(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398369
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】ファンモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 7/06 20060101AFI20180920BHJP
【FI】
H02P7/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-129482(P2014-129482)
(22)【出願日】2014年6月24日
(65)【公開番号】特開2016-10233(P2016-10233A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 亮
(72)【発明者】
【氏名】杉林 雅廣
(72)【発明者】
【氏名】佐野 肇
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−227294(JP,A)
【文献】
特開2001−292589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/34
H02P 7/00− 7/347
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンモータに対して接続コネクタを介して回転数制御信号を出力する制御部と、前記ファンモータの実回転数を検出して前記制御部に出力する回転数検出部とを備え、前記制御部は、ファンモータの始動時に前記回転数制御信号が示す値を所定の初期値に設定するとともに、前記ファンモータの実回転数検出値に基づいて目標回転数となるように回転数制御信号が示す値を所定の制御方法によりフィードバック制御するファンモータ制御装置において、
前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を変更可能に構成されており、
前記接続コネクタは、前記回転数制御信号が供給される第1及び第2の端子を備え、第1の端子と前記制御部との間には、所定の信号変換を行って前記回転数制御信号を第1の端子に供給するための第1の信号変換部が設けられており、第2の端子と前記制御部との間には、信号変換部が設けられていないか若しくは第1の信号変換部における信号変換とは異なる所定の信号変換を行って前記回転数制御信号を第2の端子に供給するための第2の信号変換部が設けられていることを特徴とするファンモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファンモータ制御装置において、制御部から出力される回転数制御信号はPWM信号であり、第1の信号変換部は前記PWM信号をそのデューティ比に応じた直流電圧信号に信号変換するものであることを特徴とするファンモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファンモータ制御装置において、前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を、接続コネクタに接続されたファンモータに出力する前記回転数制御信号が示す値と前記ファンモータの実回転数検出値との関係とに基づいて自動変更するための自動変更手段を備えていることを特徴とするファンモータ制御装置。
【請求項4】
ファンモータに対して接続コネクタを介して回転数制御信号を出力する制御部と、前記ファンモータの実回転数を検出して前記制御部に出力する回転数検出部とを備え、前記制御部は、ファンモータの始動時に前記回転数制御信号が示す値を所定の初期値に設定するとともに、前記ファンモータの実回転数検出値に基づいて目標回転数となるように回転数制御信号が示す値を所定の制御方法によりフィードバック制御するファンモータ制御装置において、
前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を変更可能に構成されており、
