特許第6398375号(P6398375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398375通信装置、および通信方法、ならびにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398375
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】通信装置、および通信方法、ならびにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20180920BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20180920BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20180920BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20180920BHJP
【FI】
   H04W24/02
   H04W88/02
   H04M1/00 V
   H04W84/10 110
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-133535(P2014-133535)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-12822(P2016-12822A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 宗隆
【審査官】 望月 章俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−98869(JP,A)
【文献】 特開2004−282485(JP,A)
【文献】 特開2012−28983(JP,A)
【文献】 特表2014−514866(JP,A)
【文献】 特表2014−507103(JP,A)
【文献】 特開2013−21475(JP,A)
【文献】 特開2011−130224(JP,A)
【文献】 特開2010−97340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00−H04W99/00
H04B7/24−H04B7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定する判定手段と、
前記無線機器との無線干渉を回避する無線干渉回避手段と、を備え、
前記無線干渉回避手段は、
前記判定手段が、当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されていると判定した場合、前記無線機器との無線干渉を回避するように制御することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記無線機器の加速度を取得する加速度取得手段と、
当該通信装置の角速度と加速度とを取得する挙動取得手段と、を備え、
前記加速度取得手段が取得した前記無線機器の加速度と、前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度と加速度とに基づいて、前記無線機器と当該通信装置それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記判定手段は、
前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度が一定の周波数成分を持たない場合で、かつ、前記加速度取得手段が取得した前記無線機器の加速度と前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の加速度が同位相の周波数成分を持つ場合は、前記無線機器と当該通信装置それぞれが、同じ手に保持されていると判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
当該通信装置の傾きを取得する傾き取得手段と、
前記判定手段が、前記無線機器と当該通信装置それぞれが、同じ手に保持されていると判定した場合、前記傾き取得手段が取得した当該通信装置の傾きを記憶する傾き記憶手段と、を備え、
前記判定手段は、
前記傾き取得手段が取得した当該通信装置の傾きと前記傾き記憶手段に記憶されている過去の当該通信装置の傾きとが一致する場合、前記無線機器と当該通信装置それぞれが、同じ手に保持されていると判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記判定手段は、
前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度が一定の周波数成分を持つ場合は、前記無線機器と当該通信装置それぞれが、同じ手に保持されていないと判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項6】
当該通信装置と異なる他装置との通信機能を有する前記無線機器が前記他装置と通信中か否かの情報を取得する通信中情報取得手段を備え、
前記判定手段は、
前記通信中情報取得手段が取得した前記情報が、前記無線機器が前記他装置と通信中であった場合、当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置のデータ通信を連続送信と間欠送信のいずれか一方に切り換える送信駆動切り換え手段を備え、
