特許第6398814号(P6398814)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6398814メタロセン錯体およびオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398814
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】メタロセン錯体およびオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20180920BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20180920BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20180920BHJP
   C08F 2/34 20060101ALI20180920BHJP
   C07F 17/00 20060101ALN20180920BHJP
   C07F 7/08 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   C07F19/00CSP
   C08F4/6592
   C08F10/06
   C08F2/34
   !C07F17/00
   !C07F7/08 S
【請求項の数】12
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2015-53494(P2015-53494)
(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-193605(P2015-193605A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-57557(P2014-57557)
(32)【優先日】2014年3月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏典
(72)【発明者】
【氏名】樫本 雅美
(72)【発明者】
【氏名】中野 正人
(72)【発明者】
【氏名】内野 英史
(72)【発明者】
【氏名】田谷野 孝夫
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163423(JP,A)
【文献】 特開2012−006903(JP,A)
【文献】 特開2012−121882(JP,A)
【文献】 特開2013−124228(JP,A)
【文献】 特開平08−239416(JP,A)
【文献】 特表2004−502698(JP,A)
【文献】 特表2007−517961(JP,A)
【文献】 ロシア国特許出願公開第02160277(RU,A)
【文献】 ロシア国特許出願公開第02160276(RU,A)
【文献】 特開平11−060622(JP,A)
【文献】 特開2014−193846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式[I]で表されるメタロセン錯体。
【化1】
(式[I]中、Mは、Ti、Zr又はHfであり、Qは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子であり、XとXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。RとR11は、互いに同じでも異なっていてもよく、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基である。RとR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。RとR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。また、R、R、R17及びR18は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基である。また、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びR16は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。Aは、それが結合するQと共に環を形成する炭素数3〜の2価の炭化水素基であり、不飽和結合を含んでいてもよい。R10は、Aの置換基であって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。mは0〜の整数を示す。mが2以上の場合、R10同士が連結して新たな環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式[I]中、前記RとR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のメタロセン錯体。
【請求項3】
前記一般式[I]中、前記RとR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のメタロセン錯体。
【請求項4】
前記一般式[I]中、前記mが0〜6の整数であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のメタロセン錯体。
【請求項5】
前記一般式[I]中、前記R、R、R、R12、R16及びR19は、水素原子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のメタロセン錯体。
【請求項6】
前記一般式[I]が下記の一般式[II]で示されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のメタロセン錯体。
【化2】
(式[II]中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R30、R31、R32及びR33は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基または炭素数6〜18のアリール基である。また、R30、R31、R32及びR33は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。M、X、X、Q、R〜R10、R12〜R19及びmは、各々前記一般式[I]の記載と同義である。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のメタロセン錯体を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【請求項8】
下記の(A)、(B)及び(C)の各成分を含むことを特徴とする請求項7に記載のオレフィン重合用触媒。
成分(A):請求項1〜6のいずれか1項に記載のメタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
【請求項9】
前記成分(B)がイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とする請求項8に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒を使用して、オレフィンの重合または共重合を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項11】
プロピレン系重合体を製造する方法であって、請求項7〜9のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、
(i)全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜100重量%、エチレン又はα−オレフィンを0〜10重量%で重合させる工程、及び
(ii)全モノマー成分に対して、プロピレンを10〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4以上のα−オレフィンを10〜90重量%で重合させる工程、
を含むことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
プロピレン系重合体を製造する方法であって、請求項7〜9のいずれか1項に記載のオレフィン重合用触媒を用いて、
(i)全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜100重量%、エチレン又はα−オレフィンを0〜10重量%で、プロピレンを溶媒として用いるバルク重合又はモノマーをガス状に保つ気相重合を行う第一工程、及び
(ii)全モノマー成分に対して、プロピレンを10〜90重量%、エチレン又はα−オレフィンを10〜90重量%で、気相重合を行う第二工程、
を含むことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規メタロセン錯体およびオレフィン重合体の製造方法に関し、さらに詳しくは、高融点のポリプロピレンを製造することができ、プロピレンとエチレンとの共重合において、エチレンの取り込み効率が高く、高い活性でエチレン−プロピレン共重合ゴム成分を製造できる、特定の位置に置換基を導入した新規メタロセン錯体およびオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れることから、各種成形分野に広く用いられている。しかしながら、プロピレン単独重合体あるいは少量のα−オレフィンとのランダム共重合体は、剛性は高いが、耐衝撃性が不足する場合がある。
そのため、プロピレン単独重合体に、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)等のゴム成分を添加する方法や、プロピレンの単独重合後に、引き続いてプロピレンとエチレンあるいはα−オレフィンを共重合させゴム成分を含有させた、いわゆるインパクトコポリマーを製造することにより、耐衝撃性を改良することが行われてきた。さらに、このインパクトコポリマーのゴム成分の量を増加させることにより、柔軟性や耐衝撃性を向上させることができる。
【0003】
また、これとは別の問題点として、従来のチーグラー・ナッタ型触媒の存在下で重合して得られたインパクトコポリマーは、触媒の性質上、低分子量成分(オリゴマー成分など)が存在する。特に近年では、流動性を上げて、得られたインパクトコポリマーの成形性をより改善する傾向にある。
しかしながら、ゴム部分について、あまり流動性を上げると、それに伴って低分子量成分の生成割合も増加し、この低分子量成分は、加工時の発煙、異臭等の発生原因となるばかりか、加工後でも、臭気や味に悪影響を与え、べたつきによるブロッキング性の悪化など、様々な問題の原因となることが知られている。重合ポリマーの粉体性状が悪化すると、安定した生産ができなくなり、問題である。一方で、結晶性ポリプロピレンとゴム部分の平均分子量の差が大きくなると、成形品中のゲルが多くなる、成形品の線膨張率が高くなる、といった問題が発生する。
【0004】
一方、従来のチーグラー型触媒系とは異なるメタロセン系の触媒を用いて、プロピレンを重合してアイソタクチックポリプロピレンが得られることは知られている。また、同様な触媒を用いて、プロピレンの単独重合後に、引き続いてエチレンとプロピレンを共重合させ、インパクトコポリマーを製造することも知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。さらに、剛性と耐衝撃性の良好なインパクトコポリマーについても、開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特に、インパクトコポリマーにおいては、高い耐衝撃性を発現するためには、例えば、より低いガラス転移温度を示すことが必要であり、これを満足するには、プロピレンとエチレンあるいはα−オレフィンとの共重合を、それぞれの含量がある範囲を満たすように行うことが好ましいとされている(例えば、非特許文献1参照。)。
そして、上記のメタロセン系の触媒を構成する遷移金属化合物は、既に多くの例が知られている。特にインパクトコポリマーの剛性を向上させるために、高い融点を有するホモポリプロピレンを与える遷移金属化合物も、既に知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【0005】
しかしながら、こうしたプロピレン系インパクトコポリマーをメタロセン系触媒で製造する際、プロピレンと他のコモノマーとの反応性の相違に伴って、次のような技術的な問題が起こっている。
すなわち、メタロセン系の触媒を用い、従来の製造法により、プロピレン単独重合の後、プロピレンとエチレンあるいはα−オレフィンの共重合を行うと、重合雰囲気中プロピレン/(エチレンまたはα−オレフィン)のガス組成比と、その雰囲気下で重合されたプロピレン量/(エチレン量またはα−オレフィン量)の重合量比が大きく異なり、重合体の(エチレンまたはα−オレフィン)の重合量が少なくなる場合が発生する。つまり、所望のエチレンあるいはα−オレフィンの含量を有する共重合体を得るためには、共重合体中の含量から大きく異なるモノマー比のガスを供給して重合することが必要となり、製造上問題があった。さらに、極端な場合には、重合装置の制約上、所望の含量を有する共重合体が製造できないこともあった。
【0006】
このように、メタロセン錯体を用いた触媒では、エチレン/プロピレン混合ガスと重合体のエチレン含量の差が大きく、これを解消したエチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率の高い製造法の開発が、望まれている。
加えて、これまで知られているメタロセン触媒を用いた場合には、プロピレンとエチレンあるいはα−オレフィンの共重合を気相で行う場合、得られる共重合体の分子量が低いという問題があった。プロピレン系インパクトコポリマーにおいて、高い耐衝撃性を発現するためには、共重合体の分子量がある一定以上の値を有することも必要であり、高い分子量の共重合体を製造できる製造法も望まれている。また、単位ポリマーあたりの触媒単価を低下させるためや、ゴム部の含量を高くするため、ゴム活性の高い触媒の開発も望まれている。
さらに、既に上述した通り、インパクトコポリマーの剛性を向上させるために、高い融点を有するホモポリプロピレンが必要とされる。ところが、メタロセン錯体を用いた触媒において、既に述べたエチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率を向上させ、かつ、高い分子量の共重合体を製造できる触媒においては、未だ高い融点を有するホモポリプロピレンを製造できる触媒として、十分な性能を発現する触媒は知られていない。
【0007】
既に、特許文献5には、インデニル環の5位に置換基を有し、インデニル環の2位に置換基を有していてもよいフリル基またはチエニル基を有するメタロセン錯体が開示されており、比較的高いエチレンの取り込み効率と、高い分子量の共重合体を提供し得るメタロセン錯体を開示している。
また、特許文献6には、インデニル環の5位と6位が環状構造の置換基を有し、インデニル環の2位に置換基を有していてもよいフリル基またはチエニル基を有するメタロセン錯体が開示されており、比較的高いエチレンの取り込み効率と、高い分子量の共重合体を提供し得るメタロセン錯体を開示している。
しかし、特許文献5、特許文献6で開示されているメタロセン錯体は、活性の点で十分に高いものとはなっておらず、さらに高性能のメタロセン錯体の創出が望まれている。また融点に関しても、高い方が剛性を向上させることができ好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−337308号公報
【特許文献2】特開平6−287257号公報
【特許文献3】特開2003−206325号公報
【特許文献4】特開平11−240909号公報
【特許文献5】特開2010−163423号公報
【特許文献6】特開2012−121882号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Polymer、2001年、42巻、9611頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、従来のメタロセン触媒よりも、プロピレンをモノマーとして含むオレフィンの共重合において、コモノマーであるエチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率がよく、高活性でホモポリプロピレンおよびゴム成分を重合することができ、さらに、プロピレンの単独重合において、高い融点を有するホモポリプロピレンを製造できるメタロセン錯体およびそれを用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、メタロセン系重合触媒において、メタロセン錯体としての遷移金属化合物の配位子構造について、その基本骨格に起因する対称性、触媒活性点でのポリマー形成のメカニズムや、置換基の立体効果及び電子的効果が配位モノマーや成長ポリマーに与える影響という観点からの経験則を考慮しながら、(i)エチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率を高めつつ、かつ(ii)活性が向上する手法を求めて、さらに加えて、(iii)プロピレンの単独重合においてプロピレンモノマーの高い立体規則性重合を行わせることで高い融点のホモポリプロピレンを得ることを目指して、多面的に考察し実験的な探索を行ったところ、その過程において、ある特定の立体的な構造を有する遷移金属化合物を形成すると、上述した三つの触媒性能を、いずれもバランスよく発現する触媒機能が顕現されることを見出し、本発明を完成するに至った。
つまり、本発明者らは、上記課題を解決するため、特定の置換基を有するメタロセン錯体、特に、2つのインデニル環部分を架橋する炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子上の置換基が環状構造を有し、かつ、インデニル環の5位にも置換基を有し、インデニル環の2位には置換基を有していてもよいフリル基または置換基を有していてもよいチエニル基を有するメタロセン錯体を見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の一般式[I]式で表されるメタロセン錯体が提供される。
【0013】
【化1】
【0014】
(式[I]中、Mは、Ti、Zr又はHfであり、Qは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子であり、XとXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。RとR11は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基であって、RとR11の片方または両方は、必ず、フリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基のいずれかである。RとR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であって、RとR17のどちらかが水素原子の場合は、片方は、水素原子以外の置換基である。RとR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。また、R、R、R17及びR18は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基である。また、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びR16は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。Aは、それが結合するQと共に環を形成する炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、不飽和結合を含んでいてもよい。R10は、Aの置換基であって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。mは0〜24の整数を示す。mが2以上の場合、R10同士が連結して新たな環構造を形成してもよい。)
【0015】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記一般式[I]中、RとR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とするメタロセン錯体が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、前記一般式[I]中、RとR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基であることを特徴とするメタロセン錯体が提供される。
【0016】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記一般式[I]中、Aは、炭素数3〜6の2価の炭化水素基であって、4〜7員環を形成し、mが0〜6の整数であることを特徴とするメタロセン錯体が提供される。
【0017】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれか1つの発明において、前記一般式[I]中、R、R、R、R12、R16及びR19は、水素原子であることを特徴とするメタロセン錯体が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれか1つの発明において、前記一般式[I]が下記の一般式[II]で示されることを特徴とするメタロセン錯体が提供される。
【0018】
【化2】
【0019】
(式[II]中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R30、R31、R32及びR33は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基または炭素数6〜18のアリール基である。また、R30、R31、R32及びR33は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。M、X、X、Q、R〜R10、R12〜R19及びmは、各々前記一般式[I]の記載と同義である。)
【0020】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれか1つの発明に係るメタロセン錯体を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
さらに、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、下記の(A)、(B)及び(C)の各成分を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分(A):第1〜6のいずれか1つの発明に係るメタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
