(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記浸透工程では、前記積層方向から平面視したときに前記複数のコイル導体層が重なって形成される環状の軌道の外周側の外縁と前記積層体の外縁とに挟まれているサイドギャップを介して前記複数のコイル導体層と該複数のコイル導体層の周囲の前記絶縁体層との界面まで前記酸性溶液を浸透させること、
を特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の電子部品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(電子部品の構造)
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
図1は、電子部品10の外観斜視図である。
図2は、電子部品10の積層体12の分解斜視図である。以下では、電子部品10の積層方向を左右方向と定義し、電子部品10を左側から平面視したときに、2つの辺が延在する方向をそれぞれ前後方向及び上下方向と定義する。上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交している。
【0013】
電子部品10は、
図1及び
図2に示すように、積層体12、コイルL及び外部電極14a,14bを備えている。積層体12は、直方体状をなしており、
図2に示すように、絶縁体層16a〜16oが左側から右側へとこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。
【0014】
絶縁体層16a〜16oは、左側から平面視したときに正方形状をなしている。ただし、絶縁体層16a〜16oは、左側から平面視したときに長方形状をなしていてもよい。絶縁体層16a〜16oは、フェライトセラミックを含んでおり、本実施形態では、NiCuZn系フェライトセラミックを含んでいる。ただし、絶縁体層16a〜16oの材料はこれに限らない。以下では、絶縁体層16a〜16oの左側の主面を表面と呼び、絶縁体層16a〜16oの右側の主面を裏面と呼ぶ。
【0015】
外部電極14aは、積層体12の左面の全体を覆うと共に、積層体12の上面、下面、前面及び後面の一部を覆っている。外部電極14bは、積層体12の右面の全体を覆うと共に、積層体12の上面、下面、前面及び後面の一部を覆っている。外部電極14a,14bは、例えば、Agを主成分とする導電性ペーストにより下地電極を作製した後に、下地電極上にNiめっき及びSnめっきをこの順に施すことにより作製される。ただし、外部電極14a,14bの形状及び材料はこれに限らない。
【0016】
コイルLは、
図2に示すように、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9を含んでいる。コイル導体層18a〜18hはそれぞれ、絶縁体層16d〜16kの表面上に設けられている。コイル導体層18a〜18hは、枠状の正方形状の1辺が切り欠かれた形状をなしており、角張ったU字型をなしている。すなわち、コイル導体層18a〜18hは、3/4ターンの長さを有している。また、コイル導体層18a〜18hは、左側から平面視したときに、互いに重なり合って枠状の正方形状の軌道Rをなしている。ただし、コイル導体層18a〜18hの長さや形状は、これに限らない。以下では、左側から平面視したときに、コイル導体層18a〜18hの反時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、コイル導体層18a〜18hの反時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。
【0017】
ビアホール導体v1は、絶縁体層16a〜16cを左右方向に貫通しており、外部電極14aとコイル導体層18aの上流端とを接続している。ビアホール導体v2は、絶縁体層16dを左右方向に貫通しており、コイル導体層18aの下流端とコイル導体層18bの上流端とを接続している。ビアホール導体v3は、絶縁体層16eを左右方向に貫通しており、コイル導体層18bの下流端とコイル導体層18cの上流端とを接続している。ビアホール導体v4は、絶縁体層16fを左右方向に貫通しており、コイル導体層18cの下流端とコイル導体層18dの上流端とを接続している。ビアホール導体v5は、絶縁体層16gを左右方向に貫通しており、コイル導体層18dの下流端とコイル導体層18eの上流端とを接続している。ビアホール導体v6は、絶縁体層16hを左右方向に貫通しており、コイル導体層18eの下流端とコイル導体層18fの上流端とを接続している。ビアホール導体v7は、絶縁体層16iを左右方向に貫通しており、コイル導体層18fの下流端とコイル導体層18gの上流端とを接続している。ビアホール導体v8は、絶縁体層16jを左右方向に貫通しており、コイル導体層18gの下流端とコイル導体層18hの上流端とを接続している。ビアホール導体v9は、絶縁体層16k〜16oを左右方向に貫通しており、コイル導体層18hの下流端と外部電極14bとを接続している。
【0018】
コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9は、例えば、Agを主成分とする導電性ペーストにより作製される。
【0019】
以上のようなコイルLは、左側から平面視したときに反時計回り方向の周回しながら左側から右側へと進行する螺旋状をなしている。
