特許第6398969号(P6398969)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6398969
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】集積光源及び光出力制御方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20180920BHJP
   G02F 1/313 20060101ALI20180920BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20180920BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20180920BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   G02F1/01 Z
   G02F1/313
   H01S5/022
   H01S5/062
   H01S5/40
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-507974(P2015-507974)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(86)【国際出願番号】JP2014000068
(87)【国際公開番号】WO2014155900
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2013-73708(P2013-73708)
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)内閣府の最先端研究開発支援プログラム「フォトニクス・エレクトロニクス融合システム基盤技術開発」に係る特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】石坂 政茂
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−090884(JP,A)
【文献】 特開2011−154332(JP,A)
【文献】 特開平07−154325(JP,A)
【文献】 特開平06−337445(JP,A)
【文献】 SHIMIZU,T. et al.,Multi-Channel and High -Density Hybrid Integrated Light Source on Silicon Optical Waveguide Platform ,ACP Technical Digest,2012年,1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する光回路と、
前記複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する発光部と、を有し、
前記干渉型光スイッチは、
複数の光導波路を介して入力される前記光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する光カプラと、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続される第1の光導波路と、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続され、前記第1の光導波路と同じ光路長を有する第2の光導波路と、
前記第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差を切り替える位相シフタと、
を有する集積光源であって、
前記光回路は、複数の前記干渉型光スイッチを有し、
前記発光部から前記光信号を受信する第1、第2の干渉型光スイッチと、
前記第1の干渉型光スイッチの第1の出力ポート及び前記第2の干渉型光スイッチの第1の出力ポートから前記光信号を受信して後段回路に前記光信号を出力する第3の干渉型光スイッチと、
前記第1の干渉型光スイッチの第2の出力ポート及び前記第2の干渉型光スイッチの第2の出力ポートから前記光信号を受信して後段回路に前記光信号を出力する第4の干渉型光スイッチと、を有する、
集積光源
【請求項2】
複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する光回路と、
前記複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する発光部と、を有し、
前記干渉型光スイッチは、
複数の光導波路を介して入力される前記光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する光カプラと、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続される第1の光導波路と、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続され、前記第1の光導波路と同じ光路長を有する第2の光導波路と、
