特許第6398605号(P6398605)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 沖電気工業株式会社の特許一覧

特許6398605無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム
<>
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000002
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000003
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000004
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000005
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000006
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000007
  • 特許6398605-無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398605
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20180920BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20180920BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20180920BHJP
   H04L 29/08 20060101ALI20180920BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H04W56/00 130
   H04W4/38
   H04W52/02 110
   H04L13/00 307Z
   H04L7/00 810
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-216569(P2014-216569)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-86240(P2016-86240A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100090620
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 宣幸
(72)【発明者】
【氏名】川本 康貴
【審査官】 石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−254409(JP,A)
【文献】 特開2006−148906(JP,A)
【文献】 Part 15.4: Low-Rate Wireless Personal Area Networks(LR-WPANs) Amendment 1:MAC sublayer,IEEE Std 802.15.4e,IEEE Computer Society,2012年,p.14-16,31-32,51-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 − 99/00
H04B 7/24 − 7/26
H04L 7/00
H04L 29/08
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、対向する無線通信装置の受信タイミングに合わせて、1種又は2種以上のフレームを含むフレーム群を送信する無線通信装置において、
対向する無線通信装置の受信タイミング情報を検出する受信タイミング検出手段と、
上記受信タイミング情報を記憶し、この記憶した受信タイミング情報の開示及び消去を行う受信タイミング記憶手段と、
送信されたフレーム群が、対向する無線通信装置へ到達されたことを確認するフレーム群到達確認手段と、
対向する無線通信装置と同期が取れていない場合に上記フレーム群を送信する第1のフレーム群送信手段と、
対向する無線通信装置と同期が取れている場合に上記フレーム群を送信する第2のフレーム群送信手段と、
フレーム群を再送する場合のみ、対向する無線通信装置と同期が取れているか否かに関わらず、上記フレーム群を送信する第3のフレーム群送信手段と、
上記受信タイミング記憶手段に記憶される上記受信タイミング情報と上記フレーム群到達確認手段によるフレーム群到達確認結果により、上記第1〜3のいずれかのフレーム群送信手段を選択してフレーム群送信動作を制御するフレーム群送信制御部とを有し、
