(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、画像符号化装置、画像符号化方法および画像符号化プログラムの実施例を、添付図面を参照して詳述する。なお、本実施例の画像符号化装置、画像符号化方法および画像符号化プログラムは、GDR(漸進的復号化リフレッシュ)方式に基づいて画像の符号化を行うものに適用される。
【0018】
図1は、本実施例に係る画像符号化方法の一例を説明するための図である。以下では、一例として、1つの画像を4つに分割(スライス)し、その1/4ずつスライスした画像信号(画面1/4の映像信号)を符号化して映像ストリームを出力する場合を説明する。
【0019】
図1において、参照符号SQ1は、符号化を行っているシーケンスの直前のシーケンス(第1シーケンス)を示し、SQ2は、符号化を行っているシーケンス(第1シーケンスの直後のシーケンス:第2シーケンス)を示す。
【0020】
ここで、第1シーケンスSQ1において、1つの画像は、4つのピクチャP11〜P14で形成され、第2シーケンスSQ2において、1つの画像は、5つのピクチャP21〜P25で形成されている。
【0021】
例えば、第1シーケンスSQ1の1番目ピクチャP11において、最上段のスライス領域S0は、Intra予測の領域であり、大きな情報量を有し、2段目〜最下段のスライス領域S1〜S3は、Inter予測の領域であり、小さな情報量を有する。
【0022】
すなわち、以下の説明は、4ピクチャ(フレーム)かけてシーケンスをリフレッシュ(Intra領域を一周)する場合のものであるが、本実施例の適用は、1つの画像を4つにスライスして処理するものに限定されないのはいうまでもない。
【0023】
第1シーケンスSQ1において、1つの画像は、4つのピクチャP11〜P14で形成されているが、4番目ピクチャP14では、Intra領域が予め定められた大きさ(目標情報量)を超過している。すなわち、第1シーケンスSQ1では、4番目ピクチャP14におけるIntra領域Rofが、上限である目標情報量TIQを超えて上方へはみ出している。
【0024】
なお、例えば、第1シーケンスSQ1のように、4番目ピクチャP14におけるIntra領域Rofが目標情報量TIQを超過している場合には、画像をリフレッシュするのが困難なため、例えば、そのイントラ(Intra)画像を破棄することになる。
【0025】
このように、Intra領域が目標情報量を超えている場合、第1シーケンスSQ1の後の第2シーケンスSQ2では、第1シーケンスSQ1における情報(Intraスライスの発生情報量、Intraスライスライン数およびピクチャ全体の発生情報量)に基づいた処理を行う。
【0026】
例えば、1秒間に30フレーム(画像)の動画を想定した場合、近接するフレーム間での画像変化は小さく、第2シーケンスSQ2における処理を、第1シーケンスの情報に基づいて行うのが好ましいと考えられる。そこで、例えば、第1シーケンスSQ1のように、4番目ピクチャP14におけるIntra領域Rofが目標情報量TIQを超過している場合、第2シーケンスSQ2では、1つの画像を5つのピクチャP21〜P25で形成して、Intra領域を分割する。
【0027】
すなわち、第2シーケンスSQ2において、3番目ピクチャP23と4番目ピクチャP24の間で、スライス前処理を行って、第2シーケンスSQ2における全てのピクチャP21〜P25のIntra領域が目標情報量TIQを超過しないように制御する。
【0028】
ここで、スライス前処理は、例えば、第1シーケンスSQ1の4番目ピクチャP14における予測情報量から、一旦、Laに相当するIntraスライスライン数としたが、さらに、情報量がLbだけ超過しそうなので、Intraスライスライン数をさらに削減する。
【0029】
すなわち、第2シーケンスの4番目ピクチャP24および5番目ピクチャP25では、Intra予測のライン数を削減し、SQ1のP14に対して2つのピクチャP24,P25を割り当て、各ピクチャにおけるIntra予測の情報量を低減するようになっている。
【0030】
このように、本実施例は、第1シーケンスSQ1の後に、実際に符号化を行う第2シーケンスSQ2における4および5番目ピクチャP24,P25のIntra予測(Intraスライス)Sd1,Sd2が目標情報量を超えないように、Intraスライスライン数を制御する。なお、Inter(インター)スライスライン数は、1ピクチャあたりのライン数からIntraスライスライン数を減算することにより求められる。
【0031】
一般化すると、第2シーケンスのIntraスライスライン数(イントラスライスライン数)をN、第2シーケンスのInterスライスライン数(インタースライスライン数)をMとして、MおよびNは、次の算出式により求めることができる。
