(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記土壌に含まれている成分を表す成分情報に、前記成分情報と、植物が前記土壌から吸収可能な前記土壌含水率の下限値を表す下限情報との関連性を表す第2モデル情報に従った処理を施すことによって、前記土壌に関する下限情報を作成する第1含水率算出手段
をさらに備え、
前記第1モデル情報は、前記第1タイミングにおける含水情報と、前記第2タイミングにおける含水情報と、植物が前記土壌から吸収可能な前記土壌含水率の下限値を表す下限情報との関連性を表しており、
前記作成手段は、前記第1含水率算出手段によって算出された前記下限情報と、前記測定タイミングにおける前記含水情報とに、前記第1モデル情報に従った処理を施すことによって、前記異なるタイミングにおける前記土壌含水率を算出する
請求項1に記載の含水率特定装置。
前記成分情報は、前記土壌を構成している粒子の大きさに基づき分類されたカテゴリごとに算出される割合であって、前記土壌に対する前記カテゴリに含まれている前記粒子の量の割合である
請求項2に記載の含水率特定装置。
前記土壌に含まれている成分を表す成分情報に、前記成分情報と、植物が前記土壌から吸収可能な前記土壌含水率の下限値を表す下限情報との関連性を表す第2モデル情報に従った処理を施すことによって、前記土壌に関する下限情報を作成する第1含水率算出機能
をさらにコンピュータに実現させ、
前記第1モデル情報は、前記第1タイミングにおける含水情報と、前記第2タイミングにおける含水情報と、植物が前記土壌から吸収可能な前記土壌含水率の下限値を表す下限情報との関連性を表しており、
前記作成機能においては、前記第1含水率算出機能によって算出された前記下限情報と、前記測定タイミングにおける前記含水情報とに、前記第1モデル情報に従った処理を施すことによって、前記異なるタイミングにおける前記土壌含水率を算出する
請求項9に記載の含水率特定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本願発明の理解を容易にするため、以降に示す実施形態にて用いる用語について、
図3を参照しながら説明する。
図3は、含水率が変化する様子を概念的に表す図である。
【0013】
図3において、横軸は、時間を表し、右側であるほど先の時間であることを表す。縦軸は、含水率(Water Content)を表し、上側であるほど含水率が高いことを表す。該含水率は、土壌含水率の割合(程度)を表す。以降、土壌に含まれている水分に関する程度(割合)を、「土壌含水率」(Soil Water Content)とも表す。
【0014】
説明の便宜上、タイミングAにて土壌(Soil)に水分を供給し始め、タイミングBにて供給を終了したとする。また、タイミングA乃至タイミングBの期間において、土壌に十分な量の水分が供給されたとする。
【0015】
土壌は、該土壌を構成している成分(たとえば、砂、火山灰、粘土、肥料)の間に、水分を保持することができる。また、該土壌に生えている植物は、該土壌から水分を吸収することができる。
【0016】
土壌含水率の下限値は、植物が土壌から吸収可能な含水率のうち、最も低い含水率を表す。したがって、土壌含水率が該下限値未満である場合に、植物は、該土壌から水分を吸収することができないので、やがて、枯れてしまう。該下限値は、たとえば、植物が生えている土壌を、該植物ごとポリマルチ(polymulch、たとえば、ポリエチレンフィルム)を用いて覆うことによって土壌に供給される水分を遮断した場合に、該植物が枯れたときの土壌含水率を計測することによって決定される。
【0017】
飽和含水率は、土壌が保持することができる含水率のうち、最も高い含水率を表す。したがって、土壌含水率が該飽和含水率である場合に該土壌に水分を供給したとしても、供給された水分は、土壌から流出してしまう。該飽和含水率は、たとえば、土壌含水率が下限値である土壌に十分な量の水分を供給した場合に、土壌含水率を計測する灌漑試験によって決定される。
【0018】
土壌含水率の上限値(平衡含水率)は、含水率が飽和含水率であるタイミングBから所定の時間(期間)を経過した後(すなわち、タイミングC)における土壌含水率を表す。該所定の時間は、たとえば、飽和含水率である土壌を、土壌含水率を測定しながら放置し、該土壌含水率が平衡(または、略平衡)状態になるまでに要する時間を測定する灌漑試験によって決定される。たとえば、所定の時間は、2、3日間という時間である。土壌含水率が飽和含水率であるタイミングから所定の時間を経過した場合に、該土壌含水率は、平衡(または、略平衡)状態になる。言い換えると、該上限値は、該土壌含水率が平衡(または、略平衡)状態となった場合における含水率を表す。
【0019】
次に、本発明を実施する実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る含水率特定装置101が有する構成について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る含水率特定装置101が有する構成を示すブロック図である。
【0021】
第1の実施形態に係る含水率特定装置101は、測定部102と、作成部103とを有する。
【0022】
測定部102は、土壌含水率を測定する。測定部102は、たとえば、TDR(Time Domain Reflectometry)法や、ADR(Amplitude Domain Reflectometry)法等に従い土壌における誘電率を測定し、測定した該誘電率に応じた含水率を算出するセンサによって実現される。該センサは、たとえば、土壌における誘電率と、土壌含水率との関連性を表す所定のモデル情報に従い、測定した該誘電率に応じた含水率を算出する。測定部102は、たとえば、宇宙線における中性子の個数を測定し、測定した個数に応じて土壌含水率を算出するセンサであってもよい。あるいは、測定部102は、土壌を伝搬する超音波を用いて、土壌含水率を測定するセンサであってもよい。測定部102は、上述した例に限定されず、土壌含水率を測定すればよい。
【0023】
次に、
図2を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る含水率特定装置101における処理について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る含水率特定装置101における処理の流れを示すフローチャートである。
