(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0012】
本発明の実施形態に係る樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂と、I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンと、ゴム材料とを含有する。そして、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、ガリウムフタロシアニンを0.1質量部以上5質量部以下の範囲、ゴム材料を5質量部以上20質量部以下の範囲で含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンと、ゴム材料とを上記範囲で含むことにより、ポリ乳酸樹脂を含む樹脂組成物において、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性に優れる。
【0013】
通常、ポリ乳酸樹脂によって作られた成形品は、耐熱性に乏しく、ガラス転移温度(Tg)が60℃前後のため、その温度を超えると変形してしまう場合がある。それを改善するために、例えば、結晶核剤を添加することでポリ乳酸樹脂の結晶化度や結晶化速度を促進させ、成形中または成形後の熱処理によって、ポリ乳酸樹脂を結晶化させて固くし、耐熱性を改善することが提案されていた。しかし、ポリ乳酸樹脂の結晶化により、耐熱性は改善するものの、引伸び特性や耐衝撃性が著しく低下する場合があった。特に銅フタロシアニンを結晶核剤として使用することで、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度を速めることは可能であるが、2次障害として機械特性(曲げ)の低下と曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が低下していた。本発明者らは、結晶核剤としてI型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンをゴム材料と上記範囲の量で組み合わせることによって、ポリ乳酸樹脂が結晶化しているのにも関わらず、結晶化したポリ乳酸樹脂では予測できないほど、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性に優れることを見出した。また、本実施形態に係る樹脂組成物は、成形体にした場合に、高耐熱性を維持しつつ、耐衝撃性等の物性が向上することを見出した。
【0014】
曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が予測できなかったレベルまで向上した理由は定かではないが、ガリウムフタロシアニンの特殊な結晶構造による略均一で小粒径の粒子とゴム材料との相乗効果によるポリ乳酸樹脂への界面密着性の向上と応力が略均等に分散されることにより、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が向上すると考えられる。
【0015】
<ポリ乳酸樹脂>
ポリ乳酸樹脂は、植物由来であり、環境負荷の低減、具体的にはCO
2の排出量削減、石油使用量の削減等の効果がある。ポリ乳酸樹脂としては、乳酸の縮合体であれば、特に限定されるものではなく、ポリ−L−乳酸(以下「PLLA」ともいう)であっても、ポリ−D−乳酸(以下「PDLA」ともいう)であっても、それらが共重合やブレンドにより交じり合ったものでもよく、さらに、ポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸とを混合したものであり、これらのらせん構造が噛み合った耐熱性の高い、ステレオコンプレックス型ポリ乳酸(以下「SC−PLA」ともいう)であってもよい。
【0016】
共重合体あるいは混合体におけるポリ−L−乳酸とポリ−D−乳酸の成分比(モル比の割合%)は特に制限はないが、ポリ−L−乳酸の方がポリ−D−乳酸がよりもポリカーボネート・エポキシ化合物との反応性が高い等の点から、L−乳酸/D−乳酸として、50/50以上99.99/0.01以下の範囲であることが好ましい。L−乳酸/D−乳酸が、50/50未満であると、成形体にした場合に機械的特性が低下する場合があり、99.99/0.01を超えると、コストが増加する場合がある。
【0017】
ポリ乳酸樹脂は、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ユニチカ(株)製の「テラマックTE4000」、「テラマックTE2000」、「テラマックTE7000」、ネイチャーワークス社製の「Ingeo3251D」、「Ingeo3001D」、「Ingeo4032D」、浙江海正生物材料製の「REVODE190」等が挙げられる。また、ポリ乳酸樹脂は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリ乳酸樹脂としては、植物由来のエチレングリコール、ジブタノール等の乳酸以外の他の共重合成分を含んでもよい。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常1モル%以上50モル%以下の含有量とすればよい。また、ポリ乳酸樹脂としては、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸、エポキシ変性ポリ乳酸、アミン変性ポリ乳酸などを用いてもよい。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の分子量は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、50,000以上300,000以下の範囲であることが好ましく、70,000以上250,000以下の範囲であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂の重量平均分子量が50,000未満の場合、成形体にした場合に機械的特性が低下する場合があり、ポリ乳酸の重量平均分子量が300,000を超える場合には加工性が不良となる場合がある。
