特許第6398839号(P6398839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398839
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/90 20060101AFI20180920BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20180920BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H01J61/90
   G02B19/00
   G03F7/20 502
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-72274(P2015-72274)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-192343(P2016-192343A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106862
【弁理士】
【氏名又は名称】五十畑 勉男
(72)【発明者】
【氏名】林 賢志
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−13030(JP,U)
【文献】 特開平9−190975(JP,A)
【文献】 特開2014−235965(JP,A)
【文献】 米国特許第4974137(US,A)
【文献】 特開2008−300298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00−9/90
F21S2/00−45/70
F21V1/00−15/04
23/00−37/00
99/00
G02B19/00−21/00
21/06−21/36
G03B21/00−21/10
21/12−21/13
21/134−21/30
33/00−33/16
G03F7/20−7/24
9/00−9/02
H01J61/30−65/08
H01L21/027
21/30
21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、発光管の内部に一対の主電極と、該一対の主電極間に配置された一対の始動補助電極を有するショートアークフラシュランプと、該フラシュランプからの光を平行光として下方に反射する反射ミラーとを有するとともに、前記ハウジングの下方には光透過窓が設けられてなる光源装置において、
前記光透過窓は、前記ハウジングの下方に設けられた遮光板の一部に設けられているとともに、該光透過窓は、前記フラッシュランプの直下を避けた位置に形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記光透過窓は、前記遮光板において、前記始動補助電極の対向方向を避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記フラッシュランプが両端封止型のランプであって、
前記光透過窓は、前記遮光板において、前記主電極から前記反射ミラーの下方側に導出された外部リードへの給電線の配線方向を避けた位置に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記フラッシュランプは複数本並列配置され、
前記反射ミラーには、前記複数本のフラッシュランプの各々に対応した複数の反射面が連設して形成され、
前記光透過窓が矩形形状であり、前記反射ミラーの複数の反射面からの反射光を透過するように同一方向に並列配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光源装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はショートアークフラッシュランプを用いた光源装置に関するものであり、特に、ショートアークフラッシュランプからの真空紫外光を平行光として被処理物に照射して各種の処理を行う光源装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、波長200nm以下の真空紫外光(以下、VUVともいう)が様々な分野で用いられている。例えば、フォトレジストによるパターン形成工程を用いずにVUVとマスクを用い、直接光で化学反応を引き起こして自己組織化単分子膜(以下、SAM膜)をパターニングする技術が開発されている。
従来、このようなVUV光源としては、波長185nmに輝線を有する低圧水銀ランプが使用されてきた。しかしながら、最近では、より短波長の光、具体的には波長180nm以下のVUVが有効であるといわれることから、波長172nmの真空紫外光を放射するエキシマランプを光源とした開発も行われている。ところで、これらのランプから放射される光は発散光であるために、マスクを用いた微細な選択的表面改質(パターニング)には不向きであるとされ、解像可能なパターンサイズに限界があるといわれている。具体的に述べると、ラインパターンでは100μm程度が限界といわれている。
【0003】
近時、より微細なパターニングに適した光源装置の開発が要請されており、このようなことから新規のVUV光源を用いた光源装置について提案されていて、例えば、特開2004−235965号公報(特許文献1)にその構造が開示されている。
特許文献1記載の技術は、従来の発光長が長いランプ(エキシマランプ、低圧水銀ランプ)に替えて、発光長がより短いショートアークフラッシュランプを光源として採用するものである。このフラッシュランプから放射されたVUV光を、ミラーを用いて平行光(ないしは略平行光)として露光光源を構成するものである。
そして、特開2014−170921号公報(特許文献2)には、このような光源装置のショートアークフラシュランプとして両端封止型のランプを用いたものが開示されている。
