特許第6398276号(P6398276)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398276
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】電動アシスト用電源制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20180920BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20180920BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20180920BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20180920BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20180920BHJP
   B60R 16/033 20060101ALI20180920BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20180920BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20180920BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   H02J7/00 302C
   H02J7/00 P
   H02J7/00 303C
   H02J7/02 V
   H02J7/34 B
   H02J7/34 D
   B62D6/00
   B62D5/04
   B60R16/033 C
   B60R16/04 W
   B62D101:00
   B62D119:00
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-81795(P2014-81795)
(22)【出願日】2014年4月11日
(65)【公開番号】特開2015-204655(P2015-204655A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2017年3月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】杉山 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】東 真康
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−012913(JP,A)
【文献】 特開2007−089301(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3122815(JP,U)
【文献】 特開2011−097036(JP,A)
【文献】 特開2007−091122(JP,A)
【文献】 特開2009−280039(JP,A)
【文献】 特開2009−062007(JP,A)
【文献】 特開2009−208701(JP,A)
【文献】 特開2010−115954(JP,A)
【文献】 特開2009−292427(JP,A)
【文献】 特開2009−120087(JP,A)
【文献】 特開2007−199563(JP,A)
【文献】 特開2009−166679(JP,A)
【文献】 特開2007−153079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
B60R 16/033
B60R 16/04
B62D 5/00−5/32
B62D 6/00−6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源から供給される電力、又は主電源及び主電源からの電力供給により充電可能な補助電源から供給される電力に基づいて駆動するモータを備えた電動アシスト装置用の電源制御装置であって、
前記主電源から前記補助電源への電力供給を制御する充電制御部と、
前記補助電源から前記モータ側への電力供給を制御する電力供給系統切替制御部と、
前記補助電源の蓄電量が予め設定された第1の閾値以下であるかを検出する蓄電量監視部と、
前記補助電源から前記モータ側への電力供給がなされているかを検出する電力供給状態監視部と、
を備え、
前記充電制御部は、前記蓄電量監視部が前記補助電源の蓄電量が前記第1の閾値以下であると検出したこと、かつ、前記電力供給状態監視部が前記補助電源から前記モータ側への電力供給がなされていないことを検出したことに基づいて前記主電源から前記補助電源への電力供給を許容して前記補助電源を充電し、
前記電力供給系統切替制御部は、前記電力供給状態監視部が前記補助電源から前記モータ側への電力供給がなされていると検出することにより前記補助電源の電力を必要とする前記モータの駆動が継続中であると検出している間は、前記蓄電量監視部が前記補助電源の蓄電量が前記第1の閾値以下であると検出した場合であっても、車速センサによって検出された車速に基づいてモータ電流算出部が算出した、前記主電源の最大電力値以下の所定の電流上限値を越える目標電流値に応じた所望のアシスト力が得られるよう、前記補助電源からの電力供給を維持することを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記蓄電量監視部は、前記第1の閾値よりも高く設定された第2の閾値を備え、
