(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クランク軸の軸線が上下方向を指向すると共にシリンダの軸線が水平方向後向きに指向する複数の気筒を上下に重なるように配置した直列多気筒のエンジン本体と、このエンジン本体に燃焼用空気を供給する吸気装置と、前記エンジン本体とその下方のミドルユニット及びロアユニットとを接続して形成された排気通路と、この排気通路に設けられた触媒と、前記排気通路における前記触媒の上流側に二次空気を供給する空気ポンプとを備えた船外機用エンジンであって、
前記吸気装置を前記エンジン本体の左右方向一方側の側部に配置し、前記排気通路及び前記空気ポンプを前記エンジン本体の左右方向他方側の側部に配置し、
前記排気通路は、前記エンジン本体の各気筒に設けられた排気ポートに連結されて上下に延設された排気マニホールドと、この排気マニホールドと平行に配設されて前記触媒が収容される触媒収容部と、前記排気マニホールド及び前記触媒収容部を接続する接続通路とを備え、
前記空気ポンプは前記排気マニホールド及び前記触媒収容部よりも前記エンジン本体の前方側に配置されるとともに、動力伝達装置を介して前記クランク軸に接続され、
前記動力伝達装置は駆動力を断続可能なクラッチ機構を介して前記空気ポンプに駆動力を伝達することを特徴とする船外機用エンジン。
前記二次空気供給通路の接続部が、前記エンジン本体を形成する前記シリンダブロックと一体に形成され、各前記気筒の排気ポートにそれぞれ連通する連通路を設けたことを特徴とする請求項2又は3に記載の船外機用エンジン。
前記排気通路の前記排気マニホールドと前記触媒収容部とを接続する接続通路が、前記排気マニホールドの下部から上向きに延びて前記触媒収容部の上端部に接続する上向きの立上がり部を有し、
前記接続通路の排気流れ方向の略最上流部に前記二次空気供給通路との接続部が形成されたことを特徴とする請求項2又は3に記載の船外機用エンジン。
前記エンジン本体及びその吸気系、排気系は、エンジンカバーによって覆われるエンジン収容室内に収容されると共に、前記エンジン収容室内に外気を取り入れるための外気取入装置の流入口の開口位置を、前記エンジン収容室の後部であって前記エンジン本体の後方に設け、
前記空気ポンプの吸気口は、前記エンジン収容室の前部において外気取入装置の流入口の開口位置よりも上方位置に設定されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の船外機用エンジン。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明による船外機用エンジンにおける好適な実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る船外機100の概略構成例を示す左側面図である。この場合、船外機100は図示のように、その前部側にて船体の後尾板Pに固定されている。なお、以下の説明中で各図において必要に応じて、船外機100の前方を矢印Frにより、後方を矢印Rrにより示し、また船外機100の側方右側を矢印Rにより、側方左側を矢印Lによりそれぞれ示す。
【0019】
(第1の実施形態)
船外機100の全体構成において、上部から下部へアッパユニット101、ミッドユニット102及びロアユニット(下部ユニット)103が順に配置構成される。アッパユニット101において、エンジン10はエンジンホルダ11を介して、そのクランクシャフト12が鉛直方向を向くように縦置きに搭載支持される。エンジン10として、例えば直列多気筒エンジン等を採用可能である。クランクシャフト12を支持するクランクケース13に対して、シリンダブロック14、シリンダヘッド15及びシリンダヘッドカバー16が順次結合する。エンジン10においてシリンダ軸線が水平方向後向きに指向する複数の気筒が上下に重なるように配置される。なお、エンジン10はエンジンカバー101Aによって覆われる。
【0020】
ミッドユニット102は、アッパマウント104及びロアマウント105を介して、スイベルブラケット106に設定された支軸のまわりに水平方向に回動可能となるように支持される。スイベルブラケット106の左右両側にはクランプブラケット107が設けられ、このクランプブラケット107を介して船体の後尾板Pに固定される。スイベルブラケット106は、左右方向に設定されたチルト軸108のまわりに上下方向に回動可能に支持される。