【0004】
図4(A)に、特許文献1に開示される光源装置の概略構造が示されている。
図4(A)において、ランプハウス90内に、VUV光源であるショートアークフラッシュランプ91と、このフラッシュランプ91から放射される光を一方向に平行光として出射させる放物面(回転放物面)を有する反射ミラー92とが収容されていて、ランプハウス90の下方にはVUVを透過する光透過窓93が設けられている。このランプハウス90内は、VUVの透過性を維持するために不活性ガスが充填されている。
また、この従来技術においては、フラッシュランプ91は片端封止型のランプが示されていて、キセノンガスなどが封入された発光管91aの内部には、一対の電極91b,91bが対向配置されるとともに、この電極間には一対の始動補助電極91c,91cが配置されている。
このフラッシュランプ91は、その電極91b,91bの対向軸が前記反射ミラー92の光軸に沿うように配置されている。
【0005】
なお、上記特許文献1の光源装置におけるフラッシュランプは、片端封止型のショートアークフラシュランプが開示されているが、同様の光源装置において、両端封止型のショートアークフラシュランプを用いたものが特許文献2に開示されていることは前述の通りである。
その両端封止型のショートアークフラシュランプの概略構造が図5に示されていて、発光管101の両端には第1封止管102と第2封止管103が連設されていて、該第2封止管103には封止用ガラス管104が挿入されていて、両者は溶着されている。
前記発光管101内には一対の主電極105,106が配置されるとともに、この主電極間には一対の始動補助電極107,108が配置されている。
そして、前記第1封止管102には第1の主電極105の芯線105aが支持・封止されてその外方に導出されており、一方、第2の主電極106は、その芯線106aが前記封止用ガラス管104に支持・封止されてその外方に導出されている。
【0006】
前記主電極105,106間に配置された一対の始動補助電極107,108の内部リード107a,108aと外部リード107b,108bとが、前記第2封止管103と封止用ガラス管104との間の溶着領域において、金属箔107c、108cを介して電気的に接続されている。これにより外部リード107b,108bは第2封止管103と封止用ガラス管104の間から外部に導出されている。
【0007】
上記のようなショートアークフラッシュランプを用いた光源装置においては、図4(A)に示すように、フラッシュランプは、その対向主電極の軸方向が、反射ミラーの光軸に沿う方向に配置される。
ところでこのような光源装置によって平行光を得ようとすると、反射ミラーの中心部にはフラッシュランプが存在することから、光源装置から放射された光は、図4(B)に示すように、中心部において照度が低くなり、反射ミラーの反射面の形状に沿って、中心部を取り巻く環状部の照度が高くなる、いわゆるドーナッツ状の照度分布を形成することになる。
このように、ワークの照射面において露光領域の中心部分とその周囲の環状部とで照度分布のばらつきが大きいと、一様な露光ができずに露光ムラが生じてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−235965号公報
【特許文献2】特開2014−170921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑みて、ハウジング内に、発光管の内部に一対の主電極と、該一対の主電極間に配置された一対の始動補助電極を有するショートアークフラシュランプと、該フラシュランプからの光を平行光として下方に反射する反射ミラーとを有するとともに、前記ハウジングの下方には光透過窓が設けられてなる光源装置において、光透過窓から出射される光が、反射ミラーの中心部に配置されたフラッシュランプの影響を受けることなく、照度均一性の高い光が得られるようにした構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明に係るショートアークフラッシュランプを用いた光源装置では、前記光透過窓は、前記ハウジングの下方に設けられた遮光板の一部に設けられているとともに、該光透過窓は、前記フラッシュランプの直下を避けた位置に形成されていることを特徴とする。
また、前記光透過窓は、前記遮光板において、前記始動補助電極の対向方向を避けた位置に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記フラッシュランプが両端封止型のランプであって、前記光透過窓は、前記遮光板において、前記主電極から前記反射ミラーの下方側に導出された外部リードへの給電線の配線方向を避けた位置に形成されていることを特徴とする。
また、前記フラッシュランプは複数本並列配置され、前記反射ミラーには、前記複数本のフラッシュランプの各々に対応した複数の放物面が連設して形成され、前記光透過窓が矩形形状であり、前記反射ミラーの複数の放物面からの反射光を透過するように同一方向に並列配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明のショートアークフラッシュランプを用いた光源装置によれば、光透過窓は、前記ハウジングの下方に設けられた遮光板におけるフラッシュランプの直下を避けた位置に設けられているので、該光透過窓から出射される平行光は、フラッシュランプの影響を受けることなく、照度均一性の高い平行光が得られる。
また、前記光透過窓は、前記遮光板において、始動補助電極の対向方向を避けた位置に形成されていることにより、フラッシュランプからの出射光が始動補助電極の陰になることもなく、光透過窓からの出射光に照度ムラが生じることがない。
【0013】
また、前記フラッシュランプが両端封止型のランプの場合、前記光透過窓が、前記遮光板において、前記主電極から前記反射ミラーの下方側に導出された外部リードへの給電線の配線方向を避けた位置に形成されているので、反射ミラーからの反射光が外部リードの影響を受けることがない。
