【実施例1】
【0022】
[保持装置の構成]
図1は、実施例1に係る吸着離脱装置を適用した保持装置の概略断面図である。
【0023】
本実施例の保持装置1は、吸着部材3と、裏面部材5と、配管部7と、切替部としての切替弁9とを備えている。
【0024】
吸着部材3は、例えば、樹脂等の粘着性のシートからなり、可撓性を有している。吸着部材3は、その粘着力によって表面に対象物としての基板Wを吸着保持する。吸着部材3の表面は、周辺雰囲気に面し、吸着部材3の裏面には、裏面部材5が設けられている。
【0025】
裏面部材5は、支持部11に貫通孔13を設けて構成されている。支持部11は、吸着部材3よりも高剛性の板状体であり、その表面に吸着部材3が取り付けられている。これにより、支持部11は、吸着部材3を裏面側から支持する。
【0026】
貫通孔13は、例えば支持部11の中央部に設けられ、支持部11を板厚方向(上下方向)で貫通する。貫通孔13は、支持部11の表面側で吸着部材3によって閉止される。すなわち、貫通孔13は、吸着部材3の裏面に至り、その吸着部材3の裏面に空間部15を区画する。なお、貫通孔13は、支持部11に複数設けてもよい。また、貫通孔13の位置は、後述するように吸着部材3に吸着した基板Wを取り外すことができれば変更することが可能である。
【0027】
貫通孔13には、支持部11の裏面側で配管部7に接続されている。配管部7は、共通管17と、減圧管19と、加圧管21とを備えている。
【0028】
共通管17は、貫通孔13に対する接続口を構成し、一端が貫通孔13の開口に取り付けられている。共通管17の他端側は、切替弁9を介して減圧管19と加圧管21とに分岐している。
【0029】
減圧管19は、端部が大気中に開口し、切替弁9及び共通管17を介して空間部15を減圧源としての大気に開放させる。なお、減圧源としては、別途、ポンプ等を設け、減圧管は、そのポンプ等に接続してもよい。
【0030】
加圧管21は、その端部がポンプ等からなる加圧源23に接続され、切替弁9及び共通管17を介して空間部15を加圧源23に接続する。なお、加圧源23は、後述するコントローラ25によって制御され、大気圧以上に空間部15を加圧する構成となっている。
【0031】
切替弁9は、三方弁からなり、切替動作によって減圧管19及び加圧管21の一方を遮断して他方を開放する。これにより、切替弁9は、空間部15に対し配管部7を介した減圧源としての大気による減圧と加圧源23による加圧とを切り替え可能な構成となっている。
【0032】
本実施例の切替弁9は、電気的に駆動される電磁弁として構成され、演算装置等からなるコントローラ25によって切替が制御される。ただし、切替弁9は、作業者が手動によって切り替える弁として構成することも可能である。
【0033】
コントローラ25は、保持装置1によって基板Wを保持している間(基板Wの非取り外し時)、切替弁9を切り替えて空間部15と大気とを連通させる。これにより、空間部15が大気圧まで減圧されて空間部15と大気(周辺雰囲気)との圧力差が無くなり(減少し)、吸着部材3が非膨出状態となる。
【0034】
一方、基板Wの取り外し時には、コントローラ25が切替弁9を切り替えて、空間部15と加圧源23とを連通させる。このとき、コントローラ25は、加圧源23を駆動して、空間部15を加圧源23によって大気圧以上に加圧させる。従って、空間部15と大気との圧力差が増加し(生じ)、吸着部材3を基板W側に膨出させる。
[基板の吸着及び取り外し動作]
図2は、基板の吸着及び取り外し動作を示す断面図であり、
図2(A)は、基板の吸着動作、
図2(B)は、基板の取り外し動作である。
【0035】
基板Wを吸着する際には、
図2(A)のように、コントローラ25が切替弁9を切り替えて空間部15を大気に開放しておく。この状態で、保持装置1の吸着部材3に基板Wを押し付ける等して、基板Wを保持装置1によって吸着保持する。
【0036】
