(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セラミックス基板の一方の面に形成された抵抗体及び金属電極を含むチップ抵抗体と、前記金属電極に電気的に接続された金属端子と、前記セラミックス基板の他方の面側に形成されたAl部材と、を備え、
前記セラミックス基板と前記Al部材とが、Al−Si系のろう材によって接合され、
前記金属電極と前記金属端子とがはんだによって接合され、
前記Al部材は、前記セラミックス基板側の面に対向する対向面の湾曲の度合いが、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲であり、
前記セラミックス基板の厚みは0.3mm以上、1.0mm以下の範囲であり、
前記Al部材の厚みは2.0mm以上、10.0mm以下の範囲であり、
前記金属電極の厚みは2μm以上、3μm以下の範囲であることを特徴とする抵抗器。
前記Al部材は、純度が99.98mass%以上のAlからなる緩衝層とヒートシンクとの積層体であり、該緩衝層と前記セラミックス基板の他方の面がAl−Si系のろう材によって接合されていることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
前記チップ抵抗体、前記金属電極、および前記金属端子は、少なくともその一部が絶縁性の封止樹脂によって覆われ、該封止樹脂は、熱膨張係数が8ppm/℃以上、20ppm/℃以下の範囲の樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項記載の抵抗器。
前記湾曲矯正工程は、前記接合体の前記Al部材側に所定の曲率をもつ矯正治具を当接させ、前記セラミックス基板側から前記接合体を押圧する、冷間矯正を行う工程であることを特徴とする請求項7記載の抵抗器の製造方法。
前記湾曲矯正工程は、前記Al部材側および前記セラミックス基板側にそれぞれ配した平坦な矯正治具で前記接合体を挟持し、少なくとも0℃以下に冷却してから室温に戻す、加圧冷却矯正を行う工程であることを特徴とする請求項7記載の抵抗器の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の抵抗器及びこの抵抗器の製造方法について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0023】
(抵抗器:第一実施形態)
本発明の抵抗器の第一実施形態について、添付した
図1を参照して説明する。
図1は、第一実施形態の抵抗器の積層方向に沿った断面を示す断面図である。第一実施形態に係る抵抗器10は、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面11aに重ねて形成されたチップ抵抗体16と、を備えている。このチップ抵抗体16は、抵抗体12及びこの抵抗体12に電圧を印加するための金属電極13a,13bとを有している。また、金属電極13a,13bのそれぞれに重ねて、金属端子14a,14bが配置されている。金属電極13aと金属端子14aとの間、および金属電極13bと金属端子14bとは、それぞれ、はんだによって接合されている。
【0024】
さらに、チップ抵抗体16の周囲には、チップ抵抗体16に対して離間するように取り囲む型枠19が配置されている。そして、この型枠19の内部には、封止樹脂21が充填されている。こうした封止樹脂21は、チップ抵抗体16や金属端子14a,14bの一部を覆うように形成されている。
【0025】
セラミックス基板11の他方の面11bには、Al部材であるヒートシンク(Al部材)23が重ねて配されている。
こうしたセラミックス基板11とヒートシンク23との接合構造は後ほど詳述する。
このヒートシンク23の周縁付近には、複数のネジ穴24,24が形成されている。
【0026】
ヒートシンク23がセラミックス基板11と接合される接合面の反対面には、更に冷却器25が取り付けられていることが好ましい。冷却器25は、ヒートシンク23のネジ穴24,24を貫通するネジ26,26によって、ヒートシンク23に締結されている。なお、冷却器25とヒートシンク23との間には、更に、高伝熱性のグリス層27が形成されていることが好ましい。
【0027】
セラミックス基板11は、抵抗体12及び金属電極13と、導電性のヒートシンク23との電気的接続を防止するものである。セラミックス基板11は、絶縁性、および耐熱性に優れたSi
3N
4(窒化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)、Al
2O
3(アルミナ)等のセラミックスで構成されている。本実施形態においては、絶縁性の高いAlNで構成されている。また、AlNからなるセラミックス基板11の厚さは、例えば、0.3mm以上1.0mm以下の範囲内であればよく、本実施形態では、0.635mmに設定されている。
【0028】
こうしたセラミックス基板11の厚さは、0.3mm未満であるとセラミックス基板11に加わる応力に対する強度を充分に確保できなくなる懸念がある。また、セラミックス基板11の厚さが1.0mmを超えると、抵抗器10全体の厚みが増加し、薄厚化が難しくなる懸念がある。よって、セラミックス基板11の厚さを、例えば、0.3mm以上1.0mm以下の範囲内にすることによって、セラミックス基板11の強度と、抵抗器10全体の薄厚化とを両立できる。
【0029】
抵抗体12は、抵抗器10に電流が流れた際の電気抵抗として機能させるためのものであり、構成材料の一例として、Ta−Si系薄膜抵抗体やRuO
2厚膜抵抗体が挙げられる。抵抗体12は、本実施形態においては、Ta−Si系薄膜抵抗体によって構成され、厚さが例えば0.5μmとされている。
【0030】
金属電極13a,13bは、抵抗体12に設けられた電極であり、本実施形態においては、Cuによって構成されている。また、金属電極13a,13bの厚さは、例えば2μm以上3μm以下とされており、本実施形態においては、1.6μmとされている。なお、本実施形態において、金属電極13a,13bを構成するCuは、純CuやCu合金を含むものとする。また、金属電極13a,13bは、Cuに限定されるものでは無く、例えば、Al,Agなど、高導電率の各種金属を採用することができる。
【0031】
金属端子14a,14bは、外形が略L字型に屈曲された電気端子であり、その一端側がはんだによって金属電極13a,13bの表面に接合されている。これにより、金属端子14a,14bは、金属電極13a,13bに対して電気的に接続されている。また、金属電極13a,13bのそれぞれの他端側は、封止樹脂21から突出して外部に露出されている。こうした金属端子14a,14bは、本実施形態においては、金属電極13と同様にCuによって構成されている。また、金属端子14の厚さは、0.1mm以上0.5mm以下とされており、本実施形態においては、0.3mmとされている。