N×I
intra/L
intra+M×I
inter/L
inter=P
total
N+M=L
total
【0032】
上記算出式において、I
intraは第1シーケンスのIntraスライスのIntra発生情報量、I
interは第1シーケンスのInter発生情報量、L
intraは第1シーケンスのIntraスライスライン数、そして、L
interは第1シーケンスのInterスライスライン数を示す。また、L
totalは1ピクチャあたりのライン数、さらに、P
totalは1ピクチャあたりの目標情報量を示す。
【0033】
ここで、例えば、I
intra/L
intraは、第1シーケンスの4番目ピクチャP14におけるIntraの1ライン当たりの発生情報量を表し、I
inter/L
interは、第1シーケンスの4番目ピクチャP14におけるInterの1ライン当たりの発生情報量を表す。
【0034】
すなわち、例えば、N×I
intra/L
intraにより、ピクチャP14におけるIntra全体の発生情報量が表され、M×I
inter/L
interにより、ピクチャP14におけるInter全体の発生情報量が表される。
【0035】
これにより、例えば、同じ4番目ピクチャP14,P24において、第2シーケンスのIntraスライスライン数Nを、1ピクチャあたりの目標情報量P
totalによる制限を加えた上で算出する(見積もる)ことができる。
【0036】
すなわち、まず、第2シーケンスSQ2における4番目ピクチャP24のIntra予測Sd1が目標情報量を超えないように、Intraスライスライン数を見積もる。さらに、第2シーケンスSQ2における5番目ピクチャP25のIntra予測Sd2が目標情報量を超えないように、Intraスライスライン数を見積もる。
【0037】
なお、第2シーケンスSQ2における4および5番目ピクチャP24,P25のIntra予測Sd1,Sd2が目標情報量P
totalを超えないように、Intraスライスライン数を見積もった後、IntraアクティビティActNによる補正を行う。なお、Intraアクティビティに関しては、
図3以降を参照して、後に詳述する。
【0038】
このように、本実施例によれば、符号化においては、Intraスライスの発生情報量が支配的であるため、Intraスライスライン数を削減することにより、1ピクチャ当たりの発生情報量を目標情報量に収束させることが可能になる。すなわち、本実施例によれば、画質劣化を抑えつつ、映像のエンコードにおける遅延、換言すると、映像入力からストリーム出力までのエンコード遅延を低減することが可能になる。
【0039】
図2は、本実施例に係る画像符号化装置の一例を示すブロック図である。
図2において、参照符号1は画像処理部、2は映像信号取り込み部、3は前処理部、そして、4は画像符号化部を示す。
【0040】
さらに、参照符号5は前シーケンスの情報用バッファ(第1情報用バッファ)、6はテンポラリ情報用バッファ(第2情報用バッファ)、そして、7はストリームバッファを示す。なお、
図2に示す画像符号化装置は、例えば、LSIなどの集積回路として実現される。
【0041】
画像処理部1は、光学系(図示しない)および撮像素子(CMOSイメージセンサ:図示しない)を介して得られた画像(映像信号)を処理するもので、例えば、1画面を1/4ずつスライスし、画面1/4の映像信号を生成して出力する。
【0042】
映像信号取り込み部2は、画像処理部1からの映像信号(画面1/4の映像信号を)を取り込んで、前処理部3に出力する。前処理部3は、後に詳述する前処理を行い、その前処理された信号を画像符号化部4に出力する。
【0043】
画像符号化部4は、後に詳述する前シーケンスの情報用バッファ5およびテンポラリ情報用バッファ6との間でデータの遣り取りを行って画像(映像)の符号化処理を行い、ストリームデータを生成してストリームバッファ7に出力する。
【0044】
図2に示されるように、画像符号化部4は、制御部(処理装置)401、Intra(イントラ)スライスライン判定部402、差分画像生成部403、DCT(離散コサイン変換)部404、量子化部405、エントロピ符号化部406および逆符号化部407を含む。
【0045】
さらに、画像符号化部4は、IDCT(逆離散コサイン変換)部408、動き補償部409、画内予測部410、予測画像生成部411、フレームメモリ412および動きベクトル検出部413を含む。
【0046】
ここで、本実施例の画像符号化装置の画像符号化部4には、上述した前処理部3の出力を受け取って、Intraスライスラインの判定を行うIntraスライスライン判定部402が設けられている。
