(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398306
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】含鉄原料の転炉溶解方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/28 20060101AFI20180920BHJP
C21C 5/46 20060101ALI20180920BHJP
C21C 5/30 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
C21C5/28 A
C21C5/46 101
C21C5/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-100703(P2014-100703)
(22)【出願日】2014年5月14日
(65)【公開番号】特開2015-218341(P2015-218341A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 俊太
(74)【代理人】
【識別番号】100105441
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 久喬
(74)【代理人】
【識別番号】100166707
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 英夫
(72)【発明者】
【氏名】開澤 昭英
(72)【発明者】
【氏名】田村 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄司
(72)【発明者】
【氏名】正木 陽介
(72)【発明者】
【氏名】笠本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】堀田 義朗
【審査官】
藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−209703(JP,A)
【文献】
特開2013−227650(JP,A)
【文献】
特開2011−001585(JP,A)
【文献】
特開2007−177295(JP,A)
【文献】
特許第3496522(JP,B2)
【文献】
特開2010−163658(JP,A)
【文献】
特開2014−037566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 5/28−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解する含鉄原料の転炉溶解方法において、
転炉の酸素上吹きランスには酸素ノズルを4孔以上8孔以下有し、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への該ノズル軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれαおよびβとしたとき、少なくとも4孔の前記酸素ノズルについては下記(1)式で定義するねじれ角度δを10〜80°としたものを用いることを特徴とする含鉄原料の転炉溶解方法。
δ=tan-1(tanα/tanβ) (1)
【請求項2】
前記固体含鉄原料の一部又は全部は、酸化鉄と炭素含有物質を含有した酸化鉄含有鉄原料を加熱還元処理してなることを特徴とする請求項1に記載の含鉄原料の転炉溶解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解する含鉄原料の転炉溶解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒銑、型銑、製鉄所発生スクラップ等の固体含鉄原料を原料とする転炉製鋼法として、従来、溶融鉄浴(種湯ともいう。)の存在する溶解転炉に固体含鉄原料、炭素含有燃料(炭材ともいう。)、酸素を供給して、溶解転炉での所要種湯量と別の精錬転炉での所要精錬量の合計量の高炭素溶鉄を得、この高炭素溶鉄を原料として精錬転炉で酸素精錬することにより所要成分の溶鋼を得る転炉製鋼法が知られている(特許文献1)。供給した炭材を酸素で燃焼して固体含鉄原料を加熱するとともに、供給した炭材によって溶鉄の炭素含有量が増大して溶鉄の溶融温度が低下し、この2つの効果があいまって固体含鉄原料を熔解することができる。できるだけ短時間で所要量の固体含鉄原料を溶解することが要求されているので、供給した炭材供給量あたりの供給熱量を増大することが重要である。
【0003】
転炉で発生するダストは酸化鉄を主成分とする。このようなダストをはじめとする酸化鉄源を上記溶解転炉での固体含鉄原料の一部とすれば、鉄歩留まりを向上することができるので好ましい。一方、転炉内で酸化鉄を還元しようとすると大きな熱量を必要とする。特許文献2には、溶解転炉及び精錬転炉で発生するダストに炭材を内装させて塊成化し、予備還元炉で高温加熱して内装炭材を還元材として予備還元後、高温状態で含鉄冷材の一部として種湯の存在する溶解転炉に供給し再使用するダスト利用方法が開示されている。この方法によって溶解に要する熱量を低減することができるが、予備還元後であっても未還元酸化鉄を含んでおり、これを溶解するには多くの熱量を供給する必要がある。
