特許第6398399号(P6398399)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398399
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20180920BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20180920BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20180920BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H01L21/56 R
   H01L25/04 C
   H01L23/28 B
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-141603(P2014-141603)
(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-73080(P2015-73080A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2017年6月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-185063(P2013-185063)
(32)【優先日】2013年9月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓
(72)【発明者】
【氏名】市村 裕司
(72)【発明者】
【氏名】君島 大輔
【審査官】 加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−270469(JP,A)
【文献】 特開昭54−006772(JP,A)
【文献】 特開2009−302505(JP,A)
【文献】 特表2004−530307(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/115187(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
H01L 23/28
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
離脱用シートを支持板に形成した凹状の穴の内部に配置する工程と、
半導体チップが固着した金属ベース板および外部導出端子を有しエポキシ樹脂で被覆する前のスケルトン状の半導体装置である構造体を、前記金属ベース板の前記半導体チップが固着した面とは反対側の面を上向きにし、かつ前記凹状の穴の内壁に接触しないように前記凹状の穴に配置する工程と、
前記金属ベース板の前記反対側の面および前記外部導出端子の一端を除いて前記構造体を内包するように液状のエポキシ樹脂を前記凹状の穴に注入する工程と、
前記液状のエポキシ樹脂を硬化させ、前記構造体を内包する硬化したエポキシ樹脂とする工程と、
前記硬化したエポキシ樹脂を前記離脱シートが配置された前記凹状の穴から取り出す工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記凹状の穴の立体的な形状が、直方体であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記離脱用シートの形状が、前記凹状の穴に嵌合するように凹状であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記凹状の穴の内壁に前記離脱用シートを嵌合して密着配置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記凹状の穴の内壁に前記離脱用シートを真空密着で配置することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記液状のエポキシ樹脂の粘度が、注入時には50Pa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記離脱用シートの材質が、ふっ素系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記ふっ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、もしくはテトラフルオロエチレン/エチレン共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記離脱用シートと、硬化した前記エポキシ樹脂との密着強度が、10kPa以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記構造体は、絶縁基板の裏面に導電層および表面に導電パターン層を有する導電パターン付絶縁基板と、前記導電層にはんだを介して固着する前記金属ベース板と、前記導電パターン層に固着する前記半導体チップと、前記導電パターン層に固着し、前記導電パターン付絶縁基板と前記金属ベース板を貫通して配置される前記外部導出端子と、前記外部導出端子の外周を被覆する絶縁膜と、前記半導体チップと前記導電パターン層を接続するボンディングワイヤとを有し、