【0021】
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、成分(B)がイオン交換性層状珪酸塩であることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
【0022】
また、本発明の第10の発明によれば、第7〜9のいずれか1つの発明に係るオレフィン重合用触媒を使用して、オレフィンの重合または共重合を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0023】
また、本発明の第11の発明によれば、プロピレン系重合体を製造する方法であって、第7〜9のいずれか1つの発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて、
(i)全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜100重量%、エチレン又はα−オレフィンを0〜10重量%で重合させる工程、及び
(ii)全モノマー成分に対して、プロピレンを10〜90重量%、エチレン及び/又は炭素数4以上のα−オレフィンを10〜90重量%で重合させる工程、を含むことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第12の発明によれば、プロピレン系重合体を製造する方法であって、第7〜9のいずれか1つの発明に係るオレフィン重合用触媒を用いて、
(i)全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜100重量%、エチレン又はα−オレフィンを0〜10重量%で、プロピレンを溶媒として用いるバルク重合又はモノマーをガス状に保つ気相重合を行う第一工程、及び
(ii)全モノマー成分に対して、プロピレンを10〜90重量%、エチレン又はα−オレフィンを10〜90重量%で、気相重合を行う第二工程、を含むことを特徴とするプロピレン系重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明のメタロセン錯体を重合触媒として用いることにより、従来のメタロセン化合物に比べて、エチレンまたはα−オレフィンの取り込み効率がよく、高活性でホモポリプロピレン、および特に高活性でエチレン/プロピレン共重合体を製造することができる。さらに、プロピレンの単独重合において、高い融点を有するホモポリプロピレンを製造できる。
これにより、柔軟性や耐衝撃性に優れ、かつ高い剛性を有するプロピレン系重合体を効率的に製造することができ、本発明の新規メタロセン錯体およびオレフィン重合体の製造方法は、工業的な観点から、非常に有用である。例えば、ポリプロピレン成分とプロピレン・α−オレフィン共重合体成分とを多段重合して製造されるプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体において、剛性の高いポリプロピレン成分と、α−オレフィンの取り込み効率がよく、高い活性でのホモポリプロピレンおよびプロピレン・α−オレフィン共重合体の重合を同時に達成できるため、剛性と耐衝撃性とがバランスよく向上したプロピレン・α−オレフィンブロック共重合体を生産性よく得られる。
【0025】
本発明のメタロセン錯体が、上記の本発明の効果を奏することについて、以下に考察する。
すなわち、本発明の基本的構成を成すメタロセン錯体は、新規な遷移金属化合物であり、その配位子の電子的かつ立体的な構造に特徴を有し、それによって、エチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率がよく、高い活性でのホモポリプロピレンおよびプロピレン・α−オレフィン共重合体の重合ができ、さらに、プロピレンの単独重合において高い融点を有するホモポリプロピレンをもたらす触媒機能が顕現される。
そのメタロセン錯体は、構造が上記の一般式[I]で表される遷移金属化合物からなるものであって、本発明において、オレフィン重合用触媒の触媒成分として使用され、助触媒などと組み合わされてα−オレフィン重合用触媒を形成する。
【0026】
かかる本発明の遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒成分とすることにより、後述の実施例と比較例の対比により実証される通り、エチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率がよく、高活性で重合することができ、高い活性でのホモポリプロピレンおよびプロピレン・α−オレフィン共重合体の重合ができ、さらに、プロピレンの単独重合において、高い融点を有するホモポリプロピレンを与えるα−オレフィン重合用メタロセン触媒を実現することができる。
その理由は、必ずしも明らかではないが、本発明における一般式[I]で示される遷移金属化合物は、2つのインデニル環部分を架橋する炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子上の置換基が環状構造を有し、かつ、インデニル環の5位にも置換基を有し、インデニル環の2位には置換基を有していてもよいフリル基または置換基を有していてもよいチエニル基を有した特異な構造であることを基本的な特徴としており、こうした特徴が本発明の特異性をもたらすものと、推察することができる。
特に、インデニル環の5位に置換基を配置し、架橋部を環状とすることで、2つのインデニル環の角度が最適化されると同時に、インデニル環の2位に位置するフリル基などとインデニル環との角度が適度に調節され、該フリル基などが配位場に対して、最適な立体効果を発現できると考えられる。
この結果、インデニル環の2位のフリル基などの置換基の立体効果が、プロピレンの挿入反応に対しては、選択的なプロピレン配位を可能にし、高い立体規則性重合を発現する優れた効果を奏していると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明のメタロセン錯体および該メタロセン錯体(又はメタロセン化合物)を用いたプロピレン系重合体の製造方法などについて、項目毎に、詳細に説明する。
【0028】
1.メタロセン錯体
本発明のメタロセン錯体は、下記の一般式[I]で表される特定の置換基を有するメタロセン錯体である。
【0029】
【化3】
【0030】
(式[I]中、Mは、Ti、Zr又はHfであり、Qは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子であり、XとXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。RとR11は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基であって、RとR11の片方または両方は、必ず、フリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基のいずれかである。RとR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であって、RとR17のどちらかが水素原子の場合は、片方は、水素原子以外の置換基である。RとR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。また、R、R、R17及びR18は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基である。また、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びR16は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。Aは、それが結合するQと共に環を形成する炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、不飽和結合を含んでいてもよい。R10は、Aの置換基であって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。mは0〜24の整数を示す。mが2以上の場合、R10同士が連結して新たな環構造を形成してもよい。)
【0031】
一般式[I]において、炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
また、炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
また、炭素数6〜18のアリール基には、炭素数1〜6の炭化水素基が置換されていてもよく、具体例としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、トリメチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジt−ブチルフェニル基、ビフェニリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などを挙げることができる。
【0032】
一般式[I]において、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子を挙げることができ、また、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジ−i−プロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基などを挙げることができる。
また、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基の骨格上の水素原子に、ハロゲン原子が置換されたものである。具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,1,1−テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、5−クロロペンチル基、5,5,5−トリクロロペンチル基、5−フルオロペンチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6−クロロヘキシル基、6,6,6−トリクロロヘキシル基、6−フルオロヘキシル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基を挙げることができる。
【0033】
一般式[I]において、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基とは、具体的には、(トリメチルシリル)メチル基、(トリエチルシリル)メチル基、(t−ブチルジメチルシリル)メチル基、(トリメチルシリル)エチル基を挙げることができる。
【0034】
一般式[I]において、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基とは、異なっていてもよい炭素数1〜6の炭化水素基3個が珪素原子上に置換されている置換基であり、炭素数1〜6の炭化水素基とは、一般式[I]中の炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルケニル基、およびフェニル基を含み、フェニル基上に置換基を有していてもよい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリビニルシリル基、トリアリルシリル基、トリフェニルシリル基を挙げることができる。
【0035】
一般式[I]において、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基の具体例とは、前記炭素数6〜18のアリール基の水素原子をハロゲン原子に置換させたものであり、具体的には、2−、3−及び4−置換の各フルオロフェニル基、2−、3−及び4−置換の各クロロフェニル基、2−、3−及び4−置換の各ブロモフェニル基、2,4−、2,5−、2,6−及び3,5−置換の各ジフルオロフェニル基、2,4−、2,5−、2,6−及び3,5−置換の各ジクロロフェニル基、2,4,6−、2,3,4−、2,4,5−及び3,4,5−置換の各トリフルオロフェニル基、2,4,6−、2,3,4−、2,4,5−及び3,4,5−置換の各トリクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタクロロフェニル基、3,5−ジメチル−4−クロロフェニル基、3,5−ジクロロ−4−ビフェニリル基などが挙げられる。
【0036】
一般式[I]において、フリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基の具体例としては、2−フリル基、2−(5−メチルフリル)基、2−(5−エチルフリル)基、2−(5−n−プロピルフリル)基、2−(5−i−プロピルフリル)基、2−(5−t−ブチルフリル)基、2−(5−トリメチルシリルフリル)基、2−(5−トリエチルシリルフリル)基、2−(5−フェニルフリル)基、2−(5−トリルフリル)基、2−(5−フルオロフェニルフリル)基、2−(5−クロロフェニルフリル)基、2−(4,5−ジメチルフリル)基、2−(3,5−ジメチルフリル)基、2−ベンゾフリル基、3−フリル基、3−(5−メチルフリル)基、3−(5−エチルフリル)基、3−(5−n−プロピルフリル)基、3−(5−i−プロピルフリル)基、3−(5−t−ブチルフリル)基、3−(5−トリメチルシリルフリル)基、3−(5−トリエチルシリルフリル)基、3−(5−フェニルフリル)基、3−(5−トリルフリル)基、3−(5−フルオロフェニルフリル)基、3−(5−クロロフェニルフリル)基、3−(4,5−ジメチルフリル)基、3−ベンゾフリル基、2−チエニル基、2−(5−メチルチエニル)基、2−(5−エチルチエニル)基、2−(5−n−プロピルチエニル)基、2−(5−i−プロピルチエニル)基、2−(5−t−ブチルチエニル)基、2−(5−トリメチルシリルチエニル)基、2−(5−トリエチルシリルチエニル)基、2−(5−フェニルチエニル)基、2−(5−トリルチエニル)基、2−(5−フルオロフェニルチエニル)基、2−(5−クロロフェニルチエニル)基、2−(4,5−ジメチルチエニル)基、2−(3,5−ジメチルチエニル)基、2−ベンゾチエニル基、3−チエニル基、3−(5−メチルチエニル)基、3−(5−エチルチエニル)基、3−(5−n−プロピルチエニル)基、3−(5−i−プロピルチエニル)基、3−(5−t−ブチルチエニル)基、3−(5−トリメチルシリルチエニル)基、3−(5−トリエチルシリルチエニル)基、3−(5−フェニルチエニル)基、3−(5−トリルチエニル)基、3−(5−フルオロフェニルチエニル)基、3−(5−クロロフェニルチエニル)基、3−(4,5−ジメチルチエニル)基、3−ベンゾチエニル基、などを挙げることができる。
【0037】
一般式[I]において、Mは、Ti、Zr又はHfであり、好ましくはZr、Hfであり、特に好ましくはZrである。Qは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子であり、好ましくは珪素原子、ゲルマニウム原子である。
【0038】
とXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数1〜6のアルキル基で置換されたアミノ基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。
これらの中でも、ハロゲン原子、炭素数1〜6の炭化水素基が好ましく。具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、エチル基、i−ブチル基、フェニル基が特に好ましい。
【0039】
とR17は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基であって、RとR17のどちらかが水素原子の場合は、片方は、水素原子以外の置換基である。RとR17は、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。その中で、RとR17は、メチル基がより好ましい。
【0040】
とR18は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。RとR18は、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキル基である。その中で、RとR18は、メチル基がより好ましい。
【0041】
、R、R17及びR18は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。R、R、R17及びR18は、好ましくは、5又は6員環を形成するものである。
【0042】
、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16及びR19は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基である。
及びR19は、インデニル基上の置換基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0043】
、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びR16は、インデニル基の4位上のフェニル基の置換基であり、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基である。また、R、R、R12及びR16は、好ましくは水素原子である。
また、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15及びR16は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
具体的には、インデニル環の4位の置換基として、1−ナフチル基、2−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチル基、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などを挙げることができる。
【0044】
とR11は、インデニル環の2位の置換であり、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フリル基、チエニル基、置換基を有しているフリル基または置換基を有しているチエニル基であって、RとR11の片方または両方は、必ず、フリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基のいずれかである。
とR11の置換基として、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、置換基を有していてもよいフリル基、又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、炭素数1〜6のアルキル基の中で好ましいのは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基であり、特に好ましくは、メチル基である。
また、RとR11の置換基であるフリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基として、特に好ましいものは、下記式[III]で表すことができる。
【0045】
【化4】
【0046】
(式[III]中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R30及びR31は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基または炭素数6〜18のアリール基である。また、R30及びR31は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。)
【0047】
式[III]中、R31の置換基として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基である。R30の置換基として、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基である。
【0048】
また、一般式[I]において、RとR11としては、好ましくはフリル基、チエニル基、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基であり、より好ましくは、エチレンの取り込み効率が高い点で、置換基を有するフリル基または置換基を有するチエニル基であり、さらに好ましくは置換基を有するフリル基である。
【0049】
Aは、それが結合するQと共に環を形成する炭素数3〜12の2価の炭化水素基であり、不飽和結合を含んでいてもよい。また、Aは、炭素数3〜6の2価の炭化水素基であって、4〜7員環を形成することが好ましく、さらに、Aは、炭素数3又は4の2価の炭化水素基であって、4又は5員環を形成することが特に好ましい。
【0050】
10は、Aの置換基であって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、トリアルキルシリル基を有する炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基、炭素数6〜18のアリール基または炭素数6〜18のハロゲン含有アリール基である。R10は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0051】
mは0〜24の整数を示し、mが2以上の場合、R10同士が連結して新たな環構造を形成してもよい。mとしては、好ましくは0〜6の整数であり、さらに好ましくはmは0である。
【0052】
また、本発明のメタロセン錯体は、より具体的には、下記一般式[II]で表される特定の置換基を有するメタロセン錯体である。
【0053】
【化5】
【0054】
(式[II]中、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、R30、R31、R32及びR33は、互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロゲン含有アルキル基、炭素数1〜6の炭化水素基を有するシリル基または炭素数6〜18のアリール基である。また、R30、R31、R32及びR33は、隣接する置換基双方で5〜7員環を構成してもよく、該5〜7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。M、X、X、Q、R〜R10、R12〜R19及びmは、各々前記一般式[I]の記載と同義である。)
【0055】
一般式[II]において、M、X、X、Q、R、R、R、R、R、R、R、R、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R10及びmは、一般式[I]と同じ置換基である。
Zは、酸素原子または硫黄原子であり、特に好ましくは酸素原子である。
