(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シャフトの一端に設けられたタービンインペラ、該シャフトの他端に設けられたコンプレッサインペラ、該シャフトのうち該タービンインペラおよび該コンプレッサインペラの間に設けられたスラストカラーを少なくとも有する回転体と、該回転体が挿通される挿通孔が形成され、該スラストカラーに対して該回転体の回転軸方向に軸受面を対向させて配置されるスラスト軸受と、を備え、該スラストカラーと該軸受面との間に潤滑油が供給される軸受構造であって、
前記スラスト軸受の前記挿通孔の内周面と、前記回転体のうち、該挿通孔の内周面に対向する部位の外周面との間には間隙が形成され、
前記間隙は、前記スラストカラー側に位置する一端から他端側に向けて前記回転軸方向に第1の長さに亘り延在する第1間隙部と、該第1間隙部から該他端まで該回転軸方向に第2の長さに亘り延在する第2間隙部と、を備え、
前記第1間隙部の前記第1の長さは、前記間隙の全長の18%以上60%未満であり、前記第2間隙部を形成する前記挿通孔の内周面の内径は、該第1間隙部を形成する前記挿通孔の内周面の内径の1.015〜1.13倍であることを特徴とする軸受構造。
前記第1間隙部の前記第1の長さは、前記間隙の全長の45%未満であり、前記第2間隙部を形成する前記挿通孔の内周面の内径は、該第1間隙部を形成する前記挿通孔の内周面の内径の1.025〜1.075倍であることを特徴とする請求項1に記載の軸受構造。
シャフトの一端に設けられたタービンインペラ、該シャフトの他端に設けられたコンプレッサインペラ、該シャフトのうち該タービンインペラおよび該コンプレッサインペラの間に設けられたスラストカラーを少なくとも有する回転体と、該回転体が挿通される挿通孔が形成され、該スラストカラーに対して該回転体の回転軸方向に軸受面を対向させて配置されるスラスト軸受と、を備え、該スラストカラーと該軸受面との間に潤滑油が供給される軸受構造であって、
前記スラスト軸受の前記挿通孔の内周面と、前記回転体のうち、該挿通孔の内周面に対向する部位の外周面との間には間隙が形成され、
前記間隙は、前記スラストカラー側に位置する一端から他端側に向けて前記回転軸方向に第1の長さに亘り延在する第1間隙部と、該第1間隙部から該他端まで該回転軸方向に第2の長さに亘り延在する第2間隙部と、を備え、
前記第1間隙部の前記第1の長さは、前記間隙の全長の18%以上60%未満であり、前記回転体のうち、該挿通孔の内周面に対向する部位において、該第1間隙部を形成する外周面の外径は、前記第2間隙部を形成する外周面の外径の1.015〜1.13倍であることを特徴とする軸受構造。
前記第1間隙部の前記第1の長さは、前記間隙の全長の45%未満であり、前記回転体のうち、該挿通孔の内周面に対向する部位において、該第1間隙部を形成する外周面の外径は、前記第2間隙部を形成する外周面の1.025〜1.075倍であることを特徴とする請求項3に記載の軸受構造。
前記回転体のうち、前記挿通孔の内周面に対向する部位は、該挿通孔の前記スラストカラー側の一端から他端に導かれた潤滑油を、径方向外側に飛散させる油切りで構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の軸受構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、過給機に要求される性能は年々高まっており、特に、シャフトとともに潤滑油が連れ回ることによるメカロスの低減が希求されている。
【0006】
本発明の目的は、潤滑油の連れ回りによるメカロスを低減することが可能な軸受構造、および、過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の軸受構造は、シャフトの一端に設けられたタービンインペラ、シャフトの他端に設けられたコンプレッサインペラ、シャフトのうちタービンインペラおよびコンプレッサインペラの間に設けられたスラストカラーを少なくとも有する回転体と、回転体が挿通される挿通孔が形成され、スラストカラーに対して回転体の回転軸方向に軸受面を対向させて配置されるスラスト軸受と、を備え、スラストカラーと軸受面との間に潤滑油が供給される軸受構造であって、スラスト軸受の挿通孔の内周面と、回転体のうち、挿通孔の内周面に対向する部位の外周面との間には間隙が形成され、間隙は、スラストカラー側に位置する一端から他端側に向けて回転軸方向に第1の長さに亘り延在する第1間隙部と、第1間隙部から他端まで回転軸方向に第2の長さに亘り延在する第2間隙部と、を備え、第1間隙部の第1の長さは、間隙の全長の
18%以上60%未満であり、第2間隙部を形成する挿通孔の内周面の内径は、第1間隙部を形成する挿通孔の内周面の内径の1.015〜1.13倍であることを特徴とする。
【0008】