前記液状のエポキシ樹脂を前記凹状の穴に注入する工程は、前記金属ベース板の前記反対側の面および前記外部導出端子の一端を除いて前記構造体を内包するように前記液状のエポキシ樹脂を前記凹状の穴に注入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケースレス構造の半導体モジュールなどの半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、端子ケース61を有する従来の半導体モジュール500の概略的な要部断面図である。この半導体モジュール500はケース有り構造の半導体装置と言える。
【0003】
一般的なIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)パワーモジュールである半導体モジュール500は、IGBTチップおよびダイオードチップなどの半導体チップ57が導電パターン付絶縁基板51上に搭載される。
【0004】
この導電パターン付絶縁基板51はセラミックス52の上下面に金属箔が固着し、下面の金属箔53(導電層)は金属ベース板56にはんだ55aで接合されている。このセラミックス52の上面の金属箔54(導電パターン層)には半導体チップ57がはんだ55bを介して固着し、端子ケース61がこの金属ベース板56の外周部に接着剤を介して固着される。
【0005】
この端子ケース61は外部導出端子58(外部取り出し金属端子)がインサート成型されており、半導体チップ57と外部導出端子58はボンディングワイヤ59aで接続される。その後、端子ケース61内にシリコーンゲル60を充填し、上部を蓋62で閉じることで半導体モジュール500は製作される。この蓋62は端子ケース61と同一の樹脂で形成されている。また、この端子ケース61は、外部導出端子58がインサートされた樹脂製の外枠のことである。
【0006】
また、端子ケース内にシリコーンゲルを充填し、その上にエポキシ樹脂を被せた構造(特許文献2)の半導体モジュールや、端子ケース内にエポキシ樹脂を充填して蓋を被せない構造(非特許文献1および特許文献4など)の半導体モジュールなども発表されている。
【0007】
尚、前記の端子ケース61はポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂で形成されていることが多い。また、セラミックス絶縁基板51の沿面および半導体チップ57を絶縁保護するため、端子ケース61内にはシリコーンゲル60やエポキシ樹脂が充填されている。
【0008】
尚、高温連続動作が要求される、例えば、車載用のIGBTパワーモジュールにおいて、高温連続動作を保証するためには、パワーサイクルの長寿命化が必要である。
【0009】
このパワーサイクルの長寿命化を図るためには、低弾性率のシリコーンゲルよりも高弾性率のエポキシ樹脂の方が有利である。高弾性率であることは、はんだ接合部やボンディングワイヤの接合部などを強固に保持してパワーサイクル中に各部材の線膨張の差から生じる各接合部へ掛かる応力を緩和する作用がある。
【0010】
端子ケースの無いケースレス構造の半導体モジュールの例としては、特許文献1、特許文献2のモールド型構造の半導体モジュールが挙げられる。
【0011】
また、半導体モジュールの封止に、トランスファー成型やコンプレッション成型を用いることが、特許文献1〜特許文献3に記載されている。
【0012】
また、多品種少量のケースレス構造の半導体モジュールの製造にベースプレートおよび
枠体治具を使用する方法が特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3390661号公報(図1
【特許文献2】特開2011−238803号公報(図18
【特許文献3】再公表特許発明第2005/004563号明細書
【特許文献4】特開平6−5742号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】富士電機技報 2012、Vol85,No6、pp.430−434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記の非特許文献1や特許文献4に記載の端子ケース構造の半導体モジュールにおいて、封止用エポキシ樹脂が硬化するとき、端子ケースと高い強度で接着する。