【0020】
ところで、電子部品10は、内部応力を緩和しつつ、積層体12の強度を向上させるために、以下に説明する構造を有する。
図3Aは、
図1のA−Aにおける断面構造図である。
図3Bは、
図3AのB−Bにおける断面構造図である。
【0021】
まず、積層体12の各部について定義する。コイル導体層18a〜18hが重なって形成される環状の軌道を軌道Rと定義する。また、軌道Rは、正方形状の枠状をなしている。軌道Rの外周側の外縁を外縁C1と定義し、軌道Rの内周側の外縁を外縁C2と定義する。ここで、積層体12において、外縁C1と積層体12の外縁とに挟まれている領域をサイドギャップA1と定義する。サイドギャップA1の左端は、コイル導体層18aの左側の主面であり、サイドギャップA1の右端は、コイル導体層18hの右側の主面である。
【0022】
また、コイル導体層18a〜18hの内の2つのコイル導体層により左右方向から挟まれている領域を層間部A2と定義する。層間部A2は、
図3Bに示すように、左側から平面視したときに、外縁C1と外縁C2に挟まれた領域であり、軌道Rと一致する。層間部A2の左端は、絶縁体層16dの表面であり、層間部A2の右端は、絶縁体層16jの裏面である。
【0023】
ここで、サイドギャップA1のポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下である。ただし、少なくとも、サイドギャップA1の左右方向の中央におけるポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であればよい。サイドギャップA1全体のポア面積率P1が、9.0%以上20.0%以下であることが最も好ましい。また、層間部A2のポア面積率P2は、0%以上8.0%以下であり、より好ましくは、0.7%以上7.7%以下である。ただし、少なくとも、積層体12の左右方向の中央に1番目に近いコイル導体層と2番目に近いコイル導体層とに挟まれた部分のポア面積率P2が0%以上8.0%以下であり、より好ましくは、0.7%以上7.7%以下であればよい。層間部A2全体のポア面積率P2は、0%以上8.0%以下であり、0.7%以上7.7%以下であることが特に好ましい。更に、ポア面積率P1とポア面積率P2との差は、4.0%以上であることが好ましい。ポア面積率とは、積層体12の断面において、単位面積の断面に対してポア(空孔)が占める面積の割合である。ポアとは、絶縁体内に形成され、絶縁体の材料が存在しない空間である。
【0024】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図4A及び
図4Bは、絶縁体層16k,16jの積層時の断面構造図である。
【0025】
まず、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216o(マザー絶縁体層の一例)を準備する。具体的には、48mol%の酸化第二鉄(Fe
2O
3)、29.5mol%の酸化亜鉛(ZnO)、14.5mol%の酸化ニッケル(NiO)及び7.7mol%の酸化銅(CuO)を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を700℃で2時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて16時間にわたって湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0026】
このフェライトセラミック粉末に対して結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216oを作製する。セラミックグリーンシート216a〜216oの厚みは、13.0μmである。
【0027】
次に、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216oのそれぞれに、ビアホール導体v1〜v9を形成する。具体的には、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216oにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体v1〜v9を形成する。
【0028】
次に、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216o上に、導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体層18a〜18hを形成する。導電性ペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。なお、コイル導体層18a〜18hを形成する工程とビアホールに対して導電性材料からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0029】
次に、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216oを積層して未焼成のマザー積層体を得る。具体的には、
図4A及び
図4Bに示すように、絶縁体層16a〜16oとなるべきセラミックグリーンシート216a〜216oを1枚ずつ積層及び仮圧着する。仮圧着条件は、例えば、100kgf/cm
