(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(C)熱可塑性樹脂が、融点が70〜110℃である1,2−ポリブタジエン樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡体用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。まず、発泡体用ゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0022】
[発泡体用ゴム組成物]
<(A)成分>
(A)のビニル・シスブタジエンゴム(以下、「VCR」と記載することがある。)について説明する。VCRは、沸騰n−ヘキサン不溶分;1〜25質量%で、沸騰n−ヘキサン可溶分;99〜75質量%であるビニル・シスブタジエンゴムである。ここで、沸騰n−ヘキサン不溶分は、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン樹脂(以下、「SPB」と記載することがある。)である。また、沸騰n−ヘキサン可溶分は、高シス−1,4−ポリブタジエンであり、ミクロ構造はシス−1,4構造が90質量%以上である。また、沸騰n−ヘキサン不溶分とは、VCRを沸騰n−ヘキサン中に還流した時に不溶分として回収される部分をいう。沸騰n−ヘキサン可溶分とは、VCRを沸騰n−ヘキサン中で還流した時に溶解する部分をいう。
【0023】
沸騰n−ヘキサン不溶分は、オルトジクロロベンゼン溶液で測定した還元粘度(135℃、濃度0.20g/dlオルトジクロロベンゼン溶液)が0.5〜4であり、好ましくは0.8〜3の範囲である。沸騰n−ヘキサン不溶分の還元粘度が0.5より小さい時には、配合物のダイスウェルが十分改善されない。一方、沸騰n−ヘキサン不溶分の還元粘度が4より大きい時には、重合時にSPBが高シス−1,4−ポリブタジエン中で凝集塊を形成するようになり、分散不良を起こして加工性や耐久性が低下して、この発明の目的を達成できない。
【0024】
また、沸騰n−ヘキサン可溶分の重量平均分子量は、300,000〜800,000の範囲であることが好ましい。300,000未満では加硫物の耐久性や反撥弾性が低下するので好ましくない。また、800,000を超えると配合物のムーニー粘度が高くなり過ぎて、加工が困難になるので好ましくない。
【0025】
VCRは、一般に、ロール加工性や機械的強度(引張強度、伸び、引裂強度)等に優れたゴムであり、靴底等の用途に適性を有している。
【0026】
VCRの製造方法は、例えば特公昭49−17666号公報、特公昭49−17667号公報、特公昭61−57858号公報、特公昭62−171号公報、特公昭63−36324号公報、特公平2−37927号公報、特公平2−38081号公報、特公平3−63566号公報などに記載された方法を用いることができる。但し、この発明に用いるVCRの製造方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0027】
(A)のVCRの配合量としては、全ゴム分100質量部に対して、40〜80質量部であり、好ましくは50〜70質量部である。前記範囲内で配合すると、ロールよりシート出しした配合物の寸法安定性や履物の諸物性(引張強度、伸び、引裂強度、耐摩耗性)を良好なものとすることができる。VCRの配合量が40質量部より少ないと、耐摩耗性の悪化の問題が生じる。一方、VCRの配合量が80質量部よりも多いと、密度の上昇や硬度の上昇の問題が生ずるため好ましくない。ここで、全ゴム分とは、(A)+(B)+(C)の合計を意味する(以下、同様)。
【0028】
<(B)成分>
(B)のジエン系ゴムは、前記(A)以外のジエン系ゴムである。(B)ジエン系ゴムは、本発明の発泡体用ゴム組成物にロール加工性や機械的強度等を付与するために使用される。(B)ジエン系ゴムとしては、具体的に、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、スチレン−イソプレンゴムなどのジエン系ゴムが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)ジエン系ゴムとしては、ロール加工性に必要な特性(シート肌の形状外観)を付与するとの理由から、好ましくは、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム及びスチレン−ブタジエンゴムから選択されるゴム成分であり、特に好ましくは、天然ゴム(NR)である。