前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を、接続コネクタに接続されたファンモータに出力する前記回転数制御信号が示す値と前記ファンモータの実回転数検出値との関係とに基づいて自動変更するための自動変更手段を備えていることを特徴とするファンモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯器や熱交換器などに内蔵されるファンを回転駆動するためのファンモータの動作制御を行うファンモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1に開示されているように、燃焼用空気を吸気して燃焼部に送風するためのファンモータを内蔵する給湯器には、燃焼効率を良好に維持するべくファンモータの回転数制御を行うための制御用マイクロプロセッサが内蔵されている。ファンモータは、マイクロプロセッサから出力される回転数制御信号に応じた回転トルクでファンモータを回転駆動させるモータドライバを内蔵しており、これによりマイクロプロセッサからの指令によりファンモータの回転数の制御が可能となっている。
【0003】
通常、マイクロプロセッサが実装される制御基板に、ファンモータ接続用の制御基板側接続コネクタが設けられ、ファンモータのモータドライバから引き出された接続配線の端部に設けられたファンモータ側コネクタが制御基板側接続コネクタに物理的に接続され、これによりマイクロプロセッサとファンモータとが電気的に接続されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−185131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、ファンモータメーカーの撤退や提供する製品バリエーションの絞り込み等による各種電器部品の生産中止が少なくなく、給湯器の設計時に採用したファンモータが生産中止となった場合、給湯器の製造部品として仕様の異なる別のファンモータを採用せざるを得ない。給湯器用ファンモータは、回転数制御信号として直流電圧を用いる仕様のものの他、PWM信号を回転数制御信号として入力する仕様のものがあるが、給湯器の制御基板がいずれか一の仕様にしか対応しない設計の場合にはファンモータの変更品の種類が限定され、場合によってはコストを無視した採用をせざるを得ない恐れがある。
【0006】
また、上記2種類の仕様に対応するために、直流電圧として回転数制御信号を出力する接続コネクタと、PWM信号として回転数制御信号を出力する接続コネクタとを制御基板に設けておくことも考えられるが、制御基板に接続コネクタを複数実装する必要があるため、実装コストが高くなるとともに制御基板上の実装面積を占有してしまうという問題がある。
【0007】
また、直流電圧を回転数制御信号として用いるファンモータであっても、メーカーや型番が異なると仕様が異なり、回転数制御信号が示す電圧値とファンモータの回転数との相関関係が必ずしも同じではないため、的確な回転数制御を行うためにはマイクロプロセッサにおける制御パラメータや制御アルゴリズムなどをファンモータの仕様に合わせて変更する必要が生じるが、従来はかかる問題点について知見されていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、設計時に採用したファンモータが生産中止となった場合でも、異なる仕様のファンモータへの変更に容易に対応可能で、しかも複数の仕様のファンモータを接続するための接続コネクタの共通化を図ることにより製造コスト低減を図ることのできるファンモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、次の技術的手段を講じた。
【0010】
すなわち、本発明は、ファンモータに対して接続コネクタを介して回転数制御信号を出力する制御部と、前記ファンモータの実回転数を検出して前記制御部に出力する回転数検出部とを備え、前記制御部は、ファンモータの始動時に前記回転数制御信号が示す値を所定の初期値に設定するとともに、前記ファンモータの実回転数検出値に基づいて目標回転数となるように回転数制御信号が示す値を所定の制御方法によりフィードバック制御するファンモータ制御装置において、前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を変更可能に構成されていることを特徴とするものである(請求項1)。
【0011】
