特許第6398718号(P6398718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398718導電ペースト、導電パターンの製造方法及びタッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398718
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】導電ペースト、導電パターンの製造方法及びタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20180920BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20180920BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20180920BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20180920BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20180920BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20180920BHJP
   C09D 201/10 20060101ALI20180920BHJP
   H05K 3/02 20060101ALI20180920BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20180920BHJP
   H01B 1/22 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   H01B1/20 A
   H01B13/00 503D
   C09D5/24
   C09D7/63
   C09D7/61
   C09D4/00
   C09D201/10
   H05K3/02
   H05K1/09 A
   !H01B1/22 A
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-530438(P2014-530438)
(86)(22)【出願日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2014066280
(87)【国際公開番号】WO2014208445
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-134667(P2013-134667)
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 康宏
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−123355(JP,A)
【文献】 特開平04−036903(JP,A)
【文献】 特開2013−110010(JP,A)
【文献】 特開2013−110011(JP,A)
【文献】 特開2005−276573(JP,A)
【文献】 特開2009−116452(JP,A)
【文献】 特開2011−178934(JP,A)
【文献】 特開2004−177562(JP,A)
【文献】 特開2004−315835(JP,A)
【文献】 特開昭58−165397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00− 1/24
C09D 1/00−201/10
H01B13/00
H05K 1/09
H05K 3/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電フィラー(A)、双性イオン化合物(B)熱硬化性化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有し、かつ、カルボキシル基を有する化合物(E)及び/又は炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)を含有し、前記導電フィラー(A)に対する前記双性イオン化合物(B)の割合が、0.05〜5重量%である、導電ペースト。
【請求項2】
前記カルボキシル基を有する化合物(E)は、炭素−炭素二重結合を有するアクリル系モノマとして、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートを含むアクリル系共重合体である、請求項記載の導電ペースト。
【請求項3】
前記双性イオン化合物(B)は、アミノ酸、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物である、請求項1または2記載の導電ペースト。
【化1】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、有機基を表し、Lは、2価の連結基を表す。R及びR又はLは互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。)
【化2】
(式中、Rは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する炭素数1〜6のアルキル基は水素を表し、Lは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する2価の連結基を表す。R又はLのいずれかはピリジニウム環の1位に結合する。)
【請求項4】
前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表す、請求項記載の導電ペースト。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項記載の導電ペーストを基板上に塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、
前記塗布膜を乾燥して乾燥膜を得る、乾燥工程と、
前記乾燥膜を露光及び現像してパターンを得る、パターン形成工程と、
前記パターンを100〜200℃でキュアして導電パターンを得る、キュア工程と、を備える、導電パターンの製造方法。
【請求項6】
請求項記載の導電パターンの製造方法によって製造された導電パターンを周囲配線として備える、静電容量型タッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電ペースト、導電パターンの製造方法及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットPCといったモバイル電子機器の開発が盛んである。部材の一つであるディスプレイやタッチパネルには小型化及び高精細化が求められている。
【0003】
ディスプレイやタッチパネル等の基板上に導電パターンを形成する方法としては、蒸着法が知られている。蒸着法は20μm以下の高精細パターンも形成可能である。しかしながら、設備投資や煩雑な製造工程による高コスト化が問題となる。
【0004】
より低コストで導電パターンを形成すべく、有機成分である樹脂と無機成分である導電フィラーとを含む、有機−無機複合導電パターンを形成するための材料が実用化されている。すなわち、樹脂や樹脂を含んだ接着剤に、導電フィラーとして銀粉、銅粉又はカーボン粉末を大量に混合した、いわゆるポリマ型の導電ペーストが実用化されている。
【0005】
これら導電ペーストの多くは、スクリーン印刷法により形成したパターンを加熱硬化させることで、導電パターンを得ることができる(特許文献1及び2)。しかし、100μm以下の導電パターンを精度よく形成することは困難である。
【0006】
そこで、酸性エッチング可能な導電ペースト(特許文献3)や、感光性硬化型導電ペーストが開発されている(特許文献4〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−18783号公報