このとき、空間部15及び周辺雰囲気が共に大気圧であるため、空間部15と周辺雰囲気との間、つまり吸着部材3の表裏に圧力差が生じず、基板Wを吸着している吸着部材3の姿勢が維持される(非膨出状態となる)。従って、保持装置1は、基板Wの吸着保持状態を確実に維持することができ、基板Wの処理としての搬送や加工等を行わせることができる。
【0037】
基板Wを取り外す際には、
図2(B)のように、コントローラ25が切替弁9を切り替えて空間部15を加圧源23に接続すると共に加圧源23を動作させ、空間部15を大気圧以上に加圧する。
【0038】
これに応じ、空間部15が周辺雰囲気に対して相対的に高圧となり、空間部15と周辺雰囲気との間、つまり空間部15に対応した位置において吸着部材3の表裏で圧力差が生じる。かかる圧力差に基づき、吸着部材3は、空間部15側から押圧されて基板W側に部分的に膨出する。この膨出により、基板Wは、吸着部材3の他の部分に対して離間し、保持装置1から取り外されることになる。
【0039】
なお、吸着部材3の膨出は、加圧源23による加圧量や加圧速度に応じたものとなる。この加圧源23の加圧量や加圧速度の閾値は、吸着部材3が過剰に膨出して吸着部材3自体や基板Wを損傷させない範囲や吸着部材3の膨出によって基板Wを過度な衝撃により損傷させない範囲で設定するのが好ましい。
[実施例1の効果]
本実施例の保持装置1は、基板Wを表面に吸着する可撓性の吸着部材3と、吸着部材3の裏面に周辺雰囲気に対して区画された空間部15を形成する裏面部材5と、空間部15を減圧源としての大気に接続すると共に加圧源23に接続する配管部7と、空間部15に対し配管部7を介した大気による減圧と加圧源23による加圧とを切り替える切替弁9とを備えている。
【0040】
そして、保持装置1は、切替弁9の切り替えにより、基板Wの取り外し時に空間部15を加圧し、周辺雰囲気との圧力差を増加させて吸着部材3を基板W側に膨出させ、基板Wの非取り外し時に空間部15を大気に開放し、空間部15と周辺雰囲気との圧力差を無くして吸着部材3を非膨出状態とする。
【0041】
従って、本実施例では、基板Wを吸着する吸着部材3自体を膨出させることにより、基板Wを押圧して取り外すことができ、基板Wを損傷したり汚染することがない。
【0042】
また、本実施例では、圧力差を利用して吸着部材3を膨出させるので、吸着部材3以外に基板Wに押圧力を働かせる部材が存在せず、かかる点からも基板Wを損傷することを確実に防止できる。
【0043】
しかも、基板Wの非取り外し時には、吸着部材3が基板W側に膨出することはなく、基板Wの吸着保持を確実に行わせることができる。
【0044】
また、本実施例では、周辺雰囲気が大気であり、配管部7が空間部15を減圧源としての大気に開放すると共に大気圧以上に加圧する加圧源23に接続するので、大気を利用して構造の簡素化を図ることができる。
【0045】
裏面部材5は、吸着部材3を裏面側から支持する支持部11と、支持部11を貫通して吸着部材3の裏面に至り空間部15を区画する貫通孔13とを備える。
【0046】
従って、本実施例では、吸着部材3を支持する支持部11を利用して裏面部材5を構成することができ、より確実に構造の簡素化を図ることができる。
【0047】
また、本実施例では、加圧源23による加圧量の設定に応じ、吸着部材3が過剰に膨出して吸着部材3自体が損傷することや押圧力の調整を通じて基板Wを損傷させることを防止できる。
【0048】
また、加圧源23による加圧速度の設定に応じ、吸着部材3の膨出速度を調整して、基板Wを過度な衝撃により損傷させることを防止できる。
[変形例]
図3は、実施例1の変形例に係る吸着部材及びその周辺構造の断面図であり、
図3(A)は、電気レオロジー材料で構成した吸着部材、
図3(B)は、静電チャックの絶縁材料で構成した吸着部材を有する。
【0049】
実施例1の吸着部材3は、可撓性を有して基板W等の対象物を吸着できれば良く、各種の構造を採用することができる。
【0050】
例えば、