前記フラッシュランプが複数本並列配置され、前記反射ミラーには、前記複数本のフラッシュランプの各々に対応した複数の放物面が連設して形成され、前記光透過窓が矩形形状であり、前記反射ミラーの複数の放物面からの反射光を透過するように同一方向に並列配置されているので、照射領域が広く、照度均一性の高い平行光を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の光源装置の断面図(A)(C)とその下面図(B)(D)。
図2】本発明の作用説明図。
図3】フラッシュランプを複数本配置した実施例の断面図(A)と、その下面図(B)。
図4】従来の光源装置。
図5】従来の両端封止型のショートアークフラシュランプの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明のショートアークフラッシュランプを用いた光源装置を表し、(A)は断面図であり、(B)はその下面図、(C)は(A)を90°回転させた断面図、(D)はその下面図である。
ランプハウス1内に、VUV光源であるショートアークフラッシュランプ2と、このフラッシュランプ2から放射される光を一方向(下方)に平行光として反射する回転放物面を有する反射ミラー3とが設けられている。
この実施例ではフラッシュランプ2は両端封止型のランプが示されていて、フラッシュランプ2の発光空間内には、一対の主電極21,22が設けられ、この主電極21,22間に一対の始動補助電極23,24が対向配置されている。
【0016】
このフラッシュランプ2は、一対の主電極21,22の対向方向(電極軸方向)が反射ミラー3の光軸と沿うように配置されていて、一対の始動補助電極23,24の外部リード25,26が反射ミラー3の背面側(上方側)に引き出されるとともに、反射ミラー3の前面開口側(下方側)に位置する一方の主電極22の外部リード27への給電線28が、反射ミラー3の開口側(下方側)から引き出されている。
ランプハウス1の下方には遮光板4が設けられていて、この遮光板4の一部には、図1(B)(D)に示すように、光透過窓5が形成されている。
この光透過窓5は、遮光板4において、フラッシュランプ2の直下を避けた位置、即ち、フラッシュランプ2の直下を外した環状領域の一部に設けられていて、単に開口として形成するか、該開口に紫外線透過性を有する板状の部材を嵌めこむかして形成する。紫外線透過性を有する部材としては、石英ガラス(好ましくは合成石英ガラス)、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなどが好適である。
【0017】
また、図1(B)(D)に示すように、この光透過窓5は、一対の始動補助電極23,24の対向方向を避けた位置に設けることが好ましい。
図2にその関係が示されていて、図2(B)に示すように、光透過窓5を始動補助電極23,24の対向方向に沿うように位置させると、アークAからの光が始動補助電極23,24の影響を受けて陰Sになり、照度の低下をもたらす。これに対して、図2(A)に示すように、光透過窓5を始動補助電極23,24の対向方向を避けた位置に設けることで、アークAからの光が始動補助電極23,24の影Sの影響を受けることがなくなる。
【0018】
また、前記光透過窓5は、フラッシュランプ2の下方側(前面開口側)の主電極22の外部リード27に接続された給電線28の配線方向を回避した位置に設けられる。つまり、光透過窓5は、反射ミラー3からの反射光が給電線28によって影響を受ける位置を回避した位置に設けられるものである。
【0019】
図3に他の実施例が示されていて、この実施例では、フラッシュランプ2、2が複数本並列配置されている。図3(B)に示すように、反射ミラー3には、複数本のランプ2、2の各々に対応して、複数の反射面31,31が連設して形成されている。これら複数の反射面31,31はいずれも、各々の反射面31,31に対応する各フラシュランプ2,2からの光を平行光として下方に反射するものであり、放物面で構成されている。
そして、遮光板4には、ランプ2,2の直下を避けた位置にそれぞれのランプ2,2に対応して光透過窓5,5が形成されている。この光透過窓5は矩形形状をなし、これらの光透過窓5,5はランプ2,2の配列方向に沿うように並列配置されて、全体として一つの光透過窓5を形成している。
これにより、広い光透過窓5が形成されて、広い領域の露光領域が得られる。
この場合も、光透過窓5は、ランプ2の始動補助電極23,24の対向方向Lを回避した位置、例えば、直交する方向位置に設けられる。また、給電線28,28も光透過窓5,5とは別の方向に引き出されている。
【0020】
以上説明したように、本発明に係るショートアークフラッシュランプを用いた光源装置では、光透過窓が、ハウジング内の反射ミラーの下方に設けられた遮光板の一部に設けられていて、かつ、前記フラッシュランプの直下を避けた位置に設けられているので、反射ミラーからの反射光を透過する光透過窓からの出射光が、フラッシュランプの設置位置による影響を受けることがなく、照度均一性の高い光が得られるものである。
とりわけ、光源装置がVUVを放射する場合、反射ミラーと被処理物との間にレンズ等の光学素子を用いると、かかる光学素子によって光の吸収や減衰が生じて光の利用効率が低下することになるが、本発明に係る光源装置によれば光学素子を介在させずに直接取り出す構成とされているので、高い効率で均一なVUVを放射することが可能になる。
【符号の説明】
【0021】
1 ハウジング
2 ショートアークフラッシュランプ
21,22 主電極
23,24 始動補助電極
26,26 (始動補助電極の)外部リード
27 (主電極の)外部リード
28 給電線
3 反射ミラー
31 反射面
4 遮光板
A アーク
S 始動補助電極の陰


図1
図2
図3
図4
図5