特許第6400488号(P6400488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6400488インキ供給制御装置及びこれを用いた印刷システム並びにインキ供給制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400488
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】インキ供給制御装置及びこれを用いた印刷システム並びにインキ供給制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/00 20060101AFI20180920BHJP
   B41F 31/04 20060101ALI20180920BHJP
   B41F 31/12 20060101ALI20180920BHJP
   B41F 31/13 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   B41F33/00 242
   B41F33/00 246
   B41F33/00 210
   B41F33/00 280
   B41F31/04
   B41F31/12
   B41F31/13
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-6951(P2015-6951)
(22)【出願日】2015年1月16日
(65)【公開番号】特開2016-132118(P2016-132118A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】年藤 孝英
(72)【発明者】
【氏名】竹本 衆一
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅靖
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−119854(JP,A)
【文献】 特開平11−070636(JP,A)
【文献】 特開平11−151799(JP,A)
【文献】 特開昭59−071863(JP,A)
【文献】 米国特許第4193345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 31/00 − 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ壷を形成するインキ元ローラと複数のインキキーとを備え、前記インキ元ローラの回転速度と前記各インキキーの開度とによって前記インキ壷からのインキ供給量を調整する壺式のインキ供給装置と、印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置とを有する印刷システムに装備され、前記色調制御装置の設定情報に基づいて前記インキ供給量を制御するインキ供給制御装置であって、
前記インキ元ローラの回転速度を制御するインキ元ローラ制御手段と、
前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御するインキキー制御手段と、
印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立したか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記制御条件が成立したと判定されると、前記各インキキーの開度の状態に基づいて前記インキ元ローラの回転速度を調整する
インキ供給制御装置。
【請求項2】
前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が含まれ、
前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記第1制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量減少させる
請求項1記載のインキ供給制御装置。
【請求項3】
前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が含まれ、
前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記第2制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量増加させる
請求項1又は2記載のインキ供給制御装置。
【請求項4】
前記インキ元ローラ制御手段は、印刷開始時には、印刷速度に対応して設定された基準速度に基づいて前記インキ元ローラの回転速度の制御を開始する
請求項1〜3の何れか1項に記載のインキ供給制御装置。
【請求項5】
前記インキキー制御手段は、印刷開始時には、各インキキーのゾーンの画線率に対応して設定された基準開度に基づいて前記各インキキーの開度をプリセットし、その後、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御する
請求項1〜4の何れか1項に記載のインキ供給制御装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減状態から印刷物の色調が安定したか否かを判定する
請求項1〜5の何れか1項に記載のインキ供給制御装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減量が所定値以内の状態が所定時間継続したら、印刷物の色調が安定したと判定する
請求項6記載のインキ供給制御装置。
【請求項8】
インキ供給装置を備えた印刷装置と、
前記印刷装置で印刷される印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置と、
前記色調制御装置による設定情報に基づいて前記インキ供給装置によるインキ供給量を制御する、請求項1〜7の何れか1項に記載のインキ供給制御装置と、を有する
印刷システム。
【請求項9】
前記色調制御装置は、
インラインで印刷後の色の色調を計測する測色手段と、
前記測色手段により計測された測色値と、予め設定された色目標値とを比較して、インキ供給量の増減量を設定する設定手段と、を有している