図3(A)の例ように、吸着部材3は、電気レオロジー粒子27を電気絶縁媒体29中に分散させた可撓性のシートで構成することも可能である。この場合、吸着部材3の裏面には、裏面部材5を構成する電極基板31が支持部11との間に介設されている。
【0051】
電極基板31には、支持部11側の貫通孔13に対応して、板厚方向に貫通する電極貫通孔33が設けられている。これら電極貫通孔33及び貫通孔13により、空間部15が区画形成されている。
【0052】
図3(A)の吸着部材3は、電極基板31を介した電圧印加に応じ、電気力等によって基板Wに対する吸着力を発生させることができる。
【0053】
図3(B)の例では、吸着部材3を可撓性を有する電気絶縁シートで構成し、吸着部材3が電極基板31と共に静電チャック35を構成する。
図3(B)の吸着部材3は、電極基板31を介した電圧印加に応じ、静電気力によって基板Wに対する吸着力を発生させることができる。
【0054】
図4は、実施例1の変形例に係る切替弁を有する保持装置1の概略断面図である。
【0055】
実施例1の切替弁9は、空間部15と連通する配管部7の減圧管19及び加圧管21を切り替えることができればよく、各種の構造を採用することができる。
【0056】
図4の例では、電気的に駆動される切替弁9a,9bが配管部7の減圧管19と加圧管21とにそれぞれ設けられている。
【0057】
かかる
図3(A)〜
図4の変形例でも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例2】
【0058】
図5は、実施例2に係る吸着離脱装置を適用した基板組立装置の概略断面図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成部分に同符号又は同符号にAを付加したものを用いて、重複した説明を省略する。
[基板組立装置]
本実施例の基板組立装置37は、
図5のように、減圧室39と、本実施例の吸着離脱装置である上下保持装置1Aa,1Abとを備えている。この基板組立装置37は、上下保持装置1Aa,1Abによって基板W1,W2を吸着保持し、減圧雰囲気の減圧室39内において基板W1,W2貼り合わせるものである。
【0059】
減圧室39は、例えば上下チャンバ部41a,41bで構成され、両者間にOリング等のシール部材43が位置して密閉状態となっている。この減圧室39は、例えば、上チャンバ部41aを下チャンバ部41bに対して上下方向で近接離反することで開閉可能となっている。
【0060】
減圧室39内は、吸気管45によってポンプ等の減圧源47に接続され、減圧源47により減圧して減圧雰囲気とすることが可能となっている。なお、減圧源47は、後述するコントローラ25Aによって制御される。
【0061】
また、減圧室39内は、リーク管49及びリーク弁51が取り付けられ、リーク弁51の切替に応じて大気に開放可能(大気による加圧可能)となっている。
【0062】
減圧室39内の圧力は、圧力センサ53によって監視される。
【0063】
なお、減圧室39の構成は、特に限定されるものではなく、減圧源47によって減圧できるものであれば種々のものを採用することが可能である。
【0064】
減圧室39内には、上下保持装置1Aa,1Abが、それぞれ上下チャンバ部41a,41bに支持されている。この上下保持装置1Aa,1Abは、
図5のように基板W1,W2を吸着保持した状態で、例えば上保持装置1Aaが下方に駆動されて基板W1,W2を加圧により貼り合わせる。基板W1,W2の貼り合わせ後には、それら基板W1,W2が上下保持装置1Aa,1Abから取り外されて、例えば液晶パネル等の組立が完了する。
【0065】
なお、本実施例では、対象物としての基板W1,W2を貼り合わせる目的で、基板組立装置37の上下保持装置1Aa,1Abとして吸着離脱装置が一対設けられているが、これに限定されるものではない。
【0066】