【特許文献2】特開2007−207567号公報
【特許文献3】特開平10−64333号公報
【特許文献4】特開2004−361352号公報
【特許文献5】国際公開第2004/61006号
【特許文献6】特開2013−101861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3記載の酸性エッチング可能な導電ペーストについては、導電パターンの形成に際してレジスト層を形成する必要がある。よって、製造工程の煩雑化という問題を抱えるものであった。
【0009】
また、特許文献4〜6記載の従来の感光性硬化型導電ペーストでは、得られる導電パターンの導電性が低いことや、得られた導電パターンの脆さ又は基板等への密着性不足が問題視されていた。
【0010】
さらには、高分子からなる基板を用いることへの要求が高まっていた。高分子からなる基板は耐熱性に劣るものであることから、より低温域のキュア条件における導電性発現が求められていた。
【0011】
そこで本発明は、密着性が顕著に高く、かつ比較的低温のキュア条件において導電性を発現する微細な導電パターンを形成することが可能な、導電ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の(1)〜()に記載した、導電ペースト及び導電パターンの製造方法、及び、タッチパネルを提供する。
(1)導電フィラー(A)、双性イオン化合物(B)熱硬化性化合物(C)及び光重合開始剤(D)を含有し、かつ、カルボキシル基を有する化合物(E)及び/又は炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)を含有し、前記導電フィラー(A)に対する前記双性イオン化合物(B)の割合が、0.05〜5重量%である導電ペースト
(2)上記カルボキシル基を有する化合物(E)は、炭素−炭素二重結合を有するアクリル系モノマとして、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートを含むアクリル系共重合体である、(1)記載の導電ペースト。
)上記双性イオン化合物(B)は、アミノ酸、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物である、(1)または(2)記載の導電ペースト。
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、有機基を表し、Lは、2価の連結基を表す。R及びR又はLは互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、Rは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する炭素数1〜6のアルキル基又は水素を表し、Lは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する2価の連結基を表す。R又はLのいずれかはピリジニウム環の1位に結合する。)
)上記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表す、()記載の導電ペースト。
)(1)〜()のいずれか一項記載の導電ペーストを基板上に塗布して塗布膜を得る、塗布工程と、上記塗布膜を乾燥して乾燥膜を得る、乾燥工程と、上記乾燥膜を露光及び現像してパターンを得る、パターン形成工程と、上記パターンを100〜200℃でキュアして導電パターンを得る、キュア工程と、を備える、導電パターンの製造方法。
)()記載の導電パターンの製造方法によって製造された導電パターンを周囲配線として備える、静電容量型タッチパネル。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電ペーストによれば、密着性に優れる微細な導電パターンが得られるばかりでなく、低温キュア条件においても、比抵抗の低い導電パターンを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例の比抵抗評価に用いたフォトマスクの透光パターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の導電ペーストは、導電フィラー(A)、双性イオン化合物(B)及び熱硬化性化合物(C)を含有することを特徴とする。本発明の導電ペーストを用いて、スクリーン印刷法又は感光性法(フォトリソグラフィー法)等の方法により電極配線を構成する導電パターンを形成することが可能である。
【0020】
本発明の導電ペーストが含有する、導電フィラー(A)としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pt、Pb、Sn、Ni、Al、W、Mo、酸化ルテニウム、Cr、Ti、カーボン又はインジウムの粒子が挙げられる。これらの材料が複合化した粒子を用いることもできる。これら粒子の混合物を用いることもできる。導電性の観点からAg、Cu又はAuの粒子が好ましく、コスト及び安定性の観点からAgの粒子がより好ましい。
【0021】
導電フィラー(A)のメジアン径(D50)は、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上6μm以下がより好ましい。D50が0.1μm以上であると、キュア工程での導電フィラー(A)同士の接触確率が向上し、製造された導電パターンの比抵抗及び断線確率が低くなる。さらには、露光工程において露光光が導電ペーストを塗布して得られた塗布膜中をスムーズに透過することができ、微細パターニングが容易となる。一方で、D50が10μm以下であると、製造された導電パターンの表面平滑度、パターン精度及び寸法精度が向上する。なお、D50はレーザー光散乱法により測定することができる。
【0022】
導電ペースト中の全固形分に占める導電フィラー(A)の割合は、導電ペースト中の全固形分に対して60重量%以上95重量%以下が好ましく、70重量%以上90重量%以下がより好ましい。全固形分に対する添加量が60重量%以上であると、キュア工程での導電フィラー(A)同士の接触確率が向上し、製造された導電パターンの比抵抗及び断線確率が低くなる。一方、全固形分に対する添加量が95重量%以下であると、露光工程において露光光が導電ペーストを塗布して得られた塗布膜中をスムーズに透過することができ、微細なパターニングが容易となる。ここで全固形分とは、溶剤を除く、導電ペーストの全構成成分をいう。
【0023】
導電ペースト中の全固形分に占める導電フィラー(A)の割合は、導電ペースト作製時の導電フィラー(A)及び双性イオン化合物(B)及び熱硬化性化合物(C)等の有機成分の添加量で制御できる。また、全固形分に占める導電フィラー(A)の割合は、熱重量測定(以下、「TGA」)により測定することができる。より具体的には、導電ペースト10mg程度をサンプルとして、25〜600℃の重量変化をTGA(例えば、TGA−50;株式会社島津製作所製)により測定することができる。通常、100〜150℃で導電ペースト中の溶媒が蒸発するので、150℃到達時点のサンプル重量は全固形分の重量に相当する。600℃到達時点のサンプル重量は双性イオン化合物(B)及び熱硬化性化合物(C)等が除去されており、概ね導電フィラー(A)の重量に相当する。よって、150℃到達時点のサンプル重量に対する、600℃到達時点のサンプル重量の割合から、全固形分に占める導電フィラー(A)の割合が求められる。また、導電パターンをサンプルとする場合は、導電パターンを削り取って採取することで、ペーストと同様にTGAにより測定することができる。
【0024】
本発明の導電ペーストが含有する、双性イオン化合物(B)(以下、「化合物(B)」)とは、1分子内に正電荷と負電荷との両方を有する化合物をいう。詳細な機序は不明であるが、化合物(B)を含有することにより、低温キュア条件においても比抵抗の低い導電パターンを得ることができる。
【0025】
