(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本実施形態について説明する。
なお、本実施形態において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0009】
(静電荷像現像用トナー)
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、結着樹脂、及び、結晶性物質を含有し、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、吸熱ピークが90℃以上115℃以下に存在し、動的粘弾性測定において、115℃以上125℃以下にtanδの極大値が存在し、かつ、該tanδの極大値が1以上2以下であり、該tanδの極大値におけるG”が10
3以上10
4以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明者らは、熱容量が大きい記録媒体、例えば、秤量が高い厚紙に連続印刷した場合、定着ロールの設定温度を高くする必要があり、その結果、圧力ロールの温度も高くなることを見出した。また、圧力ロール温度が高い状態で、熱容量が小さい記録媒体、例えば、秤量が小さい薄紙に、裏面の画像密度が高い画像(例えば、ベタ画像)を両面印刷すると、裏面の画像密度が高い画像に温度が高い圧力ロールが接することになり、裏面の画像の一部が軟化し、トナー画像の耐久性が低下することにより、圧力ロールとの接触ストレスを受けて裏面の画像荒れが発生することを見出した。
本発明者らは鋭意検討した結果、本実施形態の静電荷像現像用トナーを用いることで、上記の課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに到った。
その詳細な作用機序は不明であるが、以下のように推定される。
熱容量が大きい記録媒体を連続プリントした直後の圧力ロール温度は、定着ロールの設定温度にも依存するが、約115℃〜125℃であると推測される。前記温度帯にトナーのtanδの極大値を存在させ、更に、tanδの極大値を1〜2に調整することにより、溶融したトナー粒子同士が融着しながらも、トナー粒子同士の凝集力により散逸せず、高い耐久性が得られると考えられる。tanδは、G”(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率)で表されるが、トナーが溶融状態となる高温度領域(115℃〜125℃)にtanδが極大値を有するということは、すなわち、弾性が支配的な状態であり、それにより、前記の効果が得られると感が得られる。更に、DSC曲線において、吸熱ピークが90℃〜115℃に存在し、かつ、115℃〜125℃の範囲におけるtanδの極大値においてG”が10
3〜10
4であることにより、115℃〜125℃において、適度に結晶性物質の粘度が低下してトナー表面に浸出し、離型性が向上すると考えられる。
【0011】
<DSC曲線における吸熱ピーク>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、吸熱ピークが90℃以上115℃以下に存在する。吸熱ピークが90℃未満、又は、115℃を超えると、画像濃度差が大きくなる傾向がある。
前記吸熱ピークは、95℃〜105℃であることがより好ましい。
【0012】
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、吸熱ピークが90℃以上115℃以下に存在するように、本実施形態において、結晶性物質として、90℃以上115℃以下に融点を有する化合物を使用することが好ましい。
結晶性物質としては、所謂離型剤として公知の化合物の中から、所望の融点を有する化合物を適宜選択して使用することが好ましい。
【0013】
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線は、ASTM D3418−99に準じて測定される。測定には、示差走査熱量測定装置((株)島津製作所製、商品名:DSC−60A)を使用し、装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の溶融温度を用い、熱量の補正については、インジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを使用し、対象用に空のパンをセットし、測定を行う。
より具体的には、トナー8mgを、DSC−60Aのサンプルホルダーにセットし、昇温速度10℃/分として、0℃〜150℃まで1回目の昇温を行い、DSC−60A用解析ソフトウェアにより算出する。
【0014】
<tanδ及びその極大値、並びに、G”>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、動的粘弾性測定において、115℃以上125℃以下にtanδの極大値が存在し、かつ、該tanδの極大値が1以上2以下である。また、115℃以上125℃以下の範囲におけるG”が10
3以上10
4以下である。
tanδが115℃以上125℃以下に極大値を有しないと、画像濃度の差が大きくなる傾向がある。
tanδの極大値は、120〜125℃に存在することが好ましい。
【0015】
115℃以上125℃以下に存在するtanδの極大値は、1以上2以下である。tanδの極大値が1未満、又は、2を超えると、画像濃度の差が大きくなる。
115℃以上125℃以下に存在するtanδの極大値は、1.2〜1.6であることが好ましい。
tanδが極大値を示す温度におけるG”は、10
3以上10
4以下である。
tanδが極大値を示す温度におけるG”は、2×10
3以上7×10
3以下であることが好ましい。
【0016】
tanδが極大値を示す温度は、結着樹脂の重量平均分子量により制御される。結着樹脂の重量平均分子量が大きくなると、粘性及び弾性の両方が高くなるため、tanδが極大値を示す温度が高温側にシフトする傾向にある。
また、tanδの極大値は、凝集剤として使用する硫酸アルミニウム等のアルミニウム塩の量によって制御される。アルミニウム元素が、結着樹脂と架橋構造を形成するためと推定され、アルミニウム塩の量が多くなると、tanδの極大値が大きくなる傾向にある。
更に、G”の値は、結晶性物質の量によって制御される。粘性が低い、結晶性物質の量が多いほど、G”が低くなるためと考えられる。
【0017】
tanδは、動的粘弾性温度依存性測定により、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’を求め、G”/G’で定義される。ここで、G’は、変形時、歪みに対して発生する応力の関係における弾性率の弾性応答成分であり、変形仕事に対するエネルギーは貯蔵される。一方、前記弾性率の粘性応答成分がG”である。また、G”/G’で定義されるtanδは、変形仕事に対するエネルギーの損失と貯蔵の割合の尺度となる。
【0018】
貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、例えば、回転平板型レオメータ(TA Instruments社製:ARES)を用いて測定可能である。測定の一例として、レオメータ(レオメトリックサイエンティフィック社製:ARESレオメータ)を使用し、パラレルプレートを用いて周波数1Hzの条件で、昇温測定を行う。サンプルセットを120℃〜140℃程度で行い、室温(30℃以下)まで冷却した後、30℃で3時間保持してから昇温速度2℃/分で加熱し、1℃毎に昇温時の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及びtanδを測定する。
tanδの測定に供されるサンプルは、下記方法により調製される。
測定すべきトナー又はトナー粒子をプレス成型機を用いて常温(例えば25℃)にて錠剤型へ成形することによりトナー粒子間に空隙のほぼないサンプルを作製することができる。これを使用しtanδ測定を実施する。
【0019】
<結晶性物質により形成されるドメイン>
本実施形態において、静電荷像現像用トナーは、トナー粒子断面のTEM(透過型電子顕微鏡、Transmission Electoron Microscope)観察において、結晶性物質が平均円相当径が0.15μm以上1.0μm以下のドメインを形成し、かつ、前記ドメインのトナー粒子表面からの平均距離が0μm以上0.30μm以下であることが好ましい。
図1は、本実施形態における静電荷像現像用トナーのトナー粒子断面のTEM観察画像の一例を示す模式図である。
図1において、トナー1は、結晶性物質のドメインA、B、及びCを有している。
本実施形態において、結晶性物質により形成されるドメインの平均円相当径は、0.15〜1.0μmであることが好ましい。平均円相当径が上記範囲内であると、結着樹脂との相溶性が適当になるため、画像濃度差が減少するために好ましい。結晶性物質により形成されるドメインの平均円相当径は、0.3〜0.6μmであることがより好ましい。
【0020】
また、結晶性物質により形成されるドメインの、トナー粒子表面からの平均距離が、0μm〜0.3μmであることが好ましい。ここで、結晶性物質により形成されるドメインのトナー粒子表面からの距離は、トナー粒子の表面から、結晶性物質により形成されるドメインまでの最短距離を意味し、結晶性物質がトナー表面に露出している場合には、トナー表面からの距離は0μmである。
図1中、結晶性物質により形成されるドメインBのトナー粒子表面からの距離を、矢印で示している。
結晶性物質により形成されるドメインのトナー粒子表面からの平均距離は、0.05μm〜0.25μmであることがより好ましい。
【0021】
結晶性物質により形成されるドメインを上記のようにするためには、後述する凝集合一法において、結晶性物質をシェル層として追添加することが好ましい。これにより、トナー粒子表面の近くに結晶性物質のドメインを配置することができる。
また、結晶性物質のドメインの平均円相当径及びトナー粒子表面からの距離は、後述する凝集合一法における、pH、加熱温度(合一温度)、加熱時間(合一時間)等を変更することで、適宜制御すればよい。
具体的には、前記ドメインは、合一工程において、トナー中の結晶性物質が一度溶融し、再度結晶化する際に形成されると考えられ、温度が高く、時間が長くなるほど、ドメイン径が大きくなる傾向がある。
結晶性物質のドメインのトナー表面からの距離については、合一工程のpHによって制御される。結晶性物質は結着樹脂と比較して、疎水的な性質を持つため、結晶性物質が形成される合一工程でのpHが低く、疎水的であると、よりトナー表面に近く存在する傾向がある。
【0022】
結晶性物質により形成するドメインの円相当径、及び、トナー粒子表面からの距離の測定方法は特に限定されないが、四酸化ルテニウムによりトナー断面を染色し、測定することが好ましく、具体的には、以下の方法で測定することがより好ましい。