【0047】
また、制御部401は、バッファ5および6との間でデータを遣り取りすると共に、Intraスライスライン判定部402との間で信号を遣り取りして、量子化部405,エントロピ符号化部406および画内予測部410等を制御する。なお、制御部401は、エントロピ符号化部406からの信号も受け取っている。
【0048】
ここで、差分画像生成部403,DCT部404,量子化部405,エントロピ符号化部406,逆符号化部407およびIDCT部408は一般的なものであり、その説明は省略する。
【0049】
さらに、動き補償部409,画内予測部410、予測画像生成部411、フレームメモリ412および動きベクトル検出部413も一般的なものであり、その説明は省略する。なお、
図2は、画像符号化装置の単なる一例であり、本実施例の画像符号化装置は、様々に変形および変更することが可能なのはいうまでもない。
【0050】
図3は、1周目のシーケンスにおける処理の一例を説明するためのフローチャートであり、
図4は、
図3に示すフローチャートにおけるバッファ処理を説明するための図である。
【0051】
図2および
図3を参照して、前のシーケンス情報が無い1周目のシーケンス(第1シーケンス)における処理を説明する。第1シーケンスにおける処理が開始すると、画像処理部1により1画面が1/4ずつスライスされた画面1/4の映像信号を、映像信号取り込み部2により取り込む(ST10)。
【0052】
そして、その画面1/4の映像信号がIntraスライスかどうかを判定し(ST11)、Intraスライスではない(No)と判定すると、その取り込みをした画面1/4をInter符号化する(ST12)。さらに、Inter符号化した時の発生情報量を取得し(ST13)、第1シーケンスにおける処理を終了する。
【0053】
すなわち、ステップST11において、取り込みをした画面1/4がIntraスライスではないと判定すると、一般的な処理と同様に、画像符号化部4によりInter符号化が行われる。なお、Inter符号化した時の発生情報量は、エントロピ符号化部406を介して制御部401が取得することになる。
【0054】
一方、ステップST11において、取り込みをした画面1/4がIntraスライスである(Yes)と判定すると、前処理部3により、IntraアクティビティActNを取得する(ST14)。
【0055】
ここで、ステップST14以降の処理で使用するIntraアクティビティActNは、例えば、画面の複雑度が分かる統計情報ならどのような統計情報を適用してもよい。また、前述したステップST11におけるIntraスライスの判定式は、Intraスライス部分の画面の複雑度に応じて、Intraスライスライン数Nを適応的に算出(補正)可能であれば、どのような判定式を適用してもよい。これは、後述する2周目以降のシーケンスにおける処理でも同様である。
【0056】
次に、Intraスライスライン判定部402により、Intraスライスライン数(Intraスライスのライン数)N=取り込みをした画面1/4のライン数とし(ST15)、また、Intraスライスの残りのライン数N'=0として初期化する(ST16)。
【0057】
さらに、取り込みをした画面1/4をIntra符号化し(ST17)、今回のIntraスライスの情報(Intraスライスライン数N,発生情報量,IntraアクティビティActN)を前シーケンスの情報用バッファ(第1情報用バッファ)5に格納する(ST18)。
【0058】
例えば、ステップST18でバッファ5に格納する情報は、
図4(a)に示されるように、スライス0〜3に対するIntraスライスライン数L
intra-0〜L
intra-3、発生情報量I
intra-0〜I
intra-3およびIntraアクティビティACT
intra-0〜ACT
intra-3である。
【0059】
ここで、スライス0〜3は、例えば、前述した
図1における第1シーケンスSQ1のピクチャP11のスライス領域S0〜S3に対応する。また、バッファ5に格納する今回(第1シーケンス)のIntraスライスの情報は、次のシーケンス(第2シーケンス)の処理に使用される。
【0060】
そして、テンポラリ情報用バッファ(第2情報用バッファ)6を0クリアし(ST19)、第1シーケンスにおける処理を終了する。すなわち、ステップST19では、
図4(b)に示されるように、テンポラリ情報用バッファ6における、スライスXに対するIntraスライスライン数tmpL
intra-X、発生情報量tmpI
intra-XおよびIntraアクティビティtmpACT
intra-Xを全て0クリアする。これにより、テンポラリ情報用バッファ6は、初期化されることになる。