【0021】
ミッドユニット102において、エンジン10のクランクシャフト12の下端部に連結するドライブシャフト109が上下方向に貫通配置され、このドライブシャフト109の駆動力が、ロアユニット103のギヤケース110内に配置されたプロペラシャフト111に伝達されるようになっている。ドライブシャフト109の前側には、前後進の切換等を行うためのシフトロッド112が上下方向に平行配置される。また、ミッドユニット102にはエンジン10を潤滑するためのオイルを貯留するオイルパン113等が配設される。なお、ミッドユニット102は、ドライブシャフト109を収容するドライブシャフトハウジング114を有している。
【0022】
ロアユニット103においてギヤケース110内に、ドライブシャフト109の駆動力によりプロペラシャフト115を介してプロペラ116を回転駆動する複数のギヤ群117等を有する。ギヤ群117においてミッドユニット102から下方へ延出したドライブシャフト109はそれ自体に取り付けたギヤが、ギヤケース110内のギヤと噛合することで最終的にプロペラ116を回転させるが、シフトロッド112を介してのシフト装置の操作によりギヤケース110内のギヤ群117の動力伝達経路を切り換える、即ちシフトするようになっている。
【0023】
図2〜
図4は、本実施形態におけるエンジン10の例を示している。
図2はエンジン10を左方から見た側面図、
図3はエンジン10の後方正面図、
図4はエンジン10の上面図である。本例のエンジン10は直列4気筒エンジンとし、
図3に示されるように上から順に1番(♯1)気筒、2番(♯2)気筒、3番(♯3)気筒及び4番(♯4)気筒の4気筒が配列される。エンジン10はクランクケース13が前方に、シリンダヘッド15が後方に配置されるかたちで、♯4気筒側にてエンジンホルダ11上に搭載される。以下に
図2〜
図4を参照してエンジン10について概略説明するが、その構成部材等は必要に応じて適宜図示し、あるいはその図示を省略する。
【0024】
クランクケース13において、クランクシャフト12はその上端部及び下端部並びにそれらの中間部にて複数のジャーナル軸受によって、クランクケース13内で回転可能に支持される。クランクシャフト12はまた、その下端にて例えば一対の連結ギヤ(リダクションギヤ)を介してドライブシャフト109の上端と結合し、これによりクランクシャフト12の回転動力がドライブシャフト109へと伝達される。
【0025】
シリンダブロック14において、内部には気筒毎にシリンダボアが形成され、ピストンがシリンダボア内で往復動可能(この例では前後方向となる)に内嵌する。このピストンはコンロッドを介してクランクシャフト12のクランクピンに連結し、これによりシリンダボア内のピストンの往復運動がクランクシャフト12の回転運動に変換され、更にエンジン10の出力としてドライブシャフト109に伝達される。
【0026】
シリンダヘッド15において、
図4を参照して気筒毎にシリンダボアに整合する燃焼室17と、この燃焼室17にそれぞれ連通する吸気ポート18及び排気ポート19とが形成される。本例では吸気系がエンジン10の右側に、また排気系がエンジン10の左側にそれぞれ配置構成される。先ず吸気系においてシリンダブロック14の右側部に配置されたスロットルボディ20Aにより流量制御された吸気が吸気マニホールドに流入する。この吸気は更に、吸気マニホールドから各気筒に分岐する吸気ブランチ20B(
図3参照)を介して吸気ポート18に供給される。スロットルボディ20A及び吸気ブランチ20Bや吸気マニホールド等により、エンジン10に対して燃焼用空気を供給する吸気装置21が構成される。吸気ポート18は、燃焼室17との連通部が吸気バルブ22によって開閉制御される。この場合、吸気バルブ22は、上下方向に延設された吸気側カムシャフト23に設けたカムによって駆動される。また、排気系において排気ポート19は、燃焼室17との連通部が排気バルブ24によって開閉制御される。この場合、排気バルブ24は、上下方向に延設された排気側カムシャフト25に設けたカムによって駆動される。なお、この実施形態では、各気筒において吸気側及び排気側にそれぞれ2つの吸気バルブ22及び排気バルブ24を持つ、所謂4バルブのバルブ構造であってよい。