上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記フレーム群送信制御部は、上記第3のフレーム群送信手段によりフレーム群の再送を行うように制御する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記受信タイミング記憶手段により送信先の受信タイミング情報が消去された後に、上記フレーム群送信制御部は、上記第1のフレーム群送信手段によりフレーム群の再送を行うように制御することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記受信タイミング記憶手段により送信先の受信タイミング情報が消去された後に、上記フレーム群送信制御部は、上位レイヤ処理部へ送信失敗である旨を通知することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を複数回連続して確認できなかった場合には、確認できない回数が所定数を超えるまでは、上記フレーム群送信制御部は、上位レイヤ処理部へ送信失敗である旨を通知し、確認できない回数が所定数に達したときには、上記受信タイミング記憶手段により送信先の受信タイミングが消去された後に、上位レイヤ処理部へ送信失敗である旨を通知することを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
上記フレーム群到達確認手段は、対向する無線通信装置から送信された受信応答信号を受信することにより、フレーム群の到達を確認するものであり、
上記受信タイミング検出手段は、上記受信応答信号を解析し、上記受信応答信号に含まれる受信タイミングを検出するものであり、
上記第1のフレーム群送信手段は、ウェイクアップフレームを第1の期間以上連続して送信した後にデータフレームを送信するものであり、
上記第2のフレーム群送信手段は、ウェイクアップフレームを第2の期間以上連続して送信した後に、データフレームを送信するものであり、
上記第3のフレーム群送信手段は、ウェイクアップフレームを第3の期間以上連続して送信した後にデータフレームを送信するものである
ことを特徴とする請求項1〜に記載の無線通信装置。
【請求項6】
上記フレーム群到達確認手段は、対向する無線通信装置から送信された受信応答信号を受信することにより、フレーム群の到達を確認するものであり、
上記受信タイミング検出手段は、上記受信応答信号を受信した時刻からフレーム群を送信する期間を差し引いた時刻を受信タイミング情報として検出するものであり、
上記第1のフレーム群送信手段は、送信フレーム毎に少なくても上記受信応答信号を受信できる間隔を空けて、データフレームを第1の期間以上連続して送信するものであり、
上記第2のフレーム群送信手段は、送信フレーム毎に少なくても上記受信応答信号を受信できる間隔を空けて、データフレームを第2の期間以上連続して送信するものであり、
上記第3のフレーム群送信手段は、送信フレーム毎に少なくても上記受信応答信号を受信できる間隔を空けて、データフレームを第3の期間以上連続して送信するものである
ことを特徴とする請求項1〜に記載の無線通信装置。
【請求項7】
上記第2の期間は、上記第1の期間に比べて十分短い期間であることを特徴とする請求項またはに記載の無線通信装置。
【請求項8】
上記第3の期間は、上記第1の期間より短く上記第2の期間より長い期間であることを特徴とする請求項またはに記載の無線通信装置。
【請求項9】
上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、対向する無線通信装置の受信タイミングに合わせて、1種又は2種以上のフレームを含むフレーム群を送信する無線通信装置に搭載されるコンピュータを、
対向する無線通信装置の受信タイミング情報を検出する受信タイミング検出手段と、
上記受信タイミング情報を記憶し、この記憶した受信タイミング情報の開示及び消去を行う受信タイミング記憶手段と、
送信されたフレーム群が、対向する無線通信装置へ到達されたことを確認するフレーム群到達確認手段と、
対向する無線通信装置と同期が取れていない場合に上記フレーム群を送信する第1のフレーム群送信手段と、
対向する無線通信装置と同期が取れている場合に上記フレーム群を送信する第2のフレーム群送信手段と、
フレーム群を再送する場合のみ、対向する無線通信装置と同期が取れているか否かに関わらず、上記フレーム群を送信する第3のフレーム群送信手段と、
上記受信タイミング記憶手段に記憶される上記受信タイミング情報と上記フレーム群到達確認手段によるフレーム群到達確認結果により、上記第1〜3のいずれかのフレーム群送信手段を選択してフレーム群送信動作を制御するフレーム群送信制御部として機能させ、
上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記フレーム群送信制御部は、上記第3のフレーム群送信手段によりフレーム群の再送を行うように制御する
ことを特徴とする無線通信プログラム。
【請求項10】
複数の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
上記無線通信システムの構成要素となる無線通信装置として、請求項1〜のいずれかに記載の無線通信装置を適用したことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システムに関し、例えば、無線通信装置同士が自律的に同期を取って通信タイミングを定めてデータの送受信を行うシステムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、センサネットワークを構成する通信装置(以下、「ノード」とも呼ぶ)は、省電力通信を行うようになされている。省電力通信の代表的な方法として通信装置が間欠動作する方法があり、例えば、CSL(Coordinated Sampled Listening)は、この通信装置の間欠動作方法を採用している通信規格である(非特許文献1を参照)。
