(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
復水室内に複数本並んで設けられた細管と、各細管の両端側にそれぞれ設けられた一対の管板とを有する熱交換器で、冷却水が漏出する細管を検出するリーク検出装置において、
一対の前記管板それぞれに配設され、複数本の前記細管のうちの一部の複数本からなる細管群の両端部それぞれを覆って密閉する一対の被覆部材と、前記被覆部材に接続され、当該被覆部材を通じて前記細管群の内部にヘリウムガスを供給する供給手段と、前記復水室内におけるヘリウムガスを検出する検出手段とを備え、
前記検出手段は、前記ヘリウムガスのヘリウム反応度を検出可能に設けられ、
前記ヘリウム反応度の検出結果から、リーク箇所の流路面積及び冷却水のリーク量を推算する演算手段を更に備え、
前記被覆部材は、前記管板と平行に位置する矩形状の主壁と、当該主壁の外周に連設されて管板に向かって延在する周壁とを備えて前記管板側を開放する箱状をなし、透明な材料によって形成され、
前記周壁に、前記供給手段と前記被覆部材とを接続する配管の一端が接続され、前記周壁における前記配管の接続部分からヘリウムガスが前記主壁に沿って供給されることを特徴とする熱交換器細管のリーク検出装置。
前記被覆部材を配設する工程を行う前に、前記管板を複数領域に区分してから各領域にヘリウムガスを供給し、区分した領域毎に前記復水室の内部におけるヘリウムガスを検出することを特徴とする請求項3に記載の熱交換器細管のリーク検出方法。
【背景技術】
【0002】
発電プラントには、タービンにて仕事を終えた蒸気を復水室内で凝縮水に戻し、再度ボイラ給水として循環利用するために復水器が設けられている(例えば、特許文献1参照)。復水器の復水室内では、蒸気を凝縮水に状態変化させるために、多量な潜熱を除去する熱交換を行う必要がある。この熱交換を行うため、復水器は、多数の伝熱細管を復水室内に備え、かかる細管の内部に流し込む多量な冷却水が必要となる。この冷却水の水源としては、海水、河川水、冷却塔水などが用いられている。
【0003】
復水器では、細管に損傷が発生した場合、細管内の冷却水が漏出して凝縮水に混入してしまう。その結果、冷却水中の不純物が混入した状態でボイラ給水として循環利用され、不純物が発電サイクル機器へ重大な障害を及ぼすこととなる。この障害としては、冷却水が海水である場合、高温のボイラ蒸発管損傷、高圧のボイラ給水ポンプ間隙部の腐食、高速回転のしかも狭い間隙部位の多い蒸気タービン腐食が挙げられる。
【0004】
上記障害に対する復旧作業として、腐食等が発生した各機器の温水洗浄や化学洗浄が挙げられ、大規模な補修作業と長期停止を必要とする。しかも、完全な汚染物の除去は困難であるばかりでなく、機器を全分解して洗浄するにも、機械の構造上の理由から無理があり、少なからずの痕跡が残ってしまう。従って、健全なプラント運転のためには、細管における冷却水のリークに対し、迅速で確実性の高い対応が求められる。
【0005】
ここで、細管の冷却水リークに対応すべく、リーク箇所を有する細管の検出方法としては、以下に述べる水張り法、ビニールシート法と称される方法が行われている。水張り方法では、復水器の復水室内であって細管の外側空間に純水を貯留し、数十時間程度の間を放置させる。その後、目視によって、全ての細管に対し、内部における純水の漏れの有無を確認することで、リーク箇所がある細管を検出する。
【0006】
ビニールシート法では、先ず、各細管の両端側に位置する管板を濡らしてビニールシートを貼り付けてから、復水室内を真空状態とする。このとき、細管にリーク箇所があると、そのリーク箇所において細管の内部から外部に空気が吸い出される。この吸い出しによって、リーク箇所がある細管の端部のビニールシートが凹んだ状態となり、この凹みを目視することでリーク箇所がある細管を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記水張り法では、多量の純水を貯留し、更に数十時間待機する必要があり、リーク箇所を有する細管を検出する時間が長時間になる、という問題がある。また、通常運転時の復水器では、細管の内部の方が外部より高圧となるのに対し、水張り法の検出時では圧力の関係が逆になる。この関係に起因してリーク箇所が塞がったり、細管内にスケールが堆積している場合、スケールがリーク箇所の一部を塞いだりして検出精度が低下する、という問題がある。
【0009】
