(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同一符号を付し、その詳細な説明は重複しないように適宜省略される。
はじめに、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物の概要について説明する。
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、以下(1)および(2a)で示される繰り返し単位を含み、式(2a)のR
5がラジカル重合性基を有し、炭素数2〜18の有機基であるポリマーPと、
光ラジカル重合開始剤とを含む。
【0014】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。nは0、1または2である。)
このようなネガ型樹脂組成物では、上述したポリマーPを使用することで、解像性と、パターン形成にかかる時間とのバランスに優れたネガ型樹脂組成物を提供できる。このようなネガ型樹脂組成物に対して光を照射することで光ラジカル重合開始剤からラジカルが発生し、ポリマーPのR
5に含まれるラジカル重合性基を介してポリマーP間で架橋する。この場合には、露光後、現像前に光酸発生剤で発生した酸を拡散し、酸による反応を促進して、架橋反応を進めるための加熱処理を省略あるいは短縮することができ、パターン形成にかかる時間を短縮することができる。
【0015】
ネガ型感光性樹脂組成物は、さらに、添加剤等のその他の材料を含んでもよい。以下、各成分について説明する。
【0016】
<ポリマーP>
ポリマーPは、前述したように、以下(1)および(2a)で示される繰り返し単位を含み、式(2)のR
5が炭素数2〜18の有機基であり、かつ、ラジカル重合性基を有する。
【0018】
このポリマーPは繰り返し単位として、以下の(2b)を含むことが好ましい。
【0020】
このような構造単位(2b)を有することで、ポリマーの酸価を適度なものとすることができ、アルカリ現像液への溶解性を調整することができる。
また、ポリマーは、以下の構造単位(2c)、(2d)を有していてもよい。
【0021】
【化6】
(R
6、R
7は、それぞれ独立して炭素数1〜18の有機基である。)
【0022】
ポリマーP中における構造単位(2a)〜(2d)のモル含有率(mol%)の合計(ただし、(2a)、(2b)を含むことが好ましく、(2c)、(2d)は含まない場合もある)をm、構造単位(1)のモル含有率(mol%)をlとした場合、l+m≦1、0.1≦l≦0.9、0.1≦m≦0.9である。なお、ポリマーPは、構造単位(1)、構造単位(2a)〜(2d)以外の他の構造単位を含んでいてもよい。
【0023】
R
1、R
2、R
3およびR
4を構成する炭素数1〜30の有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上を含んでいてもよい。また、R
1、R
2、R
3およびR
4を構成する有機基は、いずれも酸性官能基を有しないものとすることができる。これにより、ポリマーP中における酸価の制御を容易とすることができる。
【0024】
本実施形態において、R
1、R
2、R
3およびR
4を構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、たとえばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
なお、R
1、R
2、R
3またはR
4としてアルキル基を含むことにより、ポリマーPを含むネガ型感光性樹脂組成物からなる膜の製膜性を向上させることができる。また、R
1、R
2、R
3またはR
4としてアリール基を含むことにより、ポリマーPを含むネガ型感光性樹脂組成物からなる膜について、リソグラフィ工程におけるアルカリ現像液を用いた現像の際の膜減りを抑えることができる。
【0025】
さらに、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基が好ましい。R
1、R
2、R
3およびR
4の少なくともいずれか1つをハロアルキル基とすることで、ポリマーPを使用してネガ型感光性樹脂組成物を構成した際、このネガ型感光性樹脂組成物の誘電率を低下させることができる。
なお、ポリマーPを含んで構成される膜の光透過性を高める観点から、R
1、R
2、R
3およびR
4のいずれかが水素であることが好ましく、特には、R
1、R
2、R
3およびR
4すべてが水素であることが好ましい。
【0026】
R
5は、光ラジカル重合開始剤により、ラジカル重合を開始するラジカル重合性基を有している。R
5は、末端に炭素―炭素二重結合を有することが好ましく、たとえば、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを含むことが好ましい。R
5としては、炭素数2〜18の脂肪族炭化水素基があげられる。この場合、たとえば、R
5として以下(I)、(II)のいずれかを採用することができる。
【0027】
【化7】
式(I)において、fは1〜5の整数であり、式(II)においてeは1〜9の整数であり。なお、R
5は、(2a)で示される複数の繰り返し単位において同じであることが好ましいが、(2a)で示される繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。
【0028】
また、R
5として、芳香環を含む炭素数8〜18の有機基を用いてもよい。この場合、たとえばR
5としては、ビニルアリール基(−Ar−CH=CH
2、Arは芳香族炭化水素基を表す)を採用することができる。
なお、R
5は酸性官能基を含まないものとすることができる。
【0029】
R
6およびR
7を構成する炭素数1〜18の有機基は、その構造中にO,N,S,P,Siのいずれか1以上を含んでいてもよい。また、R
6およびR
7を構成する有機基は、酸性官能基を含まないものとすることができる。これにより、ポリマーP中における酸価の制御を容易とすることができる。
【0030】
本実施形態において、R
6およびR
7を構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。ここでアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、たとえばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基、およびオキセタニル基が挙げられる。
【0031】
さらに、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基が好ましい。
【0032】
ポリマーPは、たとえば下記式(3)で表されるノルボルネン型モノマーに由来した繰り返し単位と、下記式(4)に示す無水マレイン酸に由来した繰り返し単位と、が交互に配列されてなる交互共重合体であることが好ましい。なお、上記ポリマーPは、ランダム共重合体やブロック共重合体であってもよい。
下記式(4)に示す無水マレイン酸に由来した繰り返し単位とは、上述した(2a)〜(2d)を意味する。
【0033】
【化8】
式(3)中、nは0、1または2であり、R
1、R
2、R
3およびR
4はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。
【0034】
本実施形態におけるポリマーPは、たとえば酸価が15mgKOH/gポリマー以上65mgKOH/gポリマー以下であることが好ましい。
ポリマーPの酸価の測定は、たとえばJIS K 2501に準じて次のように行われる。まず、合成したポリマーPを溶かした滴定溶剤に対し、N/10KOH水溶液を用いてpH=7.0となるよう滴定を行う。そして、この滴定に要したKOH量を基に、下記の式を用いてポリマーの酸価(樹脂1gに対するKOHのmg数)が算出される。
酸価=滴定量(ml)×KOHのファクターf×0.1×56.1/ポリマー量(固形)
【0035】
本実施形態において、ポリマーPの酸価は、式(2a)(ただし、(2d)の構造単位を含む場合には、(2a)および(2d))により表される構造単位に由来するカルボキシル基の量の指標となる。すなわち、ポリマーPの酸価を制御することにより、ポリマーP中におけるカルボキシル基の量を調整することができる。したがって、ポリマーPの酸価を制御することにより、カルボキシル基の量に起因して変動するポリマーPのアルカリ溶液に対する溶解速度を調整することが可能となる。
フォトリソグラフィ工程においては、所望のパターニング性能を実現するために、アルカリ現像液への溶解速度を調整することが重要となる。ポリマーPの酸価を上記範囲とすることにより、特に永久膜のパターニングに適した、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ溶解速度を実現することが可能となる。
【0036】
本実施形態におけるポリマーPは、たとえばGPC(Gel Permeation Chromatography)により得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下におけるピーク面積が、全体の1%以下であることが好ましい。