2の圧力及び3秒間から30秒間程度の時間である。
図4Aに示すように、コイル導体層18g,18hが設けられている部分の左右方向の厚みは、コイル導体層18g,18hが設けられていない部分の左右方向の厚みより大きい。したがって、
図4Bに示すように、コイル導体層18g,18hが設けられたセラミックグリーンシート216j,216kが仮圧着されると、コイル導体層18g,18hが設けられていないサイドギャップA1及び領域A3では、コイル導体層18g,18hが設けられている層間部A2よりも弱く圧着される。そのため、サイドギャップA1及び領域A3におけるセラミックグリーンシートの材料の密度は、層間部A2におけるセラミックグリーンシートの材料の密度よりも低くなる。この後、未焼成のマザー積層体に対して本圧着を施さない。ただし、必要に応じて、400kgf/cm
2以下の弱い圧力でマザー積層体に対して本圧着を施してもよい。
【0030】
次に、マザー積層体を複数の積層体12に分割する。具体的には、マザー積層体をカット刃により所定寸法の複数の積層体12にカットする。これにより未焼成の積層体12が得られる。
【0031】
次に、未焼成の積層体12に、脱バインダー処理及び焼成を行う。サイドギャップA1及び領域A3におけるセラミックグリーンシート216a〜216oの材料の密度は、層間部A2におけるセラミックグリーンシート216a〜216oの材料の密度よりも低くなっている。その結果、サイドギャップA1及び領域A3のポア面積率は、層間部A2のポア面積率よりも大きくなる。具体的には、サイドギャップA1及び領域A3のポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下になる。また、層間部A2のポア面積率P2は、0.7%以上8.0%以下になる。脱バインダー処理及び焼成の条件については、後述する。
【0032】
以上の工程により、焼成された積層体12が得られる。積層体12にバレル加工を施して、面取りを行う。その後、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12の表面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約750℃の温度で60分間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14a,14bの下地電極が形成される。
【0033】
次に、NiCl
2溶液(酸性溶液の一例)に積層体12を浸漬させる。これにより、NiCl
2溶液がサイドギャップA1を介してコイル導体層18a〜18hとコイル導体層18a〜18hの周囲の絶縁体層16c〜16lとの界面まで浸透する。その結果、コイル導体層18a〜18hとコイル導体層18a〜18hの周囲の絶縁体層16c〜16lとの界面の結合がNiCl
2溶液により切断される。
【0034】
最後に、下地電極の表面に、Niめっきを施した後に、Snめっきを施すことにより、外部電極14a,14bを形成する。以上の工程を経て、
図1に示すような電子部品10が完成する。
【0035】
(効果)
以上のように構成された電子部品10によれば、内部応力の緩和が図られる。より詳細には、サイドギャップA1のポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下である。したがって、積層体12をNiCl
2溶液に浸漬した際に、NiCl
2溶液がサイドギャップA1を介してコイル導体層18a〜18hとコイル導体層18a〜18hの周囲の絶縁体層16c〜16lとの界面まで浸透する。その結果、コイル導体層18a〜18hとコイル導体層18a〜18hの周囲の絶縁体層16c〜16lとの界面の結合がNiCl
2溶液により切断される。すなわち、コイル導体層18a〜18hと絶縁体層16c〜16lとが接触しているものの、固着していない。これにより、コイル導体層18a〜18hと絶縁体層16c〜16lとの間に発生する内部応力が緩和される。その結果、絶縁体層16c〜16lに応力が加わることによる透磁率の変化等が抑制されるようになる。
【0036】
また、電子部品10では、層間部A2のポア面積率P2は、0.7%以上8.0%以下である。これにより、後述する実験結果からも分かるように、積層体12の強度が向上する。
【0037】
(実験)
本願発明者は、電子部品10が奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。まず、本願発明者は、サンプル1ないしサンプル27を30個ずつ作成した。サンプル1ないしサンプル9では、仮圧着及び本圧着を行った。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。本圧着時の圧力は、1000kgf/cm
2とした。サンプル1ないしサンプル9では、焼成温度の最高温度(以下、単に焼成温度と称す)を850℃から910℃まで変化させた。サンプル10ないしサンプル18では、仮圧着及び本圧着を行った。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。本圧着時の圧力は、400kgf/cm
2とした。サンプル10ないしサンプル18では、焼成温度を860℃から920℃まで変化させた。サンプル19ないしサンプル27では、仮圧着のみを行い本圧着を行わなかった。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。サンプル19ないしサンプル27では、焼成温度を870℃から930℃まで変化させた。