第1間隙部の第1の長さは、間隙の全長の45%未満であり、第2間隙部を形成する挿通孔の内周面の内径は、第1間隙部を形成する挿通孔の内周面の内径の1.025〜1.075倍であってもよい。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の他の軸受構造は、シャフトの一端に設けられたタービンインペラ、シャフトの他端に設けられたコンプレッサインペラ、シャフトのうちタービンインペラおよびコンプレッサインペラの間に設けられたスラストカラーを少なくとも有する回転体と、回転体が挿通される挿通孔が形成され、スラストカラーに対して回転体の回転軸方向に軸受面を対向させて配置されるスラスト軸受と、を備え、スラストカラーと軸受面との間に潤滑油が供給される軸受構造であって、スラスト軸受の挿通孔の内周面と、回転体のうち、挿通孔の内周面に対向する部位の外周面との間には間隙が形成され、間隙は、スラストカラー側に位置する一端から他端側に向けて回転軸方向に第1の長さに亘り延在する第1間隙部と、第1間隙部から他端まで回転軸方向に第2の長さに亘り延在する第2間隙部と、を備え、第1間隙部の第1の長さは、間隙の全長の
18%以上60%未満であり、回転体のうち、挿通孔の内周面に対向する部位において、第1間隙部を形成する外周面の外径は、第2間隙部を形成する外周面の外径の1.015〜1.13倍であることを特徴とする。
【0010】
第1間隙部の第1の長さは、間隙の全長の45%未満であり、回転体のうち、挿通孔の内周面に対向する部位において、第1間隙部を形成する外周面の外径は、第2間隙部を形成する外周面の外径の1.025〜1.075倍であってもよい。
【0011】
回転体のうち、挿通孔の内周面に対向する部位は、挿通孔のスラストカラー側の一端から他端に導かれた潤滑油を、径方向外側に飛散させる油切りで構成されていてもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の過給機は、上記の軸受構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、潤滑油の連れ回りによるメカロスを低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、
図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側とし、矢印R方向を過給機Cの右側として説明する。
図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備えて構成される。この過給機本体1は、ベアリングハウジング2と、ベアリングハウジング2の左側に締結機構3によって連結されるタービンハウジング4と、ベアリングハウジング2の右側に締結ボルト5によって連結されるコンプレッサハウジング6と、が一体化されて形成されている。
【0018】
ベアリングハウジング2のタービンハウジング4近傍の外周面には、ベアリングハウジング2の径方向に突出する突起2aが設けられている。また、タービンハウジング4のベアリングハウジング2近傍の外周面には、タービンハウジング4の径方向に突出する突起4aが設けられている。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結して固定される。締結機構3は、突起2a、4aを挟持する締結バンド(Gカップリング)で構成される。
【0019】
ベアリングハウジング2には、過給機Cの左右方向に貫通する軸受孔2bが形成されており、この軸受孔2bに収容されたラジアル軸受7によって、シャフト8が回転自在に軸支されている。シャフト8の一端にはタービンインペラ9が一体的に固定されており、このタービンインペラ9がタービンハウジング4内に回転自在に収容されている。また、シャフト8の他端にはコンプレッサインペラ10が一体的に固定されており、このコンプレッサインペラ10がコンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0020】
コンプレッサハウジング6には、過給機Cの右側に開口するとともに不図示のエアクリーナに接続される吸気空間11が形成されている。吸気空間11は、シャフト8の軸方向の延長線上に延在するとともに、コンプレッサインペラ10の正面側に位置する。
【0021】
また、締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6とが連結された状態では、これら両ハウジング2、6の対向面によって、流体を昇圧するディフューザ流路12が形成される。このディフューザ流路12は、シャフト8の径方向内側から外側に向けて環状に形成されており、上記の径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気空間11に連通している。
【0022】
