【文献】
CHERSTKOV,V.F. et al,Reaction of a tetrafluoroethylene pentamer with sulfur trioxide,Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Seriya Khimicheskaya,1984年,No.10,p.2414-15,see Compound (II)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0020】
本発明の実施形態は、下記式(1)で表される化合物である。
【0022】
(式(1)において、R
11は、単結合、エーテル結合を含んでいてもよく分岐していても良い置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、分岐していてもよい置換若しくは無置換の炭素数2〜5のアルケニレン基、又は酸素原子を示す。R
12及びR
13は、それぞれ独立に、単結合、又は分岐していてもよい置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基を示す。)。
【0023】
式(1)において、R
11の置換基は、例えば、分岐していてもよいアルキル基、分岐していてもよいハロゲン置換アルキル基、分岐していてもよいアルケニル基、分岐していてもよいアルキニル基、分岐していてもよいアルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。R
11の置換基が複数ある場合は、それぞれ独立していてもよい。
【0024】
R
11の置換基は、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のハロゲン置換アルキル基(例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基)、分岐していてもよい炭素数2,3若しくは4のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基)、分岐していてもよい炭素数2,3若しくは4のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基)、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)、アミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)であることが好ましい。
【0025】
R
11の置換基は、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子であることがより好ましい。
【0026】
式(1)において、R
12及びR
13の置換基は、それぞれ、例えば、分岐していてもよいアルキル基、分岐していてもよいハロゲン置換アルキル基、分岐していてもよいアルケニル基、分岐していてもよいアルキニル基、分岐していてもよいアルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子である。R
12及びR
13の置換基はそれぞれ独立している。R
12又はR
13の置換基が複数ある場合は、それぞれ独立していてもよい。
【0027】
R
12及びR
13の置換基は、それぞれ、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基)、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のハロゲン置換アルキル基(例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基)、分岐していてもよい炭素数2,3若しくは4のアルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基)、分岐していてもよい炭素数2,3若しくは4のアルキニル基(例えば、アセチレニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基)、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基)、アミノ基、ヒドロキシ基、又はハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)であることが好ましい。
【0028】
R
12及びR
13の置換基は、それぞれ、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子であることがより好ましい。
【0029】
ハロゲン置換アルキル基とは、無置換アルキル基のうちの少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)で置換された構造を有する置換アルキル基を表す。ハロゲン置換アルキル基としては、フッ素置換アルキル基であることが好ましい。なお、フッ素置換アルキル基とは、無置換アルキル基のうちの少なくとも一つの水素原子がフッ素原子で置換された構造を有する置換アルキル基を表す。
【0030】
式(1)において、R
11の炭素数は、0〜4であることが好ましく、0〜3であることがより好ましく、0〜2であることがさらに好ましい。なお、R
11の炭素数が0である場合は、R
11が単結合である場合を示す。R
11が単結合である場合は、式(1)のR
11に隣接する炭素同士が結合している場合を示す。
【0031】
式(1)において、R
12及びR
13の炭素数は、それぞれ、0〜4であることが好ましく、0〜3であることがより好ましく、0〜2であることがさらに好ましい。なお、R
12又はR
13の炭素数が0である場合は、それぞれ、R
12又はR
13が単結合である場合を示す。R
12又はR
13が単結合である場合は、それぞれ、式(1)のR
12又はR
13に隣接する炭素原子及び酸素原子が結合している場合を示す。
【0032】
本実施形態の化合物は、下記式(2)で表されることが好ましい。
【0034】
(式(2)において、R
21は、単結合、分岐していても良い置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、分岐していてもよい置換若しくは無置換の炭素数2〜5のアルケニレン基、又は酸素原子を示す。)。
【0035】
R
21の置換基は、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
【0036】
本実施形態の化合物は、下記式(3)で表されることが好ましい。
【0038】
(式(3)において、R
31は、単結合、分岐していても良い置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、分岐していてもよい置換若しくは無置換の炭素数2〜5のアルケニレン基、又は酸素原子を示す。R