【0004】
前記溶解転炉において、できるだけ少ない炭素含有原料(炭素源)と酸素供給量で必要な熱量を供給するには、吹き込んだ酸素による二次燃焼率を上げることで単位炭素たりの燃焼発熱総量を上げることで入熱量を上げることが有効である。
【0005】
転炉での二次燃焼率を増加する方法として、以下の方法が知られている。順次説明する。第1に、上吹きランス先端と湯面との距離(ランス高さHと称する)を上昇させる方法が知られている。特許文献3では、溶解転炉での上吹きランスとスラグ面との間の距離を2.0〜3.0mとすることにより、二次燃焼率と着熱効率とのバランスを最適化し、溶銑入熱速度を最も高い値とすることができるとしている。第2に、上吹きランスの酸素ノズルを多孔にして酸素ガスジェットを分散させることが知られている。第3に、特許文献4に記載のように、二次燃焼用の副孔ノズルを設ける方法が知られている。第4に、酸素ノズルの形状を非円形にする(特許文献5)、ラバールノズルの断面積拡大部の径や長さを変化させて高二次燃焼率を得る(特許文献6)、旋回用ガス供給孔を設けて旋回流を付与する(特許文献7)、もしくは主流ガスに副孔ガスを供給して噴流を乱すことで酸素ガスジェット流速の減衰を促進する方法が知られている。
【0006】
しかし、ランス高さを上昇する第1の方法、多孔化・広角化する第2の方法、副孔ノズルを設ける第3の方法では、酸素噴流位置(二次燃焼サイト)が炉壁に近づき炉壁損耗速度が増大することが課題である。また、第4の方法のうち、複雑形状のランスでは適切な冷却構造をとることが困難であり、噴流の減衰を促進する方法では噴流の減衰がすぐに促進することで噴流同士の合体が発生して二次燃焼を促進することができない。
【0007】
転炉での高速吹錬条件下において、スピッティングを抑制するための上吹きランスが、特許文献8、9に提案されている。即ち、3孔以上のノズルを有する金属精錬用上吹きランスにおいて、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への該ノズル軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれαおよびβとしたとき、αとβが式「0<tanα/tanβ<2.75」を満足する溶融金属精錬用上吹きランスである。
【0008】
ランス中心軸とノズル吐出方向との間の角度を、広がり角度θとおく。特許文献10には、広がり角度の大きいノズルと広がり角度の小さいノズルが混在した上吹きランスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平4−11603号公報
【特許文献2】特開2000−45012号公報
【特許文献3】特開2007−77452号公報
【特許文献4】特開平1−219116号公報
【特許文献5】特開平7−3318号公報
【特許文献6】特開2000−54016号公報
【特許文献7】特開2001−220617号公報
【特許文献8】特許第3496522号公報
【特許文献9】特開2010−163658号公報
【特許文献10】特開2009−52090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解する含鉄原料の転炉溶解方法において、転炉炉壁を損耗させることなく二次燃焼率を増加させることのできる含鉄原料の転炉溶解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解する含鉄原料の転炉溶解方法において、
転炉の酸素上吹きランスには酸素ノズルを4孔以上
8孔以下有し、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への該ノズル軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれαおよびβとしたとき、少なくとも4孔の前記酸素ノズルについては下記(1)式で定義するねじれ角度δを10〜80°
としたものを用いることを特徴とする含鉄原料の転炉溶解方法。
δ=tan
-1(tanα/tanβ) (1
)
(2)固体含鉄原料の一部又は全部は、酸化鉄と炭素含有物質を含有した酸化鉄含有鉄原料を加熱還元処理してなることを特徴とする上記(1)に記載の含鉄原料の転炉溶解方法。
【発明の効果】
【0012】
溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解するに際し、転炉の酸素上吹きランスには酸素ノズルを4孔以上有し、少なくとも4孔の酸素ノズルについては前記(1)式で定義するねじれ角度δを10〜80°とし、ランス高さH(ランス先端と湯面との距離)と炉内径D(鉄浴の直径)との関係が前記(2)式を満たすことにより、ねじれ角度を有しない従来のノズルを用いる場合に比較し、転炉炉壁を損耗させることなく二次燃焼率を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のランス先端を示す概念図であり、(a)は下から見た図、(b)はB−B矢視断面図、(c)はC−C矢視断面図である。
【
図2】ランスのXYZ軸、ノズル軸と角度α、β、δ、θの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
