(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398401
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20180920BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20180920BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20180920BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20180920BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
F01N3/08 GZAB
F01N3/24 R
F01N3/28 301E
F01N3/28 301F
B01D53/36 103Z
B01D53/36 D
B01D53/36 101A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-143487(P2014-143487)
(22)【出願日】2014年7月11日
(65)【公開番号】特開2016-20637(P2016-20637A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】工藤 朗義
(72)【発明者】
【氏名】濱田 治樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】野田 久仁男
(72)【発明者】
【氏名】石井 信貴
(72)【発明者】
【氏名】原 真治
(72)【発明者】
【氏名】長谷山 尊史
(72)【発明者】
【氏名】村田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】越智 直文
(72)【発明者】
【氏名】河合 新一郎
【審査官】
二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−007557(JP,A)
【文献】
特開2005−256632(JP,A)
【文献】
特開2005−288362(JP,A)
【文献】
特開2011−241775(JP,A)
【文献】
特開2012−092675(JP,A)
【文献】
特表2010−516948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/28
B01D 53/94−53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に設けられて未燃炭化水素(HC)を酸化可能な第1酸化触媒と、
前記第1酸化触媒よりも下流側の排気系に設けられて可溶性有機成分(SOF)を酸化可能な第2酸化触媒と、
前記第2酸化触媒よりも下流側の排気系に設けられて尿素水から生成されるアンモニア(NH3)を還元剤として排気中の窒素化合物(NOx)を還元浄化する選択的還元触媒と、
前記選択的還元触媒に流入する排気温度を検出する温度検出手段と、
前記第1酸化触媒に未燃炭化水素(HC)を供給して前記温度検出手段で検出される排気温度を所定の目標温度まで上昇させる昇温制御を所定のインターバル毎に定期的に実行する昇温制御手段と、
n回目(nは1以上の自然数)の昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度のピーク値と目標温度との差に基づいて、当該n回目の昇温制御の次に実行されるn+1回目の昇温制御の目標温度を補正する目標温度補正手段と、を備える
排気浄化システム。
【請求項2】
前記目標温度補正手段は、
n回目の昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度のピーク値が目標温度よりも高かった場合は、当該ピーク値から当該目標温度を減算した値を次に実行されるn+1回目の昇温制御の目標温度から減算する
請求項1に記載の排気浄化システム。
【請求項3】
前記目標温度補正手段は、
n回目の昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度のピーク値が目標温度よりも低かった場合は、当該目標温度から当該ピーク値を減算した値を次に実行されるn+1回目の昇温制御の目標温度に加算する
請求項1又は2に記載の排気浄化システム。
【請求項4】
前記内燃機関の燃料噴射を多段噴射で制御して前記内燃機関から排出される排気中のスート成分を低減させる燃焼制御手段さらに備える
請求項1から3の何れか一項に記載の排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気浄化システムとして、例えば、特許文献1には、排気上流側から順に前段酸化触媒、ディーゼルパティキュレイトフィルタ(以下、DPF)、中段酸化触媒、選択的還元触媒(以下、SCR触媒)、後段酸化触媒を配置した構成が開示されている。
【0003】
