(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る作業車の梯子機構の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る梯子機構が搭載されたラフテレーンクレーンの外観図である。
【0021】
このラフテレーンクレーン10(特許請求の範囲に記載された「作業車」に相当)は、下部走行体11及び上部作業体12並びに作業者が地上から上部作業体12へアクセスするための梯子機構(後述の梯子13及び梯子展開装置14)を備えている。このラフテレーンクレーン10のフロントアクスル15は、いわゆる二軸構造であって、隣接する二つの車軸16、17(特許請求の範囲に記載された「第1車軸」「第2車軸」に相当)が設けられている。なお、リアアクスル19は、単一の車軸を有する。
【0022】
下部走行体11は、下部フレーム18を有し、この下部フレーム18に上記フロントアクスル15及びリヤアクスル19が設けられている。フロントアクスル15が二つの車軸16、17を備えているのは、フロントアクスル15の軸重を車軸16及び車軸17に分散し、各車軸16、17に負荷される軸重を低減するために他ならない。したがって、フロントアクスル15の軸重がさらに大きい場合は、フロントアクスル15が三軸以上で構成される場合もある。また、フロントアクスル15及びリヤアクスル19の軸重が一定以下であれば、フロントアクスル15及びリヤアクスル19は共に単一の車軸で構成されてもよい。もっとも、リヤアクスル19の軸重が大きい場合は、リアアクスル19も複数の車軸を備える必要がある。
【0023】
下部フレーム18にエンジンユニット20が搭載されている。このエンジンユニット20は、ディーゼルエンジンを備え、フロントアクスル15及びリアアクスル19の駆動源となる。フロントアクスル15の車輪21、22及びリアアクスル19の車輪23は、図示されていないトランスミッションを介して駆動され、且つ図示されていない油圧シリンダにより操舵される。
【0024】
下部フレーム18の前端下部及び後端下部にそれぞれフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25が装備されている。上部作業体12の稼働時にフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25が張り出すことにより、下部走行体11が安定して接地される。さらに、上部作業体12へ油圧を供給する油圧ポンプ(不図示)が下部フレーム18に設けられている。この油圧ポンプは、上記ディーゼルエンジンを駆動源として駆動され、所定圧力の作動油を供給し、上部作業体12やフロントアウトリガ24及びリアアウトリガ25を作動させる。
【0025】
下部フレーム18に旋回ベアリング26を介して上部作業体12が搭載されている。この上部作業体12は、旋回台27を有し、当該旋回台27が下部フレーム18に対して旋回可能に支持されている。上部作業体12は、ブーム装置28を有し、当該ブーム装置28が根本支点ピンを介して旋回台27に連結されている。このブーム装置28と旋回台27との間に図示されていない起伏シリンダが介在されており、この起伏シリンダが伸縮することによって、ブーム装置28が上記根本支点ピンを中心として起伏動作をすることができる。また、ブーム装置28は、伸縮ブーム29を備えており、この伸縮ブーム29は、図示されていない伸縮シリンダを内蔵している。この伸縮シリンダが伸縮することによって、伸縮ブーム29が長手方向に伸縮する。さらに、ブーム装置28は、油圧モータで駆動されるウインチ(不図示)を備えており、このウインチが作動することによりワーク(吊荷)が昇降される。加えて、下部走行体11の運転及び上部作業体12の操作を行うための単一の操作部31が、旋回ベアリング26を介して設けられている。なお、上部作業体12の安定した作業のために、旋回台27の後端にカウンタウエイト32が設けられている。
【0027】
図2は、ラフテレーンクレーン10の側面図及び正面図である。
図3は、このラフテレーンクレーン10の要部拡大側面図である。
【0028】
