(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔ロボットの概要〕
本実施形態に係るロボットは、アームと、アームに接続されるリストと、リストに接続されるエンド部と、リストを第一軸線まわりに揺動させるための第一モータと、エンド部を旋回させるための第二モータとを備える。
【0010】
以下、
図1を参照し、ロボットの具体的な構成例を示す。ロボット1の構成は、例えばスポット溶接ガン又はアーク溶接トーチ等のエンドエフェクタを用いてワークに加工を施すための産業用ロボットに利用可能である。ロボット1は、例えばシリアルリンク型の多関節ロボットであり、基台10と、旋回部20と、アーム30と、アーム40と、リスト70と、エンド部80と、アクチュエータ100,200.300,500,600とを備える。
【0011】
基台10は床面に固定され、ロボット1全体を支持する。以下、基台10以外の各部の説明において、「基端」は基台10側の端を意味し、「先端」は基台10の逆側の端を意味する。
【0012】
旋回部20は基台10上に設けられ、鉛直な軸線Ax1まわりに回転可能である。旋回部20にはアーム30の基端部が接続されている。
【0013】
アーム30は、軸線Ax1に直交する軸線Ax2まわりに揺動可能である。アーム30の先端部にはアーム40の基端部が接続されている。
【0014】
アーム40は、軸線Ax2に平行な軸線Ax3まわりに揺動可能である。アーム40の先端部にはリスト70の基端部が取り付けられている。
【0015】
リスト70は、アーム40の中心軸線CL1に直交する軸線Ax5(第一軸線)まわりに揺動可能である。リスト70の先端部にはエンド部80が設けられている。
【0016】
エンド部80は、リスト70の中心軸線CL2に沿う軸線Ax6まわりに旋回可能である。エンド部80には、リスト70の逆側からエンドエフェクタ(不図示)を装着可能である。エンドエフェクタはエンド部80に一体化されてもよい。エンドエフェクタの具体例としては、ワーク把持用のハンド、スポット溶接ガン、アーク溶接トーチ等が挙げられる。
【0017】
アーム40は、リスト保持部60を先端側に有してもよい。リスト保持部60は、軸線Ax5まわりに揺動可能となるようにリスト70を保持する。リスト保持部60は、アーム40の中心軸線CL1に沿う軸線Ax4まわりに旋回可能であってもよい。
【0018】
アクチュエータ100は軸線Ax1まわりに旋回部20を旋回させる。
図1のアクチュエータ100は旋回部20に設けられているが、これに限られず、基台10に設けられていてもよい。
【0019】
アクチュエータ200は軸線Ax2まわりにアーム30を揺動させる。
図1のアクチュエータ200は旋回部20に設けられているが、これに限られず、アーム30の基端部に設けられていてもよい。
【0020】
アクチュエータ300は軸線Ax3まわりにアーム40を揺動させる。
図1のアクチュエータ300はアーム40の基端部に設けられているが、これに限られず、アーム30の先端部に設けられていてもよい。
【0021】
アクチュエータ500(第一アクチュエータ)は軸線Ax5まわりにリスト70を揺動させる。アクチュエータ500はモータ510(第一モータ)を有する。モータ510は軸線Ax5まわりにリスト70を揺動させるための動力を発生する。
【0022】
アクチュエータ600(第二アクチュエータ)は軸線Ax6まわりにエンド部80を旋回させる。アクチュエータ600はモータ610(第二モータ)を有する。モータ610は軸線Ax6まわりにエンド部80を旋回させるための動力を発生する。
【0023】
モータ510,610は、アーム40においてリスト70から離れた位置に配置されている。一例として、モータ510,610はアーム40のリスト保持部60に配置されていてもよい。モータ510,610は、それぞれの出力軸がアーム40の外側に向いた状態で、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れている。なお、「アーム40の外側」とは、中心軸線CL1の延長線上から見た場合のアーム40の外周側を意味する。
【0024】
ロボット1は、アクチュエータ400(第三アクチュエータ)を更に備えてもよい。アクチュエータ400は軸線Ax4まわりにリスト保持部60を旋回させる。アクチュエータ400はモータ410(第三モータ)を有する。モータ410はアーム40の基端部に設けられており、軸線Ax4まわりにリスト保持部60を旋回させるための動力を発生する。
【0025】
