(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置の斜視図である。
図1(B)は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置の断面図である。
図1(B)は、保持状態検出装置における圧電センサが装着された領域の断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置の機能ブロック図である。本実施形態では、電子筆記具の形状からなる保持状態検出装置を例に説明する。
【0027】
図1に示すように、保持状態検出装置10は、圧電センサ20および筐体101を備える。また、
図2に示すように、保持状態検出装置10は、圧電センサ20と検出部30とを備える。圧電センサ20と検出部30は接続されている。検出部30は、圧電センサ20の出力電圧を検出し、筐体101が操作者によって保持されているか否かを検出する。なお、検出部30は、
図1に図示していないが、筐体101の内部に装着されていてもよく、筐体101の外部に配置していてもよい。筐体101の外部に配置する態様では、圧電センサ20と検出部30を有線または無線で接続すればよい。
【0028】
筐体101は、円筒状であり、中空を有する。筐体101は、絶縁性材料からなる。筐体101の長尺方向(円周方向に直交する方向)の一方端には先細り形状の端部102を備える。
【0029】
この保持状態検出装置10を電子筆記具として利用する場合、操作者は、保持状態検出装置10に対して次のような取り扱いをする。操作者は、筐体101の円筒部分を保持して、先細り形状の端部102を他の電子機器(例えば電子黒板等)に接触させる。操作者が保持状態検出装置10を移動させると、先細り形状の端部102の先端部も移動する。他の電子機器は、この動きをセンシングすることによって、操作者の操作入力を受け付ける。
【0030】
圧電センサ20は可撓性を有する平膜であり、
図1(B)に示すように、筐体101の内面壁に配置されている。この際、圧電センサ20は、内壁面において、円周方向に沿うように配置されている。
【0031】
圧電センサ20は、平膜の圧電フィルムと検出用導体とを備える。検出用導体は、圧電フィルムの対向する二面の平膜面に形成されている。検出用導体は、検出部30に接続されている。
【0032】
圧電フィルムは、伸縮によって対向する平膜面に電荷を発生する圧電材料である。例えば、圧電フィルムは、一軸延伸されたポリ乳酸(PLA)、より具体的にはL型ポリ乳酸(PLLA)である。ポリ乳酸の一軸延伸方向は、圧電フィルムの長手方向に対して略45°を成す方向である。なお、この成す角は45°であることが最も好ましいが、±10°程度の範囲内であればよい。なお、ここで、圧電フィルムの長手方向は、
図1の例では、筐体101の内面壁に沿った円周方向である。
【0033】
ここで、圧電性シート21を形成するPLLAの特性について説明する。
【0034】
PLLAはキラル高分子からなる。PLLAは、主鎖が螺旋構造を有する。PLLAは、一軸延伸された方向に分子が配向し、当該分子の配向によって圧電性を有する。そして、一軸延伸されたPLLAは、圧電フィルムが伸長することによって、電荷を発生する。発生する電荷量は、圧電フィルムの伸長量によって決まる。一軸延伸されたPLLAの圧電定数は、高分子中で非常に高い部類に属する。例えば、PLLAの圧電歪み定数d
14は、延伸条件、熱処理条件、添加物の配合等の条件を整えることにより10〜20pC/Nという高い値が得られる。
【0035】
そして、圧電フィルムが伸長する方向と、一軸延伸方向が45°の角度をなす態様において、効果的に電荷を発生することができる。
【0036】
なお、圧電フィルムの延伸倍率は3〜8倍程度が好適である。延伸後に熱処理を施すことにより、ポリ乳酸の延びきり鎖結晶の結晶化が促進され圧電定数が向上する。尚、二軸延伸した場合はそれぞれの軸の延伸倍率を異ならせることによって一軸延伸と同様の効果を得ることが出来る。例えばある方向をX軸としてその方向に8倍、その軸に直交するY軸方向に2倍の延伸を施した場合、圧電定数に関してはおよそX軸方向に4倍の一軸延伸を施した場合とほぼ同等の効果が得られる。単純に一軸延伸した圧電フィルムは延伸軸方向に沿って裂け易いため、前述したような二軸延伸を行うことにより幾分強度を増すことができる。
【0037】
