特許第6399503号(P6399503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6399503
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 171/00 20060101AFI20180920BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20180920BHJP
   C10M 145/14 20060101ALI20180920BHJP
   C10M 149/04 20060101ALI20180920BHJP
   C10M 149/06 20060101ALI20180920BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20180920BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20180920BHJP
【FI】
   C10M171/00
   C10M101/02
   C10M145/14
   C10M149/04
   C10M149/06
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N40:04
   C10N40:08
   C10N40:25
【請求項の数】1
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-6970(P2013-6970)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136772(P2014-136772A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月2日
【審判番号】不服2017-16126(P2017-16126/J1)
【審判請求日】2017年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】小池 政法
(72)【発明者】
【氏名】中田 繁邦
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−31459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M171/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物油及び/又は合成潤滑油と、酢酸エチルを含有してなる溶液中で、炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を含有してなる単量体を重合して(共)重合体(A)を得た後、酢酸エチルを留去する工程を含む粘度指数向上剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤、粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物及び粘度指数向上剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、自動車の省燃費性及びロングライフ性の向上がより一層要求されており、自動車に使用されている潤滑油や作動油等の更なる粘度指数の向上や、実使用時のせん断による粘度低下の抑制が求められている。従来は、粘度指数向上剤のせん断安定性を向上させる方法として、比較的低分子量の高分子化合物を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献−1参照)。しかし、せん断安定性は満足できるレベルになかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−302687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、せん断安定性に優れた粘度指数向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は、炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤(X)であって、(A)の重量平均分子量が150,000〜500,000、(A)の分子量分布が2.0〜3.5、(A)の溶解性パラメーターが7.3〜9.5(cal/cm1/2である粘度指数向上剤(X);前記粘度指数向上剤及び基油を含有してなる潤滑油組成物;鉱物油及び/又は合成潤滑油と溶剤(S)を含有してなる溶液中で、炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を含有してなる単量体を重合して(共)重合体(A)を得ることを特徴とする、(共)重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤の製造方法;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度指数向上剤は、潤滑油組成物に使用した際のせん断安定性に優れる、といった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における粘度指数向上剤(X)は、炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を必須構成単量体とする(共)重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤である。なお、「(共)重合」は、重合又は共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0008】
炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)の炭素数5〜36の分岐アルキル基としては、以下のものが挙げられる。(a)は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0009】
(a1)主鎖が炭素数31〜33のポリメチレン基を有する基:
2−エチル−n−テトラトリアコンチル基、1−メチル−n−ペンタトリアコンチル基、2−メチル−n−ペンタトリアコンチル基及び1−メチル−n−ペンタトリアコンチル基等;
【0010】
(a2)主鎖が炭素数29〜30のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜3)−n−トリトリアコンチル基(例えば1−プロピル−トリトリアコンチル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜2)−n−テトラトリアコンチル基(例えば2−エチル−n−テトラトリアコンチル基等)、1−アルキル(炭素数1〜4)−n−ドトリアコンチル基(例えば1−ブチル−n−ドトリアコンチル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜4)−n−トリトリアコンチル基(例えば2−プロピル−n−トリトリアコンチル基等)等が挙げられる。
なお、「アルキル」には、直鎖又は分岐のものが含まれる(以下同様)。
【0011】
