特許第6399295号(P6399295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6399295電線用除雪装置、電線用除雪装置の製造方法および電線除雪方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6399295
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】電線用除雪装置、電線用除雪装置の製造方法および電線除雪方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20180920BHJP
   H02G 7/16 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H02G1/02
   H02G7/16
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-178727(P2014-178727)
(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公開番号】特開2016-54582(P2016-54582A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年8月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100195006
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勇蔵
(72)【発明者】
【氏名】志賀 史則
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−160025(JP,U)
【文献】 特表2003−525008(JP,A)
【文献】 特開昭54−050996(JP,A)
【文献】 実開昭59−176322(JP,U)
【文献】 特開昭48−050284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線の外側に設けられる本体部と、
前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記電線上の雪を落とす除雪歯と、
前記本体部に設けられるモータ部と、
前記モータ部に設けられ、前記モータ部が駆動することによって回転する歯車と、
前記本体部内で前記歯車と噛合し、内部に前記電線が挿通する挿通孔が設けられ、前記電線を囲むように回転可能に設けられるガイドローラ部と、
を有し、
前記ガイドローラ部の前記挿通孔は、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合するように設けられる
電線用除雪装置。
【請求項2】
前記ガイドローラ部は、前記モータ部が駆動し前記歯車が回転することによって、前記挿通孔内の傾斜面を前記複数の素線の外周面に当接させながら回転する
請求項1に記載の電線用除雪装置。
【請求項3】
前記除雪歯は、前記本体部とともに前記電線の周方向に回転しながら前記電線の軸方向に進行する
請求項1または2に記載の電線用除雪装置。
【請求項4】
前記除雪歯は、前記電線の軸方向に対して傾斜して設けられ当該除雪歯の回転に沿うように渦巻状に設けられる側面を有する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電線用除雪装置。
【請求項5】
前記本体部に設けられ、前記モータ部の駆動および停止を制御する制御部を有する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電線用除雪装置。
【請求項6】
前記本体部に設けられ、外部からの信号を受信する受信部を有し、
前記制御部は、前記受信部が受信した前記信号に基づいて、前記モータ部の駆動および停止を制御する
請求項5に記載の電線用除雪装置。
【請求項7】
前記本体部に設けられ、前記モータ部に電力を供給する二次電池と、
前記本体部の側面に設けられ、太陽光によって起電力を生じさせ前記二次電池を充電する太陽電池部と、
を有する
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電線用除雪装置。
【請求項8】
前記本体部、前記除雪歯、および前記ガイドローラ部は、前記電線の軸方向に沿って分割される
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電線用除雪装置。
【請求項9】
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線をガイドローラ部の内部に設けられた挿通孔に挿通させ、前記電線を囲むように回転可能に前記ガイドローラ部を取り付けるガイドローラ部取り付け工程と、
前記電線の外側に本体部を取り付ける工程と、
前記本体部にモータ部を取り付ける工程と、
前記モータ部に当該モータ部が駆動することによって回転する歯車を取り付け、前記ガイドローラ部と噛合させる工程と、
前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に、前記電線上の雪を落とす除雪歯を取り付ける工程と、
