(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッケージの内底面上に配置された第2のMEMSデバイスであって、前記パッケージの底部を介して流入する熱により前記第2のMEMSデバイス内に生ずる温度差を測定する1つ以上のサーモパイルを有する第2のMEMSデバイスを、さらに備え、
前記熱量増加手段として、前記MEMSデバイスと第1の間隔をもって対向する第1天板部、及び、前記第2のMEMSデバイスと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔をもって対向する第2天板部を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の温度差測定装置。
【背景技術】
【0002】
体表面から流出する熱流の大きさを検知してその検知結果から深部体温を測定(算出)する方法として、
図10(A)に示した構成のセンサモジュールを使用するもの(例えば、特許文献1参照)と、
図10(B)に示した構成のセンサモジュールを使用するもの(例えば、特許文献2参照)とが知られている。
【0003】
図10(A)に示したセンサモジュール、すなわち、断熱材の上下面にそれぞれ温度センサが取り付けられた1つの熱流束センサを用いる場合、断熱材の上面側の温度センサにより測定される温度Ta、断熱材の下面側の温度センサにより測定される温度Ttとから、以下の(1)式により深部体温Tbが算出される。
【0004】
Tb=(Tt−Ta)Rx/R1+Tt …(1)
ここで、R1、Rxとは、それぞれ、断熱材の熱抵抗、皮下組織の熱抵抗のことである。
【0005】
図10(A)に示したセンサモジュールを用いる内部温度算出方法は、基本的には、R1及びRxの値として固定値を使用するものとなっている。ただし、Rx値は、場所による違いや個人差がある値であるため、Rx値として固定値を用いて上記式により算出した深部体温Tbには、用いたRx値と実際のRx値との差に応じた測定誤差が含まれることになる。そのため、Tt、Taの時間変化を測定して、測定結果からRxを算出することも行われている(特許文献1参照)。
【0006】
図10(B)に示したセンサモジュールを用いて内部温度を算出する場合、断熱材の熱抵抗が異なる2つの熱流束センサのそれぞれによって、体表面からの熱流束を表す温度差が測定される。断熱材の熱抵抗が異なる2つの熱流束センサにより温度差を測定すれば、以下の2式を得ることが出来る。
【0007】
Tb=(Tt−Ta)Rx/R1+Tt …(2)
Tb=(Tt′−Ta′)Rx/R2+Tt′ …(3)
ここで、R1、R2(<R1)とは、
図10(B)に示してあるように、各熱流束センサの断熱材の熱抵抗のことである。また、Ta、Ttとは、それぞれ、
図10(B)において左側に示してある熱流束センサ(熱抵抗がR1の断熱材が使用されている熱流束センサ)の上面側、下面側の温度センサにより測定される温度のことである。Ta′、Tt′とは、それぞれ、
図10(B)において右側に示してある熱流束センサ(熱抵抗が、R1より小さなR2の断熱材が使用されている熱流束センサ)の上面側、下面側の温度センサにより測定される温度のことである。
【0008】
(2)、(3)式を組み合わせてRxを消去すれば、以下の(4)式を得ることが出来る。
【0009】
【数1】
【0010】
従って、
図10(B)のセンサモジュールによれば、皮下組織の熱抵抗Rxの個人差の影響を受けることなく、深部体温Tbを算出することが出来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図10(A)、(B)に示したセンサモジュールは、Tbの算出に必要な情報を、複数の温度センサにて得るものである。そして、温度センサの精度は、さほど高いものではないため、
図10(A)、(B)に示したセンサモジュールには、熱抵抗及び熱容量が大きな断熱材が使用されている。そのため、これらのセンサモジュールは、応答性が悪い(安定した、深部体温の測定結果が得られるまでに要する時間が長い)ものとなっている。
【0013】
