特許第6400019号(P6400019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6400019放電ランプ、放電ランプ用電極、及び、放電ランプ用電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400019
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】放電ランプ、放電ランプ用電極、及び、放電ランプ用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/073 20060101AFI20180920BHJP
   H01J 9/02 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H01J61/073 B
   H01J9/02 L
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-543564(P2015-543564)
(86)(22)【出願日】2014年9月19日
(86)【国際出願番号】IB2014064648
(87)【国際公開番号】WO2015059589
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2013-197078(P2013-197078)
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 壮則
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249027(JP,A)
【文献】 特開2012−133994(JP,A)
【文献】 特開2004−006246(JP,A)
【文献】 特開2010−129375(JP,A)
【文献】 実開昭57−041255(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J9/02
61/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電管と、
前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材を覆う蓋部材と、前記胴体部材と前記蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより成形され、
伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入され
前記中間部材の接合面の面積が、前記胴体部材の断面積よりも小さいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項2】
前記胴体部材の断面積に対する前記中間部材の接合面の面積の割合が、40〜90%の範囲に定められていることを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ。
【請求項3】
放電管と、
前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材を覆う蓋部材と、前記胴体部材と前記蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより成形され、
伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入され
前記中間部材の外径が、前記胴体部材の外径よりも小さいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項4】
放電管と、
前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材を覆う蓋部材と、前記胴体部材と前記蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより成形され、
伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入され
前記中間部材の内径が、前記胴体部材の内径よりも大きいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項5】
前記蓋部材の外径が、前記胴体部材の内径より大きく、外径より小さいことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項6】
放電管と、
前記放電管内に配置される一対の電極とを備え、
少なくとも一方の電極が、凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材を覆う蓋部材と、前記胴体部材と前記蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより成形され、
伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入され
前記胴体部材の接合面の外径が、前記中間部材の外径よりも小さいことを特徴とする放電ランプ。
【請求項7】
前記中間部材の径方向幅が、前記中間部材の厚さの2倍以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項8】