【0030】
(B)ジエン系ゴムの配合量としては、全ゴム分100質量部に対して、2〜30質量部であり、好ましくは5〜20質量部、特に好ましくは7〜15質量部である。前記配合範囲内で配合すると、ロール加工性に必要な特性(シート肌の形状外観)や履物の諸物性(引張強度、伸び、引裂強度)を付与することができる。(B)ジエン系ゴムの配合量が2質量部より少ないと、シート肌の荒れや加工性の問題が生じる。一方、(B)ジエン系ゴムの配合量が30質量部よりも多いと、密度の上昇や収縮の悪化の問題が生ずるため好ましくない。
【0031】
<(C)成分>
(C)熱可塑性樹脂は、本発明の発泡体用ゴム組成物に寸法安定性等を付与するために使用される。他のゴム成分との混練時に相溶性がよいことが好ましい。(C)熱可塑性樹脂としては、例えば、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン樹脂(SPB)、ポリエチレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、ポリイソブチレン、エチレン酢ビ共重合体、エチレンアクリレート−エチレンアクリル酸共重合体、ポリプロピレン及びその無水マレイン酸グラフト重合体、塩素化ポリプロピレン、4−メチルペンテン−1樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができる。(C)熱可塑性樹脂として、寸法安定性を付与するとの理由から、1,2−ポリブタジエン樹脂が好ましい。さらに、配合時にゴム中に溶融させて混合することができるとの理由から、融点が70〜110℃である1,2−ポリブタジエン樹脂がより好ましい。これらの(C)熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0032】
(C)熱可塑性樹脂の配合量としては、例えば(C)熱可塑性樹脂にSPBを用いた場合には、全ゴム分100質量部に対して、10〜50質量部であり、好ましくは20〜45質量部、特に好ましくは25〜40質量部である。この範囲内で配合をするとき、履物としての諸物性(軽量化、寸法安定性)を付与することができる。SPBの配合量が10質量部より少ないと、寸法安定性(収縮)の問題が生じる。一方、SPBの配合量が50質量部よりも多いと、硬度の上昇の問題が生ずるため好ましくない。
【0033】
<(D)成分>
(D)
発泡剤としては、一般に、熱膨張性のマイクロカプセルが用いられる。熱膨張性マイクロカプセルとは、合成樹脂製のマイクロカプセル中に、加熱することによって膨張する液体や気体を内包させたものである。押出成形や射出成形の際のスクリューなどによる混練溶融熱によって、内包された液体や気体が膨張することにより、外殻となるマイクロカプセルが膨張する。しかし、成形時の温度条件によって、溶融したり、破裂することなく膨張を完了させるものである。
【0034】
マイクロカプセルの殻を構成する材料としては、一般に、アクリルニトリルをモノマーの一つとして用いた共重合体が用いられる。アクリルニトリルと共重合しても良い他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデンなどを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0035】
マイクロカプセルに内包される液体または気体は、マイクロカプセルの殻を構成する材料の軟化点以上の温度でガスになって膨張するものである。例えば、プロパン、プロピレン、ブテン、ノルマルブタン、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、ノルマルペンタン、ヘキサン、ペプタン、石油エーテル、メタンなどの炭化水素、塩化メチル、塩化メチレン、CCl
3F、CCl
2F
2などのハロゲン化炭化水素、テトラメチルシラン、トリメチルエチルシランなどのテトラアルキルシラン等が挙げられる。また、加熱によって熱分解してガス状になるAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)などの化合物が挙げられる。
