特許第6398372号(P6398372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398372
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】空気調和機の床置式室内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/00 20110101AFI20180920BHJP
   F24F 1/32 20110101ALI20180920BHJP
   F24F 13/32 20060101ALI20180920BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20180920BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   F24F1/00 391C
   F24F1/32
   F24F1/00 411
   F25B1/00 396A
   F16L55/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-132726(P2014-132726)
(22)【出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-11771(P2016-11771A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩濱 豪典
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−101865(JP,A)
【文献】 特開2004−286315(JP,A)
【文献】 特開2012−127584(JP,A)
【文献】 特開2003−207261(JP,A)
【文献】 特開2003−269750(JP,A)
【文献】 特開2013−064525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00
F16L 55/00
F24F 1/32
F24F 13/32
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気調和機の床置式室内ユニットであって、
ケーシング(40)と、
該ケーシング(40)の内部に配置される仕切部(44)と、
上記ケーシング(40)の仕切部(44)の下側の下部空間(45)に収容されるファン(33)と、
上記ケーシング(40)の仕切部(44)の上側の上部空間(46)に収容され、可燃性の冷媒が流通する熱交換器(31)を有する室内配管(32)と、
上記下部空間(45)に配置され、上記室内配管(32)の端部と、室外から配設される連絡配管(12,13)とを連結する少なくとも1つの継手部材(51,52)と、
上記継手部材(51,52)から漏洩した冷媒を上記上部空間(46)へ導くための冷媒搬送機構(60)と
を備えている
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項2】
請求項1において、
上記冷媒搬送機構(60)は、
上記継手部材(51,52)が収容される収容空間(72,92,97)を形成するカバー部材(62,82,95)と、
上記カバー部材(72,92,97)の収容空間(72,92,97)と上記上部空間(46)とを連通させる冷媒案内管(71,91,96)とを
有している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項3】
請求項2において、
上記仕切部(44)は、上記熱交換器(31)の下側に設置されるドレンパン(44)で構成され、
上記冷媒案内管(71,91,96)は、該冷媒案内管(71,91,96)の流出端(71a,91a,96a)がドレンパン(44)の上側に位置している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項4】
請求項3において、
上記ドレンパン(44)には、排水口(44b)が形成され、
上記冷媒案内管(71,91,96)の流出端(71a,91a,96a)は、上記排水口(44b)の近傍に配置される
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つにおいて、
上記冷媒案内管(71,91,96)は、該冷媒案内管(71,91,96)の流入端(71a,91a,96a)が収容空間(72,92,97)の内部に位置している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項6】
請求項5において、
上記室内配管(32)の端部と上記冷媒案内管(71,91,96)とは、同種の金属材料からなり、ろう付けによって互いに固定されるように構成される
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項7】
請求項2乃至4のいずれか1つにおいて、
上記冷媒案内管(96)は、該冷媒案内管(96)の流入端(96a)がカバー部材(95)に接続している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記継手部材(51,52)は、上記室内配管(32)の液側端部と液側の上記連絡配管(12)とを接続する液側継手部材(51)と、上記室内配管(32)のガス側端部とガス側の上記連絡配管(13)とを接続するガス側継手部材(52)とで構成され、
上記冷媒搬送機構(60)は、
上記液側継手部材(51)を収容する収容空間(72)を形成する液側カバー部材(62)と、該液側カバー部材(62)の収容空間(72)と上記上部空間(46)とを連通させる液側冷媒案内管(71)と、
上記ガス側継手部材(52)を収容する収容空間(92)を形成するガス側カバー部材(82)と、該ガス側カバー部材(82)の収容空間(92)と上記上部空間(46)とを連通させるガス側冷媒案内管(91)とを有している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1つにおいて、
上記継手部材(51,52)は、上記熱交換器(31)の液側端部と液側の上記連絡配管(12)とを接続する液側継手部材(51)と、上記熱交換器(31)のガス側端部とガス側の上記連絡配管(13)とを接続するガス側継手部材(52)とで構成され、
上記冷媒搬送機構(60)は、上記液側継手部材(51)及びガス側継手部材(52)を収容する1つの収容空間(97)を形成する1つのカバー部材(95)と、該カバー部材(95)の収容空間(97)と上記上部空間(46)とを連通させる1つの冷媒案内管(96)とを