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームによって厚さ100nmに切片化する。前記トナーは外添剤を有するものであっても、有しない又は除去したものであってもよい。前記トナーの断面を、四酸化ルテニウム0.5重量%水溶液を用いて染色し、走査型電子顕微鏡(TEM)によって観察する。前記トナーの断面中、色のコントラストから結着樹脂、結晶性物質が形成するドメインを判別し、結晶性物質が形成するドメインの円相当径、結晶性物質が形成するドメインのトナー粒子表面からの距離を測定した。
トナー粒子100個における結晶性物質が形成するドメインの円相当径、結晶性物質が形成するドメインのトナー粒子表面からの距離の平均値を算出し、それらを結晶性物質が形成するドメインの平均円相当径、結晶性物質が形成するドメインのトナー粒子表面からの平均距離とする。
【0023】
以下、本実施形態の静電荷像現像用トナーに使用される各成分、及び、その製造方法について詳述する。
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、トナー母粒子に外添剤が外添されたトナーであることが好ましい。
また、本実施形態の静電荷像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂及び結晶性物質を含有し、着色剤等の他の成分を含有することが好ましい。なお、トナー母粒子が結着樹脂及び結晶性物質を含有することが好ましい。
【0024】
<結着樹脂>
本実施形態に用いられる結着樹脂(以下、単に樹脂ともいう。)又は結着樹脂粒子(以下、樹脂微粒子ともいう。)は、特に制限はないが、一般に乳化重合法などによりイオン性界面活性剤を含有する樹脂微粒子分散液を調製して使用する。また、溶剤に溶解した後、水媒体に相転する相転乳化や、樹脂の極性や添加剤を利用した自己乳化法による樹脂微粒子分散液を用いてもよい。
【0025】
本実施形態で使用する樹脂又は樹脂微粒子として使用できる重合体は多岐にわたり特に制限はないが、ビニル系単量体を含むエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体が好ましく使用できる。これらの単独重合体又は共重合体を構成する単量体としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン類などや、β―カルボキシエチルアクリレートが例示できる。これらの単量体からなる単独重合体、又はこれらを2種以上共重合して得られる共重合体、更にはこれらの混合物を使用することができる。
また、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂等、非ビニル縮合系樹脂、又は、これらと前記エチレン性不飽和付加重合体樹脂との混合物や、これらの共存下でエチレン性不飽和単量体を重合して得られるグラフト重合体等を挙げることができる。
【0026】
重合開始剤としては、いずれか適当な重合開始剤、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の過酸化物系重合開始剤、ドデカンチオール等のチオール類、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
一方、本実施形態のトナーにおいてポリエステル樹脂を用いることも好ましい。ポリエステル樹脂においては、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。乳化分散に用いるポリエステル樹脂は多価カルボン酸と多価アルコールから合成される。
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造とするためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)を併用してもよい。
【0028】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、更にモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、及び/又はカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整してもよい。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0029】
ポリエステル樹脂は前記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、前記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1重量%とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態で使用する結着樹脂のガラス転移温度(ガラス転移点)は50〜70℃であることが好ましく、55〜65℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が前記範囲内であると、低温定着に好適であるので好ましい。
本実施形態に使用する結着樹脂の重量平均分子量Mwは、5,000〜50,000であることが好ましく、特にビニル系単量体を含むエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)の場合には8,000〜40,000であることがより好ましく、ポリエステル樹脂の場合には8,000〜30,000であることがより好ましい。
【0031】
エチレン性不飽和単量体を重合する場合は、イオン性界面活性剤などを用いて乳化重合を実施して樹脂微粒子分散液を作製することができる。また、その他の樹脂の場合は、油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に溶かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質とともにホモジナイザーなどの分散機で水中に微粒子として分散させ、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂微粒子分散液を作製することができる。これらの分散液中の樹脂微粒子の粒径は例えばレーザー回析式粒度分布測定装置LA−700((株)堀場製作所製)で測定することができる。
分散液中の樹脂微粒子の粒径は、100〜300nmであることが好ましく、150〜250nmであることがより好ましい。粒径が前記範囲内であると、得られるトナーの粒度分布が狭く、また、遊離粒子を生じず、トナーの性能や信頼性が向上するので好ましい。
【0032】
本実施形態において、結着樹脂としては、エチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体が好ましく、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類と、(メタ)アクリル酸、及び/又は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類との共重合体がより好ましい。スチレン類と(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステル類との共重合体(以下、スチレン−アクリル系樹脂ともいう。)を含有することにより、結晶性物質のドメインの形成が容易であるので好ましい。
【0033】
結着樹脂として、スチレン−アクリル系樹脂を使用する場合、組成と、反応のしやすさから、多くはスチレン−スチレンの結合になる。アクリル酸エステルは偏在するようになり、この偏在から、エステル部分が互いに並びやすく、部分的に結晶構造を有すると考えられ、アクリル酸エステルを多く含むほど、tanδが極大値を示す温度は低下し、またエステル部分の炭素数が多く、また直鎖であるほど極大値におけるtanδは増加する傾向にある。
【0034】
結着樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー母粒子全体に対して、60〜95重量%が好ましく、70〜90重量%がより好ましい。
なお、2種以上の結着樹脂を含有する場合には、合計の含有量が上記の範囲であることが好ましい。
【0035】
<結晶性物質>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、結晶性物質を含有する。
結晶性物質としては特に限定されず、所謂離型剤といわれる各種の化合物を結晶性物質として使用してもよく、また、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪酸の長鎖アルキルエステルを含むオリゴマーや重合体などを使用してもよいが、結晶性物質として離型剤を使用することが好ましい。
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
これらの中でも、離型剤としては、炭化水素系ワックスが好ましい。炭化水素系ワックスは、樹脂との相溶が適度に生じ、ドメインを形成しやすい点で特に好ましい。
【0036】
結晶性物質の融点は、85℃〜120℃であることが好ましく、88℃〜117℃であることがより好ましく、90℃〜115℃であることが更に好ましい。上記の融点を有する結晶性物質を含有することにより、DCS曲線において、90℃〜115℃に吸熱ピークを有する静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0037】
離型剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、離型剤の少なくとも1つが、上記範囲の融点を有していることが好ましく、全ての離型剤が上記範囲の融点を有していることがより好ましい。
離型剤の含有量としては、例えば、トナー母粒子全体に対して、1〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がより好ましい。
2種以上の離型剤を併用する場合には、合計して上記の範囲内とすることが好ましい。
【0038】
<着色剤>
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、画像に視認性を付与すること等を目的として、着色剤を含有してもよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
【0039】
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
着色剤の含有量としては、例えば、トナー母粒子全体に対して、1〜30重量%が好ましく、3〜15重量%がより好ましい。
【0040】
<他の添加剤>
本実施形態の静電荷像現像用トナーには、前記したような成分以外にも、更に必要に応じて内添剤、帯電制御剤等の種々の成分を添加してもよい。