【0024】
測定部102は、
図1を参照しながら上述したような処理方法に従い、測定タイミングにて土壌含水率を測定し(ステップS101)、該土壌含水率を表す含水情報を作成する。測定部102は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0025】
次に、作成部103は、測定部102が作成した含水情報を読み取る。作成部103は、複数のタイミングにおける含水情報間の関連性を表す水分モデル情報(
図4に例示)に従い、測定タイミングと異なるタイミングにおける土壌含水率を表す含水情報を作成する(ステップS102)。
図4は、水分モデル情報の一例を概念的に表す図である。以降、水分モデル情報を、「第1モデル情報」とも表す。
【0026】
図4において、横軸は、時間を表し、右側であるほど先の時間であることを表す。縦軸は、土壌含水率を表し、上側であるほど土壌含水率が高いことを表す。該含水率は、土壌含水率を表す。
図4に例示された水分モデル情報は、時間が経過するのに応じて、含水率が変化する様子を表す情報である。
図4において、測定部102によって、測定タイミングにて測定された土壌含水率は、測定タイミングを表す点線にて示された線上の黒点にて表されている。
【0027】
作成部103は、該水分モデル情報(
図4に例示)に関して、該測定タイミングにおける土壌含水率と、該測定タイミングとは異なるタイミングにおける土壌含水率との差異(たとえば、比、差)を算出する。作成部103は、算出した差異(たとえば、比、差)を用いて、測定部102によって作成された含水情報が表す土壌含水率に基づき、該異なるタイミングにおける土壌含水率を算出する。
該異なるタイミングにおける土壌含水率は、
図4において、異なるタイミングを表す点線にて示された線上の黒点にて表されている。
【0028】
作成部103は、たとえば、読み取った該含水情報に対して、該水分モデル情報に従い処理を実行し、該異なるタイミングにおける含水情報を作成する。作成部103は、複数のタイミングに関して含水情報を作成してもよい。さらに、作成部103は、時間が経過するのにつれ、土壌含水率が変化する様子を表す情報を作成してもよい。
【0029】
該水分モデル情報(
図4に例示)は、たとえば、時間の経過に従い、土壌含水率が変化する様子(態様)を表す情報である。該含水情報は、たとえば、該土壌における降水量、該土壌にて実施された(実施される)灌漑量、該土壌における気温、該土壌付近の湿度等の情報に基づき予測された情報である。または、該含水情報は、ある期間における含水率を、複数の年に関して平均化された平均値であってもよい。または、該含水情報は、ある時期(たとえば、1年前における同時期)に観測された含水情報が表す土壌含水率であってもよい。あるいは、含水情報は、土壌に含まれている粒子の種類に基づき作成される情報、または、該粒子の大きさに基づき作成される情報であってもよい。水分モデル情報は、上述した例に限定されない。
【0030】
説明の便宜上、測定部102が土壌含水率を測定する例を参照しながら、含水率特定装置101における動作について説明した。しかし、含水率特定装置101において、測定部102は、たとえば、土壌における誘電率を測定してもよい。この場合に、作成部103は、土壌に関して測定された誘電率に基づき、該土壌含水率を算出する処理を実行し、その後、
図2を参照しながら上述したような処理を実行する。また、含水率特定装置101が、異なるタイミングにおける含水情報を推定する例を参照しながら、含水率特定装置101にて実行される処理について説明したが、含水率特定装置101は、ある期間における含水情報を作成してもよい。この場合に、含水率特定装置101は、
図2を参照しながら上述したような処理に従い、ある期間における含水情報を作成する。
【0031】
次に、本発明の第1の実施形態に係る含水率特定装置101に関する効果について説明する。
【0032】
第1の実施形態に係る含水率特定装置101によれば、測定タイミングとは異なるタイミングであっても土壌含水率を特定することができる。この理由は、測定タイミングにて作成された含水情報に基づき、含水率特定装置101が、測定タイミングとは異なるタイミングにおける含水情報を作成するからである。
【0033】
また、含水率特定装置101によって作成された含水情報(すなわち、異なるタイミングにおける含水情報)と、測定タイミングにおける含水情報とを比較することによって、該測定タイミングと、該異なるタイミングとの期間において、含水率が変化する程度を取得することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
次に、上述した第1の実施形態を基本とする本発明の第2の実施形態について説明する。
【0035】
図5を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る含水率特定装置201が有する構成について詳細に説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態に係る含水率特定装置201が有する構成を示すブロック図である。
【0036】
第2の実施形態に係る含水率特定装置201は、測定部202と、作成部203と、第1含水率算出部204とを有する。
【0037】
測定部202は、
図1を参照しながら上述したような測定部102と同様な機能を有する。
【0038】
次に、
図6を参照しながら、本発明の第2の実施形態に係る含水率特定装置201における処理について詳細に説明する。
図6は、第2の実施形態に係る含水率特定装置201における処理の流れを示すフローチャートである。
【0039】
測定部202は、測定タイミングにおいて土壌含水率を測定し(ステップS201)、測定した土壌含水率を表す含水情報を作成する。測定部202は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0040】
第1含水率算出部204は、該土壌に含まれている成分を表す成分情報を受け取る。該成分情報は、該土壌を構成している成分の割合(程度)を表す情報である。
【0041】