【0027】
各気筒の燃焼室17の頂部には点火プラグが装着され、燃焼室17内に供給された混合気は点火プラグにより着火される。更に各気筒のシリンダボア内で爆発・燃焼した燃焼ガスは、排気ポート19から排気マニホールド26へ排出される。各気筒において排気ポート19には、シリンダブロック14のシリンダボアの外側部に設けられた排気マニホールド26が連通するように接続される。排気マニホールド26は
図2及び
図3等に示されるようにシリンダヘッド15の左側面部にて上下方向に延設されており、各排気ポート19からの排気ガスを合流させる。排気ガスは排気マニホールド26を通って、後述するように最終的にエンジン10の下方へと導かれ、更にエンジンホルダ11内に形成された排気通路を経て水中に排出される。
【0028】
本実施形態のエンジン10の構成例として、排気系の排気通路の途中には触媒が装着され、
図2のように排気マニホールド26から触媒収容部27を通り、エンジン10の下方のミッドユニット102及びロアユニット103へと接続される排気通路28が形成される。触媒収容部27は排気マニホールド26の後方側にて、排気マニホールド26と平行に上下方向に延設され、内部に触媒29が収容される。排気通路28の一部を形成する排気マニホールド26には、各気筒の排気ポート19が接続される複数(本例では4つ)の開口30が設けられ、また、排気マニホールド26及び触媒収容部27の上部同士が接続通路31を介して相互に接続される。排気通路28は更に、触媒収容部27の下部から湾曲しつつ下向きに延出し、エンジンホルダ11内に形成されている排気連通路32と接続され、この排気連通路32を介してミッドユニット102側と連通する。
【0029】
このように排気通路28には排気マニホールド26、接続通路31、触媒収容部27及び排気連通路32が含まれる。排気通路28の途中において、触媒29が収容される触媒収容部27の排気上流側と排気下流側、具体的には排気マニホールド26の適所と触媒収容部27の下部からの延出部35(
図2、
図3参照)の適所とにそれぞれ、排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ33及び34が装着される。これらの酸素濃度センサ33及び34は、それらの装着部位における排気ガス中の酸素濃度を検出することができる。また、排気通路28には略全体に沿って、通路外周部にウォータジャケット36が設けられており、冷却系のウォータポンプから送られる冷却水がウォータジャケット36内を流通することで排気通路28を冷却するようにしている。
【0030】
ここで、エンジン10における主にクランクケース13、シリンダブロック14、シリンダヘッド15及びシリンダヘッドカバー16を含んでエンジン本体とし、このエンジン本体に対して燃焼用空気を供給する吸気装置21がエンジン本体の左右方向一方側、本例では右側部に配置される。また、燃焼ガスをエンジン本体から排出するための排気通路28がエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置される。
【0031】
排気系において、各気筒の排気ポート19から排出された排気ガスが排気マニホールド26の開口30に流入して、排気マニホールド26内にて合流する(
図2〜
図4において必要に応じて、排気ガスの流れを矢印Gにより示す)。この合流した排気ガスは排気マニホールド26内で上方へ流通し、その上部で接続通路31を介して触媒収容部27に流入する。排気ガスは更に、触媒収容部27内の触媒29を通過し、触媒収容部27の下部から延出部35に流入して、その後エンジンホルダ11内の排気連通路32を通ってミッドユニット102、更にはロアユニット103を経て水中に排出される。
【0032】
本発明では更に、排気通路28における触媒29の上流側に二次空気を供給する空気ポンプ37を備える。この空気ポンプ37は排気ガスを浄化するために、排気通路28を流通する排気ガス中に二次空気を供給し、即ち排気系において炭化水素及び一酸化炭素を酸化させて無害化するために必要な酸素を供給する。つまり酸素を排気ガスと結合させることにより排気ガスの酸化を促進して、炭化水素及び一酸化炭素の排出量の低減を図る。