内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。
帯電制御剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に用いられるトナー母粒子は、特に製造方法により限定されるものではなく、公知の方法を使用することができる。具体例としては、以下に示す方法が挙げられる。
トナー母粒子の製造は、例えば、結着樹脂と、着色剤、離型剤、及び、必要に応じて帯電制御剤等とを混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂を乳化して分散した分散液と、着色剤、離型剤、及び、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化凝集法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、離型剤、及び、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤、離型剤、及び、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶剤に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と着色剤、離型剤、及び、必要に応じて帯電制御剤等の溶液とを水系溶剤に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が使用できる。また、前記方法で得られたトナー母粒子をコアにして、更に凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を持たせる製造方法を行ってもよい。
これらの中でも、本実施形態のトナーは、乳化凝集法、又は、乳化重合凝集法により得られたトナー(乳化凝集トナー)であることが好ましい。
【0042】
<トナー粒子の特性等>
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被
覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であっても
よい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及
び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被
覆層と、で構成されていることが好ましい。
【0043】
トナー粒子の体積平均粒子径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
なお、トナー粒子の各種粒子径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター(株)製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター(株)製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒子径D50v、数平均粒子径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0044】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
【0046】
前記式において、MLは各々のトナー母粒子の最大長を表し、Aは各々のトナー母粒子の投影面積を表す。
なお、前記形状係数SF1の平均値(平均形状係数)は、250倍に拡大した1,000個のトナー像を光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEX III、(株)ニレコ製)に取り込み、その最大長及び投影面積から、個々の粒子について前記SF1の値を求め平均したものである。
【0047】
<外添剤>
本実施形態において、静電荷像現像用トナーは、トナー母粒子と、該トナー母粒子に外添された外添剤とを含有することが好ましい。
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)
n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100部に対して、1部以上10
部である。
【0048】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0049】
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
本実施形態において、静電荷像現像用トナーの製造方法は特に限定されず、公知の方法から適宜選択すればよく、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば、凝集遊具法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。
これらの中でも、本実施形態において、少なくとも樹脂微粒子を分散させた分散液中で凝集粒子を形成し凝集粒子分散液を調製する工程(凝集工程)と、前記凝集粒子分散液を加熱して、凝集粒子を融合する工程(融合工程)を含む製造方法(以下、前記製造方法を「凝集融合法」と称することがある)が好ましい。また、凝集工程と融合工程との間に、凝集粒子分散液中に、微粒子を分散させた微粒子分散液を添加混合して前記凝集粒子に微粒子を付着させて付着粒子を形成する工程(付着工程)を設けたものであってもよい。
【0050】
前記付着工程では、前記凝集工程で調製された凝集粒子分散液中に、前記微粒子分散液を添加混合して、前記凝集粒子に前記微粒子を付着させて付着粒子を形成する。この添加される微粒子は、凝集粒子に凝集粒子から見て新たに追加される粒子に該当するので、本明細書では「追加微粒子」と記す場合がある。
前記追加微粒子としては、前記樹脂微粒子の他に離型剤微粒子、着色剤微粒子等を単独又は複数組み合わせたものであってもよい。前記微粒子分散液を追加混合する方法としては、特に制限はなく、例えば徐々に連続的に行ってもよいし、複数回に分割して段階的に行ってもよい。このようにして、前記微粒子(追加微粒子)を添加混合することにより、微小な粒子の発生を抑制し、得られる静電荷像現像用トナーの粒度分布をシャープにすることができ、高画質化に寄与させることができる。
【0051】
また前記付着工程を設けることにより、擬似的なシェル構造を形成することができ、着色剤や離型剤などの内添物のトナー表面露出を低減でき、結果として帯電性や寿命を向上させることができる点や、融合工程における融合時において、粒度分布を維持し、その変動を抑制することができるとともに、融合時の安定性を高めるための界面活性剤や塩基又は酸等の安定剤の添加を不要にしたり、それらの添加量を最少限度に抑制することができ、コストの削減や品質の改善可能となる点で有利である。従って、離型剤を使用するときには、樹脂微粒子を主体とした追加微粒子を添加することが好ましい。この方法を用いれば、融合工程において、温度、撹拌数、pHなどの調整により、トナー形状制御を簡単に行うことができる。
【0052】
前記樹脂微粒子の分散液の調製方法について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択した方法を採用することができるが、例えば以下のようにして調製することができる。
前記樹脂微粒子における樹脂が、前記ビニル基を有するエステル類、前記ビニルニトリル類、前記ビニルエーテル類、前記ビニルケトン類等のビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)である場合には、前記ビニル系単量体をイオン性界面活性剤中で乳化重合やシード重合等することにより、ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体(ビニル系樹脂)製の樹脂微粒子をイオン性界面活性剤に分散させてなる分散液を調製することができる。
前記樹脂微粒子における樹脂が、スチレン−アクリル系樹脂のように、前記ビニル系単量体の単独重合体又は共重合体以外の樹脂である場合には、該樹脂が、水への溶解度が比較的低い油性溶剤に溶解するのであれば、該樹脂を該油性溶剤に溶解し、この溶解物を、前記イオン性界面活性剤や高分子電解質とともに水中に添加し、ホモジナイザー等の分散機を用いて微粒子分散させた後、加熱ないし減圧することにより前記油性溶剤を蒸散させることにより調製することができる。
【0053】
なお、前記樹脂微粒子分散液に分散された樹脂微粒子が、樹脂微粒子以外の成分を含む複合粒子である場合、これらの複合粒子を分散させた分散液は、例えば以下のようにして調製することができる。
すなわち、前記複合粒子の各成分を、溶剤中に溶解分散した後、前述のように適当な分散剤とともに水中に分散し、加熱ないし減圧することにより溶剤を除去して得る方法や、乳化重合やシード重合により作成されたラテックス表面に機械的剪断又は電気的吸着を行い、固定化する方法により調製することができる。
【0054】
前記樹脂微粒子の中心径(メジアン径)は1μm以下であることが好ましく、より好ましくは50〜400nm、更に好ましくは70〜350nmである。樹脂微粒子のメジアン径が1μm以下であると、最終的に得られる静電荷像現像用トナーの粒度分布が狭く、遊離粒子の発生が抑制され、性能や信頼性が向上する。また、50nm以上であると、トナー製造時の溶液粘度が低く、最終的に得られるトナーの粒度分布が狭くなるので好ましい。樹脂微粒子の平均粒径が前記範囲内にあると、トナー間の偏在が減少し、トナー中での分散が良好となり、性能や信頼性のバラツキが小さくなる点が有利である。なお、樹脂微粒子の平均粒径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製:LA−700)で測定することができる。
【0055】
着色剤分散液を製造するためには、極性を有する界面活性剤を用いて、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機など種々の方法があるが、本実施形態におけるトナーを得るためには、高圧対向衝突式の分散機により顔料同士を衝突させて分散する方式が好ましい。
【0056】
離型剤分散液は、離型剤を、水中にイオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱するとともに、強い剪断付与能力を有するホモジナイザーや圧力吐出型分散機(ゴーリン社製:ゴーリンホモジナイザー)で微粒子状に分散させ、1μm以下の粒子の分散液を作製することができる。なお、前記離形剤粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製:LA−700)で測定される。
【0057】
