特許第6398428号(P6398428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398428
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】屋外型配電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/28 20060101AFI20180920BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H02B1/28 E
   H05K5/02 L
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-154050(P2014-154050)
(22)【出願日】2014年7月29日
(65)【公開番号】特開2016-32362(P2016-32362A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤本 義雄
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−116914(JP,A)
【文献】 実開平06−084707(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00− 1/38
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外で用いられる屋外型配電盤において、
電気機器を収納する箱状の筐体の側面に設けた開閉扉の上方に、水の浸入を防止するための防水板を前記筐体の側面と前記開閉扉の上端面とに跨って配置し
前記防水板は、側断面視で略Vの字状に折れ曲がったばね性の板材からなり、前記防水板の一端部は、前記開閉扉の上方の前記筐体の側面に固定されており、固定された位置から側断面視で斜め下方に傾斜して折れ曲がり部において前記開閉扉の上端面に当接し、前記折れ曲がり部から他端部に向けて斜め上方に延びており、閉じた状態の前記開閉扉の上端面を前記折れ曲がり部を介して下方に押し付け付勢するとともに、前記折れ曲がり部から他端部に向けて斜め上方に延びることで、他端部が開閉扉の開閉操作に干渉するのを回避するものであることを特徴とする屋外型配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外などに設置して用いられる屋外型配電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外などに設置される屋外型配電盤が知られている(例えば、特許文献1または2を参照)。図2は、一般的な屋外型配電盤の側断面図を示したものである。この図に示すように、屋外型配電盤1は、屋根板2と正面扉3Aと背面扉3Bとベースチャンネル4とを備えた箱状の筐体からなる。この屋外型配電盤1の内部には、遮断器5A、変流器5Bおよび電力ケーブル5C、図示しない制御機器などを含む電気機器が収納されている。
【0003】
正面扉3A、背面扉3Bが設置される筐体の開口部の周縁には、通常、雨水の浸入を防止するための水きり構造として、枠状の水切りフレームが設けられている。この水きりフレームに対して正面扉3A、背面扉3Bの裏面の周縁に貼り付けたパッキンを密着させて、正面扉3A、背面扉3Bから筐体の内部に雨水が浸入するのを防止している。この防水構造について、図3を用いてより具体的に説明する。
【0004】
図3は、図2のA部分(屋根庇部分)の拡大図である。この図に示すように、枠体フレーム6によって、正面扉3A側の筐体の側面に矩形状の開口部が形成されている。この開口部の周縁(4辺)には水切りフレーム7が溶接などにより取り付けられており、正面扉3Aから浸入してきた雨水が開口部から筐体の内部に入り込むのを防止している。また、正面扉3Aの裏面の矩形状の周縁(4辺)にはパッキン8が貼り付けられており、正面扉3Aを閉じた状態では、パッキン8の表面は水切りフレーム7の表面に当接して密着している。このパッキン8によって、水切りフレーム7に到った雨水が、筐体の内部まで入り込まないように防止している。なお、屋根庇部分には、通気用の孔が多数あけられた通気用孔板9Aと、雨返し用の塞ぎ板9Bとが設けられている。
【0005】
このように、従来の屋外型配電盤においては、筐体の扉の周縁部に水切りフレームのような水きり構造を設けるとともに、水切り構造に対してパッキンを密着することで、扉から筐体の内部に入り込もうとする水の浸入を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−81730号公報
【特許文献2】特開2013−94013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、風などの影響により大量の雨水が巻き込まれるようにして扉上部に入り込んだ場合には、上記の従来の水切り構造とパッキンによる防水構造だけでは防ぎきれず、水切り構造に到った雨水が、まれに屋外型配電盤の内部にまで浸入してくることがあった。このため、風が強いような設置環境であっても、雨水の浸入を防ぐことのできる構造が求められていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、雨水などの浸入に対する防水性能を高めた屋外型配電盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る屋外型配電盤は、屋外で用いられる屋外型配電盤において、電気機器を収納する箱状の筐体の側面に設けた開閉扉の上方に、水の浸入を防止するための防水板を前記筐体の側面と前記開閉扉の上端面とに跨って配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る他の屋外型配電盤は、上述した発明において、前記防水板は、閉じた状態の前記開閉扉の上端面を下方に押し付け付勢するばね性の板材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る屋外型配電盤によれば、屋外で用いられる屋外型配電盤において、電気機器を収納する箱状の筐体の側面に設けた開閉扉の上方に、水の浸入を防止するための防水板を前記筐体の側面と前記開閉扉の上端面とに跨って配置したので、筐体の外被部分で雨水の浸入を防止することが可能となり、開閉扉の内側のパッキンの貼り付け状態や、筐体の内部の水切りフレームの面(板金)精度に依存しないかたちで、筐体の内部への雨水の浸入を防止することができる。したがって、本発明によれば、雨水などの浸入に対する防水性能を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る屋外型配電盤の実施の形態を示す側断面図である。
