(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明における紫外線硬化型インクジェットインキについて詳細に説明する。
【0021】
本発明は、硬化時の平均膜厚が6μmでOD値が1.9以上となるインクジェットイン
キであることを特徴とする。
前記範囲であるインクジェットインキであれば、得られる硬化膜の膜厚は限定されるも
のではない。得られる硬化膜の膜厚は、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好
ましい。膜厚が1μm以上であることにより酸素阻害の影響を受けにくくなり、良好な硬
化性が得られる。
【0022】
〈OD値〉
非浸透系基材に、膜厚6μmとなるように硬化膜を形成し、X−Rite,Inc.製
のX−Rite 500seriesを使用し、ステータスGの条件にて100%ベタ印
字部分の任意の5箇所を測定し、平均値を求めることで得られる。
OD値は、1.9以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。1.9以上であれば浸
透系基材、非浸透系基材を問わず電子写真方式と比較して目視で遜色ない濃度レベルの印
字物を提供することが可能となる。
【0023】
〈顔料〉
本発明において顔料は、十分な印刷濃度(OD値)および耐光性を得るため、インキ中
に4重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは4〜15重量%、さらに好ましくは
4〜8重量%の範囲である。前記範囲であれば酸素阻害の影響を受けやすい低膜厚条件下
であっても印刷濃度と硬化性を維持できる。
【0024】
顔料は、一般的に印刷用途、塗料用途のインキ組成物に使用される顔料を用いることが
でき、発色性、耐光性などの必要用途に応じて選択することができる。
顔料成分としては、カーボンブラック等の黒色顔料や、酸化チタン、炭酸カルシウム等
の無彩色の顔料や、有彩色の有機顔料が使用できる。
【0025】
本発明のブラックインキには、顔料の全重量に対してカーボンブラックを60重量%以
上含むことが好ましく、80重量%以上がより好ましく、さらに90重量%以上が好まし
い。
【0026】
本発明に使用されるカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラ
ック、サーマルブラック、ランプブラック等公知のカーボンブラックを用いることができ
る。
【0027】
カーボンブラックの具体例としては、デグサ社製「Special Black350
、250、100、550、5、4、4A、6」「PrintexU、V、140U、1
40V、95、90、85、80、75、55、45、40、P、60、L6、L、30
0、30、3、35、25、A、G」、キャボット社製「REGAL400R、660R
、330R、250R」「MOGUL E、L」、三菱化学社製「MA7、8、11、7
7、100、100R、100S、220、230」「#2700、#2650、#26
00、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#98
0、#970、#960、#950、#900、#850、#750、#650、#52
、#50、#47、#45、#45L、#44、#40、#33、#332、#30、#
25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」等が挙げられる。
【0028】
カーボンブラックの平均粒子径(D50)は、レーザー散乱による測定値で10〜20
0nmであることが好ましく、50〜150nmがより好ましい。平均粒径が10nm以
上の場合は、硬化性が良くなり、200nm以下である場合は、着色力が良くなる。
【0029】
なお前記D50は、インキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、マイクロトラ
ックUPA150(日機装株式会社製)を使用することで測定した値である。
【0030】
本発明のインキ中で使用される有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマル
ーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リト
ールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの
溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料から
の誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系有機
顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系有機顔料、ペリ
レンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系有機顔料、イソインドリノンエロー
、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系有機顔料、ピランスロンレッド、
ピランスロンオレンジなどのピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合ア
ゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンエローなどのキノフタロン
系有機顔料、イソインドリンエローなどのイソインドリン系有機顔料、ナフトール系有機
顔料、その他の顔料として、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、ニッケルアゾ
エロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノ
ニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0031】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、C.I.ピグメント
イエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、11
0、117、120、125、128、129、137、138、139、147、14
8、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.