化合物(B)としては、例えば、カルニチン、アセチルカルニチン、N,N,N−トリメチルグリシン(別名:グリシンベタイン)、N,N,N−トリエチルグリシン、N,N,N−トリプロピルグリシン、N,N,N−トリイソプロピルグリシン、N,N,N−トリメチル−γ−アミノ酪酸、N,N,N−トリメチルアラニン、N,N,N−トリエチルアラニン、N,N,N−トリイソプロピルアラニン、N,N,N−トリメチル−2−メチルアラニン、N,N,N−トリメチルアンモニオプロピオネート又はプロリンベタイン等の第四級アンモニウムカチオンとカルボキシレートアニオンを有する低分子ベタインが挙げられる。
【0026】
また、ラウリルベタイン(例えば、アンヒトール24B(有効成分26重量%;花王(株)製))、ステアリルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、オクタン酸アミドプロピルベタイン又は2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(例えば、アンヒトール20YB(有効成分40重量%;花王(株)製))等の第四級アンモニウムカチオンとカルボキシレートアニオンを有する両性界面活性剤が挙げられる。
【0027】
また、ユカフォーマー(登録商標)AMPHOSET、ユカフォーマー(登録商標)104D、ユカフォーマー(登録商標)301若しくはユカフォーマー(登録商標)SM(以上いずれも三菱化学(株)製)又はRAMレジン−1000、RAMレジン−2000、RAMレジン−3000若しくはRAMレジン−4000(以上いずれも大阪有機化学工業(株))等の側鎖に第四級アンモニウムカチオンとカルボキシレートアニオンを有するポリマが挙げられる。
【0028】
また、ピリジノアセテート、ピリジノプロピオネート又はトリゴネリン等のピリジニウムカチオンとカルボキシレートアニオンを有する化合物が挙げられる。
【0029】
また、オクタデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ドデシルジメチル(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩、ステアリルスルホベタイン、パルミチルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、ラウリルスルホベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、3−(エチルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート又は3−(ベンジルジメチルアンモニオ)プロパン−1−スルホネート等の第四級アンモニウムカチオンとスルホネートアニオンを有する化合物が挙げられる。
【0030】
また、1−(3−スルホプロピル)ピリジニウムヒドロキシド分子内塩等のピリジニウムカチオンとスルホネートアニオンを有する化合物が挙げられる。
【0031】
また、ホスファチジルコリン又はレシチン等の第四級アンモニウムカチオンとホスフェートアニオンを有する化合物が挙げられる。
【0032】
また、ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシド、ニコチン酸N−オキシド、2−メチルピリジンN−オキシド、トリメチルアミンN−オキシド又はピリジンN−オキシド等のアミンオキシド型化合物が挙げられる。
【0033】
あるいは、アラニン、アルギニン、アルパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、N−メチルグリシン、β−アラニン、オルニチン、クレアチン、γ−アミノ酪酸、テアニン又はカイニン酸等のアミノ酸等が挙げられる。
【0034】
化合物(B)としては、アミノ酸又は下記一般式(1)又は(2)の構造を有する化合物が好ましい。
【0035】
【化3】
【0036】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、有機基を表し、Lは、2価の連結基を表す。R及びR又はLは互いに連結して環を形成していてもよく、該環は置換基を有していてもよい。)
【0037】
【化4】
【0038】
(式中、Rは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する炭素数1〜6のアルキル基又は水素を表し、Lは、ピリジニウム環の1〜6位のいずれか1箇所に結合する2価の連結基を表す。R又はLのいずれかはピリジニウム環の1位に結合する。)
上記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましい。一般式(1)又は(2)の構造を有し、上記R、R及びRが炭素数1〜6のアルキル基である化合物としては、例えば、カルニチン、アセチルカルニチン、N,N,N−トリメチルグリシン、N,N,N−トリエチルグリシン、N,N,N−トリプロピルグリシン、N,N,N−トリイソプロピルグリシン、N,N,N−トリメチル−γ−アミノ酪酸、N,N,N−トリメチルアラニン、N,N,N−トリエチルアラニン、N,N,N−トリイソプロピルアラニン、N,N,N−トリメチル−2−メチルアラニン又はN,N,N−トリメチルアンモニオプロピオネートが挙げられる。カルニチン又はN,N,N−トリメチルグリシンがより好ましい。
【0039】
2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基若しくはアリーレン基等の炭化水素基、チオフェン−2,5−ジイル基若しくはピラジン−2,3−ジイル基等の芳香族複素環を有する化合物(ヘテロ芳香族化合物)に由来する2価の連結基、O若しくはS等のカルコゲン原子に由来する2価の連結基又はアルキルイミノ基、ジアルキルシランジイル基若しくはジアリールゲルマンジイル基等のヘテロ原子を介して連結する基が挙げられる。アルキレン基はヒドロキシル基又はアルキル基等の置換基を有しても構わない。アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基又はテトラメチレン基が好ましい。
【0040】
導電フィラー(A)に対する化合物(B)の割合は、0.05重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上2重量%以下がより好ましい。化合物(B)の割合が0.05重量%以上であると、低温キュア条件において、比抵抗の低い導電パターンが得られる。一方、化合物(B)の割合が5重量%以下であるとパターニング時の現像耐性が十分で、微細なパターンを形成できる。
【0041】
導電フィラー(A)に対する化合物(B)の割合は、導電ペーストの全成分分析により導電フィラー(A)及び化合物(B)のペースト中の含有率をそれぞれ定量分析することにより算出することができる。
【0042】
導電ペーストの全成分分析方法は以下のとおりである。
(i) 導電ペーストを有機溶媒で希釈し、H−NMR測定、GC測定及びGC/MS測定をしてその概要を調べる。
(ii) 導電ペーストを有機溶媒抽出した後に遠心分離を行い、可溶分と不溶分とを分離する。
(iii) 上記不溶分について、高極性有機溶媒で抽出した後に遠心分離を行い、可溶分と不溶分とをさらに分離する。
(iv) 上記(ii)及び(iii)で得られた可溶分の混合液について、IR測定、H−NMR測定及びGC/MS測定を行う。さらに、上記混合液をGPC分取する。得られた分取物についてIR測定及びH−NMR測定を行う。また、該分取物については、必要に応じてGC測定、GC/MS測定、熱分解GC/MS測定及びMALDI/MS測定を行う。
(v) 上記(iii)で得られた不溶分についてIR測定又はTOF−SIMS測定を行う。有機物が存在することが確認された場合には、熱分解GC/MS又はTPD/MS測定を行う。
(vi) 上記(i)、(iv)及び(v)の測定結果を総合的に判断することで、導電ペーストが含有する各成分の含有率を求めることができる。なお、上記(iii)で用いる高極性有機溶媒としては、クロロホルム又はメタノール等が好ましい。