当該通信装置から前記無線機器にデータ送信を行っている場合は、前記送信駆動切り換え手段が当該通信装置のデータ送信を前記間欠送信に切り換え、前記無線機器と当該通信装置の無線干渉を回避するように制御することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置から前記無線機器へのデータ送信のデータ容量が所定の容量より少ない場合、前記間欠送信のインターバルを長く設定することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置のデータ送信出力を制御する送信出力制御手段を備え、
当該通信装置から前記無線機器へのデータ送信のデータ容量が所定の容量より多い場合、前記送信出力制御手段が前記データ送信出力を下げるように制御することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置と前記無線機器間の通信速度を検出する通信速度検出手段を備え、
前記送信出力制御手段が前記データ送信出力を下げて前記通信速度が所定の速度より遅くなった場合、前記データ送信出力を元のデータ送信出力に戻して前記間欠送信のインターバルを長く設定することを特徴とする請求項9に記載の通信装置。
【請求項11】
前記保持は、装着、又は、手に持つ、ことであることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置の通信方法であって、
当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップが、当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されていると判定した場合に前記無線機器との無線干渉を回避するように制御する無線干渉回避ステップと、を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項13】
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置のプログラムであって、
当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定する判定機能と、
前記判定機能が、当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されていると判定した場合に前記無線機器との無線干渉を回避するように制御する無線干渉回避機能と、を実現させることを特徴とする通信装置のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、および通信方法、ならびにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電子機器の小型化、高機能化が進み、4Gの通信規格、Bluetooth(登録商標)、あるいは無線LAN(Local Area Network)等、多くの無線通信機能を備えたスマートフォン等が出現している。しかしながら、その反面、携帯電子機器の中に多くの無線通信機能を集約することで、それぞれの無線がお互いに干渉しあい、結果としてノイズが混入し、あるいは受信感度が低下するといった弊害があった。
【0003】
このため、例えば、特許文献1に、無線の干渉の度合いを判定する回路(ハードウエア)を別途設け、その干渉の度合いによって通信チャンネルを切り換えて高い通信品質を提供する技術が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−273799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に紹介された技術によれば、新たな回路が追加されるため、コスト、及び携帯電子機器の小型化の観点から好ましくない。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、無線の干渉の度合いを判定する回路を付加することなく無線干渉を回避することができる、通信装置、および通信方法、ならびにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信装置は、
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置であって、
当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されているか否かを判定する判定手段と、
前記無線機器との無線干渉を回避する無線干渉回避手段と、を備え、
前記無線干渉回避手段は、
前記判定手段が、当該通信装置と前記無線機器それぞれが、同じ手に保持されていると判定した場合、前記無線機器との無線干渉を回避するように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無線の干渉の度合いを判定する回路を付加することなく無線干渉を回避することができる、通信装置、および通信方法、ならびにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る通信装置を含む無線システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る通信装置の基本処理手順を示すフローチャートである。