なお、ロボット1は、アーム40と、リスト70と、エンド部80と、モータ510,610とを備えていればどのように構成されてもよいので、その具体例は上述したものに限られない。例えばロボット1の自由度は6自由度に限られず、より少自由度(例えば5自由度)であってもよいし、より多自由度(例えば7自由度)であってもよい。
【0026】
〔アーム先端側、リスト及びエンド部の構成〕
続いて、
図2を参照し、アーム40の先端側、リスト70及びエンド部80の具体的な構成例を説明する。アーム40は、リスト保持部60を先端側に有する。リスト保持部60は、基部61と、支持壁62,63とを有する。基部61は、アーム40の中心軸線CL1に沿う軸線Ax4まわりに旋回可能である。支持壁62,63は、中心軸線CL1に沿って基部61から先端側に突出している。支持壁62,63は軸線Ax5に沿う方向に並び、それぞれ軸線Ax5に直交している。
【0027】
リスト70は、リスト本体71と、継手部72,73とを有する。継手部72,73は、それぞれ中心軸線CL2に沿ってリスト本体71から基端側に突出している。継手部72,73は、軸線Ax5に沿う方向に並んで支持壁62,63の間に位置している。継手部72は、軸線Ax5まわりに回転可能となるように支持壁62の内側(支持壁63側)に取り付けられている。継手部73は、軸線Ax5まわりに回転可能となるように支持壁63の内側(支持壁62側)に取り付けられている。
【0028】
エンド部80は、継手部72,73の逆側からリスト本体71に取り付けられており、中心軸線CL2に沿う軸線Ax6まわりに回転可能となっている。
【0029】
(モータ)
上述したように、アクチュエータ500は、軸線Ax5まわりにリスト70を揺動させるためのモータ510を有する。アクチュエータ600は、軸線Ax6まわりにエンド部80を旋回させるためのモータ610を有する。
【0030】
モータ510,610は、出力軸に沿う方向におけるサイズが出力軸に直交する方向におけるサイズに比べて小さい外形を有してもよい。なお、上記各サイズは、出力軸を除いたサイズを意味する。
【0031】
図3に示ように、モータ510は、例えばケース511及び出力軸512を有する。ケース511は、円柱状の外形を有する。出力軸512は、ケース511の中心軸線に沿い、ケース511の一端面から突出している。ケース511の長さL1(出力軸512に沿う方向におけるモータ510のサイズ)は、ケース511の直径D1(出力軸512に直交する方向におけるモータ510のサイズ)に比べ小さい。モータ510は、軸線Ax5まわりにリスト70を揺動させるための動力を出力軸512の回転として出力する。
【0032】
モータ610は、モータ510と同様に構成されており、ケース611及び出力軸612を有する。モータ610はモータ510と同一であってもよい。
【0033】
上述したように、モータ510,610は、それぞれの出力軸がアーム40の外側に向いた状態で、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れている。モータ510,610は、軸線Ax5に直交する方向において互いにオーバーラップしていてもよい。出力軸512,612は、軸線Ax5に沿っていてもよい。
【0034】
一例として、モータ510,610は、モータ510の出力軸512がモータ610の逆側に向き、モータ610の出力軸612がモータ510の逆側に向いた状態で、互いに離れて軸線Ax5に沿う方向に並んでいてもよい。なお、「逆側」とは、基準となる方向に対して鈍角をなす方向も含む。
【0035】
より具体的に、モータ510は、リスト70及び基部61の間において、出力軸512が支持壁63の逆側に向いた状態で支持壁62の内面に固定されている。モータ610は、リスト70及び基部61の間において、出力軸612が支持壁62の逆側に向いた状態で支持壁63の内面に固定されている。ケース511,611は、軸線Ax5に平行な方向において互いに離れており、軸線Ax5に直交する方向において互いにオーバーラップしている。
【0036】
モータ510,610は、出力軸512の中心軸線CL3がケース611を通り、出力軸612の中心軸線CL4がケース511を通るように配置されていてもよいし、出力軸512,612が互いに同軸になるように配置されていてもよい。
【0037】
モータ510,610が互いに離れて並ぶことで、これらの間の空間S1をエンドエフェクタ用のケーブル等(例えば図示のケーブルCA1)の取り回しに利用可能である。
【0038】