【0061】
図5は、2周目以降のシーケンスにおける処理の一例を説明するためのフローチャートであり、
図6は、
図5に示すフローチャートにおけるバッファ処理を説明するための図である。
【0062】
図2および
図5を参照して、前のシーケンス情報が有る2周目以降のシーケンス(第2シーケンス)における処理を説明する。第2シーケンスにおける処理が開始すると、画像処理部1により1画面が1/4ずつスライスされた画面1/4の映像信号を、映像信号取り込み部2により取り込む(ST20)。
【0063】
そして、その画面1/4の映像信号がIntraスライスかどうかを判定し(ST21)、Intraスライスではない(No)と判定すると、その取り込みをした画面1/4をInter符号化する(ST22)。さらに、Inter符号化した時の発生情報量を取得し(ST23)、第2シーケンスにおける処理を終了する。
【0064】
すなわち、ステップST21において、取り込みをした画面1/4がIntraスライスではないと判定した場合は、
図3を参照して説明した1周目のシーケンス(第1シーケンス)における処理と同様である。
【0065】
一方、ステップST21において、取り込みをした画面1/4がIntraスライスである(Yes)と判定すると、前処理部3により、IntraアクティビティActNを取得する(ST24)。
【0066】
ここで、第2シーケンス(2周目以降のシーケンス)では、前のシーケンスによるIntraスライスの情報が前シーケンスの情報用バッファ5に格納されているので、その前シーケンスにおけるIntraスライス情報を使用することになる。
【0067】
すなわち、前シーケンス(第1シーケンス)の同位置のスライス情報より、Intraスライスライン数Nを見積もる(ST25)。ここで、
図6(a)は、ステップST25で使用するIntraスライス情報を示し、
図4(a)に示す前のシーケンス(第1シーケンス)の処理におけるステップST18でバッファ5に格納したIntraスライス情報を読み出したものである。
【0068】
例えば、今回、処理するのがスライス0ならば、
図6(a)におけるスライス0のデータD01(スライス0に対するIntraスライスライン数L
intra-0および発生情報量I
intra-0)を、バッファ5から読み出して、Intraスライスライン数Nを見積もる。
【0069】
そして、前シーケンスの同位置のIntraアクティビティとActNより、Intraスライスライン数Nを補正する(ST26)。ここで、例えば、今回、処理するのがスライス0ならば、
図6(a)におけるスライス0のIntraアクティビティAct
intra-0をバッファ5から読み出し、ステップST24で取得したIntraアクティビティActNと共に使用して、Intraスライスライン数Nを補正する。さらに、Intraスライスライン数Nに応じた符号化処理を行う(ST27)。
【0070】
なお、ステップST26におけるIntraアクティビティ補正処理(Nの補正処理)は、
図7および
図8を参照して、後に詳述し、また、ステップST27における符号化処理は、
図9および
図10を参照して、後に詳述する。
【0071】
次に、今回のIntraスライスの情報(Intraスライスライン数N,発生情報量,IntraアクティビティActN)をテンポラリ情報用バッファ6に格納する(ST28)。すなわち、ステップST28では、
図6(b)に示されるように、テンポラリ情報用バッファ6に対して、スライスXに対するIntraスライスライン数tmpL
intra-X、発生情報量tmpI
intra-XおよびIntraアクティビティtmpACT
intra-Xを格納する。
【0072】
さらに、Intraスライスの残りのライン数N'=0が成り立つかどうかを判定する(ST29)。ここで、ステップST29において、N'=0が成立しない(No)、すなわち、Intraスライスの残りのライン数N'が有ると判定すると、処理を終了する。
【0073】
一方、ステップST29において、N'=0が成立する(Yes)、すなわち、Intraスライスの残りのライン数N'が無いと判定すると、テンポラリ情報用バッファ6の値を前シーケンスの情報用バッファ5の該当スライス位置へコピーする(ST30)。
【0074】
例えば、該当スライス位置がスライス3の場合、
図6(b)に示すテンポラリ情報用バッファ6に格納された値(tmpL
intra-X,tmpI
intra-X, tmpACT
intra-X)が、
図6(a)に示す前シーケンスの情報用バッファ5のスライス3のデータD31としてコピーされる。
【0075】