【0036】
押出成形や射出成形では、押出機や射出機によってホッパーから投入された原料がスクリューなどで混練されることから、熱膨張性マイクロカプセルにも混練による剪断力などが加わる。また、溶融した樹脂がダイや金型に押出されるときにも押出力や射出力が加わる。そのため、これらの力が加わってもマイクロカプセルが壊れないものである必要があり、粒径などが選定される。
【0037】
発泡体用ゴム組成物の押出成形または射出成形によって成形され、加硫発泡された発泡成形体では、膨張した後の熱膨張性マイクロカプセルの数(含有量)と粒径によって気泡の量と大きさが定まり、これらから成形体の密度が定まる。そのため、発泡体用ゴム組成物に混合する未膨張の熱膨張性マイクロカプセルの数(含有量)と成形途中の加熱による膨張後の熱膨張性マイクロカプセルの粒径の予測によって発泡状態のコントロールが可能となる。したがって、従来のガスを直接膨張させる場合に比べて、ガスだけが外部に逃げることもなく、比較的容易に所定の密度にすることができる。
【0038】
発泡体用ゴム組成物の押出成形または射出成形によって成形され、加硫発泡された発泡成形体では、熱膨張性マイクロカプセルが膨張されて包含された状態で発泡体を成形することができ、各気泡はマイクロカプセルで包まれた状態で安定している。そのため、押出成形の場合であっても、ダイから押出されて圧力が開放された状態でもガスが直接成形品の外部に抜けることもなく、表面外観の良好な発泡体を得ることができる。
【0039】
熱膨張型発泡剤を使用する際に肝要なことは、その粒径と熱膨張開始温度であり、さらには、最大膨張温度である。
熱膨張型発泡剤の粒径は、熱膨張前の粒径が18〜50μmである。好ましくは20〜40μmであり、より好ましくは20〜38μmである。当該範囲では、低密度化と寸法安定性の効果を期待できる。前記範囲より小さい熱膨張型発泡剤を使用すると、低密度化を図る効果が少なくなる。一方、前記範囲より大きい熱膨張型発泡剤を使用すると、成形品の表面肌が荒れて、平滑性が低下する。
【0040】
本発明者は、VCRをベースのゴム材料として用い、熱膨張型発泡剤を発泡剤として用いることを前提に、加硫反応と発泡特性との関係について検討を進めた。その結果、加硫温度よりも25〜40℃程度低い温度で熱膨張型発泡剤が熱膨張を開始するように制御することによって、加硫反応と発泡反応とのバランスが良好となり、ポストキュア工程を行うことなしに従来の発泡成形品と同等以上の寸法安定性を有した発泡成形品が得られることを見出した。さらに、加硫温度よりも5〜35℃程度高い温度で、熱膨張型発泡剤が最大膨張を生じるように設定することによって、引張強度、伸び、引裂強度等により優れた良好な発泡状態となることを見出した。本発明はこのような知見を基に達成されたものである。
【0041】
熱膨張型発泡剤の熱膨張開始温度は、115〜135℃である。好ましくは115〜132℃である。熱膨張開始温度が上記範囲より低いと、加工の早い段階で発泡が開始してしまうため、加硫前に膨張が起こってしまい、熱膨張型発泡剤の殻が過加硫により縮小することで密度が高くなる。一方、熱膨張開始温度が上記範囲より高いと、マイクロカプセルを十分に膨張させる事ができず、密度が高くなり好ましくない。
【0042】
熱膨張型発泡剤の最大膨張温度は、160〜210℃であることが好ましく、160〜204℃であることがより好ましい。熱膨張型発泡剤の最大膨張温度が上記範囲より低いと、過加硫により縮小することで密度が高くなる。一方、熱膨張型発泡剤の最大膨張温度が上記範囲より高いと、熱膨張型発泡剤の殻の膨張が最大に達せず、密度が高くなる。
【0043】
熱膨張型発泡剤の配合量としては、全ゴム分100質量部に対して、2.0〜10.0質量部であり、好ましくは2.5〜9.5質量部、特に好ましくは3.0〜9.0質量部である。上記配合範囲では、加硫初期の発泡圧力上昇に伴いエアーの除去や寸法安定性、低密度化に伴う諸物性(引張強度、破断伸びや引裂強度)の低下を抑えることができる。配合量が2.0質量部より少ないと、低密度化を図る効果が少なくなることや寸法安定性の低下という問題が生じる。一方、配合量が10.0質量部より多いと、加工性の低下や成形品の表面肌の荒れ(平滑性)の問題が生ずる。
【0044】