【0003】
CSLで通信を行う受信ノードRは、予め設定されている周期で間欠的に受信待機状態になる(例えば、「3秒間毎に2msecだけ受信する」等)。
【0004】
CSLで通信を行う送信ノードSは、デ−タフレーム送信の際に、まずウェイクアップフレームをある期間連続送信する。ウェイクアップフレーム内には「何msec後にデータフレームを送信するか」の情報等が含まれている。
【0005】
CSLにはフレーム非同期送信とフレーム同期送信という2種類のフレーム送信方法が存在する。フレーム非同期送信は、送信ノードSが受信ノードRの間欠受信タイミングを知らない場合に採用される。一方、フレーム同期送信は、送信ノードSが受信ノードRの間欠受信タイミングを知っている場合に採用される。なお、これら2種類のフレーム送信方法は、ウェイクアップフレームを連続送信する期間が異なる。
【0006】
図6は、フレーム非同期通信により通信を行うイメージを示す説明図である。
【0007】
フレーム非同期送信の場合、送信ノードSは、データフレーム送信前に長期間ウェイクアップフレームを連続送信する。ウェイクアップフレーム連続送信期聞は、間欠受信期間程度(例えば、3秒程度)とする場合が多い。
【0008】
図7は、フレーム同期通信により通信を行うイメージを示す説明図である。
【0009】
フレーム同期送信の場合、送信ノードSは、データフレーム送信前に短期間ウェイクアップフレームを連続送信する。ウェイクアップフレーム連続送信期間は、最小限(例えば、20msec程度)とする。
【0010】
フレーム同期送信は、ウェイクアップフレーム連続送信期間が短いためフレーム送信時のオーバヘッドが低い反面、同期ずれが発生した場合に通信が失敗してしまう確率がフレーム非同期送信より高い。
【0011】
CSL規格は、フレーム同期通信実施時にデータフレームが送信先に届かなかった場合(言い換えれば、受信応答信号ACKが返ってこなかった場合)、通常のデータ通信時と同様にバックオフとキャリアセンス実施後に再送することと規定されている。
【0012】
送信ノードSが、受信ノードRから受信応答信号ACKを受信しながら、ある程度の頻度でデータフレームを送信した場合、通常、同期ずれは発生し難い。
【0013】
なぜなら、CSLにおいて、受信応答信号ACK内には受信ノードRの間欠受信タイミング情報(具体的には間欠受信周期とデータフレームを受信した際の位相)が入力されているので、送信ノードSは、この情報を基として、フレーム送信の度に、受信ノードRの間欠受信タイミングを再計算することができるからである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】IEEE802.15.4e
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、CSLで通信した送信ノードSが、フレーム送信を長期間(例えば、数時間以上)実施しなかった場合、受信ノードRとの間で、同期ずれが発生する問題が生じる。この同期ずれは、ハードウェアの個体差やソフトウェアタイマの使い方によって発生する不可避なものである。
【0016】
同期ずれが発生すると、CSL同期通信において、送信ノードSは、図7で示すような受信ノードRが受信待機状態となったタイミングで、ウェイクアップフレームを送信することができないことになる。言い換えると、受信ノードRは、ウェイクアップフレームを受信することができない。つまり、受信ノードRは、送信ノードSと同期を取ることができず、送信ノードSからのデータフレームを受信できないことになる。
【0017】
CSL規格では「データフレームが送信先に届かず受信応答信号ACKが返ってこない場合、通常データ通信時と同様にデータフレームを再送すること」と規定されている。
【0018】
しかし、同期ずれの原因によりウェイクアップフレームが受信ノードRに届かなかった場合には、その後に、送信ノードSがデータフレームだけ再送しても、受信ノードRの正確な受信待機状態が不明なため、当該フレームを的確に届けることができない。
【0019】
