(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のプリ発光方法では、反射率の低い被写体や反射率の高い被写体に対してはオーバー露出やアンダー露出になるのを軽減できるが、優先被写体でない被写体の輝度の影響を受けて適正露出にならないことがあるという問題は解消できていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プリ発光調光方式のフラッシュ撮影において、反射率が低い被写体や反射率が高い被写体でも適正な本発光量により適正な露出で撮影ができる撮影装置を得ることを目的とする。
【0008】
本発明は、AF動作の結果、合焦した被写体が含まれる領域および該領域の前後近傍の領域について、それらの領域のプリ発光測光結果を、合焦した被写体が標準反射率であった場合の理論的なプリ発光測光結果に近づくように補正すればよいことに着目してなされたものである。すなわち、本発明は、閃光装置と、複数の測距領域のいずれかの測距領域の被写体に対して合焦させる焦点調節手段と、前記複数の測距領域内の被写体について合焦状態を判定する合焦状態判定手段と、前記焦点調節手段が合焦させた測距領域内の被写体の距離を算出する被写体距離算出手段と、本撮影前に、複数の測光領域について、前記閃光装置をプリ発光させたときのプリ発光時測光値とプリ発光させないときの定常光測光値から、プリ発光のみによるプリ発光測光値を検出するプリ発光測光手段と、前記被写体距離算出手段が算出した距離の被写体が標準被写体であったときに前記閃光装置をプリ発光させて得られる目標測光値を算出する目標測光値算出手段と、前記合焦状態判定手段が合焦状態と判定した測距領域に対応する測光領域における前記プリ発光測光手段のプリ発光測光値を、前記目標測光値算出手段の前記目標測光値に基づいて補正して補正後測光値を得る測光値補正手段と、前記測光値補正手段によって補正された補正後測光値に
基づき、前記閃光装置による本発光量を設定する本発光量設定手段と、を備え
、前記合焦状態判定手段が合焦と判定した測距領域に対応する測光領域のプリ発光測光値をY、前記目標測光値をYref、前記測光値補正手段による補正後測光値をY′としたとき、前記測光値補正手段は、補正後測光値Y′を下記式(1)、(2)、(3)によって算出することを特徴とする。
Y′=Yref ・・・(1)
(但し、Yref−A≦Y≦Yref+B)
Y′=Y−B ・・・(2)
(但し、Yref+B<Y)
Y′=Y+A ・・・(3)
(但し、Y<Yref−A)
但し、プリ発光測光値Y、目標測光値Yref、補正後測光値Y′はアペックス表示の輝度値、定数A、Bは正のアペックス表示の露出値EVである。
【0010】
前記合焦状態判定手段によって判定された合焦状態に応じて測光領域を合焦領域、準合焦領域及び非合焦領域のいずれかに分別する測光領域分別手段をさらに備え、上記測光値補正手段は、上記合焦領域、準合焦領域及び非合焦領域の各測光値に、合焦領域、準合焦領域、非合焦領域の順に軽くなる重み付けをして、全測光領域の補正後測光値を算出することが好ましい。
【0011】
本発明の撮影装置は、光軸方向に移動して焦点調節するフォーカス用レンズ群を備えた撮影光学系と、フォーカス用レンズ群の光軸方向位置を検出するレンズ位置検出手段とをさらに備えることが可能であり、この場合前記焦点調節手段は、前記撮影光学系を通った被写体光束を異なる測距領域毎に瞳分割して一対の被写体像の位相差を検出し、該検出した位相差に基づいて前記フォーカス用レンズ群の合焦位置を検出して該検出した合焦位置に前記フォーカス用レンズ群を移動し、前記被写体距離算出手段は、前記レンズ位置検出手段が検出したレンズ位置から前記焦点調節手段が合焦させた測距領域内の被写体の距離を算出し、前記合焦状態判定手段は、前記測距領域毎に前記一対の被写体像の位相差からデフォーカス量を算出してデフォーカス量に基づいて合焦状態を判定する。
【0012】
前記撮影光学系を通った被写体光束を受光して複数の測光領域毎に測光する輝度センサーを備え、前記測距領域は前記測光領域と重複していることが実際的である。