モータ510,610は、それぞれの出力軸がアーム40の外側に向いた状態で、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れていればよいので、その具体的な配置例は上述したものに限られない。例えば、モータ510,610は、軸線Ax5に直交する方向においても互いに離れていてよい。出力軸512,513は、軸線Ax5に平行な軸線に対して傾いていてもよい。
【0039】
また、モータ510,610は、上述のように配置可能である限りにおいて、どのような形状であってもよい。例えばモータ510,610は、出力軸に沿う方向におけるサイズが出力軸に直交する方向におけるサイズに比べて大きい外形を有してもよい。
【0040】
(ギヤボックス)
アクチュエータ500は、伝達機構520及びギヤボックス530(第一ギヤボックス)を更に有してもよい。伝達機構520はモータ510からギヤボックス530に回転を伝達する。ギヤボックス530は、モータ510から伝わった回転を減速して出力する。
【0041】
アクチュエータ600は、伝達機構620及びギヤボックス630(第二ギヤボックス)を更に有してもよい。伝達機構620はモータ610からギヤボックス630に回転を伝達する。ギヤボックス630は、モータ610から伝わった動力をエンド部80側に伝える。
【0042】
ギヤボックス530,630は、アーム40及びリスト70の接続部に配置されており、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れている。軸線Ax5に沿う方向において、ギヤボックス530はモータ510側に設けられ、ギヤボックス630はモータ610側に設けられていてもよい。
【0043】
より具体的に、ギヤボックス530は、軸線Ax5が通る位置において、支持壁62に固定されている。例えばギヤボックス530は、ケース531と、入力軸532と、出力軸533とを有する。ケース531は、軸線Ax5に沿った円柱状の外形を有する。入力軸532及び出力軸533は、ケース531の中心軸線まわりに回転可能である。入力軸532はケース531から支持壁63の逆側に露出している。出力軸533はケース531から支持壁63側に露出し、継手部72に固定されている。ケース531には、入力軸532の回転を減速して出力軸533に伝える少なくとも一つのギヤ(不図示)が内蔵されている。
【0044】
伝達機構520は、支持壁62の外側(支持壁63の逆側)に設けられ、出力軸512から入力軸532に動力を伝達する要素を内蔵する。出力軸512から入力軸532に動力を伝達する要素としては、ギヤ、ベルト等が挙げられる。
【0045】
ギヤボックス630は、軸線Ax5が通る位置において、支持壁63及び継手部73の間に設けられている。例えばギヤボックス630は、入力軸631と、出力軸632と、入力軸631から出力軸632に動力を伝達する少なくとも一つのギヤとを有する。入力軸631は支持壁63に設けられ、出力軸632は継手部73内のリスト本体71側に設けられている。出力軸632の外周には、中継ギヤ633が設けられている。中継ギヤ633は、出力軸632の回転を軸線Ax6に沿う軸線回りの回転に変換してエンド部80に伝達する。中継ギヤ633は例えばベベルギヤである。
【0046】
なお、ギヤボックス630は、ギヤボックス530のように専用のケースを有しておらず、支持壁63及び継手部73がギヤボックス630のケースとして機能している。このように、「ギヤボックス」は、専用のケースを有しないものをも含む。
【0047】
伝達機構620は、支持壁63の外側(支持壁62の逆側)に設けられ、出力軸612から入力軸631に動力を伝達する要素を内蔵する。出力軸612から入力軸631に動力を伝達する要素としては、ギヤ、ベルト等が挙げられる。
【0048】
ギヤボックス530,630が互いに離れて並ぶことで、モータ510,610の間の空間S1と、ギヤボックス530,630の間の空間S2とがリスト保持部60に沿って並ぶ。このため、空間S1,S2を一連の経路R1として、エンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。
【0049】
アクチュエータ600は、ギヤボックス640(第四ギヤボックス)を更に有してもよい。ギヤボックス640は、ギヤボックス630から伝わった回転を減速してエンド部80に出力する。より具体的に、ギヤボックス640はリスト本体71及びエンド部80の間に設けられている。
【0050】