【0038】
サンプル1ないしサンプル27のサイズは以下の通りである。
左右方向の長さ:0.6mm
前後方向の長さ:0.3mm
上下方向の長さ:0.3mm
また、サンプル1ないしサンプル27におけるコイルLのターン数は、30ターンである。また、目標とするインピーダンス特性の値は100MHzにおいて1200Ω(公差±10%)と設定した。
【0039】
以上のようなサンプル1ないしサンプル27において、サイドギャップA1のポア面積率P1及び層間部A2のポア面積率P2を測定した。また、サンプル1ないしサンプル27において、100MHzにおけるインピーダンス特性を測定した。更に、サンプル1ないしサンプル27において、抗折強度を測定した。更に、サンプル1ないしサンプル27において、第1のたわみ試験を行った。以下に、各測定の詳細について説明する。
【0040】
(a)ポア面積率の測定
積層体12の前後方向に垂直な断面を鏡面研磨し、収束イオンビーム加工(FIB加工)した面を走査電子顕微鏡(SEM)により観察し、焼結後の積層体12のポア面積率を測定した。
【0041】
具体的には、画像処理ソフト「A像くん」によりポア面積率を測定した。その具体的な、測定方法は、以下の通りである。
FIB装置 :SII製 SMI3050R
SEM(走査電子顕微鏡) :日立ハイテク製S−4800
A像くん(画像処理ソフト):旭化成製
【0042】
<収束イオンビーム加工(FIB加工)>
図4Cは、収束イオンビーム加工の説明図である。
図4Cに示すように、鏡面研磨したサンプルの研磨面に対し、入射角5°でFIB加工を行った。
【0043】
<走査電子顕微鏡(SEM)による観察>
SEM観察は、以下の条件で行った。
加速電圧 :5kV
試料傾斜 :5゜
信号 :二次電子
コーティング :Pt
倍率 :5000倍
【0044】
<ポア面積率の算出>
ポア面積率は、以下の方法で求めた
a)計測範囲を決める。小さすぎると測定箇所による誤差が生じる。
(この実施例では、計測範囲を24.76μm×14.39μmとした)
b)磁性体セラミックとポアが識別しにくければ明るさ、コントラストを調節する。
c)2値化処理を行い、ポアのみを抽出する。画像処理ソフトA像くんの「色抽出」では完全でない場合には手動で補う。
d)ポア以外を抽出した場合はポア以外を削除する。
e)画像処理ソフトの「総面積・個数計測」で総面積、個数、ポア面積率、計測範囲の面積を測定する。
f)ここで内部電極が像に含まれている場合は、内部電極の部分の面積は不要な部分の面積として次式で算出する。
ポア面積率=ポア総面積/(計測範囲の面積−不要な部分の総面積)×100
【0045】
なお、サイドギャップA1のポア面積率P1を求める際には、サイドギャップA1の左右方向の中央におけるポア面積率を測定した。また、層間部A2のポア面積率P2を求める際には、積層体12の左右方向の中央に1番目に近いコイル導体層及び2番目に近いコイル導体層の間のポア面積率を測定した。
【0046】
(b)インピーダンス特性の測定
サンプル1ないしサンプル27を30個ずつ準備し、インピーダンスアナライザ(ヒューレット・パッカード社製HP4291A)を用いて100MHzにおけるインピーダンスの測定を行って平均値を求めた。
【0047】
(c)抗折強度の測定
30個の試料について、EIAJ−ET−7403に規定の試験方法にて測定を行い、ワイブルプロットした場合における破壊確率=1%のときの強度を抗折強度とした。
【0048】
(d)第1のたわみ試験
30個の試料について、基板厚0.8mmのガラスエポキシ基板に実装し、この基板を中央部裏面より押し棒を用いて表面方向に押圧することで2.0mmまで撓ませ、30秒保持した。
【0049】
表1ないし表3は、実験結果を示した表である。
図5は、実験結果を示したグラフである。横軸はポア面積率P1を示し、横軸はポア面積率P2を示している。
【0053】
なお、表1ないし表3では、インピーダンス特性が1080Ω以上(すなわち、目標とするインピーダンス値1200Ωに対して−10%以内)となったサンプルについては良品と判定し、インピーダンス特性が1080Ωより小さくなったサンプルについては不良品と判定した。インピーダンス特性による良品又は不良品の判定は、内部応力による良品又は不良品の判定と等価である。すなわち、内部応力が緩和されている場合には、絶縁体層の透磁率の低下が抑制され、十分なインダクタンス値が発生しているために、インピーダンス特性が相対的に大きくなる。一方、内部応力が緩和されていない場合には、絶縁体層の透磁率が低下し、十分なインダクタンス値が発生していないために、インピーダンス特性が相対的に小さくなる。
【0054】
なお、焼成温度が高くなるにしたがって、インピーダンス特性において不良品と判定されるサンプルが多くなっている。これは、焼成温度が高くなると、積層体12が十分に焼成されてサイドギャップA1のポア面積率P1が小さくなり、NiCl
2溶液が積層体12内に浸透しにくくなるためである。
【0055】
また、抗折強度が4.0N以上となったサンプルについては良品と判定し、抗折強度が4.0Nより小さくなったサンプルについては不良品と判定した。たわみ試験は、たわみ量2.0mmで30秒保持後に、積層体のクラックの発生が無いものを良品と判定した。また、表1ないし表3では、30個の試料全てが良品の場合に○と記載し、1つでも不良品がある場合に×とした。第1のたわみ試験及び抗折強度の試験に基づいて、積層体12の強度を判定した。