【0033】
本実施形態では空気ポンプ37はエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置され、即ち排気通路28と同一側に配置される。空気ポンプ37として圧縮機の種類によりルーツ式、リショルム式及び遠心式等があり、これらのうちから適宜用いることができる。この例では空気ポンプ37は
図2及び
図4に示されるように、排気マニホールド26よりもエンジン本体の前方側に配置される。空気ポンプ37の回転軸37aは上下方向に設定することができ、略♯1〜♯2気筒にかけてのシリンダブロック14側面の凹部38(
図4)にて、シリンダブロック14の側壁にボルト等により締着固定される。
【0034】
空気ポンプ37の駆動源としてエンジン10の動力を利用することができ、クランクシャフト12に接続されて空気ポンプ37を駆動する動力伝達装置を備える。この例では動力伝達装置として、クランクシャフト12に結合するフライホイール39(側)と空気ポンプ37の回転軸37aに取り付けたプーリ40とがベルト41を介して連結される。このようにクランクシャフト12の駆動力で空気ポンプ37を回転駆動するが、この場合、両者間の動力伝達を断続制御することができる。例えば空気ポンプ37の回転軸37aのプーリ40の取付部にクラッチ機構、具体的には電磁クラッチ42が組み込まれている。この電磁クラッチ42によりクランクシャフト12から空気ポンプ37への駆動力の動力伝達が接続、遮断制御される。ここで、船外機100の加速時等にはエンジン10に供給される燃料が濃いため排気ガス中の酸素濃度が薄くなり、そのままでは排気通路28中の触媒29の活性が低下する。本例では排気下流側の酸素濃度センサ34の酸素濃度検出値に基づき、触媒29の活性を維持するべく排気ガス中に二次空気を供給するように空気ポンプ37を駆動制御する。この場合、酸素濃度センサ34の酸素濃度検出値は、船外機100に搭載されたECUに送出され、この酸素濃度情報に基づいてECUでは排気ガス中の酸素濃度が所定閾値以上であるか否かに応じて、電磁クラッチ42を作動させ、即ち空気ポンプ37の駆動制御を行う。
【0035】
空気ポンプ37には二次空気を取り込むための吸気部43が接続付帯され(
図2において二次空気の流れを矢印Aにより示す)、この吸気部43から空気ポンプ37に対して二次空気が供給される。吸気部43はクランクケース13側面にて空気ポンプ37の前方側に隣接配置され、概して中空構造を有し、
図2のようにその前端部に空気を取り込むための吸気口43aが開口する。吸気部43は、取り込んだ空気に対する気液分離機能と消音機能とを備えている。なお、吸気部43にはエアフィルタを内蔵してもよく、これにより空気ポンプ37に対して送られる二次空気が清浄化される。ここで、エンジン10及びその吸気系、排気系は、エンジンカバー101A(カウリング)によって覆われるエンジン収容室118内に収容される。エンジン収容室118内に外気を取り入れるための外気取入装置、具体的には
図2のように外気導入ダクト119を有し、この外気導入ダクト119の底部付近において、エンジン収容室118の後部であって、エンジン本体の後方には外気導入ダクト119から取り入れた空気(
図2においてエンジン収容室118内に取り入れた空気の流れを矢印A
0により示す)が流入する流入口120が開口する。吸気部43の吸気口43aはエンジン収容室118の前部において外気導入ダクト119の流入口120よりも上方位置(
図2、高さH)に設定される。
【0036】
本実施形態において、空気ポンプ37と排気通路28の一部である排気マニホールド26とが二次空気供給通路44を介して接続される。二次空気供給通路44は空気ポンプ37の左側面から下方へ延出し、後方へ湾曲して排気マニホールド26の左側面まで延設され、二次空気供給通路44の先端部は排気マニホールド26と接続すべく開口している。排気通路28の二次空気供給通路44との接続部45が、触媒収容部27よりも排気流れ方向の上流側、本例では特に排気マニホールド26における排気流れ方向の最上流部(♯4気筒に略対応する部位)に形成される。接続部45には
図4に示されるようにリードバルブ46(逆止弁)が装着され、このリードバルブ46により排気通路28側から空気ポンプ37側への排気ガスの逆流を防いでいる。