I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64C.I.ピグ
メントレッド9、31、48、49、52、53、57、97、122、123、146
、147、149、168、177、180、185、192、202、206、215
、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240
、269、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、6
0、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、2
5、26等が挙げられる。
【0032】
上記有機顔料の中で、耐光性の点から、キナクリドン系有機顔料、フタロシアニン系有
機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、イソインドリノン系有機顔料、縮合アゾ系有機
顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料が好ましい。
【0033】
有機顔料は、レーザー散乱による測定値で平均粒径(D50)10〜500nmの微細
顔料であることが好ましく、50〜400nmがより好ましい。顔料の平均粒径が10n
m以上の場合は、耐光性が良化し、500nm以下の場合は、分散の安定性が良好となる
。
【0034】
なお前記D50は、インキを酢酸エチルで200〜1000倍に希釈し、マイクロトラ
ックUPA150(日機装株式会社製)を使用することで測定した値である。
【0035】
本発明において有機顔料は、求められる色相、色濃度および耐光性を得るため、インキ中
に含まれる顔料の全重量に対して40重量%未満であることが好ましい。
【0036】
〈光重合開始剤〉
本発明のブラックインキに含まれる光重合開始剤は、
顔料1重量部に対して、3重量部以上含まれることが好ましく、3〜7重量部がより好
ましく、4〜7重量部が更に好ましい。
顔料1重量部に対して光重合開始剤を3重量部以上含むことにより、硬化性が十分にな
り、7重量部以下で硬化ムラによる硬化シワを低減することができる。
特に、薄膜印刷時において、酸素阻害を受けること無く十分に硬化し、色濃度が高い状
態で十分な硬化性を得ることができる。
【0037】
本発明のインキ組成物に含まれる光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって
、被記録媒体の表面に存在するインキを硬化させて印字を形成するために用いられる。放
射線の中でも紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコス
トを抑えることができる。
【0038】
光重合開始剤として、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン系
光重合開始剤、α−アミノアルキルケトン系光重合開始剤のいずれかを含むことが好まし
い。
【0039】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2、4,6−トリメチ
ルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリエチルベンゾイル−
ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリフェニルベンゾイル−ジフェニルホ
スフィンオキサイド等のモノアシルホスフィンオキサイド、
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2
,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド
等のビスアシルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0040】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の市販品としては、例えば、DAROCU
R TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド)、
IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホス
フィンオキサイド)、及びCGI 403(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2
,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド)が挙げられる。
【0041】
また、上記のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、モノアシルホスフィンオ
キサイドを含むことが好ましい。これにより、光重合開始剤がインキに十分に溶解して硬
化が十分に進行するため、硬化シワなく、インキの硬化性に優れる。
【0042】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、顔料1重量部に対して1.8〜5.7
重量部含むことが好ましく、2.1〜4.5重量部がより好ましく、2.5〜4.0重量
部が更に好ましい。
顔料1重量部に対して1.8重量部以上含むことにより硬化性が十分になり、顔料1重量
部に対して5.7重量部以下含むことにより、硬化ムラによる硬化シワの発生も抑えるこ
とが出来る。
【0043】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、
2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントンなどがあげられる。
【0044】
チオキサントン系光重合開始剤の中でも、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤
への増感効果の点から、2−イソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0045】
チオキサントン系光重合開始剤は、顔料1重量部に対して0.5〜2.0重量部含むこ
とが好ましく、0.65〜1.5重量部がより好ましく、0.7〜1.5重量部がさらに
好ましい。
顔料1重量部に対して0.5重量部以上含むことにより薄膜時の硬化性が良くなり、顔
料1重量部に対して1.5重量部以下含むことにより、インキ安定性を悪化させない。
【0046】
α−アミノアルキルケトン系光重合開始剤としては、例えば、
2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン
、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1
−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−
(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。