【0016】
端子ケースを例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂で形成したとき、PPS樹脂中のガラス繊維による異方性や結晶化温度(Tg:90〜130℃)がそのまま封止用エポキシ樹脂に影響を与える。
【0017】
その結果、半導体モジュール内に大きな内部応力が発生し、半導体モジュールにおけるパワーサイクルの長寿命化を妨げ、高信頼性化を図ることは困難である。
【0018】
この問題を解決する方法としては、端子ケースを使用しないトランスファー成型やコンプレッション成型により、エポキシ樹脂で半導体チップを封止する方法がある。しかし、このケースレス構造の半導体モジュールの製造方法は、高価な成形装置や金型が必要になり、設備投資に高額な費用が掛かる。そのため、多品種少量の半導体モジュールを製造する場合には多種の高価な金型が必要となり、多品種少量の製造には適さない。
【0019】
また、特許文献1および特許文献2では、半導体モジュールは、ケースレス構造で、ト
ランスファー成型で製造しており、また、特許文献3ではコンプレッション成型で製造している。これらの成型方式では共に、前記したように高価(例えば、数千万円から1億円
程度)な成形装置や金型が必要となり、多品種少量生産には適さない。
【0020】
一方、特許文献2で提案されている方法は、多品種少量の製造には適しているが、部品点数が多く、治具の組み立て・解体・清掃に手番が多く掛かるため、製造コストが増大する。
【0021】
また、特許文献1〜4および非特許文献1には、トランスファー成型やコンプレッション成型を用いずにケースレス構造の半導体モジュールを製造する方法については記載されていない。
【0022】
この発明の目的は、前記の課題に鑑みて、トランスファー成型やコンプレッション成型を用いずに多品種少量の製造ができる高信頼性のケースレス構造の半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記の目的を達成するために、発明によれば、離脱用シートを支持板に形成した凹状の穴の内部に配置する工程と、半導体チップが固着した金属ベース板および外部導出端子を有しエポキシ樹脂で被覆する前のスケルトン状の半導体装置である構造体を、前記金属ベース板の前記半導体チップが固着した面とは反対側の面を上向きにし、かつ前記凹状の穴の内壁に接触しないように前記凹状の穴に配置する工程と、前記金属ベース板の前記反対側の面および前記外部導出端子の一端を除いて前記構造体を内包するように液状のエポキシ樹脂を前記凹状の穴に注入する工程と、前記液状のエポキシ樹脂を硬化させ、前記構造体を内包する硬化したエポキシ樹脂とする工程と、前記硬化したエポキシ樹脂を前記離脱シートが配置された前記凹状の穴から取り出す工程と、を含む製造方法にすることで、凹状の穴に離脱用シートを配置することで、硬化したエポキシ樹脂を凹状の穴からスムーズに取り出すことができる。
【0024】
また、第2の発明によれば、第1の発明において、エポキシ樹脂体の形状が直方体である半導体装置を得るためには、前記凹状の穴の立体的な形状が直方体である必要がある。
【0025】
また、第3の発明によれば、第1の発明において、前記離脱用シートの形状が、前記凹状の穴に嵌合するように凹状であると、離脱用シートの内壁の形状を凹状の穴の形状とほぼ同じにすることができる。そして、離脱用シートは薄いので、エポキシ樹脂体の形状が、凹状の穴の内側の形状とほぼ同じ形状に成形される。
【0026】
また、第4の発明によれば、第1の発明において、前記凹状の穴の内壁に前記離脱用シートを嵌合して密着配置すると凹状の穴の形状と一致させることができる。
【0027】
また、第5の発明によれば、第1の発明において、前記凹状の穴の内壁に前記離脱用シートを真空密着で配置すると凹状の穴に離脱用シートを第4の発明の場合より確実に固定することができる。
【0028】
また、第6の発明によれば、第1の発明において、前記液状のエポキシ樹脂の粘度が、注入時には50Pa・s以下であると複雑な形状の構造体に密着して液状のエポキシ樹脂を注入できて、ボイドの発生を低減できる。
【0029】
また、第7の発明によれば、第1の発明において、前記離脱用シートの材質をふっ素系樹脂にすると、構造体を含むエポキシ樹脂体の離脱をスムーズに行なうことができる。
【0030】
また、第8の発明によれば、第7の発明において、前記ふっ素系樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、もしくはテトラフルオロエチレン/エチレン共重合体であるとよい。
【0031】