【0032】
金属端子14a,14bと金属電極13a,13bとを接合するはんだとしては、例えば、Sn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだが挙げられる。
【0033】
抵抗器10は、この金属端子14a,14bを介して外部の電子回路等に接続される。金属端子14aは、抵抗器10の一方の極性の端子とされ、また、金属端子14bは、抵抗器10の他方の極性の端子とされる。
【0034】
型枠19は、例えば、耐熱性の樹脂板から構成されている。そして、この型枠19の内側を埋める封止樹脂21は、例えば、30℃〜120℃の温度範囲における熱膨張係数(線膨張率)が8ppm/℃〜20ppm/℃の範囲の絶縁性樹脂が用いられる。こうした熱膨張係数を持つ絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂にSiO
2フィラーを入れたものなどを挙げることができる。この場合、封止樹脂21はSiO
2フィラーが72%〜84%、エポキシ樹脂が16%〜28%の組成とすることが望ましい。
【0035】
封止樹脂21として、30℃〜120℃の温度範囲における熱膨張係数が8ppm/℃〜20ppm/℃の範囲の絶縁性樹脂を用いることによって、抵抗体12の発熱に伴う封止樹脂21の熱膨張による体積変化を最小に抑えることができる。そして、封止樹脂21に覆われたチップ抵抗体16や金属端子14a,14bに対して過剰な応力が加わることで接合部分がダメージを受け、導通不良等の不具合を起こすことを防止できる。
【0036】
ヒートシンク(Al部材)23と、セラミックス基板11の他方の面11bは、Al−Si系のろう材によって接合されている。Al−Si系のろう材は、融点が600〜630℃程度である。こうしたAl−Si系のろう材によってヒートシンク23とセラミックス基板11とを接合することで、耐熱性と接合時の熱劣化を同時に防止することができる。
【0037】
例えば、従来のように、ヒートシンクとセラミックス基板とを、はんだを用いて接合した場合、はんだの融点が低い(200〜250℃程度)ために、抵抗体12が高温になった場合、ヒートシンクとセラミックス基板とが剥離してしまう懸念がある。また、はんだは温度変化による膨張、収縮が比較的大きいためにクラックが生じやすく、ヒートシンクとセラミックス基板とが剥離する懸念があった。
【0038】
よって、本実施形態のように、ヒートシンク23とセラミックス基板11とを、Al−Si系のろう材によって接合することによって、はんだ接合と比較して耐熱性が大幅に高められ、かつ、温度変化によるヒートシンクとセラミックス基板との接合部分のクラックの発生や、ヒートシンクとセラミックス基板との剥離を確実に防止することが可能になる。
【0039】
ヒートシンク(Al部材)23は、抵抗体12から発生する熱を逃がすためのものであり、熱伝導性が良好なAl又はAl合金から形成されている。本実施形態においては、ヒートシンク23は、A6063合金(Al合金)で構成されている。
【0040】
ヒートシンク23は、積層方向に沿った厚みが、例えば2.0mm以上、10.0mm以下の範囲に形成されることが好ましい。ヒートシンク23の厚みが2.0mm未満であると、ヒートシンク23に応力が加わった際に、ヒートシンク23が変形する懸念がある。また、熱容量が小さすぎるため、抵抗体12から発生する熱を充分に吸収、放熱できない懸念がある。一方、ヒートシンク23の厚みが10.0mmを超えると、ヒートシンク23の厚みによって抵抗器10全体の薄厚化も図ることが困難となり、また、抵抗器10全体の重量が大きくなり過ぎるという懸念がある。
【0041】
このヒートシンク(Al部材)23は、セラミックス基板11側の面23aに対向する対向面23bの湾曲の度合いが、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲となるように形成されている。
【0042】
ここで、対向面23bの湾曲の度合いは、ヒートシンク23の対向面23bの平坦性を示すものであり、最小二乗面における最高点と最低点との差分として表される。そして、ヒートシンク23の対向面23bの中心領域が周縁領域よりも外側に向けて突出した状態をプラス数値、対向面23bの周縁領域が中心領域よりも外側に向けて突出した状態をマイナス数値としている。なお、こうしたヒートシンク23の対向面23bの反りは、面広がり方向に沿った対向面の任意の断面が、必ずしも対称形となるような反り形状となるものに限定されるものでは無く、対向面の断面が非対称形となるような反り形状であっても、その反り量が平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲であればよい。
【0043】
ヒートシンク23の対向面23bの反り量が、平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲となるように形成されることによって、ヒートシンク(Al部材)23の湾曲によるセラミックス基板11の剥離や、セラミックス基板11の変形を防止することができる。
【0044】
ヒートシンク23の対向面23b、即ち冷却器25と接する面は、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合によって、僅かに湾曲することがある。これは、ヒートシンク23を構成するAlの熱膨張率が、セラミックス基板11の熱膨張率よりも大きいためである。これにより、高温で接合した後に室温程度まで冷却されると、ヒートシンク23の対向面23b(冷却器25と接する面)が、中央領域を頂部としてセラミックス基板11と反対の方向に向かって突出するように湾曲する。
【0045】
こうしたヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いを、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収めることによって、ヒートシンク23に更に冷却器25を設ける場合であっても、ヒートシンク23と冷却器25との密着性を確保することができる。また、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合面に過剰な湾曲応力が生じることを抑制し、ヒートシンク23とセラミックス基板11とが剥離することを防止できる。