(a3)主鎖が炭素数27〜28のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜6)−n−トリアコンチル基(例えば1−ペンチル−n−トリアコンチル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜4)−n−ヘントリアコンチル基(例えば2−ブチル−n−ヘントリアコンチル基等)、2−アルキル(炭素数1〜6)−n−トリアコンチル基(例えば1−ヘキシル−n−トリアコンチル基等)、及び1−アルキル(炭素数1〜7)−n−ノナイコシル基(例えば2−ペンチル−n−ノナイコシル基等)等が挙げられる。
【0012】
(a4)主鎖が炭素数25〜26のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜8)−n−オクタイコシル基(例えば1−ヘプチル−n−オクタイコシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜7)−n−ノナイコシル基(例えば2−ヘキシル−n−ノナイコシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜9)−n−ヘプタイコシル基(例えば1−オクチル−n−ヘプタイコシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜8)−n−オクタイコシル基(例えば2−ヘプチル−n−オクタイコシル基等)等が挙げられる。
【0013】
(a5)主鎖が炭素数23〜24のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜10)−n−ヘキサイコシル基(例えば1−ノニル−n−ヘキサイコシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜9)−n−ヘプタイコシル基(例えば2−オクチル−n−ヘプタイコシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜11)−n−ペンタイコシル基(例えば1−デシル−n−ペンタイコシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜9)−n−ヘプタイコシル基(例えば2−ノニル−n−ヘプタイコシル基等)等が挙げられる。
【0014】
(a6)主鎖が炭素数21〜22のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜12)−n−テトライコシル基(例えば1−ウンデカ−n−テトライコシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜11)−n−ペンタイコシル基(例えば2−デシル−n−ペンタイコシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜13)−n−トリイコシル基(例えば1−ドデシル−n−トリイコシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜12)−n−テトライコシル基(例えば2−ウンデシル−n−ペンタイコシル基等)等が挙げられる。
【0015】
(a7)主鎖が炭素数19〜20のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜14)−n−ドコシル基(例えば1−トリデシル−n−ドコシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜13)−n−トリコシル基(例えば2−ドデシル−n−トリコシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜15)−n−ヘンイコシル基(例えば1−テトラデシル−n−ヘンイコシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜14)−n−ドコシル基(例えば2−トリデシル−n−ドコシル基等)等が挙げられる。
【0016】
(a8)主鎖が炭素数17〜18のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜16)−n−イコシル基(例えば1−ペンタデシル−n−イコシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜15)−n−ヘンイコシル基(例えば2−テトラデシル−n−ヘンイコシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜17)−n−ノナデシル基(例えば1−ヘキサデシル−n−ノナデシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜16)−n−イコシル基(例えば2−ペンタデシル−n−イコシル基等)等が挙げられる。
【0017】
(a9)主鎖が炭素数15〜16のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜17)−n−オクタデシル基(例えば1−ヘプタデシル−n−オクタデシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜16)−n−ノナデシル基(例えば2−ヘキサデシル−n−ノナデシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜16)−n−ヘプタデシル基(例えば1−オクタデシル−n−ヘプタデシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜15)−n−オクタデシル基(例えば2−ヘプタデシル−n−オクタデシル基等)等が挙げられる。
【0018】
(a10)主鎖が炭素数13〜14のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜15)−n−ヘキサデシル基(例えば1−テトラデシル−ヘキサデシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜15)−n−ヘプタデシル基(例えば2−オクタデシル−n−オクタデシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜14)−n−ペンタデシル基(例えば1−テトラデシル−n−ペンタデシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜14)−n−ヘキサデシル基(例えば2−エチル−n−ヘキサデシル基、2−ドデシル−n−ヘキサデシル基及び2−テトラデシル−n−ヘキサデシル基等)等が挙げられる。
【0019】
(a11)主鎖が炭素数11〜12のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜13)−n−テトラデシル基(例えば1−ヘキシル−n−テトラデシル基、1−デシル−n−テトラデシル基及び1−トリデシル−n−テトラデシル基等)、2−アルキル(炭素数1〜13)−n−ペンタデシル基(例えば2−トリデシル−n−ペンタデシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜12)−n−トリデシル基(例えば1−ヘキシル−n−トリデシル基、1−ウンデシル−n−トリデシル基及び1−デシル−n−テトラデシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜12)−n−テトラデシル基(例えば2−ヘキシル−n−テトラデシル基等)等が挙げられる。
【0020】
