特許第6398237号(P6398237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398237無線制御端末、制御対象物の無線制御装置、非常停止制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398237
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】無線制御端末、制御対象物の無線制御装置、非常停止制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20180920BHJP
【FI】
   H04Q9/00 331Z
   H04Q9/00 371A
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-51627(P2014-51627)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-177304(P2015-177304A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】梅木 創
(72)【発明者】
【氏名】植木 大地
(72)【発明者】
【氏名】大和 哲二
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−355195(JP,A)
【文献】 特開2011−000652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
G06F 1/26− 1/32
H03J 9/00− 9/06
H04Q 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置に接続された制御対象物を制御するための所定の制御指示を、無線補助端末が有するバッテリからの供給電力により所定の制御用無線方式で該制御装置に送信可能な該無線補助端末と協調することで、該制御対象物の制御を行うように構成された無線制御端末であって、
前記無線補助端末が収容される収容部であって、該無線補助端末が該収容部に収容された状態では、該無線補助端末と該無線制御端末が互いに電気的な情報授受が可能となる状態に置かれる、収容部と、
前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置に対して前記制御対象物の非常停止に関する制御を行う非常停止制御部と、
前記無線制御端末側において少なくとも前記非常停止制御部の駆動に必要な駆動電力を供給するように、該無線制御端末内に配置された無線制御端末側バッテリと、
少なくとも前記無線制御端末側バッテリにおける蓄電残量に関する蓄電残量情報を、前記無線制御端末又は前記無線補助端末に設けられた通知装置に出力する出力部と、
を備える、無線制御端末。
【請求項2】
前記無線制御端末側の所定の無線方式は、前記所定の制御用無線方式とは異なる所定の非常停止用無線方式である、
請求項1に記載の無線制御端末。
【請求項3】
前記通知装置に、更に、前記無線補助端末側のバッテリにおける蓄電残量に関する情報が、該無線補助端末から出力される、
請求項1又は請求項2に記載の無線制御端末。
【請求項4】
前記非常停止制御部は、前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置側に、前記無線制御端末側バッテリからの供給電力によって断続的に又は定期的に送信される所定信号が遮断されると、前記制御対象物を非常停止させるように構成される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の無線制御端末。
【請求項5】
前記無線制御端末側バッテリの蓄電残量が所定量以下となった場合、前記無線補助端末側のバッテリからの給電を受ける受電部を、更に備え、
前記出力部は、前記受電部により前記無線補助端末側のバッテリから給電を受けていることを表す給電情報を、前記蓄電残量情報に含めて前記通知装置に出力する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の無線制御端末。
【請求項6】
前記出力部は、前記無線制御端末が操作可能とされる残時間である操作可能残時間に関する情報を、前記蓄電残量情報に前記給電情報とともに含めて前記通知装置に出力する、
請求項5に記載の無線制御端末。
【請求項7】
前記通知装置は、前記無線補助端末が有する表示装置であり、
前記出力部は、前記蓄電残量情報を前記無線補助端末に送信し、該蓄電残量情報を前記表示装置に表示させる、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の無線制御端末。
【請求項8】
制御装置に接続された制御対象物を制御するための所定の制御指示を、自己が有するバッテリからの供給電力により所定の制御用無線方式で該制御装置に送信可能な無線補助端末と、
前記無線補助端末と協調することで、前記制御対象物の制御を行うように構成された無線制御端末と、 を備える、制御対象物の無線制御装置であって、
前記無線制御端末は、
前記無線補助端末が収容される収容部であって、該無線補助端末が該収容部に収容された状態では、該無線補助端末と該無線制御端末が互いに電気的な情報授受が可能となる状態に置かれる、収容部と、
前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置に対して前記制御対象物の非常停止に関する制御を行う非常停止制御部と、
前記無線制御端末側において少なくとも前記非常停止制御部の駆動に必要な駆動電力を供給するように、該無線制御端末内に配置された無線制御端末側バッテリと、