なお、本発明において、ファンモータとしてはDCモータを好適に用いることができ、入力する回転数制御信号に応じて回転トルクを調整可能なモータードライバを内蔵するものを好適に用いることができるが、モータードライバは外付けであってもよい。制御部が出力する回転数制御信号は、制御部のアナログ出力ポートから出力される直流電圧信号であってもよく、また、デューティ比によって回転数制御値を示すPWM信号であってもよく、その他回転数制御値を示すことのできる適宜の形態の信号であってよい。また、ファンモータの電源電圧をも前記接続コネクタを介してファンモータに供給する構成とすることが好ましく、さらに、ファンモータの回転パルス信号を前記接続コネクタを介して前記回転数検出部に入力させ、回転パルス信号に基づいて回転数検出部がファンモータの実回転数を検出するように回路構成することができ、前記回転数検出部は、前記制御部とは別のパルス計数用ICなどの回転数検出回路によって構成することもできるし、制御部と回転数検出部とをいずれも同じマイクロプロセッサによって構成してもよい。また、ファンモータの仕様によって前記制御方法を変更する場合には上記の「所定の初期値」はファンモータの仕様によらず一定の値であってもよく、ファンモータの仕様によって前記初期値を変更する場合には前記制御方法はファンモータの仕様によらず共通のものであってもよい。好ましくは、接続コネクタに接続されたファンモータの仕様に応じ、すなわち、回転数制御信号が示す値とファンモータの回転数との予め実験等により求めた相関関係に基づいて目標回転数に応じて、所定の初期値が選択乃至算出されるものとすることにより、ファンモータの始動後フィードバック制御によらずとも目標回転数近くまで迅速に実回転数を上げることができる。また、前記初期値を変更可能に構成するとは、上記の相関関係を示すリストや数式などの相関関係データを不揮発性メモリに記憶しておき、この相関関係データを書き換えることによりファンモータ始動時に設定される初期値をファンモータの仕様に応じて変更し得る構成を含み、また、予め複数の仕様のファンモータ毎に相関関係データを適宜の記憶手段に記憶しておき、ファンモータの始動時に用いる相関関係データを選択設定可能に構成することによりファンモータ始動時に設定される初期値をファンモータの仕様に応じて変更し得る構成であってもよい。また、前記制御方法は、例えば制御部が出力する回転数制御信号がPWM信号である場合には目標回転数と実回転数検出値との差分に応じて実回転数検出値が目標回転数に近づくようにPWM信号のデューティ比を制御するものであってよく、また、制御部が出力する回転数制御信号が直流電圧信号である場合には目標回転数と実回転数検出値との差分に応じて実回転数検出値が目標回転数に近づくように回転数制御信号の直流電圧値を制御するものであってよい。また、制御方法の変更とは、ファンモータの仕様に応じた制御パラメータ及び/又は制御アルゴリズムの変更を含み、かかる変更は、不揮発性メモリに記憶した制御パラメータや制御アルゴリズムを書き換えることによって行ってもよく、また、複数の仕様のファンモータ毎に仕様に合わせた制御パラメータや制御アルゴリズムを予め適宜の記憶手段に記憶しておき、ファンモータのフィードバック制御に用いる制御パラメータや制御アルゴリズムを選択設定可能に構成することにより制御方法の変更を実現することもできる。また、複数の仕様のファンモータ毎に回転数制御信号生成プログラム若しくは回転数制御信号生成回路を個別に設けておき、ファンモータのフィードバック制御に用いる回転数制御信号生成プログラム若しくは回転数制御信号生成回路を選択設定可能に構成することにより制御方法の変更を実現することもできる。
【0012】
かかる本発明のファンモータ制御装置によれば、異なる仕様のファンモータを接続コネクタに接続する場合に、当該ファンモータの仕様に合わせて前記初期値と前記制御方法の双方、或いは、いずれか一方を変更することにより、ファンモータの仕様に適合した回転数制御信号出力を行わせることができ、これにより設計時に採用したファンモータが生産中止となった場合でも、異なる仕様のファンモータへの変更に容易に対応可能で、しかも複数の仕様のファンモータを接続するための接続コネクタの共通化を図ることにより製造コスト低減を図ることができる。
【0013】
上記本発明のファンモータ制御装置において、前記接続コネクタは、前記回転数制御信号が供給される第1及び第2の端子を備え、第1の端子と前記制御部との間には、所定の信号変換を行って前記回転数制御信号を第1の端子に供給するための第1の信号変換部が設けられており、第2の端子と前記制御部との間には、信号変換部が設けられていないか若しくは第1の信号変換部における信号変換とは異なる所定の信号変換を行って前記回転数制御信号を第2の端子に供給するための第2の信号変換部が設けられているものとすることができる(請求項