例えばギヤボックス640は、ケース641と、入力軸642と、出力軸643とを有する。ケース641は、軸線Ax6に沿う円柱状の外形を有する。入力軸642及び出力軸643は、軸線Ax6まわりに回転可能である。ケース641には、入力軸642の回転を減速して出力軸643に伝える少なくとも一つのギヤが内蔵されている。入力軸642はケース641からリスト本体71内に露出している。リスト本体71内において、入力軸642には中継ギヤ645が設けられている。中継ギヤ645は、ギヤボックス630の中継ギヤ633と噛み合う。出力軸643は、ケース641からリスト本体71の逆側に露出しており、エンド部80に固定されている。エンド部80と出力軸643とは一体化していてもよい。
【0051】
(中空構造)
リスト70及びエンド部80は、ギヤボックス530,630の間に向かって開口する中空構造を有してもよい。その一例として、リスト本体71及びギヤボックス640には、軸線Ax6に沿って連なった貫通孔71a,640aがそれぞれ形成されている。貫通孔71aは、継手部72,73の間(すなわちギヤボックス530,630の間)に向かって開口しており、貫通孔640aはエンドエフェクタ側に向かって開口している。ギヤボックス640の入力軸642及び出力軸643は、いずれも貫通孔640aを囲むように設けられている。
【0052】
リスト70及びエンド部80が中空構造を有することで、空間S1,S2と、リスト70及びエンド部80内の空間S3とを一連の経路R1として、エンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。
【0053】
貫通孔71a,640aには、筒体81が通されていてもよい。これにより、リスト保持部60側からエンドエフェクタ側にかけて、内面に切れ目のない貫通孔81aが形成されている。このため、エンドエフェクタ用のケーブルCA1等を上記空間S3内にスムーズに通すことが可能である。
【0054】
筒体81の先端部は出力軸643に固定されていてもよい。これにより、貫通孔81aの内面は出力軸643と共に回転する。このため、エンドエフェクタに接続されたケーブルCA1等が出力軸643と共に回転する状況においても、当該ケーブル等と貫通孔81aの内面との擦れが低減される。従って、ケーブルCA1等の摩耗が抑制される。
【0055】
なお、リスト70及びエンド部80の間に中空構造のギヤボックス640を用いる場合においても、アクチュエータ500には貫通孔を有しない中実構造のギヤボックス530を用いてもよい。
【0056】
リスト保持部60は、モータ510,610の間に向かって開口する貫通孔をリスト70の逆側に有してもよい。その一例として、リスト保持部60の基部61には軸線Ax4に沿う貫通孔61aが形成されており、貫通孔61aはモータ510,610の間に向かって開口している。リスト保持部60が貫通孔61aを有することで、空間S1,S2と、貫通孔61a内の空間S4とを一連の経路R1として、エンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。
【0057】
〔アーム基端側の構成〕
アーム40は、リスト70の逆側においてリスト保持部60に接続され、モータ410の動力によりリスト保持部60と共に回転する第一筒体と、第一筒体を包囲し、第一筒体と共には回転せずに、第一筒体のリスト保持部60側の端部を指示する第二筒体とを更に有してもよい。例えばアーム40は、
図3及び
図4に示すように、基部41と、筒体43(第一筒体)と、筒体44(第二筒体)とを更に有する。
【0058】
(基部)
基部41は、アクチュエータ400を保持する。以下、アクチュエータ400の構造と基部41の構造とを順に説明す る。
【0059】
アクチュエータ400は、モータ410を有する。モータ410は、出力軸に沿う方向におけるサイズが出力軸に直交する方向におけるサイズに比べて小さい外形を有してもよい。なお、上記各サイズは、出力軸を除いたサイズを意味する。例えばモータ410は、モータ510,610と同様に構成されており、ケース411及び出力軸412を有する。モータ410は、モータ510,610と同一であってもよい。
【0060】
アクチュエータ400は、伝達機構420及びギヤボックス430(第三ギヤボックス)を更に有してもよい。伝達機構420は、モータ410からギヤボックス430に動力を伝達する。ギヤボックス430は、モータ410から伝わった回転を減速して出力する。
【0061】