また、PLLAは、延伸等による分子の配向処理で圧電性を生じるので、PVDF等の他のポリマーや圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。すなわち、強誘電体に属さないPLLAの圧電性は、PVDFやPZT等の強誘電体のようにイオンの分極によって発現するものではなく、分子の特徴的な構造である螺旋構造に由来するものである。このため、PLLAには、他の強誘電性の圧電体で生じる焦電性が生じない。さらに、PVDF等は経時的に圧電定数の変動が見られ、場合によっては圧電定数が著しく低下する場合があるが、PLLAの圧電定数は経時的に極めて安定している。したがって、出力電荷量が使用時間の長さや周囲環境に影響されない。
【0038】
このように圧電フィルムに、一軸延伸したPLLAを用いることによって、操作者が筐体101を持った際に生じる温度変化の影響を受けず、信頼性の高い圧電センサ20を実現できる。また、操作者が筐体101を保持したことによる筐体101の少しの変位であっても電荷を発生するので、操作者による筐体101の保持、すなわち筐体101の保持状態を高感度に検出することができる。
【0039】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置の圧電センサの出力電圧を示すグラフである。
図3に示すように、筐体101を保持していない期間では、電圧の変動は殆ど無く、変動量は極小さい。一方、筐体101を保持している期間では、電圧の変動が激しく、変動量は大きい。
【0040】
したがって、検出部30は、次に示すフローを実行することによって、筐体101が保持されたことを検出することができる。
図4は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置における保持の検出フローを示すフローチャートである。
【0041】
検出部30は、圧電センサ20の出力電圧を観測する(S101)。検出部30は、予め設定した計測単位時間当たりの出力電圧の変動量を算出する(S102)。変動量は、例えば、計測単位時間内での最大電圧と最小電圧との差である。
【0042】
検出部30は、変動量と閾値電圧(保持検出用閾値)Vwとを比較する。検出部30は、変動量が閾値電圧Vwよりも大きいことを検出すると(S103:YES)、筐体101が保持されていること(持ち上げられていること)を識別する(S104)。検出部30は、変動量が閾値電圧Vw以下であれば(S103:NO)、筐体101が保持されていないと識別する。そして、検出部30は、継続して出力電圧を計測し、単位時間毎に変動量を算出して、閾値と比較する。
【0043】
これにより、保持状態検出装置10は、筐体101が保持されていることを検出することができる。
【0044】
また、検出部30は、次に示すフローを実行することによって、筐体101の保持状態を検出することができる。
図5は、本発明の第1の実施形態に係る保持状態検出装置における保持状態の検出フローを示すフローチャートである。なお、
図5における保持の検出のステップS104までは同じであり、説明は省略する。
【0045】
検出部30は、変動量と閾値Vwとの比較を継続し、変動量が閾値Vw以下にならない期間(S105:NO)では、筐体101が保持されていると識別し続ける。
【0046】
検出部30は、変動量が閾値Vw以下であることを検出すると(S105:YES)、計時を開始する。検出部30は、変動量が閾値Vw以下であることを検出したタイミングを基準として変動量が閾値Vw以下である状態が継続する時間を経過時間として計測する。検出部30は、経過時間が閾値時間よりも短い期間(S106:NO)では、筐体101が保持されていると識別し続ける。
【0047】
検出部30は、経過時間が閾値時間に達すると、筐体101の保持(持ち上げ)が解除されたと識別する(S107)。
【0048】
これにより、検出部30は、筐体101の保持状態(保持されているか否か)を検出することができる。
【0049】
なお、検出部30は、保持していない期間(初期状態)における平均電圧を基準電圧として、計測単位時間内における最大電圧もしくは最小電圧と基準電圧との差を、変動量に設定してもよい。この場合、基準電圧からの電位差で規定される
図3閾値Vaを用いればよい。
【0050】