1)。これによれば、PWM信号を回転数制御信号として入力するファンモータや、直流電圧信号を回転数制御信号として入力するファンモータなど、ファンモータが入力する回転数制御信号の信号形態が異なる場合でも、共通の接続コネクタを利用して回転数制御信号をファンモータに供給することができる。
【0014】
さらに、第1の信号変換部としては、例えば制御部が出力するPWM信号からなる回転数制御信号をそのデューティ比に応じた直流電圧信号(アナログ信号)に信号変換するもの、例えば積分・平滑回路であってよい(請求項
2)。これによれば、直流電圧信号を回転数制御信号として入力する仕様のファンモータをPWM信号出力によって制御することができる。
【0015】
なお、第1の信号変換部は、制御部が出力する直流電圧信号からなる回転数制御信号をその電圧値に応じたデューティ比のPWM信号に信号変換する信号変換器などであってもよい。また、第2の信号変換部は、例えば、制御部が出力するPWM信号の周波数をn倍するパルス逓倍回路や、制御部が出力する直流電圧信号の電圧値をn倍する増幅回路などであってよい。
【0016】
また、前記制御部は、前記初期値及び/又は前記制御方法を、接続コネクタに接続されたファンモータに出力する前記回転数制御信号が示す値と前記ファンモータの実回転数検出値との関係とに基づいて自動変更するための自動変更手段を備えているものとすることができる(請求項
3,4)。これによれば、仕様の異なるファンモータを接続した場合でも、自動変更手段が、前記回転数制御信号が示す値と前記ファンモータの実回転数検出値との関係とに基づいて前記初期値及び/又は前記制御方法を自動変更するので、マニュアル操作によって設定変更を行う必要がなく、生産管理コストの低減を図ることができるとともに、また、既に出荷済の製品に内蔵されたファンモータが故障して、仕様の異なるファンモータしか交換品が存在しない場合でも、単にファンモータを交換してテスト運転することにより自動的にファンモータの仕様に応じて前記初期値及び/又は前記制御方法が自動変更され、仕様の異なるファンモータへの交換修理コストを低減することができる。
【0017】
なお、自動変更手段の構成は適宜のものとすることができる。例えば、
(1)ファンモータの始動時に目標回転数に応じて回転数制御信号が示す値を所定の初期値に設定するとともに、予め複数の仕様のファンモータ毎に相関関係データを適宜の記憶手段に記憶しておき、ファンモータの始動時に用いる相関関係データを選択設定可能に構成することによりファンモータ始動時に設定される初期値をファンモータの仕様に応じて変更可能に構成している場合には、自動変更手段は、ファンモータ始動時に選択設定されている相関関係データに基づいて目標回転数に対応する回転数制御信号を出力し、ファンモータ始動後所定の検査時間の間は上記フィードバック制御を行わず、検査時間内に目標回転数と実回転数検出値との差分が所定の許容範囲内となれば上記フィードバック制御を開始し、一方、検査時間内に上記差分が所定の許容範囲内にならなければ残りの他の相関関係データについて順次上記処理を繰り返す制御構成とすることができ、また、
(2)複数の仕様のファンモータ毎に仕様に合わせた制御パラメータや制御アルゴリズムを予め適宜の記憶手段に記憶しておき、ファンモータのフィードバック制御に用いる制御パラメータや制御アルゴリズムを選択設定可能に構成している場合には、自動変更手段は、ファンモータを始動させていずれか一の制御パラメータや制御アルゴリズムにより回転数制御信号のフィードバック制御を行い、所定の検査時間内に目標回転数と実回転数検出値との差分が所定の許容範囲内となればこのときの制御パラメータや制御アルゴリズムをフィードバック制御に用いるものとして確定し、所定の検査時間内に上記差分が許容範囲内とならなければ残りの他の制御パラメータや制御アルゴリズムについて順次上記処理を繰り返す制御構成とすることができる。この場合の上記検査時間は、フィードバック制御による収束時間を考慮し、上記(1)の場合の検査時間よりも長いものであってよく、また、上記差分は、上記(1)の場合の差分よりも小さいものであってよい。