本実施形態に係るラフテレーンクレーン10の特徴とするところは、上記梯子13及び梯子展開装置14が車軸16と車軸17との間に配置されている点である。特に、梯子13及び梯子展開装置14が後述の機構及び構造を備えることにより、梯子13が上記操作部31と下部走行体11との間の狭い隙間33(
図3参照)に収納されると共に(後述の収納姿勢且つ並行姿勢:
図2(a)、
図3参照)、所要時には下部走行体11の側方にコンパクトに張り出すことができるようになっており(後述の張出姿勢且つ交差姿勢:
図2(b)(c)参照)、その結果、作業者が地上から直接に上記操作部31に簡単且つ迅速にアクセスすることができるようになっている。
【0030】
図4ないし
図7は、梯子13及び梯子駆動装置14の構造を示す斜視図である。これらの図は、梯子13が
図3に示す姿勢(並行姿勢且つ収納姿勢)にある状態を示している。
図4は、下部走行体11の斜め前方から見た梯子13及び梯子展開装置14の斜視図、
図5は、下部走行体11の斜め後方から見た梯子13及び梯子展開装置14の斜視図、
図6は、下部走行体11の内側斜め前方から見た梯子13及び梯子展開装置14の斜視図、
図7は、下部走行体11の内側斜め後方から見た梯子13及び梯子展開装置14の斜視図である。
【0031】
これらの図が示すように、梯子13は、梯子本体39と、これに設けられたサポート部材36及びクロスメンバ38とを備えている。梯子本体39は、一対の支柱34、35と、この支柱34、35間に渡された4本の踏桟37とを有する。これらは、典型的にはアルミニウム合金製のパイプ部材から構成される。本実施形態では、4本の踏桟37が設けられているが、踏桟37の本数は特に限定されるものではない。また、上記クロスメンバ38の断面形状は、同図が示すように略L字状に形成されており、後述のように作業者が足を掛けやすくなっている。このクロスメンバ38は、金属又は樹脂から構成され得る。
【0032】
サポート部材36は、アルミニウム合金又は鉄鋼材料から構成され得る。サポート部材36は、矩形板状の本体40と、一対の固定板41とを備えている。各固定板41は、梯子本体39の支柱34、35にそれぞれ固定されている。本体40は、各固定板41を介して上記支柱34、35に取り付けられ、隣り合う踏桟37の間に配置されている。つまり、固定板41は、上記支柱34、35を補強しつつ確実に本体40を支持している。また、本体40の長手方向(
図5及び
図7において矢印50に沿う方向:下部走行体11の長手方向)の縁部に一対のリブ64が設けられており、且つ当該リブ64同士を連結する補強板(不図示)が設けられている。これにより、本体40は、中空の箱状に形成されている。上記リブ64及び補強板は、本体40の剛性を向上させている。本実施形態では、サポート部材36は、上段側の踏桟37に当接している。サポート部材36が上段側の踏桟37に当接していることによる作用効果については後述される。
【0033】
図8は、梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢にある状態での当該梯子13及び梯子展開装置14の構造を示す斜視図である。
【0034】
図4及び
図8が示すように、上記サポート部材36の本体40に梯子支軸42(特許請求の範囲に記載された「第2支軸」に相当)が貫通している。この梯子支軸42は、後述の揺動アーム43に設けられており、本体40に設けられた貫通孔に挿通されている。
図4が示すように、梯子支軸42の軸方向(矢印86に沿う方向)は、下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に対して交差(本実施形態では直交)している。梯子13は、この梯子支軸42を中心として矢印88の方向に沿って回動可能となっている。本実施形態では、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に寸法F1だけオフセットされている。また、梯子支軸42は、本体40の中央(すなわち、一対の支柱34、35の中央)に対して寸法F2だけオフセットされている。このように梯子支軸42がオフセットされていることによる作用効果については後述される。