このような構成とすることで、操作者によって筐体101が保持されたことを正確且つ確実に検出することができる。また、圧電センサ20の変位に対する感度が高いため、筐体101が保持されたことを瞬時的に検出することができる。また、機械的なスイッチを用いないため、破損や経年劣化による接触不良が発生せず、信頼性が高い。
【0051】
また、このような構成および処理を用いることによって、保持されているか保持されていないかを正確且つ確実に検出することができる。また、保持状態の変化を、タイムラグを生じることなく検出することができる。
【0052】
また、このような構成を用いることで、操作者がスイッチ等の操作を行わなくても、単に筐体101を保持しただけで、筐体101を保持していることを検出することができる。すなわち、操作者に意識させることなく保持状態を検出することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、筐体101における先細り形状の端部102との接続部付近に圧電センサ20を装着する態様を示した。しかしながら、筐体101の他の位置に圧電センサ20を装着してもよい。ただし、本実施形態に示すように、操作者が最も把持しやすい位置に圧電センサ20を装着することによって、より正確且つ確実に保持状態を検出することができる。
【0054】
次に、本発明の第2の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る保持状態検出装置の斜視図である。
【0055】
本実施形態に係る保持状態検出装置10Aは、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10に対して、圧電センサ20Aの形状および筐体101に対する装着態様が異なるものである。他の構成は、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10と同じである。
【0056】
圧電センサ20Aは、筐体101の円周方向の全周に亘るだけでなく、筐体101の長手方向にも広がる形状である。このような構成とすることで、筐体101の把持位置に影響されることなく、保持状態を正確且つ確実に検出することができる。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る保持状態検出装置の斜視図である。
【0058】
本実施形態に係る保持状態検出装置10Bは、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10に対して、圧電センサ20Bの形状および筐体101に対する装着態様が異なるものである。他の構成は、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10と同じである。
【0059】
圧電センサ20Bは、筐体101の長手方向と圧電センサ20Bの長手方向とが平行になるように、筐体101に装着されている。このような構成であっても、第1、第2の実施形態と同様に、保持状態を正確且つ確実に検出することができる。さらに、本実施形態の構成を用いることによって、把持位置に影響されることなく保持状態を検出し、且つ、圧電フィルムの面積を小さくすることができる。これにより、安価で且つ圧電センサ20Bを筐体101に貼り付けやすい。
【0060】
次に、本発明の第4の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図8は、本発明の第4の実施形態に係る保持状態検出装置の斜視図である。
【0061】
本実施形態に係る保持状態検出装置10Cは、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10に対して、圧電センサ20Cの形状および筐体101に対する装着態様が異なるものである。他の構成は、第1の実施形態に係る保持状態検出装置10と同じである。
【0062】
圧電センサ20Cは長尺状である。圧電センサ20Cは、筐体101の円周面に沿って螺旋状に装着されている。この場合、圧電フィルムの一軸延伸方向は、圧電センサ20Cの長尺方向または長尺方向に直交する短尺に平行であるとよい。
【0063】
このような構成であっても、第2の実施形態と同様に、把持位置に影響されることなく、保持状態を正確且つ確実に検出することができる。さらに、本実施形態の構成では、圧電フィルムの面積を小さくすることができる。
【0064】
