特許第6399710号(P6399710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6399710
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】トルクインパルス発生装置の診断方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/145 20060101AFI20180920BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20180920BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   B25B23/145 B
   H04Q9/00 311W
   H04M1/00 U
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-518957(P2016-518957)
(86)(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公表番号】特表2016-523184(P2016-523184A)
(43)【公表日】2016年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2014061935
(87)【国際公開番号】WO2014198679
(87)【国際公開日】20141218
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】1350716-5
(32)【優先日】2013年6月12日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,アンデルス アーバン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィークルンド,ニクラス ミカエル
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−144617(JP,A)
【文献】 特開2002−018744(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0110656(US,A1)
【文献】 特開平11−351987(JP,A)
【文献】 特開2011−031369(JP,A)
【文献】 特開2005−328541(JP,A)
【文献】 特開2001−353672(JP,A)
【文献】 特開2001−219382(JP,A)
【文献】 特開平06−179177(JP,A)
【文献】 特表2017−509493(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0070924(US,A1)
【文献】 実開昭62−044258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B23/00−23/18
B25B21/02
B25F5/00
H04M1/00;1/24−1/82
H04M99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクインパルス発生装置を診断するための方法であって、トルクインパルス発生装置が、回転入力部、トルク出力部、油溜め、及び入力部の回転をトルク出力部でトルクインパルスに変換するトルク発生装置を備えている方法において、
−トルクインパルスを発生しながら、トルクインパルス発生装置から音響信号を検出するステップ、
−音響信号からトルクインパルスの周波数を抽出するステップ、 及び
−油溜め内の油のレベルを表示するために、トルクインパルスの周波数に基づいてトルクインパルス発生装置を診断するステップと
を含み、
前記トルクインパルスの発生装置を診断するステップが、トルクインパルス発生装置のインパルスの周波数をトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数と比較することを含み、
前記トルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数が、5−50ヘルツの範囲内であり、
該方法が、さらに、
予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に対して、トルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が予定の閾値を上回る場合、油溜めを補充する必要があることを表示するステップを含み、
前記予定の閾値が、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数から0.5−5ヘルツの間であること
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
トルクインパルス発生装置の種類を最初に識別してトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数を決定することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
トルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数が、8−38ヘルツの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
トルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数が、15−25ヘルツの範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に対して、トルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が予定の閾値を下回る場合、油溜め内の油を低減させるべきであることを表示するステップを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
予定の閾値が、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数から1−2ヘルツの間であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
予め決定されたトルクインパルス発生装置の操作条件でトルク出力を発生することを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