中でも、インキのハンドリング性の点から、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メ
チルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノンが
好ましい。
【0047】
α−アミノアルキルケトン系化合物は、顔料1重量部に対して0.2〜2.0重量部含
むことが好ましく、0.45〜1.0重量部がより好ましく、0.5〜0.9重量部がよ
り好ましい。
前記含有量では、インキの安定性を損なうこと無く、硬化性を得ることができる。
【0048】
光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チオキサントン系光重
合開始剤、および、α−アミノアルキルケトン系光重合開始剤を含むことが好ましい。
これら3種を併用することにより、酸素阻害の影響を受ける薄膜時においても硬化性が
良好であり、かつ、顔料濃度が高い場合でも、硬化性が良好になる。
【0049】
上記以外の光重合開始剤としては、硬化速度、硬化塗膜物性等により、自由に選択する
ことができる。
例えば、ベンゾインイソブチルエーテル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−
(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、
4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド、1,2−オクタンジオン、1−
(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジ
メチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−
(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベン
ゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノンなどを挙げることができ
る。
これらの光重合開始剤は、着色材料や重合性化合物の光吸収によってのラジカル生成反
応が阻害されない点、またラジカル発生効率が高くインキ組成物の硬化性を高めることが
できる点で好ましい。
【0050】
上記光重合開始剤に対し、増感剤としてトリメチルアミン、メチルジメタノールアミン
、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息
香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン
、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンおよび4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベ
ンゾフェノンなどの、前記重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用すること
もできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、インキ組成物への溶解性に優れ、紫
外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0051】
本発明において、インキの経時での粘度安定性、記録装置内での機上の粘度安定性を高
めるため、安定化剤を使用することができる。重合性化合物への溶解性や、安定化剤自身
の色味の点で、ヒンダードフェノール系化合物として精工化学社「BHTスワノックス」
「ノンフレックス アルバ」、本州化学社製「H−BHT」、フェノチアジン系化合物と
して精工化学社製「フェノチアジン」、堺化学工業社製「フェノチアジン」、ヒンダード
アミン系化合物としてエボニックデグサ社製「HO−TEMPO」、リン系化合物として
、BASF社製「トリフェニルホスフィン」が好適に選択される。
【0052】
〈重合性モノマー〉
本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」と表記した場合には、特に説明が
ない限り、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を表すものとする
【0053】
本発明は、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含有することが好ま
しい。ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、例えば、アクリル酸2−
(2−ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチ
ル等が挙げられ、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むことが好まし
い。アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むことによって、インキ中の
顔料含有量が高い場合でも、インキ粘度の上昇を抑えることができる。さらに、顔料含有
量が高い場合でも、十分な硬化性を得ることが出来る。
【0054】
本発明は、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとジプロピレングリコールジア
クリレートを併用することが好ましい。これらの重合性化合物は多官能でありながら粘度
が10mPa・s以下と極めて小さく、臭気が少ないという特徴がある。また、アクリル
酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルは、理由は定かではないが、多官能基の中でも優れた
硬化性かつ低粘度な重合性化合物である。しかし、表面張力がやや高く、アクリル酸2−
(ビニロキシエトキシ)エチルのみではインキ着弾後の濡れ広がりが悪く、印刷後の画質が
劣る傾向がある。ジプロピレングリコールジアクリレートは、低粘度かつ表面張力が低い
という特徴がある。そのため、印刷後の基材表面での濡れ広がりを良化させ、高画質化に
寄与する。しかし、アクリル酸2−(ヒドロキシエトキシ)エチルと比較して硬化性に劣る
。つまり、これら2種の重合性モノマーを使用することで、低粘度、高画質、低臭、高硬
化性を達成することができる。また、これら2種の重合性化合物を使用することで、光重
合開始剤の溶解度が良好になり、硬化反応が進行しやすい。
【0055】
これらの効果を発揮する最適な比率はインキ組成物中、アクリル酸2−(ビニロキシエ
トキシ)エチルは10重量%〜60重量%、より好ましくは20重量%〜50重量%であ
る。一方、ジプロピレングリコールジアクリレートは、好ましくは10重量%〜80重量
%、より好ましくは30重量%〜70重量%である。
【0056】
本発明で用いられる、重合性化合物としては、上記に挙げた2種以外にも従来既知の材