前記凝集融合法では、樹脂微粒子や離型剤粒子などの成分を凝集させるために、凝集剤を添加することもできるが、本実施形態におけるトナーでは、この凝集剤も粘弾性を制御する因子として利用することができる。凝集剤としては、一般の無機金属化合物又はその重合体を樹脂微粒子分散液中に溶解して得られるが、無機金属塩を構成する金属元素は周期律表(長周期律表)における2A、3A、4A、5A、6A、7A、8、1B、2B、3B族に属する2価以上の電荷を有するものであり、樹脂微粒子の凝集系においてイオンの形で溶解するものであればよい。
【0058】
好ましい無機金属塩を具体的に挙げると、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などである。その中でも特に、アルミニウム塩及びその重合体が好適である。一般的に、よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価以上で、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方がより適している。この価数と添加量で、材料同士の凝集力を変化させることで、トナーの粘弾性を制御することができる。
【0059】
上述したように、凝集剤としては、アルミニウムを含有する凝集剤が好ましく、アルミニウム塩及びその重合体がより好ましい。
添加する凝集剤、特に、アルミニウムを含有する凝集剤の量が多いと、tanδの極大値が大きくなる傾向にある。
【0060】
前記樹脂微粒子分散液、前記離型剤分散液、及び前記その他の成分(粒子)を分散させた分散液における分散媒としては、例えば、水系媒体等が挙げられる。水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記種々の添加剤分散液を作製する手段としては、特に制限はないが、例えば、回転剪断型ホモジナイザーやメデイアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどのそれ自体公知の分散装置を用いる方法が挙げられる。
【0062】
本実施形態において、前記水系媒体には、粒度分布安定性保護のため界面活性剤を添加混合することもできる。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が好適に挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤がより好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用されることが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。一般的には、樹脂微粒子分散液や顔料分散液などで、故意に余剰となる量の界面活性剤添加しておき、トナー作製時の粒度分布安定性を高める役割を行わせる場合が多い。
【0063】
前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネート等のアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類等が挙げられる。
【0064】
前記カチオン界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼンジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩類等が挙げられる。
【0065】
前記非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類等が挙げられる。
【0066】
本実施形態におけるトナーは、前記樹脂微粒子を分散した樹脂微粒子分散液、離型剤分散液、及び、着色剤分散液などを混合し、少なくとも樹脂微粒子と離型剤とを含有する凝集粒子の分散液を調製した後、前記樹脂微粒子のガラス転移点又は融点以上の温度に加熱して凝集粒子を溶融一体化してトナー粒子を形成するものである。樹脂微粒子分散液は上述の通り、乳化重合法などにより調製することができる。樹脂微粒子分散液に含まれるイオン界面活性剤と反対極性を有するイオン界面活性剤で、離型剤や着色剤を分散して分散液を調製しておき、両者を混合することによりヘテロ凝集を生じさせトナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、その後、樹脂微粒子のガラス転移点又は融点以上の温度に加熱することにより、凝集粒子を溶融してトナー粒子を得る方法である。
【0067】
ヘテロ凝集は、前記の原料分散液を一括して混合して凝集させてもよいが、初期の極性イオン性分散剤量のバランスを予めずらしておき、例えば、硝酸カルシウム等の無機金属塩や、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム等の4価のアルミニウム塩やそれらの重合体を用いて、イオン的に中和し、ガラス転移点より低い温度で第1段階の母体凝集粒子を形成し、安定化した後、第2段階としてイオンのバランスのずれを補填するように、極性及び量を選択した粒子分散剤を添加し、必要に応じて母体粒子又は追加粒子に含まれる樹脂のガラス転移点又は融点以下の温度でわずかに加熱して、より高い温度で安定化させた後、ガラス転移点又は融点以上の温度に加熱して母体凝集粒子の表面に第2段階で加えた粒子を付着させたまま溶融させ、トナー粒子を得ることも可能である。更に、この凝集の段階的操作を複数回繰り返して実施してもよい。
【0068】
溶融・粒子形成工程を終了した後は、トナー粒子を洗浄し乾燥してトナーを得る。トナーの帯電性を考慮すると、イオン交換水で十分に置換洗浄を施すことが好ましく、洗浄度合いは、濾液の伝導度でモニターすることが一般的である。また、洗浄後の固液分離は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。更に、乾燥も、特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0069】
より具体的には、以上のような材料を用いて、少なくとも前記樹脂微粒子分散液と前記離型剤分散液とを含み、必要に応じて前記着色剤分散液などのその他の成分を添加混合して調製された分散液を、撹拌しながら室温から樹脂のガラス転移温度プラス5℃程度の温度範囲で加熱することにより、樹脂微粒子及び離型剤などを凝集させて凝集体粒子を形成する。トナー粒度分布制御の観点から、凝集体粒子の体積平均粒径が、最終的なトナーの狙い粒径の70〜90%の粒径範囲にある時に、樹脂微粒子を追加添加することが好ましい。
このようにして形成された凝集体粒子に、樹脂微粒子を追加添加し凝集体粒子の表面に被覆層を形成する。樹脂微粒子の添加量は、添加する樹脂微粒子の全添加量の15〜45重量%の範囲であることが好ましい。追加樹脂微粒子の添加量が15重量%以上であると、粒度分布制御の効果に優れる。追加樹脂微粒子の添加量が45重量%以下であると、追加樹脂微粒子の凝集体微粒子への付着性が良好であり、粒度分布に優れる。追加樹脂微粒子を凝集体微粒子に付着させる時間は10〜90分の範囲であることが好ましい。前記範囲内であると、付着性に優れ、また、異常付着が抑制されて粒度分布が良好である。
【0070】
次いで、pHの調整や界面活性剤添加などの方法により凝集を停止させ、樹脂の軟化点以上の温度、一般には70〜120℃の範囲に加熱処理して凝集体粒子を融合させ、トナー粒子含有液(トナー粒子分散液)を得る。得られたトナー粒子含有液は、遠心分離又は吸引濾過により処理して、トナー粒子を分離し、イオン交換水によって1〜3回洗浄する。その際pHを調整することで洗浄効果をより高めることができる。その後、トナー粒子を濾別し、イオン交換水によって1〜3回洗浄し、乾燥することによって、本実施形態のトナーを得ることができる。
【0071】
また、本実施形態におけるトナーは、その帯電量の絶対値が10〜50μC/gの範囲にあることが好ましく、15〜35μC/gの範囲がより好ましい。前記帯電量が、10μC/g未満であると、背景部汚れが発生しやすくなり、50μC/gを越えると、画像濃度の低下が発生しやすくなる。また、30℃、80RH%の高温高湿度下と、10℃、20%RHの低温低湿度下とでの帯電量の比率は、0.5〜1.5の範囲が好ましく、0.7〜1.2の範囲がより好ましい。前記比率が範囲内にあると環境に影響されることなく鮮明な画像を得ることができる。
【0072】
なお、前記のようにして最終的に加熱して得られたトナーには、流動性助剤、クリーニング助剤、研磨剤等として、無機粒体及び有機粒体を添加することができる。
更に、滑剤を添加することもできる。滑剤として、例えば、エチレンビスステアリル酸アミド、オレイン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0073】
(静電荷像現像剤)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像剤として好適に使用される。
本実施形態の静電荷像現像剤は、本実施形態のトナーを含有すること以外は、特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成を取りうる。本実施形態のトナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。
一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用される。
【0074】
本実施形態において、現像方式は特に規定されるものではないが二成分現像方式が好ましい。また前記条件を満たしていれば、キャリアは特に規定されないが、キャリアの芯材としては、例えば、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、これらとマンガン、クロム、希土類等との合金、及び、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられるが、芯材表面性、芯材抵抗の観点から、フェライト、特にマンガン、リチウム、ストロンチウム、マグネシウム等との合金が好ましく挙げられる。
【0075】
本実施形態で用いるキャリアは、芯材表面に樹脂を被覆してなることが好ましい。前記樹脂としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂及びポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本実施形態においては、これらの樹脂の中でも、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用することが好ましい。前記樹脂として、フッ素系樹脂及び/又はシリコーン樹脂を少なくとも使用すると、トナーや外添剤によるキャリア汚染(インパクション)の防止効果が高い点で有利である。
