の集中を容易に実現することができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。また、ヨークに対する突出部の進入によってヨークにせん断応力を加えて、軸受穴の縁を軸受穴の内側に延出させることができる。すなわち圧縮応力だけでなくせん断応力によって加締めを形成することができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の自在継手の加締めは、一対のヨークと、前記一対のヨークを連結する十字軸と、前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備える自在継手において前記軸受が嵌められる貫通穴である前記ヨークの軸受穴の内周面における前記軸受に対して前記十字軸の反対側から当該軸受穴の内側に向かって延出する自在継手の加締めであって、前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角である。
【0013】
従って、軸受に対して十字軸の反対側で軸受を係止する加締めの形成時に加えられる力は、当該反対側に面する加締めの面とヨークとの間の角が鋭角となるように加えられる力であることから、加締めの形成に係る押圧力を鋭角の先端部分により集中することができる分、加締めの形成時にヨークに加えられる全体の力をより小さくすることができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の自在継手の製造方法は、一対のヨークと、前記一対のヨークを連結する十字軸と、前記ヨークと前記十字軸との間に介在するよう設けられる軸受と、を備え、前記ヨークには、前記軸受が嵌められる貫通穴である軸受穴と、前記軸受に対して前記十字軸の反対側に位置する前記軸受穴の内周面から当該軸受穴の内側に向かって延出する加締めとが設けられる自在継手の製造方法であって、前記ヨークの前記反対側から鋭角を有する工具を前記ヨークに押し付けて、前記加締めの前記反対側の面と当該面に連続する前記ヨークの面との間の角が鋭角となる加締めを形成する。
【0015】
従って、軸受に対して十字軸の反対側で軸受を係止する加締めの形成時に加えられる力は、当該反対側に面する加締めの面とヨークとの間の角が鋭角となるように加えられる力であることから、加締めの形成に係る押圧力を鋭角の先端部分により集中することができる分、加締めの形成時にヨークに加えられる全体の力をより小さくすることができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。また、工具の鋭角によって当該鋭角の先端部による押圧力の集中を容易に実現することができるので、より小さな力で加締めを形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の自在継手によれば、より小さな力で加締めを形成することができる。また、本発明の自在継手の加締めによれば、より小さな力で形成することができる。また、本発明の自在継手の製造方法によれば、より小さな力で加締めを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明による自在継手を備える中間シャフトを示す図である。
図2図2は、一つの軸部に設けられる軸受付近の拡大断面図である。
図3図3は、加締めの位置の一例を示す図である。
図4図4は、工具による加締めの形成の一例を示す図である。
図5図5は、工具による加締めの形成の一例を示す図である。
図6図6は、工具による加締めの形成の一例を示す図である。
図7図7は、工具の突出部の鋭角よりも小さい開口角度で加締めと軸受穴の角が形成される場合の一例を示す図である。
図8図8は、図3とは異なる加締めの位置の一例を示す図である。
図9図9は、図3とは異なる加締めの位置の一例を示す図である。
図10図10は、図3とは異なる加締めの位置の一例を示す図である。
図11図11は、図4図7に示す工具とは別の工具による加締めの形成の一例を示す図である。
図12図12は、先端が加工された加締めの一例を示す図である。
図13図13は、自動車のステアリング装置の主要構成を示す図である。
図14図14は、従来のカルダン継手における加締めの形成方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
図1は、本発明による自在継手10を二組備える中間シャフト1を示す図である。二組の自在継手のうち一組の自在継手10(図1の右側)については、ヨーク2、十字軸4及び軸受5の位置関係を示すため、断面図としている。
【0020】
中間シャフト1は、例えば、シャフト部3、二組の自在継手10を備える。自在継手10はそれぞれ、一対のヨーク2、十字軸4、四つの軸受5等を備える。これらの部材は、例えば、金属製の構造体を主要部とし、樹脂その他の材料からなる部品との組み合わせにより構成されるが、一例であってこれに限られるものでなく、適宜変更可能である。