【0035】
図9は、
図8の要部拡大分解斜視図である。
【0036】
これらの図が示すように、上記サポート部材36の本体40の裏面にシリンダ連結ピン44が立設されている。このシリンダ連結ピン44は、本体40と一体的に形成されており、上記貫通孔(上記梯子支軸42が挿通される貫通孔)からずれた位置に配置されている。後述される回動シリンダ45がシリンダ連結ピン44に連結されており、回動シリンダ45が伸縮することにより、上記梯子支軸42を中心とする回転モーメントが梯子本体39に作用し、梯子13が回動するようになっている。また、回動規制ピン46がシリンダ連結ピン44と並設されている。この回動規制ピン46も本体40と一体的に形成されている。この回動規制ピン46は、後述する位置決めシリンダ48が係合するようになっている。回動規制ピン46の先端部に平面部47(
図9参照)が形成されている。回動規制ピン46が位置決めシリンダ48と係合することによる作用効果及び上記平面部47が形成されることによる作用効果については後述される。
【0038】
図10は、梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢にある状態での当該梯子13及び梯子展開装置14の構造を示す斜視図である。
【0039】
同図が示すように、梯子展開装置14は、下部走行体11(
図3参照)に設けられたアーム支軸49(特許請求の範囲に記載された「第1支軸」に相当)と、これに支持された上記揺動アーム43と、この揺動アーム43の先端部に設けられた上記梯子支軸42(
図9参照)とを備えている。アーム支軸49は、円柱状を呈している。
図10が示すように、アーム支軸49の軸方向は、下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に沿っている。前述のように、アーム支軸49の軸方向と梯子支軸42の軸方向とは交差している(
図4参照)。アーム支軸49と梯子支軸42とが交差していることによる作用効果は後述される。
【0040】
図10が示すように、本実施形態では、下部走行体11にブラケット51が固定されており、このブラケット51にアーム支軸49が支持されている。このブラケット51は、鉄鋼材料からなり、細長の箱状に形成されている。具体的には、ブラケット51は、一対の側板52及び底板53(
図11参照)を有し、基端部54がボルト55(
図6及び
図7参照)により下部走行体11の側面に締結されている。すなわち、ブラケット51は、下部走行体11の側面から側方に張り出すように延びている。このブラケット51の先端部56に、上記一対の側板52間に掛け渡すように上記アーム支軸49が配置されている。
【0041】
揺動アーム43は、鉄鋼材料からなり、
図4及び
図10が示すように全体として略T字状に形成されている。この揺動アーム43は、脚部57及びヘッド部58を備えている。脚部57は、断面形状が矩形の細長の箱状に形成され、一対の側板59及び底板60(
図4及び
図5参照)を有する。本実施形態では、底板60の端部の幅寸法がヘッド部58側に向かって漸次拡大されており、底板60の端部が三角形状に形成されている。これにより、脚部57とヘッド部58との境界部位が補強されている。なお、この底板60の端部と対向する位置において、脚部57とヘッド部58との境界にリブ61(
図10参照)が設けられており、当該部位に応力が集中することが回避されている。
【0042】
図10が示すように、脚部57の基端部62に図示されていない貫通孔が矢印50の方向に沿って設けられており、この貫通孔に上記アーム支軸49が挿通されている。すなわち、脚部57の基端部62が上記ブラケット51の先端部56の内側(具体的には上記一対の側板52の間)に配置され、両者を連結するようにアーム支軸49が矢印50の方向に沿って嵌め込まれている。これにより、脚部57は、ブラケット51に対して回動自在となっている。
【0043】