32〜R
35は、それぞれ独立に、水素原子、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子を示す。)。
【0039】
R
31の置換基は、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の化合物は、下記式(4)、(5)又は(6)で表されることがより好ましい。
【0042】
(式(4)において、R
41及びR
42は、それぞれ独立に、水素原子、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子を示す。)。
【0044】
(式(5)において、R
51〜R
54は、それぞれ独立に、水素原子、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子を示す。)。
【0046】
(式(6)において、R
61及びR
62は、それぞれ独立に、水素原子、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子を示す。)。
【0048】
(式(7)において、R
71は、単結合、分岐していても良い置換若しくは無置換の炭素数1〜5のアルキレン基、分岐していてもよい置換若しくは無置換の炭素数2〜5のアルケニレン基、又は酸素原子を示す。)。
【0049】
R
71の置換基は、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子であることが好ましい。
【0051】
(式(8)において、R
81及びR
82は、それぞれ独立に、水素原子、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のアルキル基、分岐していてもよい炭素数1,2,3若しくは4のフッ素置換アルキル基、又はフッ素原子を示す。)。
【0052】
本実施形態の化合物の具体例を以下に挙げる。
【0062】
本実施形態の化合物は、二次電池の電解液に含有させる添加剤として用いることができる。本実施形態の化合物を電解液に添加することにより、二次電池の容量維持率を向上させ、ガス発生を抑制することができる。
【0063】
以下、本実施形態の電解液及び二次電池について説明する。
[1]電解液
本実施形態における電解液は、式(1)で表される本実施形態の化合物を含む。
【0064】
本実施形態の化合物は、還元分解によって負極表面にSEI(Solid Electrolyte Interface)皮膜を形成する。この皮膜はカルボニル基とスルホニル基を有し、イオン導電性に優れるため、電解液中の溶媒の分解を抑制することができ、結果として、容量維持率の低下及びガス発生を抑制することができるものと考えられる。なお、以上のメカニズム・理論は推測であり、本発明を限定するものではない。
【0065】
本実施形態の化合物の電解液中の含有量は、特に制限されるものではないが、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.3〜8.0質量%であることがより好ましく、1.0〜5.0質量%であることがさらに好ましい。本実施形態の化合物の含有量が0.1質量%以上である場合、電極に皮膜を効果的に形成することができ、結果として、非水溶媒の分解を効果的に抑制することができる。また、本実施形態の化合物の含有量が10質量%以下である場合、SEI皮膜の過剰な成長による電池の内部抵抗の上昇を効果的に抑えることができる。
【0066】
電解液は、本実施形態の化合物の他に、例えば、支持塩及び非水溶媒を含む。
【0067】
支持塩としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、LiBF
4、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)
2等のリチウム塩が挙げられる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
支持塩の電解液中の濃度は、0.5〜1.5mol/lであることが好ましい。支持塩の濃度をこの範囲とすることにより、密度や粘度、電気伝導率等を適切な範囲に調整し易くなる。
【0069】
非水溶媒としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類等のカーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ラクトン類、環状エーテル類、鎖状エーテル類、並びにそれらのフッ素誘導体等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
環状カーボネート類としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等が挙げられる。
【0071】
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等が挙げられる。
【0072】
脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。
【0073】
γ−ラクトン類としては、例えば、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0074】
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0075】
鎖状エーテル類としては、例えば、1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等が挙げられる。
【0076】
非水溶媒としては、その他にも、例えば、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステル、メチル−2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、メチル−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、モノフルオロメチルエチレンカーボネート、ジフルオロメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、モノフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
非水溶媒は、カーボネート類を含むことが好ましい。カーボネート類は、環状カーボネート類又は鎖状カーボネート類を含む。カーボネート類は、比誘電率が大きいため電解液のイオン解離性が向上し、さらに、電解液の粘度が下がるのでイオン移動度が向上するという利点を有する。しかし、カーボネート構造を有するカーボネート類を電解液の非水溶媒として用いると、カーボネート類が分解してCO