【0043】
化合物(B)は、導電フィラー(A)を被覆する状態で導電ペーストに含有されていても構わない。導電フィラー(A)を化合物(B)で被覆するための表面処理方法としては、湿式処理又は乾式処理等の公知の手法を用いることができる。
【0044】
本発明の導電ペーストが含有する熱硬化性化合物(C)(以下、「化合物(C)」)により、導電ペーストの基板に対する密着性の強化又は塗膜の強化を果たすことができる。熱硬化性化合物(C)としては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、イソシアネート化合物又はアルコキシ化合物が挙げられる。
【0045】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、トリスフェノールメタン型、グリシジルアミン型若しくはグリシジルエステル型等のエポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂が挙げられる。
【0046】
また、αートリグリシジルイソシアヌレート、βートリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、脂環式フェノキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂又は複素環式フェノキシ樹脂が挙げられる。
【0047】
エポキシ化合物としては、例えば、jER(登録商標)828、アデカレジンEPR−21、アデカレジンEPR−4030、jER(登録商標)1001、jER(登録商標)1002又はjER(登録商標)1256が挙げられる。
【0048】
エポキシ化合物のエポキシ当量は、200〜500g/当量であることが好ましい。エポキシ当量を200〜500g/当量とすることで、樹脂フィルムやガラス基板といった各種基板との密着性の高い導電パターンを得ることができる。エポキシ当量とは、1当量のエポキシ基を含む樹脂の重量をいい、構造式から求めた分子量を、その構造中に含まれるエポキシ基の数で除算して求めることができる。
【0049】
オキセタン化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(例えば、アロンオキセタン(登録商標)OXT−101;東亞合成(株)製)、2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル又はフェノールノボラックタイプのオキセタン化合物が挙げられる。
【0050】
イソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トリメチルフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート又はテトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。反応のコントロールが容易なことから、イソホロンジイソシアネートが好ましい。また、イソシアネート基がアミンでブロックされたブロックイソシアネート化合物を用いても構わない。
【0051】
アルコキシ化合物とは、加熱によりアルコールを生じて縮合するアルコキシ基を分子内に有する化合物をいう。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基又はイソブトキシ基が挙げられる。アルコキシ化合物としては、例えば、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、HMOM−TPHAP(本州化学工業社製)、MW−30M、MW−30、MW−22、MS−11、MS−001、MX−730、MX−750、MX−706、MX−035、BL−60、BX−37、MX−302、MX−45、MX−410、BX−4000若しくはBX−37(以上いずれも三和ケミカル社製)又はニカラック(登録商標)MW−30HM、ニカラック(登録商標)MW−390、ニカラック(登録商標)MX−270、ニカラック(登録商標)MX−280、ニカラック(登録商標)MW−100LM若しくはニカラック(登録商標)MX−750LM(以上いずれも三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0052】
本発明の導電ペーストは、必要に応じて、光重合開始剤(D)を含有することが好ましい。ここで光重合開始剤(D)とは、紫外線等の短波長の光を吸収して分解するか、又は、水素引き抜き反応を起こして、ラジカルを生じる化合物をいう。光重合開始剤(D)としては、例えば、2−(ベンゾイルオキシイミノ)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1−オクタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、6−[1−(アセチルオキシイミノ)エチル]−9−エチル−9H−カルバゾール−3−イル(2−メチルフェニル)ケトン、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン(例えば、IRGACURE(登録商標)369)、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、又は、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸若しくはトリエタノールアミン等の還元剤との組み合わせが挙げられる。
【0053】
光重合開始剤(D)の添加量は、15重量部の化合物(C)に対して0.05重量部以上100重量部以下が好ましく、0.5重量部以上15重量部以下がより好ましい。15重量部の化合物(C)に対する添加量が0.05重量部以上であると、導電ペーストを露光した部分の硬化密度が高くなり、現像後の残膜率が高くなる。一方、15重量部の化合物(C)に対する添加量が100重量部以下であると、導電ペーストを塗布して得られた塗布膜上部での過剰な光吸収が抑制される。その結果、製造された導電パターンが逆テーパー形状となることによる、基板との密着性低下が抑制される。
【0054】
本発明の導電ペーストは、光重合開始剤(D)と共に、増感剤を含んでいても構わない。
【0055】
増感剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニルビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール又は1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールが挙げられる。
【0056】
増感剤の添加量は、15重量部の化合物(C)に対して0.05重量部以上30重量部以下が好ましく、0.1重量部以上8重量部以下がより好ましい。15重量部の化合物(C)に対する添加量が0.05重量部以上であると、露光感度が十分に向上する。一方、15重量部の化合物(C)に対する添加量が30重量部以下であると、導電ペーストを塗布して得られた塗布膜上部での過剰な光吸収が抑制される。その結果、製造された導電パターンが逆テーパー形状となることによる、基板との密着性低下が抑制される。
【0057】
本発明の導電ペーストは、必要に応じて、カルボキシル基を有する化合物(E)(以下、「化合物E」)を含有することが好ましい。化合物(E)とは、カルボキシル基を一つ以上有するモノマ、オリゴマ又はポリマをいう。
【0058】
化合物(E)としては、例えば、アクリル系共重合体が挙げられる。ここでアクリル系共重合体とは、共重合成分に炭素−炭素二重結合を有するアクリル系モノマを含む共重合体をいう。本発明の導電ペーストを感光性とする場合は、露光による硬化反応の反応速度を大きくできるので、化合物(E)が炭素−炭素二重結合を有することが好ましい。炭素−炭素二重結合を有する化合物(E)と共に光重合開始剤(D)を含有することで、本発明の導電ペーストに感光性を具備させることができる。ここで感光性とは、塗布、乾燥を行った後の塗膜に対し活性光線を照射することによって、光架橋、光重合、光解重合又は光変性等の反応が起こり、照射部分の化学構造が変化して現像液による現像が可能になる性質をいう。