更に、上記の2つの方法では、水漏れやビニールシートの凹みを目視によって確認するものであるが、それらは極めて視認し難いものであり、リーク箇所を有する細管を選別する精度としては十分でない、という問題もある。特に、比較的小さい大きさの損傷になると、目視による確認がより困難になる。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、リーク箇所を有する細管の検出時間を短縮することができ、検出精度を向上することができる熱交換器細管のリーク検出装置及びリーク検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の熱交換器細管のリーク検出装置は、復水室内に複数本並んで設けられた細管と、各細管の両端側にそれぞれ設けられた一対の管板とを有する熱交換器で、冷却水が漏出する細管を検出するリーク検出装置において、一対の前記管板それぞれに配設され、複数本の前記細管のうちの一部の複数本からなる細管群の両端部それぞれを覆って密閉する一対の被覆部材と、前記被覆部材に接続され、当該被覆部材を通じて前記細管群の内部にヘリウムガスを供給する供給手段と、前記復水室内におけるヘリウムガスを検出する検出手段とを備え、前記検出手段は、前記ヘリウムガスのヘリウム反応度を検出可能に設けられ、前記ヘリウム反応度の検出結果から、リーク箇所の流路面積及び冷却水のリーク量を推算する演算手段を更に備え
、前記被覆部材は、前記管板と平行に位置する矩形状の主壁と、当該主壁の外周に連設されて管板に向かって延在する周壁とを備えて前記管板側を開放する箱状をなし、透明な材料によって形成され、前記周壁に、前記供給手段と前記被覆部材とを接続する配管の一端が接続され、前記周壁における前記配管の接続部分からヘリウムガスが前記主壁に沿って供給されていることを特徴とする。
【0012】
上記熱交換器細管のリーク検出装置によれば、複数本の細管からなる細管群を一対の被覆部材で密閉することができる。そして、この密閉した空間にヘリウムガスを供給して冷却水がリークするリーク箇所から漏出したヘリウムガスを検出し、細管群においてリーク箇所を有する細管の有無を検出することができる。これにより、上記水張り法に比べ、純水を貯留して待機する時間をなくすことができ、検出に要する時間の短縮化を図ることができる。また、上記の2つの従来方法に比べ、目視に依存せず、且つ、ヘリウムガスの特性を利用することで、検出感度を十分としつつ、リーク箇所が微細な孔でも検出可能となり、検出の精度向上を図ることができる。更に、ヘリウムガスの供給によって、通常運転時と同様に細管の内部の方が外部より高圧として検出を行うことができ、リーク箇所が存在するにも拘らず塞がることを防止することができる。また、細管におけるリーク箇所の具体的な情報を得ることができる。
更に、被覆部材が箱状をなすので、作業者による把持や、管板に対する位置変更等の作業の容易化を図ることできる。また、被覆部材を透明としたので、密閉する細管を視認可能として、作業性を高めることができる。
【0013】
上記熱交換器細管のリーク検出装置において、前記被覆部材は、前記管板の面内における任意の位置に配設可能に設けられるとよい。この構成では、管板の任意の箇所における細管群を被覆部材で密閉でき、密閉する細管群を選択する自由度を持たせることができる。
【0016】
また、本発明の熱交換器細管のリーク検出方法は、復水室内に複数本並んで設けられた細管と、各細管の両端側にそれぞれ設けられた一対の管板とを有する熱交換器で、冷却水が漏出する細管を
上記熱交換器細管のリーク検出装置で検出するリーク検出方法において、複数本の前記細管のうちの一部の複数本からなる細管群の両端部それぞれを覆うように一対の前記管板それぞれに被覆部材を配設する工程と、前記
周壁における前記配管の接続部分からヘリウムガスが前記主壁に沿って供給されて前記被覆部材を通じて前記細管群の内部にヘリウムガスを供給する工程と、前記復水室内におけるヘリウムガスを検出して当該ヘリウムガスのヘリウム反応度を検出する工程とを行い、その後、前記ヘリウム反応度の検出結果から、リーク箇所の流路面積及び冷却水のリーク量を推算することを特徴とする。
【0017】
上記熱交換器細管のリーク検出方法において、前記被覆部材を配設する工程を行う前に、前記管板を複数領域に区分してから各領域にヘリウムガスを供給し、区分した領域毎に前記復水室の内部におけるヘリウムガスを検出するとよい。この方法では、被覆部材を用いた検出を行う前に、管板を区分した領域内に検出対象となる細管を絞り込むことができる。これにより、被覆部材を用いて検出する細管の本数を少なくすることができ、検出作業時間をより短縮することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リーク箇所を有する細管の検出時間を短縮することができ、検出精度を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る熱交換器及びリーク検出装置のシステム構成を示すブロック図である。