前記電力供給系統切替制御部は、前記補助電源の充電中に前記補助電源から前記モータ側への電力供給を遮断し、前記補助電源から前記モータ側への電力供給の遮断を前記補助電源の蓄電量が前記第2の閾値に達するまで維持することを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記電力供給系統切替制御部により、前記補助電源から前記モータ側への電力供給が遮断されたことに基づいて、前記モータが前記主電源から供給される電力のみにより駆動されることを報知する報知部を更に備えたことを特徴とする請求項2に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記補助電源は、リチウムイオンキャパシタであることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の電源制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト用電源制御装置に関し、特に電源電力が低下した場合でも安定したアシスト動作を可能とする電動アシスト用電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動アシスト用電源制御装置の一例として電動パワーステアリング用電源制御装置がある。電動パワーステアリング用電源制御装置には、運転者によるステアリングホイールの操舵力に応じたアシスト力を発生する電動パワーステアリング装置に対して電力を供給する主電源や補助電源の蓄電量を検知し、検知した蓄電量に応じて電動パワーステアリング装置への電力供給を制御する制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−153107号公報
【特許文献2】特開2011−223839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の各特許文献には、電動パワーステアリング装置に対して補助電源から電力供給を行っている状態において、補助電源の蓄電量が所定の下限値を下回ったことを条件として、補助電源からの電力供給を遮断する構成や、遮断後に主電源からの充電を開始する構成が開示されているが、補助電源からの電力供給の遮断が電力供給中に実行されるため、ステアリングホイールの操作中にアシスト力が突如として減少し、運転者に不快感を与えることが懸念される。
【0005】
本発明は上記課題を解決すべく、運転者によりステアリングホイールの操作中に電動パワーステアリング装置から発生するアシスト力の減少を防止する電動アシスト用の電源制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための電源制御装置の構成として、主電源から供給される電力、又は主電源及び主電源からの電力供給により充電可能な補助電源から供給される電力に基づいて駆動するモータを備えた電動アシスト装置用の電源制御装置であって、主電源から補助電源への電力供給を制御する充電制御部と、補助電源からモータ側への電力供給を制御する電力供給系統切替制御部と、補助電源の蓄電量が予め設定された閾値以下であるかを検出する蓄電量監視部と、補助電源からモータ側への電力供給がなされているかを検出する電力供給状態監視部とを備え、充電制御部は、蓄電量監視部が補助電源の蓄電量が予め設定された閾値以下であると検出したこと、かつ、電力供給状態監視部が補助電源からモータ側への電力供給がなされていないことを検出したことに基づいて主電源から補助電源への電力供給を許容して補助電源を充電し、電力供給系統切替制御部は、蓄電量監視部が補助電源の蓄電量が予め設定された閾値以下であると検出したこと、かつ、電力供給状態監視部が補助電源からモータ側への電力供給がなされていることを検出したことに基づいて、補助電源からの電力供給を維持する構成とした。
本構成によれば、電力供給系統切替制御部が、補助電源の蓄電量が予め設定された閾値以下であり、かつ、補助電源からモータ側への電力供給がなされていることに基づいて補助電源からの電力供給を維持するため、モータに対して主電源及び補助電源から電力が供給されている状態から突如として補助電源からの電力供給が遮断されることがなく、ステアリングホイールの操作中にアシスト力が減少することを防止でき、運転者に不快感を与えることがない。また、電力供給系統切替制御部によって補助電源からモータ側への電力供給が遮断され、主電源から補助電源への電力供給が許容されるため、補助電源を主電源からの電力供給によって充電することが可能となる。
【0007】
また、他の構成として、電力供給系統切替制御部は、補助電源の充電中に補助電源からモータ側への電力供給を遮断し、補助電源からモータ側への電力供給の遮断を補助電源の蓄電量が閾値に達するまで維持する構成とした。
本構成によれば、主電源から補助電源への電力中、もしくは充電中は、電力供給系統切替制御部による補助電源からモータ側への電力供給を遮断し、補助電源からモータ側への電力供給の遮断を補助電源の蓄電量が閾値まで維持するので、充電後の蓄電量を直ちに閾値に達するまで復帰できるとともに、補助電源からモータ側への電力供給の開始を可能にできる。
【0008】
また、他の構成として、電力供給系統切替制御部により、補助電源からモータ側への電力供給が遮断されたことに基づいて、モータが主電源から供給される電力のみにより駆動されることを報知する報知部を更に設けた構成とした。
本構成によれば、運転者がステアリングホイールの操作時に、モータによるアシスト力が減少することを事前に認識することが可能となり、不快感を低減することができる。また、補助電源の蓄電量が減少していることを把握することができる。
また、上述の各構成において補助電源をリチウムイオンキャパシタにより構成することが可能であり、本構成によれば、モータ側に高い電力を供給できるとともに、充電を速やかに行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電源制御装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略図。