少なくとも前記無線制御端末側バッテリにおける蓄電残量に関する蓄電残量情報を、前記無線制御端末又は前記無線補助端末に設けられた通知装置に出力する出力部と、
を有する、制御対象物の無線制御装置。
【請求項9】
制御装置に接続された制御対象物を制御するための所定の制御指示を、無線補助端末が有するバッテリからの供給電力により所定の制御用無線方式で該制御装置に送信可能な該無線補助端末と協調することで、該制御対象物の制御を行うように構成された無線制御端末に、
前記無線補助端末が収容される収容部に該無線補助端末が収容された状態において、前記無線制御端末を該無線補助端末と互いに電気的に情報授受が可能な状態に置くステップと、
前記無線制御端末内に配置された無線制御端末側バッテリから電力供給を行い、前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置に対して前記制御対象物の非常停止に関する制御を行うステップと、
少なくとも前記無線制御端末側バッテリにおける蓄電残量に関する蓄電残量情報を、前記無線制御端末又は前記無線補助端末に設けられた通知装置に出力するステップと、
を実行させる、非常停止制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象物を無線を介して制御するための無線制御装置、及び当該無線制御装置の一部を構成する無線制御端末に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の生産現場には、産業用ロボットや工作機械等が多く配置されているが、これらの各装置を制御するに当たり、作業者の操作性や保守面からのケーブルレスの要求によって、その制御装置の無線化が図られている。例えば、特許文献1に開示の技術では、産業ロボットのティーチングを行うためのティーチペンダントと産業ロボットのコントローラとを無線で結び、作業者の作業性の向上が図られている。なお、当該技術では、作業者のミスにより意図せぬロボット操作が行われたときに、ロボットのサーボドライバへの電力遮断指令を発するスイッチ制御ラダー部がコントローラ上に設けられている。
【0003】
また、制御装置の無線化が図られた場合、当該無線制御装置を駆動するための電力は、基本的に、制御装置内に配置されたバッテリに頼ることになる。したがって、無線制御装置が駆動し得る時間は、バッテリから電力供給が受けられる時間に限られてしまう。そこで、このような無線制御装置のように、外部からの電力供給が制限された装置には省電力の要求が広く認められている。例えば、特許文献2には、外部からの電力供給が制限されている携帯端末での画像表示に関する省電力技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−224777号公報
【特許文献2】特開2013−168703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業ロボットや工作機械等の制御装置に関しては、作業者の操作性や保守面からのケーブルレスの要求等を考慮すれば、当該制御装置を無線化することでその携帯性が大きく向上し、極めて実用性が高くなる。一方で、このような産業ロボットや工作機械等が配置される空間には、作業者も作業のために出入りする場合がある。そのため、不測の事態での作業者の安全を確保するために、産業ロボット等に対して非常停止指令を発するための非常停止装置を制御装置に設けることが安全規格の観点から義務付けられている。そのため無線制御装置の設計が専用設計となり、その製造に要するコストが高くならざるを得なかった。そこで、無線制御装置のコスト低減を図るために、近年広く利用されている無線機能を有するタブレット等の無線端末を補助的に利用した無線制御装置の構成が提案されている。しかし、このように補助的な無線端末を利用した無線制御装置であっても、上記の通り、安全に関する非常停止装置の構成は定められた規格を遵守する必要がある。
【0006】
ここで、上記無線制御装置は、ケーブルレス化されている故に、その駆動電力については内部に備えるバッテリから電力供給を受ける必要がある。しかし、このような内部バッテリは、その供給電力量には当然に限りがあるためバッテリの充電や交換を行わない限りは、当該無線制御装置を利用できる時間は限られることになる。そして、無線制御装置において駆動電力が不十分となると、産業ロボット等の操作や非常停止装置による非常停止を実現することができなくなる。すなわち、電力が供給されている限りにおいて非常停止装置による非常停止が解除されるように構成される場合には、バッテリの電力不足により産業ロボット等が意図せず停止してしまう可能性がある。また、非常停止装置による非常
停止を実現するために電力が必要な場合には、バッテリの電力不足により産業ロボット等を作業者の意図に応じて停止させることができなくなり、安全上好ましくない。このように制御装置の無線化を図ることで、無線制御装置における駆動電力不足は極めて重要な課題となってくる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、産業ロボット等の制御対象物の制御のための、補助的な無線端末を利用した無線制御装置において、駆動電力不足による影響を未然に防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、上記課題を解決するために、補助的な無線端末を利用した無線制御装置において、非常停止制御を行う非常停止制御部への駆動電力の供給を行うバッテリの蓄電残量に関する情報を、無線制御装置の通知装置に出力する構成を採用した。このように制御対象物の非常停止に関する駆動電力の、バッテリからの供給状態を通知装置に出力することで、無線制御装置の作業者は、無線制御装置をどの程度利用可能であるかを把握でき、不意に制御対象物の制御が困難となる状態に陥ることを回避することができる。