特許文献1記載の技術では、排気中の粒子状物質(以下、PM)及び窒素化合物(以下、NOx)を同時に浄化しつつ、排気高温時はバイパス通路に高温排気を導入して中段酸化触媒に吸熱させることで、SCR触媒の熱劣化防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−2283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の技術では、前段酸化触媒と中段酸化触媒との間にDPFを配置し、さらに中段酸化触媒をバイパス通路に配置しているため、構造全体が複雑となり、装置の大型化やコスト上昇等を招く課題がある。
【0006】
また、前段酸化触媒にサルフェートの堆積(サルフェート被毒)が進むと、DPF強制再生時のポスト噴射によって供給された未燃炭化水素(HC)が前段酸化触媒からスリップして中段酸化触媒で反応し、排気温度を過度に上昇させることで、直下流に配置されたSCR触媒の熱劣化を防止できない可能性もある。
【0007】
また、サルフェート被毒以外にも、例えば、酸化触媒の経時的な熱劣化や、排気に流入したエンジンオイル中のリン(P)によって触媒金属が被毒すると、上述と同様のHCスリップによる排気過昇温が生じ、SCR触媒の熱劣化を防止できない可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、酸化触媒に未燃炭化水素(HC)を供給する際の排気過昇温を防止して、SCR触媒の熱劣化を効果的に抑止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明の排気浄化システムは、内燃機関の排気系に設けられて未燃炭化水素(HC)を酸化可能な第1酸化触媒と、前記第1酸化触媒よりも下流側の排気系に設けられて可溶性有機成分(SOF)を酸化可能な第2酸化触媒と、前記第2酸化触媒よりも下流側の排気系に設けられて尿素水から生成されるアンモニア(NH3)を還元剤として排気中の窒素化合物(NOx)を還元浄化する選択的還元触媒と、前記選択的還元触媒に流入する排気温度を検出する温度検出手段と、前記第1酸化触媒に未燃炭化水素(HC)を供給して前記温度検出手段で検出される排気温度を所定の目標温度まで上昇させる昇温制御を定期的に実行する昇温制御手段と、昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度と目標温度との差に基づいて、当該昇温制御の次に実行される昇温制御の目標温度を補正する目標温度補正手段とを備える。
【0010】
また、前記目標温度補正手段は、昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度のピーク値が目標温度よりも高かった場合は、当該ピーク値から当該目標温度を減算した値を次に実行される昇温制御の目標温度から減算することが好ましい。
【0011】
また、前記目標温度補正手段は、昇温制御の実行中に前記温度検出手段で検出された排気温度のピーク値が目標温度よりも低かった場合は、当該目標温度から当該ピーク値を減算した値を次に実行される昇温制御の目標温度に加算することが好ましい。
【0012】
また、前記内燃機関の燃料噴射を多段噴射で制御して前記内燃機関から排出される排気中のスート成分を低減させる燃焼制御手段さらに備えるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の排気浄化システムによれば、酸化触媒に未燃炭化水素(HC)を供給する際の排気過昇温を防止して、SCR触媒の熱劣化を効果的に抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の排気浄化システムを示す模式的な全体構成図である。
【
図2】本実施形態の電子制御ユニット(ECU)を示す機能ブロック図である。
【
図3】本実施形態の排気浄化システムによる昇温制御を説明するフローチャート図である。
【
図4】本実施形態の排気浄化システムによる昇温制御の目標温度補正を説明する図である。
【
図5】HCスリップが生じた場合のDOC出口温度とSCR入口温度とを比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る排気浄化システムを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0016】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10の各気筒には、コモンレール(不図示)に畜圧した高圧燃料を各気筒内に直接噴射するインジェクタ11がそれぞれ設けられている。これら各インジェクタ11の燃料噴射量や燃料噴射タイミングは、電子制御ユニット(以下、ECUという)60から入力される指示信号に応じてコントロールされる。
【0017】
エンジン10の吸気マニホールド10Aには、新気を導入する吸気通路12が接続されている。排気マニホールド10Bには、排気を導出する排気通路16が接続されている。排気通路16には、排気上流側から順に前段後処理装置30、後段後処理装置40等が設けられている。
【0018】
前段後処理装置30は、ケース30A内に上流側から順に第1酸化触媒31、第2酸化触媒32を配置して構成されている。第1酸化触媒31よりも上流側のケース30Aには、第1酸化触媒31の入口排気温度(以下、DOC入口温度という)を検出する第1排気温度センサ50が設けられている。また、第1酸化触媒31と第2酸化触媒32との間のケース30Aには、第1酸化触媒31の出口排気温度(以下、DOC出口温度という)を検出する第2排気温度センサ51が設けられている。これらセンサ50,51のセンサ値は、電気的に接続されたECU60に送信される。