31、R33の置換基として、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基である。R30、R32の置換基として、好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0056】
メタロセン化合物の具体例:
本発明のメタロセン錯体の具体例を以下に示す。
【0057】
・QとAが4員環を形成し、5−メチルインデニル骨格の具体例
(1)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(2)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(3)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(4)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(5)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(6)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−チエニル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(7)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(8)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(9)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(10)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(11)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(12)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(13)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジt−ブチルフェニル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(14)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(15)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(16)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
【0058】
・QとAが4員環を形成し、5,6−ジメチルインデニル骨格の具体例
(17)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(18)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(19)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(20)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(21)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(22)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−チエニル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(23)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(24)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(25)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(26)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(27)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(28)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(29)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジt−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(30)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(31)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(32)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
【0059】
・QとAが4員環を形成し、インダセニル骨格の具体例
(33)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(34)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(35)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(36)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(37)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−フェニル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(38)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−チエニル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(39)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−チエニル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(40)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−フルオロフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(41)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−クロロフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(42)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−メチルフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(43)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(44)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(45)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジt−ブチルフェニル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(46)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(1−ナフチル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(47)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2−ナフチル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(48)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−ビフェニリル)−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(49)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(50)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
【0060】
・QとAが4員環を形成し、R及びR11が異なる具体例
(51)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2,5−ジメチル−4−フェニル−1−インデニル]ジルコニウム
(52)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2−(2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(53)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
【0061】
・QとAが4員環を形成し、RとR17及び/又はRとR18が異なる具体例
(54)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1−インデニル]ジルコニウム
(55)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
(56)ジクロロシラシクロブチレン[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル][2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
【0062】
・QとAが5員環を形成する具体例
(57)ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(58)ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5−メチル−1−インデニル]ジルコニウム
(59)ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
(60)ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
【0063】
この他にも、例示した化合物の中心金属Mがジルコニウム原子の代わりにハフニウム原子に代わった化合物、X、Xが例示の塩素原子の代わりに、片方、もしくは両方が臭素原子、ヨウ素原子、メチル基、フェニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などに代わった化合物も、例示することができる。
【0064】
メタロセン化合物の合成法:
本発明のメタロセン錯体(化合物)は、置換基ないし結合の様式によって、任意の方法によって合成することができる。代表的な合成経路の一例を下記に示す。
【0065】
【化6】
【0066】
上記合成経路において、化合物1とフェニルボロン酸を、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行うことにより、化合物2が得られる。化合物2から化合物3の臭素化は、文献(J.Org.Chem.1982,47,705−709)記載の方法などにより行うことができ、化合物2にN−ブロモスクシンイミドを水存在下で反応させ、p−トルエンスルホン酸などの酸により脱水することにより得られる。化合物3と5−メチル−2−フリルボロン酸を、パラジウム触媒の存在下でカップリング反応を行うことにより化合物4が得られる。化合物5の架橋体は、ブチルリチウムなどで化合物4をアニオン化したあと、1,1−ジクロロシラシクロブタンとの反応で化合物5が得られる。化合物5を2等量のn−ブチルリチウムなどでジアニオン化した後、四塩化ジルコニウムとの反応でメタロセン化合物6が得られる。
置換基を導入したメタロセン化合物の合成は、対応した置換原料を使用することにより合成することができ、5−メチル−2−フリルボロン酸のかわりに、対応するボロン酸、たとえば4,5−ジメチル−2−フリルボロン酸、2−チエニルボロン酸などを用いることにより、対応する2位置換基(R、R11)を導入することができ、2位置換基(R、R11)にアルキル基を導入する場合は、文献(J.Org.Chem.1984,49,4226)のように、化合物3にグリニャール試薬をNi触媒下で反応させることにより、導入することができる。
2つのインデニル環上の置換基が異なるメタロセン化合物の合成は、異なる置換インデンを、順に1,1−ジクロロシラシクロブタンなどと反応させることにより、架橋することができる。また、架橋時に含窒素化合物(例えばメチルイミダゾール)など架橋助剤を存在させておいてもよい。
【0067】
2.オレフィン重合用触媒
本発明のメタロセン錯体は、オレフィン重合用触媒成分を形成し、該触媒成分は、オレフィン重合用触媒に用いることができる。例えば、該メタロセン錯体を成分(A)として含む、次に説明するオレフィン重合用触媒として、用いることが好ましい。
【0068】
(1)オレフィン重合用触媒の成分
本発明のオレフィン重合用触媒としては、下記(A)、(B)及び(C)成分を含むものである。
成分(A):一般式[I]又は[II]で示されるメタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩
成分(C):有機アルミニウム化合物
【0069】
(2)各成分について
成分(A)の一般式[I]又は[II]で示されるメタロセン錯体は、同一又は異なる一般式[I]又は[II]で示される化合物の2種以上を用いてもよい。
【0070】
成分(A)と反応してイオン対を形成する化合物又はイオン交換性層状珪酸塩である成分(B)としては、アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、イオン交換性層状珪酸塩などを挙げることができ、好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。これら成分(B)は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
アルミニウムオキシ化合物においては、アルミニウムオキシ化合物がメタロセン錯体を活性化できることは周知であり、そのような化合物としては、具体的には、次の各一般式[IV]〜[VI]で表される化合物が挙げられる。
【0072】
【化7】
【0073】
上記の一般式[IV]及び[V]中において、Rは、水素原子又は炭化水素基、好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。また、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、pは0〜40、好ましくは2〜30の整数を示す。
また、一般式[IV]、[V]で表される化合物は、アルミノキサンとも称される化合物であって、これらの中では、メチルアルミノキサン又はメチルイソブチルアルミノキサンが好ましい。上記のアルミノキサンは、各群内及び各群間で複数種併用することも可能である。そして、上記のアルミノキサンは、公知の様々な条件下に調製することができる。
一般式[VI]で表される化合物は、1種類のトリアルキルアルミニウム又は2種類以上のトリアルキルアルミニウムと、一般式:RB(OH)で表されるアルキルボロン酸との10:1〜1:1(モル比)の反応により得ることができる。一般式中、Rは、炭素数1〜10の炭化水素基、好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基を示す。
【0074】
また、ホウ素化合物としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどの陽イオンと、トリフェニルホウ素、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などの有機ホウ素化合物との錯化物、又は種々の有機ホウ素化合物、例えばトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素などを挙げることができる。
【0075】
イオン交換性層状珪酸塩(以下、単に「珪酸塩」と略記する場合がある。)は、イオン結合などによって構成される面が互いに結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、且つ、含有されるイオンが交換可能である珪酸塩化合物をいう。珪酸塩は、各種公知のものが知られており、具体的には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)に記載されている。
本発明において、成分(B)として好ましく用いられるものは、スメクタイト族に属するもので、具体的にはモンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイトなどを挙げることができる。中でも、ゴム成分の活性、分子量の点でモンモリロナイトが好ましい。
大部分の珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出されるため、イオン交換性層状珪酸塩以外の夾雑物(石英やクリストバライトなど)が含まれることが多く、本発明で用いられるスメクタイト族の珪酸塩に交雑物が含まれていてもよい。
【0076】
イオン交換性層状珪酸塩の造粒:
珪酸塩は、乾燥状態で用いてもよく、液体にスラリー化した状態で用いてもよい。また、イオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。このうち造粒された珪酸塩を用いると、良好なポリマー粒子性状を与えるため、特に好ましい。
造粒、粉砕、分級などのイオン交換性層状珪酸塩の形状加工は、酸処理の前に行ってもよいし、酸処理を行った後に形状を加工してもよい。
【0077】
ここで用いられる造粒法としては、例えば、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられるが、特に限定されない。好ましくは撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、流動造粒法が挙げられ、特に好ましくは撹拌造粒法、噴霧造粒法が挙げられる。
【0078】
なお、噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー液中における成分(B)の濃度は、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、特に好ましくは1〜10重量%である。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃で行う。
【0079】
造粒において、粒子強度の高い担体を得るため、及び、プロピレン重合活性を向上させるためには、珪酸塩を必要に応じ微細化する。珪酸塩は、如何なる方法において微細化してもよい。微細化する方法としては、乾式粉砕、湿式粉砕いずれの方法でも可能である。好ましくは、水を分散媒として使用し、珪酸塩の膨潤性を利用した湿式粉砕であり、例えば、ポリトロン等を使用した強制撹拌による方法やダイノーミル、パールミル等による方法がある。造粒する前の平均粒径は、0.01〜3μm、好ましくは0.05〜1μmである。
【0080】
また、造粒の際に有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。用いられるバインダーとしては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、アルコール類、グリコール等が挙げられる。
【0081】
上記のようにして得られた球状粒子は、重合工程での破砕や微粉発生を抑制するためには、0.2MPa以上の圧縮破壊強度を有することが好ましい。また、造粒されたイオン交換性層状珪酸塩の粒径は、0.1〜1000μm、好ましくは1〜500μmの範囲である。粉砕法についても特に制限はなく、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれでもよい。
【0082】
酸処理:
本発明で用いられる珪酸塩は、酸処理をして用いるが、その他の化学処理を組み合わせて、処理を行ってもよい。その他の化学処理としては、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。
珪酸塩の酸処理により、固体の酸強度を変えることができる。また、酸処理は、イオン交換や表面の不純物を取り除く効果の他、結晶構造のAl、Fe、Mg、Liなどの陽イオンの一部を溶出させる効果もある。
酸処理で用いられる酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピオン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。これらは、2種以上を同時に使用してもよい。中でも無機酸が好ましく、硫酸、塩酸、硝酸が好ましく、さらに好ましくは硫酸である。
また、酸処理と塩類処理を組み合わせる方法が特に好ましく、塩類処理を行った後に酸処理を行う方法、酸処理を行った後に塩類処理を行う方法、塩類処理と酸処理を同時に行う方法、塩類処理を行った後に塩類処理と酸処理を同時に行う方法などがある。
【0083】
酸による処理条件は、通常、酸濃度は0.1〜30重量%、処理温度は室温から使用溶媒の沸点までの温度範囲、処理時間は5分から24時間の条件を選択し、被処理化合物の少なくとも一部を溶出する条件で行うことが好ましい。また、酸は、一般的には水溶液で使用される。たとえば、硫酸を用いた場合、処理温度は80℃〜100℃で、処理時間は0.5時間以上5時間未満にすることが好ましい。
塩類処理を同時に行うことにより、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成することにより、表面積や層間距離を変えることができる。例えば、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることができる。
上記の酸処理を行う場合、処理前、処理の間、処理後に粉砕や造粒などで形状制御を行ってもよい。また、アルカリ処理、有機化合物処理、有機金属処理などの他の化学処理を併用してもよい。
【0084】