【0009】
詳細には、本発明は、制御装置に接続された制御対象物を制御するための所定の制御指示を、無線補助端末が有するバッテリからの供給電力により所定の制御用無線方式で該制御装置に送信可能な該無線補助端末と協調することで、該制御対象物の制御を行うように構成された無線制御端末である。そして、当該無線制御端末は、前記無線補助端末が収容される収容部であって、該無線補助端末が該収容部に収容された状態では、該無線補助端末と該無線制御端末が互いに電気的な情報授受が可能となる状態に置かれる、収容部と、前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置に対して前記制御対象物の非常停止に関する制御を行う非常停止制御部と、前記無線制御端末側において少なくとも前記非常停止制御部の駆動に必要な駆動電力を供給するように、該無線制御端末内に配置された無線制御端末側バッテリと、少なくとも前記無線制御端末側バッテリにおける蓄電残量に関する蓄電残量情報を、前記無線制御端末又は前記無線補助端末に設けられた通知装置に出力する出力部と、を備える。
【0010】
本発明に係る無線制御端末は、無線補助端末と協調して動作することで、いわば制御対象物の無線制御装置として機能するものである。この無線制御装置は、制御対象物が接続されている制御装置と無線で通信することで、当該制御対象物の制御を行う。なお、制御対象物としては、産業ロボットや工作機械等の装置が例示できるが、これらの装置以外のものであっても構わない。また、無線制御装置による制御対象物の制御態様としては、様々な制御を適用できるが、少なくとも制御対象物の非常停止に関する制御と、当該非常停止制御とは異なる制御を含むものである。
【0011】
ここで、無線補助端末は、その内部に当該無線補助端末の駆動に必要な電力を供給するバッテリを有しており、その供給電力を利用して、制御対象物に関する所定の制御指示が所定の制御用無線制御方式で制御装置へと送信されることになる。無線補助端末としては、例えば、汎用性を有するタブレット装置等が採用可能である。このようなタブレット装置では、そこで実行されるアプリケーションプログラムによって、制御対象物の所定の制御指示の作成、及びその送信が行われてもよい。なお、当該所定の制御指示は、無線制御端末が司る非常停止に関する制御以外の制御であれば、その指示内容は特に限定はされない。また、所定の制御用無線方式は、所定の制御指示が送信可能である無線方式であればよく、例えば、無線補助端末が有するWi−Fi(登録商標)の各種方式(IEEE802.11の規格を利用した無線通信方式)であってもよい。
【0012】
一方で、本発明に係る無線制御端末は、上記の無線補助端末と協調することで、制御対
象物の無線制御が可能となる。そして、当該無線制御端末には、その協調動作のために両者の間で情報の授受が可能となるように無線補助端末を収容する収容部が備えられる。この収容部は、無線補助端末を無線制御端末の内部に収容してもよく、また、その外部表面に取り付けるように収容しても構わない。
【0013】
また、無線制御端末には、非常停止制御部が設けられ、少なくとも制御対象物の非常停止に関する制御は、当該非常停止制御部によって該無線制御端末側の所定の無線方式を介して行われる。当該所定の無線方式は、無線補助端末側の上記所定の制御用無線方式とは独立して利用される無線方式である。したがって、無線補助端末と無線制御端末で形成される無線制御装置においては、少なくとも2系統の無線経路が形成されることになる。このように無線経路が複数形成されることで、制御目的に応じた指示を制御装置側に個別に送ることができる。
【0014】
なお、無線補助端末側の所定の制御用無線方式と、無線制御端末側の所定の無線方式とは、同じであっても構わないが、異なっていてもよい。すなわち、前記無線制御端末側の所定の無線方式は、前記所定の制御用無線方式とは異なる所定の非常停止用無線方式であってもよい。特に、この非常停止用無線形式は、制御対象物の非常停止において安全上の規格の観点から求められる機能を実現する無線方式であるのが好ましい。例えば、所定の非常停止用無線方式としては、IEC 62745に則した無線方式が挙げられる。このようにす
ることで、無線制御端末と無線補助端末で形成される無線制御装置においては、無線制御端末による少なくとも所定の非常停止用無線方式に従った非常停止に関する制御指示と、無線補助端末による所定の制御用無線方式に従った制御指示が、制御装置に対して、それぞれ並行して送信されることになり、無線制御装置としての信頼性確保に資する構成と言える。
【0015】
ここで、無線制御端末における非常停止に関する制御に対しては、無線制御端末側バッテリからの供給電力が利用されることになる。すなわち、無線制御端末側バッテリに十分な電力が残っている限りは、非常停止制御部による非常停止に関する制御は正常に行われることになる。しかし、そのバッテリの蓄電残量が不十分な量となると、非常停止制御部による非常停止に関する制御が担保されなくなり、制御対象物の正常な制御や非常停止制御の正常な稼働が困難な状態(以下、「制御困難状態」という)となってしまう。そこで、本発明に係る無線制御端末では、出力部により、無線制御端末側バッテリの蓄電残量に関する蓄電残量情報が通知装置に出力される。当該通知装置は、作業者に対して情報通知を行うために無線制御端末又は無線補助端末に設けられた装置であり、このような構成により、作業者は、通知装置による通知内容に従って、無線制御端末側バッテリにどの程度電力が残っているかを把握することができ、電力不足による不意な制御困難状態の発生を回避することができる。
【0016】