(a12)主鎖が炭素数9〜10のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜11)−n−ドデシル基(例えば1−オクチル−n−ドデシル基等)、2−アルキル(炭素数1〜11)−n−トリデシル基(例えば2−ジイコシル−n−テトラデシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜10)−n−ウンデシル基(例えば1−デシル−n−ウンデシル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜10)−n−ドデシル基(例えば2−ヘキシル−n−ドデシル基及び2−オクチル−n−ドデシル基等)等が挙げられる。
【0021】
(a13)主鎖が炭素数7〜8のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜9)−n−デシル基(例えば1−ノニル−n−デシル基等)、2−アルキル(炭素数1〜9)−n−ウンデシル基(例えば2−ノニル−n−ウンデシル基等)、1−アルキル(炭素数1〜8)−n−ノニル基(例えば1−オクチル−n−ノニル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜8)−n−デシル基(例えば2−オクチル−n−デシル基等)等が挙げられる。
【0022】
(a14)主鎖が炭素数5〜6のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜7)−n−オクチル基(例えば1−ヘキシル−n−オクチル基等)、2−アルキル(炭素数1〜7)−n−ノニル基(例えば2−ヘキシル−n−ノニル基等)、1−アルキル(炭素数1〜6)−n−ヘプチル基(例えば1−ヘキシル−n−ヘプチル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜6)−n−オクチル基(例えば2−ヘキシル−n−オクチル基等)等が挙げられる。
【0023】
(a15)主鎖が炭素数3〜4のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜5)−n−ヘキシル基(例えば1−ペンチル−n−ヘキシル基等)、2−アルキル(炭素数1〜5)−n−ヘプチル基(例えば2−ペンチル−n−ヘプチル基等)、1−アルキル(炭素数1〜4)−n−ペンチル基(例えば1−ブチル−n−ペンチル基等)、及び2−アルキル(炭素数1〜4)−n−ヘキシル基(例えば2−ブチル−n−ヘキシル基等)等が挙げられる。
【0024】
(a16)主鎖が炭素数1〜2のポリメチレン基を有する基:
1−アルキル(炭素数1〜3)−n−ブチル基(例えば1−プロピル−n−ブチル基等)、2−アルキル(炭素数1〜3)−n−ペンチル基(例えば2−プロピル−n−ペンチル基等)、1−アルキル(炭素数1〜2)−n−プロピル基(例えば1−メチル−n−プロピル基、及び2−メチル−n−ブチル基等が挙げられる。
【0025】
(a17)その他の炭素数5〜36の分岐アルキル基:
オキソアルコール[例えばプロピレンオリゴマー(2〜12量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(モル比16/1〜1/11)、イソブテンオリゴマー(2〜9量体)及び炭素数5〜17のα−オレフィンオリゴマー(2〜6量体)等から得られるもの]から水酸基を除いた残基等が挙げられる。
【0026】
前記(a1)〜(a17)のうちで好ましいのは、(a11)、(a12)、(a13)(a14)、及び(a15)であり、更に好ましいのは2−直鎖アルキル(炭素数8〜10)−直鎖アルキル(炭素数12〜14)基である。
【0027】
(a)の具体例としては、(メタ)アクリル酸2−オクチル−n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−デシル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸1−オクチル−n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシル−n−ドデシル、(メタ)アクリル酸2−ヘキシル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸1−ヘキシル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸1−デシル−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸1−ウンデシル−n−トリデシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−n−ヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸2−ドデシル−n−ヘキサデシル等が挙げられる。
【0028】
(A)は、単量体(a)に加え、更に炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。
炭素数1〜4の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b)としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、及び(メタ)アクリル酸n−ブチル等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エチルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルである。
【0029】
(A)は、単量体(a)に加え、更に炭素数5〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)を構成単量体とする共重合体であることが、粘度指数向上効果の観点から好ましい。
炭素数5〜36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(c)としては、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸n−ドコシル、(メタ)アクリル酸n−トリアコンチル及びヘキサトリアコンチル等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上効果及び低温流動性の観点から好ましいのは、炭素数16〜22の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシルである。
【0030】
(A)は、単量体(a)〜(c)に加え、以下の単量体(d)〜(k)を構成単量体としてもよい。
【0031】
窒素原子含有単量体(d)
アミド基含有単量体(d1):
(メタ)アクリルアミド、モノアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したもの;例えばN−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−n−又はイソブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’−モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’−メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’−イソプロピルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’−n−又はイソブチルアミノ−n−ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N−(N’,N’−ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1〜4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(N’,N’−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN−(N’,N’−ジ−n−ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−又はイソプロピオン酸アミド及びN−ビニル−ヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0032】