【0013】
本発明の撮影装置にあっては、光軸方向に移動して焦点調節するフォーカス用レンズ群を備えた撮影光学系と、本撮影時に、前記撮影光学系により形成された光学像を電気的な画像信号に変換する撮像素子と、該画像信号を記録するメモリ手段と、前記撮像素子とは別個に、前記撮影光学系により形成された光学像の輝度を検出する輝度センサーとを備えることが可能であり、この場合前記プリ発光測光手段は、前記輝度センサーが撮像した輝度信号に基づき前記プリ発光時測光値及び定常光測光値を検出する。
【0014】
前記焦点調節手段は、前記フォーカス用レンズ群を光軸方向に移動しながら前記撮像素子が撮像した複数の測距領域内の画像信号により合焦状態を検出し、合焦状態であることを検出したとき、フォーカス用レンズ群を前記合焦状態となる光軸方向位置に移動することが実際的である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プリ発光調光方式のフラッシュ撮影において、AF動作の結果として合焦した領域について、その領域のプリ発光測光結果を標準反射率の被写体が合焦位置にあった場合の理論的な測光値に近づくように補正し、その領域の測光値に重きを置いて測光値を算出するので、反射率が低い被写体や反射率が高い被写体でも適正な本発光量を決定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明をレンズ交換式のデジタル一眼レフカメラに適用した実施形態であって、その主要な光学要素、機械要素及び電子要素をブロック等で示した図である。このデジタル一眼レフカメラ10は、カメラボディ11とこのカメラボディ11に着脱自在に装着された撮影レンズ101を備えている。
【0018】
このカメラボディ11は、撮影レンズ101の撮影光学系を構成するズーム用レンズ群L1及びフォーカス用レンズ群L2を通って入射した被写体光束を、ファインダー光学系15に向けて反射する観察位置と、撮像素子31に入射させる撮影位置とに移動するメインミラー12、及びメインミラー12を観察位置と撮影位置とに駆動するミラーモーター13を有するクイックリターン式のミラー装置14を備えている。観察位置にあるメインミラー12によって反射された被写体光束は、ファインダー光学系15のフォーカシングスクリーン15aを透過してペンタプリズム16に入射し、ペンタプリズム16のダハ反射面16a、前方反射面16bで反射し、アイピース17から射出する。また、ペンタプリズム16の前方反射面16bで反射した被写体光束は、輝度センサー(測光センサー)33に入射し、分割測光に使用される。
【0019】
撮影レンズ101のレンズ群L1とL2を通ってカメラボディ11に入射した被写体光のうち、観察位置にあるメインミラー12のハーフミラー部を透過し、サブミラー12aで反射した被写体光は、瞳分割式の測距センサー(位相差AFユニット)18に入射する。測距センサー18は、複数の測距領域毎に一対のラインセンサを備えている。測距センサー18に入射した被写体光は、複数の測距領域毎に瞳分割され、瞳分割された一対の被写体光が対応する一対のラインセンサのそれぞれに入射し、一対の画像信号に変換されて、位相差を検出する位相差AFに使用され、これらの一対の画像信号の位相差から、対応する測距領域内の被写体に対するデフォーカス量、合焦状態が検出される。
【0020】
コントローラ50の焦点調節手段50aは、AF駆動回路24及びAFモーター21を介して、検出したデフォーカス量が0となる合焦位置にフォーカス用レンズ群L2を移動させる。AF動作は、以上のデフォーカス量算出動作とフォーカス用レンズ群L2を合焦位置に移動させるレンズ駆動動作を含む。
【0021】