【0021】
ヨーク2は、その内側に十字軸4を収めることができるように設けられた二又状の部材である。例えば図1に示すように、ヨーク2は、シャフト部3が延設された側と反対側に延設された二又の先端側がコの字状になっている。
【0022】
シャフト部3は、二組の自在継手10を構成する一対のヨーク2のうち一方のヨーク2同士を同一軸線上に固定する。具体的には、シャフト部3は、例えば、二つのヨーク2のうち一方のヨーク2から延設された棒状の挿入シャフト3Aと、他方のヨーク2から延設された筒状の被挿入シャフト3Bからなる。挿入シャフト3Aが被挿入シャフト3Bに挿入された状態で固定されることで、二つのヨーク2がシャフト部3を介して同一軸線上に固定される。
【0023】
十字軸4は、同一平面に沿って互いに直交する二つの軸線の交差点を中心として、当該二つの軸線の各々に沿って外側に延設された円柱状の四つの軸部4Aを有する。すなわち十字軸4は、十字状の形状である。
【0024】
軸受5は、十字軸4の四つの軸部4Aの各々とヨーク2とを回動可能に連結する。具体的には、軸受5は、例えば、ニードルベアリング等のラジアル軸受である。軸受5は、その内側で十字軸4の四つの軸部4Aの各々の円筒状の外周面と当接し、その外周側でヨーク2に設けられた軸受穴2Aの内周面2Bと当接する。このように、軸受5は、ヨーク2と十字軸4との間に介在するよう設けられる。
【0025】
十字軸4は、一組の自在継手10を構成する一対のヨーク2を連結する。具体的には、十字軸4の四つの軸部4Aのうち同一軸線上に存する二つの軸部4A(一組の軸部)の一方と、一対のヨーク2のうち一方のヨーク2とが連結される。また、一組の軸部の他方と、他方のヨーク2とが連結される。このように、一対のヨーク2は、十字軸4の交差点を介して互いに対向する二又の分岐の先端側が直交する位置関係で連結される。また、軸受5を介した連結により、十字軸4とヨーク2の各々とが回動可能に設けられることから、十字軸4の二つの軸線を回動軸として、一対のヨーク2同士も回動可能に連結されることになる。
【0026】
図2は、一つの軸部4Aに設けられる軸受5付近の拡大断面図である。軸受5は、軸部4Aの先端側に位置する側面5Aで軸部4Aの先端を覆う。また、軸受5は、側面5A側で加締め6に係止される。
【0027】
ヨーク2には、軸受穴2Aと、加締め6とが設けられる。軸受穴2Aは、十字軸4とヨーク2との回動軸方向、すなわち十字軸4の軸部4Aの中心軸方向に沿って延設される貫通穴である。加締め6は、軸受5に対して十字軸4の反対側に位置する軸受穴2Aの内周面2Bから当該軸受穴2Aの内側に向かって延出する。ここで、加締め6の反対側の面6Aと、面6Aに連続するヨーク2の面(例えば内周面2B)との間の角Sが鋭角である。具体的には、加締め6は、軸受5の外側に位置して軸受5に当接しない部分の軸受穴2Aの内周面2Bから延出する。ここで、加締め6の反対側(図2に示す上側)の面6Aと加締め6の外側に位置する軸受穴2Aの内周面2Bにより形成される角Sの開口角度は、90°未満の鋭角である。
【0028】
図3は、加締め6の位置の一例を示す図である。例えば図3に示すように、ヨーク2には、軸受穴2Aが描く円形の中心を挟んで対向する一対の加締め6が二組設けられる。軸受穴2Aの中心軸は、当該軸受穴2Aに嵌められる軸受5及び当該軸受5が設けられる軸部4Aの中心軸と重なる。
【0029】
図4図6は、工具7による加締め6の形成の一例を示す図である。加締め6は、加締め6とヨーク2の面(例えば内周面2B)との間の角Sに対応する鋭角の突出部7Aを有する工具7を反対側からヨーク2に押し付けることで形成される。具体的には、例えば図4図6に示すように、工具7は、突出部7Aを有する。突出部7Aは、工具7の先端側に設けられる。突出部7Aは、ヨーク2に向けられた側の先端が90°未満の鋭角となっている。
【0030】
図4に示すように、突出部7Aの先端は、ヨーク2の反対側の面(図4に示す上側の面)に押し付けられる。工具7は、例えば二つの突出部7Aを有する。ここで、軸受穴2Aの中心軸に直交する方向(図2における左右方向)に沿う二つの突出部7Aの先端同士の間隔は、軸受穴2Aの径よりも大きい。これによって、工具7をヨーク2の反対側の面に押し付けることで、ヨーク2の反対側の面における軸受穴2A付近(縁)の二か所に二つの突出部7Aを押し付けることができる。また、これによって、図3等に示すように、加締め6は、軸受穴2Aの縁が描く円形の円周よりも外側から内側に延出する構造となる。
【0031】