そして、テンポラリ情報用バッファ6に0クリアして初期化し(ST31)、処理を終了する。なお、このシーケンス(第1シーケンスに相当)により前シーケンスの情報用バッファ5に格納されたIntraスライスの情報(データ)は、同様にして、次のシーケンス(第2シーケンスに相当)の処理で使用されることになる。
【0076】
図7は、
図5に示すフローチャートにおけるIntraアクティビティ補正処理(ステップST26の処理)をより詳細に説明するためのフローチャートであり、
図8は、
図7に示すフローチャートにおけるバッファ処理を説明するための図である。
【0077】
前述のように、ステップST26では、前シーケンスの同位置のIntraアクティビティとActNよりIntraスライスライン数Nを補正するが、このNの補正処理が開始すると、まず、前シーケンスの同位置のスライスのIntraスライスライン数を取得する(ST40)。
【0078】
ここで、例えば、今回、スライス0の処理を行っていれば、
図8に示す前シーケンスの情報用バッファ5におけるスライス0のIntraスライスライン数L
intra-0(データD03)を読み出して取得することになる。
【0079】
さらに、前シーケンスの同位置のスライスのIntraアクティビティActNを取得する(ST41)。ここで、今回、スライス0の処理を行っていれば、
図8に示す前シーケンスの情報用バッファ5におけるスライス0のIntraアクティビティAct
intra-0(データD04)を読み出して取得することになる。
【0080】
そして、今回のIntraスライスライン数辺りのアクティビティCIAPLを、ActN/N=CIAPLとして算出し(ST42)、前シーケンスのIntraスライスライン数辺りのアクティビティPIAPLを、Act
intra-0/数L
intra-0=PIAPLとして算出する(ST43)。
【0081】
次に、CIAPL>PIAPLが成り立つかどうかを判定し(ST44)、CIAPL>PIAPLが成立する(Yes)と判定すると、X=CIAPL/PIAPLとし(ST45)、Intraスライスライン数N=N/Xとして算出し(ST46)、処理を終了する。ここで、ステップST45におけるCIAPL/PIAPLの計算では、例えば、小数点以下は切り上げることとする。
【0082】
一方、ステップST44において、CIAPL>PIAPLが成立しない(No)と判定すると、X=PIAPL/CIAPLとし(ST47)、Intraスライスライン数N=N*Xとして算出し(ST48)、処理を終了する。ここで、ステップST47におけるPIAPL/CIAPLの計算では、例えば、小数点以下は切り捨てることとする。
【0083】
このようにして、前のシーケンス(第1シーケンス)におけるIntraスライス情報を使用して見積もったIntraスライスライン数Nに対して、Intraアクティビティによる補正処理を行うことができる。
【0084】
このように、本実施例によれば、ライン数決定の際には、基にした過去ピクチャの情報から算出されるIntraアクティビティと現スライスのIntraアクティビティの差分に基づいた補正を行うようになっており、例えば、シーン変化にも対応することができる。なお、
図7に示すフローチャートは、単なる一例を示すものであり、Intraアクティビティによる補正処理は、様々な補正処理を適用することが可能である。
【0085】
図9は、
図5に示すフローチャートにおける符号化処理(ステップST27の処理)をより詳細に説明するためのフローチャートであり、
図10は、
図9に示すフローチャートにおけるスライス画像を説明するための図である。
【0086】
前述のように、ステップST27では、Intraスライスライン数Nに応じた符号化処理を行うが、この符号化処理が開始すると、まず、Intraスライスの残りのライン数N'=0が成り立つかどうかを判定する(ST50)。
【0087】
ステップST50において、N'=0が成立する(Yes)と判定すると、符号化ライン数=スライスライン数とし(ST51)、符号化ライン数>Nが成り立つかどうかを判定する(ST52)。
【0088】
一方、ステップST50において、N'=0が成立しない(No)と判定すると、符号化ライン数=スライスライン数とし(ST51)、符号化ライン数=N'とし(ST56)、さらに、スライスライン数−N'分、Inter符号化を行って、ステップST52に進む。ここで、スライスライン数,Intraスライスライン数N,および,Intraスライスの残りのライン数N'は、例えば、
図10に示されるような関係になっている。
【0089】
ステップST52において、符号化ライン数>Nが成立する(Yes)と判定すると、N'=符号化ライン数−Nとし(ST53)、さらに、N分、Intra符号化を行う(ST54)。また、ステップST52において、符号化ライン数>Nが成立しない(No)と判定すると、N'=0とし(ST58)、さらに、N分、Intra符号化を行う(ST54)。