ヘッド部58は、脚部57の先端部63に固定されている。ヘッド部58は、真直な棒状部材であって、矢印50の方向に沿って延びている。本実施形態では、ヘッド部58は、断面形状が矩形のパイプからなる。このヘッド部58に上記梯子支軸42が突設されている。前述のように、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向(矢印50の方向)に寸法F1だけオフセットされ、且つ梯子13の一対の支柱34、35の中央に対して寸法F2だけオフセットされている。この梯子支軸42は、前述のようにサポート部材36を支持している。
【0044】
上記位置決めシリンダ48は、ヘッド部58に内蔵されている(
図9及び
図10参照)。この位置決めシリンダ48が作動することによりシリンダロッドがスライドし、ヘッド部58の端縁から出入りする。シリンダロッドに設けられたロックピン85(
図9参照)がヘッド部58から突出することにより、上記サポート部材36に設けられた回動規制ピン46と係合する。なお、上記シリンダロッドがロックピン85を兼ねていてもよい。本実施形態では、位置決めシリンダ48は、直動シリンダであって、いわゆる空圧アクチュエータである。もっとも、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータが採用されてもよい。
【0045】
図10が示すように、回動シリンダ45が上記ヘッド部58の外側に設けられている。この回動シリンダ45は、直動且つ複動シリンダである。本実施形態では、回動シリンダ45は、いわゆる空圧アクチュエータであるが、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータが採用されてもよい。回動シリンダ45のシリンダチューブは、ヘッド部58にピンを介して回動可能に連結されている。回動シリンダ45のシリンダロッドは、上記サポート部材36に立設されたシリンダ連結ピン44に回動可能に連結されている(
図9参照)。この回動シリンダ45が作動すると、前述のように、梯子支軸42を中心とする回転モーメントが梯子本体39に作用し、梯子13が梯子支軸42を中心にして回動する(
図4参照)。これにより、梯子13は、
図2(b)及び
図3が示すように、下部走行体11の長手方向に延びる並行姿勢となり、また、当該並行姿勢から
図2(c)が示すように、上記長手方向と交差する(本実施形態では直交する)交差姿勢にもなり、両姿勢間で相互に変位する。
【0046】
図10が示すように、上記ブラケット51と、揺動アーム43との間に揺動シリンダ65が設けられている。この揺動シリンダ65は、直動且つ複動シリンダである。本実施形態では、揺動シリンダ65は、いわゆる空圧アクチュエータであるが、油圧その他の駆動源を有するアクチュエータであってもよい。揺動シリンダ65のシリンダチューブは、ピンを介してブラケット51の基端部54に回動自在に連結されている。揺動シリンダ65のシリンダロッドは、揺動アーム43の中間部にピンを介して回動自在に連結されている。この揺動シリンダ65が伸縮作動すると、揺動アーム43がアーム支軸49を中心として回動する。これにより、揺動アーム43は、
図2(a)が示すように起立して下部走行体11に収納された位置に変位し、また、同図(b)が示すように倒伏して下部走行体11から側方に張り出した位置に変位する。
【0047】
その結果、梯子13は、同図(a)及び
図3が示すように、下部走行体11と上部作業体12との間の隙間33に収納された姿勢(収納姿勢)に変化することができ、また、下部走行体11の側方に張り出した姿勢(張出姿勢)にも変化するすることができる。加えて、前述のように、回動シリンダ45が作動することにより、梯子13は、梯子支軸42を中心として回動するが、当該梯子支軸42が上記アーム支軸49と交差(本実施形態では直交)しているから、梯子13は、上記張出姿勢のまま上記並行姿勢と交差姿勢との間で変位する。つまり、梯子13は、
図2(a)が示すように上記隙間33に収納された姿勢から、同図(c)が示すように、下部走行体11から側方に張り出して、作業者が地上から直接に上部作業体12の操作部31にアクセスできる姿勢へと相互に姿勢変化することができる。
【0049】
図11は、梯子13が張出姿勢且つ並行姿勢にある状態での梯子展開装置14の斜視図であって、下部走行体11の内側斜め下方から見た図である。
【0050】