【0059】
炭素−炭素二重結合を有するアクリル系モノマとしては、例えば、メチルアクリレート、アクリル酸、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、iso−プロパンアクリレート、グリシジルアクリレート、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、チオフェノールアクリレート、ベンジルメルカプタンアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート又はトリメチロールプロパントリアクリレート等のアクリル系モノマが挙げられる。
【0060】
また、エポキシ基を不飽和酸で開環させた水酸基を有する、エチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアクリル酸付加物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂のアクリル酸付加物又はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のアクリル酸付加物等のエポキシアクリレート等もアクリル系モノマとして挙げられる。
【0061】
化合物(E)としては、例えば、メタクリル系共重合体が挙げられる。ここでメタクリル系共重合体とは、共重合成分に炭素−炭素二重結合を有するメタクリル系モノマを含む共重合体をいう。メタクリル系モノマとしては、上記アクリル系モノマのアクリル基を、メタクリル基に置換した化合物が挙げられる。以下、メタクリル系共重合体を含めてアクリル系共重合体という場合がある。
【0062】
より硬度に優れた導電パターンを形成するため、炭素−炭素二重結合を有するアクリル系モノマとしてエポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートを含むアクリル系共重合体が好ましく、水酸基に多官能イソシアネートを付加反応させたエポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートを含むアクリル系共重合体がより好ましい。
【0063】
カルボキシル基を有するアルカリ可溶性のアクリル系共重合体は、モノマとして不飽和カルボン酸等の不飽和酸を用いることにより得られる。不飽和酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸若しくはビニル酢酸又はこれらの酸無水物が挙げられる。用いる不飽和酸の多少により、得られるアクリル系共重合体の酸価を調整することができる。
【0064】
また、カルボキシル基を有する「水酸基に多官能イソシアネートを付加反応させたエポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートを含むアクリル系共重合体」は、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートと、多官能イソシアネート及びカルボキシル基を有する多価アルコールと、を反応させることにより得られる。
【0065】
また、上記アクリル系共重合体が有するカルボキシル基と、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和二重結合を有する化合物と、を反応させることにより、側鎖に反応性の不飽和二重結合を有する、アルカリ可溶性のアクリル系共重合体が得られる。
【0066】
アクリル系共重合体に含まれるその他の共重合体成分としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン若しくはヒドロキシメチルスチレン等のスチレン類、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン又は1−ビニル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0067】
化合物(E)の酸価は、化合物(E)のアルカリ可溶性を至適なものとするため、40〜250mgKOH/gであることが好ましく、50〜200mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が40mgKOH/g以上であると、可溶部分の溶解性が良好となる。一方、酸価が250mgKOH/g以下であると、現像許容幅が広くなる。なお、化合物(E)の酸価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定することができる。
【0068】
化合物(E)の添加量は、15重量部の化合物(C)に対して5重量部以上150重量部以下が好ましく、15重量部以上80重量部以下がより好ましい。15重量部の化合物(C)に対する添加量が5重量部以上であると、現像性が向上する。一方、15重量部の化合物(C)に対する添加量が150重量部以下であると、化合物(C)の含有量が相対的に大きくなり、密着性が良好となる。
【0069】
本発明の導電ペーストは、必要に応じて、炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)(以下、「化合物F」)を含有することが好ましい。光重合開始剤(D)及び化合物(F)を含有することで、本発明の導電ペーストに光硬化性を具備させることができる。また、光重合開始剤(D)、化合物(E)及び化合物(F)を含有することで、本発明の導電ペーストに感光性を具備させることができる。なお、上記化合物(E)がカルボキシル基に加えて炭素−炭素二重結合をも有する場合には、化合物(E)自体が光硬化性を具備することから、化合物(F)の含有の必要性が低下する場合がある。上記化合物(E)がカルボキシル基に加えて炭素−炭素二重結合をも有する場合であっても、化合物(F)には含めない。
【0070】
化合物(F)としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、フェニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステル、チオフェノールアクリレート若しくはベンジルメルカプタンアクリレート又はこれらモノマの芳香環の水素原子の1〜5個を塩素若しくは臭素原子に置換したモノマ、あるいは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン又はビニルカルバゾールが挙げられる。
【0071】
また、上記の炭素−炭素二重結合を含有する化合物の分子内のアクリレートの一部若しくはすべてをメタクリレートに置換したものも挙げられる。また、多官能モノマにおいては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基又はアリル基が混在していても構わない。なお、より硬度に優れた導電パターンを形成する観点からは、エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレートが好ましい。
【0072】
本発明の導電ペーストは、溶剤を含有しても構わない。溶剤としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(以下、「CA」)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。
【0073】
化合物(F)の添加量は、15重量部の化合物(C)に対して0.3重量部以上90重量部が好ましく、3重量部以上30重量部以下がより好ましい。15重量部の化合物(C)に対する添加量が0.3重量部以上であると、露光部の現像耐性が向上する。一方、15重量部の化合物(C)に対する添加量が90重量部以下であると、化合物(C)の含有量が相対的に大きくなり、密着性が良好となる。