かかる(2)の制御構成は、接続されているファンモータと、選択されている制御パラメータや制御アルゴリズムとが対応していないと実回転数が目標回転数に収束しない場合に好適に実施可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係るファンモータ制御装置によれば、異なる仕様のファンモータを接続コネクタに接続する場合に、当該ファンモータの仕様に合わせて前記初期値と前記制御方法の双方、或いは、いずれか一方を変更することにより、ファンモータの仕様に適合した回転数制御信号出力を行わせることができ、これにより設計時に採用したファンモータが生産中止となった場合でも、異なる仕様のファンモータへの変更に容易に対応可能で、しかも複数の仕様のファンモータを接続するための接続コネクタの共通化を図ることにより製造コスト低減を図ることができる。
【0019】
さらに、本発明の請求項
1に係るファンモータ制御装置によれば、PWM信号を回転数制御信号として入力するファンモータや、直流電圧信号を回転数制御信号として入力するファンモータなど、ファンモータが入力する回転数制御信号の信号形態が異なる場合でも、共通の接続コネクタを利用して回転数制御信号をファンモータに供給することができる。
【0020】
本発明の請求項
2に係るファンモータ制御装置によれば、直流電圧信号を回転数制御信号として入力する仕様のファンモータをPWM信号出力によって制御することができる。
【0021】
本発明の請求項
3,4に係るファンモータ制御装置によれば、仕様の異なるファンモータを接続した場合でも、自動変更手段が、前記回転数制御信号が示す値と前記ファンモータの実回転数検出値との関係とに基づいて前記初期値及び/又は前記制御方法を自動変更するので、マニュアル操作によって設定変更を行う必要がなく、生産管理コストの低減を図ることができるとともに、また、既に出荷済の製品に内蔵されたファンモータが故障して、仕様の異なるファンモータしか交換品が存在しない場合でも、単にファンモータを交換してテスト運転することにより自動的にファンモータの仕様に応じて前記初期値及び/又は前記制御方法が自動変更され、仕様の異なるファンモータへの交換修理コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るファンモータ制御装置の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態に係るファンモータ制御装置1の概略構成を示しており、該制御装置1は、マイクロプロセッサ2からなる制御部、電源回路3、積分・平滑回路4からなる第1の信号変換部及び回転数検出回路5からなる回転数検出部を備え、これらが制御基板6上に実装されてなる。制御基板6には複数の仕様のファンモータA〜Dを接続可能な接続コネクタ7が設けられている。
【0025】
ファンモータA〜Dはそれぞれモータドライバー(図示せず)を内蔵するDCブラシレスモータであり、モータードライバーから引き出された接続配線の端部には上記接続コネクタ7に対応する形状のファンモータ側コネクタ8が設けられ、ファンモータA〜Dのいずれのコネクタ8も接続コネクタ7に物理的に接続可能となされている。複数の仕様のファンモータA〜Dとして、本実施形態では、直流電圧信号(アナログ信号)を回転数制御信号(速度指令)として入力する2つのファンモータA,Bと、PWM信号を回転数制御信号(速度指令)として入力する2つのファンモータC,Dとを例示している。ファンモータAとファンモータBとは、回転数制御信号の直流電圧値と回転数との相関関係が異なる点で仕様の異なるものであり、ファンモータCとファンモータDとは、回転数制御信号のデューティ比と回転数との相関関係が異なる点で仕様の異なるものである。各ファンモータ側コネクタ8の第1ピン81は電源電圧入力端子とされ、第2ピン82は回転数制御信号を直流電圧信号として入力するAD入力端子とされ、第3ピン83は回転数制御信号をPWM信号として入力するCLK入力端子とされ、第4ピン84はファンモータのホール素子からの回転パルス信号を制御基板6に出力するための回転パルス信号出力端子とされている。ファンモータA,Bのコネクタ8の第3ピン83、並びに、ファンモータC,Dのコネクタ8の第2ピン82はオープンとされている。
【0026】
なお、以降、複数の仕様のファンモータをいうときにのみ符号A〜Dを付し、接続コネクタ7に接続された一のファンモータを説明するときには混同を避けるため符号を付さないこととする。