前記樹脂による被膜は、前記樹脂中に樹脂粒子及び/又は導電性粒子が分散されていることが好ましい。前記樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、比較的硬度を上げることが容易な観点から熱硬化性樹脂が好ましく、トナーに負帯電性を付与する観点からは、N原子を含有する含窒素樹脂による樹脂粒子が好ましい。なお、これらの樹脂粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記樹脂粒子の平均粒子径としては、0.1〜2μmが好ましく、0.2〜1μmがより好ましい。前記樹脂粒子の平均粒子径が0.1μm以上であると、前記被膜における樹脂粒子の分散性に優れ、一方、2μm以下であると、前記被膜から樹脂粒子の脱落が生じにくい。
【0076】
前記導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属粒子、カーボンブラック粒子、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性等が良好な点で、カーボンブラック粒子が好ましい。前記カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、DBP吸油量が50〜250ml/100gであるカーボンブラックが製造安定性に優れるため好ましい。芯材表面への、前記樹脂、前記樹脂粒子、前記導電性粒子による被覆量は、0.5〜5.0重量%であることが好ましく、0.7〜3.0重量%であることがより好ましい。
【0077】
前記被膜を形成する方法としては、特に制限はないが、例えば、架橋性樹脂粒子等の前記樹脂粒子及び/又は前記導電性粒子と、マトリックス樹脂としてのスチレンアクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等の前記樹脂とを溶剤中に含む被膜形成用液を用いる方法等が挙げられる。
具体的には前記キャリア芯材を、前記被膜形成用液に浸漬する浸漬法、被膜形成用液を前記キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、前記キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で前記被膜形成用液を混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態において、ニーダーコーター法が好ましい。
【0078】
前記被膜形成用液に用いる溶剤としては、マトリックス樹脂としての前記樹脂のみを溶解することが可能なものであれば、特に制限はなく、それ自体公知の溶剤の中から選択され、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。前記被膜に前記樹脂粒子が分散されている場合において、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記樹脂粒子及びマトリックス樹脂としての前記粒子が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、前記トナーに対し、良好な帯電付与能力が長期間にわたって維持される。また、前記被膜に前記導電性粒子が分散されている場合においては、その厚み方向及びキャリア表面の接線方向に、前記導電性粒子及びマトリックス樹脂としての前記樹脂が均一に分散しているため、前記キャリアを長期間使用して前記被膜が摩耗したとしても、常に未使用時と同様な表面形成を保持でき、キャリア劣化が長期間防止される。なお、前記被膜に前記樹脂粒子と前記導電性粒子とが分散されている場合において、上述の効果が同時に発揮される。
【0079】
以上のように形成された磁性キャリア全体の10
4V/cmの電界下における磁気ブラシの状態での電気抵抗は10
8〜10
13Ωcmであることが好ましい。磁性キャリアの該電気抵抗が10
8Ωcm以上であると、像担持体上の画像部にキャリアの付着が抑制され、また、ブラシマークが出にくい。一方、磁性キャリアの該電気抵抗が10
13Ωcm以下であると、エッジ効果の発生が抑制され、良好な画質が得られる。
なお、電気抵抗(体積固有抵抗)は以下のように測定する。
エレクトロメーター(KEITHLEY社製、商品名:KEITHLEY 610C)及び高圧電源(FLUKE社製、商品名:FLUKE 415B)と接続された一対の20cm
2の円形の極板(鋼製)である測定治具の下部極板上に、サンプルを厚さ約1mm〜3mmの平坦な層を形成するように載置する。次いで上部極板をサンプルの上にのせた後、サンプル間の空隙をなくすため、上部極板上に4kgの重しをのせる。この状態でサンプル層の厚さを測定する。次いで、両極板に電圧を印加することにより電流値を測定し、次式に基づいて体積固有抵抗を計算する。
体積固有抵抗=印加電圧×20÷(電流値−初期電流値)÷サンプル厚
前記式中、初期電流は印加電圧0のときの電流値であり、電流値は測定された電流値を示す。
【0080】
二成分系の静電荷像現像剤における本実施形態のトナーとキャリアとの混合割合は、キャリア100重量部に対して、静電荷像現像用トナー2〜10重量部であることが好ましい。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0081】
(画像形成方法)
また、静電荷像現像剤(トナー混合物)は、静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用される。
本実施形態の画像形成方法は、像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程と、を含み、前記現像剤として、本実施形態のトナー混合物又は本実施形態の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
上記の工程に加え、像保持体上に残留する静電荷像現像剤を清掃する清掃工程を有することが好ましい。
【0082】
前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。なお、本実施形態の画像形成方法は、それ自体公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。
前記静電潜像形成工程は、像保持体(感光体)上に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤保持体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程である。前記現像剤層としては、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー画像を被転写体上に転写する工程である。また、転写工程における被転写体としては、中間転写体や紙等の被記録媒体が例示できる。
前記定着工程では、例えば、加熱ローラの温度を一定温度に設定した加熱ローラ定着器により、転写紙上に転写したトナー像を定着して複写画像を形成する方式が挙げられる。
前記清掃工程は、像保持体上に残留する現像剤を清掃する工程である。
また、本実施形態の画像形成方法においては、前記清掃工程は、像保持体上に残留する静電荷像現像剤をクリーニングブレードにより除去する工程を含むことがより好ましい。
被記録媒体としては、公知のものを使用することができ、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される紙、OHPシート等が挙げられ、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0083】
本実施形態の画像形成方法においては、更にリサイクル工程をも含む態様でもよい。前記リサイクル工程は、前記清掃工程において回収した静電荷像現像用トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。また、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムに適用してもよい。
【0084】
(画像形成装置)
本実施形態の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤として、本実施形態のトナー混合物又は本実施形態の静電荷像現像剤を用いることを特徴とする。
上記の画像形成装置は、像保持体を清掃させる清掃手段を更に有することが好ましい。
また、本実施形態の画像形成装置は、前記のような像保持体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、定着手段とを少なくとも含むものであれば特に限定はされないが、その他必要に応じて、除電手段等を含んでいてもよい。
前記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。また、転写手段における被転写体としては、中間転写体や紙等の被記録媒体が例示できる。
【0085】
前記像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いられる。前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本実施形態の画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本実施形態の画像形成装置は、前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
また、像保持体上に残留する静電荷像現像剤を清掃する清掃手段としては、例えば、クリーニングブレード、クリーニングブラシなどが挙げられるが、クリーニングブレードが好ましい。
クリーニングブレードの材質としては、ウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が好ましく挙げられる。
【0086】
(トナーカートリッジ、現像剤カートリッジ及びプロセスカートリッジ)
本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態のトナー混合物を少なくとも収容しているトナーカートリッジである。
本実施形態の現像剤カートリッジは、本実施形態の静電荷像現像剤を少なくとも収容している現像剤カートリッジである。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記トナー混合物又は前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれる少なくとも1種と、を備え、本実施形態の静電荷像現像用トナー、又は、本実施形態の静電荷像現像剤を少なくとも収容しているプロセスカートリッジである。
【0087】