【0020】
ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、100℃以上250℃以下の範囲であることが好ましく、120℃以上200℃以下の範囲であることがより好ましい。ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度が100℃未満の場合、成形体にした場合に機械的特性が低下する場合があり、ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度が250℃を超える場合には加工性が不良となる場合がある。
【0021】
ポリ乳酸樹脂には、製造上、ブチロラクトン、1,6−ジオキサシクロデカン−2,7−ジオン等の環状ラクトン等のラクトン化合物等が不純物として含まれる場合がある。そのようなラクトン化合物等の不純物の含有量が少ないことが好ましく、具体的には、ポリ乳酸の量に対して10質量%未満であることが好ましく、5質量%未満であることがより好ましい。ラクトン化合物等の不純物の含有量が10質量%以上であると、ポリカーボネート・エポキシ化合物等と反応して、ポリアミドとの反応性が低下し、その結果、成形体にした場合に機械的特性が低下する場合がある。
【0022】
本実施形態に係る樹脂組成物は、マトリックス樹脂として、「ポリ乳酸」と「ABS」等の「石油由来樹脂」との複合樹脂を用いる樹脂組成物ではなく、「植物由来樹脂」である「ポリ乳酸」を100%用いて、すなわち「ポリ乳酸」のみを用いて、「植物由来樹脂使用率」を高めたものである。「ポリ乳酸」のみをマトリックス樹脂として用いる樹脂組成物において実現が困難であった「植物由来樹脂使用率」で示される「環境負荷」と「成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性」とのバランスをとるために、「ポリ乳酸」に対して特定の配合量の「ガリウムフタロシアニン」と特定の配合量の「ゴム材料」とを組み合わせたものである。
【0023】
<ガリウムフタロシアニン>
フタロシアニン化合物は、4つのフタル酸イミドが窒素原子で架橋された構造を有する環状化合物であり、ガリウムフタロシアニンは、ガリウムと錯体を形成したものである
。ガリウムフタロシアニンとしては、クロロガリウムフタロシアニン、ブロモガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が挙げられ、ポリ乳酸樹脂の結晶化速度の促進および樹脂組成物の耐熱性の向上等の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。また、ガリウムフタロシアニンは、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0024】
本実施形態で用いられるガリウムフタロシアニンは、I型の結晶構造を有する。ガリウムフタロシアニンには、I型、II型、V型の結晶構造を有する単結晶のガリウムフタロシアニンや、非晶形のガリウムフタロシアニンが知られているが、その中でもI型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンが、結晶核剤として優れ、ポリ乳酸樹脂の結晶速度と結晶化度を向上させると考えられる。
【0025】
I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンの含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下の範囲であり、0.3質量部以上3質量部以下の範囲であることが好ましい。I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンの含有量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して0.1質量%未満であると、ポリ乳酸樹脂の結晶性が低下し、成形体にした場合に成形性が低下する場合があり、5質量部を超えると、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が低下する場合がある。
【0026】
I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンの体積平均粒径は、例えば、0.01μm以上1.2μm以下である。0.01μm未満であると、ポリ乳酸樹脂の結晶性が低下し、成形体にした場合に成形性が低下する場合があり、1.2μmを超えると、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が低下する場合がある。
【0027】
<ゴム材料>
ゴム材料としては、シリコーン・アクリル複合ゴム、アクリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、天然ゴム等のゴムまたは熱可塑性エラストマ等が挙げられる。特に、アクリル系ゴムは樹脂組成物の耐衝撃性、耐候性等の物性を向上させるため好ましい。また、コアシェル型のゴムは、コアとシェルから形成される二重構造を有しており、コア部分は軟質なゴムであって、その表面のシェル部分は硬質な樹脂状態であり、ゴム自体としては粉末(粒子)状態である弾性体である。このコアシェル型のゴムは、例えばポリ乳酸と溶融混練した後もその粒子状態は大部分が元の形態を保っている。配合されたゴムの大部分が元の状態を保っているので、ポリ乳酸樹脂への分散性が良く、表層での剥離などが起こりにくい。
【0028】