また、コンプレッサハウジング6には、ディフューザ流路12よりもシャフト8の径方向外側に位置する環状のコンプレッサスクロール流路13(下流側流路)が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口と連通するとともに、ディフューザ流路12にも連通している。したがって、コンプレッサインペラ10が回転すると、コンプレッサハウジング6外から吸気空間11に流体が吸引される。そして、当該吸引された流体は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において遠心力の作用により増速され、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧される。
【0023】
こうして、吸気空間11から吸引されてコンプレッサインペラ10によって圧縮された流体は、コンプレッサインペラ10に対してシャフト8の径方向外側に設けられたコンプレッサスクロール流路13および排気流路14(下流側流路)から排気口15を通ってコンプレッサハウジング6外に導かれて、排気口15に連設されたエンジンの吸気口に吐出されることとなる。
【0024】
タービンハウジング4には、過給機Cの左側に開口するとともに不図示の排気ガス浄化装置に接続される吐出口16が形成されている。また、タービンハウジング4には、流路17と、この流路17よりもシャフト8の径方向外側に位置する環状のタービンスクロール流路18とが設けられている。タービンスクロール流路18は、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれるガス流入口と連通するとともに、上記の流路17にも連通している。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路18に導かれた排気ガスは、流路17およびタービンインペラ9を介して吐出口16に導かれるとともに、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させることとなる。そして、上記のタービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達されることとなり、コンプレッサインペラ10の回転力によって、上記のとおりに、流体が昇圧されてエンジンの吸気口に導かれることとなる。
【0025】
過給機本体1には、戻り流路19が設けられている。戻り流路19の一端19aは、コンプレッサスクロール流路13を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6aに位置し、他端19bが吸気空間11を形成するコンプレッサハウジング6の壁面6bに位置する。そして、戻り流路19は、コンプレッサスクロール流路13に導かれた、圧縮された流体の一部を、コンプレッサスクロール流路13から吸気空間11へ還流させる。エアバイパスバルブ20は、例えば、過給圧の測定値やエンジンの制御状態等に基づいて、戻り流路19を開閉する電動バルブである。過給圧が上昇し流量が減少し過ぎる場合、エアバイパスバルブ20を開いて圧縮後の流体の一部をコンプレッサインペラ10の上流側の吸気空間11に還流させて、コンプレッサインペラ10に向かう流量を増加させることで、サージを回避することができる。
【0026】
ところで、タービンインペラ9およびコンプレッサインペラ10それぞれに作用する押圧力に差が生じると、シャフト8には、回転軸方向の荷重(スラスト荷重)が作用する。このスラスト荷重を受けるために、スラスト軸受が設けられている。以下、スラスト軸受を含む軸受構造について詳述する。
【0027】
図2は、本実施形態の軸受構造21を説明するための説明図であり、
図2(a)には、本実施形態における
図1のA部の抽出図を示し、
図2(b)には、比較例における
図1のA部に対応する部分の抽出図を示す。
【0028】
図2(a)に示すように、軸受構造21は、スラストカラー22を含んで構成される。シャフト8には、ラジアル軸受7が設けられた部位に対して、
図2(a)中、右側において外径が縮径しており、この外径差によって段差面8aが形成されている。スラストカラー22は、シャフト8の
図2(a)中、右側から段差面8aまで挿通されて、シャフト8と一体に回転する。すなわち、スラストカラー22は、シャフト8のうちタービンインペラ9およびコンプレッサインペラ10の間に設けられる。
【0029】
スラストカラー22の段差面8a側にはスラスト軸受23が設けられ、スラストカラー22の段差面8aと反対側にはスラスト軸受24が設けられている。スラスト軸受23、24は、シャフト8を挿通する挿通孔23a、24aを有し、シャフト8が挿通孔23a、24aに挿通された状態で、スラストカラー22を挟んでベアリングハウジング2に固定されている。
【0030】
スラストカラー22の右側には、油切り25が隣接しており、油切り25の左側の端部がスラスト軸受24に挿通され、油切り25の右側がシールプレート26に挿通されている。
【0031】
本実施形態では、タービンインペラ9、コンプレッサインペラ10、スラストカラー22、および、油切り25は、一体回転する回転体を構成している。また、回転体のうち、スラスト軸受24の挿通孔24aの内周面に対向する部位は、油切り25で構成されている。