メインミラー12が撮影位置に駆動され、シャッター装置20が動作してシャッター幕19がシャッター開口を開放すると、シャッター開口を通過した被写体光が撮像素子31に入射する。シャッター装置20は、シャッター開口を開閉するシャッター幕19として上下走行する先幕と後幕を有するフォーカルプレーンシャッターである。このシャッター装置20は、詳細は図示しないが、シャッター幕19の先幕および後幕を走行させるシャッター駆動ばね、シャッター開口を閉鎖した初期位置の先幕と後幕が、チャージされたシャッター駆動ばねにより走行するのを機械的に係止する係止機構、先幕と後幕を係止機構に代わって電磁的に係止するマグネット、及びシャッター駆動ばねをチャージするとともに、先幕と後幕を初期位置まで移動させるチャージモーターを有している。
【0022】
カメラボディ11の背面には、撮影情報や、撮影した画像を表示するディスプレイ23が設けられている。図示しないが、ペンタプリズム16の上部には内蔵フラッシュ装置(閃光装置)40の発光部が収納されている。この発光部は、フラッシュ撮影するときにペンタプリズム16の上方にポップアップする構成である。カメラボディ11には外部フラッシュ装置(閃光装置)41が、カメラボディ11の上面に設けられたアクセサリーシューを介して、またはカメラボディ11の底面にブラケットを介して着脱自在に装着される。
【0023】
撮影レンズ101のズーム用レンズ群L1とフォーカス用レンズ群L2は、ズーム機能と焦点調節機能を担うレンズ群である。ズーム用レンズ群L1は、図示しないズーム操作機構により光軸方向前後に駆動されてズーミング(変倍)する。フォーカス用レンズ群L2は、カメラボディ11のAFモーター21により、リンク機構21aを介して、撮影レンズ101の光軸Oに沿って光軸方向前後に駆動され、焦点調節を行う。撮影レンズ101は、光量調整用の開口絞りと可変の絞り装置103を備えている。絞り装置103は、カメラボディ11の絞りモーター22により、絞りリンク機構22aを介して開閉方向に駆動される。
【0024】
図2は、カメラボディ11に内蔵された電気的な主要回路構成の実施形態をブロックで示す図である。コントローラ50は、ROM(EEPROM)51に記録されている制御プログラムに基づいて、カメラ全体の機械的、電気的な動作を統括的に制御して、自動焦点調節動作、フラッシュ発光動作、撮影動作などを制御する。
【0025】
撮像素子31は、CCD、CMOSなどのイメージセンサである。撮像素子駆動・信号処理回路32は、撮像素子31を撮像駆動して撮像した画像信号を取り込み、相関二重サンプリングし、ゲインコントロールし、ホワイトバランス調整し、A/D変換等したデジタル化した画像信号をコントローラ50に出力する。コントローラ50は、入力した画像信号を所定の画像フォーマットに変換して一旦SDRAM52に書き込んでからフラッシュメモリ53に書き込み、またディスプレイ23に表示する。
【0026】
輝度センサー33は、ペンタプリズム16から射出された被写体光を受光する位置に配置された(
図1)、複数の測光領域の輝度を検出する測光に特化したRGBカラーイメージセンサーである。輝度センサー33には、撮像素子31に投影される被写体像と同様の被写体像が投影される。輝度センサー33は、撮像素子31と同様の基本構成であり、撮影範囲は撮像素子31の撮影範囲と同等乃至狭く、総画素数は撮像素子31より少ない。
【0027】
輝度センサー駆動・信号処理回路34は、輝度センサー33を撮像駆動して画像信号を取り込み、相関二重サンプリングし、ゲインコントロールし、A/D変換するなど所定の信号処理を施してデジタル化した画像信号を出力する。コントローラ50は、撮影待機状態の間、定期的に輝度センサー駆動・信号処理回路34を介して輝度センサー33が撮像した画像信号を取り込み、SDRAM52に書き込み、各測光領域の画像信号を使用して被写体輝度を算出している。ここでコントローラ50は、被写体輝度算出手段として機能している。
図3は、第1の撮影シーンを撮影した撮影画面における測光領域の一実施形態を示している。図示実施形態の輝度センサー33は、撮影画面を15×15の測光領域(ブロック)に分割して、測光領域毎に被写体輝度を算出する。輝度センサー駆動・信号処理回路34は、輝度センサー33が適正露光するように、電子シャッタ動作により露出時間を調整し、ゲインコントロールする。測光領域は、この分割数、縦横の分割比率に限定されない。