MEMS技術を用いて、幾つかのサーモパイルを作り込んだデバイス(以下、MEMSデバイス/チップと表記する)でも、“Tt−Ta”に相当する温度差(以下、ΔTと表記する)、“Tt′−Ta′”に相当する温度差(以下、ΔT′と表記する)を得ることが出来る。
【0014】
そのようなデバイス(以下、MEMSデバイス又はMEMSチップと表記する)を、ΔTの測定、又は、ΔT及びΔT′の測定に使用すれば、温度差を測定するための部分の熱容量が大きく減少するため、応答性がより良い形で深部体温を測定することが可能となる。ただし、MEMSデバイスのサーモパイルから出力される電圧は小さなものであるため、MEMSデバイスのサーモパイルにより測定される温度差をより大きくできる技術が望まれる。
【0015】
そこで、本発明の課題は、MEMSデバイスのサーモパイルにより測定される温度差をより大きくできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の温度差測定装置は、天面側が開口した有底筒状のパッケージと、前記パッケージの内底面上に配置されたMEMSデバイスであって、前記パッケージの底部を介して流入する熱により前記MEMSデバイス内に生ずる温度差を測定する1つ以上のサーモパイルを有するMEMSデバイスと、前記MEMSデバイスから前記天面側に流出する熱量を増加させる熱量増加手段と、を備える。
【0017】
すなわち、本発明の温度差測定装置は、『前記MEMSデバイスから前記天面側に流出する熱量を増加させる熱量増加手段』を備えている。MEMSデバイスからパッケージの天面(底部とは反対側の面)側に流出する熱量が増加すれば、MEMSデバイスのサーモパイルにより測定される温度差が大きくなる。従って、本発明の温度差測定装置を用いておけば、同じMEMSデバイスを備え、熱量増加手段を備えない内部温度測定装置や熱流束測定装置よりも、MEMSデバイスのサーモパイルにより測定される温度差が大きい内
部温度測定装置や熱流束測定装置を、実現(製造)することができる。また、本発明の温度差測定装置は、有底筒状のパッケージ内にMEMSデバイスを配置した構成を有している。従って、本発明の温度差測定装置を用いておけば、プリント配線板上に直接MEMSデバイスを配置する場合よりも、容易に(製造に要する工程数が少ない形で)、内部温度測定装置や熱流束測定装置を製造できることにもなる。
【0018】
本発明の温度差測定装置における『天面側が開口した有底筒状のパッケージ』は、有底円筒状、有底楕円筒状、有底角筒状等の、底部と当該底部の周囲を囲繞する側壁部とを備えたパッケージであれば良い。本発明の温度差測定装置の熱量増加手段としては、様々な構造を採用することが出来る。例えば、熱量増加手段として、『前記パッケージの天面を覆う、当該天面よりも大きな天板部』や、『前記パッケージの天面を覆う、1つ以上の放熱フィンを有する天板部』を採用しておいても良い。尚、熱量増加手段として、上記のような天板部を採用した場合、天板部の放熱性が向上するため、天板部の温度が下がる。そして、その結果として、MEMSデバイス(MEMSデバイスの1つ以上のサーモパイル)によって測定される温度差が増大することになる。
【0019】
また、熱量増加手段として、『前記MEMSデバイスと所定の間隔をもって対向する赤外線吸収部材』や、そのような赤外線吸収部材と『前記赤外線吸収部材が配設された、前記パッケージの開口を覆う天板部』とを含む構造や、そのような赤外線吸収部材と『前記赤外線吸収部材が配設された、前記パッケージの底部が露出するように前記パッケージを覆うケース』とを含む構造を採用しておいても良い。熱量増加手段として、上記のような構造を採用しておけば、MEMSデバイスの上方に位置する部材(赤外線吸収部材自体や、赤外線吸収部材が配設されている天板部、ケース)への熱伝達が促進され、その結果として、MEMSデバイスにより測定される温度差が増大することになる。
【0020】
天板部を含む熱量増加手段に、『前記天板部と前記パッケージの上端面との間に配置された熱絶縁性部材』を含めておいても良い。この構成を採用しておけば、パッケージの側壁を通った熱による天板部の温度上昇を抑制することが可能となるため、MEMSデバイスにより測定される温度差がさらに増大する。また、光の入射による天板部の温度上昇を抑制するために、本発明の温度差測定装置に、『前記天板部の前記パッケージと対向しない側の面が、光反射面である』構成を採用しておいても良い。