【0019】
第1酸化触媒31は、例えば多孔質セラミック担体にNO2生成触媒等を担持して形成されており、排気中に含まれるNOからNO2を生成する機能や、ポスト噴射によって供給される未燃炭化水素(HC)を酸化する機能を有している。
【0020】
第2酸化触媒32は、例えば多孔質セラミック担体にSOF酸化触媒を担持して形成されており、排気に含まれるPM中の主にSOF成分を酸化浄化する機能を有している。
【0021】
後段後処理装置40は、ケース40A内に上流側から順にSCR触媒41、第3酸化触媒42を配置して構成されている。SCR触媒41よりも上流側の排気通路16には、尿素水噴射装置43の尿素添加弁44及び、SCR触媒41に流入する排気中のNOx値を検出するNOxセンサ52が設けられている。さらに、SCR触媒41よりも上流側の排気通路16には、SCR触媒41の入口排気温度(以下、SCR入口温度という)を検出する第3排気温度センサ53が設けられている。これらセンサ52,53のセンサ値は、電気的に接続されたECU60に送信される。
【0022】
尿素水噴射装置43は、ECU60から入力される指示信号に応じて尿素添加弁44を開閉動作させることで、SCR触媒41よりも上流側の排気通路16内に、尿素水タンク45内から尿素水ポンプ46によって圧送される尿素水を噴射する。噴射された尿素水は排気熱により加水分解されてNH3に生成され、下流側のSCR触媒41に還元剤として供給される。
【0023】
SCR触媒41は、例えば多孔質セラミック担体にゼオライト等を担持して形成されている。SCR触媒41は、尿素水噴射装置43から還元剤として供給されるNH3を吸着すると共に、吸着したNH3で通過する排気中からNOxを選択的に還元浄化する。
【0024】
第3酸化触媒42は、例えば多孔質セラミック担体に酸化触媒を担持して形成されており、SCR触媒41から下流側にスリップしたNH3を酸化する機能を有している。
【0025】
ECU60は、エンジン10等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。また、ECU60は、
図2に示すように、PM低減燃焼制御部61と、昇温制御部62と、目標温度補正部63とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、本実施形態では一体のハードウェアであるECU60に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0026】
PM低減燃焼制御部61は、各インジェクタ11の燃料噴射をマルチ噴射で制御することで、排気に含まれるPM中の主にスート成分を低減させるPM低減噴射制御を実行する。このように、本実施形態では、PM中のスート成分をエンジン10の燃焼制御によって低減し、PM中のSOF成分を第2酸化触媒32で酸化浄化することにより、DPFを省略してもPMの大気への放出を効果的に抑制できるように構成されている。なお、このPM低減噴射制御と併せて、何れも図示しない可変容量型過給機やEGR装置の開度を調整して過給圧を上昇させる制御を実行してもよい。
【0027】
昇温制御部62は、(1)第1酸化触媒31に堆積したサルフェートの除去、(2)尿素水から生成された白色堆積物の除去、(3)エンジン10から排出されてSCR触媒41に堆積したHCの除去及び、(4)SCR触媒41に吸蔵されたNH3の除去により推定NH3吸蔵量と実NH3吸蔵量との誤差修正を目的とする昇温制御を実行する。本実施形態において、この昇温制御は排気行程で所定量の燃料を噴射するポスト噴射によって第1酸化触媒31に未燃炭化水素(HC)を供給し、酸化反応熱で排気温度を昇温することで実現される。以下、昇温制御の詳細を
図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0028】
ステップ(以下、ステップを単にSという)100では、前回の昇温制御完了から現在までの経過時間(以下、インターバルという)が所定の第1閾値時間に達したか否かが判定される。インターバルが第1閾値時間に達した場合(Yes)、本制御はS110に進みパージフラグFをオンにする。
【0029】
S120では、第1排気温度センサ50で検出されるDOC入口温度が触媒活性状態を示す所定の第1閾値温度以上か否かが判定される。さらに、S130では、第2排気温度センサ51で検出されるDOC出口温度が第1閾値温度以上か否かが判定される。これら何れの条件も満たす場合(Yes)は、S140に進む。一方、これら何れかの条件を満たさない場合(No)は、パージフラグFをオンにしたまま待機状態となる。
【0030】
S140では、第3排気温度センサ53で検出されるSCR入口温度が所定の目標温度T
nとなるように排気温度を上昇させるポスト噴射が開始される。この目標温度T
nは、後述する目標温度補正部63によって必要に応じて補正される。
【0031】
S150では、第1排気温度センサ50で検出されるDOC入口温度が第1閾値温度以上を維持しているか否かが判定され、さらに、S160では、第2排気温度センサ51で検出されるDOC出口温度が第1閾値温度を維持しているか否かが判定される。これら何れの条件も満たす場合(Yes)はS170に進む一方、これら何れかの条件を満たさない場合(No)は、再び条件が満たされるまでポスト噴射は中断される。