料を必要に応じて使用することができる。
【0057】
具体的には、単官能の重合性化合物として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、
2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェ
ノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)
アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香環を有す
る単官能(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ
)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ
)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノ
ール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、
アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、N
−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等の環状構造を有する単官能の(メタ)
アクリレート
2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メ
タ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキ
シエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキ
シジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(
メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレング
リコールモノ(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(
メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート
、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、β-カルボキシ
ルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒド
ロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N
-ビニルホルムアミド等の環状構造を持たない単官能(メタ)アクリレートを挙げること
ができる。
インキの低粘度化のために、単官能の重合性化合物を使用することができる。硬化性が
比較的良好なモノマーとして、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートが知られてい
るが、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレートは臭気があり、表面張力が高い(39
mN/m)ため、ドット径の広がりが悪く、画像に悪影響を及ぼす。
中でも、硬化性、臭気の点で、芳香環を持たない単官能(メタ)アクリレートが好まし
く、印刷画質の点で、表面張力が38mN/m以下の単官能の重合性化合物を使用するこ
とが好ましい。例えば、臭気、粘度の点から、ラウリルアクリレート、テトラヒドロフル
フリルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、トリデシル
アクリレート、イソボロニルアクリレート等が好ましい。
インキの臭気、硬化性、画質、開始剤の溶解性の点からインキ中20重量%以下であるこ
とが好ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0058】
また多官能の重合性化合物として、2官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アク
リレートがあげられる。
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ
)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジ
オールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)1,6−ヘキサンジオ
ールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,1
0−デカンジオールジ(メタ)アクリレートエトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレング
リコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テ
トラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3
−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコ
ールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ト
リプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ
)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオ
ペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリ
レート、1,4−ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオー
ルオリゴ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレ
ート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレング
リコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロ
ールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メ
タ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノー
ルFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プ
ロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(
メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、イソシア
ヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等