前記第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差を切り替える位相シフタと、
前記制御信号を出力する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記光信号を出力する前記出力ポートの数が減少した場合、前記発光部において前記光信号を出力するレーザーダイオードに与える電流を減少させる、
集積光源
【請求項3】
前記発光部は、同位相の前記光信号を出力する多チャンネルレーザーダイオードを有し、前記多チャンネルレーザーダイオードは、活性層がマルチモード導波路又はマルチモード干渉導波路を有する請求項1又は2に記載の集積光源
【請求項4】
前記制御信号を出力する制御回路を有し、
前記制御回路は、前記干渉型光スイッチの前記複数の出力ポートから等しい強さの前記光信号を出力することを指示する場合、前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差をゼロとする前記制御信号を前記位相シフタに対して出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集積光源。
【請求項5】
前記制御信号を出力する制御回路を有し、
前記制御回路は、前記干渉型光スイッチの前記複数の出力ポートの1つから前記第1、第2の光導波路の一端に入力される光信号の強度の2倍の強さの前記光信号を出力することを指示する場合、前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差をπ/2又は−π/2とする前記制御信号を前記位相シフタに対して出力する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集積光源。
【請求項6】
複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する光回路と、
前記複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する発光部と、を有し、
前記干渉型光スイッチが、
複数の光導波路を介して入力される前記光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する光カプラと、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続される第1の光導波路と、
一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続され、前記第1の光導波路と同じ光路長を有する第2の光導波路と、
前記第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差を切り替える位相シフタと、を有する集積光源における光出力制御方法であって、
前記位相シフタが前記光信号に位相差を与えることで、前記複数の出力ポートの一部から前記光信号を出力する場合に、前記光信号を出力する前記出力ポートの数が減少したことに応じて前記発光部における前記光信号の出力を低下させる光出力制御方法。
【請求項7】
前記干渉型光スイッチの前記複数の出力ポートの1つから前記第1、第2の光導波路の一端に入力される光信号の強度の2倍の強さの前記光信号を出力する場合、前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差をπ/2又は−π/2とする前記制御信号を前記位相シフタに対して与える請求項6に記載の光出力制御方法。
【請求項8】
前記光信号を出力する前記出力ポートの数が減少した場合、前記発光部において前記光信号を出力するレーザーダイオードに与える電流を減少させる請求項6又は7に記載の光出力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光インターコネクションおよび光通信で用いられる集積光源及びその光出力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ装置等で取り扱うデータ量の増大に伴い、データ伝送が電気信号によるものから光信号によるものに置き換わりつつある。例えば、トランシーバや、その他の各種デバイス、機器等においても、光信号によってデータ(信号)の送受信を行うものがある。近年、シリコン基板上にこれらの送信部、受信部、光配線部を形成するシリコンフォトニクスと呼ばれる技術での取り組みが進められている。
【0003】
そこで、シリコン基板上に形成される集積光源の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1では、第1光導波路と、第1光カプラ及び第2光カプラそれぞれを介して第1光導波路と光結合され、第1光導波路と共にマッハツェンダ干渉計を構成する第2光導波路と、第1光カプラと第2光カプラとの間における第1光導波路及び第2光導波路の少なくとも一方に設けられた第1ヒータと、第1光導波路の入力端と光学的に結合された半導体レーザと、を備え、第1〜第2光導波路、第1ヒータ、及び半導体レーザが同一の基板上に集積されている光部品が開示されている。このような構成により、特許文献1の光学部品は、少ない半導体レーザの使用個数でパワー制御が自在なより多くの光出力を得る。