本発明者は、ポリマーPにおける低分子量成分の量を低減することにより、当該ポリマーPにより形成される膜について、硬化時におけるパターンの変形を抑制できることを見出した。このため、GPCにより得られる分子量分布曲線の分子量1000以下におけるピーク面積の比率を上記範囲とすることにより、ポリマーPを含むネガ型感光性組成物からなる膜のパターン形状を良好なものとすることができる。当該膜を永久膜として備える電子装置については、その動作信頼性を向上させることが可能となる。
なお、ポリマーPにおける低分子量成分の量の下限は、特に限定されない。しかし、本実施形態におけるポリマーPは、GPCにより得られる分子量分布曲線において分子量1000以下におけるピーク面積が全体の0.01%以上である場合を許容するものである。
【0037】
本実施形態におけるポリマーPは、たとえばMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が1.5以上2.5以下である。なお、Mw/Mnは、分子量分布の幅を示す分散度であることが好ましい。
本発明者は、ポリマーPにおける分子量分布を一定の範囲に制御することにより、当該ポリマーPにより形成される膜について、硬化時におけるパターンの変形を抑制できることを見出した。このため、ポリマーPのMw/Mnを上記範囲とすることにより、ポリマーPを含むネガ型感光性樹脂組成物からなる膜のパターン形状を良好なものとすることができる。なお、このような効果は、同時に上述のようにポリマーPの低分子量成分を低減する場合において特に顕著に表れる。
また、ポリマーPのMw(重量平均分子量)は、たとえば5,000以上30,000以下である。
【0038】
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、たとえばGPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8320GPC
カラム:東ソー社製TSK−GEL Supermultipore HZ−M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
また、ポリマーP中における低分子量成分量は、たとえばGPC測定により得られた分子量に関するデータに基づき、分子量分布全体の面積に占める、分子量1000以下に該当する成分の面積総和の割合から算出される。
【0039】
本実施形態におけるポリマーPは、たとえばアルカリ金属を含有している。当該ポリマーP中におけるアルカリ金属の濃度は、たとえば10ppm以下である(ここでは、ppmは質量ppmを意味する)。
ポリマーP中におけるアルカリ金属の濃度を当該範囲とすることにより、永久膜を含む電子装置の動作信頼性を向上させることができる。また、上記範囲内であればアルカリ金属がポリマーP中に含有されることを許容できる。すなわち、後述する無水マレイン酸由来の構造単位における無水環を開環する工程を、アルカリ水溶液を用いた処理により行うことが可能となる。この場合、短時間で、かつ温和な条件により当該工程を行うことができる。また、酸触媒を用いて無水環を開環する工程と比較して、ポリマーPにおける開環率の制御が容易となる。
なお、ポリマーP中におけるアルカリ金属濃度の下限は、特に限定されないが、本実施形態はポリマーP中におけるアルカリ金属濃度が0.01ppm以上である場合を許容するものである。
【0040】
本実施形態において、ポリマーP中におけるアルカリ金属の濃度は、フレームレス原子吸光光度計を用いて、必要に応じてN−メチルピロリドンにより希釈したポリマー固形分に対してのアルカリ金属濃度を測定することにより得た。
また、本実施形態におけるポリマーP中に含まれるアルカリ金属としては、たとえばNa、KまたはLiが挙げられる。これらのアルカリ金属は、たとえば後述する無水マレイン酸由来の構造単位における無水環を開環する開環工程(処理S2)におけるアルカリ水溶液に起因するものである。
【0041】
本実施形態におけるポリマーPのアルカリ溶解速度は、たとえば500Å/秒以上20,000Å/秒以下である。ポリマーPのアルカリ溶解速度は、たとえばポリマーPをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分20重量%に調整したポリマー溶液を、シリコンウェハ上にスピン方式で塗布し、これを110℃で100秒間ソフトベークして得られるポリマー膜を、23℃で2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に含浸させ、視覚的に前記ポリマー膜が消去するまでの時間を測定することにより算出される。
ポリマーPのアルカリ溶解速度を500Å/秒以上とすることにより、アルカリ現像液による現像工程におけるスループットを良好なものとすることができる。また、ポリマーPのアルカリ溶解速度を20,000Å/秒以下とすることにより、アルカリ現像液による現像工程後における残膜率を向上させることができる。このため、リソグラフィ工程による膜減りを抑えることが可能となる。
【0042】
(ポリマーの製造方法)
本実施形態に係るポリマーPは、たとえば以下のように製造される。
【0043】
(重合工程(処理S1))
はじめに式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、モノマーとなる無水マレイン酸とを用意する。式(3)で示されるノルボルネン型モノマーにおいて、n、R
1〜R
4は、上記式(1)のものと同様とすることができる。
【0044】
式(3)で示されるノルボルネン型モノマーとしては、具体的には、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)があげられ、さらに、アルキル基を有するものとして、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−ヘキシル−2−ノルボルネン、5−デシル−2−ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5−アリル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネンなど、アルキニル基を有するものとしては、5−エチニル−2−ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5−ベンジル−2−ノルボルネン、5−フェネチル−2−ノルボルネンなどがあげられる。
ノルボルネン型モノマーとしては、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。なかでも、ポリマーの光透過性の観点から、ビシクロ〔2.2.1〕−ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を使用することが好ましい。
【0045】
次いで、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを付加重合する。ここでは、ラジカル重合により、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸との共重合体(共重合体1)を形成する。
式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とのモル比(式(3)で示される化合物のモル数:無水マレイン酸のモル数)は、0.5:1〜1:0.5であることが好ましい。なかでも、分子構造制御の観点から、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーのモル数:無水マレイン酸のモル数=1:1であることが好ましい。
式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸と、重合開始剤とを溶媒に溶解し、その後、所定時間加熱することで、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを溶液重合する。加熱温度は、たとえば、50〜80℃であり、加熱時間は10〜20時間である。
【0046】
溶媒としては、たとえばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン等のうち、いずれか1種以上を使用することができる。
重合開始剤としては、アゾ化合物および有機過酸化物のうちのいずれか1種以上を使用できる。
アゾ化合物としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)があげられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
また、有機過酸化物としては、たとえば過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)を挙げることができ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0047】