図3図2の持ち手判定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
図4】持ち手判定処理を、加速度および角速度波形で示した処理概念図である。
図5図2の無線干渉回避処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
図6】無線干渉回避処理を送信電力波形で示した処理概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、単に、本実施形態という)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号または符号を付している。
【0013】
(実施形態の構成)
図1は、本実施形態に係る通信装置を含む無線システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示す無線システム1は、スマートフォン等の無線機器12(以下、単に、デバイスAともいう)と、腕時計型携帯端末である通信装置11(以下、単に、デバイスBともいう)とを含む。
デバイスBは、手首に装着されるウェアラブルデバイスであり、時計機能の他に、例えば、ユーザの歩行数や歩行距離、カロリー計算等の演算処理やこれらデータの無線通信も可能であり、デバイスAとBluetooth(登録商標)等、近距離無線通信により連携することで、デバイスAの補助機器としての利用も可能である。
ここでは、デバイスBの電波がデバイスAの通話に対して干渉する場合を例示して説明する。
【0014】
デバイスA(無線機器12)は、制御部120と、センサ部121と、近距離無線通信部122と、通話用無線通信部123と、により構成される。制御部120は、センサ部121、近距離無線通信部122、通話用無線通信部123の制御を行ない、デバイスB(通信装置11)と通信を行う他、スマートフォンが持つ、通話、Web(World Wide Web)閲覧、メール等の通信機能などを実現する。
【0015】
センサ部121は、デバイスA(無線機器12)の角速度、加速度、傾き等を検出する、例えば、加速度センサ、ジャイロ、地磁気センサ等である。近距離無線通信部122は、デバイスBとの間でBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行う通信アダプタである。通話用無線通信部123は、複数の通信チャネルを捕捉し、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)等の通信プロトコルにしたがい電気事業者の通信網に接続される図示省略した基地局との間で無線通信を行う。
【0016】
デバイスB(通信装置11)は、制御部110と、センサ部111と、近距離無線通信部112と、により構成される。センサ部111は、デバイスB(通信装置11)の角速度、加速度、傾き等を検出する、例えば、ジャイロ、加速度センサ(挙動取得手段)、地磁気センサ(傾き取得手段)等である。近距離無線通信部112は、デバイスA(無線機器12)との間でBluetooth(登録商標)等による近距離無線通信を行う通信アダプタである。
【0017】
デバイスB(通信装置11)の制御部110は、デバイスA(無線機器12)が所定の距離に近づいているか否かを判定する「近距離判定手段」として機能する。
制御部110は、デバイスBとデバイスAが同じ持ち手にあると判定した場合、デバイスAがデバイスBに近づいていると判定する。
制御部110は、デバイスAのセンサ部121が取得したデバイスAの加速度を無線通信によって取得し、この取得したデバイスAの加速度と、デバイスBのセンサ部111により取得されるデバイスBの角速度と加速度とに基づいて、デバイスAとデバイスBとの持ち手を判定してもよい。
すなわち、デバイスAとデバイスBでセンサデータを共有することにより、デバイスAがデバイスBに近づいているか否かを判定する。
【0018】
また、制御部110は、デバイスBの角速度が一定の周波数成分を持たない場合で、かつ、デバイスAの加速度とデバイスBの加速度が同位相の周波数成分を持つ場合は、デバイスAとデバイスBが同じ持ち手であると判定してもよい。
さらに、制御部110は、デバイスAとデバイスBが同じ持ち手であると判定した場合、センサ部111が取得したデバイスBの傾きを記憶し、センサ部111が取得したデバイスBの傾きと、記憶されている過去のデバイスBの傾きとが一致する場合、デバイスAとデバイスBが同じ持ち手であると判定してもよい。
【0019】
制御部110は、センサ部111が取得したデバイスBの角速度が一定の周波数成分を持つ場合は、デバイスAとデバイスBが違う持ち手であると判定する。
【0020】
なお、制御部110は、デバイスB(通信装置11)と異なる他装置との通信機能を有するデバイスA(無線機器12)が他装置と通信中か否かの情報を取得し、他装置と通信中であった場合、デバイスAとデバイスBが所定の距離より近づいているか否を判定してもよい。
このとき、制御部110は、デバイスBと異なる他装置との通信機能を有するデバイスAが、他装置と通信中か否かの情報を取得する「通信中情報取得手段」として機能する。
【0021】
制御部110は、デバイスAが所定の距離よりも近付いていると判定した場合、デバイスAとの無線干渉を回避するように制御する「無線干渉回避手段」としても機能する。具体的に、制御部110は、デバイスBからデバイスAにデータ送信(データ通信)を行っている場合は、デバイスBのデータ送信(データ通信)を間欠送信に切り換え、デバイスAとデバイスBの無線干渉を回避するように制御する。このとき、制御部110は、デバイスBのデータ送信(データ通信)を連続送信と間欠送信のいずれか一方に切り換える「送信駆動切り換え手段」として機能する。