ゴム材料としては、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、アクリル系のゴム材料である日油社製の「モディパーA5300」等が挙げられる。コアシェル型のゴム材料としては、アクリル系の三菱レイヨン社製の「メタブレンW600A」、メチルメタクリレート/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS)系の三菱レイヨン社製の「メタブレンC223A」等が挙げられる。また、ゴム材料は、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
ゴム材料の含有量は、ポリ乳酸樹脂100質量部に対して、5質量部以上20質量部以下の範囲であり、10質量部以上15質量部以下の範囲であることが好ましい。ゴム材料の含有量がポリ乳酸樹脂100質量部に対して5質量部未満であると、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性が低下する場合があり、20質量部を超えると、ポリ乳酸樹脂の結晶性が低下し、成形体にした場合に成形性が低下する場合がある。
【0030】
<その他添加剤>
I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンおよびゴム材料以外の添加剤としては、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、充填剤、ドリップ防止剤等を使用してもよい。これらのその他の成分の含有量は、樹脂組成物の固形分全量を基準として、それぞれ10質量%以下であることが好ましい。
【0031】
難燃剤を含むことにより、成形体にした場合に難燃性が向上する。難燃剤としては、一般に樹脂の難燃剤として用いられるものを用いればよく、特に制限はない。例えば、無機系難燃剤および有機系難燃剤が挙げられる。無機系難燃剤の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、低融点ガラス等のシリカ系の難燃剤、有機系難燃剤の具体例としては、リン酸塩化合物、リン酸エステル化合物等が挙げられる。本実施形態で用いられる難燃剤としては、上記に例示したもののなかでも、難燃効率等の点からリン酸塩化合物、特にポリリン酸アンモニウムが好ましい。難燃剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
充填剤としては、例えば、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土などのクレイ、タルク、マイカ、モンモリナイト等が挙げられる。充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
ドリップ防止剤を含むことにより、成形体にした場合に抗ドリップ(溶融滴下)性が向上する。ドリップ防止剤としては、合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンである旭硝子社製の「PTFE CD145」、ダイキン工業社製の「FA500H」等が挙げられる。ドリップ防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
<各種測定方法>
樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の含有量は、
1H−NMR分析により測定する。樹脂組成物中のポリ乳酸に含まれるラクトン化合物等の不純物の含有量も、同様の方法により測定する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のポリ乳酸樹脂の含有量は
1H−NMR分析により測定する。このようにして測定した樹脂成形体中のポリ乳酸樹脂の含有量から、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の含有量が推定される。
【0036】
樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、高分子を溶媒に溶解し、この溶液をサイズ排除クロマトグラフ(GPC)にて、重量平均分子量を求める。テトラヒドロフラン(THF)溶解し分子量分布測定(GPC)により分析する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のポリ乳酸樹脂の重量平均分子量は、高分子を溶媒に溶解し、この溶液をサイズ排除クロマトグラフ(GPC)にて、重量平均分子量を求める。テトラヒドロフラン(THF)溶解し、分子量分布測定(GPC)により分析する。
【0037】
樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂のガラス転移温度は、熱分析装置(エスアイアイナノテクノロジ製、DSC6000型)を用いて、JIS K 7121の方法により測定する。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のポリ乳酸樹脂のガラス転移温度は、熱分析装置(エスアイアイナノテクノロジ製、DSC6000型)を用いて、JIS K 7121の方法により測定する。
【0038】
樹脂組成物中のガリウムフタロシアニンの結晶構造は、粉末X線回折装置を用いて測定する
。樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体中のガリウムフタロシアニンの結晶構造は、粉末X線回折装置を用いて測定する。このようにして測定した樹脂成形体中のガリウムフタロシアニンの結晶構造から、樹脂組成物中のガリウムフタロシアニンの結晶構造が推定される。
【0039】
ガリウムフタロシアニンの体積平均粒径は、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置で測定する。
【0040】