重合開始剤の量(モル数)は、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸との合計モル数の1%〜10%とすることが好ましい。重合開始剤の量を前記範囲内で適宜設定し、かつ、反応温度、反応時間を適宜設定することで、得られるポリマーの重量平均分子量(Mw)を5000〜30000に調整することができる。
【0048】
この重合工程(処理S1)により、以下の式(5)で示される繰り返し単位と、以下の式(6)で示される繰り返し単位とを有する共重合体1を重合することができる。
ただし、共重合体1において、式(6)の構造のR
1は、各繰り返し単位において共通であることが好ましいが、それぞれの繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。R
2〜R
4においても同様である。
【0049】
【化9】
(式(6)において、n、R
1〜R
4は、上記式(1)と同じである。すなわち、nは0、1、2のいずれかである。R
1〜R
4は、それぞれ独立した水素または炭素数1〜30の有機基である。式(6)において、R
1〜R
4は、同一のものであっても異なっていてもよい)
【0050】
共重合体1は、式(5)で示される繰り返し単位と、式(6)で示される繰り返し単位とが、ランダムに配置されたものであってもよく、また、交互に配置されたものであってもよい。また、式(3)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とがブロック共重合したものであってもよい。ただし、本実施形態で製造されるポリマーを用いたネガ型感光性樹脂組成物の溶解性の均一性を確保する観点からは、式(5)で示される繰り返し単位と、式(6)で示される繰り返し単位とが交互に配置された構造であることが好ましい。すなわち、共重合体1は、以下の繰り返し単位を有するものであることが好ましい。
【0051】
【化10】
(式(7)において、n、R
1〜R
4は、上記式(1)と同じである。すなわち、nは0、1、2のいずれかである。R
1〜R
4は、水素または炭素数1〜30の有機基である。R
1〜R
4は、同一のものであっても異なっていてもよい。また、aは10以上、200以下の整数である)
【0052】
ここで、式(7)の構造のR
1は、各繰り返し単位において共通であることが好ましいが、それぞれの繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。R
2〜R
4においても同様である。
【0053】
(開環工程(処理S2))
次に、得られた共重合体1の無水マレイン酸に由来する環状構造の繰り返し単位のうち、一部の繰り返し単位を閉環した状態としながら、残りの繰り返し単位を開環する。これにより、共重合体1中におけるカルボキシル基の量を調整することができる。すなわち、作製されるポリマーPにおける酸価の制御が可能となる。
本実施形態においては、共重合体1の無水マレイン酸由来の繰り返し単位のうち、たとえば50%以上の繰り返し単位を開環せずに、残りの繰り返し単位の環状構造(無水環)を開環することが好ましい。すなわち、共重合体1の開環率は、たとえば50%以下である。なかでも、共重合体1の無水マレイン酸由来の環状構造の繰り返し単位の全個数のうち、60%以上、90%以下の繰り返し単位を開環しないことが好ましい。
【0054】
ここで、無水マレイン酸由来の繰り返し単位の開環率は以下のようにして計測することができる。
開環前の共重合体1の酸無水物構造における(C=O)のIR吸収強度(A1)を測定し、開環後の酸無水物構造における(C=O)のIR吸収強度(A2)より以下式にて開環率を算出する。
開環率(%)=((A1−A2)/A1)×100
なお、内部標準物質としてアセトニトリルを用いる。
【0055】
具体的には、
(A)塩基としての金属アルコキシド
(B)アルコールおよび塩基としてのアルカリ金属の水酸化物
のいずれか一方を、前記重合工程において、前記共重合体1が重合された反応液に添加するとともに、メチルエチルケトン(MEK)等の有機溶媒をさらに添加し、40〜50℃で1〜5時間攪拌して、反応液L1を得る。反応液L1中では、共重合体1の無水マレイン酸由来の繰り返し単位の一部の無水環が開環するとともに、開環することで形成された一部の末端がエステル化される。なお、残りの末端はエステル化されずに、金属塩構造となる。
【0056】
本実施形態において、金属アルコキシドあるいはアルカリ金属の水酸化物のモル数は、重合工程で使用した無水マレイン酸のモル数の50%以下とすることが好ましい。なかでも、金属アルコキシドあるいはアルカリ金属の水酸化物のモル数は、重合工程で使用した無水マレイン酸のモル数の40%以下、10%以上とすることが好ましく、さらには、30%以下とすることが好ましい。このようにすることで、金属アルコキシドあるいはアルカリ金属の水酸化物の量を少なくすることができ、最終的に得られるポリマー中のアルカリ金属濃度を低減することができる。
ポリマー中のアルカリ金属濃度を低減することで、このポリマーを使用したデバイスを形成した際に、金属イオンのマイグレートを抑制することができる。
【0057】
前述した金属アルコキシドとしては、M(OR
5)で示されるもの(Mは1価の金属、R
5は炭素数1〜18の有機基である。)が好ましい。金属Mとしては、アルカリ金属があげられ、なかでも、取り扱い性の観点からナトリウムが好ましい。R
5としては、式(2a)におけるR
5と同様のものが挙げられる。
なお、金属アルコキシドとしては、異なるものを2種以上使用してもよい。ただし、製造安定性の観点からは、1種の金属アルコキシドを使用することが好ましい。
【0058】
一方で、前述したように、共重合体1の無水マレイン酸由来の構造体を(B)アルコールおよび塩基としてのアルカリ金属の水酸化物の存在下で開環してもよい。
アルカリ金属の水酸化物としては、取り扱い性の観点から水酸化ナトリウムが好ましい。
アルコールとしては、1価のアルコール(R
5OH)が好ましい。有機基であるR
5は、前述したものを使用できる。
前記アルコールあるいは金属アルコキシドの原料となるアルコールは、たとえば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、8−ノネン−1−オール、9−デセン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、および1,4−シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレートがあげられ、これらのうちいずれか1以上使用することができる。
【0059】
この開環工程(処理S2)で開環した無水マレイン酸由来の繰り返し単位は、以下の式(8)で示す構造となり、カルボキシル基の塩部分を有する構造となる。この式(8)の構造を有するものを、共重合体2とよぶ。
【0060】
【化11】
(式(8)において、R
5は、前述したR
5と同様であり、前述したアルコールあるいは金属アルコキシド由来のものである)
【0061】
なお、共重合体2において、わずかではあるが、以下の式(9)で示す構造体が形成されることもある。
【0063】
また、共重合体2において、わずかではあるが、以下の式(10)で示す構造体が形成されることもある。
【0065】
次いで、反応液L1に、塩酸あるいは蟻酸等の水溶液を加えて、共重合体2を酸処理して、金属イオン(Na+)をプロトン(H+)と置換する。これにより、共重合体2を酸処理することで得られた共重合体3においては、式(8)で示される開環した無水マレイン酸由来の繰り返し単位は、下記式(11)のような構造となり、一方の末端がカルボキシル基となる。
【0066】
【化14】
(式(11)において、R
5は、前述したR
5と同様である)
【0067】
なお、共重合体2において、式(10)で示す構造体を有する場合には、当該構造体は、下記式(12)のような構造となる。
【0069】
共重合体2を酸処理することで得られた共重合体3は、前述した式(6)で示される繰り返し単位と、式(5)で示される繰り返し単位と、式(11)で示される繰り返し単位と、場合により式(9)の構造体および式(12)の構造体を有するものとなる。そして、無水マレイン酸由来の構造単位の全個数のうち、50%以上が、式(5)で示される繰り返し単位となることが好ましい。式(5)で示される繰り返し単位と、式(11)で示される繰り返し単位(式(9)の構造体、式(12)の構造体が含まれる場合には、式(11)で示される繰り返し単位と、式(9)の構造体と、式(12)の構造体との合計)との比率(モル比(式(5):式(11)(式(9)の構造、式(12)の構造が含まれる場合には、式(11)+式(9)+式(12))))は、たとえば、1:1〜3:1である。
【0070】
なかでも、以下の式(13)および(14)を繰り返し単位として有し、ノルボルネン型モノマー由来の構造体と、無水マレイン酸モノマー由来の構造体とが交互に配置された構造であることが好ましい。
【0072】
式(13)および式(14)において、n、R
1〜R