また、第9の発明によれば、第1の発明において、前記離脱用シートと、硬化した前記エポキシ樹脂体との密着強度が、10kPa以下であると、離脱用シートから硬化したエポキシ樹脂体をスムーズに離脱できる。
【0032】
また、第10の発明によれば、第1の発明において、前記離脱用シートと前記スケルトン状の半導体装置を構成する金属ベース板とを2kPa以上の圧力で互いに圧接すると金属ベース板の裏面にエポキシ樹脂が付着しないようにできる。
【0033】
また、第11の発明によれば、第1の発明において、前記スケルトン状の半導体装置である構造体を天地を逆転させて、前記スケルトン状の半導体装置を前記凹状の穴の内壁に接触しないようにして前記凹状の穴に配置し、注入された液状のエポキシ樹脂の液面から前記スケルトン状の半導体装置である構造体を構成する金属ベース板の裏面を露出させることで、金属ベース板の裏面にエポキシ樹脂が付着することを防止できる。
【0034】
また、第12の発明によれば、第1〜10の発明のいずれか1つの半導体装置の製造方法を用いて製造されるケースレス構造の半導体装置であって、絶縁基板の裏面に導電層および表面に導電パターン層を有する導電パターン付絶縁基板と、前記導電層にはんだを介して固着する金属ベース板と、前記導電パターン層に固着する半導体チップと、前記導電パターン層に固着する外部導出端子と、前記半導体チップと前記導電パターン層を接続するボンディングワイヤと、前記金属ベース板の裏面と前記外部導出端子の端部を露出するエポキシ樹脂体とを備える構成の半導体装置とする。この半導体装置は金属ベース板の裏面とは反対側のエポキシ樹脂体の表面から外部導出端子が突出した構成となる。
【0035】
また、第13の発明によれば、第1〜9、11の発明のいずれか1つの半導体装置の製造方法を用いて製造されるケースレス構造の半導体装置であって、絶縁基板の裏面に導電層および表面に導電パターン層を有する導電パターン付絶縁基板と、前記導電層にはんだを介して固着する金属ベース板と、前記導電パターン層に固着する半導体チップと、前記導電パターン層に固着し、前記導電パターン付絶縁基板と前記金属ベース板を貫通して配置される外部導出端子と、前記半導体チップと前記導電パターン層を接続するボンディングワイヤと、前記金属ベース板の裏面と前記外部導出端子の端部を露出するエポキシ樹脂体とを備える構成の半導体装置とする。この半導体装置は金属ベース板の裏面から外部導出端子が突出した構成となる。
【発明の効果】
【0036】
この発明により、簡便な成型治具を用いて、多品種少量の製造ができる高信頼性のケースレス構造の半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】この発明に係る第1実施例の半導体装置100の要部断面図である。
図2】この発明に係る第2実施例の半導体装置100の要部製造工程図である。
図3図2に続く、この発明に係る第2実施例の半導体装置100の要部製造工程図である。
図4図3に続く、この発明に係る第2実施例の半導体装置100の要部製造工程図である。
図5図4に続く、この発明に係る第2実施例の半導体装置100の要部製造工程図である。
図6】簡便な成型治具101の構成要素を示す図である。
図7図6とは別の簡便な成型治具102の構成図であり、図7(a)は要部断面図、図7(b)は図7(a)の矢印方向から見た要部平面図である。
図8】この発明に係る第3実施例の半導体装置200の製造方法であり、要部製造工程図である。
図9】この発明に係る第4実施例の半導体装置200の要部断面図である。
図10】端子ケース61を有する従来の半導体モジュール500の概略的な要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】

実施の形態を以下の実施例で説明する。
【第1実施例】
【0039】
図1は、この発明に係る第1実施例の半導体装置100の要部断面図である。この半導体装置100は、実施例2の製造方法で製造されたケースレス構造の半導体装置であり、ここでは半導体モジュールを例として挙げた。ケースレス構造とは前記の端子ケース61に相当する外枠となる樹脂(例えばPPS樹脂)がない構造のことである。
【0040】
この半導体装置100は、セラミックスなどの絶縁基板2の裏面に導電層3および表面に導電パターン層4を有する導電パターン付絶縁基板1と、導電層3にはんだ5aを介して固着する金属ベース板6を備える。また、導電パターン層4にはんだ5bを介して固着する半導体チップ7と、導電パターン層4に固着する外部導出端子8と、半導体チップ7と導電パターン層4を接続するボンディングワイヤ9を備える。また、金属ベース板6の裏面6aと外部導出端子8の端部8aとを露出するエポキシ樹脂体10を備える。図示しないが、取り付け穴がエポキシ樹脂体10の外周部に配置されている。
【0041】