有している
ことを特徴とする床置式室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の床置式室内ユニットに関し、特に冷媒の漏洩対策に係る。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の冷房や暖房を行う空気調和機が知られている。この種の空気調和機として、床面に設置される床置式の室内ユニットを有するものがある。
【0003】
特許文献1に開示の床置式室内ユニットは、ケーシングの内部にドレンパン(仕切部)が配置される。ケーシングの内部では、ドレンパンの下側の空間にファンが収容され、ドレンパンの上側の空間に室内熱交換器が収容される。室内熱交換器は、連絡配管を介して冷媒回路に接続され、蒸発器又は凝縮器として機能する。
【0004】
この空気調和機では、ファンが作動することで、室内空気が下部空間、上部空間を順に流れ、室内熱交換器を通過する。空気調和機の冷房運転では、室内熱交換器が蒸発器として機能する。この結果、室内熱交換器では、冷媒が空気から吸熱して蒸発し、この空気が冷却される。空気調和機の暖房運転では、室内熱交換器が凝縮器として機能する。この結果、室内熱交換器では、冷媒が空気へ放熱して凝縮し、この空気が加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−94815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような空気調和機の床置式室内ユニットでは、室内熱交換器を有する室内配管のガス側端部や液側端部が、室外ユニットから配設される連絡配管と継手部材を介して連結される。具体的に、このような配管の継手部材としては、例えばフレア継手が一般的に用いられる。床置式室内ユニットの内部に、このような継手部材を配置する場合、スペースの制約やメンテナンス性を考慮すると、この継手部材を仕切部の下側の空間に配置することが好ましい。これにより、ファンの近傍のスペースに継手部材を配置でき、且つ室内配管と連絡配管の連結作業を比較的容易に行うことができる。
【0007】
一方、このように下部空間に配置した継手部材において、万が一、冷媒の漏洩が発生すると、この冷媒はケーシングの底部に徐々に溜まり込んでいく。この結果、ケーシングの底部に溜まった冷媒の濃度が徐々に高くなっていく。ここで、冷媒回路に充填される冷媒として、例えばR32(HFC−32、ジフルオロメタン)等の可燃性の冷媒を用いた場合、ケーシングの底部で濃縮された冷媒が機外に漏れて何らかの機器等の着火源に曝されると、冷媒が発火してしまい、空気調和機の信頼性が損なわれるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、継手部材から漏洩した冷媒がケーシングの底部に溜まり込んで濃縮されることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、空気調和機の床置式室内ユニットを対象とし、ケーシング(40)と、該ケーシング(40)の内部に配置される仕切部(44)と、上記ケーシング(40)の仕切部(44)の下側の下部空間(45)に収容されるファン(33)と、上記ケーシング(40)の仕切部(44)の上側の上部空間(46)に収容され、可燃性の冷媒が流通する熱交換器(31)を有する室内配管(32)と、上記下部空間(45)に配置され、上記室内配管(32)の端部と、室外から配設される連絡配管(12,13)とを連結する少なくとも1つの継手部材(51,52)と、上記継手部材(51,52)から漏洩した冷媒を上記上部空間(46)へ導くための冷媒搬送機構(60)とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第1の発明では、熱交換器(31)を有する室内配管(32)が、継手部材(51,52)を介して連絡配管(12,13)と接続される。これにより、空気調和機の冷媒回路が構成される。床置式室内ユニットでは、ファン(33)が送風する空気と可燃性の冷媒とが熱交換器(31)で熱交換する。この結果、空気が冷却又は加熱され、室内の冷房や暖房が行われる。
【0011】
本発明のケーシング(40)では、仕切部(44)の上側に上部空間(46)が形成され、仕切部(44)の下側に下部空間(45)が形成される。つまり、ファン(33)で搬送される空気は、下部空間(45)及び上部空間(46)を流れる。上述した継手部材(51,52)は、下部空間(45)に配置される。このため、継手部材(51,52)を上部空間(46)に配置する場合と比較して、配管の連結作業が容易となり、且つ継手部材(51,52)の収容スペースも十分に確保できる。
【0012】
本発明では、継手部材(51,52)から冷媒が漏洩すると、冷媒搬送機構(60)がこの冷媒を上部空間(46)へ導く。このため、下部空間(45)の継手部材(51,52)から漏洩した冷媒が、ケーシング(40)の底部へ直接的に流れ落ちることを回避できる。上部空間(46)へ導かれた冷媒は、上部空間(46)で拡散し、その濃度が低下する。また、上部空間(46)の冷媒が下部空間(45)へ流出したとしても、この際に冷媒が拡散され、その濃度が低下する。この結果、ケーシング(40)の底部に比較的濃度の高い冷媒が溜まり込むことを防止できる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、上記冷媒搬送機構(60)は、上記継手部材(51,52)が収容される収容空間(72,92,97)を形成するカバー部材(62,82,95)と、上記カバー部材(72,92,97)の収容空間(72,92,97)と上記上部空間(46)とを連通させる冷媒案内管(71,91,96)とを有していることを特徴とする。
【0014】
第2の発明の冷媒搬送機構(60)は、カバー部材(62,82,95)と冷媒案内管(71,91,96)とを有している。カバー部材(62,82,95)は、継手部材(51,52)を収容する収容空間(72,92,97)を形成する。このため、継手部材(51,52)から漏洩した冷媒は、収容空間(72,92,97)に一時的に貯留される。冷媒案内管(71,91,96)は、収容空間(72,92,97)と上部空間(46)とを連通させる。このため、継手部材(51,52)での冷媒の漏洩に起因して収容空間(72,92,97)の内圧が上昇すると、収容空間(72,92,97)に溜まった冷媒が上部空間(46)へ圧送される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、上記仕切部(44)は、上記熱交換器(31)の下側に設置されるドレンパン(44)で構成され、上記冷媒案内管(71,91,96)は、該冷媒案内管(71,91,96)の流出端(71a,91a,96a)がドレンパン(44)の上側に位置していることを特徴とする。