【0037】
前述のように排気系において、各気筒の排気ポート19から排出された排気ガスが、排気マニホールド26の開口30に流入して、排気マニホールド26内にて合流し、合流した排気ガスは接続通路31を介して触媒収容部27に流入する。排気ガスが触媒収容部27内の触媒29を通過することで、その排気ガス中に含まれる主に炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物等は酸化もしくは還元され、これにより排気ガス中の有害物質が除去され、つまり排気ガスが浄化される。効率よく酸化あるいは還元を行うためには、燃料と空気が完全燃焼し、且つ酸素の余らない理論空燃比であることが必要である。排気ガス中の酸素濃度は酸素濃度センサ33,34で常に監視しており、酸素濃度検出値に応じてECUが電磁クラッチ42を作動させ、空気ポンプ37を駆動する。空気ポンプ37によって排気ガス中に二次空気を供給することで、常に触媒29の活性を維持して効率よく排気ガスの浄化を図ることができる。
【0038】
本発明において特に、吸気装置21がエンジン本体の左右方向一方側、本例では右側部に配置され、また、排気通路28と空気ポンプ37がエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置される。
このように吸気装置21と排気通路28及び空気ポンプ37とをエンジン本体の左右に分けて配置したことにより、船外機100のエンジン10の特に左右方向の幅をコンパクトに構成することができる。例えば特に船体の後尾板Pに複数基の船外機100を搭載する場合、船外機100相互間の左右方向の配置間隔を小さく抑えることができる。船外機100の配置間隔が大きいと、旋回時において外側の船外機が浮き易くなり、キャビテーション等を起こす原因となる。本発明では船外機100の配置間隔を小さくできるため、キャビテーションによる推力低下を防止すると共に、船舶の操縦安定性の向上等を期待することができる。
【0039】
また、排気通路は排気マニホールド26と、排気マニホールド26と平行に配設されて触媒29が収容される触媒収容部27と、排気マニホールド26及び触媒収容部27を接続する接続通路31とを備え、触媒収容部27を排気マニホールド26よりもエンジン本体の後方側に配置すると共に、空気ポンプ37を排気マニホールド26よりも前方側に配置する。そして、本例では排気マニホールド26において、空気ポンプ37からの二次空気供給通路44との接続部45を設け、触媒収容部27よりも排気流れ方向の上流側で二次空気供給通路44と接続する。
【0040】
排気系において触媒収容部27と空気ポンプ37と二次空気供給通路44を前後にずらして配置することで、これらの部材が左右方向で重ならないようにする。このように複数の部材のいずれも左右に張り出して配置されることがないため、エンジン10の左右方向の幅をコンパクトにすることができる。
【0041】
また、空気ポンプ37は、動力伝達装置を介してクランクシャフト12に接続されると共に、動力伝達装置にクランクシャフト12の駆動力の伝達を断続可能なクラッチ機構を有する。
空気ポンプ37の駆動を必要に応じて断続することができるため、エンジン10の運転状態に応じて二次空気の供給量を最適に調整することが可能になる。これにより触媒29の適正作用を保証しながらその耐久性を向上させると共に、不必要な空気ポンプ37の駆動を避けることでエンジン10の出力損失を低減できてその燃費向上効果を期待することができる。
【0042】
エンジンカバー101Aによって覆われるエンジン収容室118において、吸気部43の吸気口43aはエンジン収容室118の前部で外気導入ダクト119の流入口120よりも上方の位置に設定される。
このように吸気口43aを配置することにより、空気ポンプ37によって排気通路28に供給される二次空気中に水分が混入されるのを有効に防ぎ、二次空気による排気ガスの浄化作用を確保維持することができる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、本発明による船外機用エンジンにおける第2の実施形態を説明する。
図5は第2の実施形態に係るエンジン10を左方から見た側面図、
図6はそのエンジン10の上面図である。