イオン交換に使用する塩類は、長周期型周期表の第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンを含有する化合物であり、好ましくは、周期表の第1〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲン原子、無機酸及び有機酸から成る群より選ばれた少なくとも1種の原子又は原子団より誘導される陰イオンとから成る化合物であり、更に好ましくは、周期表の第2〜14族原子から成る群より選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、Cl、Br、I、F、PO、SO、NO、CO、C、ClO、ClO、OOCCH、CHCOCHCOCH、OCl、O(NO、O(ClO、O(SO)、OH、OCl、OCl、OOCH、OOCCHCH、C、Cから成る群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンとから成る化合物である。また、これら塩類は、2種以上を同時に使用してもよい。
【0085】
このようにして得られる珪酸塩としては、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cm/g以上、特に0.3〜5cm/gであることが好ましい。かかる珪酸塩は、水溶液中で処理した場合には、吸着水及び層間水を含む。ここで、吸着水とは、珪酸塩の表面或いは結晶破面に吸着された水であり、層間水とは、結晶の層間に存在する水である。
珪酸塩は、上記の様な吸着水及び層間水を除去してから、使用することが好ましい。脱水方法は、特に制限されないが、加熱脱水、気体流通下の加熱脱水、減圧下の加熱脱水及び有機溶媒との共沸脱水などの方法が使用される。加熱温度は、吸着水及び層間水が残存しない様な温度範囲とされ、通常100℃以上、好ましくは150℃以上とされるが、構造破壊を生じる様な高温条件は好ましくない。加熱時間は、0.5時間以上、好ましくは1時間以上である。その際、脱水乾燥した後の珪酸塩の重量減量は、温度200℃・圧力1mmHgの条件下で2時間吸引した場合の値として、3重量%以下であることが好ましい。本発明においては、重量減量が3重量%以下に調整された珪酸塩を使用する場合、成分(A)及び成分(C)と接触する際にも、同様の重量減量の状態が保持される様に取り扱うことが好ましい。
【0086】
珪酸塩の酸処理後の組成:
本発明に係る成分(B)である酸処理された珪酸塩は、Al/Siの原子比として、0.01〜0.29のものであり、好ましくは0.03〜0.25、さらに好ましくは0.05〜0.23の範囲のものが、重合触媒の活性、ゴム成分の分子量の点で好ましい。
Al/Si原子比は、粘土部分の酸処理強度の指標となり、Al/Si原子比を制御する方法としては、酸処理を行う酸種、酸濃度、酸処理時間、温度を調整することにより制御することができる。
珪酸塩中のアルミニウム及びケイ素は、JIS法による化学分析による方法で検量線を作成し、蛍光X線で定量するという方法で測定される。
【0087】
成分(C):
有機アルミニウム化合物の一例は、次の一般式で表される。
AlR3−a
上記一般式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基又はシロキシ基を示し、aは0より大きく3以下の数を示す。
一般式で表される有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲン又はアルコキシ含有アルキルアルミニウムが挙げられる。これらの中では、トリアルキルアルミニウムが好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物を2種以上併用してもよい。
【0088】
(3)触媒の調製法
本発明に係るオレフィン重合用触媒の調製法においては、成分(A)、成分(B)および成分(C)の接触方法は、特に限定されないが、次の様な方法を例示することができる。
(i)成分(A)と成分(B)とを接触させた後に、成分(C)を添加する方法
(ii)成分(A)と成分(C)とを接触させた後に、成分(B)を添加する方法
(iii)成分(B)と成分(C)とを接触させた後に、成分(A)を添加する方法
(iv)各成分(A)、(B)、(C)を同時に接触させる方法
【0089】
さらに、各成分中で別種の成分を混合物として用いてもよいし、別々に順番を変えて接触させてもよい。なお、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時又はオレフィンの重合時に行ってもよい。
また、成分(B)と成分(C)とを接触させた後、成分(A)と成分(C)の混合物を加えるというように、成分を分割して各成分に接触させてもよい。
上記の各成分(A)、(B)および(C)の接触は、窒素などの不活性ガス中において、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性炭化水素溶媒中で行うことが好ましい。接触は、−20℃から溶媒の沸点の間の温度で行うことができ、特に室温から溶媒の沸点の間での温度で行うのが好ましい。
【0090】
本発明に係る重合触媒において、成分(B)が珪酸塩の場合、好ましい成分(A)、成分(B)および成分(C)の使用量は、成分(B)1gに対し、成分(A)のメタロセン化合物0.001〜10mmol、さらに好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。成分(C)の使用量としては、Al/メタロセン化合物のモル比0.1以上100,000以下であり、好ましくは1以上10,000以下である。これらの使用比率は、通常の割合例を示すものであって、触媒が本発明の目的に沿うものとなっていれば、上に述べた使用比率の範囲によって、本発明が限定されることにはならない。
【0091】
成分(A)、(B)、(C)を含む触媒を、オレフィン重合用(本重合)の触媒として使用する前に、必要に応じて、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどのオレフィンを予備的に少量重合する予備重合処理を施してもよい。予備重合方法は、公知の方法が使用できる。
【0092】
(4)オレフィン
本発明のオレフィン重合用触媒は、エチレン及びα−オレフィンからなる群から選ばれる1種の重合モノマーの単独重合、2種以上の重合モノマー間の共重合に、供することができる。
α−オレフィンとは、例えば、炭素数3〜20のオレフィンを指し、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン、トリエン、環状オレフィンなどが挙げられる。
【0093】
3.重合方法
本発明において、重合形態は、前記一般式[I]又は[II]で示されるメタロセン錯体を含む重合用触媒とモノマーが効率よく接触し、オレフィンの重合または共重合を行うことができるならば、あらゆる様式を採用し得る。
具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。
重合方式は、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
また、重合形式の組み合わせは、特に制限はなく、バルク重合2段、バルク重合後気相重合、気相重合2段といった様式も可能であり、さらには、それ以上の重合段数で製造することも可能である。
特に良好な粒子形状のポリマーを得るためには、第一工程をバルク重合で行い、第二工程を気相重合で行うか、もしくは、第一工程、第二工程共に、気相重合で行うことが好ましい。
【0094】
本発明の触媒を用いることにより、高活性でホモポリプロピレン、および特に高活性でエチレン/プロピレン共重合体を製造でき、コモノマーであるエチレンおよびα−オレフィンの取り込み効率が良く、また、剛性と耐衝撃性を有するプロピレン系重合体を製造可能である。製造方法としては、下記の工程1(第一工程)と工程2(第二工程)を含む重合方法が好ましく、特に好ましくは、工程1に引き続き、工程2の重合を行う重合方法である。また、他の重合条件と組み合わせて、3段以上で製造する多段重合も可能である。
【0095】
[工程1]:
工程1は、全モノマー成分に対して、プロピレンを90〜100重量%、エチレンまたはα−オレフィンを0〜10重量%で重合させる工程である。
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として、補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜3MPaG、好ましくは0〜2MPaGが適当である。
バルク重合法の場合は、重合温度は、0〜90℃であり、好ましくは60〜80℃である。重合圧力は、0〜5MPaG、好ましくは0〜4MPaGが適当である。
気相重合の場合は、重合温度は、0〜200℃であり、好ましくは50〜120℃であり、さらに好ましくは60〜100℃である。重合圧力は、0〜4MPaG、好ましくは0〜3MPaGが適当である。
工程1は、バルク重合法又は気相重合で行うことが好ましい。
また、全モノマー成分に対して、ポリマーの形状を悪化させない0〜10%の範囲でエチレンまたはα−オレフィンを共存させることができ、分子量、活性、融点の調整を行うことができる。また、分子量調整剤として、水素を用いてもよい。
【0096】
[工程2]:
工程2は、全モノマー成分に対して、プロピレンを10〜90重量%、エチレンまたはα−オレフィンを10〜90重量%で重合させる工程であり、好適な耐衝撃性を示すゴム成分を製造することができる。モノマー成分に対するプロピレン量は、好ましくは、高い耐衝撃性を有するプロピレン重合体を与える点で、20〜80重量%である。
工程2の重合条件として、スラリー重合、バルク重合は、工程1と同じであるが、気相重合の場合は、モノマー組成が工程1と異なることから、重合温度は、0〜200℃であり、好ましくは20〜90℃であり、さらに好ましくは30〜80℃である。重合圧力は、0〜4MPaG、好ましくは1〜3MPaGが適当である。また、分子量調節剤として、水素を用いてもよい。
工程2は、気相重合で行うことが好ましい。
【0097】
工程2で、エチレンをモノマーとして用いている場合、本発明の重合方法で得られるプロピレン系重合体は、CFC−IRにおいて、100℃可溶分にエチレンを含む部位が観測される。このエチレンを含む部位によって、耐衝撃性や透明性の改良が予想される。
【0098】
[重合モノマー]
本発明において、「α−オレフィン」とは、前記のように、炭素数3〜20のオレフィンを指し、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン、トリエン、環状オレフィンなどが挙げられる。
プロピレンと共に用いられるモノマーとして、好ましくはエチレン、1−ブテンであり、さらに好ましくはエチレンである。また、これらモノマーを組み合わせて用いてもよい。
【0099】
[重合したオレフィンポリマーの特性値の解析]
本発明に係る触媒を用いて得られるプロピレン系重合体中の第二工程で得られた共重合体成分(ゴム成分であり、以下、「CP」と称す。)の含有量、CP中のエチレン、またはα−オレフィン重合割合は、以下の方法により求める。
なお、以下の例は、CP中のエチレンを用いた場合のものであるが、エチレン以外のα−オレフィンでも、以下の例に準じた方法を用いて、求めるものとする。
【0100】
(1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置:
・ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析(FT−IR):
・パーキンエルマー社製1760X
CFC(クロス分別クロマトグラフィー)の検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して、代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。
CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは、1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは、光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
CFCの後段に、GPCカラム(昭和電工(株)製AD806MS)を3本直列に接続して使用する。
【0101】
(2)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。
なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
【0102】
(3)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
【0103】
(4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)
【0104】
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は、森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には、以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時:
K=0.000138、α=0.70
(ii)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時:
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、GPC−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定などによりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン共重合体(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン重合割合(モル%)に換算して求める。
【0105】
(5)CP含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体のCP含有量は、下記式(i)で定義され、以下のような手順で求められる。
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100 ・・・(i)
【0106】
式(i)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は、後述する。
また、式(i)の意味は、以下の通りである。
すなわち、式(i)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるCPの量を算出する項である。フラクション1がCPのみを含み、プロピレン重合体成分(PP)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のCP含有量に寄与するが、フラクション1には、CP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこで、W40に、A40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、CP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるCPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はCP由来、1/4はPP由来ということになる。このように、右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からCPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、CPの寄与を算出して加え合わせたものがCP含有量となる。
【0107】
フラクション1〜3の平均エチレン含有量A40、A100、A140は、2945cm−1の吸光度のクロマトグラムにおける各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量(2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比から得られる)の積の総和によって得られる。
フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。
フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では、B100=100と定義する。B40、B100は、各フラクションに含まれるCPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとCPを完全に分離分取する手段がないからである。
種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40は、フラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果を合理的に説明することができることが判った。また、B100は、エチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、及び、これらのフラクションに含まれるCPの量がフラクション1に含まれるCPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこで、B100=100として解析を行うこととしている。
したがって、下記式(ii)に従い、CP含有量を求めることができる。
CP含有量(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100 ・・・(ii)
【0108】
つまり、式(ii)右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないCP含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つCP含有量(重量%)を示す。
共重合体成分中のエチレン含量は、式(ii)で求めた共重合体成分の含有量を用いて、下記の式(iii)で求められる。
共重合体成分中のエチレン含量(重量%)=(W40×A40+W100×A100+W140×A140)/[共重合体成分含有量(重量%)] ・・・(iii)
【0109】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。
本発明に係るCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、CPの大部分、又はプロピレン重合体成分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分及びアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばCP中、エチレン及び/又はプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、及び結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、及びCP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。
なお、W140には、CP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることから、CP含有量やエチレン含量の計算からは排除する。
【0110】
(6)エチレン重合割合
CP中のエチレン含有量は、次式によって求める。
CP中のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/[CP]
但し、[CP]は、先に求めたCP含有量(重量%)である。
ここで得られたCP中のエチレン含有量(重量%)の値から、エチレン及びプロピレンの分子量を使用して、最終的にモル%に換算する。
【実施例】
【0111】
以下、本発明をより具体的にかつ明確に説明するために、本発明を実施例及び比較例の対照において説明し、本発明の構成要件の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
なお、以下の諸例において、錯体合成工程、触媒合成工程及び重合工程は、全て精製窒素雰囲気下で行い、溶媒は、脱水した後に精製窒素でバブリングして脱気して使用した。
また、実施例における物性測定、分析等は、前述した方法と下記の方法に従ったものである。
【0112】
(1)MFRの測定:
ポリマー6gに熱安定剤(BHT)のアセトン溶液(0.6重量%)6gを添加した。
次いで、上記のポリマーを乾燥した後、メルトインデクサー(230℃)に充填し、2.16Kg荷重の条件下に5分間放置した。その後、ポリマーの押し出し量を測定し、10分間当たりの量に換算し、MFRの値とした(単位はdg/min)。
【0113】
(2)融点(Tm)の測定:
DSC(デュポン社製のTA2000型、又はセイコー・インスツルメンツ社製のDSC6200型)を使用し、10℃/分で20〜200℃までの昇降温を1回行った後、10℃/分で2回目の昇温時の測定値により求めた。
【0114】
(3)CFCの測定:
上記明細書中に、詳述した方法による。
【0115】
[実施例1]
メタロセン錯体A:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムの合成
(1−1)4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
4−ブロモ−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−s−インダセン−1−オン(45g)を塩化アルミニウム(81g)とクロロホルム(300mL)の懸濁溶液に加えた。室温で1時間攪拌後、氷浴冷却下で臭素(13mL)のクロロホルム溶液(40mL)を滴下し、室温で昼夜反応させた。反応終了後、1N塩酸−氷水に流し込み攪拌した。有機層を分液し、1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルで抽出して黄色固体(26g)を得た。続いて、得られた固体をエタノールに溶解させ、氷浴冷却下水素化ホウ素ナトリウム(4g)を加えて室温で昼夜攪拌した。反応後、減圧下溶媒を約半分留去し、1N塩酸を加えてクエンチ後エーテル抽出した。有機層を水、飽和食塩水と続けて洗浄し硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。さらに得られた黄色固体(27g)とp−トルエンスルホン酸(0.5g)のトルエン(150mL)の懸濁液を加熱還流した。1時間後、水を加えて有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を留去して、4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの粗生成物24.3gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.0−2.2(m,2H),2.9−3.1(m,4H),3.33(s,2H),6.52(d,1H),6.85(d,1H),7.51(s,1H).