【0032】
スラスト軸受23、24のうち、スラストカラー22とのシャフト8の軸方向の対向部分は、それぞれ摺動面(軸受面23b、24b)となっている。スラストカラー22と、スラスト軸受23の軸受面23bとの間には、ラジアル軸受7側に供給された潤滑油の一部が導かれる。また、スラストカラー22と、スラスト軸受24の軸受面24bとの間には、ベアリングハウジング2に設けられた油路2cと、スラスト軸受24内部に形成された油路24cを通って潤滑油が導かれる。
【0033】
スラストカラー22と、スラスト軸受24との対向部分を潤滑した後の潤滑油は、スラスト軸受24の挿通孔24aを通って、シールプレート26側に向かって流れる。油切り25のうち、スラスト軸受24およびシールプレート26の間におけるシールプレート26寄りの部位が径方向外方に突出している。そして、油切り25は、挿通孔24aのスラストカラー22側の一端から他端に導かれた潤滑油を、径方向外側に飛散させることで、シールプレート26から右側への潤滑油漏れを抑制している。
【0034】
ところで、
図2(b)に示す比較例では、スラスト軸受Sの挿通孔Saを通って、シールプレート26側に向かって潤滑油が流れるとき、潤滑油が油切り25の回転に伴って連れ回ってしまい、メカロスが生じていた。
【0035】
図3は、
図2(a)のB部の抽出図である。
図3中、シャフト8の回転軸を一点鎖線8bで示す。
図3に示すように、本実施形態では、スラスト軸受24の挿通孔24aの内周面に小径部27および大径部28を形成している。小径部27は、スラスト軸受24の内周面におけるスラストカラー22側の一端24dから他端24e側に向けて回転軸方向に第1の長さL
1に亘り延在し、油切り25と径方向に対向する。
【0036】
大径部28は、小径部27からスラスト軸受24の挿通孔24aの内周面における他端24eまで回転軸方向に第2の長さL
2に亘り延在し、小径部27よりも油切り25から径方向に離隔する。
【0037】
そして、スラスト軸受24の挿通孔24aの内周面と、油切り25のうち、挿通孔24aの内周面に対向する部位の外周面25aとの間には間隙29が形成されている。間隙29は、油切り25の周方向に亘って環状に形成される。
【0038】
この間隙29は、スラストカラー22側に位置する一端29aから他端29b側に向けて回転軸方向に第1の長さL
1に亘り延在する第1間隙部30と、第1間隙部30から他端29bまで回転軸方向に第2の長さL
2に亘り延在する第2間隙部31とを含んで構成される。
【0039】
図4は、小径部27の内径D
1と大径部28の内径D
2の寸法比とメカロスの関係を説明する説明図である。
図4において、縦軸はメカロスの大きさを示し、横軸は
図3に示す小径部27の内径D
1と大径部28の内径D
2の比(D
2/D
1であって、以下、直径比と称す)を示す。また、凡例は、それぞれ、全長Lに対する第1の長さL
1の占める割合(
図4中、百分率で示す。以下、L
1割合と称す)を異ならせている。
【0040】
図4において縦軸に示すメカロスは、スラスト軸受24の内周面の潤滑油の連れ回りによるメカロスに加え、軸受面24bとスラストカラー22の間に生じるメカロスを含めた、スラスト軸受24全体で生じるメカロスである。ここでは、シャフト8の回転軸方向に作用するスラスト荷重などを同一条件とし、直径比とL
1割合を種々に変えて、スラスト軸受24全体で生じるメカロスを計算している。また、シャフト8の回転数は約14万回転数、潤滑油の温度は約82℃、潤滑油の圧力は、ゲージ圧力で約240kPaとしている。
【0041】
図4に示すように、L
1割合が小さいほどメカロスが小さくなる。特に、L
1割合が59.7%以下となると、直径比が1.015〜1.13の範囲(
図4中、ハッチングで示す範囲)において、メカロスが小さくなる傾向が顕著となっている。そこで、本実施形態においては、このメカロスが小さくなる傾向が顕著な範囲の寸法比を採用している。
【0042】
すなわち、
図3に示すように、第1間隙部30の第1の長さL
1は、間隙29の全長L(第1の長さL
1と第2の長さL
2の和)の60%未満であり、第2間隙部31を形成する挿通孔24aの内周面の内径D
2は、第1間隙部30を形成する挿通孔24aの内周面の内径D
1の1.015〜1.13倍である。
【0043】
このような寸法で、第1間隙部30および第2間隙部31を形成することで、挿通孔24aを流れる潤滑油に、第1間隙部30と第2間隙部31との境界部分で、はく離流れ(渦流)が生じる(
図3中、渦状の矢印参照)。その結果、油切り25と連れ回る潤滑油と挿通孔24aの内周面との摩擦抵抗が減少し、メカロスを低減することが可能となる。
【0044】