土壌は、たとえば、該土壌を構成している粒子の大きさが小さい順に、粘土(clay)、シルト(silt)、砂(sand)、礫(gravel)、及び、石(stone)等のカテゴリに分類することができる。土壌は、さらに、細かなカテゴリに分類してもよい。この場合に、土壌における成分は、たとえば、粘土、シルト、細砂、粗砂、礫、及び、石等のカテゴリに分類することができる。該カテゴリは、上述した例に限定されない。
【0042】
第1含水率算出部204は、たとえば、土壌に含まれている砂の割合、該土壌に含まれているシルトの割合、及び、該土壌に含まれている粘土の割合を含む成分情報を受け取る。次に、第1含水率算出部204は、受け取った該成分情報に、土壌伝達モデル情報(Pedotransfer model information、式1に例示)に示された処理を適用する(施す)ことによって、植物が該土壌から吸収することができる含水率の下限値を算出し(ステップS202)、作成した下限値を表す下限情報を作成する。
【0043】
(下限値)=0.57×(粘土の割合)+0.12×(シルトの割合)+0.01×(砂の割合)・・・(式1)。
【0044】
土壌伝達モデル情報は、土壌に含まれている成分と、植物が該土壌から吸収可能な含水率の下限値との関連性を表す情報であればよく、式1に例示された例に限定されない。たとえば、土壌伝達モデル情報は、土壌を構成している成分(粘土、シルト等のカテゴリ、火山灰等の種類)の割合と、該下限値と間の関連性が、所定の関数を用いて表される情報である。所定の関数は、たとえば、多項式関数、指数関数、または、対数関数等である。該所定の関数におけるパラメタは、実測された割合と、実測された下限値とに基づき、最小二乗法等に従った処理を実行するによって決定される。また、成分は、土壌を構成している粒子の大きさに応じて分類される情報でなくともよく、たとえば、肥料、火山灰等の成分を表す情報、または、化学的な成分を表す情報であってもよい。以降、土壌伝達モデル情報を、「第2モデル情報」とも表す。
【0045】
第1含水率算出部204は、作成した該下限情報を作成部203に入力する。
【0046】
作成部203は、該下限情報を受け取り、測定部202から土壌含水率を表す含水情報(すなわち、測定タイミングにおける含水情報)を読み取る。作成部203は、水分モデル情報f1(式2に例示)に従った処理を、該下限情報が表す下限値と、該含水情報とに対して実行する(施す)ことによって、測定タイミングとは異なるタイミングにおける土壌含水率を表す含水情報を作成する(ステップS203)。
【0047】
(土壌含水率)=f1(測定値、下限値)・・・(式2)。
【0048】
水分モデル情報は、たとえば、土壌において水分が移動する様子を表す偏微分方程式を離散化することによって得られる連立一次方程式の解(すなわち、移動する水分量)を求め、求めた水分量に基づき土壌含水率を算出する処理を表す。当該偏微分方程式は、たとえば、以下のパラメタ1乃至パラメタ4に例示されたパラメタを含んでいる。
【0049】
(パラメタ1)水分が重力によって下降する量、
(パラメタ2)水分が土壌における毛細管現象により上昇する量、
(パラメタ3)水分が土壌の表面から蒸発する量、
(パラメタ4)土壌における水分が植物の根を介して該植物から蒸散される量。
【0050】
土壌の表面から蒸発する水分量は、たとえば、大気中の湿度及び土壌含水率の関連性、及び、日光が該土壌に照射している照射量に応じて変化する。また、土壌において層が該土壌の表面に対して平行に存在している場合に、土壌の表面が成す傾斜に応じて重力の方向と土壌における層の方向との間の関係が変化する。この場合に、土壌において下降する水分量は、たとえば、該土壌の表面が成す傾斜に応じて変化する。
【0051】
式3乃至式5を参照しながら後述する水分モデル情報も、同様に、偏微分方程式の解(すなわち、移動する水分量)を求め、求めた水分量に基づき土壌含水率を算出する処理を表す。
【0052】
水分モデル情報は、以下の情報1乃至情報6に例示されている少なくともいずれか情報と、該土壌含水率との関連性を表す情報であってもよい。
【0053】
(情報1)土壌付近における気温、
(情報2)土壌付近における湿度、
(情報3)土壌付近における降水量、
(情報4)土壌の周囲における気象を表す気象情報、
(情報5)土壌の表面が成す傾斜の程度、
(情報6)土壌にて実施された灌漑の程度を表す灌漑量。
【0054】
水分モデル情報は、土壌の表面が成す傾斜の程度に応じたモデル情報であってもよい。この場合に、作成部203は、該程度に応じた水分モデル情報を特定する。該下限値は、植物が土壌から吸収することが可能な水分に関して、該土壌含水率の下限値であるので、土壌含水率が該下限値未満である場合に、該植物は、該土壌から水分を吸収することができない。したがって、該含水率が該下限値未満である場合に、該植物によって土壌含水率が減少する程度(割合)は低い。これに対して、該含水率が該下限値を超えている場合に、土壌含水率が該植物によって減少する程度(割合)は高い。したがって、該下限値を含む水分モデル情報が土壌に生えている植物が該土壌に与える影響を含んでいるので、該水分モデル情報によれば、該土壌含水率を正確に算出することができる。
【0055】
次に、本発明の第2の実施形態に係る含水率特定装置201に関する効果について説明する。
【0056】
第2の実施形態に係る含水率特定装置201によれば、測定タイミングとは異なるタイミングであっても土壌含水率を特定することができる。この理由は、第1の実施形態にて説明した理由と同様である。
【0057】
さらに、第2の実施形態に係る含水率特定装置201によれば、より正確に含水率を取得することができる。この理由は、土壌に生えている植物が該土壌含水率に与える影響を含む水分モデル情報に従い、含水率特定装置201が、該含水率を算出するからである。
【0058】
<第3の実施形態>
次に、上述した第1の実施形態を基本とする本発明の第3の実施形態について説明する。
【0059】
図7を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る含水率特定装置301が有する構成について詳細に説明する。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る含水率特定装置301が有する構成を示すブロック図である。
【0060】