そのため、2つの無線通信装置間で同期ずれが発生した場合においても、ネットワーク効率を高めることができる無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の本発明は、上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、対向する無線通信装置の受信タイミングに合わせて、1種又は2種以上のフレームを含むフレーム群を送信する無線通信装置において、(1)対向する無線通信装置の受信タイミング情報を検出する受信タイミング検出手段と、(2)上記受信タイミング情報を記憶し、この記憶した受信タイミング情報の開示及び消去を行う受信タイミング記憶手段と、(3)送信されたフレーム群が、対向する無線通信装置へ到達されたことを確認するフレーム群到達確認手段と、(4)対向する無線通信装置と同期が取れていない場合に上記フレーム群を送信する第1のフレーム群送信手段と、(5)対向する無線通信装置と同期が取れている場合に上記フレーム群を送信する第2のフレーム群送信手段と、(6)フレーム群を再送する場合のみ、対向する無線通信装置と同期が取れているか否かに関わらず、上記フレーム群を送信する第3のフレーム群送信手段と、(7)上記受信タイミング記憶手段に記憶される上記受信タイミング情報と上記フレーム群到達確認手段によるフレーム群到達確認結果により、上記第1〜3のいずれかのフレーム群送信手段を選択してフレーム群送信動作を制御するフレーム群送信制御部とを有し、(8)上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記フレーム群送信制御部は、上記第3のフレーム群送信手段によりフレーム群の再送を行うように制御する
ことを特徴とする。
【0021】
第2の本発明の無線通信プログラムは、上位レイヤ処理部からのフレームの送信要求に対し、対向する無線通信装置の受信タイミングに合わせて、1種又は2種以上のフレームを含むフレーム群を送信する無線通信装置に搭載されるコンピュータを、(1)対向する無線通信装置の受信タイミング情報を検出する受信タイミング検出手段と、(2)上記受信タイミング情報を記憶し、この記憶した受信タイミング情報の開示及び消去を行う受信タイミング記憶手段と、(3)送信されたフレーム群が、対向する無線通信装置へ到達されたことを確認するフレーム群到達確認手段と、(4)対向する無線通信装置と同期が取れていない場合に上記フレーム群を送信する第1のフレーム群送信手段と、(5)対向する無線通信装置と同期が取れている場合に上記フレーム群を送信する第2のフレーム群送信手段と、(6)フレーム群を再送する場合のみ、対向する無線通信装置と同期が取れているか否かに関わらず、上記フレーム群を送信する第3のフレーム群送信手段と、(7)上記受信タイミング記憶手段に記憶される上記受信タイミング情報と上記フレーム群到達確認手段によるフレーム群到達確認結果により、上記第1〜3のいずれかのフレーム群送信手段を選択してフレーム群送信動作を制御するフレーム群送信制御部として機能させ、(8)上記第2のフレーム群送信手段により送信されたフレーム群に対し、上記フレーム群到達確認手段により送信されたフレーム群の到達を確認できなかった場合には、上記フレーム群送信制御部は、上記第3のフレーム群送信手段によりフレーム群の再送を行うように制御することを特徴とする。
【0022】
第3の本発明は、複数の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、上記無線通信システムの構成要素となる無線通信装置として、第1の本発明の無線通信装置を適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つの無線通信装置間で同期ずれが発生した場合においても、ネットワーク効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る無線通信装置のフレーム送信動作を示すフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る無線通信装置のフレーム送信動作(再送)を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態に係る無線通信装置の機能的構成を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態に係る無線通信装置のフレーム送信動作(再送)を示すフローチャートである。
図6】フレーム非同期通信により通信を行うイメージを示す説明図である。
図7】フレーム同期通信により通信を行うイメージを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(A)第1の実施形態
以下に、本発明に係る無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0026】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る無線通信装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【0027】
図1において、無線通信装置10は、フレーム送信部11、送信先受信タイミング検知部12、フレーム到達確認部13、受信タイミング記憶部14及びフレーム送信方法制御部15を有する。
【0028】
第1の実施形態の無線通信装置は、フレーム送信部を除いた部分をハードウェアで構成することも可能であり、また、CPUが実行するソフトウェア(無線通信プログラム)とCPUとで実現することも可能であるが、いずれの実現方法を採用した場合であっても、機能的には図1で表すことができる。
【0029】
フレーム送信部11は、フレーム送信方法制御部15とフレーム到達確認部13に接続されている。フレーム送信部11は、フレーム送信方法制御部15からの指示により、フレーム非同期通信かフレーム同期通信のいずれかの通信方法によりフレームを送信する。