前記蓋部材が、前記密閉空間側に蓋凹部を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項9】
前記中間部材が、前記胴体部材および前記蓋部材の少なくともいずれか一方より展延性が高いことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項10】
前記中間部材が、タングステン、モリブデン、タンタル、レニウムのいずれかの金属、もしくはいずれかを主成分とする合金から成ることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項11】
前記中間部材の接合面が、平坦な面であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の放電ランプ。
【請求項12】
凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材を覆う蓋部材と、前記胴体部材と前記蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより成形され、
伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入され、
前記中間部材の接合面の面積が、前記胴体部材の断面積よりも小さいことを特徴とする放電ランプ用電極。
【請求項13】
凹部を形成した胴体部材と、前記胴体部材の凹部を覆う蓋部材と、前記胴体部材の断面関よりも断面積の小さい環状の中間部材とを成形し、
前記胴体部材の凹部に伝熱体を置き、前記胴体部材と前記蓋部材との間に前記中間部材を介在させ、前記胴体部材、前記中間部材、前記蓋部材とを固相接合することにより電極を成形することを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置等に利用される放電ランプに関し、特に、電極内部に形成された密閉空間に伝熱体を封入する電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプでは、電極内部に密閉空間を形成し、冷却機能をもつ金属を封入した電極が知られている(特許文献1参照)。そこでは、銀など、熱伝導率が高く、比較的融点の低い金属から成る伝熱体が、陽極内部に密閉されている。ランプ点灯によって電極温度が上昇すると、伝熱体が溶融し、液化する。これによって、密閉空間内に熱対流が生じ、電極先端部の熱が反対側の電極支持棒側へ輸用される。
【0003】
電極内部に密閉空間を形成する場合、電極先端部を含む凹部と蓋部分とを成形し、接合させる。接合方法としては、プラズマ焼結などによって固相接合することが可能であり、内部に凹部を設けた有底筒状の金属部材と、蓋となる金属部材とを接合させ、電極を形成する。固相接合により、熱伝導性、電極強度を落とすことなく、電極成形することができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−006246号公報
【特許文献2】特開2011−249027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極先端部付近から上昇する伝熱体は非常に高温であり、接合部分が加熱される。そのため、強固な接合を必要とする。しかしながら、固相接合時の押し付け圧力を強くすると、胴体部は、内部空間が形成されているために変形しやすい。変形が大きくなると、密閉空間内面に亀裂が生じ、ランプ点灯中に電極が破損する恐れがある。
【0006】
したがって、固相接合時に接合部付近で変形がなく、接合強度の高い電極を構成することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の放電ランプは、放電管と、放電管内に配置される一対の電極とを備え、少なくとも一方の電極が、凹部を形成した部材(ここでは、胴体部材という)と、胴体部材を覆う部材(ここでは、蓋部材という)と、胴体部材と蓋部材との間に介在する環状の部材(ここでは、中間部材という)とを有し、胴体部材、中間部材、蓋部材とを固相接合することにより成形されている。そして、伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入されている。
【0008】
胴体部材は、電極先端面、電極先端部と一体的であってよく、電極先端部と接合されていてもよい。凹部は、伝熱体の熱対流を生じさせる空間を形成すればよく、筒状に形成することが可能である。例えば、円柱状の胴体部材に同軸的な断面円状の内部空間が形成される。蓋部材は、例えば、電極支持棒と接合する。
【0009】
本発明では、リング状中間部材を設けることにより、固相接合のとき、環状でない蓋部材と直接接合させる場合と比べ、応力が接合面全体に渡って均等にかかる。そのため、胴体部材の変形が抑えられる。また、ランプ点灯時に伝熱体が直接蓋部材まで到達することにより、中間部材を設けても熱輸送効率が低下しない。
【0010】
中間部材の穴のサイズは任意に設定することが可能であり、胴体部材の変形抑止、伝熱体の熱輸送効果を実現させる範囲で適宜設定することが可能である、例えば、胴体部材の内部空間のサイズ(径)に基づいて同程度のサイズに設定することが可能である。中間部材の外径、内径は、胴体部材の外径、内径と一致しても良く、あるいは、一致しなくてもよい。