【0027】
電源回路3は、マイクロプロセッサ2や、積分・平滑回路4及び回転数検出回路5を構成する各能動回路部品に電源(例えば5V)を供給するとともに、接続コネクタ7に接続されたファンモータに電源(例えば22V)の供給を行うものである。図示例では、接続コネクタ7の第1ピン71が電源回路3のファンモータ電源出力部31に電気的に接続されている。なお、電源回路3のファンモータ電源出力部31からの電源出力は、マイクロプロセッサ2からの制御指令信号によってオン/オフ切換え可能に構成されており、ファンモータの停止時にはファンモータ電源出力部31からの電源出力をオフにするとともに、ファンモータの動作制御中はファンモータ電源出力部31からの電源出力をオンに切換え制御するようマイクロプロセッサ2が構成されている。
【0028】
マイクロプロセッサ2は、ファンモータに供給するための回転数制御信号を出力する回転数制御信号出力端子21を備えており、該端子21は、マイクロプロセッサ2に具備されたデジタル出力ポートの一つによって構成できる。本実施形態では回転数制御信号はPWM信号とされている。該回転数制御信号は、2つの信号経路に分岐供給され、一方の経路においては積分・平滑回路4によってデューティ比に応じた直流電圧信号に信号変換されて接続コネクタ7の第2ピン72(第1の端子)に供給され、他方の経路においては何ら信号処理を行うことなくPWM信号をそのまま接続コネクタ7の第3ピン73(第2の端子)に供給するよう回路構成されている。
【0029】
接続コネクタ7の第4ピン74はファンモータの回転パルス信号の入力端子として用いられ、第4ピン74に入力される回転パルス信号に基づいて回転数検出回路5がファンモータの実回転数をパルス計数により検出してマイクロプロセッサ2に出力する。なお、マイクロプロセッサ2に入力される実回転数検出値の信号形態はデジタル信号であってもアナログ信号であってもよく、また、実回転数に応じたデューティ比のPWM信号であってもよく、その他適宜の信号形態であってよい。
【0030】
上記構成により、ファンモータA,Bを接続コネクタ7に接続した場合には、電源がコネクタ7,8を介してファンモータA,Bに供給されるとともに、回転数制御信号が直流電圧信号に信号変換された後コネクタ7,8を介してファンモータA,Bに供給される。一方、ファンモータC,Dを接続コネクタ7に接続した場合には、電源がコネクタ7,8を介してファンモータC,Dに供給されるとともに、回転数制御信号がPWM信号のままコネクタ7,8を介してファンモータC,Dに供給される。
【0031】
マイクロプロセッサ2は、ファンモータを駆動するか停止するかの動作制御を行い、ファンモータを始動する際は目標回転数を設定するとともに所定の相関関係データに基づいて回転数制御信号のデューティ比を上記目標回転数に対応する初期値に設定出力する。さらに、ファンモータ始動後は従来公知の適宜の制御方法によってファンモータの実回転数検出値に基づいて目標回転数となるように回転数制御信号のデューティ比(回転数制御信号が示す値)をフィードバック制御するものであり、目標回転数も従来公知の適宜の演算方法によってマイクロプロセッサ2により算出される。
【0032】
より具体的には、制御基板6上には、マイクロプロセッサ2がアクセス可能なフラッシュメモリなどからなる記憶手段9が設けられており、該記憶手段9内には、各ファンモータA〜Dにそれぞれ対応する複数の相関関係データが記憶されている。ファンモータA,Bに対応する相関関係データは、マイクロプロセッサ2が出力する回転数制御信号のデューティ比と、該デューティ比の回転数制御信号が積分・平滑回路4によって直流電圧信号に信号変換されてファンモータA,Bに出力されたときのファンモータA,Bの実回転数との相関関係を試験等によって求めることによって得ることができる。また、ファンモータC,Dに対応する相関関係データは、マイクロプロセッサ2が出力する回転数制御信号のデューティ比と、該デューティ比の回転数制御信号がそのままファンモータC,Dに出力されたときのファンモータC,Dの実回転数との相関関係を試験等によって求めることによって得ることができる。その他、各相関関係データを、対応するファンモータA〜Dの特性に合わせて適宜の試験或いは推定手法によって求めることができ、各相関関係データは、デューティ比と実回転数とを対応づけたリストの形式であってもよく、また、試験結果に近似する数式の形式であってもよい。