次に、本発明の第5の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図9は、本発明の第5の実施形態に係る保持状態検出装置に用いる圧電フィルム装着治具に圧電フィルムを装着した状態を示す側面図である。
【0065】
本実施形態に係る保持状態検出装置の基本構造は、第1の実施形態に係る保持状態検出装置と同じであり、圧電センサ20の取り付け構造が異なる。
【0066】
圧電センサ20は、高い弾性を有する装着治具40の表面に貼り付けられている。装着治具40は、筐体101の内壁面の形状に応じて湾曲した形状である。圧電センサ20は、装着治具40の外周面に貼り付けられている。
【0067】
圧電センサ20を筐体101の内部に装着する際には、装着治具40を定常状態よりも湾曲させた状態で、筐体101内に挿嵌する。挿嵌された装着治具40は定常状態に戻ろうとして、筐体101の内壁面に向かう方向へ圧電センサ20押しつける。これにより、圧電センサ20を筐体101の内壁面に当接させた状態で保持することができる。
【0068】
このような構成を用いることで、圧電センサ20を筐体101の内壁面に接着剤等を用いて直接貼り付けるよりも、圧電センサ20を筐体101の内壁面に容易に装着することができる。
【0069】
次に、本発明の第6の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図10は、本発明の第6の実施形態に係る保持状態検出装置における圧電センサと検出部の構成を示す分解斜視図である。
図11は、本発明の第6の実施形態に係る保持状態検出装置における圧電センサと検出部の構成を示す分解状態での側面断面図である。
【0070】
本実施形態に係る保持状態検出装置10Dは、圧電センサ20Dおよび検出部30Dを備える。圧電センサ20Dの機能は、第1の実施形態に係る圧電センサ20の機能と同じである。検出部30Dの機能は、第1の実施形態に係る検出部30と同じである。
【0071】
圧電センサ20Dは、ベースフィルム201、検出用導体202、圧電性シート203、第1グランド導体204、第2グランド導体205、および保護膜206,207を備える。
【0072】
ベースフィルム201は、絶縁性を有し、例えばPETからなる。ベースフィルム201は、平面視して略矩形で長尺状である。ベースフィルム201の表面には、検出用導体202が形成されている。検出用導体202は、ベースフィルム201の長手方向における一方端側の所定範囲に形成されている。ベースフィルム201の表面には、端子導体2081,2082、グランド用導体209、配線導体2101,2102が形成されている。端子導体2081,2082は、ベースフィルム201の長手方向における他方端付近に形成されている。グランド用導体209は、ベースフィルム201の長手方向において端子導体2082と検出用導体202との間に配置されている。配線導体2101は、端子導体2081と検出用導体202とを接続している。配線導体2102は、端子導体2082とグランド用導体209とを接続している。ベースフィルム201における検出用導体202の形成領域と、端子導体2081,2082およびグランド用導体209の形成領域と間には、切り欠き211が形成されている。
【0073】
圧電性シート203は、検出用導体202の表面に配置されている。圧電性シート203の平面形状は、検出用導体202の平面形状と略同じである。
【0074】
第1グランド導体204は、ベースフィルム201の表面側に配置されている。これにより、圧電性シート203は、検出用導体202と第1グランド導体204の長手方向の一方端側の領域とに挟みこまれる。第1グランド導体204の長手方向の他方端側の領域は、グランド用導体209に当接している。なお、第1グランド導体204と配線導体2101が重なり合う部分には、絶縁性フィルムが配置されている。
図11に示すように、第1グランド導体204は、導体膜2041と、導体膜2041の両面に配置された導電性粘着材2042とからなる。
【0075】
保護膜206は、第1グランド導体204の表面側に配置されている。保護膜206は、絶縁性フィルムであり、例えばPETからなる。保護膜206は、ベースフィルム201と略同じ形状である。
【0076】
第2グランド導体205は、ベースフィルム202の表面に配置されている。