なお、熱膨張型発泡剤は、マスターバッチ化したものまたはマスターバッタ化していないもののどちらでも用いることができる。マスターバッチのマトリックス成分としては、イソプレンゴム(IR)やスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)が最適である。
【0045】
なお、本発明の発泡体用ゴム組成物では、前記の熱膨張型発泡剤と合わせて、本発明の効果に支障を与えない範囲で、従来型のADCA(アゾジカルボンアミド)、OBSH(4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド))、DPT(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン)等の熱分解型発泡剤を併用して使用することができる。
【0046】
(過酸化物)
本発明に係る発泡体用ゴム組成物に配合される過酸化物としては、ベンゾイールパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1’−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチレンシクロヘキサン、1,3−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ジイソプロピルベンゼン等がある。特に、ジクミルパーオキサイド(以下、「DCP」と略記する)が好ましい。
過酸化物は、加硫工程の段階で組み込まれることが必要である。後述する加硫促進剤や加硫剤との組み合わせによって使用される。
【0047】
本発明のもう一つの肝要な点は、加硫工程において過酸化物を使用することである。過酸化物を使用することで、加硫促進剤の加硫促進効果が原因で生じやすい発泡剤に起因する発泡ガスの発生しづらさを改善し、加硫反応をマイルドに進めるだけでなく、しっかりと加硫することができるようになる。
【0048】
配合する過酸化物の量としては、全ゴム分100質量部に対して、0.20〜0.35質量部が好ましく、0.27〜0.33質量部がより好ましい。過酸化物の配合量が前記範囲より多過ぎると、架橋密度が上がり、発泡しにくくなり、高密度となったり、機械的強度が低下する。
【0049】
(ゴム補強剤)
本発明に係るゴム組成物に配合されるゴム補強剤としては、各種のカーボンブラック、ホワイトカーボン、シリカ、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中では、シリカとカーボンブラックが好ましい。さらに、乾式法による無水ケイ酸、湿式法による含水ケイ酸、合成ケイ酸塩等の平均一次粒径5〜100nmのシリカ、及び粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)給油量が70ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。
【0050】
カーボンブラックとしてはファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック等が挙げられ、より具体的には、ASTMコードNo.110、212、N242、S315、N330、N550、N660、N765等が挙げられる。
【0051】
シリカは、湿式シリカ及び乾式シリカのどちらでも用いることができる。シリカは単独で用いることもできるし、併用することもできる。シリカの純度は、97%以上であるものが好ましい。また、シリカの純度が97%以上の天然石英を粉砕したものも用いることができる。さらに、シラン等の有機珪素化合物を加水分解して得られた粒子も好ましく用いられる。純度が97%未満のシリカは、ゴムの補強効果が充分ではないので、このようなシリカをブレンドしたゴム組成物は耐摩耗性が充分ではない。
【0052】
シリカ粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは1〜50μm、特に好ましくは5〜50μmの範囲である。かかるシリカ粒径は、例えば完全溶融した石英ガラスを然るべき粒径になるように粉砕するなどの方法により得ることができる。シリカ粒子の平均粒径が0.1μmより小さいと、ゴム内に混入しづらく、ロスや分散不良の問題を生じ易い。一方、シリカ粒子の平均粒径が50μmより大きいと、補強効果が低い。