ニトロ基含有単量体(d2):
4−ニトロスチレン等が挙げられる。
【0033】
1〜3級アミノ基含有単量体(d3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3〜6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6〜12のN,N−ジアルケニルアミン[N,N−ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1〜6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2〜6)を有するもの;例えばN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N−(N’,N’−ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノスチレン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1〜8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。なお、「(メタ)アリル」は、アリル又はメタリルを意味する。
【0034】
脂肪族炭化水素系単量体(e);
鎖状脂肪族炭化水素系単量体(e1):
炭素数2〜20のアルケン(エチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン及びオクタデセン等)及び炭素数4〜12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘプタジエン及び1,7−オクタジエン等)等が挙げられる。
環状脂肪族炭化水素系単量体(e2):
シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等が挙げられる。
【0035】
芳香族炭化水素系単量体(f);
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−ブチルスチレン、4−フェニルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ベンジルスチレン、4−クロチルベンゼン、インデン及び2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0036】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(g);
炭素数2〜12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1〜12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル及びビニル−2−ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1〜8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0037】
エポキシ基含有単量体(h);
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0038】
ハロゲン元素含有単量体(i);
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0039】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(j);
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1〜8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート)]等が挙げられる。
【0040】
ヒドロキシル基含有単量体(k);
ヒドロキシル基含有芳香族単量体(p−ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2〜6)(メタ)アクリレート[2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2−又は3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ−又はジ−ヒドロキシアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール及び1−ウンデセノール等]、炭素数4〜12のアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール及び2−ブテン−1,4−ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル(2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3〜8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3〜10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3〜8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2〜4、重合度2〜100)]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1〜4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール[数平均分子量(以下Mnと略記する)100〜300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn130〜500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn110〜310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキシド付加物(2〜30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn150〜230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0041】
本発明における(A)の分子量分布は、(A)の重量平均分子量/(A)の数平均分子量で定義される(以下、重量平均分子量をMw、数平均分子量をMnと略記する)。
(A)の分子量分布(以下Mw/Mnと略記する)の好ましい範囲は、(A)のMwによって異なり、せん断安定性の観点から、下記の表1に記載の通りである。なお、(A)のMw、Mnは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等の重合条件を調整することにより調整可能である。
【0042】
【表1】
【0043】