例えばギヤボックス430は、ケース431と、入力軸432と、出力軸433とを有する。ケース431は円柱状の外形を有する。入力軸432及び出力軸433は、ケース431の中心軸線まわりに回転可能である。ケース431には、入力軸432の回転を減速して出力軸433に伝える少なくとも一つのギヤが内蔵されている。入力軸432はケース431の一端側に露出しており、出力軸433はケース431の他端側に露出している。
【0062】
基部41は、モータマウント41aと、ギヤマウント41bとを有する。モータマウント41aはリスト保持部60の逆側に面しており、ギヤマウント41bはリスト保持部60側に面している。モータ410は、出力軸412をリスト保持部60側に向けた状態でモータマウント41aに固定されている。ギヤボックス430は、出力軸433をリスト保持部60側に向けた状態でギヤマウント41bに固定されている。伝達機構420は、モータ410とギヤボックス430との間において、基部41に内蔵されている。伝達機構420は、出力軸412から入力軸432に動力を伝達する要素を有する。出力軸412から入力軸432に動力を伝達する要素としては、ギヤ、ベルト等が挙げられる。
【0063】
基部41は、リスト保持部60側に開口する中空構造を有してもよい。その一例として、基部41及びギヤボックス430には、軸線Ax4に沿って連なった貫通孔41c,430aがそれぞれ形成されている。モータマウント41aは、軸線Ax4に対してずれた位置に設けられている。これにより貫通孔41cは、リスト保持部60の逆側に開口している。貫通孔430aはリスト保持部60側に開口している。ギヤボックス430の入力軸432及び出力軸433は、いずれも貫通孔430aを囲むように設けられている。基部41が中空構造を有することで、基部41内の空間S6もエンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。
【0064】
貫通孔41c,430aには筒体42が通されていてもよい。これにより、基部41からリスト保持部60側にかけて、内面に切れ目のない貫通孔42aが形成される。このため、ケーブルCA1等を上記空間S6内にスムーズに通すことが可能である。筒体42の基端部は基部41に固定されている。このため貫通孔42aの内面は回転しない。
【0065】
(第一筒体)
筒体43は、アーム40の中心軸線CL1に沿って延びている。筒体43の先端部は、リスト70の逆側においてリスト保持部60に接続されている。筒体43は、モータ410の動力によりリスト保持部60と共に回転する。リスト保持部60の逆側において、筒体43は、例えばギヤボックス430の出力軸433に固定される。
【0066】
より具体的に、筒体43は、本体51と中継部材52とを有する。筒状の本体51は軸線Ax4に沿って延び、両端部の外周にフランジ51a,51bを有する。リスト保持部60の逆側のフランジ51bは、貫通孔430aの周囲において出力軸433に固定されている。
【0067】
中継部材52は、本体51のリスト保持部60側に連なる環状体であり、本体51のフランジ51aにボルト締結等によって固定され、筒体43の先端部を構成する。中継部材52は、リスト保持部60側の外周にフランジ52bを有する。フランジ52bは、リスト保持部60の基部61に対してボルト締結等によって固定される。
【0068】
筒体43内の空間S5は、先端側において貫通孔61a内の空間S4に連なり、基端側においてギヤボックス430及び基部41内の空間S6に連なる。このため、上記空間S3,S1,S2と、空間S4,S5,S6とを一連の経路R1として、エンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。
【0069】
筒体43の内面はリスト保持部60と共に回転する。このため、エンドエフェクタに接続されたケーブルCA1等がリスト保持部60と共に回転する状況においても、当該ケーブルCA1等と筒体43の内面との擦れが低減される。従って、ケーブルCA1等の摩耗が抑制される。
【0070】
(第二筒体)
筒体44は、筒体43を包囲し、筒体43と共には回転せずに、筒体43の先端部(リスト保持部60側の端部)を支持する。筒体44は、例えばボール式又は滑り式等の軸受45を先端部に有し、軸受45によって筒体43の先端部を支持する。例えば軸受45は、中継部材52の外周に嵌合する。
【0071】
リスト保持部60の逆側において、筒体44はギヤボックス430のケース431に固定される。「ケース431に固定される」とは、他の部材を介してケース431に固定されることも含む。一例として、筒体44は、基部41に固定されていてもよい。この場合、筒体44は基部41を介してケース431に固定される。