すなわち、吸着離脱装置は、減圧雰囲気中で処理される対象物を吸着保持するものであればよく、実施例1の保持装置1のように一つ設ける等、対象物の処理目的に応じて個数等を適宜変更することができる。
【0067】
上下保持装置1Aa,1Abは、基本的に実施例1の保持装置1と同一構成であるが、配管部7Aが実施例1とは異なる。また、本実施例では、コントローラ25Aも実施例1とは異なっている。
【0068】
すなわち、配管部7Aは、減圧管19Aが減圧室39内に開口すると共に加圧管21Aが減圧室39外に引き出されて大気中に開口する。
【0069】
従って、空間部15は、一方で共通管17、切替弁9A、減圧管19Aを介して減圧室39に開放されて、減圧室39に対する減圧源47に接続される。他方では、空間部15が共通管17、切替弁9A、加圧管21Aを介して加圧源としての大気に開放される。なお、減圧管19Aは、減圧源47に直接接続しても良い。
【0070】
コントローラ25Aは、基板W1,W2を保持装置1Aa,1Abによって吸着保持する時又は吸着保持している時(非取り外し時)に、切替弁9Aを切り替えて空間部15と減圧室39とを連通させる。
【0071】
これにより、空間部15は、減圧室39を介して減圧源47によって減圧され、減圧室39の内部雰囲気(周辺雰囲気)である減圧雰囲気との圧力差が減少して吸着部材3Aが非膨出状態となる。なお、かかる圧力差の減少は、吸着部材3Aが非膨出状態となる程度に小さい場合と圧力差が無くなる場合とを含む。
【0072】
一方、基板W1,W2の取り外し時には、コントローラ25Aが切替弁9Aを切り替えて、空間部15と減圧室39外の大気とを連通させる。これにより、空間部15は、大気によって加圧され、減圧室39の内部雰囲気との圧力差が増加し、吸着部材3Aを基板W1,W2側に膨出させる(
図2(B)参照)。なお、かかる圧力差の増加は、少なくとも吸着部材3Aが膨出する程度のものであり、圧力差が無い状態から圧力差が生じる場合も含む。
【0073】
本実施例では、減圧室39が基板W1,W2の取り外し時に大気に開放され、そのときの減圧室39内の圧力に応じてコントローラ25Aが切替弁9Aの切替を行う。
【0074】
すなわち、コントローラ25Aは、基板W1,W2の取り外しを開始する場合、リーク弁51を切り替えて減圧室39を大気に開放する。このとき、コントローラ25Aは、減圧室39の圧力を圧力センサ53から取得し、減圧室39内の圧力が大気圧よりも低い間に切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放する。
【0075】
本実施例では、減圧室39内の圧力と大気圧との圧力差が閾値以下になったときに、切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放する。圧力差の閾値は、空間部15が大気に開放された際に、吸着部材3Aが過剰に膨出しない範囲で設定される。また、空間部15の大気への開放速度は、吸着部材3Aの膨出によって基板W1,W2に過度な衝撃を与えない範囲で設定するのが好ましい。
【0076】
なお、実施例2にも、実施例1の変形例の構成を適用することができる。
[基板の貼り合わせ及び取り外し動作]
基板W1,W2を貼り合わせる際には、
図5のように、上下保持装置1Aa,1Abに基板W1,W2を吸着保持させ、且つ減圧室39を密閉状態としておく。
【0077】
基板W1,W2の吸着保持の際は、まず減圧室39の上下チャンバ部41a,41bを開放しておき、ロボット・アーム等で基板W1,W2を搬送しつつ上下保持装置1Aa,1Abの吸着部材3Aに基板W1,W2を押し付ける。この場合、上下チャンバ部41a,41bの一方、例えば下チャンバ部41bを水平方向に移動させる等して、上下チャンバ部41a,41bやそれらに支持される上下保持装置1Aa,1Abが上下に対向しないようにするのが好ましい。
【0078】
なお、これら上下チャンバ部41a,41bの動作は、コントローラ25Aや他の制御ユニットによって制御させればよい。
【0079】