4は、上記式(1)と同じである。すなわち、nは0,1,2のいずれかである。R
1〜R
4は、水素または炭素数1〜30の有機基である。R
1〜R
4は、同一のものであっても異なっていてもよい。また、式(14)の構造には、Zが−O―Hおよび−O−R
5のうちのいずれか一方を示し、Wは、いずれか他方を示す構造と、わずかではあるが、ZおよびWがいずれも、−O−R
5である構造とが含まれる。R
5は、前述したR
5と同様である。
また、わずかではあるが、式(14)で示される繰り返し単位には、ZおよびWがいずれも、−O−Hである構造も含まれる場合がある。
【0073】
また、式(13)が繰り返し単位となる場合には、R
1は、各繰り返し単位において共通であることが好ましいが、それぞれの繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。R
2〜R
4においても同様である。
同様に、式(14)が繰り返し単位となる場合には、R
1は、各繰り返し単位において共通であることが好ましいが、それぞれの繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。R
2〜R
4、W、Zにおいても同様である。
【0074】
この開環工程(処理S2)では、共重合体1の無水マレイン酸由来の繰り返し単位のうち、50%以上の繰り返し単位を開環せずに、残りの繰り返し単位の環状構造(無水環)を開環して、共重合体2を得ている。共重合体2では、前述したように、無水マレイン環が開環して形成された一方の末端に金属(たとえば、Na)が結合しているが、50%以上の繰り返し単位を開環しないことで、生成物であるポリマー中に含まれる金属量を少なくすることができる。これにより、本実施形態で最終的に得られるポリマー中のアルカリ金属の量を低減することができ、このポリマーを用いたネガ型感光性樹脂組成物において所望の特性を発揮させることができる。
【0075】
(洗浄工程(処理S3))
次に、以上の工程により得られた共重合体3を含む溶液を、水と有機溶媒(たとえば、MEK)との混合物で洗浄して、残留金属成分を除去する。共重合体3、残留モノマーおよびオリゴマーは、有機層に移動する。その後、水層を除去する(第一の洗浄)。
その後、再度、有機層に、水と有機溶媒(たとえば、MEK)との混合物を加えて、洗浄する(第二の洗浄)。
本実施形態においては、以上のような洗浄工程(処理S3)をたとえば5回以上、より好ましくは10回繰り返す。これにより、共重合体3中におけるアルカリ金属の濃度を、十分に低減することができる。本実施形態においては、共重合体3中のアルカリ金属濃度が10ppm以下、好ましくは5ppm以下となるように洗浄工程(処理S3)を繰り返し行うことが好ましい。
【0076】
(低分子量成分除去工程(処理S4))
次に、共重合体3と、残留モノマーおよびオリゴマー等の低分子量成分とが含まれた前記有機層を、濃縮した後、THF等の有機溶媒に再度溶解させる。そして、この溶液に、ヘキサンおよびメタノールを加えて、共重合体3を含むポリマーを凝固沈殿させる。ここで、低分子量成分としては、残留モノマー、オリゴマー、さらには、重合開始剤等が含まれる。次いで、ろ過を行い、得られた凝固物を、乾燥させる。これにより、低分子量成分が除去された共重合体3を主成分(主生成物)とするポリマーを得ることができる。
本実施形態においては、当該低分子量成分除去工程(処理S4)において、共重合体3中における分子量1000以下の低核体含有率が1%以下になるまで抽出操作を繰り返すことが好ましい。これにより、ポリマーP中における低分子量成分の量を、硬化時における膜のパターン変形を抑制するために十分な程度に低減することができる。
【0077】
なお、後述する加熱工程を実施する場合には、この低分子量成分除去工程(処理S4)では、たとえば共重合体3、残留モノマーおよびオリゴマーが含まれた前記有機層を、メタノール、水、ヘキサンの混合液で洗浄して、有機層を除去する。
【0078】
(加熱工程(処理S5))
本実施形態では、前述した開環工程(処理S2)にて、無水マレイン酸由来の繰り返し単位の開環率を調整することで、ポリマーPのアルカリ現像液(たとえば、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液))に対する溶解速度が調整されているが、さらに、厳密に溶解速度を調整する必要がある場合には本加熱工程(処理S5)を実施することが好ましい。この加熱工程(処理S5)では、共重合体3を加熱することでポリマーPのアルカリ現像液に対する溶解速度をさらに調整する。
【0079】
加熱工程(処理S5)は、次のように行われる。
低分子量成分除去工程において有機層を除去した液に、アルコールを加え、メタノールを蒸発させた後、120〜140℃で0.5〜10時間加熱する。ここで使用するアルコールは、前述したアルコール(R
5OH)として例示したものを使用してもよく、また、炭素−炭素二重結合を含まない炭素数18以下1以上の1価アルコール、たとえば、エタノール、メタノール、ブタノール等のいずれかを使用してもよい。
【0080】
この加熱工程(処理S5)では、共重合体3の一部のカルボキシル基、すなわち、無水マレイン酸由来の構造体の開環構造の末端に形成されたカルボキシル基が、エステル化することとなる。これに加え、この加熱工程(処理S5)では、共重合体3の無水マレイン酸由来の構造体の開環構造が脱水して、再度閉環することとなる。
従って、この工程を経て得られる共重合体4は、前述した式(6)で示す繰り返し単位と、式(5)で示される繰り返し単位と、式(11)で示される繰り返し単位と、以下の式(15)で示される繰り返し単位とを備えるものとなる。
【0082】
式(15)において、R
6およびR
7は、上記式(2c)におけるR
6およびR
7と同様であり、独立した炭素数1〜18の有機基である構造を含む。
この式(15)で示した構造は、R
7が前述のR
5であり、R
6の炭素数1〜18の有機基が本加熱工程(処理S5)で使用するアルコールに由来のものである場合を含む。
また、式(15)で示した構造には、上記式(9)に示す構造が含まれていてもよい。この場合には、式(15)のR
6およびR
7が、式(9)に示したR
5と同一の基なる。
さらに、式(15)で示した構造には、式(12)において二つのカルボキシル基がエステル化した構造が含まれていてもよい。この場合には、R
6およびR
7は、いずれも本加熱工程(処理S5)で使用するアルコールに由来のものとなる。
【0083】
これにより、共重合体4を主生成物とする生成物(ポリマー)を得ることができる。
この共重合体4においても、共重合体3と同様、ノルボルネン型モノマー由来の構造体と、無水マレイン酸モノマー由来の構造体とが交互に配置された構造であることが好ましい。そして、共重合体4は、前述した式(13)、(14)に加えて式(16)で示される構造体を有することが好ましい。
【0085】
式(16)において、n、R
1〜R
4は、上記式(1)と同じである。すなわち、nは0、1、2のいずれかである。R
1〜R
4は、水素または炭素数1〜30の有機基である。R
1〜R
4は、同一のものであっても異なっていてもよい。Xは、−O―R
6および−O−R
7のうちのいずれか一方を示し、Yは、いずれか他方を示す。R
6、R
7は、上記式(15)と同様である。
【0086】
以上の工程を経ることにより、上記式(1)に示す本実施形態に係るポリマーPが得られることとなる。
【0087】
ネガ型感光性樹脂組成物中のポリマーPの割合は、ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、好ましくは30質量%〜70質量%であり、より好ましくは40質量%〜60質量%である。
【0088】
<光ラジカル重合開始剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、紫外線等の活性光線の照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤を含む。
光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン型の開始剤、オキシムエステル型の開始剤、アシルフォスフィンオキサイド型の開始剤等が挙げられる。
例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム))、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用することができる。
【0089】
ネガ型感光性樹脂組成物において、光ラジカル重合開始剤は、ポリマーPを100質量部に対し、5〜20質量部であることが好ましく、さらには、8〜15質量部であることが好ましい。
【0090】
<第一の架橋剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、前記ラジカル重合開始剤により、前記ポリマーPと架橋する第一の架橋剤を含むことが好ましい。
第一の架橋剤は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル化合物であることが好ましい。