第3の実施形態に係る含水率特定装置301は、測定部302と、作成部303と、第2含水率算出部304とを有する。
【0061】
測定部302は、
図1を参照しながら説明したような測定部102と同様な機能を有する。
【0062】
次に、
図8を参照しながら、本発明の第3の実施形態に係る含水率特定装置301における処理について詳細に説明する。
図8は、第3の実施形態に係る含水率特定装置301における処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
測定部302は、測定タイミングにおいて土壌含水率を測定し(ステップS301)、測定した土壌含水率を表す含水情報を作成する。測定部302は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0064】
次に、第2含水率算出部304は、測定部302によって作成された含水情報を読み取る。第2含水率算出部304は、該含水情報が表す含水率と、式3に例示されているような水分モデル情報f2とに基づき、土壌含水率の上限値を算出し(ステップS302)、算出した上限値を表す上限情報を作成する。
【0065】
(土壌含水率)=f2(測定値、上限値)・・・(式3)。
【0066】
式3に例示された水分モデル情報は、式2に例示された水分モデル情報を参照しながら上述したような処理と同様な処理を表す。式3に例示された水分モデル情報は、さらに、該土壌に含まれている成分、該土壌付近における気温、土壌付近における湿度、土壌付近における降水量等の気象を表す気象情報、土壌の表面が成す傾斜の程度、または、該土壌にて実施された灌漑の程度を表す灌漑量等の情報を含んでいてもよい。この場合に、該水分モデル情報は、これらの情報と、該上限値と、該土壌含水率との関連性を表す情報である。水分モデル情報は、土壌の表面が成す傾斜の程度に応じたモデル情報であってもよい。この場合に、作成部303は、該程度に応じた水分モデル情報を特定する。
【0067】
第2含水率算出部304は、作成した上限情報を作成部303に入力する。
【0068】
ステップS302にて、第2含水率算出部304は、たとえば、上限値に乱数(または、擬似乱数)を設定し、設定した上限値に対して式3に例示されているような処理を実行する(施す)ことによって、測定タイミングにおける土壌含水率を算出する。第2含水率算出部304は、算出した該土壌含水率と、読み取った(すなわち、測定された)土壌含水率との誤差(
図9を参照しながら後述する)を算出する。第2含水率算出部304は、複数の上限値に関して、該誤差を算出する。第2含水率算出部304は、複数の上限値のうち、該上限値に関する誤差が最小(または、略最小)である場合における上限値を特定し、特定した上限値を作成部303に入力する。
図9は、水分モデル情報の一例を概念的に表す図である。
【0069】
図9において、横軸は、時間を表し、右側であるほど先の時間であることを表す。縦軸は、土壌含水率を表し、上側であるほど土壌含水率が高いことを表す。
図9に例示された水分モデル情報は、時間が経過するのに応じて、土壌含水率が変化する様子を表す情報である。
図9において、測定部302によって、測定タイミングにて測定された含水率は、測定タイミングを表す点線にて示された線上の黒点にて表されている。
【0070】
図9において、第1水分モデル情報、及び、第2水分モデル情報は、互いに異なる水分モデル情報を表している。第2含水率算出部304は、第1タイミングにおける土壌含水率と、水分モデル情報(式3に例示)とに基づき、測定タイミングにおける土壌含水率を求める。次に、第2含水率算出部304は、測定タイミングにて測定された含水率(
図9における「測定値」)と、求めた土壌含水率との誤差(
図9における矢線)を算出し、算出した誤差が少ない場合における水分モデル情報を特定する。たとえば、
図9に示す例においては、下側の矢線の長さが上側の矢線の長さよりも短いので、第2含水率算出部304は、水分モデル情報として、第2水分モデル情報を特定する。
【0071】
または、第2含水率算出部304は、算出した該誤差が、所定の誤差条件を満たしているか否かを判定し、該所定の誤差条件を満たしていない場合に、他の上限値に関する含水率を算出してもよい。所定の誤差条件は、たとえば、該誤差が所定の閾値以下であるという条件である。この場合に、第2含水率算出部304は、算出した該誤差が、所定の誤差条件を満たしている場合における上限値を表す上限情報を、作成部303に入力する。
【0072】
式3に例示された水分モデル情報は、さらに、該土壌に含まれている成分、該土壌付近における気温、土壌付近における湿度、土壌付近における降水量、または、該土壌にて実施された灌漑の程度を表す灌漑量等の情報を含んでいてもよい。この場合に、該水分モデル情報は、これらの情報と、土壌含水率の上限値と、該土壌含水率との関連性を表す情報である。式3に例示された水分モデル情報は、式2を参照しながら上述したような土壌含水率の下限値を含んでいてもよい。
【0073】
式3に例示されていように、水分モデル情報が土壌含水率の上限値を含む場合に、該水分モデル情報に従えば、土壌に十分な水分を供給してから所定の時間を経過した後の平衡状態における土壌含水率を正確に予測することができる。たとえば、土壌にて作物が生育されている場合に、該土壌には、灌漑、または、降雨等により十分な水分が供給されることが多い。したがって、作物が生育されている土壌含水率を測定する場合には、土壌含水率の上限値を含む水分モデル情報によって、さらに正確に、土壌含水率を測定することができる。
【0074】
作成部303は、該上限情報を受け取り、測定部302から土壌含水率を表す含水情報(すなわち、測定タイミングにおける含水情報)を読み取る。作成部303は、水分モデル情報(式3に例示)に従った処理を、該上限情報が表す上限値と、該含水情報とに対して実行することによって、測定タイミングと異なるタイミングにおける土壌含水率を表す含水情報を作成する(ステップS303)。
【0075】
次に、本発明の第3の実施形態に係る含水率特定装置301に関する効果について説明する。
【0076】
本実施形態に係る含水率特定装置301によれば、測定タイミングとは異なるタイミングであっても土壌含水率を特定することができる。この理由は、第1の実施形態にて説明した理由と同様である。
【0077】
