(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(構成)
図1(a)に示すように、この針状体デバイス1は、針状体3とフィルム5とを備える。針状体3は、基板11と、この基板11の一方の面11aから突起した針部13とを有する。フィルム5は針部13を溶解可能な溶媒を含む。一例を挙げると、この溶媒は水分であり、フィルム5は水分を含有する含水フィルムである。また、フィルム5の厚さは、針部13の高さHよりも小さい。フィルム5の厚さは、針部13の高さHの5%以上50%以下であることが好ましい。なお、針部13の高さHは、基板11の一方の面11aから針部13の先端までの距離である。
【0012】
針部13は皮膚を穿刺するのに適した形状であればよい。針部13は、例えば円錐、角錐、円柱、角柱、鉛筆形状(胴体部が柱状であり、先端部が錐形状のもの)等の形状を有する。また、針部13は、基板11の一方の面11a上に一本だけ存在する形態でもよいし、基板11の一方の面11a上に複数本が互いに離間して存在する(即ち、林立する)形態でもよい。
基板11の一方の面11a上に複数本の針部13が存在する場合、各針部13はアレイ状に配列することが好ましい。ここで、「アレイ状」とは各針部13が所定の態様で並んでいる状態を意味し、例えば、格子配列、最密充填配列、同心円状配列、ランダム配列、などを含むものとする。
なお、実施形態に係る針状体3は、針部13に孔を設けてもよい。この孔は、針部13の先端または側面より穿たれ、基板11の裏面まで貫通する孔でも、針部13の任意の場所に1つ以上穿たれた未貫通孔でもよい。また、実施形態にかかる針状体3は、基板11に孔を設けてもよい。この孔は、基板11を貫通する孔でも、基板11の表面から穿たれた未貫通孔でも、裏面から穿たれた未貫通孔でもよい。
【0013】
針状体3において、針部13の寸法は皮膚7に穿刺孔を形成するのに適した細さと長さを有することが好ましい。具体的には、
図1(b)に示す針部13の高さHは、10μm以上1000μm以下の範囲内であることが好ましい。針部13の高さHは、基板11の一方の面11aから針部13の先端までの距離である。
針部13の高さHは、この範囲内で針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するかを考慮して決定することが好ましい。特に、針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層内」に留める場合、針部13の高さHは例えば10μm以上300μm以下、より好ましくは30μm以上200μm以下、の範囲内にすることが望ましい。
【0014】
また、針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を「角質層を貫通し、かつ神経層へ到達しない長さ」に留める場合、針部13の高さHは200μm以上700μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下、さらに好ましくは200μm以上300μm以下、の範囲内にすることが望ましい。
さらに、針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が真皮に到達する長さ」とする場合、針部13の高さHは200μm以上500μm以下の範囲内とすることが好ましい。また、針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を「穿刺孔が表皮に到達する長さ」の場合、針部13の高さHは200μm以上300μm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0015】
針部13の幅Dは、1μm以上300μm以下の範囲内であることが好ましい。針部13の幅Dは、この範囲内で針状体3を皮膚に穿刺した際に形成される穿刺孔を皮膚内のどのくらいの深さまで形成するか等を考慮して決定することが好ましい。
針部13の幅Dは、側面視で(即ち、基板11の一方の面11aに平行な方向から見て)、針部13のうち基板11に近い側に位置する根元部13aにおいて、基板11に接する面の2点を結ぶ線の長さの最大値を指す。例えば、針部13が円錐状である場合、その根元部13aの基板11と接している面の円の直径が幅Dとなる。針部13が正四角錐である場合、その根元部13aの基板11と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。また、針部13が円柱である場合、その根元部13aの基板11と接している面の円の直径が幅Dとなる。針部13が正四角柱である場合、その根元部13aの基板11と接している面の正方形の対角線が幅Dとなる。
アスペクト比は、1以上10以下の範囲内であることが好ましい。アスペクト比とは、アスペクト比をAとすると、針部13の長さHと幅Dとを用い、A=H/Dにより定義される値である。