【0053】
配合するゴム補強剤の量は、全ゴム分100質量部に対して、10〜30質量部が好ましく、12〜25質量部がより好ましく、15〜20質量部がさらに好ましい。前述の範囲内では、補強効果が充分得られ、耐摩耗性向上の効果を得ることができる。ゴム補強剤の量が10質量部より少ない量と、補強効果が低く、諸物性(機械的強度や耐摩耗性)が低下する。一方、ゴム補強剤の量が30質量部より多いと、粘度上昇に伴って加工性が低下する。
【0054】
(加硫促進剤)
本発明で用いられる加硫促進剤としては、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類等が挙げられる。より具体的には、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(OBS)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、ジンクジ-n-ブチルジチオカーバイド(ZnBDC)、ジンクジメチルジチオカーバイド(ZnMDC)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等が挙げられる。これらの中でも特に、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)が好ましい。
【0055】
配合する加硫促進剤の量は、全ゴム分100質量部に対して、0.5〜2.0質量部が好ましく、0.7〜1.8質量部がより好ましく、0.8〜1.5質量部がさらに好ましい。前述の範囲内では、加硫効果が充分得ることができる。加硫促進剤の量が0.5質量部より少ないと、加硫時間が遅延したり、架橋密度が低下して諸物性が低下する。一方、加硫促進剤の量が2.0質量部より多いと、架橋反応が先行して起こり、発泡を阻害する。
【0056】
(加硫剤)
本発明で用いる加硫剤としては、硫黄、加熱により硫黄を生成させる化合物、酸化マグネシウム等の金属酸化物、多官能性モノマー、シラノール化合物等が挙げられる。加熱によって硫黄を生成させる化合物として、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等が挙げられる。これらの中でも特に硫黄が好ましい。
【0057】
加硫剤の配合量としては、全ゴム分100質量部に対して、0.2〜2.0質量部が好ましく、0.5〜1.8質量部がより好ましく、0.8〜1.5質量部がさらに好ましい。前記の範囲内では、加硫効果が充分得ることができる。加硫剤の量が0.2質量部より少ないと、加硫時間の遅延や架橋密度の低下による諸物性の低下の問題が生じる。一方、加硫剤の量が2.0質量部より多いと、架橋反応が先行して起こり、発泡を阻害する。
【0058】
(その他の添加剤)
本発明の発泡体用ゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲内で、ゴム業界で通常用いられる各種添加剤を配合することができる。例えば、老化防止剤、加工助剤、プロセスオイル、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などがある。
【0059】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、例えば、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系、燐系等が挙げられる。
【0060】
(加硫助剤)
加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えば、アルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類等が用いられる。
【0061】
(スコーチ防止剤)
スコーチ防止剤(リターダー)としては、例えば、有機酸やニトロソ化合物、N-シクロヘキシルチオフタルイミド、スルホンアミド誘導体等が用いられる。
【0062】
(プロセスオイル)
プロセスオイルとしては、ナフテン系及びパラフィン系のいずれを用いてもよい。
【0063】
[発泡体用ゴム組成物の製造方法]
本発明の発泡体用ゴム組成物の製造方法について、具体例に基づいて説明する。