を有し、
前記ガイドローラ部取り付け工程では、
前記ガイドローラ部の前記挿通孔を、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合させる
電線用除雪装置の製造方法。
【請求項10】
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線の外側に設けられる本体部と、前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記電線上の雪を落とす除雪歯と、前記本体部に設けられるモータ部と、前記モータ部に設けられ、前記モータ部が駆動することによって回転する歯車と、前記本体部内で前記歯車と噛合し、内部に前記電線が挿通する挿通孔が設けられ、前記電線を囲むように回転可能に設けられるガイドローラ部と、を有し、前記ガイドローラ部の前記挿通孔が、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合するように設けられる電線用除雪装置を用い、
前記モータ部を駆動させて前記歯車を回転させることによって、前記挿通孔内の傾斜面を前記複数の素線の外周面に当接させながら、前記ガイドローラ部を回転させ、
前記除雪歯を、前記本体部とともに前記電線の周方向に回転させながら前記電線の軸方向に進行させる
電線除雪方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線用除雪装置、電線用除雪装置の製造方法および電線除雪方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線に雪が付着した場合、様々な弊害が生じる可能性があるため、電線に付着した雪を早期に落下させることが望まれる。そこで、例えば、電線の周囲に巻回されたスパイラルロッドを電線の軸方向に移動させることにより、電線に付着した雪を落下させる電線用除雪装置が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−207631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の電線用除雪装置では、長尺のスパイラルロッドを電線の軸方向に移動させるために大きな駆動力が必要となる。このため、スパイラルロッドを引っ張る引張機構が大型化、重量化、且つ複雑化してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、電線に付着した雪を容易に落下させることができる電線用除雪装置、電線用除雪装置の製造方法および電線除雪方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線の外側に設けられる本体部と、
前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記電線上の雪を落とす除雪歯と、
前記本体部に設けられるモータ部と、
前記モータ部に設けられ、前記モータ部が駆動することによって回転する歯車と、
前記本体部内で前記歯車と噛合し、内部に前記電線が挿通する挿通孔が設けられ、前記電線を囲むように回転可能に設けられるガイドローラ部と、
を有し、
前記ガイドローラ部の前記挿通孔は、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合するように設けられる
電線用除雪装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線をガイドローラ部の内部に設けられた挿通孔に挿通させ、前記電線を囲むように回転可能に前記ガイドローラ部を取り付けるガイドローラ部取り付け工程と、
前記電線の外側に本体部を取り付ける工程と、
前記本体部にモータ部を取り付ける工程と、
前記モータ部に当該モータ部が駆動することによって回転する歯車を取り付け、前記ガイドローラ部と噛合させる工程と、
前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に、前記電線上の雪を落とす除雪歯を取り付ける工程と、
を有し、
前記ガイドローラ部取り付け工程では、
前記ガイドローラ部の前記挿通孔を、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合させる
電線用除雪装置の製造方法が提供される。
【0008】
本発明の更に他の態様によれば、
複数の素線が螺旋状に撚り合わせられた電線の外側に設けられる本体部と、前記本体部の前記電線の軸方向の少なくとも一方の端部に設けられ、前記電線上の雪を落とす除雪歯と、前記本体部に設けられるモータ部と、前記モータ部に設けられ、前記モータ部が駆動することによって回転する歯車と、前記本体部内で前記歯車と噛合し、内部に前記電線が挿通する挿通孔が設けられ、前記電線を囲むように回転可能に設けられるガイドローラ部と、を有し、前記ガイドローラ部の前記挿通孔が、前記複数の素線が撚り合わせられることによって形成された撚り溝に螺合するように設けられる電線用除雪装置を用い、
前記モータ部を駆動させて前記歯車を回転させることによって、前記挿通孔内の傾斜面を前記複数の素線の前記外周面に当接させながら、前記ガイドローラ部を回転させ、
前記除雪歯を、前記本体部とともに前記電線の周方向に回転させながら前記電線の軸方向に進行させる