図2】モータ制御装置及び電源制御装置のブロック図。
図3】操舵操作による補助電源のセル電圧変化の一例及び各モードとの関係を示すグラフ。
図4】電源制御装置の概略処理を示すメインフローチャート及びモータ制御装置のモータ制御処理のメインフローチャート。
図5】電源制御装置における充電制御処理を示すフローチャート及び充電制御処理の他の制御形態を示すフローチャート。
図6】電力供給系統切替処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明にかかる電源制御装置を備えた電動パワーステアリング装置の一実施形態を示す概略構成図である。電動パワーステアリング装置1は、運転者の操作によって動作する操舵機構10と、操舵機構10と機械的に連結され、操舵機構10に入力された操舵量に応じて転舵輪を転舵する舵取り機構30と、舵取り機構30を操作する運転者の操舵力を補助(アシスト)するアシスト機構50とを備える。
【0011】
[操舵機構について]
操舵機構10は、車両の運転席に設けられたコラム12と、運転手によって回転操作可能なステアリングホイール14と、コラム12内においてステアリングホイール14の回転中心部と連結されたシャフト15と、シャフト15と舵取り機構30とを連結する中間シャフト16とを備える。
【0012】
シャフト15は、コラム12の軸方向に延長する部材であり、コラム12内に配置された図外の軸受けにより正逆方向に回転自在に支持される。中間シャフト16の一端側は、シャフト15と自在継手16Aを介して連結される。また、中間シャフト16の他端側は、舵取り機構30と自在継手16Bを介して連結される。
【0013】
[舵取り機構について]
舵取り機構30は、シャフト15の回転力を直線運動に変換して操舵輪に伝達するラックアンドピニオン機構を主たる構成とする。ラックアンドピニオン機構は、中間シャフト16とともに回転するピニオンギア31と、ピニオンギア31の回転を車体幅方向への直線運動に変換するラック軸32と備える。ピニオンギア31及びラック軸32は、車体に固定されるケーシング33内に収容される。
【0014】
ピニオンギア31は、ピニオン軸31aと、ピニオン軸31aの外周に形成されるピニオン歯車31bとを有する。ピニオン軸31aは、ケーシング33内において図外のベアリングにより回転自在に支持される。ピニオン軸31aの一端側は、中間シャフト16と自在継手16Bを介して連結される。ラック軸32は、ピニオン軸31aに対して軸線が交差するように車体幅方向に延長してピニオン歯車31bと噛み合う。従って、ラック軸32は、ピニオンギア31の正逆方向への回転に応じて車体幅方向に直動動作する。
【0015】
ラック軸32の車体幅方向への直動動作は、ラック軸32の両端部に接続されたタイロッド35;35を介して転舵輪4;4に伝達される。タイロッド35;35は、一端部がラック軸32に接続され、他端部が図外のナックルに接続される部材であり、ラック軸32の直動動作に応じてナックルを押し引きする。ナックルがタイロッド35;35を介して押し引き動作されることにより、ナックルに組み付けられたホイールに装着された転舵輪(タイヤ)4;4が略同期して車体の左右方向に自在に転舵される。図外のナックルには、転舵輪4の回転速度から車速を検出する車速センサ8が設けられ、検出した車速Vを車速信号として後述のモータ制御装置60に出力する。
【0016】
[アシスト機構について]
アシスト機構50は、運転者によるステアリングホイール14の操舵力を操舵トルクTとして検出するトルクセンサ52と、操舵トルクTに応じたアシスト力を発生するアシストモータ54と、アシストモータ54の駆動を制御するモータ制御装置60と、モータ制御装置60に供給する電力を制御する電源制御装置70とを備える。
【0017】
トルクセンサ52は、ピニオン軸31aに作用する捩れひずみから操舵トルクTを検出する。トルクセンサ52は、例えばピニオン軸31aの内部に設けられる図示しないトーションバーと、このトーションバーの捩れひずみを検出する図示しない検出コイルとで構成される。検出コイルは、トーションバーの捩れひずみの大きさ及び捩れ方向(操舵方向)を検出し、捩れひずみの大きさに応じたトルク信号をモータ制御装置60に出力する。トルク信号は、例えば、捩れひずみの大きさが電圧値の大小により、また、捩れ方向が電圧値の正負として出力される。なお、トルクセンサ52をシャフト15や中間シャフト16に設けて操舵トルクTを検出するように設けても良い。
【0018】
アシストモータ54は、例えば、直流ブラシレスモータからなる。アシストモータ54は、ラックアンドピニオン機構を収容するケーシング33内に収容され、ラック軸32に形成される図示しないボールねじを介してラック軸32と接続される。アシストモータ54は、円筒状のロータ54aと、ロータ54aの外周を包囲するようにケーシング33内に固定されるステータ54bとからなる。ロータ54aの内周側には、ボールねじナット54cが取り付けられ、ロータ54aの回転とともにボールねじナット54cが回転することで、ラック軸32を車体幅方向に直動動作させる。
なお、本実施形態においては、アシストモータ54の駆動によりラック軸32を直動動作させるものとしたが、シャフト15、中間シャフト16、或いはピニオン軸31aを回転動作させる構成としてもよい。
【0019】
モータ制御装置60及び電源制御装置70は、演算手段としてのCPU、アシストモータ54の駆動制御やアシストモータ54への電力供給制御に要するプログラムを記憶するROM、及び各種センサからの入力値や演算結果を一時的に記憶するRAM等の記憶手段等のハードウェアを含む。以下、モータ制御装置60及び電源制御装置70の詳細について説明する。
【0020】
図2は、モータ制御装置及び電源制御装置の一実施形態を示す概略図である。