本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であることが好ましい。すなわち、トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納した本実施形態のトナーカートリッジが好適に使用される。
本実施形態の現像剤カートリッジは、前記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤を含有するものであればよく、特に制限はない。現像剤カートリッジは、例えば、現像手段を備えた画像形成装置に着脱され、この現像手段に供給されるための現像剤として、前記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含む静電荷像現像剤が収納されているものである。
また、現像剤カートリッジは、トナー混合物及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナー混合物を収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されることが好ましい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて重量基準である。
【0089】
(測定方法)
<示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の測定方法>
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線は、ASTM D3418−99に準じて測定した。測定には、示差走査熱量測定装置((株)島津製作所製、商品名:DSC−60A)を使用し、装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の溶融温度を用い、熱量の補正については、インジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを使用し、対象用に空のパンをセットし、測定を行った。
より具体的には、トナー8mgを、DSC−60Aのサンプルホルダーにセットし、昇温速度10℃/分として、0℃〜150℃まで1回目の昇温を行い、DSC−60A用解析ソフトウェアにより算出した。
【0090】
<tanδ、G”分析方法>
貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”は、レオメータ(レオメトリックサイエンティフィック社製:ARESレオメータ)を使用し、パラレルプレートを用いて周波数1Hzの条件で、昇温測定を行った。サンプルセットを120℃〜140℃程度で行い、室温30℃以下まで冷却した後、30℃で3時間保持してから昇温速度2℃/分で加熱し、1℃毎に昇温時の貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”、及びtanδを測定した。
tanδの測定に供されるサンプルは、下記方法により調製した。
測定すべきトナー又はトナー粒子をプレス成型機を用いて常温(例えば25℃)にて錠剤型へ成形することによりトナー粒子間に空隙のほぼないサンプルを作製することができる。これを使用しtanδ測定を実施した。
【0091】
<結晶性物質により形成されるドメインの分析方法>
トナーをエポキシ樹脂に包埋し、ミクロトームによって厚さ100nmに切片化した。なお、前記トナーは外添剤を有するものであっても、有しない又は除去したものであってもよい。前記トナーの断面を、四酸化ルテニウム0.5重量%水溶液を用いて染色し、走査型電子顕微鏡(TEM)によって観察した。前記トナーの断面中、色のコントラストから結着樹脂、結晶性物質である離型剤のドメインを判別し、結晶性物質により形成されるドメイン(離型剤ドメイン)の円相当径、離型剤ドメインのトナー表面からの距離を測定した。
トナー100個における離型剤ドメインの円相当径、離型剤ドメインのトナー表面からの距離の平均値を算出し、それらを離型剤ドメインの平均円相当径、離型剤ドメインのトナー表面からの平均距離とした。
【0092】
(トナーの作製)
<結着樹脂分散液の調製>
−結着樹脂分散液(1)の調製−
・スチレン:420部
・n−ブチルアクリレート:180部
・アクリル酸:3部
・ドデカンチオール:10部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):15部
・イオン交換水:1,200部
上記成分を混合して単量体乳化液1とし、単量体乳化液1の2/3をフラスコ中で分散・乳化した。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、重合用フラスコ内を窒素置換しながら撹拌し、重合用フラスコをウォーターバスで75℃に加熱し、30分間保持した。過硫酸アンモニウム10部をイオン交換水90部に溶解したものを、重合用フラスコ中にチューブポンプを用いて、10分かけて滴下した後、単量体乳化液1の残り1/3をチューブポンプを用いて60分かけて滴下した。その後、重合用フラスコを80℃に保持しながら、6時間撹拌し、重合用フラスコを氷水で室温まで冷却し、重合を終了した。これにより固形分量が32.5重量%、重量平均分子量(Mw)32,000の結着樹脂分散液(1)が得られた。
【0093】
−結着樹脂分散液(2)の調製−
・スチレン:405部
・n−ブチルアクリレート:192部
・アクリル酸:3部
・ドデカンチオール:12部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):15部
・イオン交換水:1,200部
上記成分を混合して単量体乳化液2とし、単量体乳化液2の2/3をフラスコ中で分散・乳化した。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、重合用フラスコ内を窒素置換しながら撹拌し、重合用フラスコをウォーターバスで75℃に加熱し、30分間保持した。過硫酸アンモニウム10部をイオン交換水90部に溶解したものを、重合用フラスコ中にチューブポンプを用いて、10分かけて滴下した後、単量体乳化液2の残り1/3をチューブポンプを用いて60分かけて滴下した。その後、重合用フラスコを80℃に保持しながら、4時間撹拌し、重合用フラスコを氷水で室温まで冷却し、重合を終了した。これにより固形分量が33.1重量%、重量平均分子量(Mw)27,000の結着樹脂分散液(2)が得られた。
【0094】
−結着樹脂分散液(3)の調製−
・スチレン:430部
・n−ブチルアクリレート:185部
・アクリル酸:3部
・ドデカンチオール:10部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):15部
・イオン交換水:1,200部
上記成分を混合して単量体乳化液3とし、単量体乳化液3の2/3をフラスコ中で分散・乳化した。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、重合用フラスコ内を窒素置換しながら撹拌し、重合用フラスコをウォーターバスで75℃に加熱し、30分間保持した。過硫酸アンモニウム8部をイオン交換水90部に溶解したものを、重合用フラスコ中にチューブポンプを用いて、10分かけて滴下した後、単量体乳化液3の残り1/3をチューブポンプを用いて60分かけて滴下した。その後、重合用フラスコを80℃に保持しながら、8時間撹拌し、重合用フラスコを氷水で室温まで冷却し、重合を終了した。これにより固形分量が32.2重量%、重量平均分子量(Mw)41,000の結着樹脂分散液(3)が得られた。
【0095】
−結着樹脂分散液(4)の調製−
・ビスフェノールA エチレンオキサイド付加物:23.1部
・ビスフェノールA プロピレンオキサイド付加物:55.6部
・テレフタル酸:22.4部
・ドデセニルコハク酸無水物:4.9部
・フマル酸:10.2部
上記成分をフラスコに仕込み、2時間かけて温度210℃まで上げ、反応系内が均一に撹拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを2.1部投入した。更に、生成水を除去しながら同温度から4.0時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で更に5.5時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)が68,000である非晶性ポリエステル樹脂(1)を得た。
次いで、これを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010((株)ユーロテック製)に毎分10gの速度で移送した。別途準備していた水性媒体タンクに試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.33重量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換器で140℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で上記ポリエステル樹脂溶融体と同時に上記キャビトロンに移送した。回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm
2の条件でキャビトロンを運転し、固形分34.1重量%の結着樹脂分散液(4)を得た。
【0096】
−結着樹脂分散液(5)の調製−
・スチレン:400部
・n−ブチルアクリレート:197部
・アクリル酸:3部
・ドデカンチオール:15部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):15部
・イオン交換水:1,200部
上記成分を混合して単量体乳化液5とし、単量体乳化液5の2/3をフラスコ中で分散・乳化した。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、重合用フラスコ内を窒素置換しながら撹拌し、重合用フラスコをウォーターバスで75℃に加熱し、30分間保持した。過硫酸アンモニウム11部をイオン交換水90部に溶解したものを、重合用フラスコ中にチューブポンプを用いて、10分かけて滴下した後、単量体乳化液5の残り1/3をチューブポンプを用いて60分かけて滴下した。その後、重合用フラスコを80℃に保持しながら、3時間撹拌し、重合用フラスコを氷水で室温まで冷却し、重合を終了した。これにより固形分量が31.5重量%、重量平均分子量(Mw)21,000の結着樹脂分散液(5)が得られた。
【0097】
−結着樹脂分散液(6)の調製−
・スチレン:435部
・n−ブチルアクリレート:171部
・アクリル酸:3部
・ドデカンチオール:8部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):15部