【0028】
コントローラ50には、AFモーター21を駆動するAF駆動回路24、絞りモーター22を駆動制御する絞り駆動回路25、シャッター装置20を駆動制御するシャッター駆動回路26、ミラーモーター13を駆動制御するミラー駆動回路27が接続されている。コントローラ50は、これらAF駆動回路24、絞り駆動回路25、シャッター駆動回路26、ミラー駆動回路27を介してAFモーター21、絞りモーター22、シャッター装置20、ミラーモーター13を駆動制御する。
【0029】
コントローラ50には、スイッチ手段として、AF・測光スイッチ35、レリーズスイッチ36、モード選択スイッチ37、メインスイッチ38が接続されている。AF・測光スイッチ35は、自動焦点調節及び測光の開始を指示するスイッチ、レリーズスイッチ36は、露出、撮像及び撮像した画像信号をフラッシュメモリ53に記録する(書き込む)撮影の開始を指示するスイッチ、モード選択スイッチ37は、フラッシュを発光させて撮影するフラッシュ撮影モード、フラッシュの発光を禁止して撮影するフラッシュ禁止撮影モードなどの撮影モードの変更、選択を操作する操作スイッチである。コントローラ50は、メインスイッチ38のオン/オフに応じて、電源をオン/オフ制御する。
【0030】
コントローラ50の焦点調節手段50aは、測距センサー18から複数の測距領域毎に一対の画像信号を入力して、一対の画像信号の位相差からデフォーカス量を演算し、算出したデフォーカス量に基づいてAF駆動回路24を介してAFモーター21を駆動し、フォーカス用レンズ群L2を、デフォーカス量が0になる合焦位置に移動する。コントローラ50の合焦状態判定手段50bは、その後、測距センサー18の測距領域毎に合焦状態を判定する。
図3(B)の例では、撮影画面61を15×15の測距領域に分割していて、測距領域と測光領域が一致しているものとする。
【0031】
撮影レンズ101は、フォーカス用レンズ群L2の光軸方向位置により決まる合焦位置までの被写体距離または撮影距離(以下、「被写体距離」という)及びズーム用レンズ群L1の光軸方向位置により決まる焦点距離を検出する距離検出手段105を備えている。距離検出手段105は、検出した被写体距離と焦点距離の距離情報を、カメラボディ11のコントローラ50に通信する。コントローラ50の被写体距離算出手段50cは、距離検出手段105から入力した距離情報に基づいて、被写体距離を算出する。撮影レンズ101は、図示しないが、絞り装置103の開放絞り値、最小絞り値情報など、撮影レンズ101固有データをメモリしたメモリ手段と、これらの固有データと距離情報をコントローラ50に通信する通信手段と通信機能を有している。
【0032】
カメラボディ11は、内蔵フラッシュ装置40を搭載(内蔵)し、アクセサリーシュー等を介して外部フラッシュ装置41が着脱可能である。コントローラ50は、内蔵フラッシュ装置40とフラッシュ通信して、内蔵フラッシュ装置40に発光用チャージの開始、プリ(予備)発光量、本発光量など発光量のデータ、プリ発光、本発光を開始させる発光信号、発光を停止させる発光停止(クエンチ)信号などを送信し、内蔵フラッシュ装置40からチャージ完了信号、発光終了信号などを受信して、内蔵フラッシュ装置40の発光を制御する。内蔵フラッシュ装置40のガイドナンバー、照射角情報などのフラッシュデータは予めフラッシュROM51に書き込まれている。またコントローラ50は、装着された外部フラッシュ装置41とフラッシュ通信して、外部フラッシュ装置41に発光用チャージの開始、プリ発光量、本発光量など発光量のデータ、プリ発光、本発光を開始させる発光信号、発光を停止させる発光停止(クエンチ)信号などを送信し、外部フラッシュ装置41からガイドナンバー、照射角情報などのフラッシュデータや、チャージ完了信号、発光終了信号などを受信して、外部フラッシュ装置41の発光を制御する。
【0033】