図11に示すように、第2グランド導体205は、導体膜2051と、導体膜2051の両面に配置された導電性粘着材2052とからなる。第2グランド導体205は、切り欠き211の領域において、第1グランド導体204と導通されている。
【0077】
保護膜207は、第2グランド導体205の裏面側に配置されている。保護膜207は、絶縁性フィルムであり、例えばPETからなる。保護膜207は、ベースフィルム201よりも長さが短い。保護膜207は、第2グランド導体205の長手方向における他方端側の領域に重なっており、他方端側の領域には重なっていない。
【0078】
検出部30Dは、ベース基板301と電子部品302とを備える。ベース基板301には回路パターンが形成されている。電子部品302は、ベース基板301に実装されている。ベース基板301の回路パターンにおける外部接続用端子は、異方性導電膜310を介して、端子導体2081,2082に接続されている。
【0079】
このような構成からなる圧電センサ20Dと検出部30Dとの複合モジュールは、
図12に示すように、筐体101に実装される。
図12は、本発明の第6の実施形態に係る保持状態検出装置の部品配置状態を示す断面図である。
【0080】
筐体101は、円筒形であり、筐体101内には、電子部品ASSYbiが実装されている。圧電センサ20Dは、筐体101の内壁面に沿って配置されている。圧電センサ20Dの長手方向における検出部30Dが接続する端部を除く略全面は、筐体101の内壁面に当接している。この際、
図10、
図11に示すように、第2グランド導体205の一部が保護膜207に覆われることなく露出しているので、この露出部における導電性粘着材2052によって、圧電センサ20Dは、筐体101の内壁面に粘着している。これにより、圧電センサ20Dは、筐体101に固定されている。
【0081】
圧電センサ20Dの長手方向における検出部30D側の端部は、筐体101の内側に湾曲している。これにより、検出部30Dは、筐体101の内部空間の略中央に配置されている。検出部30Dは、電子部品ASSYbiに固定されている。
【0082】
このような構成とすることによって、圧電センサ20Dと検出部30Dを一体化でき、筐体101内に配置することができる。
【0083】
次に、本発明の第7の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図13は、本発明の第7の実施形態に係る保持状態検出装置の検出概念を説明するための電圧波形図である。
【0084】
本実施形態に係る保持状態検出装置の構造は、上述の各実施形態に示したいずれかの構造を用いている。本実施形態に係る保持状態検出装置は、圧電センサの出力電圧によって実行する動作が異なる。
【0085】
図13は、筐体を保持した後に筐体を長押しした状態の出力電圧波形を示している。なお、長押しとは、筐体に対して外部から所定時間に亘って連続的に押圧力をかける状態をいう。
【0086】
上述のように、筐体が保持されている期間では、保持していない期間よりも電圧の変動量が大きくなる。そして、筐体に押圧力を加えると、単に保持している状態よりも、電圧が大きく変動する。また、筐体を長押しした場合、押し始めで電圧値が基準電圧よりも高くなり、押し終わりで電圧値が基準電圧よりも低くなる。
【0087】
検出部は、動作検出用の高電圧側閾値THHと、低電圧側閾値THLを予め記憶している。高電圧側閾値THHは、単なる保持状態での電圧値よりも高く設定されている。高電圧側閾値THHは、意図的に押圧が加えられたときに出力電圧が高電圧側閾値THHを上回るように設定されている。低電圧側閾値THLは、単なる保持状態での電圧値よりも低く設定されている。高電圧側閾値THHは、本発明の動作制御用閾値および第1動作制御用閾値である。低電圧側閾値THLは、意図的に長押しが行われて押圧が解放されたときに出力電圧が低電圧側閾値THLを下回るように設定されている。低電圧側閾値THLは、本発明の第2動作制御用閾値である。
【0088】
図14は、本実施形態に係る保持状態検出装置の検出部における第1の操作入力検出フローを示すフローチャートである。
【0089】
検出部は、上述の実施形態の方法を用いて、保持状態を検出する(S201)。検出部は、出力電圧を経時的に計測する(S202)。検出部は、出力電圧と高電圧側閾値THHを逐次比較し、出力電圧が高電圧側閾値THHよりも大きくなったことを検出すると(S203:YES)、動作開始制御(S204)を行う。動作開始制御とは、予め設定した動作を開始する制御であり、例えば、電子筆記具の場合、描ける線の太さを変更する、描ける線の色を変更する等の動作を開始する制御である。また、複数の動作モードが予め設定されている場合には、動作開始制御によってモードの切り替えを行うこともできる。