(A)沸騰n−ヘキサン不溶分;1〜25質量%で、沸騰n−ヘキサン可溶分;99〜75質量%であるVCR、(B)(A)以外のジエン系ゴム及び(C)熱可塑性樹脂からなる組成物に対して、(A)+(B)+(C)を全ゴム分100質量部として、加硫前の段階で、加硫剤、加硫促進剤とともに、過酸化物を0.20〜0.35質量部投入する。次いで、粒径が18〜50μmであり、熱膨張開始温度が115〜135℃であって、最大膨張温度が160〜210℃である熱膨張型発泡剤2.0〜10.0質量部からなる発泡剤を添加して、発泡体用ゴム組成物を作製する。当該一連の工程はロール等の開放式混練機、バンバリーミキサー等の密閉式混練機などの混練機を用いて、混練りすることによって行うことができる。成形加工後に所定の温度で加硫発泡を行い、発泡体用ゴム組成物を用いた発泡ゴム成形体を製造することができる。得られた発泡ゴム成形体は、ポストキュア工程が不要であり、低密度であって、寸法安定性に優れ、引張強度・破断伸びが大きく、モールド成型性に優れたものである。
【0064】
図1は、発泡ゴム成形体の密度(g/cm
3)と反撥弾性率(%)との関係を示す図である。
図1において、●は後記する本発明の実施例を示し、◆は後記する本発明の比較例を示す。
本発明の発泡ゴム成形体は、組成や発泡剤の種類等を変えることによって、種々の密度や反撥弾性率を有したものとすることができる。特に、発泡ゴム成形体の密度としては、低密度の観点から、0.55〜0.85g/cm
3が好ましく、0.60〜0.75g/cm
3がより好ましい。また、発泡ゴム成形体の反撥弾性率としては、靴底等の用途における反撥力と衝撃吸収の観点から、40〜55%が好ましく、43〜50%がより好ましい。
図1において、外側の四角で囲まれた範囲が好ましい範囲を示し、内側の四角で囲まれた範囲がより好ましい範囲を示す。後記する本発明の実施例はいずれも、外側の四角で囲まれた好ましい範囲に存在することが分かる。
【0065】
[靴底発泡体用ゴム組成物、靴底用ゴム発泡体、靴底]
(A)沸騰n−ヘキサン不溶分;1〜25質量%で、沸騰n−ヘキサン可溶分;99〜75質量%であるVCR、(B)(A)以外のジエン系ゴム及び(C)熱可塑性樹脂からなる組成物に対して、(A)+(B)+(C)を全ゴム分100質量部として、加硫前の段階で、加硫剤、加硫促進剤とともに、過酸化物を0.20〜0.35質量部投入する。次いで、粒径が18〜50μmであり、熱膨張開始温度が115〜135℃であって、最大膨張温度が160〜210℃である熱膨張型発泡剤2.0〜10.0質量部からなる発泡剤とゴム補強剤10〜30質量部を添加して、発泡体用ゴム組成物を作製する。
かかる発泡体用ゴム組成物は、靴底発泡体用ゴム組成物として使用することができる。靴底用金型を用いて成形加工後に所定の温度で加硫発泡を行い、得られた発泡ゴム成形体である靴底用ゴム発泡体および靴底は、ポストキュア工程が不要であり、低密度であって、寸法安定性に優れ、引張強度・破断伸びが大きく、モールド成型性に優れたものである。
【実施例】
【0066】
以下、実施例、比較例に基づいて、さらに具体的に説明する。
表1に実施例、比較例に用いる熱膨張型発泡剤とその性能を示した。尚、熱膨張型発泡剤の粒径はレーザー回折・散乱法によって測定することができる。また、熱膨張型発泡剤の膨張開始温度と最高膨張温度は、熱機械分析(TMA)法によって測定することができる。
【0067】
【表1】
【0068】
また、実施例、比較例の発泡体用ゴム組成物の作製に用いた材料は、以下のとおりである。
(A)VCR;宇部興産社製、VCR450
(B)ジエン系ゴム;天然ゴム、SMR−L(標準マレーシアゴム)
(C)熱可塑性樹脂;1,2−ポリブタジエン樹脂、JSR社製、RB820、融点95℃
(D)熱膨張型発泡剤;
松本油脂社製、マツモトマイクロスフェアー(登録商標);F−82、FN−82D、FN−78D
AKZO NOBEL社製、EXPANCEL(登録商標);920DU40、009DU80、930DU120
(E)熱分解型発泡剤;三協化成社製、ADCA(分解温度200〜210℃)、OBSH(分解温度155〜165℃)
(F)添加剤
・ゴム補強剤;シリカ、東ソー・シリカ株式会社製、ウルトラジルVN3−GR
・ポリエチレングリコール;#4000、加硫反応活性化剤
・亜鉛華;堺化学工業製、Sazex1号
・ステアリン酸;旭電化株式会社製、アデカ脂肪酸SA−300