【0116】
(1−2)4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
500mL三口フラスコに4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,21mmol)、フェニルボロン酸(3.1g,25mmol)、りん酸カリウム・n水和物(10.6g,43mmol)、酢酸パラジウム(0.16g,0.70mmol)、ジシクロヘキシルビフェニリルホスフィン(0.46g,1.3mmol)およびトルエン(400mL)を加え、1時間加熱還流した。
得られた溶液を分液・溶媒留去すると、4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,22mmol)の黄褐色油状物を定量的に得た。
【0117】
(1−3)6−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
300mLナスフラスコに4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,22mmol)、ジメチルスルホキシド(50mL)および水(1.5mL)を入れ、氷冷しながらN−ブロモスクシンイミド(6.3g,35mmol)を徐々に加え、室温で3時間攪拌した。室温でトルエン(200mL)および水(100mL)を加え、トルエン抽出を行い、有機層を希塩酸、水および飽和食塩水で洗浄した後、一晩静置した。有機層にp−トルエンスルホン酸一水和物(0.56g,2.9mmol)を加え、30分間加熱還流した。
得られた溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、分液・溶媒留去した後、ヘキサン洗浄を行うことで、6−ブロモ−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.8g,19mmol)を黄土色固体として、収率85%で得た。
一方、300mL三口フラスコに2−メチルフラン(2.3g,28mmol)およびジメトキシエタン(25mL)を入れ、氷冷しながらn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(19mL,31mmol,1.62M)を滴下した。2.5時間攪拌した後、ジメトキシエタン(25mL)を加え、氷冷しながらトリメチルボレート(3.4mL,31mmol)を滴下し、室温で一晩静置した。この溶液を氷冷し、炭酸ナトリウム(3.9g,37mmol)および水(30mL)を加え、室温で1時間攪拌した。減圧下で溶媒を半量まで濃縮し、別途合成した6−ブロモ−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.8g,19mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(0.14g,0.19mmol)、ジメトキシエタン(45mL)および水(6mL)を加え、1.5時間加熱還流した。
得られた溶液を分液・溶媒留去した後、ゲル濾過を行うことで、6−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,16mmol)の黄褐色油状物を収率86%で得た。
【0118】
(1−4)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロブタンの合成
4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,16.0mmol)をテトラヒドロフラン(80mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,11mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.03mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(0.97mL,8.2mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲル濾過を実施することで、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロブタン(4.9g)を得た。
【0119】
(1−5)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム(メタロセン錯体A)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロブタン(4.9g)をジエチルエーテル(63mL)とトルエン(16mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,9.4mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した後、トルエン(233mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.6g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら15時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、n−へキサン−ジクロロメタンで抽出した。続けて、n−へキサン−トルエン再結晶を繰り返し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムのラセミ体0.5gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.64−1.82(m,4H),1.90(s,6H),2.26−2.44(m,4H),2.60−2.86(m,10H),5.45(d,J=3.1Hz,2H),6.24(d,J=3.1Hz,2H),6.90−7.28(m,6H),7.51(s,2H),7.60−7.90(br,2H).
【0120】
(1−6)スメクタイト族イオン交換性層状珪酸塩の酸処理および塩処理
酸処理
ゼパラブルフラスコに蒸留水(1130g)と96%硫酸(750g)を加え、内温を90℃に保ち、そこに造粒モンモリロナイトである水澤化学工業(株)製ベンクレイSL(平均粒径19μm、300g)を添加し2時間反応させた。懸濁液を1時間で室温まで冷却し、蒸留水でpH=4となるまで洗浄した。このときの洗浄倍率は1/10000以下であった。
【0121】
塩処理
ゼパラブルフラスコで硫酸リチウム1水和物(210g)を蒸留水(520g)に溶かし、そこに、濾過した酸処理粘土を加え室温で120分撹拌した。このスラリーを濾過し、得られた固体に蒸留水(3000mL)を加え5分間室温で撹拌した。このスラリーを濾過した。得られた固体に蒸留水(2500mL)を加え5分撹拌後再び濾過した。この操作をさらに4回繰り返し、得られた固体を窒素気流下130℃で2日間予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、さらに200℃で2時間減圧乾燥することにより、化学処理モンモリロナイトを得た。
【0122】
(1−7)メタロセン錯体Aを用いた触媒調製(触媒A)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65ml、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体A(257mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2.5時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒A)を29.9g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.91であった。
【0123】
(1−8)触媒Aによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Aをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)30mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0124】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い277gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=57/43であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は42wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は38mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は168,000であった。ゴム重合活性(CP活性)は10,100(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは162℃、MFRは0.8(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、5,800(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0125】
[実施例2]
メタロセン錯体B:ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム(メタロセン錯体B)の合成
(2−1)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロペンタンの合成
4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.0g,16.0mmol)をテトラヒドロフラン(75mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,11mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.06mL)、1,1−ジクロロシラシクロペンタン(1.1mL,8.4mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2.5時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロペンタン(3.0g)を得た。
【0126】
(2−2)ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム(メタロセン錯体B)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]シラシクロペンタン(3.0g)をジエチルエーテル(38mL)とトルエン(9.5mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,6.0mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、トルエン(141mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.1g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら16時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、トルエンでの抽出を繰り返し、ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムのラセミ体0.4gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.66−1.84(m,6H),1.96−2.20(m,4H),2.16(s,6H),2.36−2.46(m,2H),2.50−2.70(m,4H),2.74−2.92(m,4H),5.72(d,J=3.1Hz,2H),6.30(d,J=3.1Hz,2H),6.89(s,2H),7.00−7.28(m,10H),7.60−7.90(br,2H).
【0127】
(2−3)メタロセン錯体Bを用いた触媒調製(触媒B)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体B(260mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2.5時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒B)を28.4g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.76であった。
【0128】
(2−4)触媒Bによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Bをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)30mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0129】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い194gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=44/56であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は28wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は56mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は192,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は11,100(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは161℃、MFRは7.7(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、4,300(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0130】
[実施例3]
メタロセン錯体C:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(3−1)5,6−ジメチル−インダノンの合成
塩化アルミニウム116g(0.87mol)とニトロメタン200mLの懸濁溶液にo−キシレン48mL(0.4mol)と3−クロロプロピオニルクロライド50gの混合液を氷浴上で滴下した。室温に昇温し5時間攪拌した後、反応溶液を1N塩酸−氷水に流し込み攪拌した。有機層を分取し、1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、途中得られた固体を分取した。硫酸300mLに得られた固体を少量ずつ加えて、オイルバス100℃で4時間加熱攪拌した。環状異性体が約40%副生した。反応終了後、反応溶液を氷水に流し込み、ジエチルエーテル抽出して、有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。減圧下溶媒を留去して、得られた固体を熱へキサンで再結晶を行い、環状異性体を除いた。5,6−ジメチル−インダノン25.5gを得た。(収率40%)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.26(s,3H,tol−Me),2.35(s,3H,tol−Me),2.66(d,J=4Hz,2H,CH),3.05(d,J=4Hz,2H,CH),7.25(s,1H,arm),7.53(s,1H,arm).
【0131】
(3−2)4−ブロモ−5,6−ジメチル−インデンの合成
得られた5,6−ジメチル−インダノン25.5gを塩化アルミニウム49gとクロロホルム250mLの懸濁溶液に加えた。室温で3時間攪拌後、氷浴冷却下で臭素8.2mLのクロロホルム溶液10mLを滴下し、室温で昼夜反応させた。反応終了後、1N塩酸−氷水に流し込み攪拌した。有機層を分液し、1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、得られた固体をヘキサン洗浄した。得られた4−ブロモ−5,6−ジメチルインダノンの粗生成物33gをエタノールに懸濁させ、氷浴冷却下、水素化ホウ素ナトリウム5.2gを加えて室温で昼夜攪拌した。反応後、減圧下溶媒を約半分留去し、1N塩酸を加えてクエンチ後ジエチルエーテル抽出した。
有機層を水、飽和食塩水と続けて洗浄し硫酸マグネシウム上で乾燥させた。減圧下溶媒を留去して得られた黄色固体にp−トルエンスルホン酸0.5gとトルエン250mLを加えて加熱還流した。0.5時間後、水を加えて有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄後硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を留去して、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにて精製し、目的の4−ブロモ−5,6−ジメチル−インデン13g(収率37%)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.37(s,3H,tol−Me),2.41(s,3H,tol−Me),3.37(s,2H,CH),6.51(d,1H,CH),6.82(d,1H,CH),7.14(s,1H,arm).
【0132】
(3−3)4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの合成
フェニルボロン酸(5.7g,46.7mmol)、リン酸三カリウム・n水和物(15.2g)、4−ブロモ−5、6−ジメチルインデン(8g,36mmol)、酢酸パラジウム(0.24g,1.1mmol%)、ビフェニルジシクロヘキシルフォスフィン(0.75g)を無水トルエン200mLに溶解させ、加熱還流下で0.5時間反応させた。反応溶液を1N塩酸−氷水に流し込み攪拌後、有機層を分取した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去しさらにシリカゲル濾過を行い、4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(7.7g)を得た。
【0133】
(3−4)2−ブロモ−4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの合成
4−フェニル−5、6−ジメチルインデンの粗生成物(10.6g,48mmol)をジメチルスルホキシド(120mL)に溶解させ、水(4mL)を加えた。0℃でN−ブロモスクシンイミド(11.1g,62mmol)を添加し、室温で4時間攪拌した。氷浴上で水を加えてクエンチし、トルエンを加えて有機層を抽出した。有機層にp−トルエンスルホン酸・一水和物(0.2g)を加え、加熱還流下で2時間反応させた後、反応溶液に水を加えて有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、さらにシリカゲル濾過を行い、粗生成物(12.5g)を得た。
【0134】
(3−5)2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの合成
2−メチルフラン(5.9mL,65.8mmol)をジメトキシエタン(100mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.62M,40.4mL)を氷浴冷却下滴下し2時間攪拌した後、氷浴冷却したままトリメチルボレート(8.5mL,75mmol)を滴下し室温で16時間攪拌した。水(5mL)を加え1時間攪拌し、減圧下溶媒を留去した。そこに、炭酸ナトリウム(8.8g)の水溶液(80mL)、上記合成した2−ブロモ−4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(12.5g)のジメトキシエタン(60mL)溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(1.2g)を順に加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応溶液を1N塩酸−氷水に流し込み、有機層を分取し、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。再結晶を行い、目的の2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(7.3g)を得た。
【0135】
(3−6)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの合成
2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(5.0g,16.7mmol)をテトラヒドロフラン(78mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,12mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.03mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(1.0mL,8.4mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(5.7g)を得た。
【0136】
(3−7)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体C)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(6.6g)をジエチルエーテル(120mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,14mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(237mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(2.3g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、n−へキサン−ジクロロメタンで抽出した。続けて、トルエン抽出を繰り返し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体1.7gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.92(s,6H),2.10(s,6H),2.13(s,6H),2.18−2.30(m,2H),2.58−2.80(m,4H),5.69(d,J=3.2Hz,2H),6.16(d,J=3.2Hz,2H),6.78(s,2H),6.83(s,2H),7.06−7.22(m,6H),7.28(t,J=7.8Hz,2H),8.23(d,J=7.8Hz,2H).