電線除雪方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電線に付着した雪を容易に落下させることができる電線用除雪装置、電線用除雪装置の製造方法および電線除雪方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置を示す一部が透過した斜視図である。
図3】(a)は、本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置の電線の軸方向と直交する断面図であり、(b)は、電線用除雪装置の電線の軸方向に沿った断面図である。
図4】(a)は、電線の軸方向と直交する断面図であり、(b)は、ガイドローラ部の正面図であり、(c)は、ガイドローラ部の電線の軸方向に沿った断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置を示すブロック図である。
図6】電線用除雪装置を実施例の電線の軸方向に走行させたときの着雪重量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の一実施形態>
(1)電線用除雪装置の構造
本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置10について、図1図5を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る電線用除雪装置を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る電線用除雪装置を示す一部が透過した斜視図である。図3(a)は、本発明の一実施形態に係る電線用除雪装置の電線の軸方向と直交する断面図であり、図3(b)は、電線用除雪装置の電線の軸方向に沿った断面図である。なお、図3(b)において、ガイドローラ部340に隣接する除雪歯220、およびモータ部300については、電線100の軸方向に垂直な方向から見た側面を示している。図4(a)は、電線の軸方向と直交する断面図であり、図4(b)は、ガイドローラ部の正面図であり、図4(c)は、ガイドローラ部の電線の軸方向に沿った断面図である。図5は、本実施形態に係る電線用除雪装置を示すブロック図である。
【0012】
本実施形態の電線用除雪装置10は、電線100の撚り溝112を電線用除雪装置10の走行上のレールとすることにより、除雪歯220が本体部200とともに電線100の周方向に回転しながら電線100の軸方向に進行する(自走する)よう構成される。以下、詳細を説明する。
【0013】
なお、本実施形態において電線用除雪装置10が取り付けられる「電線100」とは、例えば、架空送電線として鉄塔間に架線される鋼心アルミ撚り線(ACSR)、硬銅撚り線である。
【0014】
(本体部)
図1に示されているように、複数の素線110が螺旋状に撚り合わせられた電線100の外側には、電線100を囲むように電線用除雪装置10の本体部200が設けられる。電線100の軸方向から見て、本体部200の形状は、略三角形である。
【0015】
本体部200の内部には、電線100が挿通する挿通孔(符号不図示)が設けられる。本体部200の挿通孔は、例えば電線100を囲むように円筒状に設けられる。
【0016】
また、本体部200は、電線100の軸方向に沿って分割されている。分割された本体部200は、電線100を挟むようにして互いに結合され、ボルト(不図示)によって固定される。
【0017】
(除雪歯)
図1および図2に示されているように、本体部200の電線100の軸方向の少なくとも一方の端部には、電線100上の雪を落とす除雪歯220が設けられる。除雪歯220は、本体部200に対して固定される。
【0018】
本実施形態では、除雪歯220は、例えば、本体部200電線100の軸方向の両方の端部にそれぞれ設けられる。これにより、電線用除雪装置10を電線100の軸方向に移動させる往路だけでなく復路でも除雪をすることができる。
【0019】
除雪歯220は、電線100の軸方向に対して傾斜して設けられ当該除雪歯220の回転に沿うように渦巻状に設けられた側面222を有する。除雪歯220が電線100の周方向に回転しながら電線100の軸方向に進行することにより、電線100上の雪が除雪歯220の側面222に沿って分散しながら落とされる。
【0020】
除雪歯220の内部には、電線100が挿通する挿通孔(符号不図示)が設けられる。除雪歯220の挿通孔は、例えば電線100を囲むように円筒状に設けられる。
【0021】
また、除雪歯220は、本体部200とともに、電線100の軸方向に沿って分割される。分割された除雪歯220は、電線100を挟むようにして互いに結合され、ボルトによって固定される。
【0022】
また、除雪歯220は、電線100上の氷雪を掻き分けられるように金属により構成される。具体的には、除雪歯220は、例えば、アルミニウム等からなる。
【0023】
(モータ部)
図1図2および図3(b)に示されているように、本体部200には、モータ部300が設けられる。モータ部300には、モータ部300が駆動することによって回転する歯車320が設けられる。
【0024】
(ガイドローラ部)