この半導体装置100は、図10で示す樹脂(PPS)で形成された端子ケースが無く、エポキシ樹脂体10が図10で示す端子ケースと表面保護材料であるシリコーンゲルの役
割を兼ねている。
【0042】
また、前記のエポキシ樹脂体10は、金属ベース板6と導電層3を固着するはんだ接合部5a、半導体チップ7と導電パターン層4を固着するはんだ接合部5bおよびボンディングワイヤ9の接合部9aを強固に固定し、各部位の熱膨張差から生じる応力を緩和する。そのため、半導体装置100のパワーサイクル性が向上し、半導体装置100の長寿命化(高信頼性化)を図ることができる。
【第2実施例】
【0043】
図2図5は、この発明に係る第1実施例の半導体装置100の製造方法であり、工程順に示した要部製造工程図である。
【0044】
図2(a)において、複数の凹部の穴12を有する支持板である例えばアルミニウム板11を用意する。このアルミニウム板11が、図6に示す簡便な成型治具101の構成要素となる。この凹状の穴12の立体的な形状は例えば直方体である。この形状が半導体装置100の外形になる。この外形は、直方体に限ることはなく、穴12の形状を適宜変更して、他の外形にすることも可能である。図2(a)はアルミニウム板11の斜視図である。
【0045】
図2(b)において、凹部の穴12の内面12aに離脱用シート13を配置する。この離脱用シート13は、厚さが例えば0.05mm程度であり、凹部の穴12からエポキシ樹脂体10を滑らかに離脱させるために必要となるシートである。
【0046】
この離脱用シート13は、凹状の穴12に嵌合するように予め穴12に合わせた形状に成型しておいてもよい。また、平坦な離脱用シート13を穴12上に配置し、上方から穴12に入る圧接体で押して、この圧接体を穴12に押し込むことで、離脱用シートを穴12の内面12aに密着させてもよい。この離脱用シート13は、エポキシ樹脂体10が滑らかに凹状の穴12から離脱ができるようにするためのシートのことであり、簡便な成型治具101の構成要素となる。図2(b)は、図2(a)のX−X線で切断した要部断面図である。
【0047】
図3(a)において、構造体14は、離脱用シート13が配置された凹部の穴12に配置される。この構造体14は、エポキシ樹脂体10に内包される前のスケルトン状(骨組状態)の半導体装置である。図3(a)は、図2(b)に相当する要部断面図である。
【0048】
図3(b)において、この構造体14の一部を構成する金属ベース板6が、離脱用シート13に向けて圧力を掛けられ、金属ベース板6は離脱用シート13に密着される。圧力の掛け方は、例えば、構造体14の自重、外部導出端子8の頂点8bに配置する錘15、加圧機構による外部導出端子8への加圧などがある。この加圧力が2kPa未満になると金属ベース板6と離脱用シート13の間にエポキシ樹脂が入り込み金属ベース板6の清浄化が必要になり好ましくない。したがって、加圧力は2kPa以上にするのがよい。また、錘15や加圧機構などは簡便な成型治具101の構成要素である。図3(b)は図2(b)に相当する要部断面図である。
【0049】
図4(a)において、凹部の穴12に昇温(例えば30〜60℃程度)して粘度が低下した液状のエポキシ樹脂17を例えばデスペンサー18で注入する。また、成型治具101を加温させて増粘を防ぐのもよい。粘度を小さくすることで、液状のエポキシ樹脂17が構造体14の隙間に入り込みやすくなり、構造体14の付近の液状のエポキシ樹脂17にボイドが発生するのを抑制できる。また、脱泡しながら液状のエポキシ樹脂17を注入することでボイドを大幅に低減できる。液状のエポキシ樹脂17の注入において、液面17aを外部導出端子8の端部8aより下に位置するようにして端部8a
を液状のエポキシ樹脂17から露出させる。凹状の穴12に注入された液状のエポキシ樹脂の昇温硬化は例えば恒温槽19やホットプレートを用いるとよいし、成型治具101に加熱機構を持たせてもよい。また、前記のデスペンサー18は簡便な成型治具101の構成要素である。図4(a)は図2(b)に相当する要部断面図である。
【0050】
図4(b)において、アルミニウム板11を加熱して、液状のエポキシ樹脂17を硬化させ、前記構造体14を内包するエポキシ樹脂体10を形成する。加熱は例えばリフロー炉20を用いるとよい。図4(b)は図2(b)に相当する要部断面図である。
【0051】
図5は、液状のエポキシ樹脂17が硬化した後、アルミニウム板11を室温に戻し、構造体14を内包したエポキシ樹脂体10をアルミニウム板11の凹状の穴12から引き上げ機構21を用いて引き上げる。凹状の穴12に離脱用シート13が配置されているので容易にエポキシ樹脂体10を引き上げることができる。この引き上げ機構21は簡便な成型治具101の構成要素である。また、アルミニウム板11を上下逆さまにすることでエポキシ樹脂体10を取り出すこともできる。この場合は引き上げ機構21は不要となる。このようにして、エポキシ樹脂体10で被覆されたケースレス構造の半導体装置100が出来上がる。図5図2(b)に相当する要部断面図である。