【0074】
本発明の導電ペーストは、その所望の特性を損なわない範囲であれば、分子内に不飽和二重結合を有しない非感光性ポリマ又は可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、シランカップリング剤、硬化剤・硬化促進剤、消泡剤若しくは顔料等の添加剤を含有しても構わない。
【0075】
上記の非感光性ポリマとしては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース化合物、高分子量ポリエーテル等が挙げられる。
【0076】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール又はグリセリンが挙げられる。
【0077】
レベリング剤としては、例えば、特殊ビニル系重合物又は特殊アクリル系重合物が挙げられる。
【0078】
シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はビニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0079】
硬化剤・硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール若しくは4−フェニルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン若しくは4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド若しくはセバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物又はトリフェニルホスフィン等のリン化合物などが挙げられる。
【0080】
本発明の導電ペーストは、例えば、三本ローラー、ボールミル若しくは遊星式ボールミル等の分散機又は混練機を用いて製造される。
【0081】
次に本発明の導電ペーストを用いた、導電パターンの製造方法について説明する。
【0082】
本発明の導電パターンの製造方法により得られた導電パターンは、有機成分と無機成分との複合物となっており、本発明の導電ペーストに含まれる導電フィラー(C)同士が、キュア時の硬化収縮によって互いに接触することで導電性が発現するものである。
【0083】
導電パターンを製造するためには、まず、本発明の導電ペーストを基板上に塗布して塗布膜を得て、得られた塗布膜を乾燥して溶剤を揮発させる。その後、乾燥膜をパターン形成用マスクを介して露光し、その後現像して、基板上に所望のパターンを形成する。そして、得られたパターンを100℃以上200℃以下でキュアすれば、導電パターンが得られる。キュア温度は、120℃以上150℃以下がより好ましい。キュア温度が100℃未満であると、樹脂の体積収縮量が大きくならず、比抵抗を低くできない。一方で、加熱温度が200℃を超えると、耐熱性が低い基板等の材料上に導電パターンを形成することができない。すなわち低温キュア条件とは200℃以下である。
【0084】
基板としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、「PETフィルム」)、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、アラミドフィルム、エポキシ樹脂基板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板、ガラス基板、シリコンウエハー、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板、加飾層形成基板又は絶縁層形成基板が挙げられる。
【0085】
本発明の導電ペーストを基板に塗布する方法としては、例えば、スピナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷又はブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター若しくはバーコーターを用いた塗布が挙げられる。得られる塗布膜の膜厚は、塗布の方法又は導電ペーストの全固形分濃度若しくは粘度等に応じて適宜決定すればよいが、乾燥後の膜厚が、0.1μm以上50μm以下になることが好ましい。なお、膜厚は、例えばサーフコム(登録商標)1400((株)東京精密製)のような触針式段差計を用いて測定することができる。より具体的には、ランダムな3つの位置の膜厚を触針式段差計(測長:1mm、走査速度:0.3mm/sec)でそれぞれ測定し、その平均値を膜厚とすることができる。
【0086】
得られた塗布膜を乾燥して溶剤を揮発除去する方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート若しくは赤外線等による加熱乾燥又は真空乾燥が挙げられる。加熱温度は50℃以上150℃以下が好ましく、加熱時間は1分〜数時間が好ましい。
【0087】
塗布膜は乾燥後、露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィで行われるように、フォトマスクを介して露光する方法が一般的である。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光等で直接描画する方法を用いても構わない。露光装置としては、例えば、ステッパー露光機又はプロキシミティ露光機が挙げられる。この際使用される活性光源としては、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線又はレーザー光等が挙げられるが、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ又は殺菌灯が挙げられるが、超高圧水銀灯が好ましい。
【0088】
露光後の乾燥膜を、現像液を用いて現像し、未露光部を溶解除去することで、所望のパターンが得られる。アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンの水溶液が挙げられる。これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド若しくはγ−ブチロラクトン等の極性溶媒、メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール類、乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン若しくはメチルイソブチルケトン等のケトン類又は界面活性剤を添加しても構わない。
【0089】
有機現像を行う場合の現像液としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド若しくはヘキサメチルホスホルトリアミド等の極性溶媒又はこれら極性溶媒とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、キシレン、水、メチルカルビトール若しくはエチルカルビトールとの混合溶液が挙げられる。
【0090】
現像の方法としては、例えば、基板を静置又は回転させながら現像液を塗布膜面にスプレーする方法、基板を現像液中に浸漬する方法、又は、基板を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法が挙げられる。
【0091】
現像により得られたパターンは、リンス液によるリンス処理を施しても構わない。ここでリンス液としては、例えば、水あるいは水にエタノール若しくはイソプロピルアルコール等のアルコール類又は乳酸エチル若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類を加えた水溶液が挙げられる。
【0092】