なかでも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の三官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の六官能(メタ)アクリレートがあげられ、これらのうちいずれか1以上を使用することが好ましい。
【0091】
このような多官能アクリル化合物を使用することで、ラジカル重合開始剤で発生するラジカルにより、多官能アクリル化合物と、ポリマーPとを架橋することができるとともに、多官能アクリル化合物同士も架橋することができる。これにより、ネガ型感光性樹脂組成物により、耐薬品性の高い膜を形成することができる。
ネガ型感光性樹脂組成物において、第一の架橋剤は、ポリマーPを100質量部に対し、50〜70質量部であることが好ましく、さらには、55〜65質量部であることが好ましい。
【0092】
<第二の架橋剤>
ネガ型感光性樹脂組成物は、第一の架橋剤とは異なる第二の架橋剤を含んでいてもよい。この第二の架橋剤は熱により、ポリマーと架橋するものである。
この第二の架橋剤は、反応性基として、環状エーテル基を有する化合物が好ましく、なかでも、グリシジル基あるいはオキセタニル基を有する化合物が好ましい。このような第二の架橋剤を使用することで、ネガ型感光性樹脂組成物で構成される膜の耐薬品性を向上させることができ。
グリシジル基を有する化合物としては、エポキシ化合物があげられ、以下のいずれかのエポキシ樹脂を使用できる。
たとえば、ビスフェノールAエポキシ樹脂(たとえば、LX−1、ダイソーケミカル株式会社)、2,2'-((((1-(4-(2-(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)プロパン-2-イル)フェニル)エタン-1,1-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(オキシ))ビス(メチレン))ビス(オキシラン)(たとえば、Techmore、VG3101L、株式会社プリンテック)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(たとえば、TMPTGE、CVCスペシャリティーケミカルズ社)、および1,1,3,3,5,5-ヘキサメチル-1,5-ビス(3-(オキシラン-2-イル・メトキシ)プロピル)トリ・シロキサン(たとえば、DMS−E09、ゲレスト社)を挙げることができる。これらの構造を以下に示す。その他、アラルダイトMT0163およびアラルダイトCY179(チバガイギー社)、EHPE−3150、およびEpolite GT300(ダイセル化学工業株式会社)等を挙げることができる。以上のうち、いずれか1種以上を使用できる。なお、ここでの例示に限定されない。
【0093】
【化19】
ここで、nの平均値は、0以上3以下の正数である。
【0094】
また、エポキシ化合物としては、ネガ型感光性樹脂組成物の透明性、誘電率の観点から、多官能脂環式エポキシ樹脂を使用してもよい。
多官能脂環式エポキシ樹脂としては、たとえば、以下の化学式で示されるものを使用できる。このエポキシ樹脂は、たとえば、Poly[(2−oxiranyl)−1,2−cyclohexanediol]2−ethyl−2−(hydroxymethyl)−1,3−propanediol ether (3:1)である。
【0095】
【化20】
式中、R
36は炭素数1〜10の炭化水素基、sは1〜30の整数、tは1〜6の整数である。
【0096】
また、オキセタニル基を有する化合物としては、たとえば、以下のいずれかを使用することができる。
例えば1,4−ビス{[(3−エチルー3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル、4,4'−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、4,4′−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ビフェニル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)ジフェノエート、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリ[[3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]プロピル]シラセスキオキサン]誘導体、オキセタニルシリケート、フェノールノボラック型オキセタン、1,3−ビス[(3−エチルオキセタンー3−イル)メトキシ]ベンゼン等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
【0097】
ネガ型感光性樹脂組成物において、第二の架橋剤は、ポリマーPを100質量部に対し、10〜30質量部であることが好ましく、さらには、15〜25質量部であることが好ましい。
【0098】
<他の添加剤>
また、ネガ型感光性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤、フィラー、界面活性剤、増感剤等の添加剤を添加してもよい。
【0099】
<溶媒>
以上のネガ型感光性樹脂組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、ガンマブチロラクトン(GBL)、N-メチルピロリドン(NMP)、メチルn-アミルケトン(MAK)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、又は、これらの混合物を採用することができる。なお、ここで例示したものに限定されない。
【0100】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製方法>
ネガ型感光性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法が挙げられる。ポリマーP、光ラジカル重合開始剤、必要に応じて第一架橋剤、第二架橋剤や前述したその他の添加剤、溶媒を配合して均一に混合することにより、ネガ型感光性樹脂組成物が得られる。
【0101】
<パターンの形成方法>
また、ネガ型感光性樹脂組成物を用いたパターンの形成方法は、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0102】
はじめに、ネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハー等の支持体に塗布する。ネガ型感光性樹脂組成物を支持体に塗布する方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の塗布方法を用いることができる。これらの中でもスピンコートが好ましく、その回転数は1000〜3000rpmが好ましい。
【0103】
次いで、ネガ型感光性樹脂組成物中の溶媒をほぼ全て除去するのに適切な温度および時間で支持体を加熱し、塗膜を形成する。加熱温度および時間は、例えば、60〜130℃で1〜5分間、好ましくは80〜120℃で1〜3分間である。また、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜の厚みは、1.0〜5.0μmが好ましい。
【0104】
その後、目的のパターンを形成するためのマスクを介して露光し、加熱する。
塗膜上へのパターン形成は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、活性光線等を照射して行う。
【0105】
その後、アルカリ性現像液により現像して、未露光部を溶解、除去し、さらに加熱することにより、目的のレジストパターンを得ることができる。ここで、現像工程と露光工程との間では加熱は実施しない。
現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法等を挙げることができる。現像条件としては通常、23℃で1〜10分程度である。
【0106】
現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の0.1〜10質量%程度の濃度のアルカリ水溶液を挙げることができる。現像後は、さらに、150〜300℃で30〜120分間ベークし、十分に硬化させて、目的のパターンを得ることができる。なお、硬化条件は上記に限定されるものではない。
【0107】
<特性>
以上説明したネガ型感光性樹脂組成物によれば、以下の特性を有する膜を実現することができる。
【0108】
<特性1:高残膜率>
スピンコート法によりネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハ上に成膜後、100℃のホットプレートで100秒ベークすることで形成した第1の層の膜厚を第1の膜厚(第1の膜厚は、2.0μm以上4.0μm以下)とする。次いで、露光装置でパターン寸法が10umのラインとスペースの幅が1:1となる最適露光量で露光し、第1の層に対して、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間の条件で現像した後の第2の層の膜厚を第2の膜厚とする。このとき、{(第2の膜厚)/(第1の膜厚)}×100≧70(%)を満たす。