図2図3(a)および図3(b)に示されているように、本体部200内には、ガイドローラ部340が、歯車320と噛合して設けられる。ガイドローラ部340は、電線用除雪装置10のいずれの部材にも固定されておらず、電線100を囲むように回転可能に設けられる。また、ガイドローラ部340の電線100の軸方向の両側のそれぞれの側面は、本体部200内の内壁に当接可能に構成される。
【0025】
なお、ガイドローラ部340は、電線100の軸方向に沿って分割される。分割されたガイドローラ部340は、電線100を挟むようにして互いに結合される。
【0026】
ここで、図4(a)に示されているように、電線100の外周には、複数の素線110が撚り合わせられることによって撚り溝112が形成されている。撚り溝112は、電線100の軸方向に沿って螺旋状に形成されている。
【0027】
図4(b)に示されているように、ガイドローラ部340の内部には、電線100が挿通する挿通孔342が設けられる。ガイドローラ部340の挿通孔342は、上記した電線100の撚り溝112に螺合するように設けられる。挿通孔342内には、電線100の外形に沿うように傾斜面344が設けられる。
【0028】
ガイドローラ部340は、歯車320の回転をガイドローラ部340の挿通孔342内の電線100に対して伝達するスプロケットとして機能する。モータ部300が駆動し歯車320が回転することによって、ガイドローラ部340は、挿通孔342内の傾斜面344を複数の素線110の外周面に当接させながら回転する。電線100の撚り溝112を電線用除雪装置10の走行上のレールとすることにより、除雪歯220は、本体部200とともに電線100の周方向に回転しながら電線100の軸方向に進行する。例えば、除雪歯220は、本体部200とともにガイドローラ部340と逆方向に回転する。この電線用除雪装置10の動作については、詳細を後述する。
【0029】
なお、ガイドローラ部340の挿通孔342が電線100の撚り溝112に螺合するように設けられるのに対して、本体部200および除雪歯220のそれぞれの挿通孔は、上述のように円筒状に設けられており、電線100の撚り溝112に螺合していない。これにより、ガイドローラ部340が回転したときに、本体部200および除雪歯220はガイドローラ部340と逆方向に回転可能となる。
【0030】
(二次電池および太陽電池)
図2図3(b)および図5に示されているように、本体部200には、例えば二次電池420が設けられる。二次電池420は、モータ部300と、後述する制御部500と、後述する受信部600と、に接続され、それぞれに電力を供給するよう構成される。
【0031】
図1および図5に示されているように、本体部200の側面には、例えば太陽電池部440が設けられる。太陽電池部440は、二次電池420に接続され、太陽光によって起電力を生じさせ二次電池を充電するよう構成される。
【0032】
(制御部)
図3(a)および図5に示されているように、本体部200には、制御部500が設けられる。制御部500は、モータ部300に接続され、モータ部300の駆動および停止を制御するよう構成される。
【0033】
また、本体部200には、外部からの信号を受信する受信部600が設けられる。受信部600は、制御部500に接続される。制御部500は、受信部600が受信した信号(駆動信号および停止信号)に基づいて、遠隔操作によりモータ部300の駆動および停止を制御する。なお、制御部500は、受信部600が受信した信号に基づいて、モータ部300の回転方向および回転速度を制御しても良い。
【0034】
また、制御部500は、二次電池420に接続され、太陽電池部440から二次電池420への充電を制御するよう構成される。また、制御部500は、過充電保護回路を有する。過充電保護回路により、二次電池420の過充電が抑制される。
【0035】
なお、図3(a)に示されているように、上述のように、電線100の軸方向から見て、本体部200の形状は、略三角形である。電線100を中心として、略三角形の本体部200の角部側の空いたスペースに、上記したモータ部300、二次電池420および制御部500のそれぞれが均等に配置される。これにより、電線用除雪装置10の重心が偏ることを抑制することができる。したがって、除雪歯220を本体部200とともに電線100の周方向に安定的に回転させることができる。
【0036】
(2)電線用除雪装置の製造方法(組み立て方法)
次に、上記した電線用除雪装置10の製造方法(組み立て方法)について説明する。
【0037】
まず、電線用除雪装置10の本体部200、除雪歯220、モータ部300、ガイドローラ部340、二次電池420、制御部500等の各部材を準備する。
【0038】
図3(a)および図3(b)に示されているように、分割されたガイドローラ部340を、電線100を挟むようにして互いに結合する。これにより、ガイドローラ部340の内部に設けられた挿通孔342に電線100を挿通させる。このとき、ガイドローラ部340の挿通孔342を、電線100の撚り溝112に螺合させる。このようにして、電線100を囲むように回転可能にガイドローラ部340を取り付ける。
【0039】
次に、本体部200内にガイドローラ部340を配置するように、分割された本体部200を、電線100を挟むようにして互いに結合し、ボルトによって固定する。これにより、電線100の外側に本体部200を取り付ける。