【0022】
図1に示すように、熱交換器としての復水器1には、タービン2が接続されている。タービン2は、ボイラから蒸気の供給を受けて発電機を駆動し、タービン2内で仕事を終えた蒸気は復水器1に導かれる。復水器1に導かれた蒸気は、冷却されて凝縮水に戻り、ボイラ給水として循環利用される。
【0023】
リーク検出装置10は、復水器1の後述する管板31に沿って配設される一対の被覆部材11と、一方の被覆部材11に接続されてヘリウムガスを供給する供給手段12とを有している。供給手段12は、ヘリウムガスが充填されたガスボンベ等を含む。また、供給手段12には、ヘリウムガスを噴出する噴出器13が設けられ、噴射器13は、ヘリウムガスの噴射範囲を適宜選択可能に構成される。
【0024】
リーク検出装置10は、復水器1内の空気を抽出する空気抽出装置14と、空気抽出装置14の入口側に湿分分離器15を介して接続された検出手段としてのヘリウム検知器16と、ヘリウム検知器16内を真空引きする真空ポンプ18と、ヘリウム検知器16で検知されたデータを取り込む演算手段としてのパーソナルコンピュータ19とを更に有している。パーソナルコンピュータ19は、後述する反応カーブデータベース20を有している。リーク検出装置10では、復水器1の真空系統におけるヘリウムガスが空気抽出装置14の入口側から排出されて湿分分離器15にて湿分と分離されてからヘリウム検知器16で検出される。ヘリウム検知器16では、ヘリウムガスの濃度がヘリウム反応度として検出され、パーソナルコンピュータ19に送られる。
【0025】
次に、復水器1及びリーク検出装置10の要部の構造について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、復水器を構成する管板に被覆部材を取り付けた状態を示す説明図であり、
図3は、
図2の模式的な縦断面図である。
図2に示すように、復水器1は、それぞれ独立した冷却系統を備えた2つの復水室26に区分されている。この2つの復水室26は、概略同様の構造とされ、仕切り壁27を介して
図2中左右に隣り合って配設されている。
図2及び
図3に示すように、復水器1において、各復水室26には、複数本並んで設けられた細管30と、各細管30の両端側にそれぞれ設けられた一対の管板31(
図2では一方を不図示)とがそれぞれ設けられる。各細管30は、復水室26の内部で水平方向に延在し、一つの復水室26に対し、例えば1万本の細管30が設けられる。また、本実施の形態において、各細管30の配設位置は、
図2のように端部側から見たときに、複数の縦長三角形が横並びとなるフォーク状を呈している。これは、タービン2から細管30への蒸気の流れを考慮したものであるが、一例にすぎないものであり、他の配設位置を採用してもよい。
【0026】
図3に示すように、復水室26において、一対の管板31の間には、タービン2(
図1参照)からの蒸気が導入される蒸気側空間33が形成される。一方、各管板31の外側は、ポンプを介して冷却水が流入する冷却水側空間34として形成される。冷却水側空間34は、蒸気側空間33とは水密及び気密的に隔てられ、且つ、復水室26を形成する不図示の壁体で囲われた別系統の空間となる。冷却水側空間34から細管30に冷却水が通過することで、蒸気側空間33内の蒸気を冷却する熱交換が行われ、蒸気が凝縮水に戻される。冷却水としては、海水の他、河川水、冷却塔水が例示できる。
【0027】
管板31に対して細管30の端部は接合され、この接合によって蒸気側空間33に冷却水側空間34内の冷却水がリークしないようになっている。管板31に対する細管30の接合方法は、管板31に形成した穴内で細管30の端部を拡管する方法、及び、管板31に細管30の端部を溶接する方法が挙げられる。
【0028】
リーク検出装置10を構成する各被覆部材11は、管板31と平行に位置する矩形状の主壁11aと、主壁11aの外周に連設されて管板31に向かって延在する周壁11bとを備え、管板31側を開放する箱状若しくは蓋状に形成されている。周壁11bの端部と管板31との間にはゴムパッキン35が介在しており、このゴムパッキン35によって被覆部材11の内外で気密性が保たれる。