転炉の上吹きランスには多孔ランスが用いられる。通常の多孔ランスにおいて、各ノズルの吐出方向は外方に向かって広がり角度を有しており、吐出方向(ノズル軸)はランスの中心軸と交差するように傾斜して配置される。ランス中心軸とノズル吐出方向(ノズル軸)との間の角度を、ここでは広がり角度θとおく。
【0015】
特許文献8、9に記載された上吹きランスは、3孔以上のノズルを有し、ランス中心軸がZ軸、ノズル2の出口位置4がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系(
図1、2参照)において、YZ平面およびXZ平面へのノズル軸5の投影がZ軸となす角度をそれぞれαおよびβとしたとき、αとβが式「0<tanα/tanβ<2.75」を満足する溶融金属精錬用上吹きランスである。「ねじれランス」と呼ばれている。0<tanα/tanβであってtanαが0でない有限値、従ってαが0でない有限値であることが特徴であり、αが有限であることからねじれが生じる。
【0016】
ねじれランスにおいて、ねじれ角度δ(
図2参照)を以下のように定義することができる。
δ=tan
-1(tanα/tanβ) (1)
【0017】
また、ねじれランスにおけるノズルの広がり角度θ(
図2参照)は、
θ=tan
-1(√(tan
2α+tan
2β)) (3)
とあらわすことができる。α=0°であればtanα/tanβ=0、ねじれ角度δ=0となって通常の多孔ランスであり、β=θとなる。
【0018】
上吹きランスの酸素ノズルとしてラバールノズルが用いられる。ラバールノズルから吐出したガス流れは超音速コアを形成する。超音速コアはノズル出口から所定のコア長さを有し、それ以降は亜音速となり、噴流は減速するとともに、噴流領域が下流に行くほど広がっていく。
【0019】
上吹きノズルから転炉鋼浴面に吹き付けるガスジェットの挙動を、数値流体解析によって求めることを試みた。数値流体解析は、汎用熱流体解析ソフトウェアであるアンシス・ジャパン(株)製のFLUENT(登録商標)を使用して行った。ラバールノズルを通過するガス流れは、圧縮性流れの特質によってノズルの末広部では膨張が起こり、またノズル内又はノズルから排出された以降において衝撃波が発生するので、数値流体解析に適用する運動方程式は圧縮性流れについての方程式となる。
ねじれ角度を有しない通常のランスと、ねじれ角度δを有するねじれランスについて、数値流体解析によって噴流の挙動解析を行った。3〜10孔のノズルをランス先端の同円周上に等角度間隔で配置し、ノズルの広がり角度θはいずれも20°で同一とした。
図1は、6孔のノズル2をランス1先端の同円周上に等角度間隔で配置した場合の概念図である。
【0020】
数値流体解析の結果、4孔以上のノズルを有するねじれランスについては、噴流が湾曲し、ランス先端の浴表面までの噴流距離が長くなることが確認できた。ねじれを付与した結果、各ノズルからの噴流が隣接するノズルの噴流と相互作用を及ぼしあい、噴流が湾曲したものと推定される。噴流距離が長いということは、その間における雰囲気ガスとの接触機会が増加し、二次燃焼率が増加することが期待できる。なお、ねじれを有しない通常のランス及びノズルが3孔のねじれランスについては噴流の湾曲は観察されないか僅かであった。また孔数が8孔を超えると噴流がランス中心軸方向に合体する傾向が見られた。さらに、ねじれ角度δと噴流の湾曲状況についてみると、ねじれ角度δ=10°以上で湾曲が明確に観察された。一方、ねじれ角度δが80°を超えると、噴流がランス中心軸方向に合体する傾向が見られた。
【0021】
そこで次に、溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解するに際し、当該溶解転炉において種々の形状のねじれランスを適用し、二次燃焼率に与える影響を評価した。その結果、以下の事実が判明した。
【0022】
図3に示すような100トン規模の溶解転炉6を用い、溶解転炉中には溶融鉄浴(種湯)50トンが存在し、その中に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解し、75トンの溶銑を製造した。このうちの25トンの溶銑を出鋼口から払い出して次工程での精錬を行うことになる。溶銑払い出し後は炉内に50トンの溶融鉄浴が残るので、次チャージの含鉄原料を装入して溶解を行う。溶解転炉に装入する固体含鉄原料として、酸化鉄と炭素含有物質を含有した酸化鉄含有鉄原料を加熱還元処理して製造したものを用いた。含鉄原料は金属化率80〜85質量%であり、装入時の含鉄原料の温度は850℃で、溶解転炉中の溶融鉄浴温度は1400℃であった。
【0023】
上吹きランス1からの送酸速度を10000Nm
3/hrとし、約50分の溶解処理を行う。溶解時の炉内径D(鉄浴8の直径)は3.2mである。溶解処理中に投入する炭素含有燃料としては、炭素含有量が80質量%である無煙炭を用い、底吹き羽口から窒素ガスをキャリアガスとして平均200kg/minの速度で吹き込んだ。
【0024】
上吹きランスの酸素ノズルとして、
図1に示すような、ランス1先端の同円周上に等角度間隔で配置されている3〜8孔のノズル2(主孔)を配置したラバールノズルを用いた。いずれのランスも、ノズル2(主孔)と別に、ランス中央部への粒鉄付着を防止する目的で、ランス中央に下向き20mmφのノズル3(副孔という。)を配置した。ノズルスロート部断面積の合計はすべてのランスで同一とした。