なお、通知装置による作業者への通知形態は、作業者が自己の五感によってその通知内容を把握することができれば、どのような通知形態であってもよい。例えば、ディスプレイによる表示、音やランプの明滅等による警告等の通知形態が採用できる。そして、通知装置は、無線制御端末と無線補助端末で形成される無線制御装置上に配置されていれば、いずれの端末上に配置されともよく、また両端末に配置されてもよく、通知装置の数は1つであっても複数であっても構わない。
【0017】
また、上記の無線制御端末において、前記通知装置には、更に、前記無線補助端末側のバッテリにおける蓄電残量に関する情報が、該無線補助端末から出力されてもよい。無線制御端末側バッテリの蓄電残量に関する情報と、無線補助端末側のバッテリの蓄電残量に関する情報が、ともに通知装置に出力されることで、作業者は両端末の蓄電残量を適切に把握できる。これにより、いずれかの端末が不意に電力不足に陥ることを未然に防ぐこと
が可能となる。
【0018】
ここで、上記の無線制御端末において、前記非常停止制御部は、前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置側に、前記無線制御端末側バッテリからの供給電力によって断続的に又は定期的に送信される所定信号が遮断されると、前記制御対象物を非常停止させるように構成されてもよい。当該構成は、非常停止制御部による非常停止制御の一例を示すものである。このように構成される非常停止制御部を有する無線制御端末は、無線制御端末側バッテリの蓄電残量が不十分な状態となると、上記所定信号の送信が行われなくなってしまう。この状態は、所定信号の送信が遮断された状態と同一視できるため、その結果として、蓄電残量の低下によって制御対象物が意図せずに非常停止してしまう状態、すなわち、制御困難状態に陥ることになる。そこで、上述したように出力部により蓄電残量情報を通知装置に出力することで、作業者に蓄電残量を知らしめ、作業者にとって不意となる制御対象物の非常停止を未然に防ぐことができる。
【0019】
また、非常停止制御部の別の形態としては、制御装置に対して制御対象物を非常停止させる信号を送信させてもよい。このように構成される非常停止制御部を有する無線制御端末は、無線制御端末側バッテリの蓄電残量が不十分な状態となると、当該非常停止信号を送信できなくなるため、作業者が制御対象物を意図して非常停止させることができない状態、すなわち上記と同じように制御困難状態に陥ることになる。そこで、上述したように出力部により蓄電残量情報を通知装置に出力することで、作業者に蓄電残量を知らしめ、制御対象物が非常停止できなくなる状態を回避することができる。
【0020】
また、上述までの無線制御端末は、前記無線制御端末側バッテリの蓄電残量が所定量以下となった場合、前記無線補助端末側のバッテリからの給電を受ける受電部を、更に備えてもよい。その場合、前記出力部は、前記受電部により前記無線補助端末側のバッテリから給電を受けていることを表す給電情報を、前記蓄電残量情報に含めて前記通知装置に出力する。このように受電部によって無線制御端末が無線補助端末から給電を受けることで、上述した無線制御端末側バッテリの蓄電残量低下による制御困難状態の発生を回避させることができる。一方で、無線補助端末側のバッテリの蓄電量も有限であるため、このような受電部による電力受電は長期にわたって行うことができるものではない。そこで、作業者に対しては、受電部による電力受電が行われていることを出力部による蓄電残量情報の出力を通して通知することで、制御困難状態を回避するための対策、例えば、無線制御端末側バッテリへの充電や、制御対象物の非常停止の回避(例えば、意図的な制御対象物の停止)を講じさせることができる。
【0021】
なお、上記の構成は、無線補助端末が、無線制御端末から給電を受ける構成を排除するものではない。例えば、無線制御端末側バッテリの蓄電残量に比較的余裕がある場合に無線補助端末側のバッテリの蓄電残量が少なくなると、無線制御端末側での必要電力を越える余剰分等を無線補助端末側のバッテリへ給電してもよい。しかし、そのような状態を作業者が知らないで制御対象物の無線制御を行っていると、無線制御端末側バッテリからの放電が知らずに継続された結果、不意に制御困難状態に陥ってしまう可能性も少なくはない。そこで、無線制御端末側バッテリから無線補助端末側のバッテリへの給電を行う場合、出力部は、当該給電状態を表す給電情報を、上記蓄電残量情報に含めて通知装置に出力するのが好ましい。
【0022】
ここで、上述までの無線制御端末において、前記出力部は、前記無線制御端末が操作可能とされる残時間である操作可能残時間に関する情報を、前記蓄電残量情報に前記給電情報とともに含めて前記通知装置に出力してもよい。このような構成により、制御対象物の制御困難状態が発生するまでの時間を、作業者に通知することができる。その結果、作業者は当該制御困難状態を回避するための対策を講じやすくなる。特に、上記受電部により
無線補助端末側のバッテリから給電を受けている場合、無線制御端末側バッテリの蓄電残量は比較的余裕のない状態である。そこで、このように無線補助端末から電力供給を受けている無線制御端末がどの程度稼働が可能なのか、すなわち、外部から電力供給を受けながらも制御対象物の制御困難状態が発生するまでの操作可能残時間を、作業者に通知することが極めて有用となってくる。なお、操作可能残時間を算出する算出部は、無線制御端末、又は無線補助端末の何れかに形成されても構わない。
【0023】
ここで、上記通知装置の一例として、該通知装置は前記無線補助端末が有する表示装置であってもよい。この場合、前記出力部は、前記蓄電残量情報を前記無線補助端末に送信し、該蓄電残量情報を前記表示装置に表示させる。このように蓄電残量情報の通知にあたり無線補助端末に既設の表示装置を利用してもよく、別法として無線制御端末に既設の表示装置等を利用してもよい。