【0072】
なお、筒体43の中継部材52は、筒体43の本体51が出力軸433に固定され、筒体44がケース431に固定された後に、先端側から筒体44内に挿入され、本体51の先端部に固定される。中継部材52が本体51に固定された状態で、中継部材52のフランジ52bは筒体44の外に露出し、筒体44の外周よりも外側に張り出す。リスト保持部60は、中継部材52が本体51に固定された後に中継部材52に固定される。
【0073】
筒体43,44の間の空間S10は、モータ510,610の駆動用ケーブルCA10の取り回しに利用可能である。この場合、基部41は、上記駆動用ケーブルを空間S10に導入するためのケーブル導入口41dを更に有してもよい。例えばケーブル導入口41dは、貫通孔41cを挟んでモータマウント41aの逆側に形成されている。
【0074】
筒体43の本体51、中継部材52及びリスト保持部60の基部61は、駆動用ケーブルCA10を空間S10からモータ510,610側に通すためのケーブル案内口51c,52c,61bを更に有してもよい。ケーブル案内口51cは本体51のフランジ51aに形成され、ケーブル案内口52cは貫通孔52aの周囲に形成され、ケーブル案内口61bは貫通孔61aの周囲に形成される。
【0075】
空間S10内における駆動用ケーブルCA10の取り回し作業を容易にするために、筒体44は周囲に開口した窓部44cを有してもよい。アーム40は、駆動用ケーブルCA10を固定するためのケーブルクランプ47,48を空間S10内に有してもよい。例えばケーブルクランプ47は、基部41側において筒体44に固定される。ケーブルクランプ48は、ケーブルクランプ47とリスト保持部60との間において筒体43に固定される。
【0076】
駆動用ケーブルCA10は、ケーブル導入口41dから空間S10内に導入され、ケーブル案内口51c,52c,61bを経てモータ510,610に接続される。空間S10内において駆動用ケーブルCA10はケーブルクランプ47,48に固定される。ケーブルクランプ47,48の間において、駆動用ケーブルCA10は、U字状に弛んだ状態で筒体43の外周に巻きつくように取り回される。
【0077】
(継手部)
図4に示すように、アーム40は、継手部46を更に有してもよい。継手部46は、中心軸線CL1に平行な平面に沿って、基部41の外周から外側に張り出している。継手部46は、軸線Ax3まわりに回転可能となるように、アーム30の先端部に取り付けられている。
【0078】
継手部46が基部41の外周から張り出すことにより、中心軸線CL1が軸線Ax3に対してずれる。これにより、貫通孔42aは、アーム30及びアーム40の接続部に遮られることなくリスト保持部60の逆側に開放される。このため、ケーブルCA1等を上記経路R1に導入し易い。
【0079】
中心軸線CL1に沿う方向において、基部41は、軸線Ax3に比べリスト保持部60側に位置してもよい。この場合、アーム30側から経路R1内にケーブル等を緩やかに取り回すことができる。更に、出力軸412の逆側に面するモータ410の外面411aの位置が、中心軸線CL1に沿う方向において軸線Ax3に一致するか、軸線Ax3に比べリスト保持部60側にあってもよい。この場合、モータ410とケーブルCA1等とが干渉し難くなるので、アーム30側から経路R1内へのケーブル等の取り回しが更に容易となる。
【0080】
アーム40の構成は、以上に示したものに限られない。アーム40は、軸線Ax5まわりに回転可能となるようにリスト70を接続可能であり、リスト70から離れた位置にモータ510,610を配置可能であれば、どのようなものであってもよい。例えば、アーム40は筒体44を有していなくてもよい。ロボット1がアクチュエータ400を有しない構成において、リスト保持部60はアーム40の基端側に一体化されていてもよい。これらの場合、モータ510,610はリスト保持部60よりもアーム40の基端側に離れた位置に配置されていてもよい。
【0081】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、ロボット1は、アーム40と、アーム40に接続されるリスト70と、リスト70に接続されるエンド部80と、リスト70を軸線Ax5まわりに揺動させるためのモータ510と、エンド部80を旋回させるためのモータ610と、を備える。モータ510,610は、アーム40においてリスト70から離れた位置に配置されており、モータ510,610の出力軸512,612がアーム40の外側に向いた状態で、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れている。