図2に示すように、モータ制御装置60は、モータ電流算出部62と、電流値比較部63と、制御信号生成部64とを備える。なお、以下に説明するモータ制御装置60及び電源制御装置70の各部は、プログラムに従ったCPUの処理機能を表すものである。
【0021】
モータ電流算出部62は、車速センサ8によって検出された車速V、及びトルクセンサ52によって検出された操舵トルクTに基づいて、所望のアシスト力が得られるようにアシストモータ54に供給すべき目標電流値Iaを算出する。
【0022】
電流値比較部63は、モータ電流算出部62により算出された目標電流値Iaと、主電源5が出力可能な電流上限値βとを比較する。比較の結果、電源上限値βを上回る場合、電力供給系統切替制御部78に対して電力供給切替信号s1を出力する。また、電流値比較部63は、アシストモータ54に入力すべき電流指令値の設定処理をする。電流値比較部63は、後述の電力供給系統切替制御部78から補助電源6による電力支援ができない場合に出力される電力支援不可信号s6の入力がある場合には上記電流上限値βを、また、電力支援不可信号s6の入力がない場合には目標電流値Iaを制御信号生成部64に出力する。
【0023】
なお、電流上限値βは、例えば主電源5の出力可能な最大電力を示す電流値や、最大電力以下の所定の電流値等適宜設定すれば良いが、好ましくは、例えば車体の停止状態においてなされる操舵操作の据え切り時や、10km以下程度の低速でステアリングホイール14を左右の最大操舵角に切り替えるロックトウロック時などの操舵操作により生じる電流値の変動ピークをカットするような値に設定すると良い。より好ましくは、後述する各種電気負荷200のすべてに電力を供給しても、主電源5の電力により操舵操作に支障なくアシストモータ54を駆動可能な値に設定すると良い。
【0024】
制御信号生成部64は、電流値比較部63により設定された目標電流値Ia又は上限電流値βに応じたアシスト力が得られるようにアシストモータ54をPWM制御するためのモータ駆動信号を生成する。
【0025】
モータ駆動制御部66は、アシストモータ54を駆動制御するドライバ回路である。モータ駆動制御部66は、制御信号生成部64により生成されたモータ駆動信号に基づいて、主電源5、又は主電源5及び補助電源6から供給される電力をアシストモータ54に供給し、操舵トルクTに応じたアシスト力を発生させる。
【0026】
図2に示すように、モータ駆動制御部66には、アシストモータ54の駆動に必要な電力を供給する電源となる主電源5及び補助電源6とが接続される。主電源5は、エンジンの回転により発電する図示しない交流発電機(オルタネータ)と接続され、車両の運転中には常時所定の電気容量を維持するように充電される。
主電源5は、アシストモータ54の他、車両に設けられた各種電気負荷200に電力を供給する電源であり、例えば12Vを定格電圧とする鉛蓄電池、リチウムイオン電池、或いはニッケル水素電池などの2次電池である。ここで、各種電気負荷とは、主電源5から供給される電力に基づいて駆動する電気負荷である。電気負荷としては、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、アクティブスタビライザ、エアサスペンション等を駆動する各種アクチュエータや、これらを制御する制御装置等が挙げられる。また、オーディオ装置や空調装置、ヘッドランプ、フォグランプ等のランプ類、カーナビゲーションやパワーウィンドを駆動するアクチュエータ等をも含む。
【0027】
補助電源6は、主電源5からモータ制御装置60に供給する電力に不足が生じる場合に、電力の不足分を支援するために設けられる。補助電源6には、例えば鉛蓄電池などの2次電池や、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどの大容量のコンデンサなどが適用可能である。好ましくは、補助電源6から供給する電力が一時的な電力支援を目的とした場合、充放電が比較的短時間で可能なリチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタを適用すると良い。そこで、本実施形態では、補助電源6にリチウムイオンキャパシタを適用した場合について説明する。補助電源6は、直列に接続された複数のセルにより構成され、主電源5と同様の定格電圧となるように構成される。例えば、定格電圧が3Vのセルを4個直列に接続して主電源5の電圧と同様の12Vに構成される。補助電源6に蓄えられた電力は、モータ駆動制御部66側に供給される。
【0028】
電源制御装置70は、蓄電量監視部72と、電力供給状態監視部74と、充電制御部76と、電力供給系統切替制御部78と、報知部80とを備える。
図3は、操舵操作による補助電源のセル電圧変化の一例及び各モードとの関係を示すグラフであり、補助電源の電圧変化を2つの閾値により監視し、閾値に対するセル電圧により補助電源に対して実行される各モードを示している。
蓄電量監視部72は、補助電源6と接続され、補助電源6に蓄電されている蓄電残量(以下蓄電量という)を検出することにより、補助電源6からモータ駆動制御部66に電力を供給可能か、或いは充電を必要としているかについて監視する。本実施形態では、蓄電量監視部72は、補助電源6の蓄電量の増減により変化する補助電源6のセル毎のセル電圧値(以下セル電圧という)を検出することで補助電源6の蓄電量を監視するものとして説明する。
具体的には図3に示すように、蓄電量監視部72は、補助電源6を構成する各セルのセル電圧と、予め設定された2つの閾値(α1,α2)とを比較することにより補助電源6の蓄電量を監視する。ここで、閾値α1は、1つのセルの蓄電量が減少したときの充電開始の基準となる電圧値に対応する値に設定され、補助電源6を構成する1つのセルの完全放電時の電圧よりも高く、1つのセルの蓄電量が満充電状態を示す電圧値に対応する値の閾値α2よりも低く設定される。