【0024】
また、本発明を、制御装置に接続された制御対象物を制御するための所定の制御指示を、無線補助端末が有するバッテリからの供給電力により所定の制御用無線方式で該制御装置に送信可能な該無線補助端末と協調することで、該制御対象物の制御を行うように構成された無線制御端末に、下記ステップからなる処理を実行させる非常停止制御プログラムの側面から捉えることもできる。この場合、当該非常停止制御プログラムは、前記無線補助端末が収容される収容部に該無線補助端末が収容された状態において、前記無線制御端末を該無線補助端末と互いに電気的に情報授受が可能な状態に置くステップと、前記無線制御端末内に配置された無線制御端末側バッテリから電力供給を行い、前記無線制御端末側の所定の無線方式で、前記制御装置に対して前記制御対象物の非常停止に関する制御を行うステップと、少なくとも前記無線制御端末側バッテリにおける蓄電残量に関する蓄電残量情報を、作業者に対して情報通知を行うために前記無線制御端末又は前記無線補助端末に設けられた通知装置に出力するステップと、を無線制御端末に実行させる。なお、当該非常停止制御プログラムの発明には、上記無線制御端末の発明に関し開示した技術思想を、技術的な齟齬が生じない限りで適用することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
産業ロボット等の制御対象物の制御のための、補助的な無線端末を利用した無線制御装置において、駆動電力不足による影響を未然に防ぐことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】無線制御端末に無線補助端末を装着して形成された無線制御装置の概略構成を示す図である。
図2】無線制御装置において、無線制御端末に無線補助端末を装着しようとしている状態を示す図である。
図3】無線制御端末、無線補助端末、産業ロボットに接続された制御装置に関する機能ブロック図である。
図4】無線制御端末で実行される蓄電残量表示処理のフローチャートである。
図5】無線補助端末で実行される蓄電残量表示処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照して本発明に係る無線制御端末10、及び当該無線制御端末10を含んで構成されるティーチペンダント1について主に説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
図1は、2つの無線端末、すなわち無線制御端末10、無線補助端末20によって形成される、本発明に係る無線制御装置に相当するティーチペンダント1の概略構成を示す。
また、図2は、ティーチペンダント1を形成するにあたり、無線制御端末10内に無線補助端末20が収容されていく状態を示している。ティーチペンダント1は、後述する図3に示すように、産業ロボットR1に有線で接続された、該産業ロボットR1の制御装置30に対して、動作指示や非常停止指示を無線で送信することで、作業者にケーブルレスの状態で産業ロボットR1の操作を可能とする装置である。なお、制御装置30は、産業ロボットR1の近くに据え置かれており、その内部には産業ロボットR1のアクチュエータの駆動に要する電力を供給する電源装置やアンプ等が設置されている。したがって、ティーチペンダント1は、制御装置30の電源装置等に対する指示を発する制御装置と言うこともできる。
【0029】
ここで、ティーチペンダント1を形成する無線補助端末20は、近年、汎用的に利用されているタブレット端末であり、以下、タブレット端末20と称する。タブレット端末20は、内部に演算装置、メモリ等を有し、当該演算装置により所定の制御プログラムが実行されることで、様々な機能が発揮される。なお、タブレット端末20に関する機能については、後述する。また、タブレット端末20はその端末本体21にタッチパネル式のディスプレイ22が設けられている。このように構成されるタブレット端末20での駆動電力、すなわち上記の制御プログラムの実行やディスプレイ22の表示に必要な駆動電力は、タブレット端末20が内部に有するバッテリ(以下、「タブレット端末側バッテリ」と称する場合もある)から供給される。このタブレット端末側バッテリは、外部電源からの充電によりその蓄電残量を増加させることは可能であるが、そのように充電しない限りは有限の蓄電量を有することになる。
【0030】
また、無線制御端末10は、タブレット端末20が収容される収容空間14が、端末本体11内に形成されており、タブレット端末20は収容空間14の開口部15から挿入されることになる。そして、収容空間14の奥部には、無線制御端末10側のUSBコネクタ16が設けられ、開口部15を介して収容空間14に挿入されてきたタブレット端末20側のコネクタと係合するように、USBコネクタ16は収容空間14内に位置決めされている。更に、無線制御端末10は、制御対象である産業ロボットR1に対して非常停止指示を出す非常停止ボタン12が、端末本体11の前面に設けられている。この非常停止に関しては、作業者の安全性を確保するために、所定の規格、例えばISO 13850を遵守す
るのが好ましい。また、無線制御端末10も、内部に演算装置、メモリ等を有し、当該演算装置により所定の制御プログラムが実行されることで、様々な機能が発揮される。無線制御端末10に関する機能についても、後述する。
【0031】
そして、無線制御端末10での駆動電力、すなわち主に、上記産業ロボットR1の非常停止制御に要する駆動電力は、原則として、無線制御端末10が内部に有するバッテリ13から供給される。この無線制御端末側のバッテリ13も、タブレット端末側バッテリと同じように外部電源からの充電によりその蓄電残量を増加させることは可能であるが、そのように充電しない限りは有限の蓄電量を有することになる。