さらに、第3の実施形態に係る含水率特定装置301によれば、より正確に土壌含水率を取得することができる。この理由は、土壌含水率の上限値を含む水分モデル情報に従い、含水率特定装置301が、異なるタイミングであっても土壌含水率を算出するからである。
【0078】
<第4の実施形態>
次に、上述した第1の実施形態を基本とする本発明の第4の実施形態について説明する。
【0079】
図10を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係る含水率特定装置401が有する構成について詳細に説明する。
図10は、本発明の第4の実施形態に係る含水率特定装置401が有する構成を示すブロック図である。
【0080】
第4の実施形態に係る含水率特定装置401は、測定部402と、作成部404と、水分供給部403と、飽和含水率特定部405とを有する。
【0081】
測定部402は、
図1を参照しながら上述したような測定部102と同様な機能を有する。
【0082】
次に、
図11を参照しながら、本発明の第4の実施形態に係る含水率特定装置401における処理について詳細に説明する。
図11は、第4の実施形態に係る含水率特定装置401における処理の流れを示すフローチャートである。
【0083】
水分供給部403は、土壌に設置された測定部402の周囲に、土壌含水率の飽和含水率以上の水分を供給する(ステップS401)。測定部402の周囲は、たとえば、測定部402が設置されている地点から所定の範囲内における領域である。説明の便宜上、
図3に例示されているように、タイミングBにおいては、水分供給部403が十分な水分を該土壌に供給し終えているとする。
【0084】
測定部402は、タイミングBにて土壌含水率を測定する(ステップS402)。
【0085】
飽和含水率特定部405は、タイミングBにて測定した該土壌含水率を飽和含水率として特定し(ステップS403)、特定した該飽和含水率を表す飽和情報を作成する。飽和含水率特定部405は、ステップS401、及び、ステップS402に示された処理を制御することによって、飽和含水率を特定してもよい。飽和含水率特定部405は、作成した飽和情報を作成部404に入力する。
【0086】
ステップS401乃至ステップS403に示された処理は、該土壌に関して少なくとも1回実行されればよい。また、説明の便宜上、ステップS404乃至ステップS405に示された処理は、ステップS401乃至ステップS403にて実施された処理の影響がない程度に時間が経過した後に実行されるとする。ただし、ステップS401乃至ステップS403に示された処理がステップS404乃至ステップS405にて実行される処理の結果に影響を及ぼす場合であっても、含水率特定装置401によれば、後述するような処理によって、後述する効果を享受することができる。
【0087】
測定部402は、測定タイミングにて土壌含水率を測定する(ステップS404)。測定部402は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0088】
作成部404は、飽和含水率特定部405によって作成された飽和情報を受け取り、さらに、測定部402によって測定された土壌含水率を表す含水情報を読み取る。上述したように、該含水情報は、測定タイミングにおける土壌含水率を表す情報である。
【0089】
作成部404は、水分モデル情報f3(式4に例示)に従った処理を、該飽和情報と、該含水情報とに対して実行する(施す)ことによって、測定タイミングとは異なるタイミングにおける土壌含水率を算出し、算出した該土壌含水率を表す含水情報を作成する(ステップS405)。
【0090】
(土壌含水率)=f3(測定値、飽和含水率)・・・(式4)。
【0091】
式4に例示された水分モデル情報は、式2に例示された水分モデル情報を参照しながら上述したような処理と同様な処理を表す。式4に例示された水分モデル情報は、さらに、該土壌に含まれている成分、該土壌付近における気温、土壌付近における湿度、土壌付近における降水量等の気象を表す気象情報、土壌の表面が成す傾斜の程度、または、該土壌にて実施された灌漑の程度を表す灌漑量等の情報を含んでいてもよい。この場合に、該水分モデル情報は、これらの情報と、飽和含水率と、該土壌含水率との関連性を表す情報である。水分モデル情報は、土壌の表面が成す傾斜の程度に応じたモデル情報であってもよい。この場合に、作成部404は、該程度に応じた水分モデル情報を特定する。式4に例示された水分モデル情報は、土壌含水率の下限値(式2に例示)、及び、土壌含水率の上限値(式3に例示)のうち、少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0092】
式4に例示されていように、水分モデル情報が飽和含水率を含む場合に、該水分モデル情報に従えば、該土壌が保持することが可能な土壌含水率(すなわち、飽和含水率以下)のみが算出される。したがって、該水分モデル情報によれば、より正確に土壌含水率を算出することができる。
【0093】
次に、本発明の第4の実施形態に係る含水率特定装置401に関する効果について説明する。
【0094】
第4の実施形態に係る含水率特定装置401によれば、測定タイミングとは異なるタイミングであっても土壌含水率を特定することができる。この理由は、第1の実施形態にて説明した理由と同様である。
【0095】
さらに、第4の実施形態に係る含水率特定装置401によれば、より正確に土壌含水率を取得することができる。この理由は、飽和含水率を含む水分モデル情報に従い該含水率を算出することによって、より正確に土壌含水率を特定することができるからである。
【0096】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0097】
図12を参照しながら、本発明の第5の実施形態に係る含水率特定装置501が有する構成について詳細に説明する。
図12は、本発明の第5の実施形態に係る含水率特定装置501が有する構成を示すブロック図である。
【0098】
第5の実施形態に係る含水率特定装置501は、測定部502と、作成部503とを有する。含水率特定装置501は、さらに、
図14を参照しながら後述するような深さモデル情報(第1深さモデル情報、第2深さモデル情報等)が格納されている深さモデル情報記憶部504を有する。
【0099】
測定部502は、