【0090】
そして、再び、N'=0が成り立つかどうかを判定する(ST55)。ステップST55において、N'=0が成立する(Yes)と判定すると、そのまま処理を終了し、N'=0が成立しない(No)と判定すると、N'分、Inter符号化を行い(ST59)、その後、処理を終了する。なお、上述した符号化処理は(ステップST27の処理)は、単なる例であり、様々な変形および変更が可能なのはいうまでもない。
【0091】
このように、本実施例によれば、符号化を行う前に、予め、前シーケンスの発生情報量を用いた予測、並びに、Intraアクティビティによる補正を行い、Intraスライスライン数を決定しておくことができる。これにより、符号化中に情報量が発生し過ぎて、以降の画像の情報量の割り当てを削減するといった処理が不要となり、その結果、画質の劣化を抑えつつ、エンコード遅延を低減することが可能となる。
【0092】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではない。また、明細書のそのような記載は、発明の利点および欠点を示すものでもない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【0093】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに、以下の付記を開示する。
(付記1)
漸進的復号化リフレッシュ方式に基づいて画像の符号化を行う画像符号化装置であって、
1画面が複数にスライスされた映像信号を受け取って前処理を行う前処理部と、
前記前処理部の出力を受け取って符号化処理を行い、ストリームデータを生成する画像符号化部と、を有し、
前記画像符号化部は、
第1シーケンスの後に、符号化が行われる第2シーケンスにおける対象イントラスライスに対して、前記第1シーケンスにおける、前記対象イントラスライスに対応する第1イントラスライスの情報を取得し、
取得した前記第1イントラスライスの情報に基づいて、目標情報量を超えないように、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数およびインタースライスライン数を見積もる、
ことを特徴とする画像符号化装置。
【0094】
(付記2)
前記画像符号化部は、
前記第1イントラスライスの情報として、前記第1シーケンスのイントラ発生情報量および前記第1シーケンスのイントラスライスライン数の情報を取得する、
ことを特徴とする付記1に記載の画像符号化装置。
【0095】
(付記3)
前記画像符号化部は、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nおよびインタースライスライン数Mを、
I
intraを、前記第1シーケンスのイントラ発生情報量、
I
interを、前記第1シーケンスのインター発生情報量、
L
intraを、前記第1シーケンスのイントラスライスライン数、
L
interを、前記第1シーケンスのインタースライスライン数、
L
totalを、1ピクチャあたりのライン数、および、
P
totalを、1ピクチャあたりの目標情報量として、
次の算出式により求める、
N×I
intra/L
intra+M×I
inter/L
inter=P
total
N+M=L
total
ことを特徴とする付記2に記載の画像符号化装置。
【0096】
(付記4)
さらに、
前記第1シーケンスのイントラ発生情報量、前記第1シーケンスのイントラスライスライン数および前記第1シーケンスのイントラアクティビティを保持する第1情報用バッファを有する、
ことを特徴とする付記2または付記3に記載の画像符号化装置。
【0097】
(付記5)
さらに、
前記第2シーケンスのイントラ発生情報量,前記第2シーケンスのイントラスライスライン数および前記第2シーケンスのイントラアクティビティを保持する第2情報用バッファを有する、
ことを特徴とする付記4に記載の画像符号化装置。
【0098】
(付記6)
前記画像符号化部は、さらに、
前記第1シーケンスのイントラアクティビティと前記第2シーケンスのイントラアクティビティの差分を検出する、
ことを特徴とする付記5に記載の画像符号化装置。
【0099】
(付記7)
前記画像符号化部は、さらに、
前記第2シーケンスのイントラアクティビティが、前記第1シーケンスのイントラアクティビティより大きいとき、前記算出式から求めた前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させ、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させた分、前記第2シーケンスのインタースライスライン数Mを増加させる、