が挙げられる。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロー
ルプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化リン酸トリ(メタ)アクリレート、ペ
ンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)
アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレートグリセリルトリ(
メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、エトキシ化
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパ
ントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、カ
プロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリ(2−ヒドロ
キシエチルイソシアヌレート)トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラ
メチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ
(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペン
タエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキ
サ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)ア
クリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペン
タエリスリトール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
多官能の重合性化合物の中でも、芳香環を持たない2官能以上の多官能の(メタ)アク
リレートが好ましい。例えば、硬化性の点でジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
、が好ましく、インキ粘度、臭気の観点より1,9−ノナンジオールジアクリレート、1
,10−デカンジオールジアクリレートが好ましい。これらインキ中の含有量は、インキ
の臭気、硬化性、画質、開始剤の溶解性の点からインキ中20重量%以下であることが好
ましく、10重量%以下がより好ましい。
【0061】
印刷物に対し耐性を付与するため、本発明のインキ組成物にはオリゴマー、プレポリマ
ーも使用することができる。
【0062】
〈溶剤〉
本発明のインキ組成物には、低粘度化および印刷基材への濡れ広がり性を向上させるた
めに、有機溶剤を含有させてもよい。
【0063】
有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリ
コールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテー
ト、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエ
チルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピ
レングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエー
テルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリ
コールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルプロ
ピオネート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリ
コールモノエチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルプ
ロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレン
グリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル
ブチレート、エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、エチレングリコールモ
ノブチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジ
エチレングリコールモノエチルエーテルブチレート、ジエチレングリコールモノブチルエ
ーテルブチレート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート、ジプロピレン
グリコールモノメチルエーテルブチレートなどのグリコールモノアセテート類、
エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレング
リコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、エチレングリコールアセ
テートプロピオネート、エチレングリコールアセテートブチレート、エチレングリコール
プロピオネートブチレート、エチレングリコールジプロピオネート、エチレングリコール
アセテートジブチレート、ジエチレングリコールアセテートプロピオネート、ジエチレン
グリコールアセテートブチレート、ジエチレングリコールプロピオネートブチレート、ジ
エチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールアセテートジブチレート、
プロピレングリコールアセテートプロピオネート、プロピレングリコールアセテートブチ
レート、プロピレングリコールプロピオネートブチレート、プロピレングリコールジプロ
ピオネート、プロピレングリコールアセテートジブチレート、ジプロピレングリコールア
セテートプロピオネート、ジプロピレングリコールアセテートブチレート、ジプロピレン
グリコールプロピオネートブチレート、ジプロピレングリコールジプロピオネート、ジプ
ロピレングリコールアセテートジブチレートなどのグリコールジアセテート類、
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレング
リコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類、
エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、
プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル
、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエー
テル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル
エーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブ
チルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコー
ルモノブチチルエーテル、
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジ
エチレングリコール−ジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコール−ジ−iso−
プロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチ
ルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール
ジエチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラエチレングリ
コールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレン
グリコールエチルメチルエーテル
などのグリコールエーテル類、
乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルなどの乳酸エステル類があげられ
る。
【0064】
上記有機溶剤の中でも、グリコールエーテル類が好ましく、中でも、テトラエチレング
リコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチ
レングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテルが特に好
ましい。
グリコールエーテル類の、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコー
ル骨格が、重合性モノマーであるアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルの反
応性を向上させ、塗膜の硬化性が優れ、硬化シワに優れる。さらに、インキ粘度が低粘度
になり、吐出安定性が優れ、良好な画質が得られる。
【0065】
上記有機溶剤は、インキ中に0.01〜5重量%含むことが好ましく、0.1〜3重量
%がより好ましい。
【0066】
〈顔料分散剤〉
本発明では、顔料の分散性およびインキ組成物の保存安定性を向上させるために顔料分
散剤を添加するのが好ましい。顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長
鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポ
リアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、
変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリ
オキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、
ステアリルアミンアセテート等を用いることができる。
中でも、顔料の分散安定性の点から、インキ中0.1重量%〜10重量%が好ましい。
【0067】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製「Anti−Terra−U(ポ
リアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリ
カルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エス
テル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110、111(酸基を含む共重合
物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、1
70(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステ
ル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P10
4S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン系)」、「Lactimo
n(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコン)」が挙げられる。
【0068】
また、Efka CHEMICALS社製「エフカ44、46、47、48、49、5
4、63、64、65、66、71、701、764、766、7701」、「エフカポ
リマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、4
01、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、7
45(銅フタロシアニン系)」、共栄社化学社製「フローレン TG−710(ウレタン
オリゴマー)、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50
E、No.300(アクリル系共重合物)」、楠本化成社製「ディスパロン KS−86
0、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7
004(ポリエーテルエステル型)」が挙げられる。
【0069】
さらに、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリ
ウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、E
P」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)、「エマルゲン920、93
0、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、
「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート
)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)
、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000G
R、32000、33000、35000、39000、41000、53000、J1
80(ポリエチレンイミン系塩基性分散剤)」、日光ケミカル社製「ニッコール T10
6(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレ
ンモノステアレート)、Hexagline 4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート
)」、味の素ファインテクノ社製「アジスパーPB821、822、824、827、7