図1を参照しながら説明したような測定部102と同様な機能を有する。第1の実施形態にて上述したように、測定部502は、たとえば、土壌における誘電率を測定することにより土壌含水率を求めることにより実現される。測定部502は、たとえば、ある長さを有するセンサによって実現されている。土壌含水率を測定する場合には、該センサを土壌に挿入することによって、該挿入されたセンサ周囲の誘電率が測定される。この場合に、測定部502は、該センサが挿入された長さ(深さ)以内の土壌含水率(すなわち、測定領域における土壌含水率)を測定する。
【0100】
深さモデル情報記憶部504には、測定部502によって測定された土壌含水率に応じた深さモデル情報(
図14を参照しながら後述する)が格納されている。深さモデル情報記憶部504には、さらに、土壌に含まれている成分と、該含水率に応じた深さモデル情報が格納されていてもよい。
【0101】
含水率特定装置501は、
図14に例示されているような深さモデル情報に従い、土壌含水率を測定している測定領域よりも深い領域における含水率を特定する。
図14は、深さモデル情報の一例を概念的に表す図である。深さモデル情報は、地表からの深さと、該深さにおける土壌に関する含水率との関連性を表す情報である。
【0102】
図14において、横軸は、土壌含水率を表し、右側であるほど土壌含水率が高いことを表す。縦軸は、地表からの深さを表し、下側であるほど深いことを表す。第1深さモデル情報によって示された曲線、及び、第2深さモデル情報によって示された曲線は、それぞれ、地表からの深さが変化した場合における土壌含水率の推移を表す深さモデル情報である。
【0103】
地表からの深さが深くなる程、土壌は、日光等の環境から影響を受けにくくなる。たとえば、地表に日光が照射されている場合には、地表からの深さが深くなる程、日光から影響を受けにくくなるので、土壌から蒸発する水分は減少する。この場合に、地表からの深さが深いほど、土壌含水率は上昇することがある。また、地表から深い層における土壌含水率は、浅い層で保持できずあふれた水が下りた場合に上昇する。しかし、地表からの深さが深くなる程、土壌に加わる圧力は高くなる。上述したように、土壌において、水分は、該土壌を構成している粒子の間に保持されている。また、該土壌に係る圧力が高くなる程、土壌を構成している粒子の間隔が短くなるので、該土壌が保持できる水分は減少する。この結果、該土壌含水率は、ある深さを超えた場合に減少することもある。
【0104】
また、
図3を参照しながら説明したように、土壌含水率には飽和含水率がある。したがって、土壌に雨が降っている場合には、地表付近の土壌含水率が飽和含水率になってしまうので、
図17を参照しながら後述するように、土壌含水率は、地表からの深さが深くなる程、減少する傾向にある(
図17における飽和含水率に例示)。
【0105】
次に、
図13を参照しながら、本発明の第5の実施形態に係る含水率特定装置501における処理について詳細に説明する。
図13は、第5の実施形態に係る含水率特定装置501における処理の流れを示すフローチャートである。
【0106】
測定部502は、ある深さにおける土壌含水率を測定し(ステップS501)、測定した土壌含水率を表す含水情報を作成する。測定部502は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0107】
作成部503は、測定部502によって作成された含水情報を読み取る。作成部503は、読み取った該含水情報が表す土壌含水率に応じた深さモデル情報(
図14に例示)を特定する(ステップS502)。
図14に示された例の場合に、作成部503は、ある深さにおける土壌含水率(すなわち、測定領域における土壌含水率)に基づき、第1深さモデル情報、または、第2深さモデル情報のうち、いずれかを選択する。さらに、土壌に含まれている成分が特定されている場合に、作成部503は、該成分と、該含水情報が表す含水率に応じた深さモデル情報(
図14に例示)を特定してもよい。次に、作成部503は、特定した深さモデル情報に従い、測定領域より深い領域における土壌含水率を特定する(ステップS503)。作成部503は、深さの異なる複数の土壌に関して、土壌含水率を特定してもよい。
【0108】
次に、本発明の第5の実施形態に係る含水率特定装置501に関する効果について説明する。
【0109】
第5の実施形態に係る含水率特定装置501によれば、土壌含水率を測定する測定領域とは異なる領域における該土壌含水率を特定することができる。この理由は、測定部502が測定した含水率と、さらに深い領域における土壌含水率との関連性を表す深さモデル情報から、測定された該土壌含水率に応じた深さモデル情報を特定するからである。
【0110】
また、土壌を構成している成分と測定領域における土壌含水率に応じた深さモデル情報とに従い土壌含水率を特定することによって、含水率特定装置501は、含水率を、さらに正確に算出することができる。この理由は、土壌の構成に応じて、該土壌が保持している(保持できる)含水率が異なり、該成分に応じて適切な深さモデル情報を選択することができるからである。
【0111】
<第6の実施形態>
次に、上述した第5の実施形態を基本とする本発明の第6の実施形態について説明する。
【0112】
図15を参照しながら、本発明の第6の実施形態に係る含水率特定装置601が有する構成について詳細に説明する。
図15は、本発明の第6の実施形態に係る含水率特定装置601が有する構成を示すブロック図である。
【0113】
第6の実施形態に係る含水率特定装置601は、測定部602と、作成部603とを有する。含水率特定装置601は、さらに、水分供給部604及び飽和含水率特定部606と、第1含水率算出部605と、第2含水率算出部607とのうち、少なくともいずれかを有する。含水率特定装置601は、さらに、深さモデル情報記憶部608を有してもよい。
【0114】
第1含水率算出部605は、
図5を参照しながら説明したような第1含水率算出部204が有している機能と同様な機能によって実現することができる。第2含水率算出部607は、
図7を参照しながら説明したような第2含水率算出部304が有している機能と同様な機能によって実現することができる。水分供給部604は、
図10を参照しながら説明したような水分供給部403が有している機能と同様な機能によって実現することができる。飽和含水率特定部606は、