【0011】
中間部材による固相接合の効果を高めることを考慮すると、中間部材が厚すぎるのは好ましくなく、中間部材の径方向幅、中間部材の厚さについてバランスを取ることが望ましい。例えば、中間部材の径方向幅を、中間部材の厚さの2倍以下に定めればよい。
【0012】
また、中間部材が固相接合時の押しつけ圧力を吸収することを考慮すれば、中間部材を、胴体部材および蓋部材の少なくともいずれか一方より展延性が高い素材によって形成するのがよい。例えば、中間部材は、タングステン、モリブデン、タンタル、レニウムのいずれかの金属、もしくはいずれかを主成分とする合金から構成される。
【0013】
電極軸方向に沿った応力を電極外側に逃がすことによって変形を抑える構成として、中間部材の接合面の面積を、胴体部材の断面積よりも小さくすることが可能である。例えば、中間部材の外径が、胴体部材の外径よりも小さくすることができる。この場合、中間部材の内径を、胴体部材の内径と一致させてもよく、それ以下の内径とすることができる。
【0014】
また、中間部材の内径を、胴体部材の内径よりも大きくすることもできる。この場合、中間部材の外径を、胴体部材の外径と一致させてもよく、それ以上の外径とすることができる。
【0015】
蓋部材と中間部材との固相接合を強固にすることを考慮すれば、蓋部材の外径を、胴体部材の外径より小さくすることが可能である。例えば、蓋部材の外径を、中間部材の外径と一致させることができる。一方、上記構成と同様の効果を得る構成として、胴体部材の接合面の外径を、中間部材の外径よりも小さくすることも可能である。
【0016】
蓋部材については、電極全体に対する中間部材の軸方向相対的位置を内部空間底面側に近づけることを考慮すれば、密閉空間側に蓋凹部を設けることが可能である。
【0017】
本発明の他の態様における放電ランプ用電極は、凹部を形成した胴体部材と、胴体部材を覆う蓋部材と、胴体部材と蓋部材との間に介在する環状の中間部材とを有し、胴体部材、中間部材、蓋部材とを固相接合することにより成形され、伝熱体が、固相接合によって電極内部に形成された密閉空間に封入されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様における放電ランプ用電極の製造方法は、凹部を形成した胴体部材と、胴体部材の凹部を覆う蓋部材と、環状の中間部材とを成形し、胴体部材の凹部に伝熱体を置き、胴体部材と蓋部材との間に中間部材を介在させ、胴体部材、中間部材、蓋部材とを固相接合することにより電極を成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、固相接合によって接合強度の高い電極を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。
図2】陽極の概略的断面図である。
図3】胴体部材、中間部材の電極軸垂直方向に沿った断面図である。
図4図2の接合部分を拡大した断面図である。
図5】第2の実施形態である放電ランプにおける陽極の概略的断面図である。
図6】第3の実施形態における陽極の概略的断面図である。
図7】第3の実施形態における中間部材と胴体部材の断面図である。
図8図6の接合部分を拡大した断面図である。
図9】第4の実施形態における接合部分の断面図である。
図10】第5の実施形態における陽極の断面図である。
図11】第6の実施形態における陽極の断面図である。
図12】胴体部材端面の断面積に対する接合面積(中間部材端面面積)の割合と、そのとき胴体部材変形量との関係を表すグラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1は、第1の実施形態であるショートアーク型放電ランプを模式的に示した平面図である。
【0023】
ショートアーク型放電ランプ10は、パターン形成する露光装置(図示せず)の光源などに使用可能な放電ランプであり、透明な石英ガラス製の放電管(発光管)12を備える。放電管12には、陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置される。
【0024】
放電管12の両側には、対向するように石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と一体的に設けられており、封止管13A、13Bの両端は、口金19A、19Bによって塞がれている。放電ランプ10は、陽極30が上側、陰極20が下側となるように鉛直方向に沿って配置されている。
【0025】
封止管13A、13Bの内部には、金属性の陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒17A、17Bが配設され、金属リング(図示せず)、モリブデンなどの金属箔16A、16Bを介して導電性のリード棒15A、15Bにそれぞれ接続される。封止管13A、13Bは、封止管13A、13B内に設けられるガラス管(図示せず)と溶着しており、これによって、水銀、および希ガスが封入された放電空間DSが封止される。
【0026】
リード棒15A、15Bは外部の電源部(図示せず)に接続されており、リード棒15A、15B、金属箔16A、16B、そして電極支持棒17A、17Bを介して陰極20、陽極30の間に電圧が印加される。放電ランプ10に電力が供給されると、電極間でアーク放電が発生し、水銀による輝線(紫外光)が放射される。