得られたパターンをキュアする方法としては、例えば、オーブン、イナートオーブン若しくはホットプレート等による加熱、赤外線若しくはマイクロ波等による加熱、又は、キセノンフラッシュランプ照射による加熱が挙げられる。
【0093】
本発明の導電ペーストを用いて製造される導電パターンは、タッチパネル用周囲配線として好適に用いられる。タッチパネルの方式としては、例えば、抵抗膜式、光学式、電磁誘導型又は静電容量型が挙げられるが、静電容量型タッチパネルは特に微細配線が求められることから、本発明の導電ペーストを用いて製造される導電パターンがより好適に用いられる。本発明の導電ペーストを用いて製造される導電パターンをその周囲配線として備え、好ましくは該周囲配線が50μmピッチ(配線幅+配線間幅)以下であるタッチパネルにおいては、額縁幅を細くでき、ビューエリアを広くすることができる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
各実施例及び比較例で用いた評価方法は、以下のとおりである。
【0096】
<パターニング性の評価方法>
[塗布工程]
PETフィルム基板上に導電ペーストを乾燥膜の膜厚が7μmになるように塗布した。
【0097】
[乾燥工程]
得られた塗布膜を100℃の熱風オーブン内で5分間乾燥した。
【0098】
[パターン形成工程]
一定のライン幅/間隔(以下、「L/S」)で配列された直線群すなわち透光パターンを1つのユニットとし、L/Sの値が異なる9種類のユニットをそれぞれ有するフォトマスクを介して乾燥膜を露光及び現像して、L/Sの値が異なる9種類のパターンをそれぞれ得た。
【0099】
[キュア工程]
その後、得られた9つのパターンを60分間、130℃の熱風オーブン内でいずれもキュアして、L/Sの値が異なる9種類の導電パターンをそれぞれ得た。
【0100】
なお、フォトマスクが有する各ユニットのL/Sの値は、500/500、250/250、100/100、50/50、40/40、30/30、25/25、20/20、15/15とした(それぞれライン幅(μm)/間隔(μm)を表す)。得られた導電パターンを光学顕微鏡で観察し、パターン間に残渣がなく、かつパターン剥がれのないL/Sの値が最小の導電パターンを確認し、そのL/Sの値を、現像可能なL/Sの値とした。なお、露光は露光装置(PEM−6M;ユニオン光学株式会社製)を用いて露光量150mJ/cm(波長365nm換算)で全線露光を行い、現像は0.2重量%のNaCO水溶液に基板を30秒浸漬させた後、超純水によるリンス処理を施して行った。
【0101】
<比抵抗の評価方法>
PETフィルム上に導電ペーストを乾燥膜の膜厚が7μmになるように塗布し、得られた塗布膜を100℃の熱風オーブン内で5分間乾燥した。図1に示すパターンの透光部Aを有するフォトマスクを介して乾燥後の塗布膜を露光、現像して、パターンを得た。その後、得られたパターンを60分間、130℃の熱風オーブン内でキュアして、比抵抗測定用の導電性パターンを得た。得られた導電性パターンのライン幅は0.400mmであり、ライン長さは80mmであった。
【0102】
なお、露光及び現像の条件は、上記パターニング性の評価方法と同様とした。得られた比抵抗測定用の導電パターンのそれぞれの端部に抵抗計をつないで抵抗値を測定し、以下の式(1)に基づいて比抵抗を算出した。
比抵抗 = 抵抗値×膜厚×線幅/ライン長 ・・・ (1)
なお、線幅は、ランダムな3つの位置の線幅を光学顕微鏡で観察し、画像データを解析して得られた平均値である。
【0103】
<ITOとの密着性評価方法>
ITO付きPETフィルムELECRYSTA(登録商標)V270L−TFS(日東電工(株)製)上に、導電ペーストを乾燥膜の膜厚が7μmになるように塗布し、得られた塗布膜を100℃の熱風オーブン内で5分間乾燥してから、その全面を露光した後に現像した。なお、露光及び現像の条件は、上記パターニング性の評価方法と同様とした。その後、得られた膜を60分間、130℃の熱風オーブン内でキュアしてから、1mm幅で10×10の碁盤目状にカッターで切れ目を入れ、85℃、85%RHの恒温恒湿槽SH−661(エスペック(株)製)に240時間投入した。取り出したサンプルの碁盤目状の切れ目部位全体にセロハンテープ(ニチバン(株)製)を貼着して剥がし、残存マス数をカウントした。
【0104】
<鉛筆硬度>
PETフィルム上に、導電ペーストを乾燥膜の膜厚が7μmになるように塗布し、得られた塗布膜を100℃の熱風オーブン内で5分間乾燥してから、その全面を露光した後に現像した。なお、露光及び現像の条件は、上記パターニング性の評価方法と同様とした。その後、得られた膜を60分間、130℃の熱風オーブン内でキュアしてから、JIS K5600−5−6の試験方法に従って、鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度は低い順に、10B、9B、8B、7B、6B、5B、4B、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H、4H、5H、6H、7H,8H、9H、10Hの22段階である。鉛筆硬度試験機を用いて荷重1kgを掛けたときの塗膜に傷が付かない最も高い硬度をもって表示した。鉛筆は三菱ハイユニ(三菱鉛筆(株)製)を使用した。
【0105】
各実施例及び比較例で用いた材料は、以下のとおりである。
【0106】
[導電フィラー(A)]
D50(メジアン径)が1μmのAg粒子(D50は、Microtrac HRA(Model No.9320−X100;日機装(株)製)を用いて測定)。
【0107】
[双性イオン化合物(B)]
L−アラニン(有効成分100重量%;東京化成工業(株)製)
L−ロイシン(有効成分100重量%;東京化成工業(株)製)
L−フェニルアラニン(有効成分100重量%;東京化成工業(株)製)
N,N,N−トリメチルグリシン(有効成分100重量%;和光純薬工業(株)製)
L−カルニチン(有効成分100重量%;和光純薬工業(株)製)
ユカフォーマー(登録商標)AMPHOSET(有効成分50重量%;三菱化学(株)製)
ユカフォーマー(登録商標)SM(有効成分30重量%;三菱化学(株)製)
アンヒトール24B(有効成分26重量%;花王(株)製)
アンヒトール20YB(有効成分40重量%;花王(株)製)。
【0108】
[熱硬化性化合物(C)]
化合物(C−1):jER(登録商標)828(エポキシ基含有、エポキシ当量188;三菱化学(株)製)
化合物(C−2):アデカレジンEPR−21(エポキシ基含有、エポキシ当量210;(株)ADEKA製)
化合物(C−3):アデカレジンEPR−4030(エポキシ基含有、エポキシ当量380;(株)ADEKA製)
化合物(C−4):jER(登録商標)1001(エポキシ基含有、エポキシ当量475、三菱化学(株)製)
化合物(C−5):jER(登録商標)1002(エポキシ基含有、エポキシ当量650;三菱化学(株)製)
化合物(C−6):jER(登録商標)1256(エポキシ基含有、エポキシ当量8000;三菱化学(株)製)
化合物(C−7):アロンオキセタン(登録商標)OXT−101(オキセタン基含有、東亞合成(株)製)。
【0109】
[光重合開始剤(D)]
IRGACURE(登録商標)369(BASF(株)製)。
【0110】
[カルボキシル基を有する化合物(E)]
(合成例1)
反応容器中に、200gのエポキシエステル3000A(共栄社化学(株)製;ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレート化合物)、260gのCA、0.5gの2−メチルハイドロキノン(熱重合禁止剤)及び125gの2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を仕込み、オイルバスを用いて45℃まで昇温させた。これに、150gのヘキサメチレンジイソシアネートを、反応温度が50℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後、反応温度を80℃に昇温させ、6時間後に反応液を赤外吸収スペクトル測定法により分析して、2250cm−1付近の吸収がないことを確認した。この反応液に、22gのグリシジルメタクリレート、10gのCA、0.4gの2−メチルハイドロキノン、1.5gのトリフェニルホスフィン(反応触媒)を添加後、さらに95℃に昇温させ、6時間反応を行って固形分率が64.9重量%の化合物(E−1)を得た。得られた化合物(E−1)の酸価(固形分)は87mgKOH/g、重量平均分子量は12000であった。