【0040】
次に、本体部200に、ボルト(不図示)によってモータ部300を取り付ける。また、モータ部300に歯車320を取り付け、ガイドローラ部340と噛合させる。
【0041】
次に、本体部200に、制御部500を取り付け、モータ部300に接続する。また、本体部200に、受信部600を取り付け、制御部500に接続する。
【0042】
また、本体部200に、二次電池420を取り付け、モータ部300、制御部500および受信部600に接続する。さらに、本体部200の側面に、太陽電池部440を取り付け、二次電池420に接続する。
【0043】
次に、図1に示されているように、モータ部300等を覆うように、本体部200のカバー部(符号不図示)を取り付ける。
【0044】
次に、分割された除雪歯220を、電線100を挟むようにして互いに結合し、ボルトによって固定する。これにより、本体部200の電線100の軸方向の両端に、除雪歯220を取り付ける。
【0045】
以上により、本実施形態に係る電線用除雪装置10が製造される(組み立てられる)。
【0046】
例えば、電線用除雪装置10は、2つの鉄塔間に設置される。降雪時期以外の期間など、電線用除雪装置10を使用しないときは、電線用除雪装置10は電線100上に保持される。
【0047】
(3)電線除雪方法
次に、上記した電線用除雪装置10を用いた電線除雪方法について説明する。
【0048】
まず、外部からモータ部300を駆動する駆動信号を電線用除雪装置10に送信する。受信部600が外部からの駆動信号を受信したとき、制御部500は、受信部600が受信した駆動信号に基づいて、モータ部300を駆動する。
【0049】
モータ部300が駆動し歯車320が回転することによって、ガイドローラ部340は、挿通孔342内の傾斜面344を複数の素線110の外周面に当接させながら回転する。
【0050】
このとき、挿通孔342内の傾斜面344は、複数の素線110の撚り方向に沿ってスライドする。ガイドローラ部340の電線100の軸方向の側面は、本体部200の内壁に当接し、本体部200を電線100の軸方向に押出す。一方で、モータ部300が歯車320を介してガイドローラ部340を回転させる反作用として、本体部200は、ガイドローラ部340の回転方向と逆方向に回転する。
【0051】
これにより、図1に示されているように、電線100の撚り溝112を電線用除雪装置10の走行上のレールとすることにより、除雪歯220は、本体部200とともに、例えばガイドローラ部340と逆方向に回転しながら、電線100の軸方向に進行する。除雪歯220が電線100の周方向に回転しながら電線100の軸方向に進行することによって、除雪歯220の側面222は、電線100上の雪を掻き分け、電線100から雪を落としていく。これにより、電線100の全周にわたって雪が除去される。
【0052】
2つの鉄塔間の電線100の除雪が終了したとき、外部からモータ部300を停止する停止信号を電線用除雪装置10に送信する。受信部600が外部からの停止信号を受信したとき、制御部500は、受信部600が受信した停止信号に基づいて、モータ部300を停止する。
【0053】
以上により、本実施形態に係る電線用除雪装置10による除雪が終了する。
【0054】
(4)本実施形態に係る効果
本実施形態やその変形例によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0055】
(a)本実施形態によれば、電線用除雪装置10の本体部200内では、ガイドローラ部340が、モータ部300に設けられた歯車320と噛合する。ガイドローラ部340の挿通孔342は、電線100の撚り溝112に螺合するように設けられる。
【0056】
モータ部300が駆動し歯車320が回転することによって、ガイドローラ部340は、挿通孔342内の傾斜面344を複数の素線110の外周面に当接させながら回転する。電線100の撚り溝112を電線用除雪装置10の走行上のレールとすることにより、除雪歯220は、本体部200とともに電線100の周方向に回転しながら電線100の軸方向に進行する。これにより、除雪歯220によって電線100に付着した雪は除去されていく。
【0057】
このようにして、電線100に付着した雪を容易に落下させることができる。したがって、電線用除雪装置10を小型化、軽量化、且つ単純化させることができる。
【0058】
(b)本実施形態によれば、上記のような電線用除雪装置10を用いることにより、電線100に付着した雪の重量が増加する前に、電線100から雪を除去することができ、雪の重量による断線や鉄塔の倒壊を抑制することができる。
【0059】
また、電線100へ氷雪が付着することを未然に抑制することにより、氷雪が付着した電線100に風が吹きつけられたときに起きる異常振動である、いわゆるギャロッピング振動を抑制し、ギャロッピング振動を起因として隣接した電線100が相互に接触し短絡することを抑制することができる。
【0060】
また、電線用除雪装置10によって電線100に積った雪は細かく分散され、雪が落下するときは、地上へは降雪のような小さな雪の欠片が舞い降りることとなる。したがって、凍った雪の塊が落下することを抑制し、電線100の下の人や物に危害を与えることを抑制することができる。
【0061】