工具7がヨーク2の反対側の面に押し付けられることで、図5に示すように、突出部7Aが軸受穴2Aの縁に食い込む。これに伴い、軸受穴2Aの縁が突出部7Aの先端の鋭角に応じて軸受穴2Aの内側に押し出されるように延出する。これによって、軸受穴2Aの内側に延出した部分が加締め6となる。また、図6に示すように、突出部7Aが押し付けられていた側の加締め6の面6Aと、当該面6Aに連続するヨーク2の面(例えば内周面2B)との間の角Sは、突出部7Aの鋭角に対応した鋭角となる。
【0032】
角Sの開口角度は、必ずしも突出部7Aの先端の角度と同一とならない。例えば、図6に示す加締め6と軸受穴2Aとの間の角Sの開口角度は、突出部7Aの先端の角度よりも大きい鋭角である。これは、加締め6の形成時における工具7の押し付けに伴い、ヨーク2のうち軸受穴2Aの縁を形成していた部分が加締め6の根元部分に圧縮されることで加締め6の先端側が軸受穴2Aの内側に押しのけられるように延出することによる。
【0033】
図7は、工具7の突出部7Aの鋭角よりも小さい開口角度で加締め6の反対側の面6Aとヨーク2の面との間の角Sが形成される場合の一例を示す図である。図7に示す例のように、突出部7Aが押し付けられることにより形成された角Sの開口角度は、加締め6として軸受穴2Aの内周面2B側に延出された部分を構成する素材の弾性等によって縮められることがある。この場合、開口角度は、突出部7Aの先端の角度よりも小さくなる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、軸受5に対して十字軸4の反対側で軸受5を係止する加締め6の形成時に加えられる力は、当該反対側に面する加締め6の面6Aとヨーク2との間の角Sが鋭角となるように加えられる力である。よって、加締め6の形成に係る押圧力を鋭角の先端部分により集中することができる。すなわち押圧力をより集中することができる分、加締め6の形成時にヨーク2に加えられる全体の力をより小さくすることができるので、より小さな力で加締め6を形成することができる。
【0035】
また、突出部7Aの鋭角によって当該鋭角の先端部による押圧力の集中を容易に実現することができるので、より小さな力で加締め6を形成することができる。また、ヨーク2に対する突出部7Aの進入によってヨーク2にせん断応力を加えて、軸受穴2Aの縁を軸受穴2Aの内側に延出させることができる。すなわち圧縮応力だけでなくせん断応力によって加締め6を形成することができるので、より小さな力で加締め6を形成することができる。
【0036】
図3に示す加締め6の位置は、一例であってこれに限られるものでない。加締め6の位置は、軸受5を係止することができる範囲内で、適宜変更可能である。図8図10は、図3とは異なる加締め6の位置の一例を示す図である。例えば、図8図9に示すように、三組以上の一対の加締め6がヨーク2に設けられてもよい。また、図10に示すように、加締め6の各々の位置と軸受穴2Aの縁が描く円周の中心とを結ぶ直線同士が形成する角度が均等な角度(例えば120°)となるように配置された複数の加締め6がヨーク2に設けられてもよい。
【0037】
図4図7に示す工具7は、二つの突出部7Aによって二つの加締め6を同時に形成しているが、一例であってこれに限られるものでない。図11は、図4図7に示す工具7とは別の工具8による加締め6の形成の一例を示す図である。例えば、図11に示すように、工具8は、先端が鋭角である単一の突出部8Aを有していてもよい。また、係る工具8は、軸受穴2Aの内周面2Bに押し付けられてもよい。この場合、図11に示すように、工具8は、軸受穴2Aの中心軸に対して傾斜する角度で外側から押し付けられる。これによって、軸受穴2Aの内周面2Bの一部が軸受穴2Aの内側に押し出されるように延出して、加締め6を形成する。また、このとき、軸受5の反対側に面する加締め6の面と、当該面に連続するヨーク2の面との間の角Sの開口角度は、工具8の突出部8Aの鋭角に応じた鋭角となる。
【0038】
加締め6の先端の形状は未加工であってもよいし、加締め6の形成後に加工されてもよい。図12は、先端が加工された加締め6の一例を示す図である。例えば、図12に示すように、加締め6は、その先端が鋭角とならないように形成後に先端を加工(角落とし)されてもよい。角落としされても、加締め6の根元部分によって軸受5を係止することができる。また、構造的に細い先端をあらかじめなくすことで、加締め6の物理的強度を高めることができる。
【0039】
図6図7図11の例にて示すように、軸受穴2Aの内周面2Bにおいて加締め6が延出される位置は、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 中間シャフト
2 ヨーク
2A 軸受穴
3 シャフト部
4 十字軸
5 軸受
6 加締め
7,8 工具
7A,8A 突出部
10 自在継手
S 角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14