【0004】
また、シリコン基板上に形成される集積光源の別の例が非特許文献1に開示されている。非特許文献1には、高出力のレーザーダイオードアレイをシリコン細線導波路プラットフォームに搭載したハイブリッド集積光源の構造が開示されている。非特許文献1で開示されている集積光源は、送信部が外部変調方式のためCW(Continuous Wave)光でよく、レーザーダイオードアレイを単一電極とすることが可能で、従来のように個別駆動した場合(例えば、光ファイバ接続を前提としていたレーザーダイオードアレイのピッチは、250〜300μm)に比べピッチを1/10以下と狭ピッチ化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−78002号公報
【0006】
【非特許文献1】T.Shimizu et al., "High Density Hybrid Integrated Light Source with a Laser Diode Array on a Silicon Optical Waveguide Platform for Inter-Chip Optical Interconnection", IEEE 8th International Conference on Group IV photonics, pp.181-183、2011年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光インターコネクションを行う場合、全チャンネルを常時駆動させる場合もあるが、光配線の信頼性の向上のために光配線の多重化を行ったり、時間的にチャンネルごとの使用頻度が異なったりすることがある。消費電力の観点から見て、チャンネルを使用しているとき以外は電力を使わないようにすることが望ましい。
【0008】
しかし、従来の単一電極による多チャンネル一括駆動を行っているレーザーダイオードアレイにおいて、一部の所望のチャンネル数のみ使う場合、残りの使用しないチャンネルも光出力されるため、その分の消費電力が大きくなる問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、消費電力を低減可能な集積光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる集積光源の一態様は、複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する光回路と、前記複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する発光部と、を有し、前記干渉型光スイッチは、複数の光導波路を介して入力される前記光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する光カプラと、一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続される第1の光導波路と、一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続され、前記第1の光導波路と同じ光路長を有する第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差を切り替える位相シフタと、を有する。
【0011】
また、本発明にかかる光出力制御方法の一態様は、複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する光回路と、前記複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する発光部と、を有し、前記干渉型光スイッチが、複数の光導波路を介して入力される前記光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する光カプラと、一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続される第1の光導波路と、一端から前記光信号が入力され、他端が前記光カプラに接続され、前記第1の光導波路と同じ光路長を有する第2の光導波路と、前記第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて前記第1の光導波路を伝達する前記光信号の位相差を切り替える位相シフタと、を有する集積光源における光出力制御方法であって、前記位相シフタが前記光信号に位相差を与えることで、前記複数の出力ポートの一部から前記光信号を出力する場合に、前記光信号を出力する前記出力ポートの数が減少したことに応じて前記発光部における前記光信号の出力を低下させる。
【発明の効果】
【0012】
本願にかかる集積光源及びその光出力制御方法は、消費電力を低減可能な集積光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる集積光源のブロック図である。