【0046】
なお、ヒートシンク23の対向面23bの反り量が、平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲となるように制御する具体的な方法は、抵抗器の製造方法において詳述する。
【0047】
冷却器25は、ヒートシンク23を冷却するものであり、ヒートシンク23自体の放熱機能と共に、ヒートシンク23の温度上昇を防止する。冷却器25は、例えば、空冷式や水冷式の冷却器であればよい。冷却器25は、ヒートシンク23に形成されたネジ穴24,24を貫通するネジ26,26によって、ヒートシンク23に締結される。
【0048】
また、冷却器25とヒートシンク23との間には、更に、高伝熱性のグリス層27が形成されていることが好ましい。グリス層27は、冷却器25とヒートシンク23との密着性を高め、ヒートシンク23の熱を冷却器25に向けて円滑に伝搬させる。グリス層27を構成するグリスは、熱伝導性に優れ、かつ耐熱性に優れた高耐熱グリスが用いられる。
【0049】
(抵抗器:第二実施形態)
図2は、本発明の抵抗器の第二実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の抵抗器と同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
この第二実施形態の抵抗器30では、純度が99.98mass%以上のAlからなる緩衝層29と、ヒートシンク23との積層体からAl部材を構成している。即ち、ヒートシンク23とセラミックス基板11の他方の面11b側との間に、純度が99.98mass%以上のAlからなる緩衝層29が形成されている。ヒートシンク23およびセラミックス基板11は、この緩衝層29に対して、それぞれAl−Si系のろう材によって接合されている。
【0050】
緩衝層29は、例えば、純度が99.98mass%以上の高純度Alからなる薄板状の部材である。この緩衝層29の厚みは、例えば、0.4mm以上、2.5mm以下であればよい。こうした緩衝層29をセラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に形成することによって、チップ抵抗体16で発生した熱を効率的にヒートシンク23に伝搬させ、熱を速やかに放散することができる。
【0051】
また、緩衝層29を純度99.98mass%以上の高純度Alで形成することによって、変形抵抗が小さくなり、冷熱サイクルが負荷された際にセラミックス基板11に発生する熱応力をこの緩衝層29によって吸収でき、セラミックス基板11に熱応力が加わって割れが発生することを抑制できる。
【0052】
なお、こうした緩衝層29は、チップ抵抗体16とセラミックス基板11の一方の面11a側との間に形成することも好ましい。
【0053】
本実施形態のように、純度が99.98mass%以上のAlからなる緩衝層29と、ヒートシンク23との積層体からAl部材を構成した場合においても、ヒートシンク23は、その対向面23bの湾曲の度合いが−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収まるように形成されている。これによって、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合面に過剰な湾曲応力が生じることを抑制し、ヒートシンク23とセラミックス基板11とが剥離することを防止できる。
【0054】
(抵抗器:第三実施形態)
図3は、本発明の抵抗器の第三実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の抵抗器と同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
この第三実施形態の抵抗器40では、チップ抵抗体46は、抵抗体42及びこの抵抗体42に電圧を印加するための金属電極13a,13bとを有している。そして、本実施形態では、抵抗体42として、RuO
2系厚膜抵抗体を用いている。
【0055】
RuO
2系厚膜抵抗体からなる抵抗体42の厚さは、例えば5μm以上10μm以下であればよく、本実施形態では7μmとされている。こうしたRuO
2系厚膜抵抗体を用いた抵抗体42の形成は、例えば、セラミックス基板11の一方の面11aに、厚膜印刷法を用いてRuO
2ペーストを印刷、乾燥し、その後焼成することでRuO
2からなる抵抗体12が得られる。
本実施形態では、抵抗体42は、セラミックス基板11の一方の面11aと、金属電極13a,13bの上面側の一部を覆うように形成されている。
【0056】
本実施形態のように、抵抗体42として、RuO
2系厚膜抵抗体を用いた場合においても、ヒートシンク23は、その対向面23bの湾曲の度合いが−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収まるように形成されている。これによって、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合面に過剰な湾曲応力が生じることを抑制し、ヒートシンク23とセラミックス基板11とが剥離することを防止できる。
【0057】
(抵抗器の製造方法:第一実施形態)
次に、第一実施形態に係る抵抗器10の製造方法について、
図4、
図5、
図6を参照して説明する。
図4、
図5は、第一実施形態の抵抗器の製造方法を段階的に示した断面図である。また、
図6は、第一実施形態の抵抗器の製造方法における各工程を示したフローチャートである。
【0058】
例えば、厚みが0.3mm以上1.0mm以下のAlNからなるセラミックス基板11を用意する。
図4(a)に示すように、セラミックス基板11の一方の面11aに、例えばスパッタリング法を用いて、厚みが0.5μm程度のTa−Si系薄膜からなる抵抗体12を形成する(抵抗体形成工程:S01)。
【0059】
次に、
図4(b)に示すように、抵抗体12の所定の位置に、例えばスパッタリング法やめっき法を用いて、例えば厚みが2〜3μm程度のCuからなる金属電極13a,13bを形成する(金属電極形成工程:S02)。これによって、セラミックス基板11の一方の面11aにチップ抵抗体16が形成される。なお、Cuの下層に予めCrからなる下地層を形成して、抵抗体12と金属電極13a,13bとの密着性を高める構成にすることも好ましい。
【0060】
そして、
図4(c)に示すように、セラミックス基板11の他方の面11bに、ヒートシンク23を接合する(接合工程:S03)。
セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との接合にあたっては、Al−Si系のろう材箔をセラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に挟み込む。そして、真空加熱炉においては、例えば積層方向に0.5kgf/cm
2以上10kgf/cm
2以下の加圧力を負荷し、真空加熱炉の加熱温度を640℃以上650℃以下に設定し、10分以上60分以下保持する。これによって、セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に配したAl−Si系のろう材箔が溶融し、Al−Si系のろう材によってセラミックス基板11とヒートシンク23とが接合される。これによって、セラミックス基板11とヒートシンク23とからなる接合体31が得られる。
【0061】
セラミックス基板11とヒートシンク23とは、Al−Si系のろう材によって接合されているので、例えば、はんだによる接合と比較して、大幅に耐熱性が高められ、かつ、接合時に800℃といった高温を必要としないので、既に形成されている抵抗体12が熱劣化を引き起こすことも防止できる。また、Al−Si系のろう材は、はんだのように温度変化による膨張、収縮が少ないため、温度変化によってセラミックス基板11とヒートシンク23との接合部分にクラックが生じたり、互いに剥離することを確実に防止できる。
【0062】
ヒートシンク23とセラミックス基板11とを接合して、Al−Si系のろう材が溶融温度から室温まで冷却されると、ヒートシンク23とセラミックス基板11との熱膨張率差によって、ヒートシンク23のセラミックス基板11側の面23aに対する対向面23bが、その中央領域を頂部としてセラミックス基板11と反対の方向に向かって突出するように湾曲することがある。これは、ヒートシンク23を構成するAlと、セラミックス基板11を構成するセラミックスとの熱膨張係数の差や、厚みの差に起因するものである。
【0063】
ヒートシンク23の対向面23b(冷却器25と接する面)の湾曲の度合いを、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収めることによって、後工程でヒートシンク23に冷却器25を設ける際に、ヒートシンク23と冷却器25との密着性を確保することができる。また、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合部に過剰な湾曲応力が生じることを抑制する。こうしたヒートシンク23の対向面23b(冷却器25と接する面)の湾曲の度合いを、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲にするために、ヒートシンク23の湾曲の度合いを矯正する湾曲矯正工程(S4)を行う。
【0064】
湾曲矯正工程(S4)では、まず、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態を測定、ないし確認する。即ち、対向面23bの中心領域が周縁領域よりも外側に向けて突出した状態である下凸型湾曲であるか、対向面23bの周縁領域が中心領域よりも外側に向けて突出した上凸型湾曲であるかを確認する。
【0065】
また、対向面23bの湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲から外れているかを確認する。その結果、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが上述した範囲を外れている場合、次に述べる湾曲状態の矯正を行う。なお、こうした湾曲状態の確認は、多数の抵抗器10を製造する際に、湾曲方向や湾曲の度合いが予め分かっている、ないし予測できる場合には、特に行わなくてもよい。
【0066】
ヒートシンク23の対向面23bの湾曲矯正を行う場合には、
図8(a)に記載の冶具37を用いる。ヒートシンク23の対向面23b側に、所定の曲率で湾曲した矯正面32aを備えた下部加圧板32を当接させる。下部加圧板32は、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲方向と反対の矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。例えば、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態が、下凸型湾曲である場合には、上凸型湾曲面からなる矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。また、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態が、上凸型湾曲である場合には、下凸型湾曲面からなる矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。矯正治具32の矯正面32aの曲率は、例えば、2000mm〜3000mm程度となるように形成されている。
【0067】
そして、ヒートシンク23の対向面23bに下部加圧板32を当接させ、また金属電極13a,13bに上部加圧板33を当接させて、加圧バネ38によって例えば、0.5kg/cm
2〜5kg/cm
2程度の荷重を印加し、室温環境で冷間矯正を行う。これによって、ヒートシンク23の対向面23bは、この対向面23bと逆の形状の湾曲面からなる矯正面32aが押し付けられ、湾曲の度合いが緩和され、平坦な面に近い形状に矯正される。こうして得られた矯正後のヒートシンク23の対向面23bは、湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収められる。
【0068】
また、ヒートシンク23の対向面23bは、1つの下部加圧板32で矯正する以外にも、複数の下部加圧板32で段階的に湾曲の度合いを矯正することもできる。即ち、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが非常に大きい場合、1つの下部加圧板32で一度に矯正を行うと、ヒートシンク23の対向面23bに皺やヒビが生じる懸念がある。このため、段階的に湾曲の度合いが変化した複数の下部加圧板32を用いて、複数回に分けて冷間矯正を行い、ヒートシンク23の対向面23bを段階的に平坦面に近づけていく方法を採用することもできる。
【0069】
このようにしてヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが、平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲になるように矯正される。
【0070】
次に、
図5(a)に示すように、金属電極13a,13bのそれぞれに、はんだによって金属端子14a,14bを接合する(端子接合工程:S05)。金属端子14a,14bは、例えば、厚みが0.3mm程度のCuからなる板材を断面略L字状に屈曲させたものであればよい。また、金属電極13a,13と金属端子14a,14bとを接合するはんだとしては、例えば、Sn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだが挙げられる。これによって、金属電極13a,13bと金属端子14a,14bとが電気的に接続される。
【0071】
次に、
図5(b)に示すように、セラミックス基板11の一方の面11aに、チップ抵抗体16の周囲を取り囲むように型枠19を配置する。そして、この型枠19の内部に軟化させた絶縁性樹脂を充填し、チップ抵抗体16および金属端子14a,14bの一部を封止する封止樹脂21を形成する(封止樹脂形成工程:S06)。
【0072】
次に、
図5(c)に示すように、ヒートシンク23の下面に耐熱グリスからなるグリス層27を形成してから、ヒートシンク23にネジ26,26を用いて冷却器25を取り付ける(冷却器取付工程:S07)。
以上の工程を経て、第一実施形態に係る抵抗器10を製造することができる。
【0073】
以上のような構成とされた本実施形態に係る抵抗器10とその製造方法によれば、ヒートシンク(Al部材)23の対向面23bの湾曲の度合いを平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲にすることによって、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合面に過剰な湾曲応力が生じることを抑制し、ヒートシンク23とセラミックス基板11とが剥離することを確実に防止できる。
【0074】
また、ヒートシンク23に冷却器25を設ける際に、ヒートシンク23と冷却器25との密着性を確保することができる。特に、本実施形態では、ヒートシンク23の周縁付近に複数のネジ穴24,24が形成され、このネジ穴24,24を貫通するネジ26,26によって、ヒートシンク23と冷却器25とが締結されているので、ヒートシンク23と冷却器25との密着性を向上させることができる。また、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合面に過剰な湾曲応力が生じることを抑制できる。
【0075】
また、セラミックス基板11とヒートシンク23とを、Al−Si系のろう材を用いて接合しているので、抵抗体12が発熱して高温となっても、例えば従来のように、はんだを用いて接合した場合と比較して、接合強度を十分に維持することができ耐熱性に優れる。また一方で、従来のように、Ag−Cu−Ti系ろう材を用いて接合した場合と比較して、接合温度を低くすることができるので、接合時における抵抗体12の熱劣化を確実に防止することが可能になる。そして、セラミックス基板11及び抵抗体12の熱負荷を低減することができるとともに、製造工程を簡略化し、製造コストを低減することができる。
【0076】
また、セラミックス基板11の厚さを0.3mm以上1.0mm以下とすることによって、抵抗体12の発熱回数が多くてもセラミックス基板11に割れが発生することを抑制できる。
さらに、Cuからなる金属端子14a,14bの厚さを0.1mm以上とすることで、端子としての強度を十分に確保するとともに比較的大きな電流を流すことができる。また、金属端子14a,14bの厚さを0.3mm以下とすることで、抵抗体12の発熱回数が多くてもセラミックス基板11に割れが発生することを抑制できる。
【0077】
また、封止樹脂21として、熱膨張係数(線膨張率)が8ppm/℃〜20ppm/℃の範囲の絶縁性樹脂を用いることによって、抵抗体12の発熱に伴う封止樹脂21の熱膨張による体積変化を最小に抑えることができる。こうした構成により、封止樹脂21に覆われたチップ抵抗体16や金属端子14a,14bに対して過剰な応力が加わることで接合部分がダメージを受け、導通不良等の不具合を起こすことを防止できる。
【0078】
(抵抗器の製造方法:第二実施形態)
図7は、本発明の抵抗器の製造方法の第二実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の抵抗器の製造方法と同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
本実施形態の抵抗器の製造方法では、湾曲矯正工程として加圧冷却矯正を行う。
図7(a)に示す湾曲矯正工程では、まず、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態が対向面23bの中心領域が周縁領域よりも外側に向けて突出した状態である下凸型湾曲であるか、対向面23bの周縁領域が中心領域よりも外側に向けて突出した上凸型湾曲であるかを確認する。
【0079】
そして、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲矯正を行う場合には、接合体31のヒートシンク23の対向面23b側、およびセラミックス基板11側(金属電極13a,13b)に、それぞれ表面が平坦面を成す矯正治具34a,34bを当接させる。そして、接合体31が所定の荷重、例えば0.5kg/cm
2〜5kg/cm
2程度の荷重で挟持されるように、矯正治具34aと矯正治具34bとを締結ネジ35で締め付ける。
【0080】
そして、この矯正治具34a,34bで挟持された接合体31を、例えば冷却装置Cに導入して−40℃まで冷却し、その状態で10分間保持した後、室温に戻す。これによって、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが緩和され、平坦な面に近い形状に矯正される。
【0081】
こうして得られた矯正後のヒートシンク23の対向面23bは、湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収められる。
【0082】
以上のような湾曲矯正工程に用いる矯正治具34a,34bは、硬度の高い金属やセラミックスから構成されている。例えば、本実施形態では、SUSから構成されている。
【0083】
(抵抗器の製造方法:第三実施形態)
図8は、本発明の抵抗器の製造方法の第三実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の抵抗器の製造方法と同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