予め決定された回転抵抗に対してトルク出力を発生することを、所定の条件に含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
予め決定された回転入力部の回転速度の範囲でトルク出力を発生することを、予定の条件に含むことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
トルクインパルス発生装置が継手を緊締するための動力工具に備えられていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
かかる方法の1つ以上のステップが携帯式の電子機器で実行されることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータの処理装置によって実行される場合に、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法を実行するコード手段を備えることを特徴とするコンピュータープログラム製品。
【請求項13】
スマートフォンに搭載されるアプリケーションであって、スマートフォンの処理装置によって実行される場合に、請求項1〜11の何れか一項に記載の方法を実行するコード手段を備えるアプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクインパルス発生装置を診断するための方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
パルス工具すなわちトルクインパルス発生装置を備えた電動工具は、例えば、組立作業中に継手を緊締するために使用される。そのようなトルクインパルス発生装置は、回転入力部、トルク出力部、油溜め、さらにトルク出力部で入力部の回転をトルクインパルスに変換するトルク発生装置で構成されている。
【0003】
様々な種類のトルクインパルス発生装置は、米国特許第5092410A号、欧州特許第0885693B1号、さらに国際公報WO2011/141205号に開示されている。
【0004】
トルクインパルス発生装置の性能は、油溜め内の油のレベルに依存している。油溜め内の油のレベルは、漏れによって経時的に低下する傾向がある。油のレベルが低下すると、インパルス発生装置のトルクを発生させる能力を低下させることになる。工具の作業者がこれを認識できないと締め付け不良や、さらにはトルクインパルス発生装置の機械部品を破壊する危険性がある。
【0005】
従って、単純な方法でトルクインパルス発生装置を診断し油溜め内の油のレベルを診断する必要性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、これらの必要性に応じた方法を提供することにある。
【0007】
従って、本発明は、回転入力部、トルク出力部、油溜め、さらにトルク出力部で入力部の回転をトルクインパルスに変換するトルク発生装置を備えるトルクインパルス発生装置を診断する方法に関わる。かかる方法は、
−トルクインパルスを発生しながら、トルクインパルス発生装置から音響信号を検知するステップ、
−音響信号からトルクインパルスの周波数を抽出するステップ、及び
−油溜め内の油のレベルを表示するために、トルクインパルスの周波数に基いてトルクインパルス発生装置を診断するステップ
を含んでいる。
【0008】
油溜め内の油のレベルは、トルクを発生させるトルクインパルス発生装置の能力に影響を与えることになる。油のレベルが低下すると、トルク出力部でトルクインパルスに変換される入力部の回転エネルギーが小さくなる。そのため、回転入力部とトルク出力部との間の相対的な回転数が大きくなり、従ってトルクインパルスの周波数も増加することになる。音響信号をトルクインパルス発生装置から検知し、検知した音響信号からトルクインパルスの周波数を抽出して、さらにトルクインパルスの周波数に基いてトルクインパルス発生装置を診断することによって、トルクインパルス発生装置の油溜め内の油のレベルを示すことができる。かかる方法は、トルクインパルス発生装置の簡単で効果的な診断を可能にし、トルクインパルス発生装置が作動するポイント、例えば組立ステーションで使用することができる。
【0009】
音響信号は、空気伝達を介して検知することができる。そのため、かかる方法は、非接触式でトルクインパルス発生装置を診断し、油溜め内の油のレベルを示すために使用することができる。
【0010】
代わりに、音響信号は、1つ以上の物質の部片を介して検知することができる。そのため、例えばトルクインパルス発生装置を担持する工具との機械的な接触によって、又は緊締具を緊締する際に加工部片との機械的な接触によって、音響信号を受信することができる。
【0011】
トルクインパルス発生装置を診断するステップは、予めパルス発生装置のインパルスの正常周波数を決定しておいて、それをインパルス発生装置のインパルスの周波数と比較することを含むことができる。従って、インパルスの正常周波数からの偏倚を検知して表示することができる。
【0012】
かかる方法は、最初にトルクインパルス発生装置の正常周波数を決定するために、トルクインパルス発生装置の種類を識別するステップを含むことができる。従って、かかる方法は、インパルスの相対的な正常周波数を決定することによってトルクインパルス発生装置の異なる種類に適合することができる。
【0013】
トルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数は、5−50ヘルツの範囲内であり、好ましくは8−38ヘルツの範囲内、さらに好ましくは15−25ヘルツの範囲内であることができる。トルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数は、トルクインパルス発生装置の種類に依存することができる。
【0014】
インパルスの正常周波数は、トルクインパルス発生装置の1つ以上の動作パラメータに依存してもよい。従って、使用されるインパルスの正常周波数は、1つ以上の動作パラメータ(例えば、トルクインパルス発生装置を駆動するモーターの最大トルク、或いはトルクインパルス発生装置に接続された空気圧モーターを駆動する空気圧)の入力に依存して設定することができる。
【0015】
かかる方法は、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に関わってトルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が、所定の閾値を上回る場合、油溜めを補充する必要があることを表示するステップを含むことができる。
【0016】