【0137】
(3−8)メタロセン錯体Cを用いた触媒調製(触媒C)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体C(249mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒C)を31.1g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.02であった。
【0138】
(3−9)触媒Cによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Cをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0139】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い228gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=54/46であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は52wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は41mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は351,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は7,400(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは160℃、MFRは3.4(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、6,100(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0140】
[実施例4]
メタロセン錯体D:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(4−1)2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの合成
2,3−ジメチルフラン(4.8mL,50.2mmol)をジメトキシエタン(46mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,35.2mL)を−40℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、トリメチルボレート(6.2mL,56mmol)を滴下し、室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した後、室温で16時間攪拌した。炭酸ナトリウム(7.2g)の水溶液(46mL)を加え1時間攪拌し、減圧下溶媒を留去した。そこに、2−ブロモ−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(10.0g)のジメトキシエタン(80mL)溶液、水(10mL)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド(0.25g)を順に加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応溶液に1N塩酸を加えた後、有機層を分取し、炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、目的の2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(6.6g)を得た。
【0141】
(4−2)1,1−ビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの合成
2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(6.6g,21.0mmol)をテトラヒドロフラン(100mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,13mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.04mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(1.3mL,10.5mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、ヘキサンによる抽出を実施することで1,1−ビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(4.9g)を得た。
【0142】
(4−3)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体D)の合成
1,1−ビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(4.9g)をジエチルエーテル(84mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,9.7mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(167mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.7g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン、n−へキサンで抽出した。続けて、トルエン抽出を繰り返し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体2.0gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.65(s,6H),1.90(s,6H),2.09(s,6H),2.11(s,6H),2.20−2.34(m,2H),2.64−2.82(m,4H),5.97(s,2H),6.79(s,4H),6.98−7.24(m,6H),7.30(t,J=7.6Hz,2H),8.23(d,J=7.6Hz,2H).
【0143】
(4−4)メタロセン錯体Dを用いた触媒調製(触媒D)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体D(257mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒D)を32.2g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.11であった。
【0144】
(4−5)触媒Dによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Dをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0145】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い177gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=45/55であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は36wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は51mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は521,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は9,400(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは161℃、MFRは1.6(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、7,000(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0146】
[実施例5]
メタロセン錯体E:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(5−1)2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデンの合成
2−t−ブチルフラン(6.2mL,50.3mmol)をジメトキシエタン(46mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,35.2mL)を−40℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、トリメチルボレート(6.2mL,56mmol)を滴下し、室温まで徐々に昇温しながら4時間攪拌した後、室温で16時間攪拌した。炭酸ナトリウム(7.2g)の水溶液(46mL)を加え1時間攪拌し、減圧下溶媒を留去した。そこに、2−ブロモ−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(10.0g)のジメトキシエタン(80mL)溶液、水(10mL)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド(0.25g)を順に加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応溶液に1N塩酸を加えた後、有機層を分取し、炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、目的の2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(7.4g)を得た。
【0147】
(5−2)1,1−ビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの合成
2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデン(7.4g,21.6mmol)をテトラヒドロフラン(101mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,14mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.04mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(1.3mL,10.8mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、ヘキサンによる抽出を実施することで1,1−ビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(4.0g)を得た。
【0148】
(5−3)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体E)の合成
1,1−ビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(4.0g)をジエチルエーテル(64mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,7.4mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(128mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(1.3g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、n−へキサン−ジクロロメタンで抽出した。続けて、トルエン再結晶を繰り返し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体1.1gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.31(s,18H),1.95(s,6H),2.10(s,6H),2.10−2.22(m,2H),2.50−2.64(m,2H),2.68−2.82(m,2H),5.82(d,J=3.2Hz,2H),6.40(d,J=3.2Hz,2H),6.80(s,2H),6.84(s,2H),7.04−7.22(m,6H),7.26(t,J=7.6Hz,2H),8.20(d,J=7.6Hz,2H).
【0149】
(5−4)メタロセン錯体Eを用いた触媒調製(触媒E)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体E(274mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して3時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒E)を29.0g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.78であった。
【0150】
(5−5)触媒Eによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Eをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)30mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0151】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い103gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=49/51であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は20wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は46mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は305,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は880(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは161℃、MFRは4.2(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、4,300(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0152】
[実施例6]
メタロセン錯体F:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(6−1)4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
3,5−ジメチルフェニルボロン酸(18.6g,124mmol)、リン酸三カリウム・n水和物(53.2g)、4−ブロモ−5、6−ジメチルインデン(23.2g,104mmol)、酢酸パラジウム(0.79g,3.5mmol%)、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル(2.6g)を無水トルエン(438mL)に溶解させ、加熱還流下で3時間反応させた。反応溶液に1N塩酸を加えた後、有機層を分取した。得られた有機層を炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去しさらにシリカゲル濾過を行い、4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(24.5g)を得た。
【0153】
(6−2)2−ブロモ−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(24.5g)をジメチルスルホキシド(250mL)に溶解させ、水(9mL)を加えた。0℃でN−ブロモスクシンイミド(28.7g,161mmol)を添加し、室温で3.5時間攪拌した。氷浴上で水を加えてクエンチし、トルエンを加えて有機層を抽出した。有機層にp−トルエンスルホン酸・一水和物(2.5g)を加え、加熱還流下で1時間反応させた後、反応溶液に水を加えて有機層を分取した。有機層を炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、粗生成物(33.9g)を得た。
【0154】
(6−3)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
2−メチルフラン(3.8mL,46.0mmol)をジメトキシエタン(42mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.58M,32.0mL)を−40℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、トリイソプロピルボレート(11.6mL,50.6mmol)を滴下し、室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した後、室温で16時間攪拌した。炭酸ナトリウム(6.5g)の水溶液(75mL)を加え1時間攪拌した。2−ブロモ−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの粗成生物(10.1g)のジメトキシエタン(25mL)溶液、トリフェニルホスフィン(0.18g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロライド(0.24g)を順に加え、加熱還流下で3.5時間反応させた。反応溶液に1N塩酸を加えた後、有機層を分取し、炭酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、目的の2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(6.4g)を得た。
【0155】
(6−4)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの合成
2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(6.4g,19.4mmol)をテトラヒドロフラン(91mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.60M,12mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.04mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(1.2mL,9.7mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを実施することで、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(7.1g)を得た。
【0156】
(6−5)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体F)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(7.1g)をジエチルエーテル(118mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.60M,14mL)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(235mL)を加え、−78℃で四塩化ジルコニウム(2.4g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、n−へキサン−ジクロロメタンで抽出した。続けて、トルエン抽出を繰り返し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体F)のラセミ体1.4gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.96(s,6H),2.13(s,6H),2.14(s,6H),2.16(s,6H),2.21(s,6H),2.08−2.30(m,2H),2.58−2.82(m,4H),5.69(d,J=3.4Hz,2H),6.19(d,J=3.4Hz,2H),6.79(s,2H),6.81(s,2H),6.84(s,2H),6.91(s,2H),7.89(s,2H).
【0157】
(6−6)メタロセン錯体Fを用いた触媒調製(触媒F)
内容積1Lのフラスコに、上記で得た化学処理モンモリロナイト(10g)を秤量し、ヘプタン65mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(35mL,25.3mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を100mLに調製した。ここに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体F(266mg,300μmol)のトルエン(60mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(340mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、50℃に昇温して2時間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、減圧乾燥して固体触媒(触媒F)を31.5g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.01であった。
【0158】
(6−7)触媒Fによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
第一工程
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(300mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Fをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)20mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、残モノマーのパージを行い、アルゴンガスにて槽内を置換した。撹拌を停止させ、アルゴンガスをフローさせながら、管を槽内に差し込み、プロピレン重合体成分(PP)を少量抜き出した。
【0159】
第二工程
その後、内温を60℃でプロピレンガスとエチレンガスを、ガスmol組成で、プロピレン/エチレン=60/40となるように1.8MPaまで導入し、内温を80℃に昇温した。その後、予め調製しておいたプロピレンとエチレンの混合ガスを導入しながら、内圧を2.0MPaとなるように調整しながら、30分間重合反応を制御した。
その結果、粒子性状の良い205gのプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合体が得られた。プロピレンとエチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成は、プロピレン/エチレン=43/57であった。
上記で得られた2段重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は30wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は52mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は544,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は7,600(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは161℃、MFRは4.0(dg/min)であり、PP重合活性(第一工程活性)は、8,500(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0160】
[実施例7]
メタロセン錯体G:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(7−1)4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
500mL三口フラスコに4−ブロモ−5,6−ジメチルインデン(3.4g,15mmol)、4−t−ブチルフェニルボロン酸(3.25g,18.2mmol)、リン酸三カリウム・n水和物(7.7g,31mmol)、酢酸パラジウム(0.11g,0.5mmol)、ビフェニルジシクロヘキシルフホスフィン(0.33g,0.94mmol)、トルエン(287mL)を加え、オイルバスで2時間加熱還流した。得られた溶液を分液・溶媒留去し、4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの粗精製物(4.6g)を得た。
【0161】
(7−2)2−ブロモ−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
500mLナスフラスコに未精製の4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(4.6g,17mmol)、ジメチルスルホキシド(41mL)および水(1.5mL)を入れ、氷冷しながらN−ブロモスクシンイミド(5.0g,28mmol)を徐々に加え、室温で3.5時間攪拌した。室温でトルエン(100mL)および水(100mL)を加え、トルエン抽出を行い、有機層を水および飽和食塩水で洗浄した。有機層を500mL三口フラスコに移し、p−トルエンスルホン酸一水和物(0.50g,2.6mmol)を加え、オイルバスで1.5時間加熱還流した。得られた溶液を炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、分液・溶媒留去することで、2−ブロモ−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの粗精製物(5.4g,15mmol)を黄褐色油状物として得た。
【0162】
(7−3)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
200mLシュレンク管に2−メチルフラン(1.9g,23mmol)およびジメトキシエタン(21mL)を入れ、−20℃に冷却して、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(16mL,25mmol,1.63M)を滴下した。1時間攪拌した後、ジメトキシエタン(21mL)を加え、氷冷しながらトリメチルボレート(2.9mL,26mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。この溶液を氷冷し、炭酸ナトリウム(3.3g,31mmol)および水(21mL)を加え、室温で1時間攪拌した。減圧下で溶媒を半量まで濃縮し、2−ブロモ−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(5.4g,15mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.44g,0.38mmol)、ジメトキシエタン(37mL)および水(4.8mL)を加え、オイルバスで2時間加熱還流した。得られた溶液を分液・溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製を行うことで、2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(2.7g,7.5mmol)を薄橙色固体として、収率49%で得た。
【0163】
(7−4)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの合成
500mLナスフラスコに2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデン(12.7g,35.6mmol)およびテトラヒドロフラン(120mL)を入れ、−78℃に冷却してn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(22mL,36mmol,1.60M)を滴下した。−78〜0℃で2時間攪拌した。その後、N−メチルイミダゾール(0.15g,1.8mmol)のテトラヒドロフラン(30mL)溶液を加え、−50℃に冷却して1,1−ジクロロシラシクロブタン(2.5g,18mmol)を滴下し、−50〜0℃で3時間攪拌した。得られた溶液を分液・溶媒留去し、シリカゲル精製を行うことで1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(12.8g,16mmol)を黄色固体として収率92%で得た。
【0164】
(7−5)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体G)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(9.4g,12mmol)、ジエチルエーテル(200mL)を入れ、−78℃に冷却してn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(15mL,24mmol,1.60M)を滴下した。徐々に−76〜0℃で3時間撹拌した後、溶液を濃縮し、トルエン(300mL)を加え、−78℃に冷却して四塩化ジルコニウム(2.8g,12mmol)を加え、徐々に室温まで昇温しながら終夜攪拌した。その後、減圧下で溶媒留去した。この混合物をヘキサン洗浄、ジクロロメタン/ヘキサン抽出を実施し、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体(1.4g,1.5mmol)を橙色結晶として、収率11%で得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.18(s,18H),1.92(s,6H),2.12(s,6H),2.16(s,6H),2.21〜2.28(m,2H),2.64〜2.75(m,4H),5.66(dd,2H),6.06(d,2H),6.79(s,2H),6.95(s,2H),7.22(dd,2H),7.37(dd,2H),7.44(dd,2H),8.28(dd,2H).