ことを特徴とする付記5に記載の画像符号化装置。
【0100】
(付記8)
前記画像符号化部は、
前記第1イントラスライスに対して、前記第1シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記対象イントラスライスに対して、前記第2シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記第1シーケンスのイントラアクティビティと前記第2シーケンスのイントラアクティビティの差分を検出する、
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【0101】
(付記9)
前記画像符号化部は、
前記第1イントラスライスに対して、前記第1シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記対象イントラスライスに対して、前記第2シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記第2シーケンスのイントラアクティビティが、前記第1シーケンスのイントラアクティビティより大きいとき、前記算出式から求めた前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させ、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させた分、前記第2シーケンスのインタースライスライン数Mを増加させる、
ことを特徴とする付記1乃至付記3のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【0102】
(付記10)
前記画像符号化部は、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nが前記対象イントラスライスの符号化ライン数よりも小さいとき、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nの分の符号化処理を行った後で、さらに、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nと前記対象イントラスライスの符号化ライン数の差に相当する数の分の符号化処理を行う、
ことを特徴とする付記1乃至付記9のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【0103】
(付記11)
前記第1イントラスライスは、複数のピクチャに対する符号化が行われる前記第1シーケンスにおいて、前記第1イントラスライスの情報量が前記目標情報量を超える第1ピクチャに含まれ、
前記対象イントラスライスは、複数のピクチャに対する符号化が行われる前記第2シーケンスにおいて、前記第1ピクチャに対応する第2ピクチャに含まれる、
ことを特徴とする付記1乃至付記10のいずれか1項に記載の画像符号化装置。
【0104】
(付記12)
漸進的復号化リフレッシュ方式に基づいて画像の符号化を行う画像符号化方法であって、
第1シーケンスの後に、符号化が行われる第2シーケンスにおける対象イントラスライスに対して、前記第1シーケンスにおける、前記対象イントラスライスに対応する第1イントラスライスの情報を取得し、
取得した前記第1イントラスライスの情報に基づいて、目標情報量を超えないように、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数およびインタースライスライン数を見積もる、
ことを特徴とする画像符号化方法。
【0105】
(付記13)
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nおよびインタースライスライン数Mを、
I
intraを、前記第1シーケンスのイントラ発生情報量、
I
interを、前記第1シーケンスのインター発生情報量、
L
intraを、前記第1シーケンスのイントラスライスライン数、
L
interを、前記第1シーケンスのインタースライスライン数、
L
totalを、1ピクチャあたりのライン数、および、
P
totalを、1ピクチャあたりの目標情報量として、
次の算出式により求める、
N×I
intra/L
intra+M×I
inter/L
inter=P
total
N+M=L
total
ことを特徴とする付記12に記載の画像符号化方法。
【0106】
(付記14)
さらに、