【0016】
第3の発明では、収容空間(72,92,97)の冷媒が冷媒案内管(71,91,96)を通じて上部空間(46)へ送られると、この冷媒がドレンパン(44)の上側に流出する。この結果、冷媒をドレンパン(44)に貯めることができる。更に、ドレンパン(44)に溜まった冷媒を凝縮水とともにケーシング(40)の外部へ排出できる。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、上記ドレンパン(44)には、排水口(44b)が形成され、上記冷媒案内管(71,91,96)の流出端(71a,91a,96a)は、上記排水口(44b)の近傍に配置されることを特徴とする。
【0018】
第4の発明では、収容空間(72,92,97)の冷媒が冷媒案内管(71,91,96)を通じて上部空間(46)へ送られると、この冷媒がドレンパン(44)の排水口(44b)の近傍に流出する。この結果、冷媒を排水口(44b)へ速やかに導くことができ、この冷媒をケーシング(40)の外部へ確実に排出できる。
【0019】
第5の発明は、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、上記冷媒案内管(71,91,96)は、該冷媒案内管(71,91,96)の流入端(71a,91a,96a)が収容空間(72,92,97)の内部に位置していることを特徴とする。
【0020】
第5の発明では、冷媒案内管(71,91,96)の流入端(71a,91a,96a)が、収容空間(72,92,97)の内部に位置するため、収容空間(72,92,97)に溜まった冷媒を冷媒案内管(71,91,96)へ速やかに導入できる。
【0021】
第6の発明は、第5の発明において、上記室内配管(32)の端部と上記冷媒案内管(71,91,96)とは、同種の金属材料からなり、ろう付けによって互いに固定されるように構成されることを特徴とする。
【0022】
第6の発明では、室内配管(32)の端部と冷媒案内管(71,91,96)とがロウ付によって一体化される。つまり、室内配管(32)のうち継手部材(51,52)に接続される部位と冷媒案内管(71,91,96)とは、一体的なユニットを構成する。このユニットをカバー部材(62,82,95)で覆うことで、冷媒案内機構(60)が構成される。
【0023】
第7の発明は、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、上記冷媒案内管(96)は、該冷媒案内管(96)の流入端(96a)がカバー部材(95)に接続していることを特徴とする。
【0024】
第7の発明では、冷媒案内管(96)の流入端(96a)がカバー部材(95)に接続される。これにより、カバー部材(95)の内部に冷媒案内管(96)を配設する構成と比較して、部品点数の削減を図ることができる。収容空間(97)の冷媒は、内圧によって冷媒案内管(96)に流入し、上部空間(46)へ搬送される。
【0025】
第8の発明は、第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記継手部材(51,52)は、上記室内配管(32)の液側端部と液側の上記連絡配管(12)とを接続する液側継手部材(51)と、上記室内配管(32)のガス側端部とガス側の上記連絡配管(13)とを接続するガス側継手部材(52)とで構成され、上記冷媒搬送機構(60)は、上記液側継手部材(51)を収容する収容空間(72)を形成する液側カバー部材(62)と、該液側カバー部材(62)の収容空間(72)と上記上部空間(46)とを連通させる液側冷媒案内管(71)と、上記ガス側継手部材(52)を収容する収容空間(92)を形成するガス側カバー部材(82)と、該ガス側カバー部材(82)の収容空間(92)と上記上部空間(46)とを連通させるガス側冷媒案内管(91)とを有していることを特徴とする。
【0026】
第8の発明では、下部空間(45)において、室内配管(32)の液側端部と液側連絡配管(12)とが液側継手部材(51)で接続され、且つ室内配管(32)のガス側端部とガス側連絡配管(13)とがガス側継手部材(52)で接続される。冷媒搬送機構(60)は、各継手部材(51,52)に対応して設けられる。つまり、液側継手部材(51)は、液側カバー部材(62)の収容空間(72)に収容され、液側カバー部材(62)の収容空間(72)に溜まった冷媒は液側冷媒案内管(71)を介して上部空間(46)へ搬送される。ガス側継手部材(52)は、ガス側カバー部材(82)の収容空間(92)に収容され、ガス側カバー部材(82)の収容空間(92)に溜まった冷媒はガス側冷媒案内管(91)を介して上部空間(46)へ搬送される。
【0027】
第9の発明は、 第1乃至第7のいずれか1つの発明において、上記継手部材(51,52)は、上記熱交換器(31)の液側端部と液側の上記連絡配管(12)とを接続する液側継手部材(51)と、上記熱交換器(31)のガス側端部とガス側の上記連絡配管(13)とを接続するガス側継手部材(52)とで構成され、上記冷媒搬送機構(60)は、上記液側継手部材(51)及びガス側継手部材(52)を収容する1つの収容空間(97)を形成する1つのカバー部材(95)と、該カバー部材(95)の収容空間(97)と上記上部空間(46)とを連通させる1つの冷媒案内管(96)とを有していることを特徴とする。
【0028】
第9の発明は、下部空間(45)において、室内配管(32)の液側端部と液側連絡配管(12)とが液側継手部材(51)で接続され、且つ室内配管(32)のガス側端部とガス側連絡配管(13)とがガス側継手部材(52)で接続される。冷媒搬送機構(60)は、両者の継手部材(51,52)を収容する1つのカバー部材(95)を有する。各継手部材(51,52)から漏洩した冷媒は、1つのカバー部材(95)の収容空間(97)に溜まり込む。この冷媒は、1つの冷媒案内管(96)を介して上部空間(46)へ搬送される。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、下部空間(45)に配置された継手部材(51,52)から漏洩した冷媒を上部空間(46)へ送ることができる。これにより、漏洩した冷媒を上部空間(46)で拡散させたり、この冷媒を上部空間(46)から下部空間(45)へ流れ落ちる際に拡散させたりすることができる。この結果、ケーシング(40)の底部に高濃度の可燃性の冷媒が溜まり込むことを防止できるので、この冷媒が機外に漏れて何らかの着火源に曝されて発火してしまうことを回避でき、ひいてはこの空気調和機の信頼性を向上できる。