同図が示すように、揺動アーム43に位置決め部材66が設けられている。本実施形態では、位置決め部材66は六角ボルト68及びロックナット69からなり、揺動アーム43の基端部62に設けられている。具体的には、脚部57の基端部62にボス67が固定されており、このボス67に上記六角ボルト68がねじ込まれている。ロックナット69が六角ボルト68と螺合しており、六角ボルト68をボス67に対して位置決めしている。
【0051】
前述のように、揺動シリンダ65が伸びると揺動アーム43がブラケット51に対して回動し(
図10参照)、下部走行体11に収納された状態から下部走行体11の側方に張り出す向きに変位する。このとき、位置決め部材66も揺動アーム43と共に回動する。本実施形態では、
図11が示すようにブラケット51に当接板70が固定されている。この当接板70は、平板からなり、ブラケット51の先端部56に溶接されている。揺動アーム43と共に回動する位置決め部材66は、ブラケット51に当接する。具体的には、上記六角ボルト68のヘッド部が当接板70に当接し、ブラケット51に対する揺動アーム43の上記向きへの回動が規制される。六角ボルト68が当接板70に当接することにより、梯子13は、張出姿勢に位置決めされる。なお、本実施形態では、位置決め部材66が当接板70に当接する構造となっているが、位置決め部材66が直接にブラケット51に当接する構造であってもよい。また、ブラケット51は、下部走行体11に固定されているので、上記位置決め部材66が下部走行体11に当接する構造であってもよい。
【0052】
図9が示すように、サポート部材36に位置決め部材71が設けられている。本実施形態では、位置決め部材71は六角ボルト72及びロックナット73からなり、サポート部材36の本体40に設けられている。具体的には、本体40に立設されたシリンダ連結ピン44の近傍にボス74が固定されており、このボス74に上記六角ボルト72がねじ込まれている。ロックナット73が六角ボルト72と螺合しており、六角ボルト72をボス74に対して位置決めしている。
【0053】
前述のように、回動シリンダ45が伸びるとサポート部材36が揺動アーム43に設けられた梯子支軸42を中心として回動し、梯子13は、下部走行体11の長手方向に延びる並行姿勢から上記交差姿勢の向きに回転する。このとき、位置決め部材71もサポート部材36と共に回動し、揺動アーム43のヘッド部58に当接する。本実施形態では、ヘッド部58の端縁部は、
図9が示すように切り欠かれている。具体的には、同図においてヘッド部58の端面75の上側が長手方向に切り欠かれており、これにより、端面75に連続し且つ当該端面75と直交する当接面76が形成されている。上記六角ボルト72のヘッド部が当接面76に当接することにより、揺動アーム43に対する梯子13の上記向きへの回転が規制され、梯子13は、交差姿勢からさらに上記向きに回転することが防止される。なお、本実施形態では、位置決め部材71が上記当接面76に当接する構造となっているが、上記ヘッド部58に当接面76が形成されることなく、位置決め部材71が直接にヘッド部58に当接する構造であってもよい。
【0054】
前述のように、本実施形態では、サポート部材36の本体40に回動規制ピン46が設けられている(
図9参照)。梯子13が交差姿勢となったときに位置決めシリンダ48が伸びると、ロックピン85がヘッド部58から突出して回動規制ピン46と係合する。これにより、梯子13は、交差姿勢から並行姿勢側への回転が規制される。特に本実施形態では、回動規制ピン46に平面部47が設けられているから、ロックピン85が回動規制ピン46と安定的に係合するという利点がある。このように、上記回動規制ピン46及びロックピン46並びに位置決め部材71により、交差姿勢となった梯子13は、いずれの方向にも回転が規制されるので、当該交差姿勢に確実に位置決めされる。その結果、作業者が梯子13に足を掛けた場合に、梯子13が安定し、安全に昇降が可能である。
【0055】
図3、
図10及び
図11が示すように、本実施形態では、下部走行体11に安定部材77が設けられている。この安定部材77は、鋼板からなり、固定リブ78(