【0029】
被覆部材11は、アクリル樹脂等の透明な材料によって形成され、外側から内側に位置する細管30の端部を視認可能となっている。被覆部材11は、全ての細管30のうちの一部となる所定の複数本の細管30における端部と横方向で重なる大きさに形成されている。これにより、被覆部材11における周壁11bの端部側を管板31に押し当てて配設することで、複数本(例えば、80本)の細管30となる細管群30Aの端部が被覆部材11で覆われる。ここで、細管群30Aの両端部を一対の被覆部材11でそれぞれ覆うことによって、各被覆部材11の内部と、細管群30Aにおける各細管30の内部とで密閉した空間Sが形成される。
【0030】
一方の被覆部材11には、配管36の一端が接続され、この配管36の他端は、供給手段12(
図1参照)に接続されている。従って、配管36に設けられるバルブ(不図示)を操作することで、空間Sに供給手段12からヘリウムガスを供給可能となっている。なお、被覆部材11には、空間S内の圧力を計測可能な圧力計(不図示)が設けられる。
【0031】
ここで、復水器1の運転を継続することによって、細管30には、上述したように損傷してリーク箇所L(
図3参照)が形成される場合がある。リーク箇所Lの有無の検出は、復水器1を含む発電プラントの運転中、復水器1で凝縮された凝縮水について酸電気伝導率計で酸伝導率を計測することによって行われる。なお、酸伝導率の計測結果からリーク箇所Lの開口面積を推算することができる。
【0032】
リーク検出装置10は、全ての細管30からリーク箇所Lを有する細管30を検出する装置であるが、この検出を行う前に、以下に述べる準備を行う。この準備は、復水器1のヘリウム反応度合いを確認するものであり、先ず、ある一定量(60L/h〜300L/h程度)の100%濃度のヘリウムガスを蒸気側空間33等の真空系統へ強制的に注入する。そして、空気抽出装置14の入口側からサンプリングし、ヘリウム検知器16によりヘリウムガスの濃度を測定し、反応カーブをその都度に作成する。ここで、細管30からのリークは、上記真空系統への空気漏れ部として検出を行う。
【0033】
図4は、本実施の形態に係る反応カーブの一例を示す図である。
図4に示す反応カーブは、縦軸をヘリウム反応度、横軸をヘリウム流量とし、真空系統にヘリウムガスを60L/h注入したときの反応カーブの事例である。この反応カーブは、反応カーブデータベース20としてパーソナルコンピュータ19に格納されて使用される。
図4の反応カーブは、100%濃度のヘリウムガスが、細管30のリーク箇所Lから吸い込まれた時に反応した値になる。ヘリウム検知器16にて3.0*10
−6mbar*l/sの値が検出された場合、
図4の反応カーブを参照することで、450l/hのヘリウム流量(ヘリウム漏れ量)があると求めることができる。そして、この450l/hについて、補正係数1の場合には、次の式で概略のヘリウム漏れ量(kg/h)に換算する。なお、補正係数は、リーク箇所Lの形状等によって増減する。
450x1.3(ヘリウムの密度)/1000=0.585kg/h
【0034】
また、上記のヘリウム流量から、リーク箇所Lの流路面積を推算することができる。この推算式の一例としては、下記の式(1)となる。なお、式(1)の各変数は、以下のようになる。
G:ヘリウム流量(Kg/s)
F:リーク孔の流路面積(m
2)
C:流路係数
k:空気は1.41,ヘリウムは1.66
P1:入口圧(kg/m
2)
V1:比容積(m
3/kg)
【数1】
【0035】
通常運転時に、復水器1における蒸気側空間33は真空状態となるので、式(1)は、ヘリウムガスが臨界速度でリークした場合の推算式である。従って、蒸気側空間33の圧力条件によっては、臨界速度未満であることも考えられ、この場合の推算式は、式(1)とは異なる推算式で推算が行われる。このような推算式は、パーソナルコンピュータ19に格納され、パーソナルコンピュータ19において、
図4の反応カーブから求めたヘリウム流量に基づき演算を行うことで、リーク箇所Lの流路面積Fを推算することができる。また、リーク箇所Lの流路面積Fの推算値から、パーソナルコンピュータ19において、所定の推算を行うことによって、当該リーク箇所Lでの冷却水のリーク量を推算することができる。
【0036】
続いて、リーク箇所Lを有する細管30を検出する検出方法について説明する。この検出方法では、以下に述べる第1〜第4ステップを行う。
【0037】