・イオン交換水:1,200部
上記成分を混合して単量体乳化液6とし、単量体乳化液6の2/3をフラスコ中で分散・乳化した。重合用フラスコを密栓し、還流管を設置し、重合用フラスコ内を窒素置換しながら撹拌し、重合用フラスコをウォーターバスで75℃に加熱し、30分間保持した。過硫酸アンモニウム7部をイオン交換水90部に溶解したものを、重合用フラスコ中にチューブポンプを用いて、10分かけて滴下した後、単量体乳化液6の残り1/3をチューブポンプを用いて60分かけて滴下した。その後、重合用フラスコを80℃に保持しながら、6時間撹拌し、重合用フラスコを氷水で室温まで冷却し、重合を終了した。これにより固形分量が32.1重量%、重量平均分子量(Mw)49,000の結着樹脂分散液(6)が得られた。
【0098】
<離型剤分散液の調製>
−離型剤分散液(1)の調製−
・離型剤(東洋アドレ(株)製、ポリワックス725(ポリエチレンワックス)、融点100℃):102部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス) 10部
・イオン交換水 300部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30分間分散した後、循環式超音波分散機((株)日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて固形分量23.5重量%の離型剤分散液(1)を調製した。離型剤分散液(1)の分散径は215nmであった。
【0099】
−離型剤分散液(2)の調製−
離型剤として、日本精鑞(株)製、FNP92(パラフィンワックス、融点92℃):102部を用いた以外は離型剤分散液(1)と同様にして、固形分量23.9重量%の離型剤分散液(2)を調製した。離型剤分散液(2)の分散径は211nmであった。
【0100】
−離型剤分散液(3)の調製−
離型剤として、日本精鑞(株)製、FT110(パラフィンワックス、融点113℃):102部を用いた以外は離型剤分散液(1)と同様にして、固形分量22.2重量%の離型剤分散液(3)を調製した。離型剤分散液(3)の分散径は224nmであった。
【0101】
−離型剤分散液(4)の調製−
離型剤として、離型剤(クラリアント社製、リコワックスOP(モンタン酸の部分鹸化エステル化ワックス)、融点100℃):102部を用いた以外は離型剤分散液(1)と同様にして、固形分量23.3重量%の離型剤分散液(4)を調製した。離型剤分散液(4)の分散径は203nmであった。
【0102】
−離型剤分散液(5)の調製−
離型剤として、離型剤(日本精鑞(株)製、HNP0190(パラフィンワックス)、融点89℃):102部を用いた以外は離型剤分散液(1)と同様にして、固形分量22.7重量%の離型剤分散液(5)を調製した。離型剤分散液(5)の分散径は197nmであった。
【0103】
−離型剤分散液(6)の調製−
離型剤として、離型剤(日本精鑞(株)製、FT115(フィッシャートロプシュワックス)、融点116℃):102部を用いた以外は離型剤分散液(1)と同様にして、固形分量21.9重量%の離型剤分散液(6)を調製した。離型剤分散液(6)の分散径は223nmであった。
【0104】
<着色剤分散液の調製>
−顔料分散液の調製−
・カーボンブラック(CABOT社製、R330):100部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):21部
・イオン交換水:350部
上記成分を混合し、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30分間分散した後、循環式超音波分散機((株)日本精機製作所製、RUS−600TCVP)にかけて固形分量20.8重量%の顔料分散液を調製した。
【0105】
<トナーの作製>
−トナー母粒子(1)の作製−
・結着樹脂分散液(1):211.7部
・顔料分散液:33.7部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):10部
・イオン交換水:893.0部
上記成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散した。その後、前記分散液をマントルヒーター(大科電器(株)製GB−10)を用いて、3%硫酸アルミニウム水溶液50.0部を加え、フラスコ内の内容物を撹拌した。分散されたことを確認し、スリーワンモーター(新東科学(株)製BLh300)を用いて、撹拌回転数350rpmで撹拌した後、1.0℃/分の昇温速度で45℃まで加熱撹拌し、2時間保持した。その後、1.0℃/分の昇温速度で50℃まで加熱撹拌し、結着樹脂分散液(1)52.9部と離型剤分散液(1)29.8部を混合分散したものを添加し、2時間撹拌した。その後1.0M水酸化ナトリウム水溶液で、pHを7.5に調整した後、0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて96℃で3時間かけて凝集体を合一させ、その後室温まで冷却した。得られたトナー分散液を濾過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(1)を得た。
【0106】
−トナー(1)の作製−
市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径D50:40nm)を用意した。
得られたトナー母粒子(1)60部に対し、外添剤としてヒュームドシリカRX50(日本アエロジル(株)製、個数平均粒子径D50:40nm)を4部加え、サンプルミル(アズワン(株)製、SM−1)を用い、15,000rpmで30秒間ブレンドを行った後、45μm網目のシーブを用いて粗大粒子を除去し、トナー(1)を得た。
【0107】
−トナー母粒子(2)、及び、トナー(2)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において離型剤分散液(1)の代わりに離型剤分散液(2)29.3部を用いた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(2)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(2)を得た。
【0108】
−トナー母粒子(3)、及び、トナー(3)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において離型剤分散液(1)の代わりに離型剤分散液(3)31.5部を用いた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(3)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(3)を得た。
【0109】
−トナー母粒子(4)、及び、トナー(4)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を結着樹脂分散液(2)207.9部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして
、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(4)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(4)を得た。
【0110】
−トナー母粒子(5)、及び、トナー(5)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を結着樹脂分散液(3):213.7部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(5)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(5)を得た。
【0111】
−トナー母粒子(6)、及び、トナー(6)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において3%硫酸アルミニウム水溶液を33.3部に変更した以外はトナー母粒子(1)と同様にして体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(6)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(6)を得た。
【0112】
−トナー母粒子(7)、及び、トナー(7)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において3%硫酸アルミニウム水溶液を66.7部に変更した以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(7)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(7)を得た。
【0113】
−トナー母粒子(8)、及び、トナー(8)の作製−
・結着樹脂分散液(1):219.1部
・顔料分散液:33.7部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):10部
・イオン交換水:893.0部
上記成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散した。その後、前記分散液をマントルヒーター(大科電器(株)製GB−10)を用いて、3%硫酸アルミニウム水溶液50.0部を加え、フラスコ内の内容物を撹拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーター(新東科学(株)製BLh300)を用いて、撹拌回転数350rpmで撹拌した後、1.0℃/分の昇温速度で45℃まで加熱撹拌し、2時間保持した。その後、1.0℃/分の昇温速度で50℃まで加熱撹拌し、結着樹脂分散液(1)54.8部と離型剤分散液(1)17.0部を均一に混合分散したものを添加し、2時間撹拌した。その後1.0M水酸化ナトリウム水溶液で、pHを7.1に調整した後、0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて96℃で3時間かけて凝集体を合一させ、その後室温まで冷却した。得られたトナー分散液を濾過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(8)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(8)を得た。
【0114】
−トナー母粒子(9)、及び、トナー(9)の作製−
・結着樹脂分散液(1):206.8部
・顔料分散液:33.7部
・アニオン性界面活性剤(ダウケミカル社製、ダウファックス):10部
・イオン交換水:893.0部