【0027】
図2は、陽極の概略的断面図である。
【0028】
陽極30は、円柱状金属部材(以下、胴体部材という)32と、電極支持棒17Bと接合する筒状金属部材(以下、蓋部材という)36と、胴体部材32と蓋部材36との間に介在する環状の金属部材(以下、中間部材という)40から構成される。
【0029】
胴体部材32は、電極軸(ランプ軸)Eの垂直方向に沿った電極先端面30Sを有する円錐台形状の先端部34と一体的に繋がり、内部に凹部50Sが形成された肉厚の有底筒状部材である。胴体部材32は、純タングステン(W)から成る金属あるいはタングステンを主成分とする合金によって構成される。
【0030】
蓋部材36は、胴体部材32と同じタングステン、あるいはタンタル、モリブデンなど金属から成形されており、中間部材40を間に介して胴体部材32を覆い、胴体部材32の凹部50Sを密閉する。これにより、陽極内部に密閉空間50が形成される。胴体部材32、中間部材40、蓋部材36はいずれも同軸的に配置されており、胴体部材32、蓋部材36の電極軸方向に関する径方向に沿った幅、すなわち肉厚は、接合部付近において一定である。
【0031】
リング状の中間部材40は、タングステン、モリブデン、タンタル、レニウム、ニオブ単体から成る金属もしくはタングステン、モリブデン、タンタル、レニウム、ニオブのいずれかを主成分とする合金から成る。中間部材40は、蓋部材36、胴体部材32と比べて極めて薄い。また、中間部材40は、胴体部材32、蓋部材36あるいはいずれかと比べて展延性が高い。
【0032】
密閉空間50には、胴体部材32、中間部材40、蓋部材36よりも融点の低い金属(銀など)から成る、あるいはそれを主成分とする伝熱体Mが封入されている。ランプ点灯中、電極先端部34が加熱されることによって伝熱体Mが溶融する。胴体部材32、蓋部材36、中間部材40は、伝熱体Mよりも融点が高く、ランプ点灯中の内部空間底面50B付近の温度(約1800℃)よりも融点が高い。
【0033】
溶融した伝熱体Mは、密閉空間50内で対流し、電極先端部34の熱が電極軸Eに沿って蓋部材36側へ輸送される。これにより、陽極30はランプ点灯中冷却される。
【0034】
このような密閉空間50を内部に形成した陽極30は、放電プラズマ焼結(SPS焼結)方式に従う固相接合によって成形されている。胴体部材32、蓋部材36、中間部材40を構成する金属部材を、金属紛体を焼結して固形化することによって成形する。そして、胴体部材32の凹部50Sに固形化された伝熱体Mを入れた後、放電プラズマ焼結(SPS)用の装置を使い、過熱、加圧、加圧時間等を調整することにより、3つの金属部材が同時に接合される。
【0035】
図3は、胴体部材、中間部材の電極軸垂直方向に沿った断面図である。図4は、図2の接合部分を拡大した断面図である。図2〜4を用いて、中間部材の形状について説明する。
【0036】
上述したように中間部材40はリング形状であり、展延性が相対的に高く、薄く形成されている。ここでは、厚さbは、径方向の幅(肉厚長さ)tの1/2以下に定められている。厚さbが幅tの1/2を超えると、固相接合時に中間部材40が大きく変形し、蓋部材36と胴体部材32の軸がずれてしまう。
【0037】
また、中間部材40は、蓋部材36の端面36Sおよび胴体部材32の端面32S全体ではなく、一部と接する形状となっており、中間部材40の断面積S2は、胴体部材32における円柱状部分の断面積S1よりも小さい。すなわち、中間部材40の接合面となる端面40Sの面積は、胴体部材32の接合面となる端面32Sの面積よりも小さい。
【0038】
中間部材40の内径d1は胴体部材32の内径d2と等しいが、中間部材40の外径D2は、胴体部材32の外径D1よりも小さい。なお、蓋部材36の外径D3は、胴体部材32の外径D1と等しい。
【0039】
このような中間部材40の設置により、接合強度が一層高められる。すなわち、中間部材40がリング形状であり、電極軸方向に沿った体積比率(サイズ)は中間部材40が最も小さいため、中間部材40の緩衝材料的な役割を担う。そのため、固相接合時において蓋部材36の側から胴体部材32に対し強い応力がかかるのを防ぐ。
【0040】
特に、中間部材40は展延性が他の部材と比べて高いため、固相接合のときに電極軸方向に沿って最も圧縮変形する。そのため、胴体部材32に対する固相接合時の圧縮応力が低減され、胴体部材32の変形を抑える。これは、胴体部材32、中間部材40、蓋部材36の接合部分の接合強度を高め、伝熱体Mからの熱によって接合部分から亀裂が生じることを防止する。
【0041】
また、中間部材40がリング状であるため、上昇する伝熱体Mの流れは、蓋部材36の端面36Sに直接到達する。したがって、中間部材40の配置によって熱輸送効率が低下することはない。
【0042】
一方、中間部材40は、その断面積が胴体部材32の断面積よりも小さく、胴体部材32の端面内側部分のみ中間部材40の端面40Sと全体的に接している。そのため、固相接合時にかかる応力が比較的小さい接触エリアに集中し、接合強度がより一層高められる。
【0043】
さらに、中間部材40の外径D2が胴体部材32の外径D1よりも小さく、胴体部材32の端面32Sの外側は中間部材40と接していない。そのため、固相接合時、径方向に沿った応力を胴体部材32の外側部分に逃がすことが可能となり、胴体部材32の形状が歪むことなく電極を形成することができる。