【0090】
なお、検出部は、出力電圧が高電圧側閾値THH以下であれば(S203:NO)、出力電圧の計測、および、出力電圧と高電圧側閾値THHとの比較を継続する。
【0091】
このような処理を行うことによって、単なる保持検出だけでなく、意図的な押圧による保持状態における別の動作の操作入力を検出して、この動作制御を実行することができる。この際、別の動作を実行させるためのスイッチや操作子を別途必要としない。
【0092】
図15は、本実施形態に係る保持状態検出装置の検出部における第2の操作入力検出フローを示すフローチャートである。
【0093】
検出部は、上述の実施形態の方法を用いて、保持状態を検出する(S211)。検出部は、出力電圧を経時的に計測する(S212)。検出部は、出力電圧と高電圧側閾値THHを逐次比較し、出力電圧が高電圧側閾値THHよりも大きくなったことを検出すると(S213:YES)、これを記憶する。次に、検出部は、出力電圧と低電圧側閾値THLを逐次比較し、出力電圧が低電圧側閾値THLよりも小さくなったことを検出すると(S214:YES)、動作開始制御(S215)を行う。
【0094】
なお、検出部は、出力電圧が高電圧側閾値THH以下の場合(S213:NO)、および、出力電圧が低電圧側閾値THL以上の場合(S214:NO)、出力電圧の計測、および、出力電圧と高電圧側閾値THHおよび低電圧側閾値THLとの比較を継続する。
【0095】
このような処理を行うことによって、単なる保持検出だけでなく、意図的な長押しによる保持状態における別の動作の操作入力を検出して、この動作制御を実行することができる。この際、別の動作を実行させるためのスイッチや操作子を別途必要としない。
【0096】
なお、上述の方法では、出力電圧値によって長押しを検出する態様を示した。しかしながら、時間によって長押しを検出することも可能である。
図16は、本実施形態に係る保持状態検出装置の検出部における第3の操作入力検出フローを示すフローチャートである。
【0097】
検出部は、上述の実施形態の方法を用いて、保持状態を検出する(S221)。検出部は、出力電圧を経時的に計測する(S222)。検出部は、出力電圧のピーク検出を行って、極大値の時間t(MX)を検出する(S223)。検出部は、極大値の検出後、引き続き出力電圧のピーク検出を行って、極小値の時間t(MN)を検出する(S224)。
【0098】
長押しが行われた場合、上述のように、押し始めで電圧が基準電圧よりも高く極大になり、押し終わりで電圧が基準電圧よりも低く極小になる。したがって、これら極大の時間と極小の時間の差は、押圧されている時間に比例する。
【0099】
検出部は、極大値の時間t(MX)と極小値の時間t(MN)との時間間隔Tを算出する(S225)。検出部は、長押し検出用の閾値時間THtを予め記憶している。長押し検出用の閾値時間THtは、本発明の動作制御用の時間閾値に相当する。検出部は、時間間隔Tと閾値時間THtを比較し、時間間隔Tが閾値時間THtよりも長いことを検出すると(S226:YES)、動作開始制御(S227)を行う。
【0100】
なお、検出部は、時間間隔Tが閾値時間THtよりも長くなければ(S226:NO)、出力電圧の計測、時間間隔T、時間間隔Tと閾値時間THtとの比較を継続する。
【0101】
なお、
図16では、極大値および極小値を用いる態様を示したが、上述の出力電圧が押圧検出用の閾値を超えた時間を、時間間隔の算出に用いてもよい。
【0102】
このような処理であっても、単なる保持検出だけでなく、意図的な長押しによる保持状態における別の動作の操作入力を検出することができる。
【0103】
なお、上述の単発の押圧の検出と長押しの検出とを組み合わせて実行することができる。これにより、複数の動作に対する制御を、専用のスイッチを用いることなく開始することができる。
【0104】
次に、本発明の第8の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図17は、本発明の第8の実施形態に係る保持状態検出装置の機能ブロック図である。
【0105】