図2】実施の形態1にかかる干渉型光スイッチの出力特性を示すグラフである。
図3】実施の形態1にかかる発光部の出力特性を示すグラフである。
図4】実施の形態1にかかる集積光源における1つの干渉型光スイッチにおける位相シフタの位相と出力される光信号の強度との関係を示す表である。
図5】実施の形態1にかかる集積光源において4つの干渉型光スイッチを用いて4つの出力ポートから同じ強度の光信号を出力する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示す表である。
図6】実施の形態1にかかる集積光源において4つの干渉型光スイッチを用いて2つの出力ポートから入力される光信号の強度の2倍の強度を有する光信号を出力し、他の出力ポートから出力される光信号を遮断する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示す表である。
図7】実施の形態1にかかる集積光源において4つの干渉型光スイッチを用いて1つの出力ポートから入力される光信号の強度の4倍の強度を有する光信号を出力し、他の出力ポートから出力される光信号を遮断する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1
以下では、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態における集積光源1を示すブロック図である。図1に示すように、集積光源1は、発光部(例えば、レーザーダイオードアレイ2)、光回路3、制御回路4を有する。
【0015】
レーザーダイオードアレイ2は、多チャンネルレーザーダイオードを有し、光回路3の複数の入力端に対して同位相の光信号を出力する。多チャンネルレーザーダイオードは、活性層と電極11とを有する。活性層は、マルチモード導波路或いはマルチモード干渉導波路で形成されており、共振器長ならびに活性層の導波路幅によってチャンネル数が変化する。このようなことから、活性層は、光回路3のチャンネル数に応じて共振器長と活性層の幅とが調整される。なお、図1では光回路3が4チャンネルの場合を示しており、レーザーダイオードアレイ2は、チャンネルCHa、CHb、CHc、CHdに対して同位相の光信号を出力する。レーザーダイオードアレイ2が出力する光信号は連続光である。また、レーザーダイオードアレイ2は、制御回路4が出力する駆動電流Isの大きさに応じて光信号の強度を変更する。
【0016】
光回路3は、複数の入力端から入力される光信号に基づき少なくとも1つの出力ポートから前記光信号を出力する干渉型光スイッチを少なくとも1つ有する。図1に示した実施の形態1にかかる集積光源1では、干渉型光スイッチ21〜24を有し、4つの干渉型光スイッチにより4つのチャンネルを形成する。なお、以下の説明では、チャンネルの符号としてa〜dを用いて説明する。
【0017】
干渉型光スイッチ21〜24は、それぞれ2つのチャンネルを有する。また、光回路3では干渉型光スイッチを2段構成とする。より具体的には、光回路3では、レーザーダイオードアレイ2から光信号を受信する第1、第2の干渉型光スイッチとして干渉型光スイッチ21、22を用いる。光回路3は、第1の干渉型光スイッチの第1の出力ポート及び前記第2の干渉型光スイッチの第1の出力ポートから前記光信号を受信して後段回路に前記光信号を出力する第3の干渉型光スイッチとして干渉型光スイッチ23を用いる。光回路3は、第1の干渉型光スイッチの第2の出力ポート及び前記第2の干渉型光スイッチの第2の出力ポートから前記光信号を受信して後段回路に前記光信号を出力する第4の干渉型光スイッチとして干渉型光スイッチ24を用いる。
【0018】
また、干渉型光スイッチ21〜24は、それぞれ、第1の光導波路、第2の光導波路、光カプラ、位相シフタを有する。第1の光導波路は、一端から光信号が入力され、他端が光カプラに接続される。第2の光導波路は、一端から光信号が入力され、他端が光カプラに接続され、第1の光導波路と同じ光路長を有する。ここで、光路長とは、同位相で入力した光信号が光カプラに到達するまでの導波路の長さをいう。光カプラは、複数の光導波路を介して入力される光信号を結合又は分岐させて第1、第2の出力ポートに出力する。位相シフタは、第1の光導波路上に設けられ、制御信号に応じて第1の光導波路を伝達する光信号の位相差を切り替える。なお、制御信号は、後述する制御回路4が出力するものである。
【0019】
以下では、実施の形態1における干渉型光スイッチの具体的構成について更に詳細に説明する。なお、図1では、説明の便宜上、各干渉型光スイッチの出力ポートを光カプラから離れた位置に示しているが、干渉型光スイッチの出力ポートは、光カプラと一体に形成されているものであり光カプラの出力端から出力ポートまでの光路長は実質的にゼロと考えることができる。また、出力ポートと光カプラの出力端との間の光路長については、他の図面においても同様である。
【0020】