(c)本実施形態によれば、電線用除雪装置10を小型化、軽量化することにより、電線用除雪装置10を取り付ける電線10への負担を軽減することができる。電線用除雪装置10を電線100の付属品と同等の設備範囲内に納めることができる。したがって、降雪時期以外の期間など、電線用除雪装置10を使用しないときは、電線用除雪装置10を電線100上に保持しておくことができる。
【0062】
(d)本実施形態によれば、電線用除雪装置10の駆動系が単純なモータ部300のみによって構成される。これにより、電線用除雪装置10を容易に保守管理することができる。
【0063】
(e)本実施形態によれば、電線100が1本につき、電線用除雪装置10を単独で装着することができる。単一の電線100が1相を構成する単導体に対して電線用除雪装置10を適用する場合だけでなく、複数の電線100が1相を構成する複導体に電線用除雪装置10を適用することもできる。
【0064】
(f)本実施形態によれば、本体部200に設けられた制御部500は、受信部600が受信した信号に基づいて、モータ部300の駆動および停止を制御する。このように遠隔操作により電線用除雪装置10を制御することができる。
【0065】
(g)本実施形態によれば、電線用除雪装置10は、本体部200に設けられモータ部300に電力を供給する二次電池420と、本体部200の側面に設けられ太陽光によって起電力を生じさせ二次電池420を充電する太陽電池部440と、を有する。これにより、電線用除雪装置10内だけで、モータ部300を駆動させるために必要な電力を生成することができる。したがって、電線用除雪装置10を電線100に設置した後に、電池交換などのために電線用除雪装置10を電線100から取り外す必要がなく、電線用除雪装置10を電線100に保持させたままにすることができる。
【0066】
(h)本実施形態によれば、本体部200、除雪歯220、およびガイドローラ部340は、電線100の軸方向に沿って分割される。分割された本体部200、除雪歯220、およびガイドローラ部340のそれぞれは、電線100を挟むようにして互いに結合される。これにより、これにより、電線用除雪装置10を既存の電線100に容易に後付けすることができる。
【0067】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0068】
上述の実施形態では、ガイドローラ部340が、モータ部300の歯車320と直接噛合する場合について説明したが、ガイドローラ部は、遊び歯車を介してモータ部の歯車に噛合していてもよい。この場合、除雪歯は、本体部とともにガイドローラ部と同じ方向に回転しながら電線の軸方向に進行するよう構成されていてもよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、除雪歯220が本体部200の電線100の軸方向の両方の端部にそれぞれ設けられる場合について説明したが、除雪歯は本体部の電線の軸方向の一方の端部だけに設けられていても良い。
【0070】
また、上述の実施形態では、除雪歯220によって機械的に雪を除去する場合について説明したが、除雪歯にヒータが取り付けられていても良く、除雪歯のヒータの熱により雪を溶かしながら雪を除去してもよい。
【0071】
また、上述の実施形態では、制御部500は、受信部600が受信した信号に基づいて、モータ部300の駆動および停止を制御する場合について説明したが、電線用除雪装置は降雪センサを有していても良く、制御部は降雪センサが降雪を検知したときにモータ部を駆動するよう制御しても良い。また、電線用除雪装置は鉄塔間の位置を検出する位置センサを有していても良く、制御部は外部からの信号に依存せずに2つの鉄塔間を自動で往復移動するように制御しても良い。さらに、電線用除雪装置は、外部(例えば通信網)に信号を送信する送信部を有していても良く、送信部は、位置センサによる位置情報信号を外部に送信したり、電線用除雪装置の機構に不具合が生じた場合にアラーム信号を外部に送信したりするよう構成されていてもよい。
【実施例】
【0072】
(1)電線用除雪装置の製造と評価
上述の実施形態に係る電線用除雪装置を製造し、実施例の電線に取り付けた。自然降雪により、所定量の雪が電線上に降り積もった状態から、電線用除雪装置を電線の軸方向に走行させた。このとき、電線用除雪装置を実施例の電線の軸方向に走行させたときの実施例の電線の着雪重量を測定し、電線用除雪装置を取り付けていない比較例の電線の着雪重量と比較した。
【0073】
(2)結果
図6は、電線用除雪装置を実施例の電線の軸方向に走行させたときの着雪重量を示す図である。図6に示されているように、電線用除雪装置を実施例の電線の軸方向に走行させることにより、実施例の電線の着雪重量は比較例の電線の着雪重量に比較して減少していった。このように、上述の実施形態に係る電線用除雪装置を電線に取り付けたことにより、電線に付着した雪を容易に落下させることができた。
【符号の説明】
【0074】
10 電線用除雪装置
100 電線
110 素線
112 撚り溝
200 本体部
220 除雪歯
222 側面
300 モータ部
320 歯車
340 ガイドローラ部
342 挿通孔
344 傾斜面
420 二次電池
440 太陽電池部
500 制御部
600 受信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6