なお、閾値α1,α2の設定は、補助電源6の種別により任意に設定可能である。例えば、補助電源6をリチウムイオンキャパシタにより構成する場合には、閾値α1を補助電源6の完全放電時の電圧よりも高く設定し、閾値α2を閾値α1よりも高く、かつ、補助電源6の完全充電時の電圧よりも低く設定するのが望ましい。即ち、一般にリチウムイオンキャパシタは、使用に適した上限電圧が設定されているため、上限電圧を超える充電がなされた場合には性能劣化を引き起こす可能性がある。よって、閾値α2を予め上限電圧未満に設定することが望ましい。一方、補助電源6を電気二重層キャパシタにより構成する場合には、性能劣化の懸念が少ないため、閾値α2を完全充電時の電圧と同値に設定してもよい。
【0029】
蓄電量監視部72は、補助電源6のいずれか1つのセル電圧が閾値α1以下であるとき、後述の充電制御部76に対して電圧低下信号s4を出力する。当該電圧低下信号s4の出力は、本実施形態では補助電源6のすべてのセル電圧が閾値α2に達するまで継続するものとして説明するが、すべてのセル電圧が閾値α2に達するまで継続しなくても良い。一方、蓄電量監視部72は、補助電源6のすべてのセルのセル電圧が閾値α2以上であるとき、充電完了信号s5を継続して出力する。
詳細については後述するが、蓄電量監視部72により出力される電圧低下信号s4又は充電完了信号s5の入力により、充電制御部76が補助電源6に対する充電を開始又は停止するとともに、電力供給系統切替制御部78が補助電源6からのモータ駆動制御部66への電力の供給を遮断又は維持する。
【0030】
電力供給状態監視部74は、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給の有無を検出する。補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされている状態は、補助電源6の電力を必要とするアシストモータ54の駆動が継続中であることを意味する。つまり、電力供給状態監視部74は、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給の有無の検出により、補助電源6の電力を要するアシストモータ54の駆動が継続中であるかを検出する。なお、ここで補助電源6の電力を要するアシストモータ54の回転駆動とは、例えば車体が停止状態で操舵操作が行なわれる、いわゆる据え切り時や、車体が停止又は10km以下程度の低速でステアリングホール14を正方向の最大操舵角から逆方向の最大操舵角まで操舵した場合等が想定される。
電力供給状態監視部74は、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされていないことに基づいて、後述の充電制御部76に対して充電許可信号s8を出力する。
【0031】
充電制御部76は、電圧低下信号s4及び充電許可信号s8の入力、又は充電完了信号s5の入力に基づいて充電回路76Aを制御する。充電回路76Aは、例えば、スイッチング素子として機能するFET91,FET92及び昇圧コイル90で構成される昇圧チョッパ回路からなる。充電制御部76は、補助電源6のいずれかのセル電圧が閾値α1以下となったことを示す電圧低下信号s4、及び補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされていないことを示す充電許可信号s8の入力に基づいて、所定の電圧信号をFET91及びFET92のゲート端子に印加する。
【0032】
ゲート端子への所定の電圧信号の印加により、主電源5と補助電源6とが電気的に接続されることとなり、昇圧された主電源5の電圧が補助電源6へ印加されることで補助電源6への電力の供給が許容される。充電制御部76は、補助電源6への充電を開始すべきことを示す充電開始信号s3を電力供給系統切替制御部78に継続的に出力する。
【0033】
一方、充電制御部76は、補助電源6のすべてのセルのセル電圧が閾値α2以上となったことを示す充電完了信号s5の入力に基づいて、FET91及びFET92に対する電圧信号の印加を停止する。電圧信号の印加停止により、主電源5と補助電源6との接続が遮断され、主電源5から補助電源6への電力の供給が阻止される。充電制御部76は、補助電源6への充電を停止すべきことを示す充電停止信号s7を電力供給系統切替制御部78に出力する。
【0034】
つまり、充電制御部76は、電圧低下信号s4及び充電許可信号s8の入力、換言すれば補助電源6電圧が閾値α1以下となったこと、かつ、現時点で補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされていないことを条件として主電源5から補助電源6への電力の供給を許容する。そして、主電源5から補助電源6への電力の供給を許容する状態は、補助電源6の電圧が閾値α2に達するまで維持される。
【0035】
以上のとおり、蓄電量監視部72、電力供給状態監視部74、及び充電制御部76は、補助電源6のいずれかのセル電圧が閾値α1以下であるか、及び、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされているかに応じて、主電源5から補助電源6への電力供給を許容又は阻止する充電制御処理を実行する。なお、充電制御処理の流れについては後述する。
【0036】
電力供給系統切替制御部78は、モータ駆動制御部66への電力供給を主電源5のみから行うか、主電源5及び補助電源6から行うかを切り替える。具体的には、電力供給系統切替制御部78は、前述の電流値比較部63より出力される電力供給切替信号s1、充電制御部76より出力される充電開始信号s3又は充電停止信号s7の入力有無に基づいて、電力系統切替回路78Aを制御する。また、充電開始信号s3の入力に基づいて、電力支援ができないことを報知するための電力支援不可信号s6を継続的に電流値比較部63に出力する。また、充電停止信号s7の入力に基づいて、電力支援不可信号s6の出力を停止する。