11(塩基性官能基含有共重合物)」、テゴケミサービス社製「TEGODisper6
85」等が挙げられる。
【0070】
中でも、塩基性官能基をもつ顔料分散剤が好ましく、例えば、ソルスパース24000
GR、32000、33000、35000、39000、41000、53000、J
180、アジスパーPB821、822、824、827、711が挙げられる。
【0071】
分散剤はインキ組成物中に0.01〜10重量%含まれることが好ましい。
【0072】
本発明のインキ組成物には、顔料の分散性およびインキ組成物の保存安定性をより向上
させるために、有機顔料の酸性誘導体を顔料の分散時に配合することが好ましい。
前記顔料誘導体とは、有機顔料を母体骨格とし、側鎖にスルホン酸、スルホンアミド基
、アミノメチル基、フタルイミドメチル基等の置換基を導入して得られる化合物、ないし
は金属塩化合物である。
【0073】
〈表面張力調整剤〉
本発明には、表面張力調整剤を含むことができる。
表面張力調整剤として、例えば、シリコン系表面張力調整剤、フッ素系表面張力調整剤
、アクリル系表面張力調整剤、アセチレングリコール系表面張力調整剤等が挙げられる。
表面張力低下の能力、重合性モノマーとの相溶性との観点から、シリコン系表面調製剤
を使用することが好ましい。
【0074】
具体的なシリコン系表面張力調整剤として、ジメチルシロキサン骨格の変性体が挙げら
れ、中でも、ポリエーテル変性シロキサン系表面張力調整剤が好ましい。ポリエーテルと
は例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドをいう。一般的な製品として
、ビックケミー社より代表品としてBYK(登録商標)−378、348、349、など
のポリエーテル変性シロキサン、BYK―UV3500、UV3510などのポリエーテ
ル変性ポリジメチルシロキサン、エボニックデグサ社より、TEGO(登録商標) GL
IDE 450、440、435、432、410、406、130、110、100な
どのポリエーテル変性シロキサンコポリマー等のポリエーテル変性シリコン系界面活性剤
を好ましく使用できる。これらの中でも、良好な画質形成の観点から、BYK−378、
348、TEGO GLIDE 450、440、432、410等のポリエーテル変性
シリコン系表面張力調整剤が、好ましい。
【0075】
シリコン系表面張力調整剤の含有量は、インキ全重量量に対して、0.5重量%以上、
5.0重量%未満の範囲が好ましく、1.0重量%以上、5重量%未満がより好ましい。
上記含有量を0.5重量%以上にすることによりインキの基材への濡れ性を向上できるた
め、吐出量が少ない場合でも十分なベタ埋まり性を確保でき、結果として色濃度が向上す
る。一方、上記含有量を5.0重量%未満にすることより、インキの保存安定性を確保す
ることができる。
【0076】
〈インキの製造方法〉
本発明のインキ組成物に顔料を含有させる場合、あらかじめ重合性化合物、顔料分散剤
、顔料、添加剤をサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散し、顔料を高濃度に含有
する濃縮液を作成したのち、残りの重合性化合物により希釈することが好ましい。この方
法により、通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、また過剰な分散
エネルギーがかからず、多大な分散時間を必要としないため、分散時に原料が変質するこ
となく、安定性に優れたインキ組成物を製造することができる。
【0077】
本発明のインキ組成物については、印刷適性や印字物耐性を高めるため、表面張力調整
剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて使用すること
ができる。
【0078】
本発明のインキ組成物は、重合性化合物、安定化剤、光重合開始剤、添加剤、および着
色剤を含有させる場合には上記顔料濃縮液を添加、混合し、光重合開始剤を溶解させるこ
とで製造される。この際、ヘッドでの詰まりを防止するため、光重合開始剤の溶解後に、
孔径3μm以下、好ましくは孔径1μ以下のフィルターにて濾過することが好ましい。
【0079】
本発明のインキ組成物は、25℃での粘度を5〜50mPa・sに調整することが好ま
しく、5〜30mPa・sに調整することが好ましい。この粘度領域であれば、特に通常
の5〜30KHzの周波数を有するヘッドから10〜50KHzの高周波数のヘッドにお
いても安定した吐出特性を示す。ここで粘度が5mPa・s未満の場合は、高周波数のヘ
ッドにおいて、吐出の追随性の低下が認められ、50mPa・sを越える場合は、加熱に
よる粘度の低下機構をヘッドに組み込んだとしても吐出そのものの低下を生じ、吐出の安
定性が不良となり、全く吐出できなくなる。
【0080】
〈記録方法〉
本発明のインキ組成物を使用するには、まずこのインキ組成物をインクジェット記録方
式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから基材上に吐出し、その
後紫外線又は電子線などの活性エネルギー線を照射する。これにより印刷媒体上のインキ
組成物は速やかに硬化する。
【0081】
なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、
メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザー、ガリウム
ランプ、LED、および太陽光を使用することができる。
【0082】
紫外線は、350nm〜450nmの範囲であるのが好ましい。
また、紫外線の照射量は、10mJ/cm
2以上、10000mJ/cm
2以下であるのが
好ましい。特に、本発明のインクジェットインキは、顔料1重量部に対して3〜7重量部
の光重合開始剤を含む場合でも、光重合開始剤の溶解性が良好なため、紫外線照射量は低
くても十分に硬化することが出来る。
したがって、一般的に広く使用されているメタルハライドランプ、LEDランプのいずれ
を使用しても十分な硬化性を得られる。
【0083】
〈記録媒体〉
本発明で用いられる印刷基材については特に限定はないが、ポリカーボネート、硬質塩
ビ、軟質塩ビ、ポリスチレン、発砲スチロール、PMMA、ポリプロピレン、ポリエチレ
ン、PETなどのプラスチック基材やこれら混合または変性品、上質紙、アート紙、コー
ト紙、キャストコート紙などの紙基材、ガラス、ステンレスなどの金属基材などが挙げら
れる。
【0084】
本発明のインキ組成物は、薄膜でも十分な色濃度(OD値)および硬化性を得ることが
できるため。その為、プラスチック等一般的な非浸透系基材だけでなく、紙や木材などの
浸透系基材に対しても使用することができる。特に、PETなどのプラスチック基材や上
質紙、コート紙が好ましい。
【実施例】
【0085】
以下実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の態様がこ
れらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。ま