第1ステップでは、復水室26毎にリーク箇所Lを有する細管30の有無を検出する。先ず、何れか一方の復水室26の冷却水側空間34に対し、その内部全体に一定量のヘリウムガスを噴射器13で噴射する。ここで、リーク箇所Lを有する細管30が存在すると、ヘリウムガスが蒸気側空間33に漏出する。ヘリウムガスの噴射後、上記と同様にして、ヘリウム検知器16にて検出されたヘリウム反応度をパーソナルコンピュータ19が受け取る。このヘリウム反応度から蒸気側空間33に漏出したヘリウムガスのヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積を演算して記憶する。一方の復水室26での検出、演算を完了した後、他方の復水室26も同様にして検出、演算を行う。それぞれの復水室26でのヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積は、パーソナルコンピュータ19にて、復水室26毎に区別した状態で記憶され、所定の閾値と比較してリーク箇所Lの有無を検出する。なお、第1ステップでは、ヘリウムガスの検出を容易にするため、蒸気側空間33は真空状態を維持する。
【0038】
上記第1ステップ完了後、第1ステップにおいて、リーク箇所Lが検出された復水室26に対して第2ステップを行う。第2ステップは、管板31を複数領域に区分し、その領域毎に噴射器13でヘリウムガスを噴射し、区分した領域毎に、第1ステップと同様にしてヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積を演算して記憶する。区分した領域それぞれでのヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積は、パーソナルコンピュータ19にて、区分した領域毎に区別した状態で記憶され、所定の閾値と比較してリーク箇所Lの有無を検出する。また、必要に応じて、区分した領域と、そのヘリウム流量とを表にして示す。区分した領域としては、管板31を上下方向に上部、中央部、下部の3領域とすることが例示できる。この場合、ヘリウムガスが空気より比重が小さい性質上、上部から下方に向かって順に検出を行うことが好ましい。
【0039】
上記第2ステップ完了後、第2ステップにて管板31におけるリーク箇所Lが検出された領域(以下、「リーク検出領域」と称する)に対して第3ステップを行う。第3ステップは、
図3に示すように、被覆部材11を利用してヘリウムガスを細管30に供給する。具体的には、第3ステップは、先ず、リーク検出領域内の細管30のうち、一部の複数の細管30からなる細管群30Aの両端部を覆うように被覆部材11を各管板31にそれぞれ押し当てて配設する工程を行う。そして、各被覆部材11と細管群30Aとで形成された空間S内に、被覆部材11を通じて供給手段12からヘリウムガスを一定量供給する工程を行う。このとき、空間S内は密閉されるので圧力が高まり、また、ヘリウムガスと空気とは混ざり難いので、細管群30Aにおける各細管30内に既に存在する空気がヘリウムガスによって押し出される。従って、細管群30Aの内部における延在方向全域に亘ってヘリウムガスを充填するよう供給することができる。ヘリウムガスの供給後、第1ステップと同様にしてヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積を演算して記憶し、記憶されたヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積をパーソナルコンピュータ19にて所定の閾値と比較してリーク箇所Lの有無を検出する工程を行う。
【0040】
上記のように被覆部材11で覆った細管群30Aについてリーク箇所Lの有無を検出した後、被覆部材11を作業者が把持して管板31の面に沿って上下左右の任意の方向に移動する。そして、リーク検出領域内であって被覆部材11を用いた検出を行っていない細管30を覆うように被覆部材11を管板31に押し当てて配設する。その後、上記と同様に被覆部材11で覆われた細管群30Aでのリーク箇所Lの有無を検出し、これを、リーク検出領域の全領域についてリーク箇所Lの有無の検出を完了するまで繰り返し行う。
また、必要に応じて、被覆部材11で覆われた各細管群30Aと、そのヘリウム流量とを表にして示す。なお、第3ステップでは、蒸気側空間33は真空にする必要がない。また、第3ステップにおいても、ヘリウムガスが空気より比重が小さい性質上、上部から下方に向かって順に検出を行うことが好ましい。
【0041】