図5及び
図6において、第1の実施形態の場合と実質的に同一又は対応する部材には同一符合を用いて説明する。
図5のようにエンジン10の側面視において、排気マニホールド26、接続通路31、触媒収容部27及びその延出部35を含む排気通路28が渦巻き状(例えば「の」字状)に配設され、排気マニホールド26が接続通路31及び触媒収容部27によって前後から挟まれるかたちで配置される。つまり排気通路28のうち排気マニホールド26と触媒収容部27とを接続する接続通路31が
図5のように、排気マニホールド26の下部から上向きに延びて、その後触媒収容部27の上端部に接続する上向きの立上がり部31Aを有する。
【0044】
吸気装置21がエンジン本体の左右方向一方側、本例では右側部に配置され、また、排気通路28と空気ポンプ37がエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置される。
【0045】
第2の実施形態のエンジン10の排気系では、各気筒の排気ポート19から排出された排気ガスが、排気マニホールド26の開口30に流入して、排気マニホールド26内にて合流する(
図5において排気ガスの流れを矢印Gにより示す)。この合流した排気ガスは排気マニホールド26内で下方へ流通し、その下部で接続通路31に流入する。接続通路31の立上がり部31A内で排気ガスは上方へ流通して、その後触媒収容部27に流入し、その間に触媒29を通過する。
【0046】
空気ポンプ37は
図5及び
図6に示されるように、排気マニホールド26よりもエンジン本体の前方側であって、その立上がり部31Aの前方側に配置される。そして、本例では接続通路31において、空気ポンプ37からの二次空気供給通路44との接続部45が設けられ、つまり触媒収容部27よりも排気流れ方向の上流側で二次空気供給通路44と接続する。この場合、接続部45は、接続通路31における排気流れ方向の略最上流部に設定される。また、リードバルブ46は二次空気供給通路44において、接続部45の手前(二次空気流れ方向の上流側)直近に装着される。
【0047】
本発明の第2の実施形態において、空気ポンプ37から接続部45を介して、排気通路28を流通する排気ガス中に二次空気を供給し、排気系において炭化水素及び一酸化炭素を酸化させて無害化するために必要な酸素を供給する。これにより酸素を排気ガスと結合させることにより排気ガスの酸化を促進して、炭化水素及び一酸化炭素の排出量の低減を図る。
【0048】
この第2の実施形態では特に、接続通路31において上向きの立上がり部31Aを設けることで、接続通路31の通路長を長くする。この場合、接続通路31の立上がり部31Aにおける排気流れ方向の略最上流部に接続部45が設定される。これらにより排気ガスと二次空気との混合空間がより大きく確保される。このように排気ガス及び二次空気の混合空間を長く大きくすることにより、排気ガス及び二次空気がより均一に混合され、これらのガスと触媒29との良好な反応が促進される。
【0049】
なお、本発明の第2の実施形態においても、吸気部43の吸気口43aはエンジン収容室118の前部で外気導入ダクト119の流入口120(
図2参照)よりも上方の位置に設定される。吸気口43aをこのような高さ位置に配置することにより、空気ポンプ37によって排気通路28に供給される二次空気中に水分が混入されるのを有効に防ぎ、二次空気による排気ガスの浄化作用を確保維持することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
次に、本発明による船外機用エンジンにおける第3の実施形態を説明する。
図7は第3の実施形態に係るエンジン10の上面図である。
図7において、第3の実施形態の基本構成は、第2の実施形態の場合と実質的に同一である。接続通路31は、排気マニホールド26の下部から上向きに延びる立上がり部31Aを有する。この場合、接続通路31の立上がり部31Aにおける排気流れ方向の略最上流部に接続部45が設定される。
【0051】
吸気装置21がエンジン本体の左右方向一方側、本例では右側部に配置され、また、排気通路28と空気ポンプ37がエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置される。
【0052】