かかる方法は、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に関わってトルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が、所定の閾値を下回る場合、油溜め内の油を減らすべきであることを表示するステップを含むことができる。
【0017】
予定の閾値は、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの予定の正常周波数から0.5−5ヘルツの間、好ましくは予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの予定の正常周波数から1−2ヘルツの間であることができる。
【0018】
トルク出力は、予めトルクインパルス発生装置の動作条件を決定しておいて発生することができる。そのため、トルクインパルス周波数による動作条件への影響を最小限にすることができる。
【0019】
例えば、特定の回転抵抗に対してトルク出力を発生することを、所定の条件に含むことができる。例えば、トルク出力部は万力にしっかりと取り付けられてもよいし、或いは、画定された継手の緊締具を緊締する間、トルク出力を発生することもできる。
【0020】
回転入力部の回転速度の範囲を予め決定しておいてトルク出力を発生することを、所定の条件に含んでもよい。
【0021】
トルクインパルス発生装置は、圧縮空気で駆動される空気圧モーターに接続することができ、そして、予め空気圧モーターに供給される空気圧を決定しておいてトルク出力を発生すること(すなわち所定の最大トルクを発生すること)を、所定の条件に含んでもよい。
【0022】
トルクインパルス発生装置は、電動モーターに接続することができる、さらにそこで所定の条件に、電気モーター及び/又はバッテリーの特性や状態を含んでもよい。
【0023】
トルクインパルス発生装置は、継手緊締用の動力工具に備えることができる。動力工具は、圧縮空気駆動式の動力工具であってもよいし、電動式の動力工具であってもよい。
【0024】
かかる方法の1つ以上のステップは、携帯式の電子機器で実行することができる。携帯式の電子機器は、例えばスマートフォンなどの携帯電話であってもよい。従って、かかる方法は、電動工具の操縦者や他の職員によって簡単にアクセスできる。
【0025】
本発明はさらに、本明細書に開示されるように、かかる方法を実行するよう構成された携帯式の電子機器にも関わる。
【0026】
本発明はさらに、コード手段を備えるコンピュータープログラム製品に関し、かかるプログラム製品がコンピュータの処理装置によって実行されると、本明細書に記載された方法を実行する。
【0027】
本発明はさらに、スマートフォンに搭載されるアプリケーション所謂「アプリ」に関し、アプリはコード手段を含んでいて、スマートフォンの処理装置によって実行されると本明細書に記載された方法を実行する。
【0028】
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面及び示された実施形態の詳細な記述から明らかになる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態は、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による方法を実行するよう構成された携帯式の電子機器及びトルクインパルス発生装置を有する動力工具を示す。
図2a】トルクインパルス発生装置の断面を回転位置で示す。
図2b】トルクインパルス発生装置の断面を別の回転位置で示す。
図3】トルクインパルス発生装置を診断するための方法をフローチャートで示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、トルクインパルス発生装置101を備える動力工具100を示している。さらに動力工具は、ハンドル103、吸気口104、及び排気口105を有するハウジング102を備えている。吸気口は、スロットルバルブ107を介して空気圧モーター106(非表示)に接続されている。トルクインパルス発生装置は、空気圧モーターに接続された軸109を備える回転入力部108と、工具ビットまたは迅速な工具交換チャックを支持する出力シャフトを有するトルク出力部110とを備えている。さらに、トルクインパルス発生装置は、トルク出力部で入力部の回転をトルクインパルスに変換するトルク発生装置112を備えている。トルクインパルス発生配列112は、回転入力部108の内側に設けられたカム113及び、ピストン114とローラー115で一対の形態を成す一対のカムフォロアを備えている。ピストンの内側に放射状に形成された空間と、回転入力部108の内側に放射状に形成された空間と、ピストン及びローラーの周囲とによって、油溜め116を形成している。ピストンの内側に、カム軸117が放射状に配置されている。
【0032】
別の方法として、欧州特許第0885693B1号の図4及び5に関連して記載されているように、カムフォロアをワンセットのベーンとして設けてもよい。
【0033】
動力工具の傍らには、スマートフォンの形態で携帯式の電子機器120が示されている。携帯式の電子機器は、トルクインパルス発生装置からの音響信号122を検知するためのマイクロフォン121と、操縦者に診断結果を表示するためのディスプレイ123とを備えている。かかる電子機器はさらに、例えばディスプレイのタッチ機能の形態で操縦者との相互作用を可能にする入力手段124を備えている。
【0034】
図2を参照すると、図1の破線I−Iに沿ってトルクインパルス発生装置の断面図は、2つの位置で、それぞれを図2a及び図2bに示している。繰り返しになるが、トルクインパルス発生装置101は回転入力部108と、トルク出力部110とを備えている。さらにトルクインパルス発生装置は、トルク出力部で入力部の回転をトルクインパルスに変換するトルク発生装置112を備えている。トルク発生装置112は、回転入力部108の内部に設けたカム113を備えている。カムは、突起のように設けた2つのカムローブを備えている。一対のカムフォロアは、ピストン114とローラー115とで一対を成す形態で、トルク出力部110内に支持されている。ピストンの内側に放射状に形成された空間116aと、回転入力部108の内側に放射状に形成された空間116bと、ピストン及びローラーの周囲とによって、油溜め116を形成している。カム軸117は、回転入力部108に接続されたレンズ型断面をピストンの内側で放射状に有し、図2aの回転位置でカムに向かってピストンを押すために配置されている。
【0035】