図10を参照しながら説明したような飽和含水率特定部405が有している機能と同様な機能によって実現することができる。測定部602は、
図1を参照しながら説明したような測定部102が有している機能と同様な機能によって実現することができる。深さモデル情報記憶部608には、
図17に例示されているような深さモデル情報が格納されている。
図17は、深さモデル情報の一例を概念的に表す図である。
【0115】
図17において、横軸は、土壌含水率を表し、右側であるほど土壌含水率が高いことを表す。縦軸は、地表からの深さを表し、下側であるほど深いことを表す。3つの曲線は、それぞれ、土壌含水率の下限値、土壌含水率の上限値、及び、飽和含水率を表す。
【0116】
地表からの深さが深くなる程、土壌に加わる圧力が高くなる結果、該土壌を構成している粒子間の距離が短くなる。したがって、地表からの深さが深くなる程、該土壌が保水することが可能な水分は減少するので、該土壌が保水することが可能な含水率は低下する。したがって、
図17における上限値に示されているように、土壌含水率の上限値は、地表からの深さが深くなる程、低下する。
図17における飽和含水率に示されているように、同様な理由によって、飽和含水率は、地表からの深さが深くなる程、低下する。これに対して、地表からの深さが深くなる程、植物は、土壌から水分を吸収しにくくなる。したがって、
図17における下限値に例示されているように、地表からの深さが深くなる程、土壌含水率の下限値は高くなる傾向にある。
【0117】
深さモデル情報記憶部608には、
図17に例示されているような深さモデル情報が、測定領域における土壌含水率の上限値、下限値、及び、飽和含水率のうち、少なくともいずれかに応じて、複数、格納されている。
図17に示された例において、深さモデル情報は、飽和含水率、土壌含水率の上限値、土壌含水率の下限値のうち、少なくともいずれかを含む情報である。
【0118】
次に、
図16を参照しながら、本発明の第6の実施形態に係る含水率特定装置601における処理について詳細に説明する。
図16は、第6の実施形態に係る含水率特定装置601における処理の流れを示すフローチャートである。
【0119】
水分供給部604は、土壌に設置された測定部602の周囲に、土壌含水率の飽和含水率以上の水分を供給する(ステップS601)。
【0120】
測定部602は、測定領域における土壌含水率を測定し(ステップS602)、測定した土壌含水率を表す含水情報を作成する。第5の実施形態にて上述したように、測定領域は、たとえば、該センサが挿入された長さ(深さ)以内の領域である。
【0121】
次に、水分供給部604によって土壌に水分が供給された後に、飽和含水率特定部606は、測定部602が作成した含水情報を読み取る。飽和含水率特定部606は、読み取った該含水情報が表す土壌含水率を飽和含水率として特定し(ステップS603)、特定した飽和含水率を表す飽和情報を作成する。飽和含水率特定部606は、作成した飽和情報を作成部603に入力する。
【0122】
ステップS601乃至ステップS603に示された処理は、該土壌に関して少なくとも1回実行されればよい。また、説明の便宜上、ステップS604乃至ステップS609に示された処理は、ステップS601乃至ステップS603にて実行された処理の影響がない程度に時間が経過した後に実行されるとする。ただし、ステップS601乃至ステップS603に示された処理がステップS604乃至ステップS609にて処理に影響を及ぼす場合であっても、含水率特定装置601は、後述する処理を実行することによって、後述する効果と同様な効果を享受することができる。
【0123】
測定部602は、測定領域における土壌含水率を測定タイミングにて測定し(ステップS604)、測定した土壌含水率を表す含水情報を作成する。測定部602は、測定した土壌含水率を出力してもよい。
【0124】
次に、第2含水率算出部607は、測定部602によって作成された含水情報を読み取る。第2含水率算出部607は、
図8におけるステップS302に示された処理と同様な処理を実行することによって、土壌含水率の上限値を算出し(ステップS605)、算出した上限値を表す上限情報を作成する。第2含水率算出部607は、作成した上限情報を作成部603に入力する。
【0125】
第1含水率算出部605は、該土壌に含まれている成分を表す成分情報を受け取り、
図6におけるステップS202に示された処理と同様な処理を実行することによって、受け取った成分情報に基づき、植物が該土壌から吸収することができる土壌含水率の下限値を算出し(ステップS606)、算出した下限値を表す下限情報を作成する。第1含水率算出部605は、作成した下限情報を作成部603に入力する。
【0126】
作成部603は、飽和含水率特定部606によって作成された飽和情報、第1含水率算出部605によって作成された下限情報、及び、第2含水率算出部607によって作成された上限情報を受け取り、測定部602から土壌含水率を表す含水情報(すなわち、測定タイミングにおける含水情報)を読み取る。作成部603は、深さモデル情報記憶部608に格納されている複数の深さモデル情報から、該飽和情報が表す飽和含水率、該上限情報が表す上限値、及び、該下限情報が表す下限値のうち、少なくとも1つの値に基づき、深さモデル情報を特定する(ステップS607)。
図17に示された例の場合に、たとえば、作成部603は、測定領域における土壌含水率の下限値(すなわち、測定領域における土壌含水率の下限値)の大きさに応じて、下限値を表す深さモデル情報(すなわち、
図17における下限値によって表される曲線)を特定する。
【0127】
作成部603は、特定した該深さモデル情報(
図17に例示)に従い、測定領域よりも深い領域(
図17における「異なる深さ」)における土壌に関して、上限値、下限値、及び、飽和含水率のうち、少なくともいずれか1つの値を算出する(ステップS608)。
【0128】
作成部603は、水分モデル情報f4(式5に例示)に従った処理を、該飽和含水率、該下限値、該上限値、及び、該測定値のうち、少なくともいずれか1つの値に対して実行する(施す)ことによって、測定部602によって、測定タイミングとは異なるタイミングにおける土壌含水率を表す含水情報を作成する(ステップS609)。
【0129】
(土壌含水率)=f4(測定値、下限値、上限値、飽和含水率)・・・(式5)。
【0130】