請求項8記載の印刷システム。
【請求項10】
インキ壷を形成するインキ元ローラと複数のインキキーとを備え、前記インキ元ローラの回転速度と前記各インキキーの開度とによって前記インキ壷からのインキ供給量を調整する壺式のインキ供給装置と、印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置とを有する印刷システムにおいて、前記色調制御装置の設定情報に基づいてインキ供給量を制御するインキ供給制御方法であって、
前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにより前記制御条件が成立したと判定されると、前記各インキキーの開度の状態に基づいて前記インキ元ローラの回転速度を調整するインキ元ローラ調整ステップとを有する
インキ供給制御方法。
【請求項11】
前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が含まれ、
前記インキ元ローラ調整ステップでは、前記判定ステップにより前記第1制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量減少させる
請求項10記載のインキ供給制御方法。
【請求項12】
前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が含まれ、
前記インキ元ローラ調整ステップでは、前記判定ステップにより前記第2制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量増加させる
請求項10又は11記載のインキ供給制御方法。
【請求項13】
印刷開始時には、印刷速度に対応して設定された基準速度に基づいて前記インキ元ローラの回転速度の制御を開始すると共に、各インキキーのゾーンの画線率に対応して設定された基準開度に基づいて前記各インキキーの開度をプリセットする始動ステップと、
前記始動ステップの開始後に、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御する色調制御ステップと、を備え、
前記色調制御ステップの実施中に、前記判定ステップ及び前記インキ元ローラ調整ステップを実施する
請求項10〜12の何れか1項に記載のインキ供給制御方法。
【請求項14】
前記色調制御装置は、
インラインで印刷後の色の色調を計測する測色手段と、
前記測色手段により計測された測色値と、予め設定された色目標値とを比較して、インキ供給量の増減量を設定する設定手段と、を有し、
前記測色手段と前記設定手段とを用いて前記色調制御ステップを実施する
請求項13記載のインキ供給制御方法。
【請求項15】
前記判定ステップでは、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減状態から印刷物の色調が安定したか否かを判定する
請求項10〜14の何れか1項に記載のインキ供給制御方法。
【請求項16】
前記判定ステップでは、前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減量が所定値以内の状態が所定時間継続したら、印刷物の色調が安定したと判定する
請求項15記載のインキ供給制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ供給制御装置及びこれを用いた印刷システム並びにインキ供給制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機には、刷版にインキを供給するインキ供給装置(以下、インキング装置とも言う)が装備される。主なインキング装置の種類には、デジタルインキング装置と、壺式インキング装置とがある。ただし、これらの種類は、印刷機によって適不適がある。
【0003】
デジタルインキング装置は、印刷幅方向を複数に分割し、各分割部分に対応してインキを吐出するポンプ機構を配置し、それぞれのポンプ機構でインキ量を積極的に制御することが可能である。ただし、ポンプ内は元配管から密閉状態であるのでインキの交換には適さない。
【0004】
一方、壺式インキング装置は、インキ壺というインキ溜にインキを上部から入れるオープンな構造なので容易にインキの交換を行なえる。インキ壺は、その一部を、印刷幅方向に複数並べられたインキキーと印刷幅の全幅に及ぶインキ元ローラとで区画され、インキ壺内のインキは、インキキーとインキ元ローラとの隙間からインキ元ローラの外周面に供給され、下流のインキングローラに供給される。
【0005】
この壺式インキング装置の場合には、各インキキーとインキ元ローラとの隙間の開度の調整でインキ供給量を制御でき、速度可変モータで単独駆動されるインキ元ローラの回転速度によってもインキ供給量を制御できる。インキキーの開度調整ではインキキーの幅単位にインキ供給量を制御でき、インキ元ローラの回転速度では、印刷幅の全幅に亘って同時にインキ供給量を制御できる。
【0006】
例えば、新聞輪転機の4×2(4ページ幅で倍胴の版胴)又は4×1(4ページ幅で単胴の版胴)の輪転機の場合、1印刷ユニットの片面で4ページ分の新聞の印刷を実施することになる。印刷ユニットへどのような絵柄が割りつくかは、当日の各新聞紙面の絵柄だけでなく、カラー面の配置や総ページ数で毎日変わり、新聞特有の替り面でも変わってくる。このため、速やかにインキの交換ができる壺式インキング装置が適している。
【0007】
このような壺式インキング装置を用いてインキ供給を制御する技術は、例えば、特許文献1,2に開示されている。
特許文献1には、インキ元ローラの基準回転速度における絵柄面積率とインキキー開度との関係を規定する基準変換関数を一つ用意し、インキ元ローラの回転速度を基準回転速度から変更した場合には、基準変換関数に基づき絵柄面積率とインキ供給量との関係を演算し、この関係から変更したインキ元ローラ回転速度における新たな変換関数を演算し、これに基づき、各インキキーゾーンの絵柄面積率に対応したインキキー開度に調整する技術が記載されている。
【0008】
特許文献2には、目標の印刷色調を設定し、印刷したシートの色調をセンサで検出し、検出した色調が目標の印刷色調に近づくように、インキキー開度を自動で制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−1262号公報