【0082】
このロボット1によれば、モータ510,610の間(空間S1)をエンドエフェクタ用のケーブルCA1等の取り回しに利用できる。空間S1を利用してケーブルCA1等の露出を減らすことで、当該ケーブルCA1等とロボット1の周囲との干渉が抑制される。このため、ロボット1の設置環境の制約を減らすことができる。また、モータ510,610が互いに離れる方向は、軸線Ax5に沿っているので、軸線Ax5に直交する方向に空間S1を開放可能である。これにより、空間S1を利用したケーブルCA1の取り回し作業が容易になるので、ロボット1の用途に応じたエンドエフェクタの着脱が容易である。従って、汎用性の高いロボットを提供できる。
【0083】
モータ510,610のそれぞれは、出力軸512,612に沿う方向におけるサイズが出力軸512,612に直交する方向におけるサイズに比べて小さい外形を有してもよい。この場合、例えば出力軸512がモータ610の逆側に向き、出力軸612がモータ510の逆側に向くようにモータ510,610を配置することで、空間S1を確保しつつアーム40をスリム化できる。アーム40をスリム化することにより、アーム40とロボット1の周囲との干渉が抑制される。このため、ロボット1の設置環境の制約を更に減らすことができる。従って、更に汎用性の高いロボットを提供できる。
【0084】
モータ510,610は、軸線Ax5に直交する方向において互いにオーバーラップしていてもよい。この場合、軸線Ax5に直交する方向におけるモータ510,610の合計の占有領域が小さくなる。これにより、アーム40を更にスリム化できるので、ロボット1の設置環境の制約を更に減らすことができる。従って、更に汎用性の高いロボットを提供できる。
【0085】
軸線Ax5に直交する方向におけるモータ510,610の合計の占有領域が小さくなることで、リスト70の可動角を小さくすることなく、モータ510,610の両方をリスト70に近付けることもできる。これにより、アーム40の長さを設置環境及び用途等に応じて幅広く調節できる。このことも、ロボットの汎用性向上に寄与する。
【0086】
図5を参照し、モータの配置とアーム40の長さとの関係を詳細に説明する。
図5中の二点鎖線は、モータ510,610に代えて、モータ590,690を用いた場合のモータの配置を示している。モータ590,690のそれぞれは、出力軸に沿う方向におけるサイズが出力軸に直交する方向におけるサイズに比べて大きい外形を有する。モータ510,610をモータ590,690に置き換えると、軸線Ax5に沿う方向においてモータ590,690が互いに干渉する。このような条件下においてもケーブルCA1等の取り回し用の空間をモータ同士の間に形成するために、モータ590,690は、軸線Ax4,Ax5に直交する方向(以下、「支持壁62の幅方向」という。)において互いに離れている。このため、支持壁62の幅方向におけるモータ590,690の占有領域は、モータ510,610に比べ大きい。
【0087】
図5は、リスト70を可動限界まで曲げた状態にて、モータを軸線Ax5側に最接近させた状態を示している。支持壁62の幅方向において、モータ510,610の占有領域はモータ590,690の占有領域に比べ小さい。このため、モータ510,610を用いる場合、モータ590,690を用いる場合に比べ、モータ510,610をリスト70に近付けることができるので、リスト保持部60を短くできる。リスト保持部60を短くすることで、アーム40の長さを設置環境及び用途等に応じて幅広く調節できる。
【0088】
出力軸512,612は、軸線Ax5に沿っていてもよい。この場合、軸線Ax5に直交する方向におけるモータ510,610の合計の占有領域を更に小さくできる。
【0089】
ロボット1は、モータ510から伝わった回転を減速してリスト70に伝えるギヤボックス530と、モータ610から伝わった回転をエンド部80側に伝えるギヤボックス630とを更に備えてもよい。ギヤボックス530,630は、アーム40及びリスト70の接続部に配置されており、軸線Ax5に沿う方向において互いに離れていてもよい。この場合、モータ510,610の間(空間S1)と、ギヤボックス530,630の間(空間S2)とがリスト保持部60に沿って並ぶ。このため、空間S1,S2を一連の経路R1として、上記ケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。このため、ケーブルCA1等の露出を更に減らすことができる。モータ510,610が互いに離れる方向と、ギヤボックス530,630が互いに離れる方向とは、いずれも軸線Ax5に沿っているので、空間S1,S2は、リスト保持部60の同一側に開放可能である。これにより、空間S1,S2を利用したケーブルCA1の取り回し作業が容易になるので、ロボット1の用途に応じたエンドエフェクタの着脱が容易である。従って、更に汎用性が高いロボットを提供できる。