【0021】
また、本発明の温度差測定装置に、『前記パッケージの内底面上に配置された第2のMEMSデバイスであって、前記パッケージの底部を介して流入する熱により前記第2のMEMSデバイス内に生ずる温度差を測定する1つ以上のサーモパイルを有する第2のMEMSデバイスを、さらに備え、前記熱量増加手段として、前記MEMSデバイスと第1の間隔をもって対向する第1天板部、及び、前記第2のMEMSデバイスと前記第1の間隔よりも広い第2の間隔をもって対向する第2天板部を備える』構成を採用しておいても良い。
【0022】
この構成を採用しておけば、第2天板部の温度を第1天板部の温度よりも低くすることが出来る。従って、第2天板部下に位置するMEMSチップにより測定される温度差を大きくすることが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の温度差測定装置を用いれば、MEMSデバイスのサーモパイルにより測定される温度差がより大きい内部温度測定装置等を容易に得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
《第1実施形態》
図1に、本発明の第1実施形態に係る温度差測定装置1を用いられた内部温度測定装置の概略構成図を示す。
【0027】
この内部温度測定装置は、表面近傍に非発熱体が存在する測定対処物(人体等)の内部温度を測定するための装置である。図示してあるように、内部温度測定装置は、プリント回路板30に設けられている貫通孔に温度差測定装置1を挿入した構成を有している。
【0028】
プリント回路板30は、演算回路32a等の各種デバイス32(抵抗、コンデンサ等)をプリント配線板31上に実装したユニットである。演算回路32aは、温度差測定装置1(後述するMEMSチップ20及びASIC26)による温度差、温度の測定結果から、測定対象物の内部温度を算出して出力する回路である。
【0029】
プリント回路板30のプリント配線板31には、温度差測定装置1を挿入するための貫通孔が設けられている。当該貫通孔の周囲には、貫通孔に挿入されたセンサパッケージ10の各リード13と対向するように、複数のランド(図示略)が設けられている。
【0030】
温度差測定装置1は、内部温度の算出に必要とされる値(温度と1つ以上の温度差)を測定する装置である。図示してあるように、温度差測定装置1は、主要な構成要素として、センサパッケージ10と天板15とを備える。
【0031】
センサパッケージ10は、複数のリード13を備えた有底筒状のパッケージ11内に、MEMSチップ20及びASIC26を配置したモジュールである。
以下、センサパッケージ10の構成を具体的に説明する。
【0032】
図2に、パッケージ11の構成を示す。図示してあるように、パッケージ11は、略有底四角筒状の筐体12と、筐体12の対向する側壁12a、12bを貫通する複数のリード13とを備えている。パッケージ11の各リード13の、筐体12下面との間の間隔は、プリント回路板30(プリント配線板31)の貫通孔に温度差測定装置1(センサパッケージ10)の底部側を挿入したときに、温度差測定装置1の下面がプリント回路板30の下面から突出するように(
図1参照)定められている。
【0033】
パッケージ11の筐体12の底部(以下、筐体底部とも表記する)には、伝熱パッド14が配設されている。伝熱パッド14は、筐体底部の伝熱パッド14以外の部分よりも高
熱伝導性の材料(本実施形態では、金属)からなる、当該部分と略同じ厚さの部材である。筐体底部の伝熱パッド14以外の部分の構成材料、及び、筐体12の各側壁の構成材料は、比較的に熱伝導性が悪い材料であれば、同じ材料であっても異なる材料であっても良い。また、パッケージ11の製造手順も特に限定されない。ただし、モールド成形(インサート成形)を用いれば、上記構成を有するパッケージ11を容易に製造することが出来る。従って、筐体12の伝熱パッド14以外の部分の構成材料、及び、筐体12の各側壁の構成材料は、モールド成形によるパッケージ11の製造を可能とするために、同じ樹脂としておくことが好ましい。