【0056】
表1ないし表3及び
図5によれば、サイドギャップA1のポア面積率P1が9.0%以上であれば、インピーダンス特性の試験において良品と判定されている。これは、サイドギャップA1のポア面積率P1が高くなれば、NiCl
2溶液が積層体12内に浸透しやすくなるためである。その結果、内部応力が緩和され、電子部品のインダクタンス値の低下が抑制されている。ただし、サイドギャップA1のポア面積率P1が大きくなり過ぎる(例えば、20%より大きくなる)と、積層体の透磁率が低下するので、電子部品のインダクタンス値が低下する。したがって、ポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下であることが好ましい。
【0057】
一方、表1ないし表3及び
図5によれば、層間部A2のポア面積率P2が8.0%以下であれば、第1のたわみ試験及び抗折強度の試験において良品と判定されている。これは、層間部A2のポア面積率P2が小さくなっているために、積層体の強度が向上しているためである。なお、ポア面積率P2は、低いことが好ましく、0%であってもよい。ただし、ポア面積率P2は、0.7%以上であることが好ましい。
【0058】
サンプル6、サンプル13ないしサンプル15及びサンプル21ないしサンプル24については、インピーダンス特性の試験、第1のたわみ試験及び抗折強度の試験において良品と判定された。サンプル6、サンプル13ないしサンプル15及びサンプル21ないしサンプル24では、ポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下であり、ポア面積率P2は、0.7%以上8.0%以下である。以上より、実験によれば、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である場合には、内部応力を緩和しつつ、積層体12の強度を向上させることができる。
【0059】
ところで、実験によれば、電子部品10の製造において、本圧着を行わない又は本圧着を低い圧力(400kgf/cm
2以下)で行った場合の方が、本圧着を高い圧力(1000kgf/cm
2)で行った場合よりも、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である電子部品10を容易に得ることができる。
【0060】
より詳細には、1000kgf/cm
2の圧力で本圧着を行った場合、焼成温度が885℃であるサンプル6のみが良品と判定されている。一方、400kgf/cm
2の圧力で本圧着を行った場合、焼成温度が885℃以上895℃以下のサンプル13ないしサンプル15が良品と判定されている。また、本圧着を行わなかった場合、焼成温度が890℃以上905℃以下のサンプル21ないしサンプル24が良品と判定されている。このように、本圧着を行わない又は本圧着を低い圧力で行った場合の方が、本圧着を高い圧力で行った場合よりも、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である電子部品10を得るための温度条件が緩くなる。以下に理由を説明する。
【0061】
電子部品10において、内部応力を緩和しつつ、積層体12の強度を向上させるためには、ポア面積率P1が高く、かつ、ポア面積率P2が低いことが好ましい。すなわち、ポア面積率P1とポア面積率P2との差が大きい(例えば、4%以上)ことが好ましい。
【0062】
しかしながら、電子部品の製造方法において、1000kgf/cm
2程度の強い圧力でマザー積層体に対して本圧着を施すと、本圧着により、サイドギャップA1におけるセラミックグリーンシートの材料の密度が上昇する。これにより、サイドギャップA1におけるセラミックグリーンシートの材料の密度と、層間部A2におけるセラミックグリーンシートの材料の密度との差が小さくなる。その結果、サイドギャップA1のポア面積率P1と、層間部A2のポア面積率P2との差が小さくなる。そのため、表1に示すように、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である電子部品10を得ることができる焼成温度が885℃のみとなってしまう。このように、高い圧力で本圧着が行われると、焼成温度を厳しく管理しなければ、所望のポア面積率P1,P2を有する電子部品10を得ることが困難である。
【0063】
一方、電子部品10の製造方法では、未焼成のマザー積層体に対して本圧着を施さない、又は、400kgf/cm
2以下の弱い圧力でマザー積層体に対して本圧着を施す。これにより、サイドギャップA1におけるセラミックグリーンシートの材料の密度は、層間部A2におけるセラミックグリーンシートの材料の密度よりも低くなる。その結果、サイドギャップA1のポア面積率P1が高くなり、層間部A2のポア面積率P2が低くなる。すなわち、ポア面積率P1とポア面積率P2との差が大きくなる。そのため、表2及び表3に示すように、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である電子部品10を得ることができる焼成温度が885℃以上895℃以下又は880℃以上905℃以下となる。すなわち、焼成温度の範囲が広がる。このように、本圧着が行われない、又は、低い圧力で本圧着が行われると、焼成温度を厳しく管理しなくても、所望のポア面積率P1,P2を有する電子部品10を得ることができる。