樹脂組成物および樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体について、元素分析装置、NMR装置、IR装置等を用いて、各材料の構造や組成比を測定することで、樹脂組成物中および樹脂成形体中のポリ乳酸、ガリウムフタロシアニン、ゴム材料等の含有量が測定される。また、樹脂成形体中のポリ乳酸、ガリウムフタロシアニン、ゴム材料等の含有量から、樹脂組成物中のポリ乳酸、ガリウムフタロシアニン、ゴム材料等の含有量が推定される。
【0041】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、ポリ乳酸樹脂と、I型の結晶構造を有するガリウムフタロシアニンと、ゴム材料と、必要に応じてその他の成分とを、混練して作製すればよい。
【0042】
混練は、例えば、2軸混練装置(東芝機械製、TEM58SS)、簡易ニーダ(東洋精機製、ラボプラストミル)等の公知の混練装置を用いて行えばよい。ここで、混練の温度条件(シリンダ温度条件)としては、例えば、170℃以上220℃以下の範囲が好ましく、180℃以上220℃以下の範囲がより好ましく、190℃以上220℃以下の範囲がさらにより好ましい。これにより、曲げ応力を加えた場合の耐薬品性に優れる成形体が得られ易くなる。
【0043】
[樹脂成形体]
本実施形態に係る樹脂成形体は、例えば、上述した本実施形態に係る樹脂組成物を成形することにより得られる。
【0044】
例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形等の成形方法により成形して、本実施形態に係る樹脂成形体が得られる。生産性等の理由から、本実施形態に係る樹脂組成物を射出成形して得られたものであることが好ましい。
【0045】
射出成形は、例えば、日精樹脂工業製「NEX150」、日精樹脂工業製「NEX70000」、東芝機械製「SE50D」等の市販の装置を用いて行えばよい。この際、シリンダ温度としては、樹脂の分解抑制等の観点から、170℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましく、180℃以上240℃以下の範囲とすることがより好ましい。また、金型温度としては、生産性等の観点から、30℃以上100℃以下の範囲とすることが好ましく、30℃以上60℃以下の範囲とすることがより好ましい。
【0046】
本実施形態に係る樹脂成形体において、ポリ乳酸樹脂は結晶化している。ここで、「結晶化」しているとは、アモルファス状態ではなく、結晶構造を有している状態のことをいう。ポリ乳酸樹脂は、成形中または成形後の熱処理等によって、結晶化される。
【0047】
ポリ乳酸樹脂が「結晶化」していることは、粉末X線回折装置を用いて測定する。結晶化したポリ乳酸樹脂は、粉末X線回折の測定により、2θ[deg]=11.3〜12.3°、20.1〜21.1°および23.3〜24.3°の位置にピークを有する。
【0048】
本実施形態に係る樹脂成形体は、曲げ応力を加えた場合の耐薬品性に優れる。また、本実施形態に係る樹脂成形体は、耐熱性、耐衝撃性等に優れる。
【0049】
<電子・電気機器の部品>
本実施形態に係る樹脂成形体は、機械的強度(耐衝撃性、引張弾性率等)に優れたものになり得るため、電子・電気機器、家電製品、容器、自動車内装材などの用途に好適に用いられる。より具体的には、家電製品や電子・電気機器などの筐体、各種部品など、ラッピングフィルム、CD−ROMやDVDなどの収納ケース、食器類、食品トレイ、飲料ボトル、薬品ラップ材などであり、中でも、電子・電気機器の部品に好適である。電子・電気機器の部品は、複雑な形状を有しているものが多く、また重量物であるので、重量物とならない場合に比べて高い耐衝撃性が要求されるが、本実施形態に係る樹脂成形体によれば、このような要求特性が十分満足される。本実施形態に係る樹脂成形体は、特に、画像形成装置や複写機等の筐体に適している。
【実施例】
【0050】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例および比較例>
表1,2に示す組成(質量部)で原料を配合し、原材料を2軸混練装置(TEM58SS、東芝機械社製)に投入し、シリンダ温度200℃で混練して樹脂組成物(コンパウンド)を得た。次に、得られた樹脂組成物を用いて射出成形装置(NEX150E、日精樹脂社製)にて、シリンダ温度190℃、金型温度100℃で成形し評価片を得た。表1,2に示す各成分について、表3に商品名、メーカ名等を示す。
【0052】
(評価方法)
[曲げ応力を加えた際の耐薬品性試験(ケミカルアタック試験)]
曲げ試験法を適用した。
使用サンプル:ISO 4mm試験片
使用治具:ISO用定歪治具
歪み調整可能な試験治具を用い、試験片に歪みを与え、試験片中央部に対象とする溶媒(ケミカルアタック試験油)として鉱油(品名:サンプレスS304(スギムラ化学プレスオイル))またはシリコーンオイル(品名:KF8009(信越化学工業オイル))を塗布した。
試験条件は、
・試験片:長さ100mm以上150mm以下×幅10mm×厚さ4mm
・サンプル数:4個
・溶媒塗布後の放置時間:200時間
・放置環境:常温、常湿(温度23℃、湿度55%RH)
・曲げ歪み:評価するプラスチックの最大曲げ応力の30%応力に相当する歪みを試験中央部に与えた。歪みは、材料の応力と歪みとの関係曲線、または以下の式から求めた。
歪み(%):ε=σb/Eb
σb=曲げ応力
Eb=曲げ弾性率(N/mm
2)
試験は、4個の試験片を用いて行い、表面観察は目視で行った。ただし、判別し難い場合は拡大鏡等で行った。○:クラックなし、△:クレーズ(微細クラック)発生、×:クラック発生の評価基準で評価し、○を合格とした。結果を表1,2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
実施例の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物に比べて、成形体にして曲げ応力を加えた場合の耐薬品性に優れていた。