本発明の第3の実施形態では特に、リードバルブ46は
図7のように接続部45に装着される。リードバルブ46が二次空気供給通路44の途中に装着される場合に比べて、その取付が容易である等の利点がある。また、リードバルブ46自体あるいはその周辺のメンテナンス性等の点でも有利である。
【0053】
なお、本発明の第3の実施形態においても、吸気部43の吸気口43aはエンジン収容室118の前部で外気導入ダクト119の流入口120(
図2参照)よりも上方の位置に設定される。吸気口43aをこのような高さ位置に配置することにより、空気ポンプ37によって排気通路28に供給される二次空気中に水分が混入されるのを有効に防ぎ、二次空気による排気ガスの浄化作用を確保維持することができる。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、本発明による船外機用エンジンにおける第4の実施形態を説明する。
図8は第4の実施形態に係るエンジン10を左方から見た側面図、
図9はそのエンジン10の左側の上面図である。第4の実施形態において、接続通路31まわりの基本構成は、第1の実施形態の場合と実質的に同一である。
図8及び
図9において、第1の実施形態の場合と実質的に同一又は対応する部材には同一符合を用いて説明する。触媒収容部27は排気マニホールド26の後方側にて、排気マニホールド26と平行に上下方向に延設され、内部に触媒29が収容される。
【0055】
吸気装置21がエンジン本体の左右方向一方側、本例では右側部に配置され、また、排気通路28と空気ポンプ37がエンジン本体の左右方向他方側、本例では左側部に配置される。
【0056】
排気系において、各気筒の排気ポート19から排出された排気ガスが、排気マニホールド26の開口30に流入して、排気マニホールド26内にて合流する。この合流した排気ガスは排気マニホールド26内で上方へ流通し、その上部で接続通路31を介して触媒収容部27に流入する。排気ガスは更に、触媒収容部27内の触媒29を通過し、触媒収容部27の下部から延出部35に流入して、その後エンジンホルダ11内の排気連通路32を通ってミッドユニット102、更にはロアユニット103を経て水中に排出される。
【0057】
本発明の第4の実施形態では特に、二次空気供給通路44の接続部45が、エンジン本体を形成するシリンダブロック14と一体に形成され、各気筒の排気ポート19にそれぞれ連通する連通路47を設けている。この場合、空気ポンプ37の右側面部から延出する二次空気供給通路44は二股に分岐し、分岐した二次空気供給通路44A,44Bが、それぞれ対応する接続部45A,45Bに接続される。各接続部45A,45Bはシリンダブロック14と一体に形成されると共に、それぞれリードバルブ46が装着される。なお、各接続部45A,45Bにはリードバルブ46を覆うようにそれぞれカバー45aが取り付けられる。各リードバルブ46の二次空気排出側と排気ポート19との間は連通路47を介して接続される。
【0058】
なお、本発明の第4の実施形態においても、吸気部43の吸気口43aはエンジン収容室118の前部で外気導入ダクト119の流入口120(
図2参照)よりも上方の位置に設定される。吸気口43aをこのような高さ位置に配置することにより、空気ポンプ37によって排気通路28に供給される二次空気中に水分が混入されるのを有効に防ぎ、二次空気による排気ガスの浄化作用を確保維持することができる。
【0059】
本発明の第4の実施形態において、空気ポンプ37からの二次空気は二次空気供給通路44A,44Bを通って、接続部45A,45Bに供給される。各接続部45A,45Bにおいてリードバルブ46から送出された二次空気は、連通路47を介して排気ポート19内に排出され、排気ガス中に二次空気が供給される。
【0060】
本発明の第4の実施形態では特に、触媒収容部27及び排気マニホールド26と二次空気供給通路44とがエンジン10の左右方向で重なることなく配置されるため、エンジン10の左右方向の幅をコンパクトにすることができる。
【0061】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
上記実施形態においてエンジン10が直列4気筒エンジンとした例を説明したが、エンジン10の気筒数は増減することができる。