【0052】
尚、エポキシ樹脂体10と共に離脱用シート13も凹状の穴12から引き上げる場合には、その後、離脱用シート13をエポキシ樹脂体10から剥がしてケースレス構造の半導体装置100が出来上がる。
【0053】
図6は、簡便な成型治具101の構成要素を示す図である。この簡便な成型治具101は、凹状の穴12を有するアルミニウム板11(支持板)、離脱用シート13、加圧手段(錘15、自重、外部導出端子への加圧機構など)、引き上げ機構21、デスペンサー18などで構成され、トランスファー成型装置やコンプレッション成型装置に比べると装置コストは極めて安価になる。
【0054】
図7は、別の簡便な成型治具102の構成図であり、図7(a)は要部断面図、図7(b)は図7(a)の矢印方向から見た要部平面図である。図6との違いは、凹状の穴12に接続される微小な通路22が多数配置され、この通路22を介して離脱用シート13を真空引きして離脱用シート13を凹状の穴12の内面12aに密着させる例えば真空ポンプ23が設置されている点である。この真空ポンプ23は簡便な成型治具102の構成要素である。この別の簡便な成型治具102を用いると、図2(b)の工程において、真空引きすることで離脱用シート13が凹状の穴12にしっかり密着し、真空引きを解除すると、離脱用シート13を凹状の穴12から容易に離脱できるようになる。
【0055】
前記したように、液状のエポキシ樹脂17の粘度は、注入時には50Pa・s以下であるとよい。
【0056】
前記の離脱用シート13は、厚みが0.05mm程度のふっ素樹脂フィルムである。
【0057】
この離脱用シート13の材質の具体的な例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリテトラフルオロエチレン/パープルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、およびテトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)などがある。
【0058】
前記の製造方法では、トランスファー成形装置や、コンプレッション成型装置が不要であり、安価で簡便な成型治具101,102を用いて、エポキシ樹脂体10の成型を行なう。エポキシ樹脂体10で前記の構造体14が被覆されているので、はんだ接合部5aやボンディングワイヤの接合部9aの信頼性を向上させることができる。
【0059】
前記の離脱用シート13とエポキシ樹脂体10との接着強度は、エポキシ樹脂体10を凹状の穴12から滑らかに取り出せるように、10kPa以下にするとよい。この接着強度が10kPa超になると離脱用シート13からエポキシ樹脂体10が離型ができなくなる。
【0060】
尚、この離脱用シート13は損傷したり汚れた場合には簡単に新品と交換することができる。
【0061】
また、離脱用シート13とエポキシ樹脂体10との接着強度が10kPa以下の材質なら、離脱用シート13の材質は前記した材質に限ることはない。
【0062】
また、前記の支持板であるアルミニウム板11は液状のエポキシ樹脂17の硬化により変形しない強度にする。液状のエポキシ樹脂17の硬化で変形しなければ、アルミニウム以外の材質でも構わない。
【0063】
また、図示しないが、凹状の穴12の側壁にテーパー(上広く,下狭い)を付けると、凹状の穴12からエポキシ樹脂体10の取り出しが容易になる。
【0064】
また、前記したように、液状のエポキシ樹脂17の粘度は、注入時には50Pa・s(=50000cP)以下にするとよい。50Pa・s超にすると、前記の構造体14の各部に液状のエポキシ樹脂17が入り込み難くなり、ボイドが発生し易くなるので好ましくない。そのため、注入時の粘度を50Pa・s以下で、好ましくは5Pa・s以下にするとよい。また、この粘度を0.1Pa・s以下にするとさらに好ましい。
【0065】
また、前記の液状のエポキシ樹脂17の注入から硬化までの工程中、2kPa以上の圧力で構造体14を構成する金属ベース板6と離脱用シート13とを圧接するとよい。この圧接により、両者の間に隙間16が発生し難くなり、金属ベース板6の裏面6aに液状のエポキシ樹脂17が付着することを減ずることができる。また、付着して硬化したエポキシ樹脂は研削して除去するのが好ましい。
【0066】
また、多品種少量の半導体装置を製造する場合には、前記の凹状の穴12の立体的な形状を変えることで対応できるので、本発明のケースレス構造の半導体装置100の製造方法は、多品種少量の製造に適する。