図2bには、トルクインパルス発生装置が第二の回転位置で示されている、そこでは、ローラー115がカムのカムローブ118と接触するように回転入力部108がトルク出力部110に対して回転する、そうすることによってローラー115とピストン114とが半径方向に内側に押し付けられる。次いで、空間116a内の油は、ピストン114とトルク出力部110との間に形成された通路を通って、回転入力部108の内側に放射状に形成され、ピストン及びローラーを周囲する空間116bに強制的に押し出される。そこで、空間116a及び116bによって形成される油溜め116内の油の相対的な非圧縮性のために、トルクは回転入力部108からトルク出力部110に伝達される。
【0036】
同様に、ローラー115がカムローブ118を通過するように、回転入力部108はトルク出力部110に相対して回転すると、カム軸117は(回転入力部108によって回転しながら)ピストン114をカムの方へ放射状に外向きに押し付ける。そこで、空間116b内の油は、ピストン114とトルク出力部110との間に形成される通路を通って、空間116a内に強制的に入るようにされる、そうすることによってトルクは回転入力部108からトルク出力部110に伝達される。
【0037】
上記の複合作用によって、トルク出力部110でトルクインパルスを発生させるので、ネジ式緊締具など止め具を緊締するためにこのインパルスを使用することができる。
【0038】
油溜め116内の油のレベルが、例えば油漏れの結果として低すぎる場合には、油溜め内の油は大量に空気を含むことになる。空気は圧縮可能であるため、それぞれの空間116aと116bで油/空気混合物が圧縮され、空間同士で油を移動させることなくピストン114及びローラー115の特定の動作を可能にすることができる。従って、回転入力部108からトルク出力部110へのトルク伝達は、それほど効果的ではない。しかも回転入力部108とトルク出力部110との間の相対的な回転への抵抗が増すことによって、トルクインパルスの周波数は減少するという結果をもたらすことになる。
【0039】
同様に、油溜め116内の油のレベルが、例えば過充填によって高すぎる場合にも、回転入力部108とトルク出力部110との間の相対的な回転への抵抗が増すことになるので、トルクインパルスの周波数は減少することになる。
【0040】
このように、トルクインパルス発生装置の性能は、油溜め内の油のレベルの変化に敏感である。
【0041】
図3を参照すると、トルクインパルス発生装置を診断するための方法300のフローチャートが示されている。
【0042】
トルクインパルス発生装置の種類に応じて、インパルスの正常周波数を決定または設定する。インパルスの正常周波数は、トルクインパルス発生装置の大きさ、デザイン、及び構造に依存する。通常の周波数は、5−50ヘルツの範囲、好ましくは8−38ヘルツの範囲、より好ましくは15−25ヘルツの範囲内である。
【0043】
トルクインパルス発生装置は、予め決められた操作パラメータの下でトルクインパルスを発生させるよう動作する。これは、一例証として、例えば万力で固定されたような堅固なコネクタに対して、トルクインパルス発生装置を動かすことを含んでいる。
【0044】
フローチャートの符号番号301では、トルクインパルスを発生させている間、トルクインパルス発生装置からの音響信号を携帯式の電子機器が検知する。音響信号は、例えば処理するために電子機器に保存されても良いし或いは音響信号の処理を自動的にその場で行ってもよい。
【0045】
フローチャートの符号番号302では、音響信号からトルクインパルスの周波数を抽出する。これは、例えばFFT(高速フーリエ変換)によって実行でき、また5−50ヘルツ或いは10−30ヘルツの範囲でスペクトラムのピークを決定することができる。
【0046】
フローチャートの符号番号303では、抽出されたトルクインパルス発生装置のインパルスの周波数を、その後インパルス発生装置のインパルスの正常周波数と比較する。フローチャートの符号番号304では、この比較からトルクインパルス発生装置を診断し、油溜め内の油のレベルを表示する。
【0047】
トルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に関わって、所定の閾値を上回る場合、油溜めを補充する必要があることを表示する。
【0048】
トルクインパルス発生装置のインパルスの周波数が、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数に関わって、所定の閾値を下回る場合、油溜め内の油を低減させるべきであることを表示する。
【0049】
所定の閾値は、予め決定されたトルクインパルス発生装置のインパルスの正常周波数から0.5−5ヘルツの範囲内、或いは1−2ヘルツの範囲内であることができる。
【0050】
かかる方法は、図1で示された携帯式の電子機器120に実装することができる。
【0051】
かかる方法は、コード手段を有するコンピュータープログラムに実装することができる、プログラムが処理装置で走ると、処理装置が上記方法のステップを実行する。コンピュータープログラムは、コンピュータープログラム製品の読取り可能な媒体に格納することができる。本質的には、上記コンピュータで読取り可能な媒体とは、任意のメモリ、例えば、ROM(リードオンリーメモリ)PROM(プログラム可能な読み取り専用メモリ)、EPROM(消去可能なPROM)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的消去可能なPROM)、またはハード・ディスク・ドライブなどで構成することができる。コンピュータープログラムは、図1に示すように、携帯式の電子機器120によって実行されるように適用することができる。
【0052】
当業者には明らかなように、上記の例示的な実施形態に多くの他の実装、修正、変更、及び/又は追加を行うことができる。本発明は、特許請求の範囲内で、そのような他の実装、修正、変更、及び/又は追加をすべて含むことを理解されるべきである。
【符号の説明】
【0053】
100 動力工具
101 トルクインパルス発生器
102 ハウジング
103 ハンドル
104 吸気口
105 排気口
106 空気圧モーター(非表示)
107 スロットルバルブ
108 回転入力部
109 軸
110 トルク出力部
112 トルク発生装置
113 カム
114 ピストン
115 ローラー
116 油溜め
116a 空間
116b 空間
117 カム軸
118 カムローブ
120 電子機器
121 マイクロフォン
122 音響信号
123 ディスプレイ
124 入力手段
300 方法を示すフローチャート
301 フローチャートの位置
302 フローチャートの位置
303 フローチャートの位置
304 フローチャートの位置
図1
図2a
図2b
図3