2を含むガスが発生する傾向がある。とくに積層ラミネート型の二次電池の場合、電池内部でガスが生じると膨れの問題が顕著に現れ、性能低下に繋がりやすい。そこで、本実施形態では、カーボネート類を含む非水溶媒に本実施形態の化合物を添加しておくことにより、本実施形態の化合物により形成されるSEI皮膜がカーボネート類の分解を抑制し、ガスの発生を抑制することができる。したがって、本実施形態において、電解液は本実施形態の化合物に加え、カーボネート類を非水溶媒として含むことが好ましい。このような構成とすることにより、カーボネート類を非水溶媒として用いてもガス発生を低減でき、高い性能を有する二次電池を提供することができる。カーボネート類の電解液中の含有量は、例えば、30質量%以上であり、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0078】
本実施形態の化合物のLUMO値は、電解液に用いられる溶媒のLUMO値よりも小さいことが好ましい。一般的な溶媒としてはEC(1.18eV)やDEC(1.26eV)、PC(1.24eV)等が挙げられる。本実施形態の化合物のLUMO値は、0以下であることが好ましく、−0.5以下であることがより好ましい。これにより、電解液中の溶媒より先に本実施形態の化合物が還元分解されて負極に皮膜を形成することができ、溶媒の分解を抑制することができる。LUMO値は、例えばMOPAC(Molecular Orbital PACage)による分子軌道計算により計算することができる。
【0079】
なお、上記化合物(101〜109)のLUMO値(eV)を表1に示す。
【0081】
[2]負極
本実施形態の二次電池は、負極活物質を有する負極を備える。負極活物質は負極結着剤によって負極集電体上に結着されることができる。
【0082】
負極活物質としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属(a)、リチウムイオンを吸蔵、放出し得る金属酸化物(b)、又はリチウムイオンを吸蔵、放出し得る炭素材料(c)等が挙げられる。負極活物質は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
金属(a)としては、例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金等が挙げられる。また、これらの金属又は合金は2種以上混合して用いてもよい。また、これらの金属又は合金は1種以上の非金属元素を含んでもよい。これらの中でも、負極活物質としてシリコン、スズ、又はこれらの合金を用いることが好ましい。シリコン又はスズを負極活物質として用いることにより、重量エネルギー密度や体積エネルギー密度に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0084】
金属酸化物(b)としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物等が挙げられる。これらの中でも、負極活物質として酸化シリコンを用いることが好ましい。また、金属酸化物(b)は、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%含有することができる。
【0085】
炭素材料(c)としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。
【0086】
負極結着剤としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、結着性が強いことから、ポリフッ化ビニリデンまたはスチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。負極結着剤の量は、負極活物質100質量部に対して、0.5〜25質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
【0087】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、クロム、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。
【0088】
負極は、負極集電体上に、負極活物質と負極結着剤を含む負極活物質層を形成することにより作製することができる。負極活物質層の形成方法としては、例えば、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法等が挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、該負極活物質層の上に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成し、負極を作製してもよい。
【0089】
[3]正極
本実施形態の二次電池は、正極活物質を有する正極を備える。正極活物質は正極結着剤によって正極集電体上に結着されることができる。
【0090】
正極活物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、リチウム複合酸化物やリン酸鉄リチウムが挙げられる。また、これらのリチウム複合酸化物の遷移金属の少なくとも一部を他元素で置き換えたものでもよい。また、金属リチウム対極電位で4.2V以上にプラトーを有するリチウム複合酸化物を用いることもできる。リチウム複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0091】
リチウム複合酸化物としては、例えば、LiMnO
2、Li
xMn
2O
4(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、またはこれらのマンガン酸リチウムのMnの一部をLi、Mg、Al、Co、B,Ti,Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiCoO
2等のコバルト酸リチウム、またはコバルト酸リチウムのCoの一部をNi,Al、Mn、Mg、Zr,Ti,Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiNiO
2等のニッケル酸リチウム、またはニッケル酸リチウムのNiの一部をCo、Al、Mn、Mg、Zr,Ti,Znからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;LiNi
1/3Co
1/3Mn
1/3O
2などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物、または該リチウム遷移金属酸化物の遷移金属の一部をCo、Al、Mn、Mg、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたもの;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの等が挙げられる。特に、リチウム複合酸化物としては、Li
αNi
βCo
γAl