【0037】
図2に示すように、電力系統切替回路78Aは、例えば2つのFET93,FET94により構成される。
電力供給系統切替制御部78は、電力供給切替信号s1が入力したことに基づいて、FET93のゲート端子への電圧信号の印加を停止するとともに、FET94のゲート端子へ電圧信号を印加する。これにより、主電源5と補助電源6とが電気的に直列に接続された状態となり、主電源5及び補助電源6からの電力が矢印X2に示す供給ルートでモータ駆動制御部66側に供給される。
即ち、電力供給系統切替制御部78は、電力供給切替信号s1の入力があったことに基づいて、矢印X1で示すモータ駆動制御部66側に対して主電源5のみから電力を供給するデフォルトの電力供給ルートを矢印X2に示す供給ルートに切り替える。
【0038】
また、電力供給系統切替制御部78は、充電開始信号s3が入力したことに基づいて、FET93のゲート端子に所定の電圧信号を印加するとともにFET94のゲート端子への電圧信号の印加を停止する。
これにより、主電源5からの電力のみが矢印X1に示す供給ルートでモータ駆動制御部66側に供給されるとともに、主電源5からの電力供給が許容された補助電源6への充電が開始される。
即ち、電力供給系統切替制御部78は、充電開始信号s3の入力がある場合には、電力供給切替信号s1の入力がある場合でも電力供給切替信号s1の入力を無効として扱い、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給を遮断(禁止)し、補助電源6への充電を優先して実行する。そして、当該補助電源6の放電を禁止し、充電を優先する状態(放電禁止モード)は、充電停止信号s7の入力があるまで維持される。
このように、電力供給系統切替制御部78は、補助電源6の電圧が閾値α1以下となったこと、かつ、モータ駆動制御部66側への電力供給がなされていないことを条件として生成される充電開始信号s3に基づいて、モータ駆動制御部66側への電力供給を遮断(禁止)するとともに、補助電源6への充電を開始させる。
【0039】
ここで、充電開始信号s3は、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされていないことを条件として入力する信号である。つまり、当該充電開始信号s3の入力がない場合(電力供給切替信号s1のみが入力した場合)には、補助電源6の電圧が閾値α1以下であり、かつ、現時点で補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされている場合が含まれる。
そして、本実施形態においては、補助電源6の電圧が閾値α1以下であっても、補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給がなされている場合には、充電開始信号s3を出力することなく、矢印X2で示す主電源5及び補助電源6による電力供給を維持する状態(放電許可モード)とし、モータ駆動制御部66側に十分な電力を供給する構成としている。
【0040】
上記構成により、少なくとも主電源5及び補助電源6からモータ駆動制御部66側に電力が供給されている途中で補助電源6からの電力供給が停止されることはなく、ステアリングホイール14の操作途中にアシストモータ54によるアシスト力が低下し、ステアリングホイール14の手ごたえが重くなるといった不快感を与えることを防止することが可能となる。
【0041】
このように、電力供給系統切替制御部78は、電流値比較部63により出力される電力供給切替信号s1の入力有無、及び充電制御部76により出力される充電開始信号s3、充電停止信号s7の入力有無に応じてモータ駆動制御部66への電力の供給系統を切り替える電力供給系統切替処理を実行する。
【0042】
報知部80は、電力供給系統切替制御部78により補助電源6からモータ駆動制御部66側への電力供給が遮断されたことに基づいて表示装置9を制御する。表示装置9は、運転者の視認可能な範囲に設けられたモニタやランプ等の表示部を有し、報知部80は、表示装置9の表示部を制御して、モータ駆動制御部66に対して主電源5のみから電力が供給されることを運転者に報知する。当該報知がなされることにより、運転者に対してアシストモータ54のアシスト力が減少することを事前に認識させることが可能となる。なお、表示装置9に代えてスピーカを有する音響装置を設けて、音声ガイダンスや警報音などにより報知するようにしても良い。
【0043】
次に、図4図5の各フローチャートを参照して、モータ制御装置60及び電源制御装置70により実行される主要な処理について説明する。
図4(a)に示すように、モータ制御装置60及び電源制御装置70は互いに協働して、モータ制御処理(ステップS100)、充電制御処理(S120)、及び電力供給系統切替処理(ステップS140)を実行する。なお、当該処理はイグニッションスイッチがオンとされてからオフとされるまでの間、繰り返し実行される。
【0044】
[モータ制御処理について]
[ステップS102]
図4(b)に示すように、モータ制御装置60は、トルクセンサ52からの操舵トルクTの入力があるかを判定し、入力がある場合にステップS104に処理を移し、入力が無い場合に当該判定を繰り返す。具体的には、運転者によるステアリングホイール14の操作がなされた場合には判定がYESとなり、ステアリングホイール14の操作がなされていない場合(例えば直進走行)には判定がNOとなる。
【0045】
[ステップS104]
モータ制御装置60は、トルクセンサ52から入力した操舵トルクT、及び車速センサ8から入力した車速Vに基づいて、アシストモータ54の回転駆動に要する目標電流値Iaを算出してステップS106に処理を移す。
【0046】
[ステップS106]