【0030】
送信先受信タイミング検知部12は、受信タイミング記憶部14と接続されている。送信先受信タイミング検知部12は、送信先である受信ノードの受信タイミングを検知する。また、送信先受信タイミング検知部12は、検知した受信タイミングを受信タイミング記憶部14へ記憶する。受信タイミングを検知する手法として、例えば、送信先受信タイミング検知部12は、受信応答信号ACK内に記述されている受信タイミング情報を解析し、送信先の受信タイミングとする手法を採用することができる。また、送信先受信タイミング検知部12は、受信応答信号ACKを受信した時刻を送信先の受信タイミングとして利用しても良い。
【0031】
フレーム到達確認部13は、フレーム送信部11とフレーム送信方法制御部15に接続されている。フレーム到達確認部13は、フレームの到達を確認し、そのフレーム到達確認結果をフレーム送信方法制御部15へ通知するものである。具体的なフレーム到達確認方法として、例えば、フレーム到達確認部13が、送信したフレームに対応する受信応答信号ACKの受信を確認した場合が考えられる。
【0032】
受信タイミング記憶部14は、送信先受信タイミング検知部12とフレーム送信方法制御部15に接続されている。受信タイミング記憶部14は、送信先受信タイミング検知部12で検知した受信タイミングと送信先である受信ノードの情報をペアで記憶する。受信タイミング記憶部14に記憶された情報は、フレーム送信方法制御部15からの要請により、開示されたり、消去されたりする。
【0033】
フレーム送信方法制御部15は、フレーム送信部11、フレーム到達確認部13及び受信タイミング記憶部14に接続されている。フレーム送信方法制御部15は、受信タイミング記憶部14から受信タイミング情報を取得する制御を行う。また、フレーム送信方法制御部15は、フレーム送信部11へフレーム送信時に同期通信又は非同期通信を利用するかの制御を行う。さらに、フレーム送信方法制御部15は、フレーム到達確認部13からのフレーム到達確認情報を取得する制御を行う。
【0034】
第1の実施形態の無線通信システムは、図示は省略するが、図1に示す構成を有する無線通信装置10を含む無線通信装置を複数台配置したものであり、その内から任意の1つの無線通信装置10と他の無線通信装置間で無線通信を行うものである。
【0035】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の無線通信装置10の主に送信に関連する動作を、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、無線通信装置を適宜「ノード」と呼ぶこととする。
【0036】
なお、送信先である受信側の無線通信装置のフレーム受信動作は、従来(非特許文献1に記載の技術)の無線通信装置のフレーム受信動作と同様であるので、その説明を省略する。
【0037】
図2は、無線通信装置10のフレーム送信動作を示すフローチャートである。
【0038】
フレーム送信方法制御部15は、図示しない上位レイヤからフレーム送信要求を受信した場合、受信タイミング記憶部14にアクセスし、送信先の受信タイミングが存在するか否か調べる(S101、S102)。
【0039】
フレーム送信方法制御部15は、調べた結果、送信先の受信タイミング情報が受信タイミング記憶部14に記憶されていた場合、フレーム送信方法として受信タイミングを利用したフレーム同期送信を使用するようにフレーム送信部11へ通知する(S103)。
【0040】
フレーム送信方法制御部15は、調べた結果、受信タイミング情報が受信タイミング記憶部14に記憶されていない場合、フレーム非同期送信を使用するようにフレーム送信部11へ通知する(S104)。
【0041】
フレーム送信部11は、フレーム送信方法制御部15により通知されたフレーム同期送信又はフレーム非同期送信のいずれかでフレームを送信する(S105)。
【0042】
次に、無線通信装置10がフレーム同期送信によりフレーム送信した後において、再送する動作について説明する。
【0043】
図3は、無線通信装置のフレーム送信動作(再送)を示すフローチャートである。
【0044】
フレーム到達確認部13は、フレーム到達確認できなかったことを検知する(S201)。例えば、フレーム到達確認できなかったこと検知する手段は、一定時間内に送信したフレームに対応する受信応答信号ACKを送信先から受信できなかった等である。フレーム到達確認部13がフレーム到達確認できなかったことを検知した場合、フレーム送信方法制御部15は、送信先との同期ずれが発生したと判断する。
【0045】
フレーム到達確認部13は、受信タイミング記憶部14に記憶される送信先の受信タイミング情報を消去する(S202)。
【0046】
さらに、フレーム送信方法制御部15は、フレーム送信部11に対してフレーム非同期送信を使用してフレームの再送をするよう指示する(S203)。
【0047】
フレーム送信部11は、フレーム非同期送信によりフレームを再送する(S204)。
【0048】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0049】