このとき、コントローラ25Aは、上下保持装置1Aa,1Abの切替弁9Aを切り替えて、上下保持装置1Aa,1Abの空間部15を減圧室39内に連通させる。
【0080】
この吸着保持の際には、減圧室39が大気に開放されており、空間部15を減圧室39を介して大気に開放することができる。このため、空間部15は、減圧室39の内部雰囲気との圧力差が無くなる。
【0081】
なお、空間部15が直前に行われた基板W1,W2の吸着離脱によって大気圧との圧力差が無いか或いは吸着部材3Aが膨出しない程度に小さい場合は、次述する減圧室39を減圧する際に、上下保持装置1Aa,1Abの空間部15を減圧室39内に連通させてもよい。
【0082】
図5の基板W1,W2の保持状態且つ減圧室39の密閉状態では、減圧室39が減圧されて減圧雰囲気とされる。すなわち、コントローラ25Aは、吸気管45を介して減圧源47によって減圧室39内を減圧させる。
【0083】
このとき、空間部15は、減圧室39に連通しているので、減圧室39と共に減圧源47によって減圧され、減圧雰囲気となった減圧室39の内部雰囲気との圧力差が無くなる。
【0084】
結果として、基板W1,W2を吸着している吸着部材3Aの姿勢が非膨出状態で維持され、基板W1,W2の吸着状態を確実に維持することができる。
【0085】
こうして減圧室39が減圧雰囲気になった後は、例えば上保持装置1Aaを下方に駆動し、上下保持装置1Aa,1Abによって基板W1,W2同士を加圧して貼り合わせる。
【0086】
なお、基板W1,W2の貼り合わせは、予め基板W2に塗布された接着剤を介して行われる。また、基板W1,W2の貼り合わせは、減圧雰囲気中で行われるから、空気の残留(気泡の発生)を防止することができる。
【0087】
基板W1,W2を貼り合わせた後は、上下保持装置1Aa,1Abから基板W1,W2が取り外されて、それら基板W1,W2からなるパネルの組立が完了する。
【0088】
上保持装置1Aaから基板W1を取り外す際は、まず、コントローラ25Aがリーク弁51を切り替えて減圧室39内をリーク管49を介して大気に開放する。これにより、減圧室39内の圧力が上昇していく。
【0089】
このとき、コントローラ25Aは、圧力センサ53から減圧室39内の圧力を取得し、減圧室39内の圧力と大気圧との差が閾値以下になったか否かを判断する。
【0090】
減圧室39内の圧力と大気圧との差が閾値以下になった場合は、コントローラ25Aが上保持装置1Aaの切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放する。このため、上保持装置1Aaでは、その空間部15が減圧室39の内部雰囲気よりも相対的に高い大気圧となって(加圧されて)、減圧室39と空間部15との間の圧力差が生じる。
【0091】
これに応じ、吸着部材3Aは、空間部15に対応した位置において表裏での圧力差が生じ、かかる圧力差に基づいて空間部15側から大気圧で押圧され、基板W1側である下方に部分的に膨出する(
図2(B)参照)。
【0092】
この膨出により、基板W1は、吸着部材3Aの他の部分に対して下方に押圧されて、上保持装置1Aaから取り外されることになる。この状態で、上保持装置1Aaを上方へ駆動すると、上保持装置1Aaからの基板W1の取り外しが完了する。
【0093】
一方、下保持装置1Abに対しても、基板W2の取り外しが行われる。下保持装置1Abからの基板W2の取り外しは、減圧室39内の圧力と大気圧との差が閾値以下である間、本実施例では上保持装置1Aaからの基板W1の取り外しと同時期に行われる。
【0094】
下保持装置1Abからの基板W2の取り外しの際も、コントローラ25Aが下保持装置1Abの切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放し、吸着部材3Aを空間部15に対応した位置において基板W2側である上方に部分的に膨出させる(