モータ制御装置60は、ステップS104で算出された目標電流値Iaが、主電源5の出力可能な電流値の電流上限値βを上回るかを判定し、電流上限値βを上回る場合にステップS108に処理を移し、電流上限値β以下である場合に目標電流値Iaを制御信号生成部64に出力し、ステップS110に処理を移す。ここで、目標電流値Iaが電流上限値βを上回る場合とは、例えば車体が停止状態で操舵操作が行なわれる、いわゆる据え切り時や、車体が停止又は10km以下程度の低速でステアリングホール14を正方向の最大操舵角から逆方向の最大操舵角まで操舵した場合等が想定される。
【0047】
[ステップS108]
モータ制御装置60は、ステップS106において目標電流値Iaが電流上限値βを上回ると判定されたことに基づいて、電源制御装置70に対して電力供給切替信号s1を出力し、ステップS110に処理を移す。当該処理の実行により、条件に応じて電力系統が主電源5から主電源5及び補助電源6に切り替わる。そして条件に応じて目標電流値Ia又は電流上限値βが制御信号生成部64に出力される。
【0048】
[ステップS110]
モータ制御装置60は、ステップS106及びステップS108で出力された目標電流値Ia又は上限電流値βに基づいて、アシストモータ54をPWM制御するためのモータ駆動信号を生成し、モータ駆動制御部66に出力して処理を終了する。モータ駆動制御部66は、当該ステップS110で生成されたモータ駆動信号と、主電源5、又は主電源5及び補助電源6から供給される電力に基づいてアシストモータ54を回転駆動させ、ラック軸32を直動動作させるアシスト力を付与する。これにより、運転者は少ない操舵力により、転舵輪4;4を転舵させることができる。
【0049】
[充電制御処理について]
図5(a)は、電源制御装置70により実行される充電制御処理を示すフローチャートである。
[ステップS122]
電源制御装置70は、補助電源6の電圧監視を開始するとともに、補助電源6のセル電圧が予め設定された閾値α2未満であるかを判定する。判定の結果、補助電源6の電圧が閾値α2未満である場合にはステップS124に処理を移し、閾値α2以上である場合には当該処理を繰り返す。
【0050】
[ステップS124]
電源制御装置70は、補助電源6の電圧が予め設定された閾値α1以下であるかを判定する。判定の結果、補助電源6の電圧が閾値α1以下である場合にはステップS128に処理を移し、閾値α1を上回る場合にはステップS126に処理を移す。
【0051】
[ステップS126]
電源制御装置70は、現在、補助電源6からモータ駆動制御部66に対して電力供給中であるかを判定する。判定の結果、電力供給中の場合にはステップS128に処理を移し、電力供給中でない場合には当該処理を繰り返す。
【0052】
[ステップS128]
電源制御装置70は、モータ駆動制御部66への電力供給が継続中でないことに基づき、主電源5から補助電源6への電力供給を許容するように充電回路76Aに電圧信号s11を出力するとともに、充電開始信号s3を出力してステップS130に処理を移す。
【0053】
[ステップS130]
電源制御装置70は、補助電源6を構成するすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α2以上であるかを判定する。判定の結果、補助電源6のすべてのセル電圧が閾値α2以上である場合にはステップS136に処理を移し、いずれかのセル電圧が閾値α2未満である場合にはステップS132に処理を移す。
【0054】
[ステップS132]
電源制御装置70は、いずれかのセル電圧が閾値α2未満であることに基づき、電力供給系統切替制御部78に電力供給切替信号s1の入力があるかどうかを判定する。判定の結果、電力供給切替信号s1の入力がある場合にはステップS134に処理を移し、電力供給切替信号s1の入力がない場合にはステップS130に処理を移す。
【0055】
[ステップS134]
電源制御装置70は、補助電源6のすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α1を上回っているかどうかを判定する。判定の結果、補助電源6のすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α1を上回っている場合にはステップS136に処理を移し、補助電源6のすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α1を上回っていない場合にはステップS130に処理を移す。
【0056】
[ステップS136]
電源制御装置70は、主電源5から補助電源6への電力供給を阻止するように充電回路76Aへの電圧信号s11の出力を停止するとともに、充電停止信号s7を出力してステップS122に処理を移す。
【0057】
なお、充電制御処理の他の形態として、図5(b)に示すフローチャートのようにしても良い。図5(b)に示すフローチャートは、図5(a)のフローチャートにおけるステップS132及びステップS134を省略し、補助電源6のいずれかのセル電圧が、閾値α2未満である場合には、充電を停止せずにすべてのセル電圧が閾値α2以上となるまで充電するように制御するものである。以下、図5(b)を用いて他の制御形態について説明する。ステップS122からステップS126までは同一の処理であるため説明を省略する。
【0058】
[ステップS130]
電源制御装置70は、補助電源6を構成するすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α2以上であるかを判定する。判定の結果、補助電源6のすべてのセル電圧が閾値α2以上である場合にはステップS136に処理を移し、いずれかのセル電圧が閾値α2未満である場合にはすべてのセル電圧が閾値α2以上となるまで当該処理を繰り返す。
【0059】