【0016】
針状体3において、針部13が錐形状のように先端角を有し、角質層を貫通させる場合、針部13の先端角θは5°以上30°以下、より好ましくは10°以上20°以下、の範囲内であることが望ましい。なお、先端角θは、側面視で(即ち、基板11の一方の面11aに平行な方向から見て)、針部13の幅を与える線分と針部13の先端を通る面によって切り取られる三角形において、針部13の先端を中心とする角の角度を指す。先端部13bは、根元部13aよりも、基板11の一方の面11aから遠い側に位置する部位である。
針状体3において、基板11は針部13と同じ材料からなることが好ましい。基板11と針部13とを同じ材料で形成することにより、基板11と針部13とを一体的に成形することが可能になる。また、基板11は、その下層に針部13とは異なる材料を積層した多層構造であってもよい。複数種の材料を積層することにより、以下に説明するように複数の材料の物性を活かした基板とすることが可能になる。
【0017】
例えば、針部13に近い側の上層を針部13と同じ材料で形成し、針部13から遠い側の下層を可撓性に富んだ材料で形成した基板11は、基板11をロール状に曲げることができる。また、上層を下層よりも展性の大きい材料で形成した基板11は、ロール状に曲げることができる。また、上層を下層よりも収縮の小さい材料で形成した基板11もロール状に曲げることができる。また、針部13から最も遠い側の最下層を、柔軟性を有する材料で形成した基板11を備えた針状体3は、複数の針状体3を重ねて保管しても、針部13が最下層(即ち、柔軟性を有する材料)と接するため、その破損を抑制できる。
また、針部13の根元部13aと先端部13bは異なる材料で構成されていてもよい。根元部13aに素早く水に溶ける素材を用い、先端部13bを緩やかに水に溶ける素材を用いると、フィルム5との接触により根元部13aを溶かし去り、先端部13bのみを皮膚内に残留させることができる。また、針部13に水溶性材料を用い、かつ、基板11のみ水に不溶な材料を用いることにより、フィルム5と基板11との間に保護層を介在させる必要がなくなる(即ち、フィルム5を基板11に直接接触させることができる。)。
【0018】
(製造方法)
次に、
図1(a)及び(b)に示した針状体デバイス1の製造方法について説明する。
(1)凹版の準備工程
まず、針状体3の形状を決定する原版を作製する。次に、原版から、
図2(a)に示すように、所望する針状体3の形状を凹凸反転させた凹版21を作製する。針状体3の形状を決定する原版は、針状体3の形状に応じて公知の方法で製造することができる。原版は、微細加工技術を用いて形成してもよい。微細加工技術は、例えばリソグラフィ法、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、サンドブラスト法、レーザー加工法、精密機械加工法などが挙げられる。原版から凹版21を形成するには、公知の形状転写法を用いることができる。例えば、Ni電鋳法によるNi製凹版21の形成、又は、溶融した樹脂を用いた転写成形、等が挙げられる。
【0019】
(2)液状の針状体材料の調製工程
生体適合性物質、例えばセルロース誘導体、キトサン誘導体、ムコ多糖類誘導体などを水に溶かし、基材水溶液を調製する。この基材水溶液とは別に薬剤成分水溶液を調製し、基材水溶液と混和し、液状の針状体材料23を調製する。液状の針状体材料23は、凹版21に流入できる程度の流動性を有することが好ましく、ゲル状であってもよい。
(3)液状の針状体材料の充填工程
図2(b)に示すように、凹版21に液状の針状体材料23を充填する。充填方法は、凹版21の形状及び寸法に応じ適宜公知の方法を選択することができる。例えば、スピンコート法、ディスペンサーを用いる方法、キャスティング法などを用いることができる。また、充填に際し、凹版21の周囲の環境を減圧下又は真空下にしてもよい。
【0020】
(4)液状の針状体材料の固化工程
図3(a)に示すように、凹版21に充填された液状の針状体材料を乾燥し、固化する。これにより、針状体材料の固化物26を得る。固化は、常温での乾燥であっても完結するが、加熱乾燥して製造時間を短縮することが好ましい。加熱温度は、気泡が針状体に残ることを避けるため、水溶液が沸騰しない程度の温度に設定することが好ましい。このため、加熱温度は40℃以上90℃以下の範囲内にすることが好ましい。加熱は、公知の何れの加熱手段であってもよく、例えば液状の針状体材料が充填された凹版21が載置されるホットプレートを用いることができる。
【0021】
(5)針状体材料の固化物の脱離工程
図3(b)に示すように、針状体材料の固化物26を凹版21から脱離する。脱離した固化物26は針状体3の形状を有する。脱離方法は、例えば針状体材料の固化物を凹版21から物理的に剥離する方法、又は、凹版21のみを適当な薬品を用いて化学的に溶かし去る方法等を用いることができる。