【0034】
MEMSチップ20(
図1)は、パッケージ11の筐体底部を介して流入する熱流束によりチップ内に生ずる温度差を測定する1つ以上のサーモパイルを備えるように、MEMS技術を用いて製造された小型な温度差センサ(熱流束センサ)である。
【0035】
MEMSチップ20の具体的な構成は、内部温度を算出するために使用する算出法に応じたものとされる。具体的には、“背景技術”欄で説明したように、内部温度の算出法には、2つの温度差(Tt−Ta 、Tt′−Ta′)を必要とする方法((4)式参照)
と、温度差を1つしか必要としない方法((1)式参照)とがある。
【0036】
内部温度の算出に前者の方法を使用する場合には、ΔT(“Tt−Ta”に相当する温度差)を測定するための1つ以上のサーモパイルと、ΔT′(“Tt′−Ta′”に相当する温度差)を測定するための1つ以上のサーモパイルとを備えたMEMSチップ20が使用される。また、内部温度の算出に後者の方法を使用する場合には、ΔT(1種類の温度差)を測定するための1つ以上のサーモパイルを備えたMEMSチップ20が使用される。
【0037】
ここで、
図3及び
図4を用いて、MEMSチップ20の具体例(MEMSチップ20a、20b)を説明しておくことにする。尚、
図3(A)は、ΔTを測定するためのサーモパイル24aと、ΔT′を測定するためのサーモパイル24bとを備えたMEMSチップ20aの上面図である。
図3(B)は、MEMSチップ20aの、
図3(A)におけるX−X線断面図である。また、
図4(A)は、ΔTを測定するための2つのサーモパイル24cを備えたMEMSチップ20b(ΔT′を測定するためのサーモパイル24を備えていないMEMSチップ20b)の上面図である。
図4(B)は、MEMSチップ20bの、
図4(A)におけるX−X線断面図である。
【0038】
図3、
図4に示してあるように、各MEMSチップ20(20a、20b)は、天面部21と支持部22とを備える。天面部21は、シリコン基板上に各種半導体プロセス(膜形成、レジストパターン形成、エッチング等)を用いて形成される部分である。支持部22は、天面部21を形成したシリコン基板を裏面側からエッチングすることにより形成される部分である。
【0039】
図3(B)、
図4(B)に示してあるように、各MEMSチップ20の支持部22は、天面部21に至る1つの空洞(エッチングされた部分)を有している。以下、支持部22の空洞上に位置している、天面部21の部分のことを、メンブレン部と表記する。また、支持部22の各一点鎖線枠25内の部分(サーモパイル24による測温対象となっている天面部21の部分下に位置している支持部22の部分)のことを、脚部23と表記する。さらに、
図3(A)、
図4(B)における左、右のことを、単に、左、右と表記する。
【0040】
図3(A)、(B)に示してあるように、MEMSチップ20aの天面部21内には、複数の熱電対を直列接続したサーモパイル24a及び24bが設けられている。尚、図示は省略してあるが、各MEMSチップ20の天面部21の上面(
図3(B)、
図4(B)
における上側の面)には、各サーモパイル24の出力を取り出すための電極が設けられている。
【0041】
サーモパイル24aを構成している各熱電対とサーモパイル24bを構成している各熱電対とはほぼ同一の長さのものである。
図3(A)に示してあるように、サーモパイル24aを構成している各熱電対の温接点、冷接点は、それぞれ、MEMSチップ20aの左側の脚部23(支持部22の、左側の一点鎖線枠25内の部分)上、メンブレン部内のMEMSチップ20aの左右方向のほぼ中央部分に配置されている。また、サーモパイル24bを構成している各熱電対の温接点、冷接点は、それぞれ、MEMSチップ20aの右側の脚部23上、メンブレン部内のMEMSチップ20aの左右方向のほぼ中央部分に配置されている。
【0042】
MEMSチップ20の支持部22が有している空洞の左右方向の中心は、MEMSチップ20の左右方向の中心よりも左側に位置している。その結果、MEMSチップ20aの、左側の脚部23の下面から、サーモパイル24aの冷接点群が設けられている天面部21の部分に至る熱経路の熱抵抗は、右側の脚部23の下面からサーモパイル24bの冷接点群が設けられている天面部21の部分に至る熱経路の熱抵抗よりも大きくなっている。