前記第1イントラスライスに対して、前記第1シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記対象イントラスライスに対して、前記第2シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記第2シーケンスのイントラアクティビティが、前記第1シーケンスのイントラアクティビティより大きいとき、前記算出式から求めた前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させ、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させた分、前記第2シーケンスのインタースライスライン数Mを増加させる、
ことを特徴とする付記12または付記13に記載の画像符号化方法。
【0107】
(付記15)
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nが前記対象イントラスライスの符号化ライン数よりも小さいとき、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nの分の符号化処理を行った後で、さらに、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nと前記対象イントラスライスの符号化ライン数の差に相当する数の分の符号化処理を行う、
ことを特徴とする付記12乃至付記14のいずれか1項に記載の画像符号化方法。
【0108】
(付記16)
漸進的復号化リフレッシュ方式に基づいて画像の符号化を行う画像符号化プログラムであって、
第1シーケンスの後に、符号化が行われる第2シーケンスにおける対象イントラスライスに対して、前記第1シーケンスにおける、前記対象イントラスライスに対応する第1イントラスライスの情報を取得し、
取得した前記第1イントラスライスの情報に基づいて、目標情報量を超えないように、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数およびインタースライスライン数を見積もる、
処理を、処理装置に実行させる、
ことを特徴とする画像符号化プログラム。
【0109】
(付記17)
さらに、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nおよびインタースライスライン数Mを、
I
intraを、前記第1シーケンスのイントラ発生情報量、
I
interを、前記第1シーケンスのインター発生情報量、
L
intraを、前記第1シーケンスのイントラスライスライン数、
L
interを、前記第1シーケンスのインタースライスライン数、
L
totalを、1ピクチャあたりのライン数、および、
P
totalを、1ピクチャあたりの目標情報量として、
次の算出式により求める、
N×I
intra/L
intra+M×I
inter/L
inter=P
total
N+M=L
total
処理を、前記処理装置に実行させる、
ことを特徴とする付記16に記載の画像符号化プログラム。
【0110】
(付記18)
さらに、
前記第1イントラスライスに対して、前記第1シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記対象イントラスライスに対して、前記第2シーケンスのイントラアクティビティを取得し、
前記第2シーケンスのイントラアクティビティが、前記第1シーケンスのイントラアクティビティより大きいとき、前記算出式から求めた前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させ、
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nを減少させた分、前記第2シーケンスのインタースライスライン数Mを増加させる、
処理を、前記処理装置に実行させる、
ことを特徴とする付記16または付記17に記載の画像符号化プログラム。
【0111】
(付記19)
前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nが前記対象イントラスライスの符号化ライン数よりも小さいとき、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nの分の符号化処理を行った後で、さらに、前記第2シーケンスのイントラスライスライン数Nと前記対象イントラスライスの符号化ライン数の差に相当する数の分の符号化処理を行う、
処理を、前記処理装置に実行させる、
ことを特徴とする付記16乃至付記18のいずれか1項に記載の画像符号化プログラム。