干渉型光スイッチ21は、位相シフタ31a、光導波路32a、32b、光カプラ33ab、出力ポート34a、34bを有する。光導波路32aは、第1の光導波路に相当するものである。第1の光導波路32aは、一端にレーザーダイオードアレイ2が出力する光信号が入力され、他端が光カプラ33abに接続される。光導波路32bは、第2の光導波路に相当するものである。第2の光導波路32bは、一端にレーザーダイオードアレイ2が出力する光信号が入力され、他端が光カプラ33abに接続される。光カプラ33abは、光導波路32aと光導波路32bとを束ね、2つの光導波路を介して伝達される光信号の位相差に応じて、光信号を結合又は分岐させて第1の出力ポート34aと第2の出力ポート34bとに出力する。そして、第1の光導波路32a上には、位相シフタ31aが配置される。また、位相シフタ31aは、制御回路4が出力する制御信号S21の値に応じて第1の光導波路32aを伝達する光信号と、第2の光導波路32bを伝達する光信号との位相差を変更する。
【0021】
干渉型光スイッチ22は、位相シフタ31c、光導波路32c、32d、光カプラ33cd、出力ポート34c、34dを有する。光導波路32cは、第1の光導波路に相当するものである。第1の光導波路32cは、一端にレーザーダイオードアレイ2が出力する光信号が入力され、他端が光カプラ33cdに接続される。光導波路32dは、第2の光導波路に相当するものである。第2の光導波路32dは、一端にレーザーダイオードアレイ2が出力する光信号が入力され、他端が光カプラ33cdに接続される。光カプラ33cdは、光導波路32cと光導波路32dとを束ね、2つの光導波路を介して伝達される光信号の位相差に応じて、光信号を結合又は分岐させて第1の出力ポート34cと第2の出力ポート34dとに出力する。そして、第1の光導波路32c上には、位相シフタ31cが配置される。また、位相シフタ31cは、制御回路4が出力する制御信号S22の値に応じて第1の光導波路32cを伝達する光信号と、第2の光導波路32dを伝達する光信号との位相差を変更する。
【0022】
干渉型光スイッチ23は、位相シフタ41a、光導波路42a、42b、光カプラ43ab、出力ポート44a、44bを有する。光導波路42aは、第1の光導波路に相当するものである。第1の光導波路42aは、一端に干渉型光スイッチ21の第1の出力ポート34aから出力される光信号が入力され、他端が光カプラ43abに接続される。光導波路42bは、第2の光導波路に相当するものである。第2の光導波路42bは、一端に干渉型光スイッチ22の第1の出力ポート34cから出力される光信号が入力され、他端が光カプラ43abに接続される。光カプラ43abは、光導波路42aと光導波路42bとを束ね、2つの光導波路を介して伝達される光信号の位相差に応じて、光信号を結合又は分岐させて第1の出力ポート44aと第2の出力ポート44bとに出力する。そして、第1の光導波路42a上には、位相シフタ41aが配置される。また、位相シフタ41aは、制御回路4が出力する制御信号S23の値に応じて第1の光導波路42aを伝達する光信号と、第2の光導波路42bを伝達する光信号との位相差を変更する。
【0023】
干渉型光スイッチ24は、位相シフタ41d、光導波路42c、42d、光カプラ43cd、出力ポート44c、44dを有する。光導波路42cは、第1の光導波路に相当するものである。第1の光導波路42cは、一端に干渉型光スイッチ21の第2の出力ポート34bから出力される光信号が入力され、他端が光カプラ43cdに接続される。光導波路42dは、第2の光導波路に相当するものである。第2の光導波路42dは、一端に干渉型光スイッチ22の第2の出力ポート34dから出力される光信号が入力され、他端が光カプラ43cdに接続される。光カプラ43cdは、光導波路42cと光導波路42dとを束ね、2つの光導波路を介して伝達される光信号の位相差に応じて、光信号を結合又は分岐させて第1の出力ポート44cと第2の出力ポート44dとに出力する。そして、第2の光導波路42d上には、位相シフタ41dが配置される。また、位相シフタ41dは、制御回路4が出力する制御信号S24の値に応じて第1の光導波路42cを伝達する光信号と、第2の光導波路42dを伝達する光信号との位相差を変更する。
【0024】
実施の形態1にかかる光回路3では、干渉型光スイッチ21〜24により2段の多段回路を形成する。より具体的には、光回路3では、干渉型光スイッチ21の第1の出力ポート34aから出力する光信号を干渉型光スイッチ23の第1の光導波路42aの一端に与える。光回路3では、干渉型光スイッチ22の第1の出力ポート34cから出力する光信号を干渉型光スイッチ23の第2の光導波路42bの一端に与える。また、光回路3では、干渉型光スイッチ21の第2の出力ポート34bから出力する光信号を干渉型光スイッチ24の第1の光導波路42cの一端に与える。光回路3では、干渉型光スイッチ22の第2の出力ポート34dから出力する光信号を干渉型光スイッチ24の第2の光導波路42dの一端に与える。つまり、実施の形態1にかかる光回路3では、2段目に配置される干渉型光スイッチ23の第2の光導波路42bと、干渉型光スイッチ24の第1の光導波路42cとが交差するように配置されることが特徴の1つである。
【0025】