コントローラ50は、フラッシュ装置40と外部フラッシュ装置41を本発光動作させる前にプリ発光動作させ、次いで本発光動作させて本撮影するフラッシュ撮影モードを備えている。なお、本撮影は、撮像素子31が撮像動作し、撮像した画像信号をフラッシュメモリ53に記録する撮影動作をいう。コントローラ50は、フラッシュ撮影モードで撮影する際、本撮影前に輝度センサー33から、内蔵フラッシュ装置40または外部フラッシュ装置41をプリ発光(予備発光)させたプリ発光撮影動作して得た画像信号と、プリ発光時と同じ露出条件でプリ発光させない定常光撮影動作により得た画像信号を入力する。そうして、コントローラ50のプリ発光測光手段50dは、プリ発光時測光値とプリ発光無しの定常光測光値を検出する。
【0034】
本発明の一眼レフカメラ10は、閃光装置として内蔵フラッシュ装置40または外部フラッシュ装置41を備えて
いる。コントローラ50は、複数の測距領域のいずれかの測距領域の被写体に対して合焦させる焦点調節手段50aと、前記複数の測距領域内の被写体について合焦状態を判定する合焦状態判定手段50bと、前記焦点調節手段が合焦させた測距領域内の被写体の距離を算出する被写体距離算出手段50cと、本撮影前に、複数の測光領域について、内蔵フラッシュ装置40または外部フラッシュ装置41をプリ発光させたときのプリ発光時測光値とプリ発光させないときの定常光測光値から、プリ発光のみによるプリ発光測光値を検出するプリ発光測光手段50dと、被写体距離算出手段50cが算出した距離の被写体が標準被写体であったときに内蔵フラッシュ装置40または外部フラッシュ装置41をプリ発光させて得られる目標測光値を算出する目標測光値算出手段50eと、合焦状態判定手段50bが合焦状態と判定した測距領域に対応する測光領域における前記プリ発光測光手段のプリ発光測光値を、目標測光値算出手段50eの前記目標測光値に基づいて補正して補正後測光値を得
る測光値補正手段50fと
、測光値補正手段50fによって補正された補正後測光値に基づき、内蔵フラッシュ装置40または外部フラッシュ装置41による本発光量を決定する本発光量設定手段50gとしての機能を内蔵している。
【0035】
コントローラ50は、プリ発光測光前に、焦点調節手段50aによりフォーカス用レンズ群L2を合焦位置まで移動し、合焦状態判定手段50bにより各測距領域について合焦、準合焦、非合焦を判別し、被写体距離算出手段50cにより合焦している測距領域内の被写体までの距離を算出している。
【0036】
プリ発光測光手段50dは、プリ発光時測光値と定常光測光値の差分から、プリ発光のみの光量により得られたプリ発光測光値を算出する。プリ発光は、合焦している焦点検出領域の被写体を優先被写体(主要被写体)として、合焦位置の距離で適正露光となる発光量・露出値で実施する。ここでの適正露光は、標準反射率の被写体が適正な明るさとなる発光量・露出値である。標準反射率の被写体は、18%反射のグレーチャートを使用するのが一般的である。プリ発光の発光量は、所定のガイドナンバーとなるように、本発光における最大発光量の1%乃至20%の範囲で個々の機種のガイドナンバーに応じて制御される。
【0037】
コントローラ50の目標測光値算出手段50eは、合焦であると判定した測距領域に対応する測光領域のプリ発光測光値Yを、その測距領域の被写体距離情報に基づき、その被写体距離に標準反射率の被写体があった場合に理論的に得られる測光値を目標測光値Yrefとして算出する。測光値補正手段50fは、プリ発光測光値Yを目標測光値Yrefに近づくように補正する。コントローラ50の重み付け手段50iは、プリ発光測光値を補正した状態で、合焦状態であると判定した測距領域に対応する測光領域の測光値に重み付けして、全体としての測光結果(平均被写体輝度)を算出し、算出した測光結果に基づいて適正な本発光量と露出値を算出する。
【0038】