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、またはLi
αNi
βCo
γMn
δO
2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.4、γ≦0.4)、またはこれらの複合酸化物の遷移金属の一部をAl,Mg,Zrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素で置き換えたものが好ましい。これらのリチウム複合酸化物は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
また、正極活物質としては、高電圧が得られるという観点から、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質(以下、5V級活物質とも称す)を用いることができる。5V級活物質を用いた場合、電解液の分解等によるガス発生が起こり易いが、本実施形態の化合物を含む電解液を用いることにより、ガス発生を抑制できる。
【0093】
5V級活物質としては、例えば、下記式(A)で表されるリチウムマンガン複合酸化物を用いることができる。
【0094】
Li
a(M
xMn
2−x−yY
y)(O
4−wZ
w) (A)
【0095】
(式(A)中、0.4≦x≦1.2、0≦y、x+y<2、0≦a≦1.2、0≦w≦1である。MはCo、Ni、Fe、Cr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Yは、Li、B、Na、Mg、Al、Ti、Si、K及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種である。Zは、F及びClからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0096】
また、5V級活物質としては、十分な容量を得ることと高寿命化の観点から、このような金属複合酸化物の中でも、下記式(B)で表されるスピネル型化合物が好ましく用いられる。
【0097】
LiNi
xMn
2−x−yA
yO
4 (B)
【0098】
(式(B)中、0.4<x<0.6、0≦y<0.3、Aは、Li、B、Na、Mg、Al、Ti及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0099】
式(B)中、0≦y<0.2であることがより好ましい。
【0100】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、オリビン型の正極活物質が挙げられる。オリビン型の5V活物質としては、例えば、LiCoPO
4、又はLiNiPO
4が挙げられる。
【0101】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質としては、Si複合酸化物が挙げられる。このようなSi複合酸化物としては、例えば、下記式(C)で示される化合物が挙げられる。
【0103】
(式(C)中、Mは、Mn、Fe及びCoからなる群より選ばれる少なくとも一種である)。
【0104】
また、リチウムに対して4.5V以上の電位で動作する活物質は、層状構造を有していてもよい。層状構造を含む5V級活物質としては、例えば、下記式(D)で示される化合物が挙げられる。
【0105】
Li(M1
xM2
yMn
2−x−y)O
2 (D)
【0106】
(式(D)中、M1は、Ni、Co及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種である。M2は、Li、Mg及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種である。0.1<x<0.5、0.05<y<0.3)。
【0107】
5V級活物質としては、下記(E)〜(G)で示されるリチウム金属複合酸化物を用いることができる。
【0109】
(式(E)中、Mは、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0111】
(式(F)中、0.1≦y≦0.5、0.33≦z≦0.7であって、Mは、Li、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0112】
Li(Li
xM
yMn
z)O
2 (G)
【0113】
(式(G)中、0.1≦x<0.3、0.1≦y≦0.4、0.33≦z≦0.7であって、Mは、Li、Co及びNiからなる群より選ばれる少なくとも一種である。)。
【0114】
正極結着剤としては、負極結着剤で挙げた材料と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。正極結着剤の量は、正極活物質100質量部に対して、2〜10質量部であることが好ましい。
【0115】
正極集電体としては、負極集電体で挙げた材料と同様のものを用いることができる。
【0116】
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子等が挙げられる。
【0117】
[4]セパレータ
セパレータとしては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、セパレータとして用いられるポリマー基材にセラミックを含むコーティングを形成したセラミックコートセパレータを用いることもできる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。
【0118】
[5]外装体
外装体は、特に制限されるものではないが、例えば、ラミネートフィルムを用いることができる。例えば積層ラミネート型の二次電池の場合、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。
【0119】
外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池の場合、外装体として金属缶を用いた二次電池に比べて、ガスが発生すると電極積層体の歪みが非常に大きくなる。これは、ラミネートフィルムが金属缶に比べて二次電池の内圧により変形しやすいためである。さらに、外装体としてラミネートフィルムを用いた二次電池を封止する際には、通常、電池内圧を大気圧より低くするため、内部に余分な空間がなく、ガスが発生した場合にそれが直ちに電池の体積変化や電極積層体の変形につながりやすい。しかし、本実施形態に係る二次電池は、本実施形態の化合物を含む電解液を用いることにより、このような問題を克服することができる。
【0120】
[6]二次電池
本実施形態に係る二次電池の構成としては、特に本願発明が制限されるものではないが、例えば、正極および負極が対向配置された電極積層体と、電解液とが外装体に内包されている構成を挙げることができる。二次電池の形状は、特に制限されるものではないが、例えば、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型、又は積層ラミネート型が挙げられる。