【0109】
また、第2の層をオーブン中で230℃、60分間加熱処理を行った後の第3の層の膜厚を第3の膜厚とする。このとき、{(第3の膜厚)/(第1の膜厚)}×100≧65(%)を満たす。
【0110】
このような特性1を備えるネガ型感光性樹脂組成物によれば、現像処理やベーク処理による膜厚の変化が少ないので、これらの処理を経た後の膜厚を精度よくコントロールすることが可能となる。
【0111】
<特性2:低比誘電率>
当該ネガ型感光性樹脂組成物を用いて厚さ2μmの膜を形成した後、周波数10kHzで計測した比誘電率は、4.0以下となる。比誘電率の下限値は特に限定されないが、たとえば、2.5である。
【0112】
比誘電率は、以下のようにして計測できる。
ネガ型感光性樹脂組成物をアルミニウム基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークする。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体に300mJ/cm
2となるように紫外線を露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像する。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱し、さらに、250℃で30分間加熱する。これにより、厚さ2μmの膜とする。
その後、この膜上に金電極を形成し、室温(25℃)、10kHzにおける条件で計測する。
ところで、ネガ型感光性樹脂組成物は、フォトレジストのように、所定の間だけ存在し、不要になったら除去される一時膜の成膜に使用されるのみならず、成膜後、除去されることなく製品中に残存し続ける永久膜の成膜にも使用することができる。このような永久膜を電子装置に適用する場合には、誘電率が低いことが好ましい。そのため、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は電子装置に搭載される永久膜にも適したものとなる。
【0113】
<特性3:高透過率>
また、ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させて得られる厚さ2μmの硬化膜の層厚方向における波長400nmでの光の透過率は80%以上となる。なかでも、上記透過率は、85%以上であることが好ましい。透過率の上限値は特に限定されないが、たとえば、99%である。
【0114】
透過率は以下のようにして計測できる。
ネガ型感光性樹脂組成物をガラス基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークする。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体に300mJ/cm
2となるように紫外線を露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像する。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱し、さらに、250℃で30分間加熱する。これにより、厚さ2μmの膜とする。
この膜について光の波長400nmにおける透過率を、紫外−可視光分光光度計を用いて測定する。
【0115】
<特性4:高溶剤耐性>
ネガ型感光性樹脂組成物をガラス基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークする。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体に300mJ/cm
2となるように紫外線を露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像する。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱した。これにより、厚さ2μmの膜(第1の膜)を得た。
第1の膜の膜厚を第1の膜厚とし、第1の膜をN-メチルピロリドンに10分間室温で浸漬した後の膜厚を第2の膜厚とした場合、[{(第2の膜厚)−(第1の膜厚)}/(第1の膜厚)]×100≦5(%)を満たす。
【0116】
このようなネガ型感光性樹脂組成によれば、成膜後の製造工程において、N-メチルピロリドンに浸されても、膜厚がほとんど変化しない。このため、所定の設計厚さの膜を精度よく製造することが可能となる。
【0117】
<用途>
次に、ネガ型感光性樹脂組成の用途について説明する。
ネガ型感光性樹脂組成物は、フォトレジストのように所定の間だけ存在し、不要になったら除去される膜の成膜に使用されるのみならず、成膜後、除去されることなく製品中に残存し続ける永久膜(硬化膜)の成膜にも使用することができる。
【0118】
たとえば、
図1に示すように、トランジスタを覆う平坦化膜として使用できる。
また、
図2に示すように、半導体装置の再配線層を被覆する層間絶縁膜としても使用できる。
【0119】
さらに、ネガ型感光性樹脂組成物をマイクロレンズアレイとしてもよい。たとえば、ネガ型感光性樹脂組成物を、マイクロレンズアレイ用の型に充填し、その後、光硬化および必要に応じて熱硬化させて、マイクロレンズアレイを形成することができる。
このようにして製造されたマイクロレンズアレイは、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、電界放出型ディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ等に使用することができる。
以下、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された膜を有する電子装置の一例を説明する。
【0120】
<電子装置>
図1および
図2は、それぞれ本実施形態に係る電子装置100の一例を示す断面図である。いずれにおいても、電子装置100のうちの絶縁膜20を含む一部が示されている。
本実施形態に係る電子装置100は、たとえばネガ型感光性樹脂組成物により形成される永久膜である絶縁膜20を備えている。
【0121】
本実施形態に係る電子装置100の一例として、
図1では液晶表示装置が示されている。しかしながら、本実施形態に係る電子装置100は、液晶表示装置に限定されず、ネガ型ネガ型感光性樹脂組成物からなる永久膜を備える他の電子装置を含むものである。
【0122】
図1に示すように、液晶表示装置である電子装置100は、たとえば基板10と、基板10上に設けられたトランジスタ30と、トランジスタ30を覆うように基板10上に設けられた絶縁膜20と、絶縁膜20上に設けられた配線40と、を備えている。
【0123】
基板10は、たとえばガラス基板である。
トランジスタ30は、たとえば液晶表示装置のスイッチング素子を構成する薄膜トランジスタである。基板10上には、たとえば複数のトランジスタ30がアレイ状に配列されている。本実施形態に係るトランジスタ30は、たとえばゲート電極31と、ソース電極32と、ドレイン電極33と、ゲート絶縁膜34と、半導体層35と、により構成される。ゲート電極31は、たとえば基板10上に設けられている。ゲート絶縁膜34は、ゲート電極31を覆うように基板10上に設けられる。半導体層35は、ゲート絶縁膜34上に設けられている。また、半導体層35は、たとえばシリコン層である。ソース電極32は、一部が半導体層35と接触するよう基板10上に設けられる。ドレイン電極33は、ソース電極32と離間し、かつ一部が半導体層35と接触するよう基板10上に設けられる。
【0124】
絶縁膜20は、トランジスタ30等に起因する段差をなくし、基板10上に平坦な表面を形成するための平坦化膜として機能する。また、絶縁膜20は、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物により構成される。絶縁膜20には、ドレイン電極33に接続するよう絶縁膜20を貫通する開口22が設けられている。
絶縁膜20上および開口22内には、ドレイン電極33と接続する配線40が形成されている。配線40は、液晶とともに画素を構成する画素電極として機能する。
また、絶縁膜20上には、配線40を覆うように配向膜90が設けられている。
【0125】
基板10のうちトランジスタ30が設けられている一面の上方には、基板10と対向するよう対向基板12が配置される。対向基板12のうち基板10と対向する一面には、配線42が設けられている。配線42は、配線40と対向する位置に設けられる。また、対向基板12の上記一面上には、配線42を覆うように配向膜92が設けられている。
基板10と当該対向基板12との間には、液晶層14を構成する液晶が充填される。
【0126】
図1に示す電子装置100は、たとえば次のように形成される。