[ステップS136]
電源制御装置70は、主電源5から補助電源6への電力供給を阻止するように充電回路76Aへの電圧信号s11の出力を停止するとともに、充電停止信号s7を出力してステップS122に処理を移す。
【0060】
また、充電制御処理の他の形態として、図5(c)に示すフローチャートのように充電を制御するようにしても良い。図5(c)に示すフローチャートは、図5(a)のフローチャートにおけるステップS134を省略し、補助電源の各セル電圧の充電状態にかかわらず、モータ駆動制御部66側に電力の供給を可能にする制御である。なお、ステップS122からステップS128までは図5(a)と同一であるため説明を省略する。
【0061】
[ステップS130]
電源制御装置70は、補助電源6を構成するすべてのセルのセル電圧が予め設定された閾値α2以上であるかを判定する。判定の結果、補助電源6のすべてのセル電圧が閾値α2以上である場合にはステップS136に処理を移し、いずれかのセル電圧が閾値α2未満である場合にはステップS132に処理を移す。
【0062】
[ステップS132]
電源制御装置70は、いずれかのセル電圧が閾値α2未満であることに基づき、電力供給系統切替制御部78に電力供給切替信号s1が入力されたかどうかを判定する。判定の結果、電力供給切替信号s1が入力されている場合にはステップS136に処理を移し、電力供給切替信号s1が入力されている場合にはステップS130に処理を移す。
【0063】
[ステップS136]
電源制御装置70は、主電源5から補助電源6への電力供給を阻止するように充電回路76Aへの電圧信号の出力を停止するとともに、充電停止信号s7を出力してステップS122に処理を移す。
【0064】
[電力供給系統切替処理について]
図6は、電源制御装置70により実行される電力供給系統切替処理を示すフローチャートである。
[ステップS142]
電源制御装置70は、前述のステップS108の処理において出力される電力供給切替信号s1が入力したかを判定する。判定の結果、電力供給切替信号s1が入力した場合にステップS144に処理を移し、入力しない場合に処理を終了する。
【0065】
[ステップS144]
電源制御装置70は、前述のステップS130の処理において出力される充電開始信号s3が入力したかを判定する。判定の結果、充電開始信号s3が入力した場合にステップS146に処理を移し、入力しない場合にステップS150に処理を移す。
【0066】
[ステップS146]
電源制御装置70は、上述のステップS144で充電開始信号s3の入力があると判定されたことに基づいて、放電禁止モードに設定して処理を移す。当該処理の実行により、以後、放電禁止モードが解除されるまでは、モータ駆動制御部66に対して主電源5のみから電力が供給され、補助電源6への充電が継続される。
【0067】
[ステップS148]
電源制御装置70は、前述のステップS124で出力される充電停止信号s7が入力したかを判定する。判定の結果、充電停止信号s7が入力した場合にはステップS150に処理を移し、入力しない場合には処理を終了する。
【0068】
[ステップS150]
電源制御装置70は、放電許可モードに設定して処理を終了する。当該処理が実行されることにより、以後、再び放電禁止モードが設定されるまで、モータ駆動制御部66に対して主電源5及び補助電源6からの電力が供給される。
【0069】
以上説明したとおり、本実施形態に係る電源制御装置70によれば、補助電源6の電圧を監視する蓄電量監視部72と、補助電源6からアシストモータ54側への電力供給がなされているかを検出する電力供給状態監視部74とを備え、電力供給系統切替制御部78が、補助電源6のいずれかのセル電圧が閾値α1以下となったこと、かつ、補助電源6からアシストモータ54側への電力供給がなされていることに基づいて、補助電源6からの電力供給を遮断することなく維持する構成である。よって、アシストモータ54の駆動中に突如としてアシスト力が低下することがなく、運転者に不快感を与えることを防止することができる。
【0070】
上述の実施形態においては、補助電源6に対する充電開始の条件を閾値α1以下のときとしたが、これに限られるものではなく、例えば電力供給切替信号s1の出力がない場合において常に充電を実行する構成としてもよい。
また、補助電源6が、蓄電量監視部72による補助電源6の電圧の監視を補助電源6が出力する電圧の基本電圧を構成するセル毎に行うとして説明したが、補助電源6の端子間電圧を監視するようにしても良い。この場合、閾値α1及び閾値α2は、補助電源6の端子間電圧に許容される充電上限値電圧、放電下限値電圧などに基づいて設定すれば良い。
【0071】
また、補助電源6が、蓄電量監視部72による補助電源6の上限電圧の監視を閾値α1,閾値α2により監視するとして説明したが、閾値α1と閾値α2の間の値にさらに別途閾値α3を設定し、この閾値α3を補助電源6の充電を開始するときの下限値、もしくは充電を停止するときの上限値として補助電源6の蓄電量を監視するようにしても良い。
また、上記実施形態において補助電源6の蓄電量を監視するために、閾値α1以下、閾値α2以上等として説明したが、以下でなく未満や下回る、以上でなく上回るなど制御における境界値の設定は任意である。
【0072】
また、上記実施形態では、電動パワーステアリング用電源制御装置として説明したが、他の電動アシスト製品の電源制御装置として適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 電動パワーステアリング装置、5 主電源、6 補助電源、
54 アシストモータ、70 電源制御装置、72 蓄電量監視部、
74 電力供給状態監視部、76 充電制御部、78 電力供給系統切替制御部、
80 報知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6