【0044】
なお、中間部材40の断面積S2の胴体部材32の断面積S1に対する割合は、40〜90%の範囲に定めるのがよい。割合が40%より小さいと、接合部分の断面積が小さ過ぎて胴体部材32を強固に保持することができない。また、90%より大きいと、胴体部材32の外側部分に応力を逃すことが難しくなる。
【0045】
このように本実施形態によれば、陽極30が、凹部50Sを形成した胴体部材32と、胴体部材を覆う蓋部材36と、胴体部材と蓋部材との間に環状の中間部材40を介在させ、胴体部材32、中間部材40、蓋部材36とをSPSによって固相接合することにより成形される。
【0046】
なお、中間部材の内径を胴体部材の内径より小さくし、中間部材が密閉空間側に突出するような構成にすることも可能である。
【0047】
次に、図5を用いて、第2の実施形態である放電ランプについて説明する。第2の実施形態では、伝熱体として炭素繊維が用いられる。それ以外の構成については、第1の実施形態と同じである。
【0048】
図5は、第2の実施形態である放電ランプにおける陽極の概略的断面図である。
【0049】
陽極130は、胴体部材132、中間部材140、蓋部材136から構成されており、炭素繊維束から成る伝熱体M1が密閉空間内に配置されている。伝熱体M1は、密閉空間150の底面から蓋部材136に渡って延びている。
【0050】
次に、図6〜8を用いて、第3の実施形態である放電ランプについて説明する。第3の実施形態では、蓋部材に凹部が設けられるとともに、中間部材が胴体部材の端面外側に位置する。それ以外の構成については、第1の実施形態と実質的に同じである。
【0051】
図6は、第3の実施形態における陽極の概略的断面図である。図7は、第3の実施形態における中間部材と胴体部材の断面図である。図8は、図6の接合部分を拡大した断面図である。
【0052】
陽極230は、胴体部材232、中間部材240、蓋部材236から構成されており、伝熱体Mが密閉空間250内に封入されている。蓋部材236の密閉空間側端面236Tには、中央部を中心にして周囲まで広がるテーパー形状の凹部237が形成されている。このような形状とすることで、陽極の全長における中間部材240の軸方向位置が内部空間底面側に近づく。すなわち、内部空間の容積を変更することなく、胴体部材232が軸方向に短くなり、固相接合時の押し付け圧力による胴体部材232の変形を防止する。なお、凹部237は円筒形状とすることもできる。
【0053】
図7、8に示すように、中間部材240の断面積は、胴体部材232の断面積よりも小さい。中間部材240の外径D2が胴体部材232の外径D1と等しい一方、中間部材240の内径d2は胴体部材232の内径d1よりも大きい。蓋部材236の外径D3は、胴体部材232の外径D1と等しい。
【0054】
このように胴体部材232の端面外側部分に中間部材240が接していることにより、SPSによる固相接合のときにパルス電流が表皮効果によって電極側面側に多く流れることから、接合強度を高めることができる。特に、中間部材240の内周面付近での接合強度が高まる。
【0055】
また、中間部材240の内周面が胴体部材232の内周面よりも電極側面側に位置し、接合部分が凹んだ形状となる。これにより、伝熱体Mの流れが中間部材240に対し直接的に及ぼすことがなく、接合部分に対する加熱を抑えることができる。なお、中間部材の外径を胴体部材の外径より大きくし、中間部材が電極側面から突出するような構成にすることも可能である。
【0056】
次に、図9を用いて、第4の実施形態である放電ランプについて説明する。第4の実施形態では、中間部材が胴体部材端面の中央部に配置されている。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じである。
【0057】
図9は、第4の実施形態における接合部分の断面図である。
【0058】
陽極330は、胴体部材332、中間部材340、蓋部材336から構成されており、図示しない伝熱体が密閉空間350内に封入されている。中間部材340の外径D2は、胴体部材332の外径D1よりも小さい。また、中間部材340の内径d2は、胴体部材332の内径d1より大きい。蓋部材336の外径D3は、胴体部材332の外径D1と等しい。
【0059】
次に、図10を用いて、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、胴体部材の外径が中間部材の外径よりも大きい。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じである。
【0060】
図10は、第5の実施形態における陽極の断面図である。
【0061】
陽極430は、胴体部材432、中間部材440、蓋部材436から構成されており、伝熱体Mが密閉空間内に封入されている。中間部材440の外径D2、蓋部材436の外径D3は、胴体部材432の外径D1よりも小さい。
【0062】
このように胴体部材の接合面において電極側面側を非接触部分とすることにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、蓋部材の外径と中間部材の外径が等しいため、蓋部材の電極側面側部分が中間部材と接合し、蓋部材と中間部材との接合強度が高まる。