【0022】
制御部110は、デバイスBからデバイスAへのデータ送信(データ通信)のデータ容量が所定の容量より少ない場合、間欠送信のインターバルを長く設定してもよい。また、制御部110は、デバイスBからデバイスAへのデータ送信(データ通信)のデータ容量が所定の容量より多い場合、データ送信出力を下げるように制御してもよい。このとき、制御部110は、デバイスBのデータ送信出力を制御する「送信出力制御手段」として機能する。
【0023】
制御部110は、デバイスBのデータ送信出力を下げて通信速度が所定の速度より遅くなった場合、データ送信出力を元のデータ送信出力に戻して間欠送信のインターバルを長く設定してもよい。このとき、制御部110は、デバイスBとデバイスA間の通信速度を検出する「通信速度検出手段」として機能する。
【0024】
(実施形態の動作)
以下、本実施形態に係る通信装置11(デバイスB)の動作について、図2以降を参照しながら詳細に説明を行う。
【0025】
まず、図2のフローチャートを参照して本実施形態に係る通信装置11(デバイスB)の基本処理動作から説明する。
本実施形態に係る通信装置11(デバイスB)は、デバイスA,B間で通信状態やセンサデータを共有することが前提である。このため、例えば、デバイスAが通信を開始するタイミングやデバイスA若しくはデバイスBが、他方のデバイス(デバイスB若しくはデバイスA)に対してリンクを開始するタイミングなどを起点としてフローが開始される。
【0026】
ここでは、デバイスBがマスタデバイスとして動作するものとする。デバイスBの制御部110は、まず、デバイスBとデバイスAとの間で近距離無線通信のリンクが確立している状態にあるか否かを判定する(ステップS11)。
ここで、近距離無線通信リンクが確立されていると判定されると(ステップS11“YES”)、制御部110は、デバイスAが通話中か否かを判定する(ステップS12)。
近距離無線通信リンクが確立されていないと判定された場合は(ステップS11“NO”)、処理を終了する。
【0027】
デバイスAとデバイスBが無線干渉を起こしやすい状態にあることは、両デバイスA,Bが持つそれぞれのセンサ部111,121の出力を基にしたデバイス間距離の推定と、デバイスAが通話状態にあるか否かにより判定が可能である。
【0028】
具体的には、デバイスAが通話状態にあれば(ステップS12“YES”)、デバイスAは、左右どちらかの手の中に位置する可能性が非常に高く、一方、デバイスBは、その特性(腕時計型)からして腕に装着されていることが想定されるので、デバイスAが通話状態のときには、デバイスAとデバイスBとが同じ手、若しくは逆の手にあることが想定される。
【0029】
そして、両デバイスA,Bを同じ手に持っている場合は、「デバイス間距離が非常に近く無線干渉を起こしやすい」、一方、両デバイスA,Bを違う手に持っている場合は、「デバイス間距離が離れているので無線干渉を起こしにくい」という2つのケースに分類することが出来る。
このため、制御部110は、詳細を後述する持ち手判定処理を実行する(ステップS13)。
【0030】
ここで、デバイスA,Bが同じ持ち手にあれば(ステップS14“YES”)、無線干渉を回避するために、例えば、制御部110は、デバイスBの送信出力を下げるか、送信インターバルを変更する等、詳細を後述する無線干渉回避処理を実行する(ステップS15)。
【0031】
一方、ステップS12でデバイスAが通話中でない場合(ステップS12“NO”)、あるいはステップS14でデバイスA,Bが同じ持ち手にないと判定された場合(ステップS14“NO”)、制御部110は、デバイスBの送信出力、あるいは送信インターバルが初期値(デフォルト値)になっているか否かを判定する(ステップS16)。ここで、初期値になっていなければ(ステップS16“NO”)、初期値に戻した後(ステップS17)、ステップS11に分岐する。
また、初期値になっていれば(ステップS16“YES”)、そのままステップS11に分岐する。
上記したステップS16,S17の処理は、無線干渉回避処理で変更される送信出力、あるいは送信インターバルを無線干渉回避処理実行前の状態に戻すための措置である。
【0032】
このようにすることで、デバイスAとデバイスBとが通信リンク状態でなくなるまでの間に、デバイスAの通信が終了した場合やデバイスAの持ち手がかわりデバイスAとデバイスBとの持ち手が同じでなくなった場合にデバイスBは初期値の状態でデバイスAとの通信リンクを実行することができる。
なお、図2には記載していないが、デバイスAとデバイスBとの通信リンク状態が解除され、ループを終了するときにもデバイスBの送信出力及びインターバルは、初期値の状態に戻す処理をする。
【0033】
また、上記では、デバイスBをマスタデバイスとして、デバイスBの制御部110が各判定の実行や各処理の実行する指示し、実行する場合を示したが、デバイスAをマスタデバイスとして、デバイスAの制御部120が各判定の実行や各処理の実行をデバイスBに対して指示し、その指示に従ってデバイスBの制御部110が各判定や各処理を実行する形態でもよい。
【0034】
次に、持ち手判定処理(図2のステップS13)及び無線干渉回避処理(図2のステップS15)について図3から図6を参照しながら、順次詳細に説明する。
【0035】