本実施形態に係る保持状態検出装置10Eは、上述の実施形態に係る保持状態検出装置に対してローパスフィルタ50を追加した点で異なる。他の構成は、実施形態に係る保持状態検出装置と同じである。
【0106】
ローパスフィルタ50は、圧電センサ20と検出部30との間に接続されている。ローパスフィルタ50は、約100[kHz]を遮断周波数とする低域通過フィルタである。
【0107】
人の押圧によって発生する圧電センサの変位の周波数は、数[Hz]から数十[Hz]である。一方、外部からの振動、衝撃による周波数は、数百[Hz]から数千[Hz]である。したがって、このローパスフィルタ50を用いることによって、検出部30には、押圧による変位を起因とする周波数の出力信号のみが入力される。
【0108】
これにより、保持状態および押圧を、より正確に検出することができる。
【0109】
上述の実施形態では、円筒形の筐体である態様、すなわち、保持状態検出装置が電子筆記具のようなものである態様を示したが、マウス、タブレット端末、携帯型電話器等の他の形状の筐体に適用することができる。この際、本発明に係る保持状態検出装置が装着される機器は、操作者が装置の一部を把持して利用するものであることが好ましい。以下に、各種の態様の一部を図示して説明する。
【0110】
本発明の第9の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図18は、本発明の第9の実施形態に係る保持状態検出装置の外観斜視図である。
【0111】
保持状態検出装置10Fは、シャワー装置である。保持状態検出装置10Fは、シャワーヘッド111Fと、把持部112Fとを備える。把持部112Fは筒状であり、シャワーヘッド111Fに物理的に接続されている。把持部112Fには、圧電センサ20が装着されている。圧電センサ20は、把持部112Fの内部の表面付近に配置されていても、表面に貼り付けられていてもよい。ただし、表面に貼り付ける場合には、防水フィルム等によって覆われている。
【0112】
使用者が把持部112Fを把持すると、圧電センサ20および検出部30(図示せず)によって、把持状態(保持状態)が検出される。この把持状態の検出をトリガとして、シャワーヘッド111Fに水、湯を供給することができる。この際、上述のように、押圧力や長押しを検出できるようにすることで、押圧力や長押し時間を用いて、水量(湯量)の調整、水温の調整、供給の停止等を制御することもできる。
【0113】
なお、PLLAは、上述のように圧電特性の温度依存性が低いので、このような態様では、より有効である。
【0114】
本発明の第10の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図19は、本発明の第10の実施形態に係る保持状態検出装置の外観斜視図である。
【0115】
保持状態検出装置10Gは、懐中電灯である。保持状態検出装置10Gは、ライト部121Gと、把持部122Gとを備える。把持部122Gは筒状であり、ライト部121Gに物理的に接続されている。把持部122Gには、圧電センサ20が装着されている。圧電センサ20は、把持部122Gの内部の表面付近に配置されていても、表面に貼り付けられていてもよい。
【0116】
使用者が把持部122Gを把持すると、圧電センサ20および検出部30(図示せず)によって、把持状態(保持状態)が検出される。この把持状態の検出をトリガとして、ライト部121Gを点灯させることができる。この際、上述のように、押圧力や長押しを検出できるようにすることで、押圧力や長押し時間を用いて、調光や、ライトの消灯を制御することもできる。
【0117】
本発明の第11の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図20は、本発明の第11の実施形態に係る保持状態検出装置の外観斜視図である。
【0118】
保持状態検出装置10Hは、コンピュータ用の無線式マウスである。保持状態検出装置10Hは、筐体131Hを備える。筐体131Hは楕円球体を半分に切断した形状である。筐体131Hには、圧電センサ20が装着されている。圧電センサ20は、筐体131Hの内部の表面付近に配置されていても、表面に貼り付けられていてもよい。この際、圧電センサ20は、通常のクリック処理では用いない領域に配置されており、使用者が把持時に押圧が加わる位置に配置されている。
【0119】