【0165】
(7−6)メタロセン錯体Gを用いた触媒調製(触媒G)
メタロセン錯体Aの代わりにメタロセン錯体Gを290mg(310μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒G)33.5gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.23であった。
【0166】
(7−7)触媒Gによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を16mgとし、第一工程で水素300mLを用い、第二工程でプロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=48/52となるように調整し、第二工程の重合時間を25分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、240gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は26wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は42mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は622,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は12,700(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で67g採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは160℃であり、MFRは3.9(dg/min)、PP重合活性は15,400(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0167】
[実施例8]
メタロセン錯体H:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムの合成
(8−1)5,5,7,7−テトラメチル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−s−インダセン−1−オンの合成
塩化アルミニウム(32g)のニトロメタン(150mL)の溶液に1,1,3,3−テトラメチルインダン(34.3g)と3−クロロプロピオニルクロライド(25g)の混合液を氷浴上で滴下した。室温に昇温し5時間攪拌した後、反応溶液を1N塩酸−氷水に流し込み攪拌した。有機層を分取し、1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥し減圧下溶媒を留去した。そこに硫酸(150mL)を加えて、80℃で3時間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を氷水に流し込み、ジエチルエーテル抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。減圧下溶媒を留去して、5,5,7,7−テトラメチル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−s−インダセン−1−オンの粗生成物27.5gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.33(s,6H),1.35(s,6H),1.97(s,2H),2.69(t,2H),3.10(t,2H),7.19(s,1H),7.53(s,1H).
【0168】
(8−2)1,1,3,3−テトラメチル−4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
5,5,7,7−テトラメチル−3,5,6,7−テトラヒドロ−2H−s−インダセン−1−オンの粗生成物(27.5g)を塩化アルミニウム(37g)とクロロホルム(150mL)の懸濁溶液に加え0.5時間攪拌後、氷浴冷却下で臭素(6.2mL)のクロロホルム溶液(20mL)を滴下し、室温で4時間反応させた。反応終了後、1N塩酸−氷水に流し込み攪拌した。有機層を分液し、1N塩酸、水、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム上で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、ジエチルエーテルとヘキサンにより再結晶化精製を行い、黄色固体(18g)を得た。続いて、得られた固体をメタノール(120mL)に懸濁させ、氷浴冷却下水素化ホウ素ナトリウム(2.2g)を加えて室温で2時間攪拌した。反応後、減圧下溶媒を約半分留去し、1N塩酸を加えてクエンチ後ジエチルエーテル抽出した。有機層を1N塩酸、水、飽和食塩水と続けて洗浄し硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下溶媒を留去した。さらに得られた黄色固体(18g)とp−トルエンスルホン酸(0.1g)のトルエン(150mL)溶液を加熱還流した。1時間後、水を加えて有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄後硫酸マグネシウム上で乾燥した。溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、1,1,3,3−テトラメチル−4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(15g)を得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.31(s,6H),1.52(s,6H),1.99(s,2H),3.36(s,2H),6.54(d,1H),6.86(d,1H),7.10(s,1H).
【0169】
(8−3)1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
フェニルボロン酸(3.2g,26mmol)をジメトキシエタン(80mL)に溶解させ、炭酸セシウム(11.3g)の水溶液(30mL)、1,1,3,3−テトラメチル−4−ブロモ−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(5.06g,17.4mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.8g)を順に加えた。加熱還流下で13時間反応させた後、反応溶液を1N塩酸−氷水に流し込み、攪拌後ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的の1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(3.8g,収率77%)を得た。
【0170】
(8−4)1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセンの合成
得られた1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(3.8g,13.2mmol)をジメチルスルホキシド(100mL)に溶解させ、水(4mL)を加えた。0℃でN−ブロモスクシンイミド(3g)を添加し、室温で昼夜攪拌した。氷浴上で水を加えてクエンチし、トルエンを加えて有機層を抽出した。有機層にp−トルエンスルホン酸・一水和物(0.1g)を加え、加熱還流下で1時間反応させた後、反応溶液に水を加えて有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下溶媒を留去して粗生成物を得た。
【0171】
一方、2−メチルフラン(1.8mL,19.8mmol)をジメトキシエタン(50mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.64M,12.1mL)を氷浴下滴下し1時間攪拌した後、氷浴冷却したままトリメチルボレート(2.5mL,22mmol)を滴下し室温で16時間攪拌した。水(10mL)を加え、1時間攪拌した後減圧下溶媒を留去した。そこに、炭酸ナトリウム(2.8g,26.4mmol)の水溶液(30mL)、上記合成した粗生成物のジメトキシエタン(25mL)溶液、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.38g)を順に加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応溶液に水を加えて有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的の1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(2.25g)を得た。
【0172】
(8−5)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,5,7,7−テトラメチル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセニル]シラシクロブタンの合成
1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(3.7g,10mmol)をテトラヒドロフラン(60mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,6.1mL)を−70℃で滴下した。ゆっくり昇温しながら3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.02mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(0.59mL,5.0mmol)を−70℃で滴下した。室温まで昇温し1.5時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,5,7,7−テトラメチル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセニル]シラシクロブタンの粗生成物(4.3g)を得た。
【0173】
(8−6)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム(メタロセン錯体H)の合成
合成した1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,5,7,7−テトラメチル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセニル]シラシクロブタン粗生成物(4.3g)をジエチルエーテル(50mL)とトルエン(10mL)に懸濁させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,6.1mL)を氷浴上で滴下した。室温で2時間攪拌した後、減圧下溶媒を留去した。塩化メチレン(50mL)を加えて溶解させ、−72℃で四塩化ジルコニウム(1.16g)を添加し室温で2時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、トルエン洗浄した後、塩化メチレンで抽出した。さらにトルエンとn−ヘキサンで洗浄しジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムのラセミ体1.3gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.84(s,6H,Me),0.93(s,6H,Me),1.16(s,6H,Me),1.19(s,6H,Me),1.71(q,4H,−CH−),2.2−2.8(m,6H,Si(CH),2.43(s,6H,Furyl−CH),5.95(dd,J=1.0Hz,3.2Hz,2H,Furyl−H),6.25(d,J=3.3Hz,2H,Furyl−H),6.24(s,2H,Cp),6.73(s,2H,arm.),7.1−7.2(m,2H,arm.),7.2−7.3(m,4H,arm.),7.3−7.5(m,2H,arm.),7.6−7.8(m,2H,arm.).
【0174】
(8−7)メタロセン錯体Hを用いた触媒調製(触媒H)
メタロセン錯体Aの代わりにメタロセン錯体Hを300mg(310μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒H)32.5gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.14であった。
【0175】
(8−8)触媒Hによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を30mgとし、第一工程で水素540mLを用い、第二工程でプロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=56/44となるように調整し、第二工程の重合時間を15分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、99.6gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は61wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は35mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は447,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は10,000(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは158℃であり、MFRは7.0(dg/min)、PP重合活性は1,600(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0176】
[実施例9]
メタロセン錯体I:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(9−1)4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの合成
2,6−ジメチル−4−ブロモビフェニル(11g)をジエチルエーテルに溶解させ−78℃に冷却してt−ブチルリチウムのn−ペンタン溶液(1.65M,51mL)を滴下し2時間撹拌後、トリイソプロピルボレート(11mL)を滴下し室温で16時間攪拌した。水(10mL)を加え1時間攪拌し、減圧下溶媒を留去した。そこに、4−ブロモ−5,6−ジメチルインデン(8.5g,38mmol)、炭酸セシウム(25g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.88g)、ジメトキシエタン(90mL)、水(30mL)を順に加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応溶液を1N塩酸でクエンチ後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去しさらにシリカゲル濾過を行い、4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(11.8g)を得た。
【0177】
(9−2)2−ブロモ−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの合成
4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(11.8g,36mmol)をジメチルスルホキシド(150mL)に溶解させ、水(4mL)を加えた。氷浴上でN−ブロモスクシンイミド(8.6g,48mmol)を添加し、室温で4時間攪拌した。氷浴上で水を加えてクエンチし、トルエンを加えて有機層を抽出した。有機層にp−トルエンスルホン酸・一水和物(0.25g)を加え、加熱還流下で2時間反応させた後、反応溶液に水を加えて有機層を分取した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、さらにシリカゲル濾過を行い、粗生成物(11g)を得た。
【0178】
(9−3)2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの合成
2−メチルフラン(3.7mL,41mmol)をジメトキシエタン(130mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.6M,25.6mL)を氷浴冷却下滴下し2時間攪拌した後、氷浴冷却したままトリメチルボレート(5.1mL,45mmol)を滴下し室温で16時間攪拌した。水(5mL)を加え1時間攪拌した後、減圧下溶媒を留去した。そこに、炭酸ナトリウム(5.8g)、上記合成した2−ブロモ−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(11g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.8g)、DME(100mL)、水(40mL)を順に加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応溶液を1N塩酸でクエンチ後、有機層を分取し、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行い、目的の2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデン(5g)を得た。
【0179】
(9−4)1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデン]シラシクロブタンの合成
2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデン(3.0g,7.4mmol)をテトラヒドロフラン(60mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.55M,4.8mL)を−78℃で滴下し3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.03mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(0.44mL,3.7mmol)を滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し得られた固体をヘキサン洗浄し、1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(2.5g)を得た。
【0180】
(9−5)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体I)の合成
1,1−ビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタン(2.5g)をジエチルエーテル(40mL)に懸濁させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.55M,3.7mL)を氷浴上で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら3時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(40mL)を加え、−50℃で四塩化ジルコニウム(0.7g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら2.5時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサン、ジエチルエーテル、トルエンで洗浄しジクロロメタンで抽出した。続けて、トルエン再結晶を行い、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体0.5gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.97(s,6H),2.01(s,6H),2.05(s,6H),2.23(s,6H),2.52(s,6H),2.2−2.3(m,2H),2.55−2.65(m,2H),2.79−2.85(m,2H),6.01(d,J=2,3Hz,2H),6.29(d,J=3.3Hz,2H),6.56(s,2H),6.61(s,2H),6.89(s,2H),7.1−7.2(m,2H),7.3−7.5(m,10H).
【0181】
(9−6)メタロセン錯体Iを用いた触媒調製(触媒I)
メタロセン錯体Aの代わりにメタロセン錯体Iを290mg(279μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒I)31.9gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.09であった。
【0182】
(9−7)触媒Iによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を15mgとし、第一工程で水素297mLを用い、第二工程でプロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=47/53となるように調整し、第二工程の重合時間を60分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、137.0gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は43wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は41mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は765,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は5,600(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは162℃であり、MFRは0.9(dg/min)、PP重合活性は7,300(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0183】
[実施例10]
メタロセン錯体J:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(10−1)2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチルインデンの合成
2,3−ジメチルフラン(1.0g,10mmol)をジメトキシエタン(20mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.65M,6.3mL)を氷浴冷却下滴下し2時間攪拌した後、続けてトリメチルボレート(1.5mL,13mmol)を滴下室温まで昇温し16時間攪拌した。水(5mL)を加え1時間攪拌後、減圧下溶媒を留去した。そこに、炭酸ナトリウム(1.5g)の水溶液(15mL)、2−ブロモ−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチルインデンの粗生成物(2.5g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.2g)、DME(30mL)を順に加え、加熱還流下で1時間反応させた。反応溶液に1N塩酸を加え、有機層を分取し、1N塩酸、飽和食塩水で洗浄して硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルクロマトグラフィー精製を行い、目的の2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチルインデン(1.9g)を得た。
【0184】
(10−2)ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体J)の合成
2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチルインデン(1.9g,5.1mmol)をテトラヒドロフラン(30mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.63M,3.1mL)を−78℃で滴下し3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.03mL)、1,1−ジクロロシラシクロブタン(0.3mL,2.5mmol)を−78℃で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去した。得られた1,1−ビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチルインデニル]シラシクロブタンの粗生成物(1.9g)をジエチルエーテル(35mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.63M,3.1mL)を氷浴上で滴下した。室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した後、得られた反応溶液を一度濃縮し、ジクロロメタン(35mL)を加え、−40℃で四塩化ジルコニウム(0.6g)を添加し、室温まで徐々に昇温しながら2時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、トルエン抽出しヘキサン洗浄後、トルエン−ヘキサン混合溶液で抽出した。続けて、ジエチルエーテル洗浄を行い、ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体0.3gを得た。
H−NMR(400MHz,C)δ1.35(s,18H),1.88(s,6H),1.90(s,6H),2.13(s,6H),2.41(s,6H),2.1−2.3(m,2H),2.5−2.8(m,4H),6.13(s,2H),6.42(s,2H),6.52(s,2H),7.0−7.1(m,2H),7.3−7.7(m,6H).