上記第3ステップ完了後、第3ステップにてリーク箇所Lが検出された細管群30A(以下、「リーク検出細管群」と称する)に対して第4ステップを行う。第4ステップは、リーク検出細管群の細管30に対し、1本ずつ噴射器13によってヘリウムガスを一定量注入する。そして、各細管30毎に、第1ステップと同様にしてヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積を演算して記憶し、記憶されたヘリウム流量及びリーク箇所Lの流路面積をパーソナルコンピュータ19にて所定の閾値と比較してリーク箇所Lの有無を検出し、リーク検出細管群の中から、リーク箇所Lを有する細管30を特定することができる。また、必要に応じて、細管30と、そのヘリウム流量とを表にして示す。特定された細管30は、リーク箇所Lの補修が行われ、当該細管30からの冷却水の漏出が回避される。なお、第4ステップでは、蒸気側空間33は真空にする必要がない。また、第4ステップにおいても、ヘリウムガスを使用する都合上、上部から下方に向かって順に検出を行うことが好ましい。
【0042】
ここで、第4ステップでは、更に、パーソナルコンピュータ19によって、第1ステップで求めたヘリウム流量と、第4ステップで求めたヘリウム流量の総量とを比較する。この比較結果が一致する場合、リーク箇所Lを有する細管30が全て検出されたものと確認できる。一方、第1ステップのヘリウム流量に比べ、第4ステップにおけるヘリウム流量の総量の方が少ない結果となる場合、リーク箇所Lを有する細管30の検出漏れがあると確認することができる。この場合、必要に応じて、第1ないし第3ステップの何れかから検出作業を再度行い、リーク箇所Lを有する細管30を検出する。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係るリーク検出装置10によれば、第1〜第4ステップを順に行うことによって、検出対象となる領域を次第に狭め、リーク箇所Lの検出の対象となる細管30の本数を次第に少なくすることができる。これにより、例えば、第3ステップでは検出の対象となる細管30の本数を全体の数%程度とすることができる。しかも、リーク箇所Lを有する細管30が1本であれば、第4ステップで検出の対象となる細管30の本数を、一の細管群30Aの本数と同じにすることができる。これにより、従来の水張り法や、全ての細管30に1本ずつヘリウムガスを注入してリーク箇所Lを有する細管30を検出する方法に比べ、検出に要する作業時間を大幅に短くすることができる。
【0044】
また、ヘリウムガスを検知してリーク箇所Lの有無を検出するので、従来のように目視確認による方法に比べ、作業負担の軽減を図りつつ目視では確認できないような微細なリーク箇所Lも検出でき、検出精度の向上を図ることができる。これにより、復水器1において凝縮水に不純物が混入することを良好に防止でき、発電プラントを構成する各機器に重大な障害が発生することを回避してプラント健全性を高めることができる。更に、ヘリウムガスの供給によって空間S内の圧力を高め、通常運転時と同様に細管30の内部に比べて外部を高圧として検出を行うことができ、検出時にリーク箇所Lが閉塞して未検出になることを防止することができる。
【0045】
また、第3ステップでは、被覆部材11を管板31の任意の箇所に配設して細管30を密閉でき、被覆部材11で覆われる細管群30Aを設定する自由度を良好なものとすることができる。更に、被覆部材11が透明となるので、被覆した細管30を目視可能として容易に確認できる他、被覆部材11を箱状としたので、被覆部材11を移動する作業負担を軽減することができる。
【0046】
ここで、上記実施の形態では、
図3において、リーク箇所Lが細管30の延在方向中間部にある場合を図示したが、リーク箇所Lが細管30の端部と、これを挿通する管板31の穴との間であっても、上記と同様にしてリーク箇所Lの有無を検出することができる。
従って、細管30と管板31との溶接等による接合性を同時に確認することができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0048】
例えば、供給手段12は、ポンプ等を介してヘリウムガスを被覆部材11内に加圧して供給するようにしてもよい。
【0049】
また、被覆部材11の構成は、種々の変更が可能であり、被覆部材11を形成する主壁11aの形状を円形や矩形以外の多角形形状に変更してもよい。更に、例えば、被覆部材11の内部からヘリウムガスを供給し得る細管30の本数を調整可能とするため、被覆部材11の内部に着脱自在な仕切り壁を設けたり、主壁11a及び周壁11bを蛇腹構造等によって拡縮可能としたりしてもよい。