【0064】
ポア面積率P1,P2は、原料のロットばらつき、粉砕時のばらつき、焼成ばらつき等の種々の加工ばらつきにより変動する。そのため、焼成温度の許容範囲が広くなると、加工ばらつきが存在していたとしても、所望のポア面積率P1,P2を有する電子部品10を得ることが容易となる。
【0065】
(第1の変形例)
以下に、本発明の第1の変形例に係る電子部品10aについて説明する。電子部品10aは、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9の材料において電子部品10と相違する。
【0066】
より詳細には、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9は、Al
2O
3(金属酸化物の一例)を含み、Agを主成分とする導電性ペースト(材料)により作製されている。すなわち、コイル導体層18a〜18hは、Al
2O
3(金属酸化物の一例)を含んでいる。ただし、コイル導体層18a〜18hは、Al
2O
3以外の金属酸化物を含んでいてもよい。なお、電子部品10aの構造は、電子部品10の構造と同じであるので、説明を省略する。
【0067】
電子部品10aによれば、電子部品10と同じ作用効果を奏することができる。
【0068】
また、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9の材料が金属酸化物を含むことにより、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9の焼成時の収縮開始温度が高くなる。そのため、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9の収縮開始温度と絶縁体層16a〜16oの収縮開始温度とが近づく。その結果、コイル導体層18a〜18h及びビアホール導体v1〜v9が絶縁体層16a〜16oよりも先に収縮して、絶縁体層16a〜16oの焼結が妨げられることが抑制される。よって、絶縁体層16a〜16oのポア面積率にばらつきが発生することが抑制され、積層体12の強度のばらつきが抑制される。その結果、ワイブルプロットした場合における破壊確率=1%のときの抗折強度の値が上がる。
【0069】
本願発明者は、前記電子部品10aが奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。まず、本願発明者は、サンプル28ないしサンプル30を30個ずつ作成した。サンプル28ないしサンプル30では、仮圧着のみを行い本圧着を行わなかった。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。また、サンプル28ないしサンプル30では、導電性ペーストに混合するAl
2O
3の割合を変化させた。なお、焼成温度はいずれも890℃とした。
【0070】
サンプル28ないしサンプル30のサイズは以下の通りである。
左右方向の長さ:0.6mm
前後方向の長さ:0.3mm
上下方向の長さ:0.3mm
また、サンプル28ないしサンプル30におけるコイルLのターン数は、30ターンである。また、目標とするインピーダンス特性の値は100MHzにおいて1200Ω(公差±10%)と設定した。
【0071】
以上のようなサンプル28ないしサンプル30において、サイドギャップA1のポア面積率P1及び層間部A2のポア面積率P2を測定した。更に、サンプル28ないしサンプル30において、抗折強度を測定した。更に、サンプル28ないしサンプル30において、第1のたわみ試験及び第2のたわみ試験を測定した。
【0072】
(第2のたわみ試験)
30個の試料について、基板厚0.8mmのガラスエポキシ基板に実装し、この基板を中央部裏面より押し棒を用いて表面方向に押圧することで3.0mmまで撓ませ、30秒保持した。
【0075】
表4によれば、Al
2O
3を含んでいる導電性ペーストを用いたサンプル29及びサンプル30では、Al
2O
3を含んでいない導電性ペーストを用いたサンプル28よりも、抗折強度が高くなっていることが分かる。また、Al
2O
3を含んでいない導電性ペーストを用いたサンプル28では、第1のたわみ試験では良品と判定され、第2のたわみ試験では不良品と判定されたのに対して、Al
2O
3を含んでいる導電性ペーストを用いたサンプル29及びサンプル30では、第1のたわみ試験及び第2のたわみ試験の両方で良品と判定された。これにより、コイル導体層18a〜18hがAl
2O
3(金属酸化物の一例)を含んでいることにより、積層体12の強度が向上することが分かる。なお、本変形例に係る電子部品10aでは、金属酸化物としてAl
2O
3(酸化アルミニウム)を用いたが、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニッケル、酸化銅、酸化鉄および酸化カルシウム等の金属酸化物についても同様の効果が得られる。
【0076】
(第2の変形例)
以下に、本発明の第2の変形例に係る電子部品10bについて説明する。電子部品10bは、下地電極にNiめっき及びSnめっきを施す前に積層体12をエポキシ樹脂に含浸させて、エポキシ樹脂を硬化させている点において、電子部品10と相違する。そのため、電子部品10bの積層体12のポアは、エポキシ樹脂が充填されている。なお、エポキシ樹脂以外の樹脂が用いられてもよい。また、電子部品10bの構造は、電子部品10の構造と同じであるので、説明を省略する。