まず、基板10上にトランジスタ30を形成する。次いで、基板10のうちトランジスタ30が設けられた一面上に、印刷法あるいはスピンコート法によりネガ型感光性樹脂組成を塗布し、トランジスタ30を覆う絶縁膜20を形成する。これにより、基板10上に設けられたトランジスタ30を覆う平坦化膜が形成される。
次いで、絶縁膜20に紫外線等を照射し、その後現像して、絶縁膜20の一部に開口22を形成する。このとき、未露光部分が現像液に溶解し、露光部分が残ることとなる。この点は、後述する電子装置100の各例においても同様である。
次いで、絶縁膜20を加熱硬化させる。そして、絶縁膜20の開口22内に、ドレイン電極33に接続された配線40を形成する。その後、絶縁膜20上に対向基板12を配置し、対向基板12と絶縁膜20との間に液晶を充填し、液晶層14を形成する。
これにより、
図1に示す電子装置100が形成されることとなる。
【0127】
また、本実施形態に係る電子装置100の一例として、
図2ではネガ型感光性樹脂組成からなる永久膜により再配線層80が構成される半導体装置が示されている。
図2に示す電子装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層と、を備えている(図示せず)。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜である絶縁膜50と、絶縁膜50上に設けられた最上層配線72が設けられている。最上層配線72は、たとえばAlにより構成される。
【0128】
また、絶縁膜50上には、再配線層80が設けられている。再配線層80は、最上層配線72を覆うように絶縁膜50上に設けられた絶縁膜52と、絶縁膜52上に設けられた再配線70と、絶縁膜52上および再配線70上に設けられた絶縁膜54と、を有する。
絶縁膜52には、最上層配線72に接続する開口24が形成されている。再配線70は、絶縁膜52上および開口24内に形成され、最上層配線72に接続されている。絶縁膜54には、再配線70に接続する開口26が設けられている。
これらの絶縁膜52および絶縁膜54は、ネガ型感光性樹脂組成物からなる永久膜により構成される。絶縁膜52は、たとえば絶縁膜50上に塗布されたネガ型感光性樹脂組成物に対し露光・現像を行うことにより開口24を形成した後、これを加熱硬化することにより得られる。また、絶縁膜54は、たとえば絶縁膜52上に塗布されたネガ型感光性樹脂組成物に対し露光・現像を行うことにより開口26を形成した後、これを加熱硬化することにより得られる。
【0129】
開口26内には、たとえばバンプ74が形成される。電子装置100は、たとえばバンプ74を介して配線基板等に接続されることとなる。
【0130】
さらに、本実施形態に係る電子装置100は、ネガ型感光性樹脂組成物からなる永久膜によりマイクロレンズを構成する光デバイスであってもよい。光デバイスとしては、たとえば液晶表示装置、プラズマディスプレイ、電界放出型ディスプレイまたはエレクトロルミネセンスディスプレイが挙げられる。
【0131】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
以下の(1)および(2a)で示される繰り返し単位を含み、式(2a)のR5がラジカル重合性基を有し、炭素数2〜18の有機基であるポリマーと、
光ラジカル重合開始剤とを含むネガ型感光性樹脂組成物。
【化6】
(式(1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。nは0、1または2である)
<2>
<1>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
前記ポリマーは、以下の(2b)で示される繰り返し単位を含むネガ型感光性樹脂組成物。
【化7】
<3>
<1>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
前記R5は、末端に炭素―炭素二重結合を有するネガ型感光性樹脂組成物。
<4>
<1>乃至<3>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
前記R5は、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを含むネガ型感光性樹脂組成物。
<5>
<1>至<4>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
前記光ラジカル重合開始剤により、前記ポリマーと架橋する第一の架橋剤を含むネガ型感光性樹脂組成物。
<6>
<5>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
前記第一の架橋剤は、2以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリル化合物であるネガ型感光性樹脂組成物。
<7>
<1>乃至<6>>に記載のネガ型感光性樹脂組成物において、
環状エーテル基を有する第二の架橋剤を含むネガ型感光性樹脂組成物。
<8>
<1>乃至<7>>に記載のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させて得られる永久膜を有する電子装置。
<9>
<8>に記載の電子装置において、
前記ネガ型感光性樹脂組成物の前記永久膜は、液晶表示装置において、基板上に形成されたトランジスタ上に設けられ、前記トランジスタと液晶層との間に配置される平坦化膜である電子装置。
<10>
<8>に記載の電子装置において、
前記ネガ型感光性樹脂組成物の前記永久膜は、半導体装置の半導体基板上に設けられた多層配線層と、再配線層との間に設けられる層間絶縁膜用である電子装置。
<11>
以下の(1)、(2a)で示される繰り返し単位を含み、式(2a)のR5がラジカル重合性基を有し、炭素数2〜18の有機基であるポリマー。
【化8】
(式(1)中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素または炭素数1〜30の有機基である。nは0、1または2である)
<12>
<11>に記載のポリマーにおいて、
以下の(2b)で示される繰り返し単位を含むポリマー。
【化9】
<13>
<11>または<12>に記載のポリマーにおいて、
当該ポリマーは、ネガ型感光性樹脂組成物用のポリマーであるポリマー。
<14>
<11>乃至<13>に記載のポリマーにおいて、
前記R5は、末端に炭素―炭素二重結合を有するポリマー。
<15>
<11>乃至<14>に記載のポリマーにおいて、
前記R5は、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基のいずれかを含むポリマー。
【実施例】
【0132】
次に、本発明の実施例について説明する。
<ポリマーPの合成例1>
撹拌機,冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸(MA,122.4g、1.25mol)、2−ノルボルネン(NB,117.6g、1.25mol)およびジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(11.5g、50.0mmol)を計量し、メチルエチルケトン(MEK,150.8g)およびトルエン(77.7g)に溶解させた。この溶解液に対して、10分間窒素を通気して酸素を除去し、その後、撹拌しつつ60℃、16時間、加熱した。その後、この溶解液に対して、MEK(320g)を加えた後、これを、水酸化ナトリウム(12.5g、0.31mol),3−メチル−3−ブテン−1−オール(463.1g、6.25mol),トルエン(480g)の懸濁液に加え、45℃で3時間混合した。そして、この混合液を40℃まで冷却し、ギ酸(88重量%水溶液,49.0g、0.94mol)で処理してプロトン付加し、その後、MEKおよび水を加え、水層を分離することで、無機残留物を除去した。次いで、メタノール,ヘキサンを加え有機層を分離することで未反応モノマーを除去した。さらにPGMEAを添加し、系内のメタノール及び3−メチル−3−ブテン−1−オールを残留量1%未満となるまで減圧留去した。これにより、20重量%のポリマー溶液1107.7gを得た(GPC Mw=11890、Mw/Mn=2.01)。得られたポリマーは、式(1)で示される繰り返し単位、式(2a)により示される繰り返し単位、および式(2b)により示される繰り返し単位を含んでいる。
【0133】
<ポリマーPの合成例2>
3−メチル−3−ブテン−1−オールを2−ヒドロキシエチルメタクリレート(812.5g、6.25mol)に変更した以外は、実施例1同様の方法にて20重量%のポリマー溶液1050.0gを得た(GPC Mw=17800、Mw/Mn=2.43)。得られたポリマーは、式(1)で示される繰り返し単位、式(2a)により示される繰り返し単位、および式(2b)により示される繰り返し単位を含んでいる。
【0134】
(酸価)
各合成例について、得られたポリマーPの酸価を以下のように算出した。
合成したポリマー(約20重量%ポリマー溶液)を約2.0g採取し、メタノール50mlを加えて混合した。この混合液に対し、N/10KOH水溶液を用いてpH=7.0となるよう滴定を行った。この滴定に要したKOH量を使って、下記の式を用いてポリマーの酸価(ポリマー1gに対するKOHのmg数)を算出した。