(A)と後述する(B)のMw、Mn及びMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)により、以下の条件で測定することができる。
<GPCの測定条件>
装置 :「HLC−802A」[東ソー(株)製]
カラム :「TSK gel GMH6」2本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:200μl
検出装置 :屈折率検出器
標準 :ポリスチレン
【0044】
(A)の溶解度パラメーター(以下SP値と略記する)は、基油への溶解性及び粘度指数向上効果の観点から、好ましくは7.3〜9.5(cal/cm1/2であり、更に好ましくは9.0〜9.5(cal/cm1/2、特に好ましくは9.1〜9.3(cal/cm1/2である。
なお、(A)のSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,Feburuary,1974,Vol.14、No.2 P.147〜154)に記載の方法で算出される値である。
(A)のSP値は、(A)を構成する単量体それぞれのSP値を前記の方法で算出し、それぞれの単量体のSP値を、構成単量体単位のモル分率に基づいて平均した値である。
(A)のSP値は、使用する単量体のSP値、モル分率を適宜調整することにより調整することができる。
【0045】
本発明における(A)の結晶化温度は、低温粘度の観点から好ましくは−15℃以下であり、更に好ましくは−30℃以下、特に好ましくは−40℃以下、最も好ましくは−50℃以下である。なお、(A)の結晶化温度は、示差走査熱量計「UNIX(登録商標)DSC7」(PERKIN−ELMER社製)を使用し、粘度指数向上剤5mgを試料とし、10℃/分の等温速度で100℃から−70℃まで冷却したときに観測される結晶化温度である。
【0046】
本発明における(A)は、油溶性であることが好ましい。ここで油溶性とは、25℃の鉱物油100重量部(「YUBASE2」SKコーポレーション製)に、少なくとも0.5重量部の(A)が透明に溶解することを意味する。
【0047】
本発明における(A)のHLBは、抗乳化性の観点から好ましくは0.5〜7.0であり、更に好ましくは1.0〜6.5、特に好ましくは1.5〜6.0である。
本発明におけるHLBは、小田法のHLBであり、有機化合物の有機性と無機性の概念(「界面活性剤入門」筧哲男監修、三洋化成工業株式会社、2007年発行、P.205−214)に基づいて定義されるものである。
【0048】
(A)を構成する(a)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは5〜90重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%である。
(A)を構成する(b)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは10〜60重量%であり、更に好ましくは15〜40重量%である。
(A)を構成する(c)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)の重量に基づいて、好ましくは5〜90重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%である。
(A)を構成する(d)〜(k)の割合は、粘度指数向上効果の観点から、(A)の重量に基づいて、それぞれ独立に好ましくは0〜10重量%であり、更に好ましくは1〜7重量%である。
【0049】
本発明の粘度指数向上剤は、(A)と、(A)以外のアルキル(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(B)を併用してもよい。
(B)としては、(A)以外のアルキル(メタ)アクリル酸エステル系重合体であれば特に限定しないが、炭素数1〜18の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
(B)の具体例としては、メタクリル酸n−オクタデシル/メタクリル酸n−ドデシル(モル比10〜30/90〜70)共重合体、メタクリル酸n−テトラデシル/メタクリル酸n−ドデシル(モル比10〜30/90〜70)共重合体、メタクリル酸n−ヘキサデシル/メタクリル酸n−ドデシル/メタクリル酸メチル(モル比20〜40/55〜75/0〜10)共重合体及びアクリル酸n−ドデシル/メタクリル酸n−ドデシル(モル比10〜40/90〜60)共重合体等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。(B)は、後述する(A)と同様の方法で製造することができる。
【0050】
(B)のMwは、粘度指数向上効果及びせん断安定性の観点から、好ましくは10,000〜500,000であり、更に好ましくは15,000〜400,000である。
【0051】
(A)と(B)を併用する場合の(B)の使用量は、(A)の重量に基づいて、低温粘度の観点から好ましくは0〜30重量%であり、更に好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0052】
本発明の粘度指数向上剤は、更に、100℃における動粘度(ASTM D445の方法で測定したもの)が1〜20mm/sである希釈剤(J)を含有することが粘度指数向上効果の観点から好ましい。
(J)としては、脂肪族系溶剤[炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン及び灯油等)]、芳香族系溶剤{例えば炭素数7〜15の芳香族系溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族系混合溶剤(トリメチルベンゼン及びエチルトルエン等の混合物)及び炭素数10〜11の芳香族系混合溶剤等]等}、鉱物油(例えば溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油)並びに合成潤滑油[エステル系合成潤滑油等]等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上剤の溶解性の観点から好ましいのは鉱物油及び合成潤滑油であり、更に好ましいのは鉱物油である。(J)は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の粘度指数向上剤における(A)の含有率は、ハンドリング性の観点から粘度指数向上剤の重量に基づき、好ましくは5〜90重量%であり、更に好ましくは10〜85重量%、特に好ましくは15〜80重量%である。
【0054】
本発明の粘度指数向上剤を製造する方法は特に限定されないが、例えば、(A)と(J)、必要に応じて(B)を、撹拌混合装置及び温度調節機能を備えた混合槽に投入順序に制限なく投入し、(A)の粘度が高い場合は、必要により50〜80℃に加温して均一に混合する方法が挙げられる。
撹拌混合装置としては、攪拌羽根(羽根形状:カイ型及び三段パドル等)付き混合槽、ナウターミキサー、リボンミキサー、コニカルブレンダー、モルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バッチ混練機{バンバリー[Farrel(株)製]及びニーダー等}、連続混練機{FCM[Farrel(株)製]、LCM[(株)神戸製鋼所製]及びCIM[(株)日本製鋼所製]等}、単軸押出機及び二軸押出機等が挙げられる。
【0055】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と基油を含有してなる。