使用者が筐体131Hを把持すると、圧電センサ20および検出部30(図示せず)によって、把持状態(保持状態)が検出される。この把持状態の検出をトリガとして、マウスの電源をオン状態にすることができる。逆に、把持の解放が検出されると、この把持の解放状態の検出をトリガとして、マウスの電源をオフ状態にすることができる。この際、上述のように、押圧力や長押しを検出できるようにすることで、他の各種の制御(ファンクション制御等)を行うこともできる。
【0120】
なお、ここでは、コンピュータ用の無線式マウスを例にしたが、卓上ゲームの無線式コントローラ、携帯型のゲーム機等、電池で駆動する機器にも適用することができる。
【0121】
本発明の第12の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図21は、本発明の第12の実施形態に係る保持状態検出装置の外観斜視図である。
【0122】
保持状態検出装置10Jは、タブレット式端末である。保持状態検出装置10Jは、筐体141Jを備える。筐体141Jは平板形状である。筐体141Jには、圧電センサ20が装着されている。圧電センサ20は、筐体141Jの内部の表面付近に配置されていても、表面に貼り付けられていてもよい。この際、圧電センサ20は、使用者がタブレット式端末を把持する位置に配置されている。
【0123】
使用者が筐体141Jを把持すると、圧電センサ20および検出部30(図示せず)によって、把持状態(保持状態)が検出される。この把持状態の検出をトリガとして、ディスプレイの画像表示をオン状態にすることができる。逆に、把持の解放が検出されると、この把持の解放状態の検出をトリガとして、ディスプレイの画像表示をオフ状態にすることができる。これにより、タブレット式端末の電池の不要な消耗を抑制することができる。また、上述のように、押圧力や長押しを検出できるようにすることで、他の各種の制御(特定の操作入力制御等)を行うこともできる。
【0124】
本発明の第13の実施形態に係る保持状態検出装置について、図を参照して説明する。
図22は、本発明の第13の実施形態に係る保持状態検出装置の外観斜視図である。
【0125】
保持状態検出装置10Kは、台車である。保持状態検出装置10Kは、台座部151Kと、把持部(アーム)152Kと、車輪153Kとを備える。把持部152Kは筒状であり、台座部151Kに物理的に接続されている。把持部152Kには、圧電センサ20が装着されている。圧電センサ20は、把持部152Kの内部の表面付近に配置されていても、表面に貼り付けられていてもよい。
【0126】
使用者が把持部152Kを把持すると、圧電センサ20および検出部30(図示せず)によって、把持状態(保持状態)が検出される。この把持状態の検出をトリガとして、車輪153Kにかけられたブレーキを解除することができる。逆に、把持の解放が検出されると、この把持の解放状態の検出をトリガとして、ブレーキをかけることができる。これにより、使用者がいない間に、台車が勝手に移動することを防止でき、且つ、ブレーキ解除だけのためのスイッチ等を用いることなく、ブレーキを解除することができる。
【0127】
また、上述のように、押圧力や長押しを検出できるようにすることで、押圧力や長押し時間を用いて、ブレーキの効き等を制御することもできる。これにより、使用状況に応じたブレーキの効きを調整することができる。例えば、坂道を下る場合にブレーキの効きを適宜強くする等の調整を行うことができる。
【0128】
なお、上述の実施形態では、圧電センサに、ポリ乳酸の圧電フィルムを用いる例を示したが、状況に応じてPVDF等の他の圧電フィルムを用いることも可能である。但し、ポリ乳酸を用いることで、上述のように焦電性が無く信頼性の高い保持状態検出装置を実現できる。また、ポリ乳酸の圧電センサとPVDF等の焦電性を有する圧電センサとを組み合わせてもよい。これにより、人による保持をさらに正確に検出することができる。また、圧電センサには、圧電セラミックスを用いることも可能である。しかしながら、圧電センサに可撓性の高いポリ乳酸の圧電フィルムを用いることによって、筐体への配置が容易であり、破損が生じ難く信頼性を向上させることができる。
【0129】
また、上述の実施形態では、筐体に係る押圧を検出する圧電センサを用いる態様を示したが、筋電信号を検出する圧電センサを用いることも可能である。この場合、押圧を加えなくても、把持時に生じる筋電信号を検出して、保持状態を検出できるので、より自然な動作に対する保持状態を検出することもできる。