図2図2は、従来の一般的な屋外型配電盤を示す側断面図である。
図3図3は、図2のA部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る屋外型配電盤の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
本実施の形態に係る屋外型配電盤は、図2に示した従来の一般的な屋外型配電盤1とほぼ同様な箱状のものであって、屋根板と正面扉と背面扉とベースチャンネルとを備えた筐体を有している。図1は、本実施の形態に係る屋外型配電盤を示したものであり、従来の図3図2のA部分)に対応する図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る屋外型配電盤10は、図3に示した従来の屋根型配電盤1と同様に、図示しない電気機器を収納する箱状の筐体12を有している。筐体12の上面12aには屋根板14が設けられ、正面12b(側面)には正面扉16(開閉扉)が開閉可能に取り付けられている。
【0016】
筐体12の内面には枠体フレーム18が設けられ、この枠体フレーム18によって、筐体12の正面12bに矩形状の開口部が形成されている。この開口部の周縁(4辺)には水切りフレーム20が溶接などにより取り付けられており、正面扉16から浸入してきた雨水が開口部から筐体12の内部に入り込むのを防止している。
【0017】
また、正面扉16の裏面の矩形状の周縁(4辺)にはパッキン22が貼り付けられており、正面扉16を閉じた状態では、パッキン22の表面は水切りフレーム20の表面に当接して密着している。このパッキン22によって、水切りフレーム20に到った雨水が、筐体12の内部まで入り込まないように防止している。
【0018】
なお、屋根板14と前面板26とによって構成される屋根庇部分24には、上記の従来の屋外型配電盤1と同様に、通気用の孔が多数あけられた通気用孔板28と、雨返し用の塞ぎ板30とが設けられている。
【0019】
ここで、本実施の形態に係る屋外型配電盤10においては、正面扉16の上方に、水の浸入を防止するための防水板32が、筐体12の正面12bと正面扉16の上端面16aとに跨って配置されている。
【0020】
防水板32は、側断面視で略Vの字状に折れ曲がった板材である。防水板32の一端部32aは、正面扉16の上方の筐体12の正面12bにボルト34を介して固定されている。この防水板32は、側断面視で正面12bの位置から斜め下方に傾斜して略中央の折れ曲がり部32bにおいて正面扉16の上端面16aに当接し、そこから他端部32cに向けて斜め上方に延びている。他端部32cは、正面扉16の外表面よりも若干外側に突き出した位置に配置される。
【0021】
この防水板32としては、閉じた状態の正面扉16の上端面16aを、折れ曲がり部32bを介して下方に押し付け付勢するばね性の鋼材で構成することが好ましい。正面扉16の上端面16aに当接する折れ曲がり部32bが、上端面16aを押し付け付勢することで、当接する折れ曲がり部32bと上端面16aとの間の密着性が向上し、防水性能が高められる。
【0022】
防水板32を設けることで、外部から正面扉16の上端に到った水は防水板32によって浸入を阻まれ、筐体12の内部への雨水の浸入を防止することができる。また、他端部32cが正面扉16の外表面よりも若干外側に突き出した位置に配置されることで、防水板32に到った雨水は、正面扉16の外表面よりも若干外側に突き出した位置の他端部32cから下方に滴り落ちる。このため、滴り落ちた水が正面扉16の外表面や上端面16aに付着するのを回避することができる。また、防水板32が折れ曲がり部32bから他端部32cに向けて斜め上方に延びることで、他端部32cが正面扉16の開閉操作に干渉するのを回避することができる。
【0023】
このように、防水板32を設けた筐体12の外被部分で雨水の浸入を効果的に防止することが可能となり、正面扉16の内側のパッキン22の貼り付け状態や、筐体12の開口部の水切りフレーム20の面精度(板金精度)に依存しないかたちで、筐体12の内部への雨水の浸入を防止することができる。したがって、本実施の形態によれば、雨水などの浸入に対する防水性能を高めることができるという効果を奏する。
【0024】
また、上記の従来の防水構造では、図3に示すように、最終的にはパッキン8にて雨水の浸入を防止しているが、その防水性能は、パッキン8の貼り付け状態や、パッキン8が当たる水切りフレーム7の面精度(板金精度)に依存していた。強い風によって巻き込むようにして大量の雨水が開閉扉の上方から浸入した場合には、上記の従来の水切りフレーム7とパッキン8とによる防水構造では防ぎきれない。
【0025】
これに対し、本発明によれば、ばね性の防水板32を、筐体12の正面12bと正面扉16の上端面16aとに跨って配置することで、筐体12の外被部分で雨水の浸入を未然に防止することが可能となり、パッキン22の貼り付け状態や、水切りフレーム20の面精度(板金精度)に依存しないかたちで、筐体12の内部への雨水の浸入を防止することができる。
【0026】
なお、上記の実施の形態においては、開閉扉として正面扉の場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、筐体の背面に設けられる背面扉や、筐体の左または右側面に設けられる側面扉に適用することも可能であり、いずれにしても上記の実施の形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0027】
以上説明したように、本発明に係る屋外型配電盤によれば、屋外で用いられる屋外型配電盤において、電気機器を収納する箱状の筐体の側面に設けた開閉扉の上方に、水の浸入を防止するための防水板を前記筐体の側面と前記開閉扉の上端面とに跨って配置したので、筐体の外被部分で雨水の浸入を防止することが可能となり、開閉扉の内側のパッキンの貼り付け状態や、筐体の内部の水切りフレームの面(板金)精度に依存しないかたちで、筐体の内部への雨水の浸入を防止することができる。したがって、本発明によれば、雨水などの浸入に対する防水性能を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係る屋外型配電盤は、屋外などに設置して用いられる屋外型配電盤に有用であり、特に、開閉扉の上端近傍において、雨水などの浸入に対する防水性能を高めるのに適している。
【符号の説明】
【0029】
10 屋外型配電盤
12 筐体
12a 上面
12b 正面(側面)
14 屋根板
16 正面扉(開閉扉)
16a 上端面
18 枠体フレーム
20 水切りフレーム
22 パッキン
24 屋根庇部分
26 前面板
28 通気用孔板
30 塞ぎ板
32 防水板
32a 一端部
32b 折れ曲がり部
32c 他端部
34 ボルト
図1
図2
図3