【0032】
このようにティーチペンダント1は、主に産業ロボットR1の非常停止制御を司る無線制御端末10に、産業ロボットR1を動作させるための制御プログラムが実行されるタブレット端末20が装着され、両端末が協調動作することで、ティーチペンダント1として全機能が揃うことになる。そこで、図3に、ティーチペンダント1において無線制御端末10とタブレット端末20がUSBコネクタ16を介して電気的に接続され両端末が協調動作可能な状態(図1に示す状態)にある場合の、各端末で発揮される様々な機能の一部をイメージ化した機能ブロック図を示す。また、図3には、産業ロボットR1が接続されている据え置きの制御装置30における機能ブロックも簡潔に示している。
【0033】
先ず、無線制御端末10は、機能部として、非常停止制御部101、通信部102、蓄
電残量監視部103、出力部104、蓄電残量制御部105、受電部106、接続部107を有している。この非常停止制御部101は、ティーチペンダント1と制御装置30との間で行われる産業ロボット30の非常停止制御を司る機能部である。具体的には、非常停止制御部30は、正常時においては、後述する通信部102を介して無線制御端末10から制御装置30に所定信号を定期的に送信する。この所定信号は、制御装置30に定期的に到達していれば、制御装置30が、産業ロボットR1に関しては正常状態が形成されていると解釈するための信号である。そして、作業者が非常停止ボタン12を押下すると、この所定信号の送信が遮断される。制御装置30においては所定信号が届かなくなったため、産業ロボットR1に関して非常状態が発生したものと解釈し、後述する制御装置30の制御部301により産業ロボットR1の非常停止が実行されることになる。
【0034】
ここで、通信部102は、図示しない無線制御端末10側に設けられたアンテナを利用して非常停止制御部101による非常停止に関する信号の送信を司るものであり、上記の通り、非常停止制御のための所定信号が通信部102によって、後述する制御装置30の通信部302に対して送信される。ここで、産業ロボットR1の非常停止制御に関しては、作業者の安全性が大きく関係してくるため、通信部102による無線方式は、ケーブルレス制御を行う機械類の安全性に関する規格(IEC62745)を遵守したものであるのが好ましい。
【0035】
次に、蓄電残量監視部103は、無線制御端末10のバッテリ13の蓄電残量を監視する機能部である。そして、この蓄電残量監視部103によって取得されたバッテリ13の蓄電残量に関する情報(蓄電残量情報)は、出力部104によって、接続部107を介してタブレット端末20側に出力される。なお、当該出力部104が蓄電残量情報として出力する情報は、バッテリ13の蓄電残量に関する情報だけではなく、後述するタブレット端末20からの給電状態に関する情報や、その給電状態下でのバッテリ13の操作可能残時間に関する情報も出力する。
【0036】
また、蓄電残量制御部105は、バッテリ13の蓄電残量に応じて、タブレット端末20からの給電を制御する機能部である。蓄電残量制御部105は、接続部107を介してタブレット端末20側に給電要求を出し、当該給電要求を受けて開始された無線制御端末10への給電は、また接続部107を介して受電部106によって受電される。受電部106が受電した電力は、バッテリ13に蓄電されることになる。そして、接続部107は、USBコネクタ16を介して形成される無線制御端末10側の接続部であって、無線制御端末10とタブレット端末20との間の電気的な情報授受に加えてに、上記の通り、タブレット端末20から無線制御端末10への電力供給も可能とする。
【0037】
次に、タブレット端末20における機能部について説明する。タブレット端末20は、機能部として、ロボット制御部201、通信部202、接続部203、給電制御部204、蓄電残量監視部205、表示制御部206を有している。このロボット制御部201は、タブレット端末20において実行される所定の制御用プログラム(例えば、産業ロボットR1のティーチングを行うためのプログラム)が実行されることで形成される。所定の制御用プログラムが実行されると、図1に示すようにディスプレイ22において、当該所定の制御用プログラムに対応するウィンドウ20bが表示され、作業者が、そのウィンドウにおいて所定の操作を行うことで、当該所定の操作に対応した、産業ロボットR1への所定の制御指示がロボット制御部201によって生成される。そして、その所定の制御指示は、通信部202を介して、制御装置30の通信部302へ送信され、その後、制御部301が当該所定の制御指示に従って、産業ロボットR1を駆動する。
【0038】
ここで、通信部202は、図示しないタブレット端末20側に設けられたアンテナを利用して、ロボット制御部201による所定の制御指示の送信や、産業ロボットR1から届
く所定信号(例えば、産業ロボットの各関節のアクチュエータの位置情報等)の受信を司るものである。ここで、これらの信号や情報は、上述した非常停止指示と比べて作業者の安全性を考慮する必要性は低いとされるものである。そこで、通信部202による無線形式は、通信部102による無線形式と異なり、特定の安全性に関する規格を遵守する必要はなく、汎用的に利用されているWi−Fiの規格に準ずる無線方式であってもよい。一般に、汎用的なタブレット端末は、何らかのWi−Fi規格を採用していることが多いため、そのようにタブレット端末20に既に設けられている無線方式の通信機能部を、通信部202として代用してもよい。
【0039】