【0077】
電子部品10bによれば、電子部品10と同じ作用効果を奏することができる。更に、電子部品10bでは、ポアがエポキシ樹脂により充填されているので、積層体12の強度が向上する。さらに、エポキシ樹脂を充填させてもインピーダンス特性の値の低下が抑制できる。
【0078】
本願発明者は、前記電子部品10bが奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。まず、本願発明者は、サンプル31ないしサンプル33を30個ずつ作成した。サンプル31ないしサンプル33は、それぞれサンプル3,12,21においてエポキシ樹脂を含浸し、硬化させたサンプルである。
【0079】
以上のようなサンプル31ないしサンプル33において、サイドギャップA1のポア面積率P1及び層間部A2のポア面積率P2を測定した。また、サンプル31ないしサンプル33において、100MHzにおけるインピーダンス特性を測定した。更に、サンプル31ないしサンプル33において、抗折強度を測定した。更に、サンプル31ないしサンプル33において、第1のたわみ試験及び第3のたわみ試験を行った。
【0081】
(第3のたわみ試験)
30個の試料について、基板厚1.6mmのガラスエポキシ基板に実装し、この基板を中央部裏面より押し棒を用いて表面方向に押圧することで2.0mmまで撓ませ、30秒保持した。
【0083】
表5によれば、エポキシ樹脂を充填したサンプル31ないしサンプル33では、エポキシ樹脂を充填していないサンプル3、12、21よりも、抗折強度が高くなっていることが分かる。また、エポキシ樹脂を充填していないサンプル21では、第1のたわみ試験では良品と判定され、第3のたわみ試験では不良品と判定されたのに対して、エポキシ樹脂を充填したサンプル31では、第1のたわみ試験及び第3のたわみ試験の両方で良品と判定された。これにより、積層体12にエポキシ樹脂を充填することによって、積層体12の強度が向上することが分かる。
【0084】
また、サンプル3,12に樹脂を充填したサンプル31,32は、層間部A2のポア面積率P2が0.7%以上8.0%以下の範囲外にあるため、樹脂を充填することによって、インピーダンス特性の値が10%以上低下した。
【0085】
一方、サンプル21では、層間部A2のポア面積率P2が0.7%以上8.0%以下の範囲にあるため、サンプル33のようにエポキシ樹脂を充填させてもインピーダンスの低下が4%以下に抑えられている。
【0086】
インピーダンス特性の値が低下しないのは、層間部A2のポア面積率P2が0.7%以上8.0%以下と小さいため、含浸した樹脂がコイル導体層とその周囲の絶縁体層との界面まで入り難くなり、コイル導体層とその周囲の絶縁体層との界面の結合が切れた状態を保持することができるためである。
【0087】
(第3の変形例)
以下に、本発明の第3の変形例に係る電子部品について図面を参照しながら説明する。
図6は、第3の変形例に係る電子部品10cの外観斜視図である。
図7は、電子部品10cの積層体112の分解斜視図である。以下では、電子部品10cの積層方向を上下方向と定義し、電子部品10cを上側から平面視したときに、長辺が延在する方向を左右方向と定義し、短辺が延在する方向を前後方向と定義する。上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交している。
【0088】
電子部品10と電子部品10cとの相違点は、外部電極114a,114bとコイルLとの位置関係である。より詳細には、電子部品10では、コイルLは、左右方向に進行しながら周回する螺旋状をなしており、所謂横巻き構造を有している。そして、外部電極14a,14bは、積層体12の左右方向の両側に設けられている。
【0089】
一方、電子部品10cでは、
図6及び
図7に示すように、コイルLは、上下方向に進行しながら周回する螺旋状をなしており、所謂縦巻き構造を有している。そして、外部電極114a,114bは、積層体112の左右方向の両側に設けられている。以下に係る相違点を中心に、電子部品10cについて説明する。
【0090】
電子部品10cは、
図6及び
図7に示すように、積層体112、コイルL、外部電極114a,114b及び接続導体層120a,120bを備えている。積層体112は、直方体状をなしており、
図7に示すように、絶縁体層116a〜116mが上側から下側へとこの順に並ぶように積層されることにより構成されている。絶縁体層116a〜116mは、絶縁体層16a〜16oと同じであるのでこれ以上の説明を省略する。
【0091】
外部電極114a,114bはそれぞれ、積層方向に直交する左右方向の両側の面に設けられている。なお、外部電極114a,114bのその他の構成は、外部電極14a,14bと同じであるので説明を省略する。
【0092】
コイルLは、
図7に示すように、コイル導体層118a〜118g及びビアホール導体v11〜v16を含んでいる。コイル導体層118a〜118gはそれぞれ、絶縁体層116d〜116jの表面上に設けられている。コイル導体層118a〜118gは、枠状の長方形状の1辺が切り欠かれた形状をなしている点において、コイル導体層18a〜18hと相違する。ただし、コイル導体層118a〜118gのその他の構成はコイル導体層18a〜18hと同じであるので説明を省略する。以下では、上側から平面視したときに、コイル導体層118a〜118gの時計回り方向の上流側の端部を上流端と呼び、コイル導体層118a〜118gの時計回り方向の下流側の端部を下流端と呼ぶ。