【0043】
従って、MEMSチップ20aは、サーモパイル24aによりΔTが測定され、サーモパイル24bによりΔT′(<ΔT)が測定されるデバイスであることになる。
【0044】
また、
図4と
図3とを比較すれば明らかなように、MEMSチップ20bは、MEMSチップ20aと空洞の位置のみが異なるデバイスとなっている。そして、MEMSチップ20bの空洞の左右方向の中心は、MEMSチップ20の左右方向の中心と一致しているので、MEMSチップ20bは、各サーモパイル24cにより同じ温度差ΔTを測定できるデバイスとなっていることになる。
【0045】
図1に戻って、センサパッケージ10の説明を続ける。
【0046】
ASIC26は、入出力用の複数の電極が、その上面に設けられている集積回路である。ASIC26は、温度センサを内蔵している。また、ASIC26は、温度センサの出力及びMEMSチップ20の各サーモパイル24の出力を増幅する機能と、増幅後の各出力をデジタルデータ化する機能とを有している。このASIC26としては、例えば、絶対温度に比例した電圧を出力するPTAT(Proportional To Absolute Temperature)電圧源(つまり、温度計として機能する電圧源)を備え、PTAT電圧源の構成要素が温度センサとして機能する集積回路を使用することが出来る。
【0047】
ASIC26及びMEMSチップ20は、パッケージ11(筐体12)の伝熱パッド14上に配置される。そして、センサパッケージ10は、MEMSチップ20とASIC26との間と、リード13とASIC26との間とを、ワイヤ・ボンディングにより電気的に接続したものとなっている。
【0048】
以下、本実施形態に係る温度差測定装置1の、センサパッケージ10以外の部分の構成を説明する。
【0049】
図1に示してあるように、温度差測定装置1は、センサパッケージ10の上端面上に配置された熱絶縁性部材17と、熱絶縁性部材17上に配置された天板15と、天板15の下面に配設された赤外線吸収部材16とを備える。
【0050】
熱絶縁性部材17は、熱伝導性が悪い材料(発泡プラスティック等)製の平面視四角環
状の部材である。熱絶縁性部材17は、センサパッケージ10の四角環状の上端面(
図2参照)上に、センサパッケージ10の開口を囲む形で配置できるように形成されている。天板15は、熱伝導性が良い材料(金属、セラミックス等)製の板状部材である。天板15は、センサパッケージ10の上面よりも大きなサイズを有しており、その中心がセンサパッケージ10の上面の中心とほぼ一致するように、熱絶縁性部材17上に配置されている。
【0051】
赤外線吸収部材16は、赤外線吸収機能を有する部材(アンチモンドープ酸化錫微粒子等を含めた樹脂部材等)である。図示してあるように、赤外線吸収部材16は、天板15の下面の、センサパッケージ10の開口と対向する領域内に配設されている。また、赤外線吸収部材16は、センサパッケージ10の開口内に収まる形状を有している。
【0052】
以上、説明したように、本実施形態に係る温度差測定装置1のセンサパッケージ10の開口は、センサパッケージ10の上面よりも大きなサイズの天板15、すなわち、放熱性が高い天板15で覆われている。そのため、温度差測定装置1では、天板15の温度上昇が抑制されることになる。また、温度差測定装置1の天板15とセンサパッケージ10の上端面との間には、熱絶縁性部材17が設けられている。従って、温度差測定装置1では、センサパッケージ10の側壁を通った熱が天板15に伝わることによる天板15の温度上昇も抑制されることになる。そして、天板15の温度が低い方が、MEMSチップ20のから上方に流出する熱量が多くなるのであるから、上記構成によれば、天板の温度上昇が抑制されていない場合よりも各サーモパイル24により測定される温度差を大きくすることが出来る。
【0053】
さらに、温度差測定装置1の天板15の下面には、MEMSチップ20の上面と対向する赤外線吸収部材16が設けられている。そのため、温度差測定装置1では、赤外線吸収部材16により、MEMSチップ20と天板15間の熱伝達が促進されて各サーモパイル24により測定される温度差が増大することにもなる。