上述したように、実施の形態1にかかる光回路3は、各干渉型スイッチの導波路は光路長さが等しい。すなわち、第1の光導波路32aと第2の光導波路32bの光路長さが等しく、第1の光導波路32cと第2の光導波路32dの光路長さが等しく、第1の光導波路42aと第2の光導波路42bの光路長さが等しく、第1の光導波路42cと第2の光導波路42dの光路長さが等しい。そして、第1の光導波路32a、第1の光導波路32c、第1の光導波路42a、第2の光導波路42dに位相調整機能を有する位相シフタをそれぞれ有する。このような構成とすることにより、導波路の物理的長さが作製ばらつきなどによりずれていた場合でも、位相シフタにより導波路の光路長を調整することも可能である。位相調整の方法としては導波路にヒータを配置して熱光学効果を利用するもの、電気光学材料を用いて電気光学効果を利用するもの、不純物キャリアをドーピングしてキャリアプラズマ効果を利用するものなどが使え、その他位相調整機能を有するものならば適宜利用可能である。
【0026】
また、実施の形態1にかかる光回路3では、光カプラ33ab、33cd、43ab、43cdは、2入力2出力(以下、2x2型と称す)の光カプラであって、方向性結合器や、マルチモード干渉計型のいずれであっても良い。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかる集積光源1の動作について説明する。まず、図2に実施の形態1にかかる集積光源1で利用される干渉型光スイッチの出力特性を示すグラフを示す。図2に示すグラフは、干渉型光スイッチ21の出力特性を示すものであるが、他の干渉型光スイッチも同様の特性を有する。
【0028】
図2に示すように、干渉型光スイッチ21は、2つの光信号の位相差がゼロである場合、第1の出力ポート34aと第2の出力ポート34bとに同じ強度の光信号を出力する。干渉型光スイッチ21は、位相シフタ31aが第1の光導波路32aに伝達する光信号にπ/2を与えた場合、第1の出力ポート34aに入力された光信号の強度の2倍の強度の光信号を出力し、第2の出力ポート34bの光信号を実質的にゼロとする。干渉型光スイッチ21は、位相シフタ31aが第1の光導波路32aに伝達する光信号に−π/2を与えた場合、第2の出力ポート34bに入力された光信号の強度の2倍の強度の光信号を出力し、第1の出力ポート34aの光信号を実質的にゼロとする。
【0029】
続いて、実施の形態1にかかる集積光源1のレーザーダイオードアレイ2の全チャンネルを合計した出力特性を示すグラフを図3に示す。図3に示すように、レーザーダイオードアレイ2は、駆動電流Isの大きさに応じて光信号の強度を強くする。
【0030】
続いて、図4図7を用いて、実施の形態1にかかる集積光源1の動作について説明する。図4は、1つの干渉型光スイッチ(例えば、干渉型光スイッチ21)における入力と出力との関係を示すものである。なお、以下の説明では、第1の出力ポートと第2の出力ポートをいずれも単に出力ポートと称し、符号中のa〜dの符号によりチャンネルの違いを示す。
【0031】
図4に示すように、位相シフタ31に与える位相差がゼロである場合、チャンネルCHa、CHbから入力された光信号と同じ強度の光信号を出力ポート34a、34bから出力する。位相シフタ31に与える位相差がπ/2である場合、チャンネルCHa、CHbから入力された光信号との2倍の強度を有する光信号を出力ポート34aから出力し、ポート34bから出力される光信号を遮断する。位相シフタ31に与える位相差が−π/2である場合、チャンネルCHa、CHbから入力された光信号との2倍の強度を有する光信号を出力ポート34bから出力し、ポート34aから出力される光信号を遮断する。
【0032】
図5は、4つの干渉型光スイッチ(例えば、干渉型光スイッチ21〜24)を用いて4つの出力ポート(例えば、出力ポート44a〜44d)から同じ強度の光信号を出力する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示すものである。
【0033】
図5に示すように、実施の形態1にかかる集積光源1では、位相シフタ31a、31c及び位相シフタ41a、41dに与える位相差をいずれもゼロとすることで、入力される光信号と同じ強度の光信号を出力ポート44a〜44dに出力する。また、出力ポート44a〜44dに出力される光信号の強度はいずれも同じである。
【0034】
図6は、4つの干渉型光スイッチ(例えば、干渉型光スイッチ21〜24)を用いて2つの出力ポートから入力される光信号の強度の2倍の強度を有する光信号を出力し、他の出力ポートから出力される光信号を遮断する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示すものである。
【0035】
図6に示すように、実施の形態1にかかる集積光源1では、前段に配置される干渉型光スイッチ21、22の位相シフタ31a、31cに与える位相差をπ/2又は−π/2とすることで、前段に配置される干渉型光スイッチ21、22の出力ポートの2つから入力される光信号の2倍の強度を有する光信号を出力する。そして、この場合は、後段に配置される干渉型光スイッチ23、24の位相シフタ41a、41dに与える位相差をゼロとすることで、前段の干渉型光スイッチ21、22の出力ポートから出力される光信号の強度を維持したまま出力ポート44a〜44dのいずれか2つから光信号を出力する。