(6)フィルムの形成工程
図1(a)に示したフィルム5は、針状体材料の固化物の溶解を促進する成分(以下、溶解促進成分)を含むものとする。この成分は薬剤成分の経皮吸収を促進する物質であってもよい。この溶解促進成分を含むフィルム5の材料は、シート状に展延して用いられるものであれば特に限定されるものではない。フィルム5の材料として、例えばポリアクリル酸或いはその塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの各種水溶性ポリマーを、多価金属塩類で架橋したものを用いることができる。
【0022】
フィルム5の製造方法は特に限定されないが、例えば
図4(a)で示されるような、溶解促進成分を含む水溶液33を作製し、これを担体31上に塗布する。次に、多価金属塩類水溶液をノズル35から担体31上に噴霧して架橋することにより水に不溶化させる。そして、乾燥を防止するために表面に適当な材料、厚さのフィルムを保護層として貼付するといった方法で製造することができる。多価金属塩類水溶液をノズル35から噴霧する場合、不溶化を均一に行わせるため、1本以上のノズルを、水溶液33が担体31に対して均一に噴霧されるように配置することが望ましい。
【0023】
又は、
図4(b)で示されるように、多価金属塩類水溶液を、ハケ又は含浸シート37を用いて塗布することもできる。なお、含浸シート37は多価金属塩類水溶液を含浸させたシートのことである。多価金属塩類水溶液をハケを用いて塗布する場合、プラスチック製又は、動物由来の毛を用いることができる。また、含浸シート37を用いて塗布する場合、その材料は、発砲体、不織布、織布、編布、皮革、多孔質体等、多価金属塩類水溶液を含浸できるものであれば特に制限しない。或いは、
図4(c)で示されるように、金属塩類水溶液を満たした液槽39に、溶解促進成分を含む水溶液33を塗布した担体31を浸漬することで不溶化させてもよい。
【0024】
フィルム5には予め針状体3の針部13を貫通させるための細孔を設けてもよい。細孔の径は針部13の側面全てが接触する大きさとする。また、フィルム5に細孔を設ける代わりに、針部13の貫通が可能となるようにフィルム5の強度を定めてもよい。また、フィルム5は、溶解促進成分を含む層と、この層と異なる材料からなる層とを積層した多層構造であってもよい。複数種の材料を積層することにより、以下(a)(b)に説明するように複数の材料の物性を活かしたフィルムとすることが可能になる。
(a)フィルム5の上層(即ち、皮膚と向かい合う側の層)を溶解促進成分を透過しない材料で形成する。このように形成したフィルム5では、このフィルム5を針部13が貫通したときに、その根元部13aがフィルム5の下層と接することとなる。これにより、針部13の先端部13b、根元部13a、基板11が全て同一の材料から形成されている場合においても、根元部13aのみを溶解することができる。その結果、針部13のみを皮膚内に残し、皮膚上から基板11を取り除くことが可能となる。
(b)溶解促進成分の濃度或いは種類の異なる材料を積層してフィルム5を形成する。このように形成したフィルム5では、より溶解性の高い層から針状体3の溶解が進行する。このため、フィルム5の下層を溶解促進効果の高い層とすることにより、針部13の根元部13aにくびれを生じさせることができ、基板を取り除くことがより容易となる。
【0025】
(取扱い・使用方法)
針状体デバイス1は、市販時には針状体3及びフィルム5が所定の大きさに裁断され、出荷される。針部13をゴミやホコリの付着及び湿気による溶解から保護するため、内側が針部13の高さHより深く、かつ裁断された針状体3と同じ大きさ、形状の容器内に針状体3を固定し、乾燥した状態にて袋封する。針状体3を固定する容器の材料は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどを用いることができる。
【0026】
針状体デバイス1を使用するときは、針状体デバイス1を上記の容器から取り出す。そして、
図1(a)に示したフィルム5を皮膚7に貼付し、その上から針状体3を貼付する。次に、指又は専用の器具(アプリケータ)を用いて、針状体3を皮膚7側に押圧して、針部13を皮膚7に穿刺する。そして、一定時間経過後、速やかにフィルム5ごと針状体3を皮膚7から取り除く。
アプリケータは、針状体3の穿刺位置及び皮膚に対する角度を固定するための補助器具であり、針状体デバイスの形状に応じて作製される。アプリケータを用いることにより、針状体デバイスの使用者は穿刺を容易に特定できる。また、アプリケータを用いることにより、使用者が針状体デバイスを皮膚に穿刺する際に、穿刺する針状体の針部を皮膚に対して垂直方向から穿刺することを容易におこなうことができる。
【0027】
(実施形態の効果)