式5に例示された水分モデル情報は、式2に例示された水分モデル情報を参照しながら上述したような処理と同様な処理を表す。式5に例示された水分モデル情報は、さらに、該土壌に含まれている成分、該土壌付近における気温、土壌付近における湿度、土壌付近における降水量等の気象を表す気象情報、土壌の表面が成す傾斜の程度、または、該土壌にて実施された灌漑の程度を表す灌漑量等の情報を含んでいてもよい。この場合に、該水分モデル情報は、これらの情報と、飽和含水率と、該土壌含水率との関連性を表す情報である。水分モデル情報は、土壌の表面が成す傾斜の程度に応じたモデル情報であってもよい。この場合に、作成部603は、該程度に応じた水分モデル情報を特定する。式5に例示された水分モデル情報は、該下限値、該上限値、及び、該飽和含水率のうち、少なくとも1つの情報を含んでいればよい。
【0131】
したがって、作成部603は、
図16示された処理を実行することによって、測定タイミングとは異なるタイミングに関して、測定領域とは異なる領域における土壌含水率を特定する。
【0132】
次に、本発明の第6の実施形態に係る含水率特定装置601に関する効果について説明する。
【0133】
第6の実施形態に係る含水率特定装置601によれば、土壌含水率を測定する測定領域とは異なる領域における該土壌含水率を特定することができる。この理由は、第5の実施形態にて説明した理由と同様である。
【0134】
さらに、第6の実施形態に係る含水率特定装置601によれば、測定領域よりも深い領域における土壌含水率のうち、該土壌含水率を測定している測定タイミングとは異なるタイミングにおける正確な含水率を取得することができる。この理由は、含水率特定装置601が、測定領域にて測定された土壌含水率に基づき深さモデル情報(
図17に例示)を特定し、測定した該深さモデル情報に従い測定領域よりも深い領域における上限値等を特定し、さらに、特定した該上限値を含む水分モデル情報(式5に例示)に基づき、測定タイミングとは異なるタイミングにおける土壌含水率を算出するからである。式5に例示されていように、水分モデル情報(式5に例示)が該下限値、該上限値、及び、該飽和含水率のうち、少なくとも1つの数値情報を含んでいる場合には、本発明の各実施形態にて示した理由と同様な理由によって、より正確に含水率を取得することができる。また、含水率特定装置601によれば、複数の数値情報に基づき含水率を算出することによって、一層正確に含水率を算出することができる。
【0135】
(ハードウェア構成例)
上述した本発明の各実施形態に係る含水率特定装置を、1つの計算処理装置(情報処理装置、コンピュータ)を用いて実現するハードウェア資源の構成例について説明する。但し、係る含水率特定装置は、物理的または機能的に少なくとも2つの計算処理装置を用いて実現されてもよい。また、係る含水率特定装置は、専用の装置として実現されてもよい。
【0136】
図18は、本発明の各実施形態に係る含水率特定装置を実現可能な計算処理装置のハードウェア構成例を概略的に示すブロック図である。計算処理装置20は、中央処理演算装置(Central_Processing_Unit、以降「CPU」と表す)21、メモリ22、ディスク23、不揮発性記録媒体24、及び、通信インターフェース(以降、「通信IF」と表す)27を有する。計算処理装置20は、入力装置25、出力装置26に接続可能であってもよい。計算処理装置20は、通信IF27を介して、他の計算処理装置、及び、通信装置と情報を送受信することができる。
【0137】
不揮発性記録媒体24は、コンピュータが読み取り可能な、たとえば、コンパクトディスク(Compact_Disc)、デジタルバーサタイルディスク(Digital_Versatile_Disc)である。また、不揮発性記録媒体24は、ユニバーサルシリアルバスメモリ(USBメモリ)、ソリッドステートドライブ(Solid_State_Drive)等であってもよい。不揮発性記録媒体24は、電源を供給しなくても係るプログラムを保持し、持ち運びを可能にする。不揮発性記録媒体24は、上述した媒体に限定されない。また、不揮発性記録媒体24の代わりに、通信IF27、及び、通信ネットワークを介して係るプログラムを持ち運びしてもよい。
【0138】
すなわち、CPU21は、ディスク23に格納されているソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム:以下、単に「プログラム」と称する)を、実行する際にメモリ22にコピーし、演算処理を実行する。CPU21は、プログラム実行に必要なデータをメモリ22から読み取る。表示が必要な場合に、CPU21は、出力装置26に出力結果を表示する。外部からプログラムを入力する場合に、CPU21は、入力装置25からプログラムを読み取る。CPU21は、
図1、
図5、
図7、
図10、
図12、または、
図15に示す各部が表す機能(処理)に対応するところのメモリ22にある含水率特定プログラム(
図2、
図6、
図8、
図11、
図13、または、
図16)を解釈し実行する。CPU21は、上述した本発明の各実施形態において説明した処理を順次実行する。
【0139】
すなわち、このような場合に、本発明の各実施形態は、係る含水率特定プログラムによっても成し得ると捉えることができる。さらに、係る含水率特定プログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な不揮発性の記録媒体によっても、本発明の各実施形態は成し得ると捉えることができる。
【0140】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかし、本発明は、上述した実施形態には限定されない。すなわち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
測定タイミングとは異なるタイミングであっても土壌含水率を特定することが可能な含水率特定装置等が提供される。含水率特定装置101は、土壌に含まれている水分の程度を表す土壌含水率を測定する測定部102と、測定タイミングにて測定した前記土壌含水率を表す含水情報に、複数のタイミング間における前記含水情報の関連性を表す第1モデル情報に従った処理を施すことによって、前記測定タイミングと異なるタイミングにおける前記含水情報を作成する作成部103とを有する。