【0036】
また、図6に示すように、実施の形態1にかかる集積光源1では、前段に配置される干渉型光スイッチ21、22の位相シフタ31a、31cに与える位相差をゼロとすることで、前段に配置される干渉型光スイッチ21、22の4つの出力ポートから入力された光信号と同じ強度の光信号を出力する。そして、この場合は、後段に配置される干渉型光スイッチ23、24の位相シフタ41a、41dに与える位相差をπ/2又は−π/2とすることで、出力ポート44a〜44dのいずれか2つから入力される光信号の2倍の強度を有する光信号を出力する。
【0037】
図7は、4つの干渉型光スイッチ(例えば、干渉型光スイッチ21〜24)を用いて1つの出力ポートから入力される光信号の強度の4倍の強度を有する光信号を出力し、他の出力ポートから出力される光信号を遮断する場合に位相シフタに与える位相差の条件を示すものである。
【0038】
図7に示すように、実施の形態1にかかる集積光源1は、前段に配置される干渉型光スイッチ21、22の位相シフタ31a、31cにπ/2又は−π/2の位相差を与え、後段に配置される干渉型光スイッチ23、24の位相シフタ41a、41dの一方にπ/2又は−π/2の位相差を与え、位相シフタ41a、41dの他方の位相差をゼロとする。このような位相差を位相シフタに与えることで、実施の形態1にかかる集積光源1は、出力ポート44a〜44dのいずれか1つから入力される光信号の4倍の強度を有する光信号を出力する。
【0039】
このように、実施の形態1にかかる集積光源1は、位相シフタに与える位相差を制御することで、レーザーダイオードアレイ2が出力する光信号の強度よりも高い強度の光信号を一部のポートから出力することが可能である。このような出力特性を用いることで、実施の形態1にかかる集積光源1は、例えば、1つの出力ポートから光信号を出力する場合は、入力する光信号のパワーを1/4にすることができる。このように、光回路3が出力する光信号の強度を4P0からP0へ1/4にするには、電流値をI4からI1に下げる(図3参照)ことで実現できる。また、光信号を出力する出力ポートの数が2つである場合において、光回路3が出力する光信号のパワーを2P0からP0へ1/2にするには、電流値をI2からI1へ下げる(図3参照)ことで実現することができる。
【0040】
つまり、実施の形態1にかかる集積光源1では、制御回路4が位相シフタに与える制御信号により光信号を出力する出力ポートの数に応じて駆動電流Isを増減する。これにより、実施の形態1にかかる集積光源1によれば、出力する光信号の強度を一定に保ちながら、光信号を出力する出力ポートの数に応じて駆動電流Isを小さくすることで、消費電力を低減することができる。
【0041】
ここで、従来の技術(例えば、特許文献1等に記載の技術)では、発光部として機能する半導体レーザは、最低でも1チャンネル分の信号強度を確保する光信号を出力する必要があり、出力パワーをこれ以下とすることが出来ない。しかし、実施の形態1にかかる集積光源1では、レーザーダイオードアレイ2は、光信号の強度の最高値は1つのチャンネルで要求される強度で良く、光信号を出力する出力ポートの数を減少させる場合は、光回路3に与える光信号の強度を1チャンネル分の信号強度以下とすることができる。
【0042】
以上は4チャンネルのレーザーダイオードアレイ2を用い、4入力4出力の光回路3の例について説明したが、より多くのチャンネルについても同様である。例えば、2(nは自然数)入力に対して、2出力ではパワーP0に、2n―1出力でパワー2P0に、1出力ではパワー2P0となるので、出力をP0とするように、電流値を下げることができる。
【0043】
また、実施の形態1にかかる集積光源1では、同位相で出力される多チャンネルレーザーダイオードを用いるため、光カプラでの合流損を発生させることなく、経路の切り替えができ、小型の光回路を形成することができる。そして、必要なポートのみに光信号を出力する際、出力ポート数に応じて多チャンネルレーザーダイオードの電流を下げることができるため、多チャンネルレーザーダイオードが全チャンネル動作していても、消費電力を下げることが可能となる。
【0044】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0045】
この出願は、2013年3月29日に出願された日本出願特願2013−073708を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0046】
1 集積光源
2 レーザーダイオードアレイ
3 光回路
4 制御回路
11 電極
21〜24 干渉型光スイッチ
31a、31c 位相シフタ
32a〜32d 光導波路
33ab、33cd 光カプラ
34a〜34d 出力ポート
41a、41d 位相シフタ
42a〜42d 光導波路
43ab、43cd 光カプラ
44a〜44d 出力ポート
CHa〜CHd チャンネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7