(持ち手判定処理)
図3は、持ち手判定処理(図2のステップS13)の詳細を示すフローチャートである。
図3において、制御部110は、デバイスBのセンサ部111から出力される角速度に基づき、角速度が一定の周波数成分を持つか否かを判定する(ステップS131)。
【0036】
ここで、図4(a)にセンサ部111,121で測定される角速度波形を示す。
図4(a)に示すようにデバイスBの角速度が一定の周波数成分を持つ場合、デバイスBは振られている状態にあると考えられる。
通常、通話姿勢でデバイスAを持っている側の手は歩行時に腕振りを行わないことを考えると、デバイスBの角速度が一定の周波数成分を持つ場合、デバイスAを持っているのとは反対の歩行しながら腕振りが行われる腕の手首にデバイスBが装着されていると考えられる。
したがって、角速度が一定の周波数成分を持つ場合(ステップS131“NO”)、両デバイスA,Bは、違う持ち手にあると判定する(ステップS132)。
【0037】
一方、角速度が一定の周波数成分を持たない場合(ステップS131“YES”)、デバイスBが手首に装着されているとすると、デバイスAとデバイスBとは同じ持ち手である可能性が高いが、デバイスBが仮にバッグ等に収納されているような場合もデバイスBは一定の周波数成分を持たない可能性があるため、これだけでは、必ずしもデバイスAとデバイスBとが同じ持ち手にあるとは言えない。
そこで、制御部110は、更に、センサ部111、121により出力される両デバイスA,Bの加速度出力に基づき、両デバイスA,Bの加速度出力が同位相の周波数成分を持つかを判定する(ステップS133)。
【0038】
ここで、図4(b)にセンサ部111、121で測定される加速度の波形を示す。
図4(b)に示すように、一定の周波数成分を有し、その位相が、デバイスAとデバイスBとで一致している場合、これらデバイスAのセンサ部121とデバイスBのセンサ部111とは非常に近い場所の加速度を測定していると考えられる。
つまり、手の中にデバイスAがあり、そのデバイスAを持っている手の腕の手首にデバイスBが装着されていると考えられる。
したがって、制御部110は、両デバイスA,Bの加速度が同じ位相の周波数成分を持つ場合(ステップS133“YES”)、両デバイスA,Bは、同じ持ち手にあると判定する(ステップS135)。
【0039】
なお、過去の通話時に同じ持ち手であった時のデバイスBの姿勢データ(傾き)をデバイスBの記憶部に記憶しておき、デバイスBのセンサ部111の現在の姿勢データ(傾き)が記憶部に記憶している過去の姿勢データ(傾き)と一致するかを、さらに判定することで(ステップS134)、持ち手判定の精度を高めることができる。
この姿勢データ(傾き)は、センサ部111に設けられる地磁気センサから取得することができる。
また、ステップS134の判定は、過去の通話時に同じ持ち手であった時のデバイスAの姿勢データ(傾き)とデバイスBの姿勢データ(傾き)の両方の姿勢データ(傾き)を記憶部に記憶しておき、デバイスAのセンサ部121及びデバイスBのセンサ部111から得られる現在のデバイスAとデバイスBの姿勢データ(傾き)が共に過去の姿勢データ(傾き)と一致するかを判定するものとしてもよい。
【0040】
そして、過去の同じ持ち手であった時の姿勢データ(傾き)に近い姿勢データ(傾き)であれば(ステップS134“YES”)、両デバイスA,Bは、同じ持ち手にあると判定し(ステップS135)、過去の同じ持ち手であった時の姿勢データ(傾き)と異なる不一致判定の場合(ステップS134“NO”)、違う持ち手にあると判定する(ステップS132)。
以上説明した持ち手判定処理の後は、図2の基本処理動作に復帰(RTN)する。
【0041】
なお、図3のフローチャートでは、ステップS133の後にステップS134を実施するようになっているが、この順序は逆であっても構わない。使用しているセンサの精度(信号対雑音比)等を考慮して判定の順番を決めればよい。
また、ステップS133とステップS134のどちらかの判定だけで十分に持ち手判定の精度が得られる場合は、どちらか一方の判定を省略してもよい。
【0042】
(無線干渉回避処理)
図5は、無線干渉回避処理(図2のステップS15)の詳細を示すフローチャートである。
上記した持ち手判定処理でデバイスA,Bともに同じ持ち手であると判定された場合、制御部110は、通話に対する無線干渉を回避するために無線干渉回避処理を実行する。
【0043】
図5によれば、制御部110は、まず、デバイスBからデータが送信中であるか否かを判定する。制御部110は、デバイスBがデータ送信(データ通信)を行っていない場合(ステップS151“No”)、デバイスAとデバイスBとの間で無線干渉の恐れがないことから、処理を終了し、図2に示す基本処理動作に復帰する(RTN)。
【0044】
一方、送信中であると判定されると(ステップS151“YES”)、制御部110は、デバイスBからのデータ送信(データ通信)を、連続送信から間欠送信に切り換える(ステップS152)。
この間欠送信に切り換える状態の一例を図6(a)に示す。図6(a)は、横軸を時間軸とし、縦軸に送信電力を目盛ったグラフであり、図中、Aは連続送信の状態であった連続送信区間を示し、Bは間欠送信に切り換えた後の間欠送信区間を示している。このように、連続送信のときの送信電力と同じ送信電力であっても、データの送信を間欠的に行うことで平均電力を下げることができ、無線干渉を回避することができる。
【0045】