本実施形態の抵抗器の製造方法では、接合時加圧矯正として、湾曲矯正工程を接合工程と同時に行う。
図8(a)に示す接合工程、湾曲矯正工程では、まず、矯正治具37を用いて、セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間にAl−Si系のろう材箔を挟み込むとともに、ヒートシンク23の対向面23b側に、所定の曲率で湾曲した矯正面32aを備えた下部加圧板32を当接させ、また金属電極13a,13bに上部加圧板33を当接させる。下部加圧板32の矯正面32aの曲率は、例えば、2000mm〜3000mm程度となるように形成されている。そして、矯正治具37を加圧バネ38によって加圧する。
【0084】
そして、真空加熱炉に矯正治具で挟持されたセラミックス基板11、ヒートシンク23を導入し、真空加熱炉の加熱温度を640℃以上650℃以下に設定し、10分以上60分以下保持する。これによって、セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に配したAl−Si系のろう材箔が溶融し、ろう材によってセラミックス基板11とヒートシンク23とが接合される。
【0085】
また、同時に、この接合時に生じたヒートシンク23の対向面23bの湾曲が、矯正面32aを備えた下部加圧板32によって矯正され、矯正後のヒートシンク23の対向面23bは、湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収められる。
【0086】
(抵抗器の製造方法:第四実施形態)
図9は、本発明の抵抗器の製造方法の第四実施形態を示す断面図である。
なお、以下の説明において、第一実施形態の抵抗器の製造方法と同一の構成に関しては同一の符号を付与し、その詳細な説明は略す。
図3に示すような、RuO
2系厚膜抵抗体からなる抵抗体42を備えた抵抗器40を製造する際には、例えば、厚みが0.3mm以上1.0mm以下のAlNからなるセラミックス基板11を用意する。そして、
図9(a)に示すように、セラミックス基板11の一方の面11aの所定位置に、例えば厚膜印刷法を用いてAg−Pdペーストを印刷、乾燥し、その後焼成し、例えば厚みが7〜13μm程度のAg−Pd厚膜からなる金属電極13a,13bを形成する(金属電極形成工程)。
【0087】
次に、
図9(b)に示すように、セラミックス基板11の一方の面11a、および金属電極13a,13bに接するように、例えば厚みが7μm程度のRuO
2系厚膜抵抗体からなる抵抗体42を形成する(抵抗体形成工程)。RuO
2系厚膜抵抗体からなる抵抗体42の形成方法は、例えば、セラミックス基板11の一方の面11aに、厚膜印刷法を用いてRuO
2ペーストを印刷、乾燥し、その後焼成する方法が挙げられる。
【0088】
そして、
図9(c)に示すように、セラミックス基板11の他方の面11bに、ヒートシンク23を接合する(接合工程)。セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との接合にあたっては、Al−Si系のろう材箔をセラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に挟み込む。そして、真空加熱炉においては、例えば積層方向に0.5kgf/cm
2以上10kgf/cm
2以下の加圧力を負荷し、真空加熱炉の加熱温度を640℃以上650℃以下に設定し、10分以上60分以下保持する。これによって、セラミックス基板11の他方の面11bとヒートシンク23との間に配したAl−Si系のろう材箔が溶融し、Al−Si系のろう材によってセラミックス基板11とヒートシンク23とが接合される。これによって、セラミックス基板11とヒートシンク23とからなる接合体31が得られる。
【0089】
ヒートシンク23とセラミックス基板11とを接合して、Al−Si系のろう材が溶融温度から室温まで冷却されると、ヒートシンク23とセラミックス基板11との熱膨張率差によって、ヒートシンク23のセラミックス基板11側の面23aに対する対向面23bが、その中央領域を頂部としてセラミックス基板11と反対の方向に向かって突出するように湾曲することがある。これは、ヒートシンク23を構成するAlと、セラミックス基板11を構成するセラミックスとの熱膨張係数の差や、厚みの差に起因するものである。
【0090】
ヒートシンク23の対向面23b(冷却器25と接する面)の湾曲の度合いを、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収めることによって、後工程でヒートシンク23に冷却器25を設ける際に、ヒートシンク23と冷却器25との密着性を確保することができる。また、ヒートシンク23とセラミックス基板11との接合部に過剰な湾曲応力が生じることを抑制する。こうしたヒートシンク23の対向面23b(冷却器25と接する面)の湾曲の度合いを、−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲にするために、ヒートシンク23の湾曲の度合いを矯正する湾曲矯正工程を行う。
【0091】
湾曲矯正工程では、まず、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態を測定、ないし確認する。即ち、対向面23bの中心領域が周縁領域よりも外側に向けて突出した状態である下凸型湾曲であるか、対向面23bの周縁領域が中心領域よりも外側に向けて突出した上凸型湾曲であるかを確認する。
【0092】
また、対向面23bの湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲から外れているかを確認する。その結果、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが上述した範囲を外れている場合、次に述べる湾曲状態の矯正を行う。なお、こうした湾曲状態の確認は、多数の抵抗器40を製造する際に、湾曲方向や湾曲の度合いが予め分かっている、ないし予測できる場合には、特に行わなくてもよい。
【0093】
ヒートシンク23の対向面23bの湾曲矯正を行う場合には、