【0121】
以下、例として積層ラミネート型の二次電池について説明する。
図1は、積層ラミネート型の二次電池が有する電極積層体の構造を示す模式的断面図である。この電極積層体は、正極cの複数および負極aの複数が、セパレータbを挟みつつ交互に積み重ねられて形成されている。各正極cが有する正極集電体eは、正極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に正極端子fが溶接されている。各負極aが有する負極集電体dは、負極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に負極端子gが溶接されている。
【0122】
このような平面的な積層構造を有する電極積層体は、Rの小さい部分(捲回構造の巻き芯に近い領域)がないため、捲回構造を持つ電極積層体に比べて、充放電に伴う電極の体積変化に対する影響を受けにくいという利点がある。しかし、平面的な積層構造を持つ電極積層体には、電極間にガスが発生した際に、その発生したガスが電極間に滞留する傾向がある。これは、捲回構造を持つ電極積層体の場合には電極に張力が働いているため電極間の間隔が広がりにくいのに対して、積層構造を持つ電極積層体の場合には電極間の間隔が広がりやすいためである。特に、外装体がアルミラミネートフィルムであった場合、この問題は顕著に現われる。本実施形態の二次電池では、本実施形態の化合物を含む電解液を用いることにより、このような問題を解決することができ、高エネルギー型の負極を用いた積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池においても、長寿命駆動が可能となる。
【0123】
(実施例)
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明する。
【0124】
(製造例1)
以下の方法により、化合物(101)を製造した。
塩化スルフリルとシュウ酸を、ジクロロメタン溶媒中トリエチルアミン存在化にて、−70℃で反応させることにより目的物を得た。
【0125】
(製造例2〜9)
製造例1と同様のスキームを用いて、原料物質を変化させて製造した。
【0126】
(分析)
NMRにより、製造例1〜9で得られた化合物が、化合物(101)〜(109)であることを確認した。
【0127】
(実施例1)
<負極>
負極活物質として、黒鉛を用いた。この負極活物質と、負極結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、導電補助材としてのアセチレンブラックとを、75:20:5の質量比で計量した。そして、これらをN−メチルピロリドンと混合して、負極スラリーを調製した。負極スラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布した後に乾燥し、さらに窒素雰囲気下で120℃の熱処理を行うことで、負極を作製した。
【0128】
<正極>
正極活物質として、LiMn
2O
4を用いた。この正極活物質と、導電補助材としてのカーボンブラックと、正極結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、90:5:5の質量比で計量した。そして、これらをN−メチルピロリドンと混合して、正極スラリーを調製した。正極スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に塗布した後に乾燥し、さらにプレスすることで、正極を作製した。
【0129】
<電極積層体>
得られた正極の3層と負極の4層を、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質フィルムを挟みつつ交互に重ねた。正極活物質に覆われていない正極集電体および負極活物質に覆われていない負極集電体の端部をそれぞれ溶接した。さらに、その溶接箇所に、アルミニウム製の正極端子およびニッケル製の負極端子をそれぞれ溶接して、平面的な積層構造を有する電極積層体を得た。
【0130】
<電解液>
非水溶媒としてECとDECの混合溶媒(体積比:EC/DEC=30/70)を用いた。添加剤としての化合物(101)の電解液中の含有量が1質量%となるように、支持塩としてのLiPF
6の電解液中の濃度が1Mとなるように、化合物(101)及びLiPF
6をそれぞれ混合溶媒に添加し、電解液を調製した。
【0131】
<二次電池>
電極積層体を外装体としてのアルミニウムラミネートフィルム内に収容し、外装体内部に電解液を注入した。その後、0.1気圧まで減圧しつつ外装体を封止し、二次電池を作製した。
【0132】
<評価>
(45℃における容量維持率、体積増加率)
作製した二次電池に対し、45℃に保った恒温槽中で、2.5Vから4.2Vの電圧範囲で充放電を繰り返す試験を行い、サイクル維持率(%)、体積増加率(%)について評価した。充電は、1Cで4.2Vまで充電した後、合計で2.5時間定電圧充電を行った。放電は、1Cで2.5Vまで定電流放電した。
【0133】
「容量維持率(%)」は、(200サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)×100(単位:%)で算出した。
【0134】
「体積増加率(%)」は、{(200サイクル後の体積容量)/(サイクル開始前の体積容量)−1}×100(単位:%)で算出した。
【0136】
(実施例2〜9)
添加剤として化合物(101)の代わりに表2に記載の化合物((102)〜(109))を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0137】
(比較例1)
添加剤として化合物(101)の代わりに下記化合物(201)(1,3,2−ジオキサチオラン2,2−ジオキシド)を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0139】
(比較例2)
添加剤として化合物(101)の代わりに下記化合物(202)(1,3−シクロペンタンジオン)を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0141】
(比較例3)
添加剤として化合物(101)の代わりに下記化合物(203)(無水アジピン酸)を用いた以外は、実施例1と同様に二次電池を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0144】
この出願は、2013年9月13日に出願された日本出願特願2013−190745を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0145】
以上、実施形態及び実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。