【0063】
次に、図11を用いて、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、第1〜第4の実施形態と異なり、胴体部材の接合面外径が、中間部材の外径よりも小さい。
【0064】
図11は、第6の実施形態における陽極の断面図である。
【0065】
陽極530は、胴体部材532、中間部材540、蓋部材536から構成されており、伝熱体Mが密閉空間550内に封入されている。胴体部材532の接合部付近の側面には楔533が形成されている。そのため、胴体部材532の接合面外径は、中間部材540の外径より短く、中間部材540の端面では、電極側面側端部分が胴体部材532と接合していない。蓋部材536の外径は、中間部材540の外径と等しい。
【0066】
このような構成により、固相接合時に応力を胴体部材側面付近に逃すことが可能となり、胴体部材532の変形を防ぐことができる。
【実施例1】
【0067】
以下、本発明の実施例1である放電ランプについて説明する。
【0068】
放電ランプの陽極は、純タングステンから成る胴体部材、蓋部材と、タングステン、レニウムを含む合金、あるいはモリブデン/タンタルから成る中間部材によって構成される。放電ランプは、別々に用意された胴体部材、蓋部材、中間部材をSPSによって固相接合することにより成形されている。ここでは、胴体部材の外径、内径、中間部材の外径、内径は、以下のように定められている。
胴体部外径 : φ35 胴体部内径 : φ22
中間部材外径: φ35 中間部材内径: φ24
【0069】
製造された陽極に対し、引張試験を行った。比較例として、中間部材が設けられていない従来の放電ランプを用いた。結果を以下の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
引張強度は、電極軸方向に沿って電極を引き剥がす方向にかける強度を表し、750点灯時間経過後の接合部付近での吹き破れが生じているか確認した。表1に示すように、中間部材を設けることによって、接合強度が向上する。
【実施例2】
【0072】
次に、本発明の実施例2である放電ランプについて説明する。
【0073】
実施例2の放電ランプの陽極は、純タングステンから成る胴体部材、蓋部材と、タングステン、レニウムを含む合金から成る中間部材によって構成される。放電ランプは、別々に用意された胴体部材、蓋部材、中間部材をSPSによって固相接合することにより成形されている。また、実施例2の陽極は、第1実施形態のように、中間部材の外径が胴体部材の外径よりも短い。ここでは、胴体部材の外径、内径、中間部材の外径、内径は、以下のように定められる。
胴体部外径 : φ35 胴体部内径 : φ22
中間部材外径: φ33 中間部材内径: φ22
【0074】
ここでは、中間部材の外径を変えながら、SPSによる固相接合を行って陽極を製造し、その都度胴体部材の変形量を測定した。
【0075】
図12は、胴体部材端面の断面積に対する接合面積(中間部材端面面積)の割合と、そのとき胴体部材変形量との関係を、グラフで表したものである。図12に示すように、中間部材の断面積が小さいほど胴体部材の変形量が少ない。
【実施例3】
【0076】
次に、本発明の実施例3である放電ランプについて説明する。実施例3では、中間部材の位置を第1、第3、第4実施形態に相当する位置(内側、外側、中央)に配置したときに胴体部材の内表面にかかる応力を、シミュレーションによって算出した。以下、表2にその結果を示す。計算に用いた陽極のモデルは、胴体部材の外径、内径、中間部材の外径、内径は以下のように定められる。
内側
胴体部外径 : φ35 胴体部内径 : φ22
中間部材外径: φ33 中間部材内径: φ22
外側
胴体部外径 : φ35 胴体部内径 : φ22
中間部材外径: φ35 中間部材内径: φ24
中央
胴体部外径 : φ35 胴体部内径 : φ22
中間部材外径: φ34 中間部材内径: φ23
【0077】
【表2】
【0078】
表2では、第3実施形態のように中間部材を構成したときの応力を1として相対的に示している。表2から明らかなように、第3の実施形態のように中間部材を内側配置にすると、応力が低減される。
【0079】
本発明に関しては、添付されたクレームによって定義される本発明の意図および範囲から離れることなく、様々な変更、置換、代替が可能である。さらに、本発明では、明細書に記載された特定の実施形態のプロセス、装置、製造、構成物、手段、方法およびステップに限定されることを意図していない。当業者であれば、本発明の開示から、ここに記載された実施形態がもたらす機能と同様の機能を実質的に果たし、又は同等の作用、効果を実質的にもたらす装置、手段、方法が導かれることを認識するであろう。したがって、添付した請求の範囲は、そのような装置、手段、方法の範囲に含まれることが意図されている。
【0080】
本願は、日本出願(特願2013−197078号、2013年9月24日出願)を基礎出願として優先権主張する出願であり、基礎出願の明細書、図面およびクレームを含む開示内容は、参照することによって本願全体に組み入れられている。
【符号の説明】
【0081】
10 放電ランプ
30 陽極
32 胴体部材
36 蓋部材
40 中間部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12