図9(d)に示すように冶具37を用いて、ヒートシンク23の対向面23b側に、所定の曲率で湾曲した矯正面32aを備えた下部加圧板32を当接させる。下部加圧板32は、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲方向と反対の矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。例えば、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態が、下凸型湾曲である場合には、上凸型湾曲面からなる矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。また、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲状態が、上凸型湾曲である場合には、下凸型湾曲面からなる矯正面32aを持つ下部加圧板32を用いる。矯正治具32の矯正面32aの曲率は、例えば、2000mm〜3000mm程度となるように形成されている。
【0094】
そして、ヒートシンク23の対向面23bに下部加圧板32を当接させ、また抵抗体42に上部加圧板33を当接させて、加圧バネ38によって例えば、0.5kg/cm
2〜5kg/cm
2程度の荷重を印加し、室温環境で冷間矯正を行う。これによって、ヒートシンク23の対向面23bは、この対向面23bと逆の形状の湾曲面からなる矯正面32aが押し付けられ、湾曲の度合いが緩和され、平坦な面に近い形状に矯正される。こうして得られた矯正後のヒートシンク23の対向面23bは、湾曲の度合いが平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲に収められる。
【0095】
また、ヒートシンク23の対向面23bは、1つの下部加圧板32で矯正する以外にも、複数の下部加圧板32で段階的に湾曲の度合いを矯正することもできる。即ち、ヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが非常に大きい場合、1つの下部加圧板32で一度に矯正を行うと、ヒートシンク23の対向面23bに皺やヒビが生じる懸念がある。このため、段階的に湾曲の度合いが変化した複数の下部加圧板32を用いて、複数回に分けて冷間矯正を行い、ヒートシンク23の対向面23bを段階的に平坦面に近づけていく方法を採用することもできる。
【0096】
このようにしてヒートシンク23の対向面23bの湾曲の度合いが、平坦面に対して−30μm/50mm以上、700μm/50mm以下の範囲になるように矯正される。
【0097】
この後、金属電極13a,13bのそれぞれに、はんだによって金属端子14a,14bを接合し、セラミックス基板11の一方の面11aに型枠19を配置した後、封止樹脂21を形成し、更にヒートシンク23に冷却器25を取り付けることによって、
図3に示すような、RuO
2系厚膜抵抗体からなる抵抗体42を備えた抵抗器40を製造することができる。
【実施例】
【0098】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
(本発明例1〜5)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Al−Si系ろう材箔を介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を積層し、積層方向に3kgf/cm
2に加圧力を付加し、真空雰囲気において、645℃で30分保持して、セラミックス基板とヒートシンクとをAl−Si系ろう材によって接合した。そして、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第一実施形態で示した矯正工程である冷間矯正によって、所定の湾曲度合(反り量)に矯正した。即ち、本発明例1の反り量は−30μm、本発明例2は0μm(平坦面)、本発明例3は100μm、本発明例4は350μm、本発明例5は700μmとした。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0099】
(本発明例6)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Al−Si系ろう材箔を介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を積層し、積層方向に3kgf/cm
2に加圧力を付加し、真空雰囲気において、645℃で30分保持して、セラミックス基板とヒートシンクとをAl−Si系ろう材によって接合した。そして、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第二実施形態で示した矯正工程である加圧冷却矯正によって、所定の湾曲度合(反り量)に矯正した。即ち、本発明例6の反り量は100μmとした。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0100】
(本発明例7)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Al−Si系ろう材箔を介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を積層した。積層方向に3kgf/cm
2に加圧力を付加し、真空雰囲気において、645℃で30分保持して、セラミックス基板とヒートシンクとをAl−Si系ろう材によって接合した。この接合時に、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第三実施形態で示した矯正工程である接合時加圧矯正によって、接合と同時に所定の湾曲度合(反り量)に矯正した。本発明例7の反り量は100μmとした。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0101】
(比較例1、2)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Al−Si系ろう材箔を介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を積層し、積層方向に3kgf/cm
2に加圧力を付加し、真空雰囲気において、645℃で30分保持して、セラミックス基板とヒートシンクとをAl−Si系ろう材によって接合した。そして、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第一実施形態で示した矯正工程である冷間矯正によって、所定の湾曲度合(反り量)に矯正した。即ち、比較例1の反り量は800μm、比較例2は−60μmとした。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0102】