【0111】
(合成例2)
窒素雰囲気の反応容器中に、150gのCAを仕込み、オイルバスを用いて80℃まで昇温した。これに、20gのエチルアクリレート、40gの2−エチルヘキシルメタクリレート、20gのスチレン、15gのアクリル酸、0.8gの2,2’−アゾビスイソブチロニトリル及び10gのCAからなる混合物を、1時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに6時間重合反応を行った。その後、1gのハイドロキノンモノメチルエーテルを添加して、重合反応を停止した。引き続き、5gのグリシジルメタクリレート、1gのトリエチルベンジルアンモニウムクロライド及び10gのCAからなる混合物を、0.5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間付加反応を行った。得られた反応溶液をメタノールで精製することで未反応不純物を除去し、さらに24時間真空乾燥することで、カルボキシル基を有する化合物(E−2)を得た。得られた化合物(E−2)の酸価は97mgKOH/g、重量平均分子量は16000であった。
【0112】
[炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)]
ライトアクリレートBP−4EA(共栄社化学(株)製)。
【0113】
[溶剤]
ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(CA:東京化成工業(株)製)。
【0114】
(実施例1)
100mLクリーンボトルに、双性イオン化合物(B)として0.186gのL−ロイシン、熱硬化性化合物(C)として1.5gのエポキシ化合物(C−3)、カルボキシル基を有する化合物(E)として7.7gの化合物(E−1)(固形分:5.0g、CA:2.7g)、光重合開始剤(D)として0.5gのIRGACURE(登録商標)369、溶剤として2.3gのCA、及び、炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)として1.0gのBP−4EAを入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合して、13.186gの樹脂溶液(固形分62.1重量%)を得た。
【0115】
得られた13.186gの樹脂溶液と、導電フィラー(A)として46.385gのAg粒子とを混ぜ合わせ、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、59.571gの導電ペーストを得た。
【0116】
得られた導電ペーストを用いて、導電パターンのパターニング性、比抵抗及びITOとの密着性、鉛筆硬度をそれぞれ評価した。パターニング性の評価指標となる現像可能なL/Sの値は、15/15であり、良好なパターン加工がされていることが確認された。導電パターンの比抵抗は58μΩcmであった。残存マス数は100であった。鉛筆硬度は2Hであった。
【0117】
(実施例2〜14及び実施例17〜20、参考例1〜3
表1及び表2に示す組成の導電ペーストを実施例1と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った結果を表3に示す。
【0118】
(実施例15)
100mLクリーンボトルに、熱硬化性化合物(C)として1.5gのエポキシ化合物(C−2)、カルボキシル基を有する化合物(E)として7.7gの化合物(E−1)(固形分:5.0g、CA:2.7g)、光重合開始剤(D)として0.5gのIRGACURE(登録商標)369、溶剤として2.3gのCA、及び、炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)として1.0gのBP−4EAを入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合して、13.0gの樹脂溶液(固形分61.5重量%)を得た。
【0119】
一方、導電フィラー(A)として93.86gのAg粒子と双性イオン化合物(B)としてまず2.8gの10重量%L−アラニン水溶液(L−アラニン:0.28g)とを電動コーヒーミル(MJ−518;メリタジャパン(株))に入れ、10秒間混合解砕した。さらに2.8gの10重量%L−アラニン水溶液(L−アラニン:0.28g)を加え、20秒間混合解砕した。解砕処理したAg粒子を取り出し、室温で1時間真空乾燥し、溶媒を除去することで、L−アラニンで表面処理したAg粒子を得た。
【0120】
得られた13.0gの樹脂溶液と、47.21gのL−アラニンで表面処理したAg粒子とを混ぜ合わせ、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、60.21gの導電ペーストを得た。
【0121】
得られた導電ペーストを用いて、導電パターンのパターニング性、比抵抗及びITOとの密着性、鉛筆硬度をそれぞれ評価した。パターニング性の評価指標となる現像可能なL/Sの値は、15/15であり、良好なパターン加工がされていることが確認された。導電パターンの比抵抗は55μΩcmであった。残存マス数は100であった。鉛筆硬度は2Hであった。
【0122】
(実施例16)
100mLクリーンボトルに、双性イオン化合物(B)として0.33gのN,N,N−トリメチルグリシン、導電フィラー(A)として47.21gのAg粒子、溶剤として2.3gのCAを入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合した。その後、熱硬化性化合物(C)として1.5gのエポキシ化合物(C−2)、カルボキシル基を有する化合物(E)として7.7gの化合物(E−1)(固形分:5.0g、CA:2.7g)、光重合開始剤(D)として0.5gのIRGACURE(登録商標)369、及び、炭素−炭素二重結合を有する化合物(F)として1.0gのBP−4EAを入れ、自転公転ミキサー“あわとり練太郎”(登録商標)(ARE−310;(株)シンキー製)で混合した。その後、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、60.54gの導電ペーストを得た。
【0123】
得られた導電ペーストを用いて、導電パターンのパターニング性、比抵抗及びITOとの密着性、鉛筆硬度をそれぞれ評価した。パターニング性の評価指標となる現像可能なL/Sの値は、15/15であり、良好なパターン加工がされていることが確認された。導電パターンの比抵抗は49μΩcmであった。残存マス数は100であった。鉛筆硬度は2Hであった。
【0124】
(比較例1〜4)
表2に示す組成の導電ペーストを実施例1と同様の方法で製造し、実施例1と同様の評価を行った結果を表3に示す。
【0125】
実施例1〜20の導電ペーストでは、いずれもパターニング性、比抵抗、ITOとの密着性及び硬度に優れた導電パターンを形成することができた。比較例1の導電ペーストで形成した導電パターンは、比抵抗が高かった。比較例2〜4の導電ペーストで形成した導電パターンは、高温高湿度下においてITOとの密着性が低下した。さらに、硬度も不十分であった。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【符号の説明】
【0129】
A:透光部
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の導電ペーストは、タッチパネル用周囲配線等の導電パターンの製造のために、好適に利用できる。
図1