【0030】
第2の発明によれば、継手部材(51,52)から漏洩した冷媒がケーシング(40)の底部へ直接的に流出してしまうことをカバー部材(62,82,95)によって確実に防止できる。また、冷媒の圧力を利用して該冷媒を上部空間(46)へ送ることができ、冷媒搬送機構(60)の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0031】
第3の発明によれば、継手部材(51,52)から漏洩した冷媒をドレンパン(44)に溜め込むことができるので、この冷媒の拡散を促すことができ、且つドレンパン(44)に溜まった冷媒を凝縮水とともにケーシング(40)の外部へ排出することができる。また、ドレンパン(44)に溜まった冷媒を凝縮水によって希釈することも可能である。また、ドレンパン(44)は、凝縮水の受け容器と、冷媒の受け容器を兼ねるので、部品点数の削減を図ることができる。
【0032】
第4の発明によれば、ドレンパン(44)に排出された冷媒を排水口(44b)からケーシング(40)の外部へ確実に排出でき、ケーシング(40)内での冷媒の濃縮を確実に回避できる。
【0033】
第5の発明によれば、カバー部材(62,82,95)の収容空間(72,92,97)に貯まった冷媒を速やかに冷媒案内管(71,91,96)へ流入させることができる。
【0034】
第6の発明によれば、室内配管(32)の端部と冷媒案内管(71,91,96)とをろう付けによって一体的なユニットとすることができる。これにより、このユニットの周囲にカバー部材(62,82,95)を設けることで、冷媒搬送機構(60)を容易に製造することができる。
【0035】
第7の発明によれば、冷媒搬送機構(60)の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0036】
第8の発明によれば、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)とがそれぞれ異なるカバー部材(62,82)に収容されるため、液側連絡配管(12)を流れる液冷媒と、ガス側連絡配管(13)を流れるガス冷媒とが互いに熱交換してしまうことを回避できる。また、カバー部材(62,82)に形成される収容空間(72,92)の体積が比較的小さくなるため、冷媒が漏洩した際の収容空間(72,92)の昇圧を促すことができる。この結果、漏洩した冷媒を確実に上部空間(46)へ送ることができる。
【0037】
第9の発明によれば、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)とが、1つのカバー部材(95)に収容され、このカバー部材(95)の収容空間(97)に溜まった冷媒を1つの冷媒案内管(96)より上部空間(46)へ送る構成としている。この結果、カバー部材(95)や冷媒案内管(96)の部品点数を削減でき、冷媒搬送機構(60)の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、実施形態に係る空気調和機の概略構成を示す配管系統図である。
図2図2は、実施形態に係る空気調和機の床置式室内ユニットの正面図である。
図3図3は、実施形態に係る空気調和機の床置式室内ユニットの内部構造を示す正面図である。
図4図4は、実施形態に係る空気調和機の床置式室内ユニットの内部構造を示す側面図である。
図5図5は、実施形態に係る冷媒搬送機構を拡大した概略の構成図である。
図6図6は、実施形態に係る液側カバー部材の組立斜視図である。
図7図7は、実施形態に係るガス側カバー部材の組立斜視図である。
図8図8は、変形例1に係る冷媒搬送機構を拡大した概略の構成図である。
図9図9は、変形例2に係る冷媒搬送機構を拡大した概略の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0040】
〈空気調和機の全体構成〉
本発明に係る空気調和機(10)は、室内の冷房や暖房を行うように構成されている。図1に示すように、空気調和機(10)は、室外ユニット(20)と、室内ユニット(30)とを有し、これらのユニット(20,30)が2本の連絡配管(12,13)に接続されて構成される。これにより、空気調和機(10)には、冷媒が循環する冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)では、充填された冷媒が循環することで、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。本実施形態の冷媒回路(11)には、可燃性の冷媒であるR32(ジフルオロメタン)が充填されている。
【0041】
〔室外ユニット〕
室外ユニット(20)は、室外に設置されている。室外ユニット(20)は、各々、ケーシング(図示省略)に収容される、圧縮機(21)、室外熱交換器(22)、室外膨張弁(23)、四方切換弁(24)、及び室外ファン(25)を有している。
【0042】
圧縮機(21)は、低圧の冷媒を吸入して圧縮し、圧縮した後の高圧冷媒を吐出するように構成される。室外熱交換器(22)は、その内部を流れる冷媒と、室外ファン(25)が搬送する室外空気とを熱交換させる。室外膨張弁(23)は、高圧の冷媒を低圧まで減圧する、例えば電子膨張弁で構成される。四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部に繋がる第1ポートと、圧縮機(21)の吸入部に繋がる第2ポートと、室外熱交換器(22)のガス側端部に繋がる第3ポートと、ガス側連絡配管(13)に繋がる第4ポートとを有する。四方切換弁(24)は、第1ポートと第3ポートが連通し且つ第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図1の破線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通し且つ第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図1の実線で示す状態)とに切換可能に構成される。
【0043】
〔連絡配管〕
空気調和機(10)は、液側連絡配管(12)とガス側連絡配管(13)とを有している。液側連絡配管(12)の一端は、室外膨張弁(23)に繋がっている。液側連絡配管(12)の他端は、室内ユニット(30)の液側継手部材(51)に繋がっている。ガス側連絡配管(13)の一端は、四方切換弁(24)の第4ポートに繋がっている。ガス側連絡配管(13)の他端は、室内ユニット(30)のガス側継手部材(52)に繋がっている。