本実施形態によれば、針状体デバイス1は、基板11の一方の面11a側に配置されるフィルム5を備える。このフィルム5は針部13を溶解可能な溶媒を含み、かつ、フィルム5の厚さは針部13の高さHよりも小さい。これにより、針状体3の針部13をフィルム5を通して皮膚7に穿刺した際に、針部13のうち、フィルム5の内部に位置する部位である根元部13aをフィルム5の溶媒で溶解することができる。その結果、基板11と針部13とを分離する(即ち、基板11を除去する)と共に、針部13の先端部13bを皮膚7内に残留させることができる。
また、皮膚7に残留する先端部13bは、根元部13aが溶解し去った後、フィルム5及び基板11で覆われる。そして、先端部13bが皮膚内で安定に保持されるまでフィルム5を皮膚7から剥がすまでの間、この先端部13bをフィルム5で圧着し続けることにより、皮膚内に固定し続けることができる。これにより、針部13の先端部13bが皮膚より容易に脱離しないようにすることができる。
【0028】
(第1の変形例)
図5は、針状体デバイス1の第1の変形例を示す図である。
図5(a)に示すように、本実施形態において、針状体デバイス1は、フィルム5中の溶解促進成分の蒸散及びゴミやホコリの付着を防止するため、フィルム5の上面(即ち、針部13と対向する面)を覆う保護フィルム15を備えてもよい。
図5(a)に示すように、第1の変形例では、フィルム5を皮膚7に貼付した後でフィルム5から保護フィルム15を剥がし、その後、
図5(b)及び(c)に示すように、フィルム5の上から針状体3を貼付する(または、保護フィルム15をフィルム5から剥がした後、フィルム5を皮膚7に貼付し、その上から針状体3を貼付してもよい。)。その後、指又は専用の器具(アプリケータ)を用いて皮膚7に押圧することによって針部13を穿刺する。そして、一定時間経過後(即ち、根元部13aをフィルム5の溶媒で溶解した後)、速やかにフィルム5ごと基板11を取り除く。根元部13aが溶解することにより、針部13の先端部13bと基板11は分離するため、先端部13bを皮膚7内に残存させたまま、皮膚7上からフィルム5及び基板11を取り除くことが可能である。
【0029】
保護フィルム15の材料は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどを用いることができる。また、この保護フィルム15は、フィルム5と接する面に粘着層を有していてもよい。さらに、この粘着層は、針状体3を使用する(即ち、針部13を皮膚に穿刺する)時に、保護フィルム15をフィルム5から取り除くことが容易となるように弱粘着性にしてもよい。また、針状体3の針部13を皮膚7に確実に穿刺し、かつ、針部13の根元部13aを確実に溶解し去るために、フィルム5の上面に針部13に対応した窪みを設けてもよい。
第1の変形例では、フィルム5及び保護フィルム15の組み合わせが、本発明の「フィルム」に相当する。第1の変形例も、上記した実施形態の効果を奏する。
【0030】
(第2の変形例)
図6は、針状体デバイス1の第2の変形例を示す図である。
図6(a)に示すように、保護フィルム15は、針状体3の使用時に針部13が保護フィルム15により破損することを防止するために、予め穴を開けた有孔層15aと、この有孔層15aを保護する弱粘着の保護層15bの2層構造にしてもよい。
さらに、針部13を皮膚に容易に穿刺するために、フィルム5に針部13が通過するための細孔を設けてもよい。この場合、細孔からの溶解促進成分の蒸散及びゴミやホコリの付着を防止するため、フィルム5の上面と同様に、フィルム5の下面(即ち、皮膚と対向する面)にも保護フィルム(図示せず)を貼り合わせてもよい。フィルム5の下面及び上面に張る保護フィルムの材料は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどを用いることができる。
【0031】
図6(b)及び(c)に示すように、この第2の変形例では、フィルム5を皮膚7に貼付し、保護フィルム15の上から針状体3を貼付する。次に、指又は専用の器具(アプリケータ)を用いて、針部13を皮膚7に押圧することによって、針部13を皮膚7に穿刺する。穿刺後、フィルム5の上面から保護フィルム15を基板11ごと剥離する。さらに、一定時間経過後、フィルム5を皮膚7から取り除く。また、フィルム5の下面にも保護フォルムを貼付している場合は、この保護フィルムを剥がしてから穿刺を実施する。
第2の変形例では、フィルム5及び保護フィルム15の組み合わせが本発明の「フィルム」に相当する。第2の変形例も、上記した実施形態の効果を奏する。また、有孔層15aは、針部13の皮膚からの脱離を妨げる効果も奏する。
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施例にて作製された針状体デバイスに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
(第1の実施例)