酸価=滴定量(ml)×KOHのファクターf×0.1×56.1/ポリマー量(固形)
合成例1により得られたポリマーPの酸価は、32mgKOH/gであった。合成例2により得られたポリマーPの酸化は、30mgKOH/gであった。
【0135】
(アルカリ溶解速度)
各合成例について、得られたポリマーPのアルカリ溶解速度を以下のように測定した。
得られた20重量%に調整したポリマー溶液を、ウェハ上にスピン方式で塗布し、これを110℃で100秒間ソフトベークして、厚み約3μmのポリマー膜を形成した。このウェハを、2.38%、23℃のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に含浸させて、現像を行った。視覚的にポリマー膜が消去するまでの時間を測定することにより、アルカリ溶解速度(Å/秒)を測定した。
合成例1により得られたポリマーPのアルカリ溶解速度は、2280Å/秒であった。合成例2により得られたポリマーPのアルカリ溶解速度は、15230Å/秒であった。
【0136】
[実施例1]
合成例1で合成したポリマーPの20%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液、光ラジカル重合開始剤、第一の架橋剤、第二の架橋剤、基板との密着性を改善する密着性改善剤、界面活性剤を適量のPGMEAに溶解させて攪拌した後、0.2μmのフィルターで濾過して、ネガ型樹脂組成物を調製した。
光ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリマーP100質量部に対して10質量部であり、下記の式に示される化合物(BASF社製Irgacure OXE02)を使用した。
【0137】
【化21】
【0138】
第一の架橋剤の添加量は、ポリマーP100質量部に対して60質量部であり、下記の式に示されるアクリル化合物(ダイセルサイテック社製DPHA)を使用した。
【0139】
【化22】
【0140】
第二の架橋剤の添加量は、ポリマーP100質量部に対して20質量部であり、下記の式に示されるアクリル化合物(プリンテック社製VG3101)を使用した。
【0141】
【化23】
【0142】
密着性改善剤の添加量は、ポリマーP100質量部に対して3質量部であり、信越シリコーン社製のKBM−303を使用した。界面活性剤は、回転塗布の際に膜上にできる放射線状のストリエーションを防止するためのものであり、その添加量はポリマーP100質量部に対して0.1質量部であり、F−557(DIC社製)を使用した。
【0143】
[実施例2]
ポリマーPとして合成例2により合成したものを用いた点を除き、実施例1と同様にしてネガ型樹脂組成物を調整した。
【0144】
<現像後、及び、ベーク後残膜率の評価>
各実施例について、得られた樹脂組成物を用いて以下のように現像後、及び、ベーク後残膜率の評価を行った。
得られた樹脂組成物をHMDS(Hexamethyldisilazane)処理した4インチシリコンウエハー上に回転塗布し、110℃、100秒間ホットプレートにてベーク後、約3.0μm厚の薄膜Aを得た。この薄膜Aにキヤノン社製g+h+i線マスクアライナー(PLA−501F)にて10μmのラインとスペースの幅が1:1のマスクを使用し、パターン寸法が10μmのラインとスペースの幅が1:1となる最適露光量(50mJ/cm
2)でg+h+i線を露光し、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像することで、ラインとスペース幅が1:1のライン&スペースパターンつき薄膜Bを得た。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱することにより加熱処理を行い、パターン付き薄膜Cを得た。さらに、その後、オーブン中で250℃、30分間加熱することにより追加加熱処理を行い、パターン付き薄膜Dを得た。
上記の手法にて得られた薄膜A、薄膜B、薄膜Cおよび薄膜Dの膜厚から、以下の式より残膜率を算出した。
現像後残膜率(%)={(薄膜Bの膜厚(μm))/(薄膜Aの膜厚(μm))}×100
加熱処理後残膜率(%)={(薄膜Cの膜厚(μm)/(薄膜Aの膜厚(μm)))×100
追加加熱処理後残膜率(%)={(薄膜Dの膜厚(μm)/(薄膜Aの膜厚(μm)))×100
結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
【0146】
<現像性の評価>
各実施例について、「現像後、及び、ベーク後残膜率の評価」で説明した薄膜Bの、10μmのパターンをSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察した。
実施例1、2共に、ホール内部に残渣は見られなかった。
【0147】
<誘電率の評価>
各実施例について、以下のように誘電率を評価した。
ネガ型感光性樹脂組成物をアルミニウム基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークした。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体にg+h+i線を300mJ/cm
2で露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像した。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱し、さらに、250℃で30分間加熱した。これにより、パターンのない厚さ2μmの膜とした。
その後、この膜上に金電極を形成し、室温(25℃)、10kHzにおける条件で計測した。室温(25℃)、10kHzにおける条件で、Hewlett Packardd社製LCRメータ(4282A)を用いて得られた静電容量から誘電率を算出した。
実施例1の結果は3.4であった。実施例2の結果は3.5であった。
【0148】
<透過率の評価>
各実施例について、以下のように透過率を評価した。
ネガ型感光性樹脂組成物をガラス基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークした。ガラス基板としては、縦100mm、横100mmサイズのコーニング社製1737ガラス基板を用いた。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体にg+h+i線を300mJ/cm
2で露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像した。その後、オーブン中で220℃、60分間加熱し、さらに、250℃で30分間追加加熱した。これにより、パターンのない厚さ2μmの膜の膜を得た。
現像後の薄膜、250℃で30分間追加加熱した後の薄膜について、光の波長400nmおよび500nmにおける透過率を、紫外−可視光分光光度計を用いて測定した。
結果を表2に示す。
【0149】
【表2】
【0150】
<耐溶剤性の評価>
各実施例について、以下のように耐溶剤性を評価した。
ネガ型感光性樹脂組成物をガラス基板上に回転塗布(回転数500〜3000rpm)し、110℃、110秒間ホットプレートにてベークした。ガラス基板としては、縦100mm、横100mmサイズのコーニング社製1737ガラス基板を用いた。その後、ネガ型感光性樹脂組成物全体にg+h+i線を300mJ/cm
2で露光した後、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で23℃、90秒間現像した。その後、オーブン中で230℃、60分間加熱した。これにより、パターンのない厚さ2μmの膜とした。
この薄膜について、N−メチルピロリドン(関東化学)中に40℃、30分間浸漬した後、純水リンスを行った。以下の演算式により膜厚変化率を算出した。
膜厚変化率(%)=[{(溶剤浸漬後の膜厚)−(溶剤浸漬前の膜厚)}/(溶剤浸漬前の膜厚)]×100
また、N−メチルピロリドン(関東化学)中に室温(25℃)、10分間浸漬した後、純水リンスを行った膜をオーブンで230℃60分加熱し、膜厚を計測した。
【0151】
結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
なお、リカバー率は、(溶剤浸漬後加熱後の膜厚/溶剤浸漬前の膜厚)×100で算出される値であり、リカバー率が高いことは溶剤により膜が溶けていないことを示している。
【0153】
以上の結果から、実施例1および2によれば、露光後、現像前のポストエクスポージャーベークを行なわなくても、残膜率が高く、解像性が高い膜を得ることができた。これにより、所望のパターンを確実に形成することができることがわかった。
さらに、実施例1および2では、誘電率が低く、透明性が高く、耐溶剤性も高いものとなった。
【0154】
この出願は、2013年5月29日に出願された日本出願特願2013−113407を基礎とする優先権を主張し、その開示の総てをここに取り込む。