合焦した被写体(合焦距離に位置する被写体)が適正露光となるようにプリ発光しているため、プリ発光したときのプリ発光測光値は、合焦距離に位置する被写体が標準反射率の場合は標準の目標測光値Yrefとなる。実際には被写体の反射率は様々なので、プリ発光測光値は目標測光値Yrefより大きかったり小さかったりする。本実施形態では、補正前のプリ発光測光値をY、補正した後の補正後測光値をY′として、補正後測光値Y′を以下の式(1)、(2)、(3)によって算出し、合焦した測距領域におけるプリ発光測光値Yを補正後目標測光値Yrefに近づくように補正する。
Y′=Yref ・・・(1)
(但し、Yref−A≦Y≦Yref+B)
Y′=Y−B ・・・(2)
(但し、Yref+B<Y)
Y′=Y+A ・・・(3)
(但し、Y<Yref−A)
但し、プリ発光測光値Y、目標測光値Yref、補正後測光値Y′はアペックス表示の輝度値、定数A、Bは正のアペックス表示の露出値EVである。
【0039】
図4には、A=B=2とした実施形態をグラフで示している。同グラフにおいて、横軸はプリ発光測光値Y、縦軸は補正後測光値Y′である。この実施形態では、プリ発光測光値Yの大きさに応じて以下の補正がなされる。
プリ発光測光値Yが目標測光値Yref±2EV以内のときは、目標測光値Yrefを補正後測光値Y′とする(式(1))。この補正により、反射率が標準反射率に近い被写体は標準反射率の被写体の目標測光値Yrefに補正されるので、本発光において発光量過多・過小が防止され、適正とみなせる発光量により適正露出される。
プリ発光測光値Yが目標測光値Yref+2EVより大きいときは、プリ発光測光値Yから2EVを減算した値を補正後測光値Y′とする(式(2))。この補正により、反射率が標準反射率より高い被写体はプリ発光測光値Yがアンダー補正されるので、本発光において発光量不足となるのが防止され、アンダー露出が防止される。
プリ発光測光値Yが目標測光値Yref−2EVより小さいときは、プリ発光測光値Yに2EVを加算した値を補正後測光値Y′とする(式(3))。この補正により、反射率が標準反射率より低い被写体はプリ発光測光値Yがオーバー補正されるので、本発光において発光量過多になるのが防止され、オーバー露出が防止される。
定数AとBは2でなくても、等しくなくてもよく、0より大きく、4以下の実数が実際的な値である。
【0040】
本発明の実施形態では、さらに、撮影画面全体での測光結果を算出する際に、合焦測距領域に重きを置いて測光値の加重平均を算出し、撮影画面全体の測光結果とする。コントローラ50の測光領域(画像領域)分別手段50hは、AF合焦情報(検出したデフォーカス量の絶対値)から、測光領域を合焦領域、準合焦領域、非合焦領域の3領域に分別する。合焦領域とは、AF動作により得られたデフォーカス量の絶対値が所定の閾値1以内の測距領域のことである。合焦領域は、ユーザーに合焦位置がわかるようにファインダー内またはディスプレイ23に表示しているライブビュー表示画面中に、合焦領域の輪郭強調等の表示がなされる。準合焦領域とは、デフォーカス量の絶対値が所定の閾値1より大きく、所定の閾値2以内の測距領域のことであり(閾値1<閾値2)、準合焦領域はユーザーには通知されない。非合焦領域とは、デフォーカス量の絶対値が閾値2よりも大きいか、またはコントラスト不足等の要因でデフォーカス量が得られなかった測距領域のことを指す。この実施形態では、測光領域と画像領域を同一領域としているが、別個の領域とすることができる。測光領域と画像領域の大きさは異ならせてもよい。
【0041】
図3の(B)の例では、○印を付した測距領域は合焦している合焦領域を表している。また、△印を付した測距領域は合焦していないが、合焦状態に近い準合焦領域を表している。○印と△印の合焦領域と準合焦領域は優先被写体ないし優先被写体を含むものとして扱う。コントローラ50
の測光値補正手段50fは、少なくとも合焦領域におけるプリ発光測光値について、標準反射率の被写体が同距離にあったときの理論的なプリ発光測光値に近づくように補正する。
【0042】