【0054】
また、温度差測定装置1は、有底筒状のパッケージ内にMEMSデバイスを配置した構成を有している。従って、温度差測定装置1を用いておけば、プリント配線板上に直接MEMSデバイスを配置する場合よりも、容易に(製造に要する工程数が少ない形で)、内部温度測定装置や熱流束測定装置を製造できることにもなる。
【0055】
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る温度差測定装置の構成を、上記した第1実施形態に係る温度差測定装置1と異なる部分を中心に説明する。
【0056】
図5に、第2実施形態に係る温度差測定装置2の概略構成を示す。この
図5と
図1とを比較すれば明らかなように、本実施形態に係る温度差測定装置2は、温度差測定装置1の天板15を、センサパッケージ10の上面とほぼ同サイズの板状部材に複数の放熱フィン15aを設けた天板15′に置き換えた装置となっている。
【0057】
上記構成を有する天板15′も、天板15と同様に放熱性が高いものである。従って、第2実施形態に係る温度差測定装置2に採用されている構成によっても、MEMSチップ20の各サーモパイル24により測定される温度差を増大させることが出来る。
【0058】
《第3実施形態》
図6に、本発明の第3実施形態に係る温度差測定装置3の概略構成を示す。以下、この図を用いて、第3実施形態に係る温度差測定装置3の構成を、上記した温度差測定装置1と異なる部分を中心に説明する。尚、以下の説明では、
図6における上、下のことを、単
に、上、下と表記する。
【0059】
図6に示してあるように、温度差測定装置3は、プリント回路板30の貫通孔にセンサパッケージ10を挿入した装置と、ケース18と、赤外線吸収部材16とを備える。
【0060】
温度差測定装置3のプリント回路板30、センサパッケージ10は、それぞれ、温度差測定装置1のプリント回路板30、センサパッケージ10と同じものである。赤外線吸収部材16も、温度差測定装置1の赤外線吸収部材16と同じものである。ただし、図示してあるように、赤外線吸収部材16は、ケース18の下面の、センサパッケージ10の開口と対向する部分に配設されている。
【0061】
ケース18は、プリント回路板30の貫通孔にセンサパッケージ10を挿入した装置を、センサパッケージ10の下面が露出する形で収容できる形状の部材である。ケース18は、単一の材料からなるものであっても複数種類の材料からなるものであっても良い。ただし、
図6から明らかなように、ケース18は、上方側の部分が、熱を外気に放出する部材(天板15相当の部材)として機能するものである。従って、ケース18を、単一の材料製のものとする場合には、ケース18の構成材料を、熱伝導性が良く、加工性が良い材料としておくことが好ましい。また、ケース18を、複数種類の材料からなるものとする場合には、ケース18の上方側の部分(例えば、上半分や、赤外線吸収部材16が配設される部分とその周辺の部分)の構成材料を、熱伝導性が良い材料とし、ケース18の残りの部分の構成材料を、熱伝導性が悪い材料としておくことが好ましい。
【0062】
以上、説明したように、本実施形態に係る温度差測定装置3も、温度差測定装置1と同様に、MEMSチップ20の上面と対向する赤外線吸収部材16を備えている。従って、この温度差測定装置3でも、赤外線吸収部材16により、MEMSチップ20とケース18の上方側の部分との間の熱伝達が促進されて各サーモパイル24により測定される温度差が増大することになる。
【0063】
《第4実施形態》
図7に、本発明の第4実施形態に係る温度差測定装置4の概略構成を示す。以下、この図を用いて、第4実施形態に係る温度差測定装置4の構成を、温度差測定装置1と異なる部分を中心に説明する。
【0064】
温度差測定装置4は、ΔT及びΔT′を用いて内部温度を測定する内部温度測定装置の構成要素として使用される装置である。尚、既に説明(定義)したように、ΔT′とは、(4)式における“Tt′−Ta′”に相当する温度差のことであり、ΔTとは、(4)式における“Tt−Ta”に相当する温度差のことである。
【0065】