・老化防止剤;ユニロイヤル社製、ナウガード445
・加硫促進剤;大内新興化学工業株式会社製、ノクセラーDM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)、ノクセラーDT(1,3-ジ-o-トリルグアニジン)、ノクセラーTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
・加硫剤;硫黄、エスアンドエスジャパン社製、不溶性硫黄ストラクトール SU109
・過酸化物;ジクミルパーオキサイド(DCP)
【0069】
上記組成物を製造するために、密閉式混練装置として、南千住製作所製の1.7インターナルミキサーを用いた。また、オープンロールとして、株式会社ショージ製の10インチロールを用いた。
【0070】
表2に、実施例と比較例の発泡体用ゴム組成物の配合表を示した。
【0071】
【表2】
【0072】
(実施例1)
表2に記載のVCR450/天然ゴム/RB820を配合比60/5/35(質量部)にし、ゴム補強剤であるシリカと亜鉛華とステアリン酸などの添加剤と共に1.7リットルの密閉式混練装置を使用して混錬した。その後、加硫促進剤と硫黄と過酸化物、並びに熱膨張型発泡剤F−82、3.0質量部をオープンロールで混合した。次いで、155℃で13分間加熱プレス機を用いて加硫、発泡させて、2mm厚のシートを作製した。かかるシートから評価用試験片を切り出した。
【0073】
また、DIN摩耗性の評価用試験片だけは、155℃で14分間加熱プレス機を用いて加硫して、2mm厚のシートを作製したものから評価用試験片を切り出した。
また、比較例1だけは、通常の評価用試験片の加硫時間を155℃で10分間とし、DIN摩耗性の評価用試験片の加硫時間を155℃で11分間とした。
得られた評価用試験片を用いて、比較例1以外は、ポストキュアを行わないで各種物性を評価した。
【0074】
(実施例2)
熱膨張型発泡剤F−82の量を6.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0075】
(実施例3)
熱膨張型発泡剤F−82の量を7.8質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0076】
(実施例4)
熱膨張型発泡剤の種類と量を、FN−82D、3.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0077】
(実施例5)
熱膨張型発泡剤の種類と量を、FN−82D、6.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0078】
(実施例6)
熱膨張型発泡剤の種類と量を、EXPANCEL009DU80、7.8質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0079】
(実施例7)
熱膨張型発泡剤の種類と量を、EXPANCEL930DU120、7.8質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0080】
(比較例1)
発泡剤の種類と量を、熱膨張型発泡剤EXPANCEL920DU40、1.0質量部、熱分解型発泡剤ADCA3.0質量部、OBSH3.0質量部を併用したものとした以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。その後、熱風乾燥機を用いて、70℃で2時間のポストキュアを行い、各種物性の評価に供した。
【0081】
(比較例2)
発泡剤の種類と量を、熱分解型発泡剤ADCA4.0質量部、OBSH1.5質量部を併用したものとした以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0082】
(比較例3)
発泡剤の種類と量を、熱膨張型発泡剤EXPANCEL920DU40、7.8質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0083】
(比較例4)
発泡剤の種類と量を、熱膨張型発泡剤FN−78D、7.0質量部に変えた以外は、実施例1と同様の条件で評価用試験片を作製した。
【0084】
評価用試験片の各種物性の評価条件は、以下の通りである。
【0085】
(1)配合物ムーニー粘度