次に、接続部203は、USBコネクタ16を介して形成されるタブレット端末20側の接続部であって、無線制御端末10とタブレット端末20との間の電気的な情報授受に加えてに、上記の通り、タブレット端末20から無線制御端末10への電力供給も可能とする。そして、給電制御部204は、上述した蓄電残量制御部105からの給電要求に応じて、タブレット端末20側のバッテリから無線制御端末10への給電を制御する機能部である。また、蓄電残量監視部205は、タブレット端末20側のバッテリの蓄電残量を監視する機能部である。そして、この蓄電残量監視部205によって取得された蓄電残量に関する情報は、後述する表示制御部206に渡される。
【0040】
そして、表示制御部206は、無線制御端末10側の出力部104によって出力された蓄電残量情報と、タブレット端末20の蓄電残量監視部205のよって取得されたタブレット端末20側のバッテリの蓄電残量に関する情報を、タブレット端末20のディスプレイ22上に表示させる機能部である。図1において、表示されたこれらの情報は参照番号が20aが付された領域に示されるが、表示形態の詳細な形態については、後述する。
【0041】
また、産業ロボット30に接続されている制御装置30は、制御部301と通信部302を有している。通信部302は、無線制御端末10の通信部102及びタブレット端末20の通信部202との、各種信号、情報の送受信を司る機能部である。なお、上記の通り、通信部102と通信部202とでは異なる無線方式を採用しているため、通信部302は、これらの無線方式にそれぞれ対応可能となるように構成されている。そして、通信部302を介して制御装置30に届けられた各種信号、情報は、制御部301によって産業ロボットR1の駆動や非常停止等に利用される。
【0042】
このように産業ロボットR1の制御用に構成されるティーチペンダント1において実行される蓄電残量表示処理について説明する。当該蓄電残量表示処理は、ティーチペンダント1による産業ロボットR1の何らかの制御が行われている状態で、無線制御端末10とタブレット端末20のそれぞれで繰り返し実行される。そして、図4には、無線制御端末10で実行される蓄電残量表示処理のフローが示され、図5には、タブレット端末20で実行される蓄電残量表示処理のフローが示されている。
【0043】
先ず、図4に示す無線制御端末10で実行される蓄電残量表示処理について説明する。S101では、蓄電残量監視部103によってバッテリ13の蓄電残量Vrが検知される。具体的には、バッテリ13の端子間電圧に基づいて蓄電残量Vrが算出される。S101の処理が終了すると、S102へ進む。S102では、S101で検知された蓄電残量Vrが、所定の基準値V0以下であるか否かの判定が行われる。当該所定の基準値V0は、バッテリ13の蓄電残量低下に起因する制御困難状態が発生しにくくなるように、タブレット端末20側のバッテリからバッテリ13に給電を行うか否かを判断するための閾値である。所定の基準値V0として、例えば、バッテリ13がフル充電された場合の蓄電残量の50%の残量に相当する値を設定してもよく、それ以外の値を設定しても構わない。S102で肯定判定されるとS106へ進み、否定判定されるとS103〜S105の処理が行われてからS106へ進む。なお、S102〜S105の処理は、蓄電残量制御部
105によって行われる。
【0044】
次に、S103では、バッテリ13の蓄電残量が所定の基準値V0以下となっていることを踏まえて、タブレット端末20による給電を要求する給電要求が該タブレット端末20に送信される。そして、S104では、上記給電要求を受けたタブレット端末20による給電状態が確認される。具体的には、タブレット端末20からの電力が受電部106によって受電されていること、又は、送信された給電要求に応じずに当該給電が行われなかったことについて、確認される。
【0045】
次に、S105では、タブレット端末20による給電が行われている状態において、無線制御端末10のバッテリ13がどの程度電力供給が可能なのか、換言すると、無線制御端末10において、どの程度非常停止制御部101による非常停止制御を正常に継続できるのかについて示す、無線制御端末10の操作可能残時間が算出される。具体的には、蓄電残量監視部103によって取得されるバッテリ13の蓄電残量と、蓄電残量監視部205によって取得される、給電元のタブレット端末20側のバッテリの蓄電残量の合計残量を、非常停止制御部101による非常停止制御を継続するために必要な単位時間当たりの消費電力で除することで、操作可能残時間を算出することができる。
【0046】
そして、S106では、出力部104により、蓄電残量情報が形成され、当該情報がタブレット端末20側に送信される。当該蓄電残量情報には、S101で検知されたバッテリ13の蓄電残量に関する情報と、S104で確認されたタブレット端末20からの給電状態に関する情報と、S105で算出された操作可能残時間に関する情報が含まれる。なお、送信された蓄電残量情報は、タブレット端末20の表示制御部206による表示処理に付されることになる。
【0047】
次に、図5に示すタブレット端末20で実行される蓄電残量表示処理について説明する。先ず、S201では、無線制御端末10から給電要求を受信したか否かが判定される。S201で肯定判定されるとS202へ進み、否定判定されるとS203へ進む。そして、S202では、タブレット端末20側のバッテリからバッテリ13への給電が行われる。これらS201、S202の処理は、給電制御部204によって行われる。なお、S202の処理において、作業者に対して、タブレット端末20からの給電を行うべきか否かについてその選択ウィンドウをディスプレイ22上に表示し、作業者に選択させるようにしてもよい。ここで、作業者が給電を行うべきと判断するとS202の処理が行われ、作業者が給電を行うべきではないと判断すると、S202の処理が行われずにS203以降の処理が行われることになる。なお、後者の判断が行われた場合には、図4に示すS104の処理で、「送信された給電要求に応じずにタブレット端末20からの給電が行われなかった」と確認されることになる。