図7に示してあるように、温度差測定装置4は、センサパッケージ10′と、天板15
1及び15
2と、赤外線吸収部材16
1及び16
2と、熱絶縁性部材17′とを備えている。
【0066】
センサパッケージ10′は、センサパッケージ10(
図1)のMEMSチップ20を、MEMSチップ20
1及び20
2に置き換えたものに相当するモジュールである。MEMSチップ20
1、MEMSチップ20
2は、それぞれ、ΔT′、ΔT(>ΔT′)を測定するためのMEMSチップである。尚、MEMSチップ20
1、20
2としては、例えば、空洞の左右方向の長さをMEMSチップ20b(
図4)より狭めたMEMSチップと、MEMSチップ20bとが使用される。
【0067】
、
図示してあるように、MEMSチップ20
1は、センサパッケージ10′(パッケージ11)の底面を左右方向に二分した二領域中の左側の領域内に配置されている。また、MEMSチップ20
2は、当該二領域中の右側の領域内に配置されている。
【0068】
天板15
1及び15
2は、天板15と同様に、熱伝導性が良い材料製の平板状部材である。赤外線吸収部材16
1及び16
2も、赤外線吸収部材16と同様に、赤外線吸収機能を有する部材である。
【0069】
熱絶縁性部材17′(
図6において、網掛けを付してある部分)は、熱絶縁性部材17と同様に、パッケージ11の側壁を通って熱が天板15
1及び15
2に伝わることを抑制するために設けられている、熱伝導性が悪い材料製の部材である。熱絶縁性部材17′は、天板15
2・MEMSチップ20
2間の間隔が、天板15
1・MEMSチップ20
1間の間隔よりも広くなる位置に、天板15
1、15
2を固定できるものであれば、平面視形状が“日”の字状等の1つの部材であっても、複数の部材の集合体であっても良い。
【0070】
以下、本実施形態に係る温度差測定装置4に、上記構成を採用している理由を説明する。
【0071】
天板(天板15等)の温度は、外気温と一致していることが好ましい。ただし、実際には、センサパッケージの底部を介して温度差測定装置内に流入する測定対象物からの熱で、天板の温度は上昇する。そして、上記構成を採用しておけば、測定対象物からの熱による天板15
2の温度の上昇量が、天板15
1の温度の上昇量よりも小さくなる。すなわち、天板15
2の温度が天板15
1の温度よりも低くなる。
【0072】
そのため、上記構成を採用しておけば、天板15
2下に位置するMEMSチップ20
2により測定される温度差ΔTを大きくすることが出来る。そして、ΔT及びΔT′を用いて内部温度を算出する場合、“ΔT−ΔT′”値が大きな方が内部温度を正確に算出できるので、温度差測定装置4に、上記構成を採用しているのである。
【0073】
以下、各実施形態に係る温度差測定装置について幾つかの事項を補足する。
【0074】
各実施形態に係る温度差測定装置は、各種の変形を行えるものである。例えば、パッケージ11(筐体12)の形状は、有底筒状、つまり、底部と当該底部の周囲を囲繞する側壁部とを備えた形状であれば良い。従って、パッケージ11(筐体12)の形状を、有底四角筒状ではない有底角筒状や、有底円筒状や、有底楕円筒状等にしておいても良い。また、第1〜第3実施形態に係る温度差測定装置1〜3を、熱流束の測定に使用される装置に変形することが出来る。尚、熱流束は、その算出に温度を必要としない値である。従って、各実施形態に係る温度差測定装置を、熱流束の測定に使用される装置に変形する場合には、温度差測定装置から温度の測定機能を除去しておくことが出来る。
【0075】
温度差測定装置内の空気温度が上昇し、内圧が上昇するのを防ぐために、熱絶縁性部材(17、17′)として、空気の出入口として機能する幾つかの溝が上面及び/又は下面に形成されているものや、空気の出入口として機能する幾つかの貫通孔が形成されているものを採用しておいても良い。
【0076】
また、第1、第2、第4実施形態に係る温度差測定装置1、2、4を、天板(15、15
1、15
2)がセンサパッケージ(10、10′)上に直接固定された装置(換言すれば、熱絶縁性部材17、17′が用いられていない装置)に変形しても良い。尚、温度差測定装置4を、天板15
1、15