説明を図5に戻す。デバイスBからのデータ送信(データ通信)を間欠送信に切り換えた後、制御部110は、更に、デバイスBが大容量データを送信中であるのか否かを判定する(ステップS153)。
【0046】
具体的には、適当な閾値を設けておき、デバイスBが送信しているデータのデータ容量が閾値を超えるか否かによって、大容量データの送信中か否かを判定し、大容量データ送信中でないと判定された場合(ステップS153“NO”)、制御部110は、さらに、間欠送信の間欠インターバル(以下、単に、インターバルともいう)を長く設定(ステップS154)することにより、図6(b)に示すように、さらに、データ送信(データ通信)の平均電力を下げ無線干渉がさらに回避できる状態にした後、図2に示す基本処理動作に復帰する(RTN)。
【0047】
一方、大容量データ送信中であると判定された場合(ステップS153“YES”)、間欠送信を行うとデバイスBのデータ送信(データ通信)が終了するまでに必要な時間が著しく長くなることが予想されるため、制御部110は、インターバルを長くする処理(S154)の代わりに、デバイスBの送信電力自体を下げることで平均電力を下げ無線干渉を回避する制御を行う(ステップS155)。
【0048】
但し、この場合、電波到達距離が低下してデバイスA側での受信感度が悪くなり、例えば、BER(Bit Error Rate)の上昇のために通信速度が低下する可能性がある。
そこで、制御部110は、通信速度の低下がないかを判定し(ステップS156)、通信速度の低下があれば(ステップS156“NO”)、送信出力をステップS155で下げる前の状態に戻すとともに代わりに間欠送信のインターバルを長く設定(ステップS157)することで平均電力を下げ、無線干渉を回避するようにして、図2に示す基本処理動作に復帰する(RTN)。一方、通信速度の低下がない場合は(ステップS156“YES”)、図2に示す基本処理動作に復帰する(RTN)。
【0049】
なお、通信速度の低下の有無の判定は、BER(Bit Error Rate)自体を判定基準にして、BER(Bit Error Rate)が所定の閾値よりも増加している場合、通信速度が低下したと判定するようにしてもよい。
【0050】
上記したように、制御部110は、データ量が少なくリアルタイム性が求められない場合、通信のインターバルを長くし、デバイスBから出力される平均電力を下げる制御を行う。一方、通信データの量が多い場合、あるいは、リアルタイム性が求められる場合、まずは、デバイスBの送信出力を下げる。ここで、通信速度の低下(BERの低下)が起きるようであれば、送信出力を基に戻し、インターバルを長く設定し、平均電力を下げることで終了する。
なお、無線干渉回避処理は、ステップS151でYESの場合、デバイスBからのデータ送信(データ通信)を停止してデバイスAからの通話状態通知のみ通信を行う処理としてもよい。この場合、デバイスBの送信電力がゼロになるので無線干渉を確実に回避することができる。
【0051】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る通信装置11(デバイスB)によれば、制御部110が、通信装置11(デバイスB)と近距離に位置する無線機器12(デバイスA)が所定の距離に近づいているか否かを判定し、無線機器が所定の距離よりも近付いていると判定した場合、無線機器12(デバイスA)との無線干渉を回避するように制御することで、無線の干渉の度合いを判定する回路を付加することなく無線干渉を回避することができる。スマートフォン(デバイスA)や時計型端末のようなウェアラブルデバイス(デバイスB)等は、加速度センサ等を含む各種センサが標準で搭載されていることから、上述で説明してきた処理は、何ら新たな部品や回路を加えることなく、ソフト的に実現することができる。したがって、無線干渉検知のための回路の追加無しに無線干渉を回避することが可能であり、特別な回路の付加が無いため、デバイスBの小型化、低コスト化を実現することができる。
【0052】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またそのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0053】
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0054】
〔付記〕
<請求項1>
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置であって、
前記無線機器が所定の距離に近づいているか否かを判定する近距離判定手段と、
前記無線機器との無線干渉を回避する無線干渉回避手段と、を備え、
前記無線干渉回避手段は、
前記近距離判定手段が、前記無線機器が所定の距離よりも近付いていると判定した場合、前記無線機器との無線干渉を回避するように制御することを特徴とする通信装置。
<請求項2>
前記近距離判定手段は、
当該通信装置と前記無線機器の持ち手を判定する持ち手判定手段を備え、
前記持ち手判定手段が、当該通信装置と前記無線機器が同じ持ち手であると判定した場合、前記無線機器が当該通信装置に近づいていると判定することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
<請求項3>
前記持ち手判定手段は、
前記無線機器の加速度を取得する加速度取得手段と、
当該通信装置の角速度と加速度とを取得する挙動取得手段と、を備え、