基油は、具体的には鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは鉱物油である。
【0056】
基油の100℃における動粘度は、好ましくは1〜18mm2/sであり、更に好ましくは2〜15mm2/sである。動粘度が1mm2/s以上であれば、液漏れや焼き付きが起こりにくく、18mm2/s以下であれば粘性抵抗低減により省燃費につながる。
基油の粘度指数(ASTM D445の方法で測定したもの)は、好ましくは60〜180であり、更に好ましくは100〜175、特に好ましくは105〜170である。このような基油と本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物は、粘度指数が更に高くなり省燃費性が良好となる。
【0057】
基油の流動点(JIS−K2269)は、好ましくは−5℃以下であり、更に好ましくは−10℃〜−70℃である。基油の流動点がこの範囲内であるとワックスの析出量が少なく、潤滑油組成物の低温粘度が低くなる。
【0058】
潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の好ましい含有率は、潤滑油組成物の用途により異なり、下記の表2の範囲である。
【0059】
【表2】
* :マニュアルトランスミッション油
** :オートマチックトランスミッション油
*** :ベルト−コンティニュアスリーバリュアブルトランスミッション油
【0060】
本発明における潤滑油組成物は、各種添加剤を含有してもよい。添加剤としては、以下のものが挙げられる。添加剤は2種以上を併用してもよい。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイン酸アミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ−又はジ−スルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0061】
添加剤(1)〜(9)は、潤滑油組成物の重量に基づいて、以下の表3に記載の量を使用することができる。
【0062】
【表3】
【0063】
本発明の粘度指数向上剤(X)の製造方法は、鉱物油及び/又は合成潤滑油と溶剤(S)を含有してなる溶液中で、炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を含有してなる単量体を重合して(共)重合体(A)を得ることを特徴とする。
【0064】
鉱物油としては、溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等が挙げられる。
合成潤滑油としては、炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等が挙げられる。これらのうち好ましいのは鉱物油である。
【0065】
溶剤(S)としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族炭化水素溶剤(n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−デカン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン化炭化水素溶剤(塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等);エステル溶剤(ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、ギ酸イソペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ピルビン酸メチル及びピルビン酸エチル等);エーテル溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等);ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等);アルコール溶剤(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール及びトリフルオロエタノール等);アミド溶剤(ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等);スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等);複素環式化合物溶剤(N−メチルピロリドン等)並びにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
(S)のうち、せん断安定性の観点から好ましいのは、エステル溶剤、エーテル溶剤及びアルコール溶剤であり、更に好ましいのはエステル溶剤及びエーテル溶剤であり、最も好ましいのはエステル溶剤である。
【0066】
(S)のSP値は、粘度指数向上効果、せん断安定性、鉱物油又は合成潤滑油との溶解性の観点から、好ましくは6.0〜15.0(cal/cm1/2であり、更に好ましくは7.0〜13.0(cal/cm1/2、特に好ましくは8.0〜11.0(cal/cm1/2、最も好ましくは8.5〜10.0(cal/cm1/2である。
【0067】
(S)の沸点は、好ましく30〜140℃であり、更に好ましく40〜130℃、特に好ましく50〜120℃、最も好ましくは60〜110℃である。
【0068】
鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液における鉱物油及び/又は合成潤滑油の含有率は、溶液の重量に基づいて、好ましくは10〜95重量%であり、更に好ましくは20〜85重量%である。
鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液における(S)の含有率は、溶液の重量に基づいて、好ましく5〜90重量%であり、更に好ましく10〜80重量%、特に好ましく15〜70重量%である。
【0069】
炭素数5〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a)を含有してなる単量体としては、(a)単独のもの、及び(a)と前記の単量体(b)〜(k)から選ばれる一種以上の単量体を併用したものが挙げられる。なお、(a)と(b)〜(k)を併用する場合の、単量体の含有率の好ましい範囲は、前記と同様である。
【0070】
鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中で、(a)を含有してなる単量体を重合して(共)重合体(A)を得る方法としては特に制限はなく、公知の重合方法が挙げられる。具体的には、前記単量体を、前記の鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中で、ラジカル重合開始剤の存在下に溶液重合する方法が挙げられる。
溶液重合の方法としては、
[1]鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中に単量体を投入しておき、ラジカル重合開始剤を滴下して重合する方法。
[2]鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中に、前記単量体とラジカル重合開始剤を滴下する方法。
[3]鉱物油及び/又は合成潤滑油を含有してなる溶液中に、ラジカル重合開始剤を(S)に溶解させた溶液と前記単量体を滴下する方法。