2がセンサパッケージ10′上に直接固定された装置に変形することは、例えば、上面に段差があるパッケージ11を採用することによって実現
できる。また、温度差測定装置1、2、4を、天板がセンサパッケージ上に直接固定された装置(熱絶縁性部材が用いられていない装置)に変形する場合には、熱絶縁性部材に溝等を設ける代わりに、センサパッケージの上端面や、天板の下面に、空気の出入口として機能する幾つかの溝を設けておいても良い。
【0077】
温度差測定装置1、2、4に、上面が、光(特に赤外光)を反射する光反射面となっている天板を採用しておいても良い。そのような天板を採用しておけば、光の入射による天板の温度上昇が抑制されることになる。従って、上面が光反射面となっている天板を採用しておけば、天板に光が入射しても正確な温度差を測定でき、リフローなどの熱処理時に内部温度が上昇しにくい温度差測定装置1、2、4を得ることが出来る。尚、上面が光反射面となっている天板は、例えば、金属板等の基体上に光反射面(光反射層)を形成することにより実現できる。
【0078】
装置内の空気温度を安定化させるために、各実施形態に係る温度差測定装置(パッケージ11、筐体12)の内面を、黒色の部材、例えば、黒色の塗料、黒色の樹脂で被覆しておいても良い。
【0079】
また、人体の深部体温の測定に使用する場合には、センサパッケージ10の下面に、生体適合性を有する絶縁性のフィルムや樹脂部材等を固定しておいても良い。また、測定対象物との間の熱的接触性を良好なものとするために、下面が、中央部分が下方に突出した曲面状になるように、または、下面に曲面からなる凸構造が複数存在するように、センサパッケージを製造しておいても良い。
【0080】
また、温度差測定装置3(
図6)は、測定対象物からの熱が、ケース18、プリント回路板30及びリード13を通って、センサパッケージ10内に流入し得る装置である。リード13等を通ってセンサパッケージ10内に熱が流入すると測定誤差が大きくなるので、リード13等を通ってセンサパッケージ10内に流入する熱量を低減するために、温度差測定装置3を、
図8に示した構成を有する温度差測定装置3′に変形しても良い。
【0081】
すなわち、温度差測定装置3を、プリント回路板30が、ケース18の内底面から離れように、部材19aによってケース18の上部側内面に対して固定された温度差測定装置3′に変形しても良い。尚、
図8に示してある部材19bは、プリント回路板30及び/又はケース18が変形して、プリント回路板30が部材19aから外れないことを防ぐための部材である。また、部材19bを、プリント回路板30の下面に対して固定されていない部材としてあるのは、部材19bを介してプリント回路板30にケース18からの熱の流入するのを防ぐためである。
【0082】
筐体底部の、MEMSチップ20及びASIC26が配置される部分を、高熱伝導性の伝熱パッド14(
図1参照)としているのは、原則として、筐体底部の厚さ方向の熱伝導性が良い方が温度差を正確に測定できるためである。ただし、ΔT及びΔT′から内部温度を算出する場合には、伝熱パッド14の横方向(厚さ方向に垂直な方向)の熱伝導性が良いが故に、内部温度の推定誤差(内部温度の算出結果と実際の内部温度の差)が大きくなってしまうこともある。従って、筐体底部に伝熱パッド14を設けることなく、筐体底部を、熱伝導性が比較的に悪い材料で形成しておいても良い。
【0083】
また、筐体底部の横方向の熱伝導により内部温度の推定誤差が増大するのを防ぐために、ΔT測定用のサーモパイル24とΔT′測定用のサーモパイル24とを有するMEMSチップ20が用いられている温度差測定装置では、筐体底部を、MEMSチップ20のΔT測定用のサーモパイル24の温接点側の脚部23下と、ΔT′測定用のサーモパイル24の温接点側の脚部23下のそれぞれに、伝熱パッド14を設け、それらの伝熱パッド1
4間を熱伝導性が悪い部材で隔離しておいても良い。また、ΔT測定用のMEMSチップ20とΔT′測定用のMEMSチップ20とを備えた温度差測定装置、例えば、温度差測定装置4(
図7)では、
図9に示してあるように、各MEMSチップ20下に伝熱パッド14を設け、それらの伝熱パッド14間を熱伝導性が悪い部材19で隔離しておいても良い。