【0044】
〔室内ユニット〕
室内ユニット(30)は、室内の床面に設置される床置式の室内ユニットを構成している。室内ユニット(30)は、室内熱交換器(31)を有する室内配管(32)と、室内ファン(33)とを有している。室内熱交換器(31)は、その内部を流れる冷媒と、室内ファン(33)が搬送する室内空気とを熱交換させる。室内配管(32)のガス側端部は、ガス側継手部材(52)に繋がり、室内配管(32)の液側端部は、液側継手部材(51)に繋がっている。
【0045】
〈室内ユニットの詳細な構成〉
室内ユニット(30)の構成について、図2図5を参照しながら更に詳細に説明する。
【0046】
〔ケーシング〕
室内ユニット(30)は、室内の床面に設置されるケーシング(40)を備えている。ケーシング(40)は、縦長の直方体状の箱形に形成され、例えば室内の壁面に沿うように配置される。ケーシング(40)は、その前側(図4における左側)に前面パネル(41)を有している。前面パネル(41)は、ケーシング(40)の本体に対して着脱可能に構成される。図3は、ケーシング(40)の本体から前面パネル(41)を取り外した状態を表している。
【0047】
前面パネル(41)の下部(下側の略半分の部分)には、吸込グリル(42)が形成されている。吸込グリル(42)は、室内空気が吸い込まれる吸込部を構成している。前面パネル(41)の上部(ケーシング(40)の天板寄りの部分)には、吹出グリル(43)が形成されている。吹出グリル(43)は、室内熱交換器(31)を通過した空気が吹きだされる吹出部を構成している。
【0048】
〔ドレンパン〕
図3図5に示すように、ケーシング(40)の内部にはドレンパン(44)が設けられている。ドレンパン(44)は、室内熱交換器(31)の近傍で発生した凝縮水を回収する容器を構成している。ドレンパン(44)は、ケーシング(40)の高さ方向の中間部に配置される。ドレンパン(44)は、ケーシング(40)の内部を上下に区画する仕切部を構成している。
【0049】
図5に示すように、ドレンパン(44)の底壁部(44a)には、排水口(44b)が形成されている。排水口(44b)は、ドレンパン(44)の下側に配設される排水管(44c)と繋がっている。排水管(44c)は、下部空間(45)を下方に延び、ケーシング(40)を貫通して室外(室内を除く空間であって、例えば下水道も含む)まで配設される。
【0050】
〔ケーシングの収容空間〕
ケーシング(40)の内部では、ドレンパン(44)の下側に下部空間(45)が形成され、ドレンパン(44)の上側に上部空間(46)が形成されている。下部空間(45)と上部空間(46)とは、中間空間(47)を介して互いに連通している。下部空間(45)の流入側は吸込グリル(42)の空気流路と連通し、上部空間(46)の流出側は吹出グリル(43)の空気流路と連通している。つまり、ケーシング(40)では、吸込グリル(42)、下部空間(45)、中間空間(47)、上部空間(46)、吹出グリル(43)の順に室内空気が流れる。
【0051】
〔室内ファン〕
室内ファン(33)は、下部空間(45)に配置されている。室内ファン(33)は、室内空気を搬送する、例えばシロッコファンで構成される。
【0052】
〔室内配管〕
室内配管(32)は、ケーシング(40)の内部に収容されている。室内配管(32)は、室内熱交換器(31)と液配管(34)とガス配管(35)とを有している。
【0053】
室内熱交換器(31)は、上部空間(46)において、ドレンパン(44)の上側に配置されている。室内熱交換器(31)は、その前面側が斜め上方を向くように傾斜して配置される(図4を参照)。室内熱交換器(31)のガス側端部には、ガス配管(35)が繋がり、室内熱交換器(31)の液側端部には、液配管(34)が繋がっている。液配管(34)及びガス配管(35)は、上部空間(46)と下部空間(45)とに亘って配設されている。
【0054】
〔連絡配管〕
ケーシング(40)の下部空間(45)には、上述した液側連絡配管(12)及びガス側連絡配管(13)の一部が配設されている。各連絡配管(12,13)は、ケーシング(40)の下部を貫通し、ケーシング(40)の側面に沿って上方へ延びている。
【0055】
〔継手部材〕
図5に示すように、本実施形態の下部空間(45)には、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)とが配置されている。液側継手部材(51)は、液配管(34)の端部(下端)と液側連絡配管(12)の端部(上端)とを連結している。ガス側継手部材(52)は、ガス配管(35)の端部(下端)とガス側連絡配管(13)の端部(上端)とを連結している。
【0056】
各継手部材(2)は、ケーシング(40)の前面パネル(41)を取り外した状態において、ケーシング(40)の外部下側寄りに露出される位置にある。これにより、各継手部材(51,52)による配管の連結作業を容易に行うことができる。
【0057】
各継手部材(51,52)は、フレア継手で構成される。具体的に、液側継手部材(51)は、液配管(34)の端部に接続される本体部(51a)と、液側連絡配管(12)の端部に接続されるナット部(51b)とを有している。ガス側継手部材(52)は、ガス配管(35)の端部に接続される本体部(52a)と、液側連絡配管(12)の端部に接続されるナット部(52b)とを有している。各ナット部(51b,52b)を各本体部(51a,52a)に締め付けることで、各配管(34,35)と各連絡配管(12,13)とが接続される。
【0058】
〔冷媒搬送機構〕
本実施形態に係る冷媒搬送機構(60)は、各継手部材(51,52)から漏洩した冷媒を上部空間(46)へ導くように構成されている。図3に示すように、冷媒搬送機構(60)は、液側継手部材(51)に対応する液側ユニット(61)と、ガス側継手部材(52)に対応するガス側ユニット(81)とを有している。
【0059】
〈冷媒搬送機構の詳細な構成〉
冷媒搬送機構(60)の詳細な構成について、図5図7を参照しながら詳細に説明する。
【0060】
〔液側ユニット〕
液側ユニット(61)は、液側カバー部材(62)と、液側冷媒案内管(71)とを有している。液側カバー部材(62)は、液側継手部材(51)を収容する液側収容空間(72)を形成するカバー部材である。
【0061】
図6に示すように、液側カバー部材(62)は、第1カバー部(63)と第2カバー部(64)とが互いに一体化されて構成される。
【0062】