まず、シリコン基板に精密機械加工を施して、円錐(高さ:300μm、底面:直径180μm)が0.4mm間隔で12行12列の格子状に144本配列した針部を形成して、原版を作製した。続いて、このシリコン基板から作られた原版に、メッキ法によりニッケル膜を500μmの厚さに形成した。その後、90℃に加熱した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液でこの原版を溶解、除去してニッケルからなる凹版21を作製した。
【0033】
次いで、液状の針状体材料23として、生体活性物質を分散したヒドロキシプロピルセルロース水溶液を調製した。次に、凹版21に液状の針状体材料23をスピンコート法を用いて充填した(
図2参照)。続いて、液状の針状体材料23が充填された凹版21を72時間静置し、針状体材料23を自然乾燥、固化して針状体材料の固化物26を得た。その後、針状体材料の固化物26を凹版21から剥離(脱離)して取り出した(
図3参照)。
次に、溶解促進成分を含む水溶液33として、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を調製した。そして、この水溶液33を剥離可能なフィルム状の担体31に塗布し、ノズル35から水酸化アルミニウム水溶液を噴霧して架橋し、安定化させた。これにより、フィルム5として、含水フィルムを作製した(
図4参照)。
【0034】
次に、
図6(a)に示すように、フィルムの中央部に針状体3の位置指定を容易にするための深さ5μmの窪みを設け、さらにフィルムの中央部に針状体3の各針部13の頂点を中心とする直径200μmの孔を複数形成して有孔層15aを形成した。次に、有孔層15aからの水分の蒸散を防止するために、有孔層15aの上面に保護層15bを貼付した。
次に、
図6(a)にて図示される針状体デバイス1にて、フィルム5の下面から保護フィルムを剥離し、皮膚7に貼付した。続いて、有孔層15aの上面から保護層15bを剥離した。そして、
図6(b)に示すように、針状体3の各針部13を、有孔層15aの孔及びフィルム5を通して皮膚7に穿刺した。穿刺して5分が経過した後、フィルム5から有孔層15aを基板11ごと剥離した。
図6(c)に示すように、針部13の根元部13aが溶解し、針部13の先端部13bのみ皮膚7に残留した。
【0035】
(第2の実施例)
まず、シリコン基板に精密機械加工を施して、円錐(高さ:300μm、底面:直径180μm)が0.4mm間隔で12行12列の格子状に144本配列した針部を形成して、原版を作製した。続いて、このシリコン基板から作られた原版に、メッキ法によりニッケル膜を500μmの厚さに形成した。その後、90℃に加熱した濃度30質量%の水酸化カリウム水溶液でこの原版を溶解、除去してニッケルからなる凹版21を作製した。
次いで、液状の針状体材料23として、生体活性物質を分散したヒドロキシプロピルセルロース水溶液を調製した。次に、針部13の根元部13aを形成するための液状の根元部材料24として、キトサンサクシナミド水溶液を調製した。
【0036】
次に、
図7(a)に示すように、この凹版21の先端部に相当する部分に、液状の針状体材料23をスピンコート法を用いて充填した。続いて、この針状体材料23が充填された凹版21を8時間静置し、半乾燥させた。
次に、
図7(b)に示すように、この凹版21の根元部に相当する部分に、液状の根元部材料24をスピンコート法を用いて充填した。続いて、この根元部材料24が充填された凹版21を12時間静置し、半乾燥させた。
図8(a)に示すように、根元部の半乾燥後、基板材料25としてポリ乳酸グリコール酸共重合体からなる薄膜を凹版21に押圧した。凹版21内で積層された各材料を自然乾燥、固化して針状体材料の固化物26を得た。その後、
図8(b)に示すように、固化物26を凹版21より剥離した。
【0037】
次に、溶解促進成分を含む水溶液33として、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を調製した。そして、この水溶液33を剥離可能なフィルム状の担体31に塗布し、ノズル35から水酸化アルミニウム水溶液を噴霧して架橋し、安定化させた。これにより、フィルム5として、含水フィルムを作製した(
図4参照)。
図5(a)にて図示される針状体デバイス1にて、フィルム5の下面の保護フィルムを剥離し、皮膚7に貼付した。次に、
図5(b)に示すように、フィルム5の下面の保護フィルムを剥離し、針状体3を皮膚7に穿刺した。穿刺して5分が経過した後、皮膚7からフィルム5を基板11ごと剥離した。
図5(c)に示すように、針部13の根元部13aが溶解し、針部13の先端部13bのみ皮膚7に残留した。
【0038】
(その他)
本発明は、以上に記載した実施形態(第1、第2の変形例を含む)と実施例に限定されるものではない。当業者の知識に基づいて実施形態や実施例に設計の変更等を加えてもよく、また、実施形態と実施例を任意に組み合わせてもよく、そのような変更が加えられた態様も本発明の範囲に含まれる。