た下記の実施例、比較例の詳細な条件を以下の表1に、結果を表2に示す。
【0086】
実施例および比較例に使用した成分は以下のとおりである。
・ブラック顔料: カーボンブラック(エボニックデグサ社製「Special Bla
ck 350」)
・シアン顔料: Pigment Blue 15:3 (トーヨーカラー社製「Lio
nol Blue 7351」)
・マゼンタ顔料: Pigment Red 122 (クラリアント社製、「Host
aperm Pink E」)
・顔料分散剤: ルーブリゾール社製、塩基性顔料分散樹脂「ソルスパース32000」
・VEEA: アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(日本触媒社製、「V
EEA」)
・DPGDA: ジプロピレングリコールジアクリレート(BASF社製)
・PEA: 2−フェノキシエチルアクリレート
・DPHA: ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製)
・TPO: 2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキサイド(B
ASF社製「Darocur TPO」)
・ITX: 2−イソプロピルチオキサントン
・Irg379: 2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1
−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(BASF社製「IRGACUR
E379」)
・DEDG: ジエチレングリコールジエチルエーテル (日本乳化剤社製「DEDG」)
・フェノチアジン: 精工化学社製「フェノチアジン」
・TEGO Glide 432: エボニック社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシ
ロキサン「TEGO Glide 432」
・TEGO Glide 450: エボニック社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシ
ロキサン「TEGO Glide 450」
【0087】
(顔料分散体の作成)
表1に示す材料をハイスピードミキサー等で均一になるまで撹拌した後、得られたミル
ベースを横型サンドミルで約1時間分散することで、顔料分散体1を作製した。
【0088】
同様の方法で、表1記載の顔料分散体2〜3を得た。
【0089】
【表1】
【0090】
[実施例1]
表2に記載した材料を順次撹拌しながら添加、混合し、光重合開始剤が溶解するまで穏
やかに混合させた後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過を行い、粗大粒子を除去
することでインクジェットインキを得た。
【0091】
[実施例2〜実施例18 、比較例1〜3]
実施例1と同様に表2記載の通りにインクジェットインキを作製した。
【0092】
得られたインキについて、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
[評価項目]
(硬化性(メタハラ))
上記で作製したインキを用い、京セラ社製ヘッド(KJ4A)を搭載したインクジェッ
ト吐出装置により、600×600dpiの印字条件で基材上へ吐出した後、ハリソン東
芝ライティング社製メタルハライドランプ1灯、140W/cm、コンベア速度25〜5
0m/min、1Passで紫外線硬化し、硬化膜を得た。この時、硬化後の膜厚が6μ
mとなるようインク液適量を調整した。印刷速度を変えて印刷した際に、100%ベタ印
字部分が1Passで硬化する印字速度から硬化性の程度を判断した。印刷物を触診し、
インキが手に付かない状態を硬化判断した。評価基準は以下の通りであり、3以上を硬化
性良好とする。印刷基材は、PET K2411(リンテック社製)を用いた。
5:50m/minで硬化する
4:40m/min以上50m/min未満で硬化する
3:30m/min以上40m/min未満で硬化する
2:20m/min以上30m/min未満で硬化する
1:10m/minで硬化しない
【0094】
(硬化性(LED))
上記硬化性(メタハラ)評価において、メタルハライドランプをインテグレーションテ
クノロジー社製、LEDランプ(385nm,10m/sec時積算光量566mW/c
m
2)に変更し、上記硬化性(メタハラ)評価と同様に評価した。
【0095】
(硬化シワ)
上記硬化性評価と同様の装置と基材を用いて、600×600dpi、100%ベタ印
字、コンベア速度30m/minの条件で評価を行った。
【0096】
(硬化シワ評価)
目視にて、下記の視点で点数をつけた。なお、3以上を合格とする。
5:硬化シワなく、光沢がある。
4:硬化シワが発生している面積が10%以下である。
3:硬化シワが発生している面積が10%以上20%未満である。
2:20%以上の面積で硬化シワが発生している。
【0097】
(膜厚6μm濃度)
上記硬化性評価試験時に作成した硬化膜のOD値をX−Rite,Inc.製のX−R
ite 500seriesを使用し、ステータスGの条件にて100%ベタ印字部分の
任意の5箇所を測定し、平均値を求めた。
【0098】
【表2】
【0099】
実施例1〜7と比較例1〜3から、顔料がインクジェットインキの全重量に対して4.
0質量%以上含まれ、かつカーボンブラックを顔料の全重量中に対して60重量%以上含
むことで高濃度かつ高硬化性を有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを提
供できることが分かった。
【0100】
実施例7〜12から、顔料1重量部に対して3〜7重量部の重合開始剤を含有すること
で高濃度かつ高硬化性を有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを提供でき
ることが分かった。
【0101】
実施例13〜14から、重合性モノマーとしてアクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エ
チルとジプロピレングリコールジアクリレートに加えて、単官能あるいは3官能以上の多
官能モノマーを含有した場合も硬化性、硬化シワを極端に損なうことなく高濃度活性エネ
ルギー線硬化型インクジェットインキを提供できることが分かった。特に、多官能モノマ
ーを含有する場合は、硬化性、硬化シワが良好である。
【0102】
実施例15〜17から、添加剤として溶剤や樹脂を含有した場合も硬化性、硬化シワを
極端に損なうことなく高濃度活性エネルギー線硬化型インクジェットインキを提供できる
ことが分かった。
【0103】
実施例1と実施例18から、表面張力調整剤をインキ中に1.0重量%以上含むことに
よって、インキの基材に対する濡れ拡がり性が向上し、高いOD値を得られることが分か
った。
【0104】
以上より、本発明によって、高濃度、高硬化性を有する活性エネルギー線硬化型インク
ジェットインキを提供することができた。