上記成分を、丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)で混合分散した。その後、前記分散液をマントルヒーター(大科電器(株)製GB−10)を用いて、3%硫酸アルミニウム水溶液50.0部を加え、フラスコ内の内容物を撹拌した。均一に分散されたことを確認し、スリーワンモーター(新東科学(株)製BLh300)を用いて、撹拌回転数350rpmで撹拌した後、1.0℃/分の昇温速度で45℃まで加熱撹拌し、2時間保持した。その後、1.0℃/分の昇温速度で50℃まで加熱撹拌し、結着樹脂分散液(1)51.7部と離型剤分散液(1)38.3部を均一に混合分散したものを添加し、2時間撹拌した。その後1.0M水酸化ナトリウム水溶液で、pHを7.3に調整した後、0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて96℃で3時間かけて凝集体を合一させ、その後室温まで冷却した。得られたトナー分散液を濾過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥して、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(9)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(9)を得た。
【0115】
−トナー母粒子(10)、及び、トナー(10)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを7.7に、また0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて92℃で2時間かけて凝集体を合一させた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(10)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(10)を得た。
【0116】
−トナー母粒子(11)、及び、トナー(11)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて90℃で1時間かけて凝集体を合一させた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(11)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(11)を得た。
【0117】
−トナー母粒子(12)、及び、トナー(12)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを7.2に、また0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて96℃で6時間かけて凝集体を合一させた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(12)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(12)を得た。
【0118】
−トナー母粒子(13)、及び、トナー(13)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを7.5に、また0.1℃/分の昇温速度で温度を上げて98℃で6時間かけて凝集体を合一させた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(13)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(13)を得た。
【0119】
−トナー母粒子(14)、及び、トナー(14)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを8.1にした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(14)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(14)を得た。
【0120】
−トナー母粒子(15)、及び、トナー(15)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを8.5にした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(15)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(15)を得た。
【0121】
−トナー母粒子(16)、及び、トナー(16)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を結着樹脂分散液(4)201.8部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(16)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(16)を得た。
【0122】
−トナー母粒子(17)、及び、トナー(17)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において離型剤分散液(1)の代わりに離型剤分散液(4)30.0部を用いた以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(17)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(17)を得た。
【0123】
−トナー母粒子(18)、及び、トナー(18)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において離型剤分散液(1)の代わりに離型剤分散液(5)30.8部を用い、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを7にした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(18)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(18)を得た。
【0124】
−トナー母粒子(19)、及び、トナー(19)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において離型剤分散液(1)の代わりに離型剤分散液(6)32.0部を用い、1.0M水酸化ナトリウム水溶液でのpHを7.6にした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(19)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(19)を得た。
【0125】
−トナー母粒子(20)、及び、トナー(20)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を結着樹脂分散液(5)218.4部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(20)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(20)を得た。
【0126】
−トナー母粒子(21)、及び、トナー(21)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を結着樹脂分散液(6)214.3部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(21)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(21)を得た。
【0127】
−トナー母粒子(22)、及び、トナー(22)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において3%硫酸アルミニウム水溶液を26.7部に変更した以外はトナー母粒子(1)と同様にして体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(22)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(22)を得た。
【0128】
−トナー母粒子(23)、及び、トナー(23)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において3%硫酸アルミニウム水溶液を73.3部に変更した以外はトナー母粒子(1)と同様にして体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(23)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(23)を得た。
【0129】
−トナー母粒子(24)、及び、トナー(24)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を222.8部に変更し、離型剤分散液(1)29.8部を10.6部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(24)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(24)を得た。
【0130】
−トナー母粒子(25)、及び、トナー(25)の作製−
トナー母粒子(1)の作製において、結着樹脂分散液(1)211.7部を199.4部に離型剤分散液(1)29.8部を51.1部とした以外はトナー母粒子(1)と同様にして、体積平均粒径が6.7μmのトナー母粒子(25)を得、トナー(1)と同様にして、トナー(25)を得た。
【0131】
(画像荒れ評価方法)
<定着後のトナー画像の画像欠損評価試験>
評価用サンプル作製装置としては、富士ゼロックス(株)製DocuCentreColor 400を使用した。現像機に得られた現像剤を充填し、記録媒体としては富士ゼロックスインターフィールド(株)製のOSコートW紙A3A4サイズ(坪量157gsm)を用い、表面に低密度画像(密度5%)及び裏面に250mm×170mm大の高画像密度(密度100%)で連続して、50枚プリントし、圧力ロールの温度が最も高くなる50枚目のプリント用紙裏面の定着画像の画像荒れについて評価を実施した。
評価方法としては、トナー画像の端部から、20mm、80mm、140mm地点の画像濃度を測定し、3点の濃度差の最大値が0.20未満の場合に画像欠損の程度が、許容範囲内であると判断した。
画像濃度の測定には、X−rite社製X−rite938を使用し、測定はD50光源条件で実施した。
【0132】
【表1】