【0048】
次に、S203では、蓄電残量監視部205によってタブレット端末20側のバッテリの蓄電残量が検知される。次に、S204では、無線制御端末10の出力部104から送信された上記蓄電残量情報を取得し、その後、S205で、表示制御部206によってタブレット端末20のディスプレイ22上に、その蓄電残量情報を表示させる。具体的には、図1の領域20aに示すように、無線制御端末10のバッテリ13に対応する電池型のインジケータと、タブレット端末20のバッテリに対応する電池型のインジケータを並べ、電池残量が多いほどそれぞれのインジケータが塗りつぶされていくように表示される。この場合、バッテリの蓄電残量が少なくなると、対応する電池型インジケータで白抜きされた領域が広くなっていき、作業者は、インジケータの状態を見ることで、各バッテリの蓄電残量の状態を容易に把握することができる。
【0049】
また、ディスプレイ22の領域20aには、蓄電残量の状態だけではなく、出力部10
4によって送信された蓄電残量情報に含められた、S104で確認されたタブレット端末20からの給電状態に関する情報と、S105で算出された操作可能残時間に関する情報を表示する。例えば、作業者が、無線制御端末10がタブレット端末20からの給電を受けていることが把握できるように「給電中」の文字を領域20aに表示するとともに、給電中の場合の操作可能残時間が電池型インジケータの横に添付されて表示される。なお、表示の形態については、上記以外の表示形態を採用してもよい。
【0050】
このようにティーチペンダント1の稼働中において、組み込まれているタブレット端末20のディスプレイ22上に、蓄電残量情報が表示されることで、作業者は、特に、産業ロボットR1の非常停止制御を司る無線制御端末10が駆動電力不足の状態に陥るまでどの程度の時間が掛かるのか把握しやすくなる。その結果、作業者に対して予測的行動を促すことができ、駆動電力低下に起因する産業ロボットR1の非常停止を未然に回避することが可能となる。
【0051】
なお、上記の実施例では、操作可能残時間は、S105において無線制御端末10側で算出されたが、これに代えて、タブレット端末20側で当該操作可能残時間を算出してもよい。この場合、タブレット端末20が、蓄電残量監視部103によって取得されるバッテリ13の蓄電残量を受け取るとともに、蓄電残量監視部205によって取得される自己のバッテリの蓄電残量の合計残量を、非常停止制御部101による非常停止制御を継続するために必要な単位時間当たりの消費電力で除して、操作可能残時間を算出すればよい。
【0052】
<変形例1>
上記の実施例では、タブレット端末20のディスプレイ22上に蓄電残量情報が表示されたが、無線制御端末10側に何らかの表示装置が設けられている場合には、出力部104は当該表示装置に出力して、表示させてもよい。また、ディスプレイ22上での蓄電残量情報の表示に代えて、無線制御端末10又はタブレット装置20に設けられた複数のLEDライトを利用して、蓄電残量に応じたLEDライトの点灯量等を変化させることで、作業者に蓄電残量情報の内容を通知してもよい。また、線制御端末10又はタブレット装置20に設けられたブザー(スピーカー)を利用して、蓄電残量に応じてブザーから発生られる音を変化させることで、作業者に蓄電残量情報の内容を通知してもよい。
【0053】
<変形例2>
上記の実施例では、バッテリ13の蓄電残量が低下し、非常停止制御部101から定期的に送信されていた所定信号が遮断されることで発生する、産業ロボットR1の不意の非常停止を回避するために、タブレット端末20のディスプレイ22上に蓄電残量情報が表示された。ここで産業ロボットR1の非常停止に関する非常停止制御部101の別の構成として、作業者の非常停止ボタン12の押下を起点として産業ロボットR1を非常停止させるための非常停止信号を通信部102を介して制御装置に送信するように構成してもよい。この場合、バッテリ13の蓄電残量が低下すると、非常停止信号を送信することが困難となり、その結果、産業ロボットR1を意図的に非常停止させることができなくなる。そこで、このような場合においても、タブレット端末20のディスプレイ22上に蓄電残量情報を表示することで、作業者に注意を喚起することができる。
【0054】
<変形例3>
また、上記の実施例では、タブレット端末20側のバッテリからバッテリ13への給電が行われているが、タブレット端末20側のバッテリとバッテリ13の蓄電残量の状況に応じて、バッテリ13からタブレット端末20側のバッテリへの給電が行われてもよい。このような状況においては、バッテリ13の蓄電残量には幾分の余裕があると考えられるが、バッテリ13からの放電が継続すると、無線制御端末10の動作にもいずれ影響を及ぼし、産業ロボットR1の非常停止に関する制御を好適に行いにくくなり得る。そこで、
このような給電が行われる場合においても、当該給電状態を表す情報を蓄電残量情報に含めて、タブレット端末20に送信し、そのディスプレイ22上に表示するのが好ましい。なお、好ましくは、タブレット端末20側のバッテリからバッテリ13への給電状態と、その逆のバッテリ13からタブレット端末20側のバッテリへの給電状態は、ディスプレイ22上で区別できるように表示される。例えば、上述した表示される「給電中」の文言の表示色変える等することで、両給電状態を区別して表示できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・無線制御装置
10・・・・無線制御端末
12・・・・非常停止ボタン
13・・・・バッテリ
14・・・・収容部
20・・・・タブレット端末
22・・・・ディスプレイ
R1・・・・産業ロボット
図1
図2
図3
図4
図5