前記加速度取得手段が取得した前記無線機器の加速度と、前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度と加速度とに基づいて、前記無線機器と当該通信装置との前記持ち手を判定することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
<請求項4>
前記持ち手判定手段は、
前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度が一定の周波数成分を持たない場合で、かつ、前記加速度取得手段が取得した前記無線機器の加速度と前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の加速度が同位相の周波数成分を持つ場合は、前記無線機器と当該通信装置が同じ持ち手であると判定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
<請求項5>
当該通信装置の傾きを取得する傾き取得手段と、
前記持ち手判定手段が、前記無線機器と当該通信装置が同じ持ち手であると判定した場合、前記傾き取得手段が取得した当該通信装置の傾きを記憶する傾き記憶手段と、を備え、
前記持ち手判定手段は、
前記傾き取得手段が取得した当該通信装置の傾きと前記傾き記憶手段に記憶されている過去の当該通信装置の傾きとが一致する場合、前記無線機器と当該通信装置が同じ持ち手であると判定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
<請求項6>
前記持ち手判定手段は、
前記挙動取得手段が取得した当該通信装置の角速度が一定の周波数成分を持つ場合は、前記無線機器と当該通信装置が違う持ち手であると判定することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
<請求項7>
当該通信装置と異なる他装置との通信機能を有する前記無線機器が前記他装置と通信中か否かの情報を取得する通信中情報取得手段を備え、
前記近距離判定手段は、
前記通信中情報取得手段が取得した前記情報が、前記無線機器が前記他装置と通信中であった場合、前記無線機器と当該通信装置が所定の距離より近づいているか否を判定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
<請求項8>
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置のデータ通信を連続送信と間欠送信のいずれか一方に切り換える送信駆動切り換え手段を備え、
当該通信装置から前記無線機器にデータ送信を行っている場合は、前記送信駆動切り換え手段が当該通信装置のデータ送信を前記間欠送信に切り換え、前記無線機器と当該通信装置の無線干渉を回避するように制御することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通信装置。
<請求項9>
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置から前記無線機器へのデータ送信のデータ容量が所定の容量より少ない場合、前記間欠送信のインターバルを長く設定することを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
<請求項10>
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置のデータ送信出力を制御する送信出力制御手段を備え、
当該通信装置から前記無線機器へのデータ送信のデータ容量が所定の容量より多い場合、前記送信出力制御手段が前記データ送信出力を下げるように制御することを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
<請求項11>
前記無線干渉回避手段は、
当該通信装置と前記無線機器間の通信速度を検出する通信速度検出手段を備え、
前記送信出力制御手段が前記データ送信出力を下げて前記通信速度が所定の速度より遅くなった場合、前記データ送信出力を元のデータ送信出力に戻して前記間欠送信のインターバルを長く設定することを特徴とする請求項10に記載の通信装置。
<請求項12>
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置の通信方法であって、
当該通信装置と近距離に位置する前記無線機器が所定の距離に近づいているか否かを判定する第1のステップと、
前記無線機器が所定の距離よりも近付いていると判定された場合に前記無線機器との無線干渉を回避するように制御する第2のステップと、を含むことを特徴とする通信方法。
<請求項13>
近距離に位置する無線機器と無線通信を行う通信装置のプログラムであって、
当該通信装置と近距離に位置する前記無線機器が所定の距離に近づいているか否かを判定する近距離判定機能と、
前記無線機器が所定の距離よりも近付いていると判定された場合に前記無線機器との無線干渉を回避するように制御する無線干渉回避機能と、を実現させることを特徴とする通信装置のプログラム。
【符号の説明】
【0055】
1 無線システム
11 通信装置(デバイスB)
12 無線機器(デバイスA)
110 制御部
111 センサ部
112 近距離無線通信部
120 制御部
121 センサ部
122 近距離無線通信部
123 通話用無線通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6