等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤としては、公知のアゾ系開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)、及びレドックス系開始剤(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)が挙げられる。更に必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2〜20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25〜140℃であり、更に好ましくは50〜120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により(A)を得ることができる。
鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中における、(a)を含有してなる単量体の含有率は、溶液及び単量体の重量に基づいて、好ましくは20〜90重量%であり、更に好ましくは30〜70重量%である。
(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0071】
鉱物油及び/又は合成潤滑油と(S)を含有してなる溶液中で、(a)を含有してなる単量体を重合して(共)重合体(A)を得た後、溶剤(S)を除去することにより、(共)重合体(A)と鉱物油及び/又は合成潤滑油を含有してなる粘度指数向上剤(X)を得ることができる。
(S)を除去する方法としては、好ましくは50〜130℃で、常圧又は減圧下(0.001〜0.050MPa)に(S)を除去する方法が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0073】
<実施例1〜2>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、鉱物油(100℃動粘度:4.2mm2/s、40℃動粘度:19.3mm2/s、粘度指数:125)100重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表4に記載の単量体混合物100重量部、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.20重量部及び酢酸エチル[SP値:8.7(cal/cm1/2]50重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部を窒素置換した後、密閉下、系内温度を70〜85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了後同温で2時間熟成した後、常圧下、及び減圧下(0.001MPa)120℃で3時間かけて酢酸エチル、低沸点物質を留去して共重合体(A1)〜(A2)を含有してなる粘度指数向上剤(X1)〜(X2)を得た。
【0074】
<比較例1〜2>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素導入管及び減圧装置を備えた反応容器に、鉱物油(100℃動粘度:4.2mm2/s、40℃動粘度:19.3mm2/s、粘度指数:125)150重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、表4に記載の単量体混合物100重量部、ラジカル重合開始剤としての2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.10重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.025重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部を窒素置換した後、密閉下、系内温度を70〜85℃に保ちながら、1時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了後同温で1時間熟成した後、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.10重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.025重量部を投入し、1時間熟成した後、減圧下(0.001MPa)120℃で3時間かけて低沸点物質を留去して共重合体(H1)〜(H2)を含有してなる粘度指数向上剤(X’1)〜(X’2)を得た。
【0075】
得られた共重合体(A1)〜(A2)、(H1)〜(H2)のSP値を上記の方法で計算し、Mw、Mw/Mn及び結晶化温度を上記の方法で測定した。また、共重合体の基油溶解性を以下の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0076】
<共重合体の基油溶解性の評価方法>
粘度指数向上剤(X1)〜(X2)、(X’1)〜(X’2)の外観を目視で観察し、以下の評価基準で基油溶解性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0077】
【表4】
【0078】
表4記載の単量体は以下の通りである。
(a−1):2−n−デシル−n−テトラデシルメタクリレート
(b−1):メタクリル酸メチル
(c−1):メタクリル酸n−テトラデシル
(c−2):メタクリル酸n−ヘキサデシル
(d−1):ジメチルアミノエチルメタクリレート
【0079】
<実施例3〜4及び比較例3〜4>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、基油(100℃動粘度:4.2mm/s、40℃動粘度:19.3mm/s、粘度指数:125)を投入し、得られる潤滑油組成物の100℃における動粘度が7.00±0.02(mm/s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(X1)〜(X2)、(X’1)〜(X’2)を添加し、潤滑油組成物(Y1)〜(Y2)、(Y’1)〜(Y’2)を得た。
得られた潤滑油組成物(Y1)〜(Y2)、(Y’1)〜(Y’2)の40℃及び100℃における動粘度、粘度指数、せん断安定性指数を以下の方法で評価した。結果を表5に示す。
【0080】
<潤滑油組成物の40℃及び100℃における動粘度の測定方法>
ASTM D445の方法で測定した。
【0081】
<潤滑油組成物の粘度指数の測定方法>
JIS−K2283の方法で測定した。
【0082】
<潤滑油組成物のせん断安定性の評価方法>
JPI 5S−29−2006で規定された方法に従い、下記の式(1)により潤滑油組成物のせん断安定性指数(%)を測定した。せん断安定性指数(%)が低いほどせん断安定性に優れることを意味する。
【0083】
【数1】
【0084】
【表5】
【0085】
表5の結果から明らかなように、本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物(実施例3〜4)は、比較例3〜4の潤滑油組成物と比較して、せん断安定性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物は、駆動系潤滑油(MTF、デファレンシャルギヤ油、ATF及びbelt−CVTF等)、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)、エンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)及びトラクション油として好適である。