図11参照)を介してブラケット51に取り付けられている。本実施形態では、安定部材77は、ボルトにより固定リブ78に締結されており、
図3が示すように、下部走行体11の車軸16、17間の空間を上方から覆うように配置されている。
【0056】
この安定部材77は、
図10、
図11が示すように切り欠かれている。具体的には、下部走行体11の側方から内側に向かって矩形の凹部79が形成されるように安定部材77が切り欠かれている。そして、この凹部79の内奥辺にさらに2つの嵌合溝80、81が設けられている(
図10参照)。梯子13が
図3及び
図4が示すように収納姿勢に変化したとき、梯子13は、安定部材77を上方から覆うように配置される。このとき、嵌合溝80にシリンダ連結ピン44及びボス74が進入し、嵌合溝81に回動規制ピン46(
図9参照)が進入する。嵌合溝80、81の形状は、それぞれシリンダ連結ピン44及びボス74並びに回動規制ピン46の外形に対応しており、嵌合溝80、81内でシリンダ連結ピン44、ボス74及び回動規制ピン46のがたつきが規制されている。これにより、ラフテレーンクレーン10が走行中に梯子13及び梯子展開装置14に振動が加わったとしても、安定部材77によってこれらが大きく変位することが防止される。
【0057】
本実施形態では、安定部材77の縁部(矢印50に沿う縁部)に、側壁82、83が設けられている(
図7参照)。これら側壁82、83は、安定部材77と一体的に形成されており、安定部材77の縁部が屈曲されることにより形成されている。これら側壁82、83が設けられることにより、安定部材77の剛性が向上し、梯子13及び梯子展開装置14の変位が確実に抑えられる。また、この側壁82に貫通孔84が設けられている。この貫通孔84に上記ロックピン85が挿通可能となっている。
【0058】
図12は、梯子13が収納姿勢にある状態での梯子展開装置14の斜視図であって、下部走行体11の内側斜め下方から見た図である。
【0059】
同図が示すように、梯子13が収納姿勢となったとき、位置決めシリンダ48は、揺動アーム43のヘッド部58と共に安定部材77の下側に配置される。この状態で位置決めシリンダ48が伸長作動すると、シリンダロッドと共にロックピン85が側壁82側に移動し上記貫通孔84に挿通される。この貫通孔84の形状は、ロックピン85の外形に対応されており、両者が嵌合することにより、揺動アーム43及び位置決めシリンダ48が安定部材77に対して位置決めされる。すなわち、梯子13は、梯子展開装置14と共に安定部材77に確実に固定される。しかも、上記位置決めシリンダ48は、
図10が示すように梯子13が張出姿勢且つ交差姿勢となったときに当該姿勢を維持する機能も発揮するので、梯子13が収納姿勢を維持する機能も兼ねている。
【0061】
図2が示すように、本実施形態に係るラフテレーンクレーン10では、梯子展開装置14が下部走行体11の車軸16と車軸17との間に配置され、しかも、梯子13は、下部走行体11と上部作業体12の操作部31との間の隙間33に収納されるから、梯子展開装置14に対してオフセットされた梯子13は、上記操作部31の直下にて展開される。
【0062】
詳述すれば、
図4が示すように、下部走行体11の長手方向に沿ってアーム支軸49が設けられ、揺動アーム43の基端部62がアーム支軸49に回動可能に支持されているから、揺動アーム43は、アーム支軸49を回動中心として下部走行体11の側方でフラップのように変位する(
図2参照)。
【0063】
揺動アーム43の先端部63に梯子13が設けられているから、揺動アーム43の変位に伴って、梯子13は、下部走行体11の車軸16、17間で収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化する。揺動アーム43がアーム支軸49の周りに回動して起立すると、梯子13は、揺動アーム43の長さを回転半径とする円弧状の軌跡を描いて上方へ持ち上げられ、下部走行体11と上部作業体12との隙間33に収納される。この状態から揺動アーム43が倒伏すると、梯子13は、上記軌跡を描いて下部走行体11の側方に張り出した位置に変位する。しかも、上記揺動アーム43は、揺動シリンダ65により起伏されるから、この梯子13の姿勢変化は迅速に行われる。