第1カバー部(63)は、一面が開放された縦長の箱状に形成される。第1カバー部(63)の上壁部(63a)には、液側冷媒案内管(71)が貫通する円形状の液案内管用貫通口(66)が形成される。第1カバー部(63)の上壁部(63a)のうち開放面寄りには、液配管(34)が挿通される半円形状の上側挿通溝(63b)が形成される。第1カバー部(63)の底壁部(63c)には、液側連絡配管(12)が挿通される半円形状の下側挿通溝(63d)が形成される。
【0063】
第1カバー部(63)の4つの角部の内縁には、内側に向かって膨出する4つの柱部(65)が形成される。各柱部(65)は、縦断面が略扇状に形成される。各柱部(65)の先端には、ボルト等の締結部材(75)が締結される締結穴(65a)が形成される。
【0064】
第2カバー部(64)は、第1カバー部(63)と対向する一面が開放された縦長の箱状に形成される。第2カバー部(64)の上壁部(64a)には、液配管(34)が挿通される半円形状の上側挿通溝(64b)が形成される。第2カバー部(64)の底壁部(64c)には、液側連絡配管(12)が挿通される半円形状の下側挿通溝(図示省略)が形成される。
【0065】
第2カバー部(64)の4つの角部には、内方に向かって凹んだ4つの窪み部(67)が形成される。各窪み部(67)の底部(図6における右側端部)には、上記締結部材(75)が締結される締結穴(67a)が形成される。
【0066】
第1カバー部(63)と第2カバー部(64)とは、各締結穴(65a,67a)に締結部材(75)が締結されることで一体化される。これにより、液側カバー部材(62)が構成される。一体化された状態の液側カバー部材(62)では、2つの上側挿通溝(63b,64b)により、液配管(34)が貫通する円形状の液配管用貫通口(68)が構成される。一体化された状態の液側カバー部材(62)では、2つの下側挿通溝(63d)により、液側連絡配管(12)が貫通する円形状の液連絡管用貫通口(69)が構成される。
【0067】
液側カバー部材(62)は、その内部に液側継手部材(51)を収容する液側収容空間(72)を形成している。液側カバー部材(62)では、第1カバー部(63)と第2カバー部(64)との近接部に例えばゴムパッキン等のシール部材(図示省略)が介設される。また、液側カバー部材(62)では、各配管(12,34,71)と各貫通口(66,68,69)の間に例えばオーリング等のシール部材(図示省略)が介設される。これにより、液側収容空間(72)の気密性が向上する。
【0068】
図5に示すように、液側冷媒案内管(71)は、液側収容空間(72)と上部空間(46)とを連通させる冷媒案内管である。液側冷媒案内管(71)の流入端(71a)は、液側収容空間(72)の内部に位置している。液側冷媒案内管(71)は、下部空間(45)から上部空間(46)に亘って上方へ延びている。液側冷媒案内管(71)の流出端(71b)は、ドレンパン(44)の上側に位置している。より詳細に、液側冷媒案内管(71)の流出端(61b)は、ドレンパン(44)の排水口(44b)の近傍であって、該排水口(44b)の上方に位置している。液側冷媒案内管(71)の流出端(71b)は、略水平方向を向くように開口している。
【0069】
[ガス側ユニット]
ガス側ユニット(81)は、ガス側カバー部材(82)と、ガス側冷媒案内管(91)とを有している。ガス側カバー部材(82)は、ガス側継手部材(52)を収容するガス側収容空間(92)を形成するカバー部材である。
【0070】
図7に示すように、ガス側カバー部材(82)の構成は、液側カバー部材(62)の構成と基本的に同じである。ガス側カバー部材(82)は、第1カバー部(83)と第2カバー部(84)とが互いに一体化されて構成される。
【0071】
第1カバー部(83)は、一面が開放された縦長の箱状に形成される。第1カバー部(83)の上壁部(83a)には、ガス側冷媒案内管(91)が貫通する円形状のガス案内管用貫通口(86)が形成される。第1カバー部(83)の上壁部(83a)のうち開放面寄りには、ガス配管(35)が挿通される半円形状の上側挿通溝(83b)が形成される。第1カバー部(83)の底壁部(83c)には、ガス側連絡配管(13)が挿通される半円形状の下側挿通溝(83d)が形成される。
【0072】
第1カバー部(83)の4つの角部の内縁には、内側に向かって膨出する4つの柱部(85)が形成される。各柱部(85)は、縦断面が略扇状に形成される。各柱部(85)の先端には、ボルト等の締結部材(76)が締結される締結穴(85a)が形成される。
【0073】
第2カバー部(84)は、第1カバー部(83)と対向する一面が開放された縦長の箱状に形成される。第2カバー部(84)の上壁部(84a)には、ガス配管(35)が挿通される半円形状の上側挿通溝(84b)が形成される。第2カバー部(84)の底壁部(84c)には、ガス側連絡配管(13)が挿通される半円形状の下側挿通溝(図示省略)が形成される。
【0074】
第2カバー部(84)の4つの角部には、内方に向かって凹んだ4つの窪み部(87)が形成される。各窪み部(87)の底部(図7の右側端部)には、上記締結部材(76)が締結される締結穴(87a)が形成される。
【0075】
第1カバー部(83)と第2カバー部(84)とは、各締結穴(85a,87a)に締結部材(76)が締結されることで一体化される。これにより、ガス側カバー部材(82)が構成される。一体化された状態のガス側カバー部材(82)では、2つの上側挿通溝(83b,84b)により、ガス配管(35)が貫通する円形状のガス配管用貫通口(88)が構成される。一体化された状態のガス側カバー部材(82)では、2つの下側挿通溝(83d)により、ガス側連絡配管(13)が貫通する円形状のガス連絡管用貫通口(89)が構成される。
【0076】
ガス側カバー部材(82)は、その内部にガス側継手部材(52)を収容するガス側収容空間(92)を形成している。ガス側カバー部材(82)では、第1カバー部(83)と第2カバー部(84)との近接部に例えばゴムパッキン等のシール部材(図示省略)が介設される。また、ガス側カバー部材(82)では、各配管(13,35,91)と各貫通口(86,88,89)の間に例えばオーリング等のシール部材(図示省略)が介設される。これにより、ガス側収容空間(92)の気密性が向上する。
【0077】
図5に示すように、ガス側冷媒案内管(91)は、ガス側収容空間(92)と上部空間(46)とを連通させる冷媒案内管である。ガス側冷媒案内管(91)の流入端(91a)は、ガス側収容空間(92)の内部に位置している。ガス側冷媒案内管(91)は、下部空間(45)から上部空間(46)に亘って上方へ延びている。ガス側冷媒案内管(91)の流出端(91b)は、ドレンパン(44)の上側に位置している。より詳細に、ガス側冷媒案内管(91)の流出端(91b)は、ドレンパン(44)の排水口(44b)の近傍に位置している。ガス側冷媒案内管(91)の流出端(91b)は、略水平方向を向くように開口している。