(比較例3)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。さらにセラミックスの他方の面にもCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu層(10mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Sn−Ag系のはんだを介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を接合した。なお、はんだによる接合後に矯正工程は行わなかった。ヒートシンクの対向面の反り量は−60μmとした。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0103】
(比較例4)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。さらにセラミックスの他方の面にもCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu層(10mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Sn−Ag系のはんだを介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を接合した。そして、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第一実施形態で示した矯正工程である冷間矯正によって湾曲を矯正した。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0104】
(比較例5)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。さらにセラミックスの他方の面にもCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu層(10mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面には、Sn−Ag系のはんだを介して、Al合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)を接合した。そして、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第二実施形態で示した矯正工程である加圧冷却矯正によって湾曲を矯正した。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0105】
(比較例6)
AlNからなるセラミックス基板(15mm×11mm×0.635mmt)の一方の面に、スパッタリング法を用いてTa−Si系の抵抗体(10mm×10mm×0.5μm)を形成した。次いで抵抗体の上の両端にCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu電極(2mm×10mm)を形成した。さらにセラミックスの他方の面にもCuをスパッタリング法で形成した後、めっき法で1.6μmの厚さのCu層(10mm×10mm)を形成した。次いで、セラミックス基板の他方の面とAl合金(A1050)からなるヒートシンク(20mm×13mm×3mmt)とをSn−Ag系のはんだによって接合した。この接合時に、ヒートシンクの対向面を、抵抗器の製造方法における第三実施形態で示した矯正工程である接合時加圧矯正によって湾曲を矯正した。そして、Cu電極上にSn−Agはんだを用いて、Cu端子を接合した。
【0106】
以上の本発明例1〜7、比較例1〜6について、冷熱サイクル試験、高温放置試験、通電試験をそれぞれ行った。
冷熱サイクル試験は、それぞれのサンプルを−40℃〜125℃の間で冷熱サイクルを繰り返し行った。繰り返し回数は3000サイクルとした。そして、試験後に、セラミックス基板とヒートシンクとの接合部分のクラックや剥がれの状況及びセラミックス基板の割れを観察した。
高温放置試験は、それぞれのサンプルを125℃で1000時間放置し、セラミックス基板とヒートシンクとの接合部分のクラックや剥がれの状況を観察した。
通電試験は、それぞれのサンプルのCu端子間に、200Wで5分間の通電を行い、通電状況を確認した。
【0107】
こうしたそれぞれのサンプルについて行った冷熱サイクル試験、高温放置試験、および通電試験の結果を表1に示す。なお、以下の表1において、冷熱サイクル試験では、クラックや剥がれや割れが生じたものは×、接合状態に変化が無かったものは○と表記した。また、高温放置試験では、クラックや剥がれが生じたものは×、接合状態に変化が無かったものは○と表記した。また、通電試験では、電流が流れたものを○、導通しないものを×と表記した。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、本発明例1−7では、冷熱サイクル試験、高温放置試験、および通電試験の何れにおいても、良好な結果が得られた。
【0110】
一方、比較例1は、冷熱サイクル試験後にセラミックス基板に割れが生じていた。
また、従来の比較例2および比較例3は、通電試験において、端子間に導通不良が生じた。これら比較例2および比較例3は、湾曲度合いが−60μmと大きく、放熱が円滑に行われなくなるために金属電極と金属端子とを接合しているはんだが溶融し、金属電極と金属端子とが電気的に断線したためである。また、比較例3では、冷熱サイクル試験において、セラミックス基板とヒートシンクとの間で、接合面積の50%以上が剥がれる結果となった。また、高温放置試験において、セラミックス基板とヒートシンクとの間で、接合強度が30%以上低下した。また、通電試験において、端子間に導通不良が生じた。
【0111】
比較例4では、冷間矯正後に既にはんだにクラックが生じていたため、冷熱サイクル試験、高温放置試験、および通電試験の何れも行うことができなかった。
【0112】
比較例5では、加圧冷却矯正後に素子をハンダ付けすると、ヒートシンクの反りが加圧冷却矯正を行う前の状態まで戻ったため、冷熱サイクル試験、高温放置試験、および通電試験の何れも行うことができなかった。
【0113】
比較例6では、接合時加圧矯正を行った際に、加圧力によってはんだがセラミックス基板とヒートシンクとの間から流出してしまい、接合自体ができなかった。
【0114】
以上の結果から、本願発明によれば、セラミックス基板とAl部材とを大きく湾曲することなく接合でき、かつ、接合部分に損傷がない抵抗器を製造可能なことが確認された。