【0064】
さらに、梯子13は、梯子支軸42を介して揺動アーム43の先端部63に支持されており、梯子13が梯子支軸42の周りに回動することにより上記並行姿勢と交差姿勢との間で姿勢変化する(
図2(b)(c)参照)。梯子13が上記張出姿勢の状態で交差姿勢に変化すると、梯子13が下部走行体11に立て掛けられた状態となる。しかも、梯子13は、回動シリンダ45により回転されるから、この梯子13の姿勢変化は迅速に行われる。
【0065】
かかる構造では、梯子13はアーム支軸49を中心にして下部走行体11の側方に張り出すだけ(上記収納姿勢と張出姿勢との間で姿勢変化するだけ)であるので、揺動アーム43は、その長さが抑えられてコンパクトに設計される。しかも、梯子13は、上記アーム支軸49と交差して配置された梯子支軸42を中心にして回転されるだけで、下部走行体11に立て掛けられた状態となる。すなわち、梯子13は、揺動アーム43の回動及び当該梯子13の回転という二つの動作により、車軸16と車軸17との間の空間においてコンパクト且つ迅速な動作で下部走行体11と上部作業体12との間の隙間33に収納されると共に上部作業体12への作業者のアクセスを可能な姿勢に展開する。
【0066】
これにより、梯子13は、上部作業体12の操作部31の直下(本実施形態では、下部走行体11と上部作業体12との間の狭い隙間33)にも収納され、現場において作業者は、梯子13のハンドリングのための広いスペースを確保することなく操作部31への簡単且つ迅速なアクセスが可能となる。
【0067】
加えて、梯子13が収納姿勢から張出姿勢側に変化したときに、揺動アーム43に設けられた位置決め部材66が下部走行体11に当接する。これにより、揺動アーム43の回動が規制され、梯子13は、簡単且つ安価な構造で確実に張出姿勢に位置決めされる。したがって、梯子13を上記張出姿勢に維持して安全な作業が確保される。
【0068】
特に、位置決め部材66が六角ボルト68及びロックナット69からなるので、その構造がきわめて簡単であり、位置決め部材66が安価に構成される。しかも、ロックナット69により揺動アーム43に対する六角ボルト68の相対的位置が調整されるから、梯子13は、張出姿勢に正確に位置決めされる。
【0069】
本実施形態では、梯子13にサポート部材36が設けられることにより、梯子13の剛性が向上する。したがって、梯子13が梯子支軸42によって片持ち状に支持された場合であっても、梯子13が局部的に大きな変形を起こすことがない。しかも、梯子13が並行姿勢から交差姿勢側に変化したときに、サポート部材36に設けられた位置決め部材71が揺動アーム43に当接する。これにより、梯子13の回動が規制され、上記交差姿勢で位置決めされる。したがって、梯子13は、当該交差姿勢に維持され、安全な作業が確保される。
【0070】
この位置決め部材71は、上記サポート部材36にねじ込まれた六角ボルト72及びロックナット73からなるので、その構造がきわめて簡単であり、位置決め部材71が安価に構成される。しかも、ロックナット73によりサポート部材36に対する六角ボルト72の相対的位置が調整されるから、梯子13は、交差姿勢に正確に位置決めされる。
【0071】
また、本実施形態では、梯子13が並行姿勢から交差姿勢側に変化したときに、位置決めシリンダ48が作動し、回動規制ピン46と係合する。これにより、梯子13は、交差姿勢から並行姿勢に向かう方向への変位が規制され、当該交差姿勢で位置決めされる。交差姿勢から並行姿勢に向かう方向への変位が回動規制ピン46により規制され、当該方向と反対方向への変位が上記位置決め部材71により規制される。したがって、梯子13は確実に交差姿勢が維持され、作業者は、安全に梯子13を使用することができる。
【0072】
前述のように、本実施形態では、梯子13が収納されたとき、すなわち、並行姿勢且つ収納姿勢へと変化したときに、上記回動規制ピン46が安定部材77の嵌合溝81と嵌合する。これにより、梯子13のがたつきが防止され、当該収納姿勢が確実に維持される。しかも、本実施形態では、梯子13が収納されたときに、位置決めシリンダ48が安定部材77の側壁82と係合する。したがって、梯子13の収納姿勢が一層確実に維持される。この位置決めシリンダ48は、前述のように、梯子13の張出姿勢を維持する部材であって、収納姿勢の維持のために流用されたものである。したがって、部品点数の増加を伴うことなく、梯子13が収納姿勢で位置決めされる。