【0078】
−運転動作−
空気調和機(10)の運転動作について図1を参照しながら説明する。
【0079】
〈冷房運転〉
冷房運転では、四方切換弁(24)が第1状態(図1の破線で示す状態)となり、圧縮機(21)、室外ファン(25)、室内ファン(33)が作動する。室外膨張弁(23)は所定開度に調節される。冷房運転では、圧縮機(21)で圧縮された冷媒が室外熱交換器(22)で凝縮し、室外膨張弁(23)で減圧される。減圧された冷媒は、液側連絡配管(12)、液配管(34)を順に流れ、室内熱交換器(31)を流れる。
【0080】
室内ユニット(30)では、室内空気が、吸込グリル(42)、下部空間(45)、中間空間(47)、上部空間(46)を順に流れ、室内熱交換器(31)を通過する。室内熱交換器(31)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。この結果、室内空気が冷却される。室内熱交換器(31)で冷却された空気は、吹出グリル(43)を通じて室内へ供給される。
【0081】
室内熱交換器(31)で蒸発した冷媒は、ガス配管(35)、ガス側連絡配管(13)を順に流れ、圧縮機(21)に吸入され、再び圧縮される。
【0082】
〈暖房運転〉
暖房運転では、四方切換弁(24)が第2状態(図1の実線で示す状態)となり、圧縮機(21)、室外ファン(25)、室内ファン(33)が作動する。室外膨張弁(23)は所定開度に調節される。暖房運転では、圧縮機(21)で圧縮された冷媒が、ガス側連絡配管(13)、ガス配管(35)を順に流れ、室内熱交換器(31)を流れる。
【0083】
室内ユニット(30)では、室内空気が、吸込グリル(42)、下部空間(45)、中間空間(47)、上部空間(46)を順に流れ、室内熱交換器(31)を通過する。室内熱交換器(31)では、冷媒が室内空気へ放熱して凝縮する。この結果、室内空気が加熱される。室内熱交換器(31)で加熱された空気は、吹出グリル(43)を通じて室内へ供給される。
【0084】
室内熱交換器(31)で凝縮した冷媒は、液配管(34)、液側連絡配管(12)を順に流れ、室外膨張弁(23)で減圧される。減圧された冷媒は、室外熱交換器(22)で蒸発した後、圧縮機(21)に吸入され、再び圧縮される。
【0085】
〈冷媒搬送機構の作用及び効果〉
上述したように、本実施形態の室内ユニット(30)では、ケーシング(40)の下部空間(45)に液側継手部材(51)及びガス側継手部材(52)が配置される。例えば空気調和機(10)の停止時において、各継手部材(51,52)から冷媒が漏洩し、この冷媒がケーシング(40)の底部に溜まり込んでいくと、この冷媒が濃縮される。R32は可燃性の冷媒であるため、このように濃度が高くなった冷媒がケーシング(40)の外部に漏れて何らかの着火源に曝されると、冷媒が発火してしまう虞がある。そこで、本実施形態の室内ユニット(30)には、ケーシング(40)の底部での冷媒の濃縮を防止するために、冷媒搬送機構(60)を設けている。
【0086】
具体的に、空気調和機(10)の停止時において、例えば液側継手部材(51)から冷媒が漏洩したとする。漏洩した冷媒は、液側カバー部材(62)の液側収容空間(72)に流出して貯留される。冷媒の漏洩に起因して液側収容空間(72)の内圧が上昇すると、液側収容空間(72)の冷媒は液側冷媒案内管(71)に流入し、液側冷媒案内管(71)の内部を上方へと流れてく。この冷媒は、液側冷媒案内管(71)より上部空間(46)に流出する。このように、冷媒を上部空間(46)へ流出させることで、冷媒の拡散を促進でき、冷媒がケーシング(40)の底部に溜まり込んでいくことを防止できる。
【0087】
また、液側冷媒案内管(71)から流出した冷媒は、ドレンパン(44)の内部に溜め込まれる。これにより、冷媒がケーシング(40)の底部まで流出してしまうことを確実に防止できる。また、ドレンパン(44)では、室内熱交換器(31)の近傍から発生した凝縮水により、冷媒を希釈することもできる。
【0088】
ドレンパン(44)に流出した冷媒は、排水口(44b)に流入する。液側冷媒案内管(71)の流出端(71b)は、排水口(44b)の近傍に位置するため、この冷媒を速やか且つ確実に排水口(44b)へ導入することができる。排水口(44b)に流入した冷媒は、排水管(44c)を経由して室外へ排出される。この結果、ケーシング(40)の底部での冷媒の濃縮を確実に防止できる。
【0089】
更に、ドレンパン(44)の上側から下部空間(45)へ冷媒が流出し、この冷媒がケーシング(40)の底部に流れ落ちたとしても、上部空間(46)から下部空間(45)へ冷媒が流れる間に冷媒の拡散が促される。従って、各継手部材(51,52)からケーシング(40)の底部に向かって直接的に冷媒が流出する場合と比較して、底部に溜まり込む冷媒の濃度を低減できる。
【0090】
同様に、空気調和機(10)の停止時において、例えばガス側継手部材(52)から冷媒が漏洩したとする。漏洩した冷媒は、ガス側カバー部材(82)のガス側収容空間(92)に流出して貯留される。冷媒の漏洩に起因してガス側収容空間(92)の内圧が上昇すると、ガス側収容空間(92)の冷媒はガス側冷媒案内管(91)に流入し、ガス側冷媒案内管(91)の内部を上方へと流れていく。この冷媒は、ガス側冷媒案内管(91)より上部空間(46)のドレンパン(44)の内部へ流出する。これにより、冷媒の拡散を促すとともに、冷媒がケーシング(40)の底部に溜まってしまうのを確実に防止できる。
【0091】
また、本実施形態では、液側継手部材(51)を収容する液側カバー部材(62)と、ガス側継手部材(52)を収容するガス側カバー部材(82)とを1つずつ設けている。このため、液配管(34)や液側連絡配管(12)を流れる液冷媒と、ガス配管(35)やガス側連絡配管(13)を流れるガス冷媒とが互いに熱交換してしまうことを確実に防止できる。
【0092】
また、各継手部材(51,52)に対応してそれぞれカバー部材(62,82)を設けることで、各収容空間(72,92)の容積を比較的小さくできる。これにより、収容空間(72,92)の内圧の上昇を促すことができ、収容空間(72,92)の冷媒を確実に上部空間(46)へ導くことができる。
【0093】
《実施形態の変形例》
上記実施形態については、以下のような変形例の構成としてもよい。
【0094】
〈変形例1〉
図8に示す変形例1は、上記実施形態と冷媒搬送機構(60)の構成が異なっている。
【0095】