【0090】
リスト70及びエンド部80は、ギヤボックス530,630の間に向かって開口する中空構造を有してもよい。この場合、空間S1,S2と、リスト70及びエンド部80内の空間S3とを一連の経路R1として、ケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。このため、ケーブルCA1等の露出を更に減らすことができる。従って、更に汎用性が高いロボットを提供できる。
【0091】
リスト保持部60は、モータ510,610の間に向かって開口する貫通孔61aをリスト70の逆側に有してもよい。この場合、リスト保持部60の貫通孔61a内の空間S4と、空間S1,S2とを一連の経路R1として、ケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。このため、ケーブルCA1等の露出を更に減らすことができる。従って、更に汎用性が高いロボットを提供できる。
【0092】
ロボット1は、アーム40に沿う軸線Ax4まわりにリスト保持部60を旋回させるためのモータ410を更に備えてもよい。アーム40は、軸線Ax4に沿って延び、リスト保持部60に一端部が固定され、モータ410の動力によりリスト保持部60と共に回転する筒体43と、筒体43を包囲し、筒体43と共には回転せずに、筒体43のリスト保持部60側の端部を支持する筒体44とを有してもよい。
【0093】
この場合、筒体43内の空間S5と、リスト保持部60の貫通孔61a内の空間S4と、空間S1,S2とを一連の経路R1として、ケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。このため、ケーブルCA1等の露出を更に減らすことができる。
【0094】
上述したように、本開示によればモータ510,610をリスト70に近付けることが可能となるが、モータ510,610をリスト70に近付けると、アーム40の基部からモータ510,610までの距離が大きくなる。このため、モータ510,610の重量に起因してアーム40の基部に作用する曲げモーメントが大きくなる。アーム40の基部に作用する曲げモーメントが大きくなると、この曲げモーメントに耐え得るように、モータ410からアーム40への動力伝達機構の大型化が必要となる可能性がある。これに対し、筒体43のリスト保持部60側の端部を筒体44により支持する構成によれば、上記動力伝達機構に作用する曲げモーメントが抑制される。従って、リスト保持部60の短縮に伴う上記動力伝達機構の大型化を抑制することもできる。以上より、更に汎用性の高いロボットを提供できる。
【0095】
ロボット1は、モータ410から伝わった回転を減速して出力する中空のギヤボックス430を更に備えてもよい。リスト保持部60の逆側において、筒体43はギヤボックス430の出力軸433に固定され、筒体44はギヤボックス430のケース431に固定されていてもよい。
【0096】
この場合、ギヤボックス430内の空間S6と、筒体43内の空間S5と、リスト保持部60の貫通孔61a内の空間S4と、空間S1,S2とを一連の経路R1として、ケーブルCA1等の取り回しに利用可能である。このため、ケーブルCA1等の露出を更に減らすことができる。
【0097】
筒体43はギヤボックス430の出力軸433に固定される一方で、筒体44はギヤボックス430のケース431に固定される。このため、筒体43及び出力軸433を介してギヤボックス430内に作用する曲げモーメントが抑制される。従って、リスト保持部60の短縮に伴うギヤボックス430の大型化を抑制することもできる。以上より、更に汎用性の高いロボットを提供できる。
【0098】
モータ410はモータ510,610と同一であってもよい。この場合、モータの共通化により、ロボット自体を効率よく製造できる。このため、汎用性の向上に対応してロボットを効率よく提供できる。また、交換用の予備モータの種類を削減することもできる。
【0099】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。