表1は、半導体装置の成形条件(端子ケースの有無、支持板の材質、離脱用シートの種類)を変えて、離脱用シート13とエポキシ樹脂体10との接着強度、樹脂封止後の金属ベース板6の反り、半導体装置の外観検査、パワーサイクル性について実験した結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
液状のエポキシ樹脂17の硬化は、例えば、第1硬化(100℃1h)工程、第2硬化(140℃1h)工程、第3硬化(180℃1h)工程の3段階をこの順に行なった。また、実験は8条件(実験1〜実験8)で行なった。
【0069】
実験1〜3、実験6〜8は、支持板をアルミニウム板11で行った。
【0070】
実験1〜実験3は、離脱用シート13をPTFE(実験1),PFA(実験2),ETFE(実験3)の条件で行った。
【0071】
実験4は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)ケースを用いた従来方法である。
【0072】
実験5は、アルミニウム板11の代わりにPTFE板(離脱用シートなし)を使用した。
【0073】
実験6は、離脱用シート13なしで実験した。
【0074】
実験7は、離脱用シート13にポリエチレン(PE)を使用した。
【0075】
実験8は、離脱用シート13にポリカーボネート(PC)を使用した。
【0076】
尚、表1には示さないが、実験3の条件で金属ベース板6の押付け圧を1kPaにした場合は隙間16が発生して液状のエポキシ樹脂17が金属ベース板6の裏面に付着したため外観が不良になった。
【0077】
表1において、
(1)実験1〜実験3は、接着強度が10kPa以下であり、反りも少なく、外観も良好であり、パワーサイクルが目標の2000サイクルでも問題なかったため、本発明として採用できる条件である。
(2)実験4,実験5は、パワーサイクルが目標の2000サイクルに達しないため、本発明としては採用できない条件である。
(3)実験6〜実験8は離型しないため外観は不良であり、本発明として採用できない条件である。
【0078】
尚、パワーサイクル試験は金属ベース板6に付着したエポキシ樹脂を削り取って試験を実施した。また、実験4の1000サイクルは、実使用条件では15万サイクル以上に相当するものと推測される。
【0079】
以上の実験から、離脱用シート13としてはPTFE,PFA,ETFEなどのフッ素系樹脂が好ましいことが分かった。また、支持板としてはアルミニウム板11がよく、PTFE板は反りが大きく採用できないことが分かった。さらに、端子ケースありでは反りが大きくなることが確認された。
【第3実施例】
【0080】
図8は、この発明に係る第3実施例の半導体装置200の製造方法であり、要部製造工程図である。第2実施例の半導体装置100の製造方法との違いは、構造体14を逆さにして、液状のエポキシ樹脂17に浸漬させた点である。こうすることで、金属ベース板6の裏面6aに液状のエポキシ樹脂17が付着することが防止される。外部導出端子8cは金属ベース板6、導電パターン付絶縁基板1およびはんだ5を貫通する箇所では絶縁膜25が被覆されている。
【0081】
尚、逆さになった構造体14aは、構造体14aを構成する金属ベース板6を吊り下げ機構24を用いて吊り下げることで位置決めするとよい。
【第4実施例】
【0082】
図9は、この発明に係る第4実施例の半導体装置200の要部断面図である。この半導体装置200は、図8の製造方法で製作した半導体装置であり、ケースレス構造の半導体装置(半導体モジュール)である。外部導出端子8cは絶縁膜25で絶縁されて前記導電層3および金属ベース板6を貫通している。この外部導出端子8cは横方向に出しても構わない。尚、点線で示した外部導出端子8dのように、金属ベース板6を貫通しない構成の場合もある。
【符号の説明】
【0083】
1,51 導電パターン付絶縁基板
2 絶縁基板
3 導電層
4 導電パターン層
5a、5b,5c,55a,55b はんだ接合部

6,56 金属ベース板
7,57 半導体チップ
8,8c,8d,58 外部導出端子
8a 外部導出端子の端部
8b 頂点
9,59a,59b ボンディングワイヤ
9a ボンディングワイヤの接合部
10 エポキシ樹脂体
11 アルミニウム板
12 凹状の穴
12a 内面
13 離脱用シート
14,14a 構造体
15 錘
16 隙間
17 液状のエポキシ樹脂
18 デスペンサー
19 恒温槽
20 リフロー炉
21 引き上げ機構
22 通路
23 真空ポンプ
24 吊り下げ機構
25 絶縁膜
52 セラミックス
53,54 金属箔
60 シリコーンゲル
61 端子ケース
62 蓋
100,200 半導体装置
101,102 成型治具
500 半導体モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10