【0032】
S170では、ポスト噴射の累積噴射量が所定の上限噴射量に達したか否かが判定される。累積噴射量が上限噴射量に達した場合(Yes)は、S200でパージフラグFをオフにして本制御は終了する(昇温制御:失敗)。一方、累積噴射量が上限噴射量に達していない場合(No)はS180に進む。
【0033】
S180では、昇温制御の終了判定が実行される。この昇温制御の終了は、第2排気温度センサ51が上述の(1)〜(4)に規定したサルフェート、白色堆積物、HC、NH3を除去可能な所定の第2閾値温度以上を計測した累積時間に基づいて判定される。累積時間が所定の第2閾値時間に達した場合(Yes)は、S190に進みパージフラグFをオフにして本制御は終了する(昇温制御:成功)。一方、累積時間が第2閾値時間に達していない場合(No)は、昇温制御を継続すべく本制御はS140に戻される。
【0034】
目標温度補正部63は、昇温制御中に第3排気温度センサ53で検出されるSCR入口温度に基づいて目標温度T
nを増減させる温度補正を実行する。具体的には、n回目(nは1以上の自然数)の昇温制御中に第3温度センサ53で検出されたSCR入口温度のピーク値T
peak_nをECU60の図示しない記録部に記録させておき、n+1回目の昇温制御を実行する際は、その目標温度T
n+1をn回目の目標温度T
nとピーク値T
peak_nとの差ΔT
n(=T
n−T
peak_n)に応じて増減補正する。例えば、
図4に示すように、n回目のピーク値T
peak_nが目標温度T
nよりも高かった場合は、その差ΔT
nだけn+1回目の目標温度T
n+1を減少させる(T
n+1=T
n−(T
peak_n−T
n))。さらに、n+1回目のピーク値T
peak_n+1が目標温度T
n+1よりも低かった場合は、その差ΔT
n+1だけn+2回目の目標温度T
n+2を増加させる(T
n+2=T
n+1+(T
n+1−T
peak_n+1))。このように、昇温制御中のSCR入口温度と目標温度との差に応じて次回以降の目標温度を段階的に増減補正することで、SCR触媒41の過昇温を効果的に抑止することができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る排気浄化システムの作用効果を説明する。
【0036】
本実施形態の排気浄化システムは、排気上流側から順にNO2を生成する第1酸化触媒31、未燃燃料や潤滑油等を主成分とするPM中のSOF成分を酸化浄化する第2酸化触媒32、NOxを還元浄化するSCR触媒41、NH3スリップを防止する第3酸化触媒42を配置して構成されている。さらに、エンジン10の燃料噴射は、マルチ噴射によりPM中の主にスート成分を低減させるPM低減噴射によって制御されるようになっている。すなわち、PM中のスート成分等をエンジン10の燃焼制御によって低減し、SOF成分を第2酸化触媒32で浄化することで、DPFを用いることなく排気エミッション性能を効果的に維持できるように構成されている。したがって、DPFを省略することが可能となり、装置の大型化やコスト上昇を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、DPFを省略したことで、ポスト噴射や排気管内噴射によるフィルタ強制再生を行う必要が無くなり、燃費性能を効果的に向上することができる。また、DPFの省略によって、アッシュを除去するDPFの定期的な掃除等が不要になり、メンテナンス性も効果的に向上することができる。
【0038】
また、第1酸化触媒31のサルフェート被毒に対しては定期的な昇温制御によって除去すること可能だが、リン被毒や経時的な熱劣化に対しては対応できない課題がある。そのため、これらリン被毒や経年熱劣化の影響を考慮することなく昇温制御を行うと、
図5に示すように、HCスリップによってSCR入口温度がDOC出口温度に対して高くなり、排気過昇温によるSCR触媒41の劣化を防止できない可能性がある。
【0039】
本実施形態の排気浄化システムは、サルフェート被毒に対しては昇温制御を定期的に行うことで確実に除去しつつ、リン被毒や経年劣化に対しては昇温制御の目標温度を適宜補正することで、昇温制御中のHCスリップを効果的に防止するように構成されている。したがって、昇温制御中の排気過昇温を効果的に抑制することが可能となり、SCR触媒41の熱劣化を確実に防止することができる。
【0040】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0041】
例えば、昇温制御はポスト噴射で行うものとして説明したが、第1酸化触媒31よりも上流側の排気通路16に燃料噴射装置を設けて排気管噴射で行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 エンジン
11 インジェクタ
16 排気通路
30 前段後処理装置
31 第1酸化触媒
32 第2酸化触媒
40 後段後処理装置
41 SCR触媒
42 第3酸化触媒
50 第1排気温度センサ
51 第2排気温度センサ
53 第3排気温度センサ
60 ECU
61 PM低減燃焼制御部
62 昇温制御部
63 目標温度補正部