まず、変形例1の冷媒搬送機構(60)は、1つのカバー部材(95)と1本の冷媒案内管(96)とを有している。カバー部材(95)は、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)との双方を収容する1つの収容空間(97)を有している。冷媒案内管(96)は、収容空間(97)と上部空間(46)とを連通させるように構成される。
【0096】
具体的に、冷媒案内管(96)の流入端(96a)は、収容空間(97)の内部に位置し、冷媒案内管(96)の流出端(96b)は、上部空間(46)におけるドレンパン(44)の上側であって、ドレンパン(44)の排水口(44b)の近傍に位置している。
【0097】
変形例1では、冷媒案内管(96)とガス配管(35)とが同種の金属材料(例えば銅材料)で構成される。そして、冷媒案内管(96)の端部は、ガス配管(35)の外周面にろう付けによって固定される。つまり、変形例1では、冷媒案内管(63)とガス配管(35)とが一体的なユニットを構成している。
【0098】
変形例1では、冷媒案内管(96)と一体となったガス配管(35)とガス側連絡配管(13)とをガス側継手部材(52)で連結し、液配管(34)と液側連絡配管(12)とを液側継手部材(51)で連結した後、各継手部材(51,52)及び冷媒案内管(96)の端部をカバー部材(95)の内部に収容する。これにより、カバー部材(95)の収容空間(97)に各継手部材(51,52)を容易に収容でき、且つ冷媒案内管(96)の流入端(96a)を収容空間(97)の内部に位置させることができる。
【0099】
変形例1では、液側継手部材(51)から漏洩した冷媒と、ガス側継手部材(52)から漏洩した冷媒との双方が同じカバー部材(95)の収容空間(97)に貯留される。この冷媒は、冷媒案内管(96)を経由して上部空間(46)におけるドレンパン(44)の上側に導かれる。この結果、上記実施形態と同様、冷媒の拡散を促すとともに、冷媒がケーシング(40)の底部に溜まり込んでしまうのを確実に防止できる。
【0100】
また、変形例1では、2つの継手部材(51,52)に対して1つのカバー部材(95)と1つの冷媒案内管(96)とを用いているため、部品点数の削減を図ることができる。
【0101】
なお、この変形例1において、冷媒案内管(96)と液配管(34)とが同種の金属材料(例えば銅材料)で構成し、冷媒案内管(96)の端部を液配管(34)の外周面にろう付けによって固定してもよい。
【0102】
〈変形例2〉
図9に示す変形例2は、上記実施形態と冷媒搬送機構(60)の構成が異なっている。
【0103】
具体的に、変形例2の冷媒搬送機構(60)は、変形例1と同様、1つのカバー部材(95)と1本の冷媒案内管(96)とを有している。変形例2では、カバー部材(95)が変形例1と比較して縦長に構成され、ドレンパン(44)の近傍まで延びている。変形例2の冷媒案内管(96)は、カバー部材(95)の上壁部(95a)に接続され、この上壁部(95a)に冷媒案内管(96)の流入端(96a)が開口している。
【0104】
変形例2においても、各継手部材(51,52)から漏洩した冷媒がカバー部材(95)に貯留され、収容空間(97)の内圧の上昇に起因して冷媒が冷媒案内管(96)に流入する。この冷媒は、冷媒案内管(96)を流れ、上部空間(46)においてドレンパン(44)の上側に流出する。この結果、変形例2においても、冷媒がケーシング(40)の底部に溜まってしまうことを確実に回避できる。
【0105】
また、変形例2では、冷媒案内管(96)をカバー部材(85)の内部まで延出させる構造となっていないため、冷媒搬送機構(60)の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0106】
《その他の実施形態》
上記実施形態、及び各変形例については、以下の構成としてもよい。
【0107】
上記実施形態の各カバー部材(62,82,95)を断熱性材料で構成してもよい。これにより、各カバー部材(62,82,95)が各配管(12,13,34,35)の周囲を覆う断熱材を兼用し、各配管(12,13,34,35)を流れる冷媒の熱ロスを低減できる。
【0108】
上記実施形態の冷媒案内管(96)は、例えば銅管等の金属材料で構成されていてもよいし、樹脂性のビニールチューブ等であってもよい。
【0109】
上記実施形態は、室内ファン(33)が配置される下部空間(45)と、室内熱交換器(31)が配置される上部空間(46)とを仕切る仕切部がドレンパン(44)によって構成されている。しかしながら、これに限らず、単なる仕切用の部材によって上部空間(46)と下部空間(45)とを仕切るようにしてもよい。この構成においても、各継手部材(51,52)から漏洩した冷媒を上部空間(46)へ導くことで、ケーシング(40)の底部に高濃度の冷媒が溜まり込むことを防止できる。
【0110】
上記実施形態や、各変形例では、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)との双方において、冷媒搬送機構(60)を適用している。しかし、液側継手部材(51)とガス側継手部材(52)のうちの一方のみに冷媒搬送機構(60)を適用してもよい。
【0111】
また、冷媒回路(11)に充填される冷媒は、R32に限られず、可燃性の冷媒であれば他の冷媒を用いるようにしてもよい。
【0112】
また、変形例1や2に係るカバー部材(95)や冷媒案内管(96)を各継手部材(51,52)に対応させて1つずつ設けるようにしてもよい。
【0113】
上記実施形態では、下部空間(45)において、継手部材(51,52)が室内ファン(33)の前側に配置されている。しかしながら、継手部材(51,52)を室内ファン(33)の後側(裏側)に配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したように、本発明は、空気調和機の床置式室内ユニットについて有用である。
【符号の説明】
【0115】
10 空気調和機
12 液側連絡配管(連絡配管)
13 ガス側連絡配管(連絡配管)
30 室内ユニット(床置式室内ユニット)
31 室内熱交換器(熱交換器)
32 室内配管
33 室内ファン(ファン)
40 ケーシング
44 ドレンパン(仕切部)
45 下部空間
46 上部空間
51 液側継手部材(継手部材)
52 ガス側継手部材(継手部材)
60 冷媒搬送機構
62 液側カバー部材(カバー部材)
71 液側冷媒案内管(冷媒案内管)
72 液側収容空間
82 ガス側カバー部材(カバー部材)
91 ガス側冷媒案内管(冷媒案内管)
92 ガス側収容空間
95 カバー部材
96 冷媒案内管
97 収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9