ここで、直径比は、大きくし過ぎてもメカロスが増加してしまう。これは、第2間隙部31が大きくなることで、潤滑油の流量が増加した結果、軸受面24bとスラストカラー22の回転に伴って連れ回る潤滑油との摩擦抵抗により生じるメカロスが増加してしまうことに起因する。本実施形態では、直径比を1.13以下としていることから、このようなメカロスの増加を回避することが可能となる。
【0045】
また、第1間隙部30の第1の長さL
1は、間隙29の全長Lの18%以上である。上記のように、小径部27の油切り25の回転軸方向の長さも、第1の長さL
1で定義され、その長さは、間隙29の全長Lの18%以上となる。その結果、小径部27の油切り25の回転軸方向の厚さも必要最小限確保され、小径部27の耐久性を確保することが可能となる。
【0046】
また、第1間隙部30の第1の長さL
1を、間隙29の全長Lの45%未満とし、第2間隙部31を形成する挿通孔24aの内周面の内径D
2を、第1間隙部30を形成する挿通孔24aの内周面の内径D
1の1.025〜1.075倍とすると特に有効である。
【0047】
図4にクロスハッチングで示すように、直径比が1.025〜1.075の範囲において、かつ、L
1割合が44.8%以下の凡例は、さらにメカロスが少ない。すなわち、上記の寸法で、第1間隙部30および第2間隙部31を形成することで、上記のはく離流れ(渦流)を大きく形成させ、油切り25と連れ回る潤滑油と挿通孔24aの内周面との摩擦抵抗をさらに減少させて、メカロスを低減することが可能となる。
【0048】
図5は、変形例を説明するための説明図であり、上記実施形態の
図3に対応する部分の抽出図を示す。
図5に示すように、変形例においては、油切り45に大径部47および小径部48が形成されている。大径部47は、油切り45の外周面におけるスラストカラー22側の一端45bから他端側(
図5中、右側)に向けて回転軸方向に第1の長さL
1に亘り延在し、スラスト軸受44と径方向に対向する。
【0049】
小径部48は、大径部47から油切り45の外周面45aにおける、挿通孔24aの他端24eに対向する位置まで、回転軸方向に第2の長さL
2に亘り延在し、大径部47よりもスラスト軸受44から径方向に離隔する。
【0050】
そして、変形例において、第1間隙部30の第1の長さL
1は、間隙29の全長Lの60%未満であり、油切り45のうち、挿通孔24aの内周面に対向する部位において、第1間隙部30を形成する外周面45aの外径D
3は、第2間隙部31を形成する外周面45aの外径D
4の1.015〜1.13倍である。
【0051】
また、変形例において、第1間隙部30の第1の長さL
1は、間隙29の全長Lの45%未満であり、第1間隙部30を形成する外周面45aの外径D
3は、第2間隙部31を形成する外周面45aの外径D
4の1.025〜1.075倍とすると特に有効である。
【0052】
このように、変形例においては、スラスト軸受44ではなく油切り45に、大径部47および小径部48を設けている。このような構成であっても、
図5中、渦状の矢印で示すようなはく離流れを生じさせることで、上述した実施形態と同様の効果を奏する。
【0053】
また、第1間隙部30の第1の長さL
1は、間隙29の全長Lの18%以上である。すなわち、大径部47の油切り45の回転軸方向の長さも、第1の長さL
1で定義され、その長さは、間隙29の全長Lの18%以上となる。その結果、大径部47の油切り25の回転軸方向の厚さも必要最小限確保され、大径部47の耐久性を確保することが可能となる。
【0054】
上述した実施形態および変形例では、間隙29、すなわち、第1間隙部30および第2間隙部31は、油切り25、45の周方向に亘って環状に形成される場合について説明した。しかし、第1間隙部30および第2間隙部31は、油切り25、45の周方向に一部のみ形成されていてもよい。また、第1間隙部30および第2間隙部31は、油切り25、45の周方向に離隔して複数形成されていてもよい。
【0055】
また、第1間隙部30および第2間隙部31は、油切り25、45の回転軸中心に対称に形成されずに偏心していてもよい。
【0056】
また、第1間隙部30および第2間隙部31は、上記のはく離流れを形成することが可能であれば、らせん状など、どのような形状に形成されていてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態および変形例では、第1間隙部30と第2間隙部31との連続部分において、第2間隙部31は、油切り25、45の回転軸方向に垂直に拡径する場合について説明した。しかし、第1間隙部30と第2間隙部31との連続部分において、第2間隙部31は、油切り25、45の回転軸方向に対して傾斜して拡径してもよい。例えば、上述した実施形態については、スラスト軸受24の挿通孔24aにおいて、小径部27と大径部28との連続部分は、テーパ形状であってもよい。この場合、テーパの傾斜は、上記のはく離流れが形成される範囲で任意である。
【0058】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。