【0185】
(10−3)メタロセン錯体Jを用いた触媒調製(触媒J)
メタロセン錯体Aの代わりにメタロセン錯体Jを293mg(302μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒J)30.7gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.92であった。
【0186】
(10−4)触媒Jによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を15mgとし、第一工程で水素297mLを用い、第二工程でプロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=49/51となるように調整し、第二工程の重合時間を60分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、179.9gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は38wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は46mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は777,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は5,800(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは161℃であり、MFRは60(dg/min)、PP重合活性は9,300(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0187】
[実施例11]
(11−1)メチルアルミノキサン担持シリカの調製
窒素雰囲気下、1L三口フラスコに400℃で5時間焼成した担持触媒用シリカ(粒径45μm)を30g入れ、150℃のオイルバスで加熱しながら真空ポンプで1時間減圧乾燥した。室温で脱水トルエン200mLとアルベマール社製の20%メチルアルミノキサン/トルエン溶液83mLを加え40℃で1時間撹拌した。そして、40℃に加熱したままトルエン溶媒を減圧留去することで、メチルアルミノキサン担持シリカを46.7g得た。
【0188】
(11−2)メタロセン錯体Gを用いた触媒調製(触媒K)
窒素雰囲気下、1L三口フラスコにメチルアルミノキサン担持シリカを15.5g入れ、ヘプタン50mL、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(3.3mL)を加えて10分間、室温で撹拌した。さらに、メタロセン錯体G(283mg,300μmol)のトルエン(30mL)溶液を加えて室温で60分間撹拌した。
次に、上記ヘプタンスラリーにヘプタン(217mL)を加え、内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入し、40℃でプロピレンを10g/時の一定速度で120分間供給した。
プロピレン供給終了後、30分間そのまま維持した。その後、残存ガスをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。残った固体にトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(8.5mL,6.1mmol)を室温にて加え、室温で10分間撹拌した後、40℃で減圧乾燥して固体触媒(触媒K)を28.9g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.83であった。
【0189】
(11−3)触媒Kによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を10mgとし、第一工程で水素を800mL使用し、プロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=50/50となるように調整した以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、328gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は21wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は39mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は602,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は14,500(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは159℃であり、MFRは120(dg/min)、PP重合活性は28,100(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0190】
[実施例12]
(12−1)触媒Aによるプロピレン重合
内容積3Lの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンガスで充分置換した後に、トリイソブチルアルミニウムのn−ヘプタン溶液(2.76mL,2.02mmol)を加え、水素(310mL)、続いて液体プロピレン(750g)を導入し、65℃に昇温し、その温度を維持した。触媒Aをn−ヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)34mgを圧入し、重合を開始した。そのまま、槽内温度を65℃に維持し、触媒投入1時間経過後に、エタノールを圧入し、残モノマーのパージを行い、PPを回収した。その結果、292gのプロピレン重合体を得た。
得られたPPは、活性は8,600(g−PP/g−Cat/hr)、MFRは7.3(dg/min)、重量平均分子量(Mw)は250,000、Tmは161℃であった。
結果を表2にまとめる。
【0191】
[実施例13〜22]
触媒B〜Kによるプロピレン重合
触媒をそれぞれ触媒B〜Kに変え、実施例12(12−1)と同様に操作した。
結果を表2にまとめる。
【0192】
[比較例1]
(比較1−1)メタロセン錯体W:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムの合成
メタロセン錯体Wの合成は、特開2012−121882号公報、実施例1に記載の方法を参考に合成しラセミ体を得た。
【0193】
(比較1−2)メタロセン錯体Wを用いた触媒調製(触媒W)
メタロセン錯体Aの代わりに、メタロセン錯体Wを63mg(75μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒W)7.3gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.44であった。
【0194】
(比較1−3)触媒Wによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
触媒量を50mgとし、プロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=41/59となるように調整した以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、105gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は17wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は52mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は513,000であった。また、また、ゴム重合活性(CP活性)は730(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは160℃であり、MFRは16(g/10min)、PP重合活性は2,200(g−PP/g−Cat/hr)あった。
結果を表1にまとめる。
【0195】
[比較例2]
メタロセン錯体X:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムの合成
(比較2−1)ジメチルビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]シランの合成
2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5、6−ジメチルインデン(2.4g,8.0mmol)をジエチルエーテル(30mL)とトルエン(40mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.59M,5.0mL)を−40℃で滴下した。室温まで昇温し3時間攪拌した後、N−メチルイミダゾール(0.02mL)、ジクロロジメチルシラン(0.49mL,4.0mmol)を−30℃で滴下した。室温まで昇温し1.5時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、ジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル}シランの粗生成物(2.6g)を得た。
【0196】
(比較2−2)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム(メタロセン錯体X)の合成
合成したジメチルビス{2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチルインデニル}シランの粗生成物(2.6g)をジエチルエーテル(30mL)とトルエン(50mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.59M,5.0mL)を氷浴上で滴下した。室温で3時間攪拌した後、減圧下溶媒を留去した。ヘキサン(40mL)で3回洗浄し減圧下溶媒を留去して得られた固体を、−72℃で四塩化ジルコニウム(0.9g)の塩化メチレン(40mL)懸濁溶液に添加し2時間攪拌後、室温で4時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、トルエン抽出、n−へキサンを抽出した。続けて、n−へキサン、ジイソプロピルエーテル、トルエンと順に洗浄した。
さらに塩化メチレン−へキサン再結晶を繰り返し、ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウムのラセミ体0.3gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.09(s,6H,Si(CH),2.05(s,6H,tol−CH),2.14(s,6H,tol−CH),2.41(s,6H,Furyl−CH),6.02(dd,J=1.0Hz,3.3Hz,2H,Furyl−H),6.16(d,J=3.3Hz,2H,Furyl−H),6.44(s,2H,Cp),6.67(s,2H,arm.),7.09−7.12(m,2H,arm.),7.28−7.37(m,2H,arm.),7.43−7.50(m,2H,arm.),7.67−7.72(m,2H,arm.).
【0197】
(比較2−3)メタロセン錯体Xを用いた触媒調製(触媒X)
化学処理モンモリロナイト(5.0g)と、メタロセン錯体Aの代わりに、メタロセン錯体Xを122mg(150μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒X)13.4gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.64であった。
【0198】
(比較2−4)触媒Xによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を50mgとし、第一工程で水素200mLを用い、第二工程でプロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=59/41となるように調整し、第二工程の重合時間を30分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、99.8gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は14wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は32mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は730,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は570(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは159℃であり、MFRは16(dg/min)、PP重合活性は2,100(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0199】
[比較例3]
メタロセン錯体Yの合成:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムの合成
(比較3−1)ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセニル]ジルコニウムの合成
1,1,3,3−テトラメチル−4−フェニル−6−(5−メチル−2−フリル)−1,2,3,5−テトラヒドロ−s−インダセン(2.25g,6.1mmol)をジエチルエーテル(40mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.64M,3.7mL)を−20℃で滴下した。室温で2時間攪拌した後N−メチルイミダゾール(0.02mL)、ジクロロジメチルシラン(0.37mL,3.1mmol)を−20℃で滴下し、室温で1.5時間攪拌した。水を加えて有機層を分取し、硫酸マグネシウム上で乾燥後、減圧下溶媒を留去し、ジメチルビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,5,7,7−テトラメチル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセニル]シランの粗生成物を得た(2.6g)。それをジエチルエーテル(40mL)に溶解させ、n−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液(1.64M,3.7mL)を氷浴上で滴下した。室温で2時間攪拌した後、減圧下溶媒を留去した。
【0200】
ジエチルエーテル(4mL)、トルエン(80mL)を加え、−72℃に冷却し、四塩化ジルコニウム(0.76g,3.3mmol)を添加し室温で2時間攪拌した。得られた反応溶液を一度濃縮し、n−へキサンで抽出して再び濃縮乾固した。n−ヘキサンで洗浄、ジエチルエーテル洗浄を繰り返したのち、トルエン抽出を行い溶解性の低い不純物を除いた。それにより、目的のジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウムのラセミ体0.2g得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.98(s,6H),1.09(s,12H),1.16(s,6H),1.20(s,6H),1.76(s,4H),2.36(s,6H),5.94(s,2H),6.16(s,2H),6.26(s,2H),6.7−7.7(12H).
【0201】
(比較3−2)メタロセン錯体Yを用いた触媒調製(触媒Y)
メタロセン錯体Aの代わりに、メタロセン錯体Yを63mg(75μmol)用いた他は、実施例1(1−7)と同様の操作により固体触媒(触媒Y)7.3gを得た。
そのときの予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は0.44であった。
【0202】
(比較3−3)触媒Yによるプロピレン−プロピレン・エチレン2段重合
使用した触媒を70mgとし、プロピレン/エチレン重合時の槽内の平均ガスmol組成をプロピレン/エチレン=42/58となるように調整し、第二工程の重合時間を25分間とした以外は、実施例1(1−8)と同様に操作した。その結果、174gのプロピレン−プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た。
上記で得られたブロック共重合体は、CFC−IRの結果から、ゴム含有量(CP含有量)は51wt%、ゴム(CP)中のエチレン含有量は55mol%であり、CP部の重量平均分子量(Mw)は656,000であった。また、ゴム重合活性(CP活性)は4,000(g−CP/g−Cat/hr)であった。
別途第一工程で採取したプロピレン重合体成分(PP)のTmは157℃であり、MFRは14(dg/min)、PP重合活性は1,600(g−PP/g−Cat/hr)であった。
結果を表1にまとめる。
【0203】
[比較例4〜6]
触媒W〜Yによるプロピレン重合
触媒をそれぞれ触媒W〜Yに変えた以外は、実施例12(12−1)と同様に操作しプロピレン重合体を得た。
結果を表2にまとめる。
【0204】
上記のメタロセン錯体A,B,C,D,E,F,G,H,I及びJを用いた実施例1〜11と、メタロセン錯体W,X及びYを用いた比較例1〜3の重合結果を表1に示す。
【0205】
【表1】
【0206】
上記のメタロセン錯体A,B,C,D,E,F,G,H,I及びJを用いた実施例12〜22と、メタロセン錯体W,X及びYを用いた比較例4〜6の重合結果を表2に示す。
【0207】
【表2】
【0208】
錯体
メタロセン錯体A:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
メタロセン錯体B:ジクロロシラシクロペンチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
メタロセン錯体C:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体D:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
【0209】
メタロセン錯体E:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−t−ブチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体F:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(3,5−ジメチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体G:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチルフェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体H:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
メタロセン錯体I:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−(2,6−ジメチル−4−ビフェニリル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体J:ジクロロシラシクロブチレンビス[2−(4,5−ジメチル−2−フリル)−4−(4−t−ブチル−フェニル)−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
【0210】
メタロセン錯体W:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
メタロセン錯体X:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−5,6−ジメチル−1−インデニル]ジルコニウム
メタロセン錯体Y:ジクロロジメチルシリレンビス[2−(5−メチル−2−フリル)−4−フェニル−1,5,6,7−テトラヒドロ−5,5,7,7−テトラメチル−s−インダセン−1−イル]ジルコニウム
【0211】
表1の重合結果から、本発明のメタロセン錯体とそれを含む触媒は、従来のメタロセン触媒と比較して、高いエチレン取り込み効率を維持したまま、高活性でPP重合体成分、およびCP成分を重合することができ、さらに、表2よりプロピレンの単独重合において、高い融点を有するホモポリプロピレンを高活性で製造できることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明のメタロセン錯体およびそれを含む触媒、並びにオレフィン重合体の製造方法により、高い活性で、プロピレン成分およびゴム成分を重合することができ、ゴム部中のエチレンまたはα−オレフィン含量の高いプロピレン−プロピレン・(エチレンまたはα−オレフィン)ブロック共重合体を効率よく製造できる。また、プロピレンの単独重合において、高い融点を有するホモポリプロピレンを製造することもでき、非常に有用である。