JIS K6300−1に準じて、100℃にて測定した。
【0086】
(2)加硫時間
ALPHA TECHNOLOGIES社製RPA2000(ロータレス型、ゴム加工性解析装置)を用いて、JIS K6300に従って155℃における10%及び90%加硫度に達する時間を測定した。
【0087】
(3)発泡圧力
ALPHA TECHNOLOGIES社製RPA2000(ロータレス型、ゴム加工性解析装置)を用いて、JIS K6300に従って155℃における10%及び90%加硫度に達する発泡圧力を測定した。圧力の数値が高いほど良好であることを示す。
【0088】
(4)膨張率
成型品作成後、室温で3時間経過後の長さL1を測定した。さらに室温で1日経過後の長さL2を測定した。L1に対するL2の膨張率を算出した。数値が大きいほど膨張していることを示す。
【0089】
(5)密度(比重)
JIS K6268に準じて、A法で測定した。
【0090】
(6)引張弾性率(モジュラス)、引張強度、破断伸び
JIS K6251に従って測定した。数値が高いほど良好であることを示す。
【0091】
(7)引裂強度
JIS K6252に従って測定した。アングル形とトラウザー形の試験片を用いて評価を行った。数値が高いほど金型から製品を剥がす際に引裂かれることがなく良好であることを示す。
【0092】
(8)DIN摩耗
JIS K6264に従って摩耗減量を測定した。DIN Indexの数値が小さいほどDIN摩耗性能が良好な物性を示す。
【0093】
(9)アクロン(Akron)摩耗
JIS K6264に従い摩耗減量を測定した。摩耗減量(cc)の数値が小さいほどアクロン摩耗性能が良好な物性を示す。
【0094】
(10)反撥弾性率
JIS K6255に準じて、トリプソ式を用いて測定した。反撥弾性率の数値(%)が大きいほど、反撥が大きいことを示す。
【0095】
(11)収縮率
成型品作成後、室温で3時間経過後の長さL1を測定した。さらに室温で5日経過後の長さL2を測定した。L1に対するL2の収縮率を算出した。数値が小さいほど寸法安定性が良好であることを示す。
【0096】
(12)熱収縮率
成型品作成した後、室温で1日経過後の試料に標線長さ10cmのL1を付記した。さらに70℃で6時間の加熱処理を行い、その後室温で1日経過後の長さL2を測定した。L1に対するL2の収縮率を算出した。数値が小さいほど寸法安定性が良好であることを示す。
【0097】
各評価用試験片の評価結果を表3に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
表3から分かるように、実施例はいずれも、引張弾性率(モジュラス)、引張強度、破断伸び、引裂強度、DIN摩耗強度、アクロン摩耗強度、反撥弾性率、収縮率、熱収縮率において、バランスの取れた物性を有していた。特に、ポストキュアを行っていないにもかかわらず、収縮率と熱収縮率は、良好なものであった。
【0100】
比較例1は、従来タイプの熱分解型発泡剤と熱膨張型発泡剤を併用して、ポストキュアを行ったものである。密度が同レベルの実施例3と比較例1とを比べると、実施例3の収縮率は比較例1と同等であるが、実施例3の熱収縮率は比較例1よりも良好なものであった。また、実施例3は、比較例1よりも引張強度、破断伸び、耐摩耗性において優れたものであった。
比較例2は、従来タイプの熱分解型発泡剤を用いて、ポストキュアを行っていないものである。密度が同レベルの実施例2と比較例2とを比べると、実施例2は、比較例2よりも、引張強度、破断伸び、収縮率、熱収縮率において、優れたものであった。
【0101】
比較例3は、本発明とは異なる種類の熱膨張型発泡剤を用いたものである。粒径が本発明と異なっている。密度が同レベルの実施例2と比較例3とを比べると、比較例3は、収縮率と熱収縮率は実施例2と同等であったが、アクロン摩耗において実施例2より劣るものであった。発泡状態の差に起因するものと推定される。
比較例4は、本発明とは異なる種類の熱膨張型発泡剤を用いたものである。膨張開始温度が本発明に比べて低い範囲のものである。また、最高膨張温度も本発明に比べてやや低い範囲のものである。そのため、密度が近いレベルの実施例6と比較例4とを比べると、比較例4は、収縮率と熱収縮率は実施例6と同等であったが、引張強度、引裂強度(アングル型)において実施例6より劣るものであった。