【0093】
ビアホール導体v11は、絶縁体層116dを上下方向に貫通しており、コイル導体層118aの下流端とコイル導体層118bの上流端とを接続している。ビアホール導体v12は、絶縁体層116eを上下方向に貫通しており、コイル導体層118bの下流端とコイル導体層118cの上流端とを接続している。ビアホール導体v13は、絶縁体層116fを上下方向に貫通しており、コイル導体層118cの下流端とコイル導体層118dの上流端とを接続している。ビアホール導体v14は、絶縁体層116gを上下方向に貫通しており、コイル導体層118dの下流端とコイル導体層118eの上流端とを接続している。ビアホール導体v15は、絶縁体層116hを上下方向に貫通しており、コイル導体層118eの下流端とコイル導体層118fの上流端とを接続している。ビアホール導体v16は、絶縁体層116iを上下方向に貫通しており、コイル導体層118fの下流端とコイル導体層118gの上流端とを接続している。
【0094】
接続導体層120aは、コイル導体層118aの上流端と外部電極114aとを接続している。接続導体層120bは、コイル導体層118gの下流端と外部電極114bとを接続している。
【0095】
コイル導体層118a〜118h、接続導体層120a,120b及びビアホール導体v11〜v16は、例えば、Agを主成分とする導電性ペーストにより作製される。
【0096】
以上のようなコイルLは、上側から平面視したときに時計回り方向に周回しながら上側から下側へと進行する螺旋状をなしている。
【0097】
ここで、電子部品10cにおいても、サイドギャップA1のポア面積率P1は、9.0%以上20.0%以下であり、層間部A2のポア面積率P2は、0%以上8.0%以下であり、より好ましくは、0.7%以上7.7%以下である。
【0098】
なお、電子部品10cの製造方法は、電子部品10の製造方法と同じであるので説明を省略する。
【0099】
以上のように構成された電子部品10cによれば、電子部品10と同じ作用効果を奏する。
【0100】
本願発明者は、電子部品10cが奏する効果をより明確にするために、以下に説明する実験を行った。まず、本願発明者は、サンプル34ないしサンプル36を30個ずつ作成した。サンプル34では、仮圧着及び本圧着を行った。本圧着時の圧力は、1000kgf/cm
2とした。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。サンプル34では、焼成温度を870℃とした。サンプル35では、仮圧着及び本圧着を行った。本圧着時の圧力は、400kgf/cm
2とした。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。サンプル35では、焼成温度を880℃とした。サンプル36では、仮圧着のみを行い本圧着を行わなかった。仮圧着時の圧力は、100kgf/cm
2とした。サンプル36では、焼成温度を890℃とした。
【0101】
サンプル34ないしサンプル36のサイズは以下の通りである。
左右方向の長さ:0.4mm
前後方向の長さ:0.2mm
上下方向の長さ:0.2mm
また、サンプル34ないしサンプル36におけるコイルLのターン数は、30ターンである。また、目標とするインピーダンス特性の値は100MHzにおいて120Ω(公差±10%)と設定した。
【0102】
以上のようなサンプル34ないしサンプル36において、サイドギャップA1のポア面積率P1及び層間部A2のポア面積率P2を測定した。また、サンプル34ないしサンプル36において、100MHzにおけるインピーダンス特性を測定した。更に、サンプル34ないしサンプル36において、抗折強度を測定した。更に、サンプル34ないしサンプル36において、第2,4のたわみ試験を行った。
【0104】
(第4のたわみ試験)
30個の試料について、基板厚1.6mmのガラスエポキシ基板に実装し、この基板を中央部裏面より押し棒を用いて表面方向に押圧することで3.0mmまで撓ませ、30秒保持した。
【0106】
表6によれば、サンプル34ないしサンプル36においても、ポア面積率P1が9.0%以上20.0%以下であって、かつ、ポア面積率P2が、0.7%以上8.0%以下である場合には、内部応力を緩和しつつ、積層体12の強度を向上させることができる。
【0107】
本発明に係る電子部品及びその製造方法は、前記電子部品10,10a〜10c及びその製造方法に限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0108】
また、電子部品10,10a〜10c及びその製造方法の各構成を任意に組み合わせてもよい。
【0109】
なお、電子部品10,10a〜10cの製造方法において、下地電極にNiめっき及びSnめっきを施す前に積層体12を酸性溶液に浸漬することによって、内部応力を緩和している。しかしながら、外部電極14a,14b,114a,114bを形成するため(より正確には、下地電極にNiめっき及びSnめっきを施すため)の酸性のめっき液に積層体12を浸漬することによって、内部応力を緩和してもよい。