本実施形態では、合焦測距領域に対応する測光領域(合焦領域)と、準合焦測距領域に対応する測光領域(準合焦領域)と非合焦測距領域に対応する測光領域(非合焦領域)に、合焦領域、準合焦領域、非合焦領域の順に軽くなる重み付けをする。重み付けは、例えば合焦領域をα、準合焦領域をβ、非合焦領域を1とする。つまり、重み付の比、合焦領域:準合焦領域:非合焦領域を、α:β:1とする。ただし、α、βは正の実数であって、α≧β≧1、α≠1である。重みαとβは、例えば2乃至5の範囲で任意に設定できるが、α=4、β=2、合焦領域:準合焦領域:非合焦領域の比が4:2:1であることが好ましい。
【0043】
図5は、デジタル一眼レフカメラ10のフラッシュプリ発光撮影動作をフローチャートで示した図である。コントローラ50は、このフラッシュプリ発光撮影動作を、フラッシュROM51に書き込まれたプログラムに従って統括的に制御する。コントローラ50は、電源スイッチのオンにより起動し、フラッシュプリ発光撮影モードを選択した撮影可能な撮影待機状態においてフラッシュプリ発光撮影処理に入る。
【0044】
コントローラ50は、AF指示があったか否か(AF・測光スイッチ35がオンか否か)のチェックを(S101)、AF指示があるまで繰り返す(S101:NO、S101)。AF指示があったと判定すると(S101:YES)、AF動作を開始し(S103)、AF動作により検出したデフォーカス量の絶対値が0となる合焦位置にフォーカス用レンズ群L2を移動させる。コントローラ50の合焦状態判定手段50bは、フォーカス用レンズ群L2を合焦位置に移動した後、検出したデフォーカス量に基づき、測距領域毎に合焦判定し、被写体距離算出手段50cは、合焦と判定した測距領域の被写体距離を算出する(S105)。測光領域分別手段50hは、合焦と判定された測距領域を合焦領域、準合焦と判定された測距領域を準合焦領域、その他の測距領域を非合焦領域に分別する。
【0045】
コントローラ50は、その後、撮影指示があったか否か(レリーズスイッチ36がオン操作されたか否か)チェックし(S107)、撮影指示があるまで定期的にチェックを繰り返す(S107:NO、S107)。コントローラ50は、撮影指示があったとき、AE演算を実施して本撮影における露出値(本撮影用のシャッター速度(露出時間)TV、絞り値AV、ISO感度SV)を決定する(S107:YES、S109)。コントローラ50はさらに、フラッシュプリ発光条件としてプリ発光用の電子シャッター速度TV(露出時間)、絞り値AV、ISO感度SVとプリ発光用ガイドナンバーGno(ガイドバリューGV)を決定する(S111)。絞り値Aは、通常開放絞り値が設定される。
【0046】
コントローラ50は、プリ発光露出条件決定後、まず内蔵フラッシュ装置40をプリ発光させずに、プリ発光測光手段50dによりプリ発光無しの定常光測光値を検出する(S113)。コントローラ50は、続いて、内蔵フラッシュ装置40を先に決定したガイドナンバーGnoでプリ発光させてプリ発光測光手段50dによりプリ発光した状態で測光し、プリ発光時測光値を検出する(S115)。プリ発光測光手段50dは、プリ発光時測光値と定常光測光値の差分をとってプリ発光測光値Yとする(S117)。定常光測光とプリ発光測光の順番は逆でもよい。
【0047】
コントローラ50の目標測光値算出手段50eは、被写体距離算出手段50cが算出した合焦領域の被写体距離情報に基づき目標測光値Yrefを算出し
、測光値補正手段50fは、プリ発光測光値Yを補正して補正後測光値Y′を算出する(S119)。コントローラ50の重み付け手段50iは、合焦状態判定手段50bが判定した合焦情報に基づき、合焦領域の補正後測光値Y′と準合焦領域と非合焦領域の測光値に重み付けする(S121)。コントローラ50(露出値演算手段)は、以上の重み付けした測光値により、画面全体の測光値(輝度BV)を算出する(S123)。さらにコントローラ50の本発光量算出手段50gは、算出した画面全体の測光値と、撮影用の露出値に基づいて、本発光量(本発光用ガイドナンバーGno)を算出する(S125)。なお、測光値は補正後測光値Y′の加重平均値であり、撮影用の露出値はステップS109で設定した本撮影用露出値である。