第1の実施形態によれば、フレーム同期送信が失敗した場合(同期ずれ発生した場合)に、送信ノードは、受信タイミング記憶部14に記憶されている送信先の同期情報を削除して、フレーム非同期送信を実施するようにしたので、同期が取れていない受信ノードへフレームを届けることができるようになる。
【0050】
また、第の実施形態によれば、送信ノードは、受信ノードと通信できることになるので、送信先受信タイミング検知部12で再び送信先の受信タイミングを検知し、検知した内容を受信タイミング記憶部14に記憶することが可能となる。その後、送信ノードは、受信ノードと再度CSL同期通信が可能となり、通信ネットワークの効率を高めることができる。
【0051】
(B)第2の実施形態
次に、本発明に係る無線通信装置、無線通信プログラム及び無線通信システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0052】
(B−1)第2の実施形態の構成
図4は、第2の実施形態の無線通信装置の機能的構成を示すブロック図であり、第1の実施形態に係る図1との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0053】
図4において、第2の実施形態の無線通信装置10Aは、フレーム送信部11、送信先受信タイミング検知部12、フレーム到達確認部13、受信タイミング記憶部14及びフレーム送信方法制御部15Aを有する。
【0054】
第2の実施形態の無線通信装置10Aは、第1の実施形態の無線通信装置10とは異なり、フレーム送信方法制御部15を備えていなが、その代りとして、フレーム送信方法制御部15Aを構成要素としている。
【0055】
フレーム送信方法制御部15Aは、基本的にはフレーム送信方法制御部15と同様であるが、フレーム同期送信失敗時には、再送を実施せず、失敗した旨を図示しない上位レイヤに通知するものである。
【0056】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態に係る無線通信装置10Aの動作を説明する。
【0057】
第2の実施形態の無線通信装置10Aの送信動作は、第1の実施形態と同様に、図2のフローチャートに従って動作される。
【0058】
続いて、無線通信装置10がフレーム同期送信によりフレーム送信した後において、再送する動作について説明する。
【0059】
図5は、無線通信装置10Aのフレーム送信動作(再送)を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS301及びステップS302の処理は、先述のステップS201及びステップS202の処理と同様であるので、その説明を省略する。続けて、それ以降の処理であるステップS303の処理を説明する。
【0061】
フレーム送信方法制御部15Aは、上位レイヤに対して、フレーム送信に失敗した旨(NO_ACK)を通知するように制御する(S303)。
【0062】
無線通信装置10Aは、NO_ACKを上位レイヤに通知後、処理を終了する。
【0063】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0064】
第2の実施形態によれば、フレーム同期送信が失敗した場合(同期ずれ発生した場合)に、送信ノードは、データフレームを再送せず、その代わりに上位レイヤに送信失敗した旨を通知し、受信タイミング記憶部14に記憶されている送信先の同期情報を削除して処理を終了するようにしたので、同期が取れていないノードへの無駄なフレームの送信(再送)を防止することができる。
【0065】
また、第2の実施形態によれば、同期通信失敗時にも周囲や上位レイヤへ与える影響を少なくすることができるので、ネットワーク効率を高めることができるようになる。
【0066】
(C)他の実施形態
上記各実施形態に加えて、さらに、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0067】
(C−1)上記各実施形態では、省電力通信方法としてCSLを利用した例を示したが、X−MAC(A Short Preamble MAC Protocol for Duty−Cycled Wireless Sensor Networks)を利用した際にも、本発明を適用することができる。
【0068】
(C−2)第1の実施形態では、フレーム同期送信失敗時にフレーム非同期送信により再送をするようにしていた。しかし、フレーム非同期送信までウェイクアップフレーム送信期間まで延ばさずに、ウェイクアップフレーム送信期間を少し(例えば、フレーム同期通信時のウェイクアップフレーム送信期間の数倍程度)延ばすようにして送信するようにしても良い。こうすることで、オーバヘッドが減少した省電力通信の再送が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
10、10A…無線通信装置、11…フレーム送信部、12…送信先受信タイミング検知部、13…フレーム到達確認部、14…受信タイミング記憶部、15、15A…フレーム送信方法制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7