図2(B)参照)。かかる膨出により、基板W2は、下保持装置1Abから取り外されることになる。
【0095】
こうして基板W1,W2が上下保持装置1Aa,1Abから取り外されると、それら基板W1,W2からなるパネルが下保持装置1Ab上に載置された状態となる。
【0096】
その後は、減圧室39を開放することにより、パネルを減圧室39から搬送させることができる。
[実施例2の効果]
本実施例の上下保持装置1Aa,1Abは、それぞれ基板W1,W2を表面に吸着し少なくとも基板W1,W2の貼り合わせ(処理)時に減圧室39内に配置される可撓性の吸着部材3Aと、吸着部材3Aの裏面に周辺雰囲気である減圧室39の内部雰囲気に対して区画された空間部15を形成する裏面部材5と、空間部15を減圧源47に接続すると共に加圧源としての大気に接続する配管部7Aと、空間部15に対し配管部7Aを介した減圧源47による減圧と大気による加圧とを切り替える切替弁9Aとを備えている。
【0097】
そして、上下保持装置1Aa,1Abは、切替部9Aの切り替えにより、基板W1,W2の取り外し時に空間部15を加圧し、減圧室39の内部雰囲気との圧力差を増加させて吸着部材3Aを基板W1,W2側に膨出させ、基板W1,W2の非取り外し時に空間部15を減圧し、減圧室39の内部雰囲気との圧力差を減少させて吸着部材3Aを非膨出状態とする。
【0098】
従って、本実施例では、減圧雰囲気中で基板W1,W2を貼り合わせる際にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0099】
加えて、本実施例では、配管部7Aを、一方で空間部15を減圧室39に開放し、他方で空間部15を加圧源としての大気に開放する単純な構造とすることができ、減圧室39及び大気を利用して構造の簡素化を図ることができる。
【0100】
また、本実施例では、切替弁9Aを制御するコントローラ25Aと、減圧室39内の圧力を監視する圧力センサ53とを備え、減圧室39が、基板W1,W2を取り外す時に大気に開放され、コントローラ25Aが、圧力センサ53による減圧室39内の圧力の監視に基づいて、減圧室39内の圧力が大気圧よりも低い間に切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放する。
【0101】
従って、本実施例では、空間部15と減圧室39との圧力差を確実に増加させ、確実に基板W1,W2の取り外しを行うことができる。
【0102】
本実施例のコントローラ25Aは、減圧室39内の圧力と大気圧との圧力差が閾値以下になったときに、切替弁9Aを切り替えて空間部15を大気に開放する。
【0103】
従って、本実施例では、減圧室39内の圧力及び大気圧間の圧力差と吸着部材3Aの撓み量等とに応じて閾値を設定すれば、吸着部材3Aの膨出量を調整して吸着部材3Aが過度に撓むことを抑制できる。
【0104】
結果として、吸着部材3Aの損傷を防止できると共に、吸着部材3Aの膨出による基板W1,W2に対する押圧力を調整でき基板W1,W2の損傷を確実に防止できる。
【0105】
また、本実施例では、空間部15の大気への開放速度(加圧速度)に応じ、吸着部材3Aの膨出速度を調整し、基板W1,W2を過度な衝撃によって損傷させることを防止できる。
[その他]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0106】
例えば、実施例1では、空間部15の減圧源として大気を利用し、実施例2では、空間部15の減圧源として減圧室39の減圧源47を利用すると共に加圧源として大気を利用していたが、それらの利用に代えて、別途ポンプ等からなる減圧源や加圧源を設けてもよい。
【0107】
この場合、切替部としては、減圧源及び加圧源の駆動制御を行うコントローラ等とすることも可能である。
【0108】
また、加圧管21,21A及び減圧管19,19Aは、共通管17によって空間部15に接続されていたが、それぞれ独立して空間部15に接続する構成であっても良い。