【0048】
コントローラ50は、算出した本発光量により内蔵フラッシュ装置40を本発光させて本撮影動作し、撮影した画像信号をフラッシュメモリ53に記録するとともに、ディスプレイ23に表示して(S127)、フラッシュプリ発光撮影動作を終了する(END)。
【0049】
図6に示した撮影シーンは、撮影画面61内に被写体として人物と木の一部がカメラから同一距離に位置しており、人物と木の一部のどちらにも合焦している状態である。この場合、カメラ(合焦状態判定手段50b)は人物の顔を検出し、顔を検出した被写体を優先被写体と判定する。本実施形態は、優先被写体とした顔が含まれる合焦領域と準合焦領域、およびこれらの領域と連続した領域であって、優先被写体である人物の体が含まれる合焦領域と準合焦領域を優先被写体の領域とする。以上の優先被写体の合焦領域には○印を、準合焦領域には△印を付してある。優先被写体の合焦領域と準合焦領域については前述のプリ発光時測光値の補正と重み付けを行い、優先被写体と判定されなかった合焦領域と準合焦領域についてはその他の非合焦領域と同様に扱う。
【0050】
図7に示した撮影シーンは、撮影画面61内に主要な被写体として二人の人物がカメラから同一の距離に立っていて、二人の人物のどちらにも合焦している状態である。このとき、カメラは二人の人物の顔を検出している。この場合カメラ(合焦状態判定手段50b)は、検出した顔の領域が大きいほうの人物を優先被写体と判定する。
図7では向かって左側の人物が優先被写体となる。本実施形態は、顔が大きい方の人物(優先被写体)の顔が含まれる合焦領域と準合焦領域、およびこれらの領域と連続した領域であって、優先被写体である人物の体が含まれる合焦領域と準合焦領域を優先被写体の領域とする。以上の優先被写体の合焦領域には○印を、準合焦領域には△印を付してある。優先被写体と判定された人物が含まれる合焦領域と準合焦領域について前述のプリ発光時測光値の補正と重み付けを行い、優先被写体と判定されなかった方の人物の合焦領域と準合焦領域についてはその他の非合焦領域と同様に扱う。
【0051】
図8に示した撮影シーンは、撮影画面61内に主要な被写体として3本の花がカメラから同一距離に立っていて、3本の花のいずれにも合焦している状態である。この場合カメラ(合焦状態判定手段50b)は、撮影画面の中央に最も近い被写体を優先被写体として判定する。
図8の実施形態では3本の花のうち中央の花が優先被写体と判定され、優先被写体である中央の花が含まれる合焦領域と準合焦領域を優先被写体の領域とする。以上の優先被写体の合焦領域には○印を、準合焦領域には△印を付してある。優先被写体と判定された花が含まれる合焦領域と準合焦領域について前述のプリ発光時測光値の補正と重み付けを行い、優先被写体と判定しなかった他の花の合焦領域と準合焦領域についてはその他の非合焦領域と同様に扱う。
【0052】
以上、本発明を瞳分割位相差式の自動焦点調節装置を搭載したデジタル一眼レフカメラに適用した実施形態について説明したが、本発明は、いわゆる画像コントラスト方式の自動焦点調節装置を搭載したいわゆるミラーレスのデジタル一眼レフカメラ、またはコンパクトデジタルカメラに適用可能である。画像コントラスト方式の場合、フォーカス用レンズ群L2を光軸方向に移動しながら撮像素子31が撮像した複数の測距領域内の画像信号により合焦状態を検出し、合焦状態であることを検出したとき、フォーカス用レンズ群L2を、合焦状態になった光軸方向位置に移動する。画像コントラスト方式の場合、撮影した画像のコントラストを使用するので合焦精度が高く、測距領域と測光領域とを一致させることが容易であり測距領域と測光領域の領域一致度が高い。なお、測距領域と測光領域を対応付け、測距領域と概ね一致する測光領域のみ合焦情報と距離情報に応じて評価値補正をし、測距領域と一致しない測光領域については評価値の補正をしないように設定するのが実際的である。
【0053】
プリ発光制御、本発光制御は、内蔵フラッシュ装置40と外部フラッシュ装置41のどちらか一方でも、両方でもよい。