【0073】
本実施形態では、下部走行体11にブラケット51が設けられているので、上記揺動シリンダ65の取付位置の自由度が向上し且つ取付作業も容易になる。したがって、揺動アームが上記姿勢変化をするために、揺動シリンダ65の配置位置に関して最適設計が可能となる。
【0074】
特に、上記揺動シリンダ65及び回動シリンダ45は、空圧式複動シリンダであるから、これらの駆動回路の構造が簡単になるという利点がある。加えて、上記揺動シリンダ65及び回動シリンダ45が空圧式複動シリンダであることにより、上記ディーゼルエンジン20が稼働していないときでも簡単に揺動シリンダ65及び回動シリンダ45の制御が可能である。
【0075】
なお、本実施形態では、梯子13がサポート部材36を介して上記梯子支軸42に支持されているから、梯子13はサポート部材36によって補強されている。しかも、梯子支軸42は、揺動アーム43の基端部62に対して下部走行体11の長手方向にオフセットされているから、梯子13が張出姿勢の状態で並行姿勢から交差姿勢へと変化する際に、当該姿勢変化の回転中心(すなわち梯子支軸42)が、下部走行体11の長手方向にずれている。したがって、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子13の位置が、下部走行体11の長手方向に調整される。その結果、梯子13は、下部走行体11への取付部がフロントアクスル15の中央(車輪21、22の中間位置)に配置されていても、張出姿勢且つ交差姿勢となったときに、操作部31にアクセスし易い位置に展開できる。
【0076】
ところで、下部走行体11の車輪21、22がいわゆるフルステアリング状態であっても、張出姿勢且つ交差姿勢となった梯子13と車輪21、22との干渉は回避されなければならない。本実施形態では、梯子支軸42は、下部走行体11の側方に張り出される揺動アーム43のヘッド部58に位置するので、張出姿勢且つ交差姿勢となった状態の梯子13の位置が下部走行体11の幅方向にさらに調整され得る。これにより、揺動アーム43の長さ及び回動角度が調整されるだけで、上記干渉を回避するための設計が容易になるという利点がある。
【0077】
また、サポート部材36が隣り合う踏桟37(上段側の踏桟37)に当接しているから、当該サポート部材36と下段側の踏桟37との間に十分な空間が確保される。したがって、作業者が踏桟37に足を掛ける際にサポート部材36が邪魔になることがない。
【0078】
さらに、梯子36の上端にクロスメンバ38が設けられているので、これがステップとして機能する。したがって、作業者は、梯子13が交差姿勢にあるときにクロスメンバ38に足を掛けて上部作業体12に移動することができる。
【0079】
本実施形態では、下部走行体11のフロントアクスル15が車軸16及び車軸17を有する二軸構造であり、梯子展開装置14が車軸16と車軸17との間に配置されているが、フロントアクスル15がかかる二軸構造に限定されるものではない。前述のように、フロントアクスル15の軸重が大きい場合は、車軸16、17に加えてさらに車軸が追加され、フロントアクスル15が複数軸構造となる場合がある。その場合であっても、梯子展開装置14は、隣接する車軸間(たとえば車軸16、17の間)に配置され得る。また、リアアクスル19が複数軸構造であってもよく、その場合も、梯子展開装置14は、隣接する車軸間に配置され得る。なお、梯子展開装置14は、隣接していない車軸間に配置されることもある。たとえば、フロントアクスル15及びリアアクスル19が共に複数軸構造である場合に、フロントアクスル15の最後部軸重とリアアクスル19の最前部車軸との間に梯子展開装置14が配置されることもある。加えて、フロントアクスル15及びリアアクスル19の軸重が小さい場合は、双方共に短軸構造となる場合もあり、その場合には、前軸と後軸との間に梯子展開装置14が配置され得る。