【0033】
マイクロプロセッサ2は、通信可能に接続されたリモコン(図示せず)その他の適宜の操作部のマニュアル操作によって上記複数の相関関係データのうち接続コネクタ7に接続したファンモータの仕様に合致するものを選択設定可能に構成することによって、ファンモータ始動時の回転数制御信号のデューティ比の初期値を変更することができ、これにより、ファンモータ始動直後に目標回転数から大きく外れることで不完全燃焼などを引き起こすことを回避し、ファンモータ始動直後に迅速に目標回転数に近い実回転数となるようにしている。
【0034】
さらに、マイクロプロセッサ2は、ファンモータ始動直後に、ファンモータの仕様を判別して上記複数の相関関係データのうち最適な相関関係データを自動的に選択設定することにより始動時に設定されるデューティ比の初期値を自動変更する自動変更手段を構成している。具体的には、マイクロプロセッサ2は、ファンモータ始動時に選択設定されている相関関係データに基づいて目標回転数に対応するデューティ比の回転数制御信号を出力し、ファンモータ始動後所定の検査時間(好ましくは数秒)の間はフィードバック制御を行わず、検査時間内に目標回転数と実回転数検出値との差分が所定の許容範囲内となればフィードバック制御を開始し、検査時間内に上記差分が所定の許容範囲内にならなければ相関関係データの選択設定を残りの他の相関関係データに順次切換えて上記処理を繰り返すよう制御構成することができる。
【0035】
マイクロプロセッサ2による上記フィードバック制御は、どのファンモータA〜Dが接続されているかにかかわらず同じ制御方法で行ってもよく、また、各ファンモータA〜Dの仕様や特性に合わせた制御パラメータや制御アルゴリズムを用いた制御方法で行わせることも可能である。制御パラメータとしては、例えば、回転数制御信号のデューティ比の調整量や上限閾値などを挙げることができ、制御アルゴリズムとしては、例えば、各種センサの検出値に基づいて目標回転数やデューティ比の調整量を補正するためのアルゴリズムなどを挙げることができる。より好ましくは、複数の仕様のファンモータ毎に仕様に合わせた制御パラメータや制御アルゴリズムを予め記憶手段9に記憶しておき、ファンモータのフィードバック制御に用いる制御パラメータや制御アルゴリズムを選択設定可能に構成しておくことができる。この場合、マイクロプロセッサ2は、ファンモータを始動させて現在選択されている制御パラメータや制御アルゴリズムにより回転数制御信号のフィードバック制御を行い、所定の検査時間内に目標回転数と実回転数検出値との差分が所定の許容範囲内とならなければ残りの他の制御パラメータや制御アルゴリズムに設定を順次切換えつつ上記処理を繰り返し、いずれの制御パラメータや制御アルゴリズムによっても実回転数検出値が目標回転数に収束しない場合にはエラー表示等の所定のエラー処理を行わせることができる。
【0036】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、積分・平滑回路4及び接続コネクタ7の第2ピン72は設けずに、速度指令をPWM信号として入力する異なる応答特性のファンモータC,Dのいずれかを接続可能な構成としてもよく、また、接続コネクタ7の第3ピン73を設けずに、速度指令を直流電圧信号として入力する異なる応答特性のファンモータA,Bのいずれかを接続可能な構成としてもよい。また、ファンモータ始動時の初期値データや、フィードバック制御の制御方法を規定するための制御パラメータや制御アルゴリズムは、いずれか一の仕様のファンモータのもののみを不揮発性メモリからなる記憶手段9に記憶しておき、異なる仕様のファンモータ採用時に記憶手段9を書き換えることによって、前記初期値や制御方法を変更することも可能である。また、接続コネクタ7の第3ピン73とマイクロプロセッサ2との間には、積分・平滑回路4とは異なる信号変換を行って回転数制御信号を第3ピン73に供給するための第2の信号変換回路を設けることもできる。また、ファンモータとして、パルスのオン/オフ周波数によって速度制御を行うことのできる周波数制御方式のものを接続可能に構成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 ファンモータ制御装置
2 制御部(マイクロプロセッサ)
4 第1の信号変換部
5 回転数検出部
7 接続コネクタ
71 第1の端子(第2ピン)
72 第2の端子(第3ピン)