【0025】
ノズル2の広がり角度θはすべて同一でθ=20°とし、ねじれ角度δを付与するランスについては、すべてのノズル2で同方向に同一ねじれ角度δ(0〜85°)を付与した。θ=20°で所定のねじれ角度δとなるように、前述の定義による角度αとβを定めた。
【0026】
ランス高さHについては、H/Dが0.5〜1.4となる範囲で変化させ、吹錬中は一定ランス高さとして吹錬を行った。
【0027】
二次燃焼率については、下記式に基づいて二次燃焼率を計算し、吹錬全時間での平均値で評価し、同一ノズル孔数・同一ランス高さの試験を1グループとし、グループ内でねじれ角度δを有しないランスを用いた場合の二次燃焼率を基準として二次燃焼率増加率を算出した。
二次燃焼率(%)=CO
2/(CO
2+CO)×100
ここで、CO
2、COはいずれも排ガス中成分(mol%)を意味する。
【0028】
溶解処理による溶解炉の耐火物損耗状況を観察した。1chの吹錬後の炉内観察によって通常吹錬と変化がないのであれば「通常」と評価し、明らかな耐火物損耗が観察されたのであれば「悪化」と評価した。
【0029】
実施例の処理条件及び評価結果を表1に示す。表1において、主孔数とランス高さが同一条件の水準を同一グループとし、グループ内でねじれ角度δ=0の水準を基準の比較例とした。二次燃焼率はグループごとに相対評価することとし、基準の比較例と対比した二次燃焼率(%)の増加しろを「二次燃焼増加率(%)」とした。本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
【0031】
表1のAグループは、主孔数:6、H/D=0.9に固定し、ねじれ角度δを0°(基準)から85°まで変化させたグループである。ねじれ角度δ:10(実施例1)〜80°(実施例5)の範囲において、二次燃焼増加率が正の値となっており、ねじれ角度0°の基準に対して二次燃焼率が増加していることが明らかである。そこで本発明では、ねじれ角度δの範囲を10〜80°と規定することとした。
【0032】
表1のB〜Dグループは、H/D=0.9、ねじれ角度δ=60°(実施例)、0°(基準比較例)に固定し、主孔数を3〜8まで変化させたグループ群である。主孔数3では二次燃焼は基準に対して増加していないが、主孔数4(実施例6)〜8(実施例7)ではいずれも、同じグループ内の基準に対して二次燃焼率が増加しており、本発明の効果を発揮している。そこで本発明では、ねじれを有する主孔数の範囲を4以上とすることとした。
【0033】
表1の
F、Gグループは、主孔数:6、ねじれ角度δ=60°(実施例)、0°(基準比較例)に固定し、H/Dを
0.6〜1.3の範囲で変化させたグループ群である
。
【0034】
以上の結果に基づいて、溶融鉄浴の存在する溶解転炉に固体含鉄原料と炭素含有燃料を供給し酸素の吹き込みを行って固体含鉄原料を溶解するに際し、本発明の含鉄原料の転炉溶解方法においては、転炉の酸素上吹きランスには酸素ノズルを4孔以上有し、ランス中心軸がZ軸、ノズルの出口位置がX軸上となるように定めたXYZ直交座標系において、YZ平面およびXZ平面への該ノズル軸の投影がZ軸となす角度をそれぞれαおよびβとしたとき、少なくとも4孔の酸素ノズル(主孔)については前記(1)式で定義するねじれ角度δを10〜80°とし、ランス高さH(ランス先端と湯面との距離)と炉内径D(鉄浴の直径)との関係が前記(2)式を満たすこととした。これにより、ねじれ角度を有しない従来のノズルを用いる場合に比較し、転炉炉壁を損耗させることなく二次燃焼率を増加させることが可能となる。
【0035】
本発明のランスが有する酸素ノズルは、主に溶解の酸素吹き込みに寄与する主孔の他に、ランス中央部への粒鉄付着を防止する目的でランス中央に配置する副孔を有していても良い。本発明でねじれ角度δを付与するノズルは主孔であり、主孔のうち少なくとも4孔がねじれ角度10〜80°の範囲内でねじれを有している。すべての主孔がねじれを有していると好ましい。また、すべての主孔が同じねじれ角度δのねじれを有しているとより好ましい。
【0036】
ねじれを有する主孔ノズルは、ランス先端の同円周上に等角度間隔で配置されていると好ましい。もちろん、例えば特許文献10に記載されたような、広がり角度の大きいノズルと小さいノズルが混在するランスにおいても、本発明を適用することができる。
【0037】
本発明を適用する、固体含鉄原料を溶解する含鉄原料の転炉溶解方法において、固体含鉄原料の一部又は全部は、酸化鉄と炭素含有物質を含有した酸化鉄含有鉄原料を加熱還元処理してなることとすると好ましい。酸化鉄含有鉄原料は、未還元酸化鉄を溶解するために、固体含鉄原料と比較して多量の熱を必要とし、また溶解時間も比較的長く耐火物への影響が大きい。そのため、転炉炉壁を損耗させることなく二次燃焼率を増加させることのできる本方法の効果が大きい。
【符号の説明】
【0038】
1 ランス
2 ノズル(主孔)
3 ノズル(副孔)
4 ノズル出口位置
5 ノズル軸
6 溶解転炉
7 浴面
8 溶鉄
α YZ平面へのノズル軸の投影がZ軸となす角度
β XZ平面へのノズル軸の投影がZ軸となす角度
δ ねじれ角度
θ 広がり角度
H ランス高さ
D 炉内径(鉄浴の直径)