【特許文献2】特許第4202342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、インキ元ローラの回転速度は、印刷速度に対して回転速度を規定した関数を用いて設定される。この関数は、様々な観点から設定される。例えば、印刷幅全域において最も画線率が高い印刷領域に合わせて、十分にインキ供給量を確保できるように、印刷速度に対するインキ元ローラの回転速度を高めに設定する場合がある。つまり、高画線率の印刷領域に対して高い濃度を得たい場合にはインキ供給量を多く確保する必要があるので、インキ元ローラの回転速度を高めに設定して、画線率が高い印刷領域に確実な量のインキが供給されるようにしている。
【0011】
しかし、インキ元ローラは印刷幅の全幅に亘ってインキ供給量を調整するため、例えば4ページ幅の版胴を有する新聞輪転機の場合、4ページの中には、画線率の高い領域(例えば、全面広告のページ)もあれば画線率の低い領域(例えば、テレビ番組欄のページ)もある。この場合、画線率の高低は、ページ単位で判定することもできるが、ページ内を更に区分した領域の単位で判定することもできる。
【0012】
標準状態では、インキ元ローラの回転速度はすべての画線率が所定の濃度で印刷できるように設定されるが、前述のように高画線率の印刷領域に対して高い濃度を得たい場合、インキ元ローラの回転速度が最大画線率の印刷領域に合わせて高めに設定されると、必然的に、低画線率(例えば、極小絵柄)の印刷領域では、インキキー開度を小さくしてインキ供給量を制御することとなる。この場合、限られた狭い範囲(調整幅)でインキキー開度をを調整しなければならない。また、制御の分解能的にも高画線率の場合に比べてSN的に劣る部分を使用することとなる。
【0013】
図5は壺式インキング装置のインキ壺の断面図であり、図5に示すように、インキ壷1は、インキ元ローラ2とインキ元ローラ2の軸方向に並設された複数のインキキー3とを有し、インキ元ローラ2とインキキー3と図示しない側壁とで区画形成される容器がインキを蓄えるインキ壷となっている。
【0014】
インキ壷1内のインキは、インキ元ローラ2とインキキー3との隙間4からインキ元ローラ2の外周面に供給され、インキ元ローラ2からこれに隣接するインキ受け渡しローラ5に供給され、図示しないインキングローラ群に供給される。このときのインキの供給量は、隙間4の大きさ、即ち、インキキー開度と、インキ元ローラ2の回転速度に依存するが、インキキー開度があまりに小さいと、インキ元ローラ2の外周面のインキ膜厚tが不十分となり、インキ元ローラ2からインキ受け渡しローラ5にインキが供給されなくなる。
【0015】
図6はインキ元ローラ2上のインキ膜厚とインキ供給量との対応関係を示す図であり、図6に示すように、インキ膜厚に対してインキ供給量は線形又は略線形に増加するが、インキ膜厚が一定以下になると、インキ供給量は急減して0になってしまう。このように、インキキー開度が小さい領域では、インキがインキ元ローラ2から受け渡しローラ5に転移しないおそれもあり、転移する領域であっても僅かなインキ膜厚の増減、即ち、僅かなインキキー開度の変更でインキ供給量は大きく変化し安定しない。
【0016】
また、標準的な画線率に合わせて、印刷速度に対するインキ元ローラの回転速度を設定する場合もある。つまり、標準的な中程度の画線率の場合に、インキキー開度が中開度になるように、印刷速度に対するインキ元ローラの回転速度を設定するのである。この場合には、低画線率の印刷領域において必要なSN比が得られやすくなるが、高画線率の印刷領域において、インキキー開度を全開にしても必要なインキ供給量が得られないおそれが発生する。
【0017】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、インキ元ローラの回転速度を簡便に制御して、様々な画線率の印刷領域に対して、確実に且つ精度よくインキ供給量を制御することができるようにした、インキ供給制御装置及びこれを用いた印刷システム並びにインキ供給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(1)上記の目的を達成するために、本発明のインキ供給制御装置は、インキ壷を形成するインキ元ローラと複数のインキキーとを備え、前記インキ元ローラの回転速度と前記各インキキーの開度とによって前記インキ壷からのインキ供給量を調整する壺式のインキ供給装置と、印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置とを有する印刷システムに装備され、前記色調制御装置の設定情報に基づいて前記インキ供給量を制御するインキ供給制御装置であって、前記インキ元ローラの回転速度を制御するインキ元ローラ制御手段と、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御するインキキー制御手段と、印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立したか否かを判定する判定手段と、を備え、前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記制御条件が成立したと判定されると、前記各インキキーの開度の状態に基づいて前記インキ元ローラの回転速度を調整する。
【0019】
(2)前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が含まれ、前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記第1制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量減少させることが好ましい。
【0020】
(3)前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が含まれ、前記インキ元ローラ制御手段は、前記判定手段により前記第2制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量増加させることが好ましい。
【0021】
(4)前記インキ元ローラ制御手段は、印刷開始時には、印刷速度に対応して設定された基準速度に基づいて前記インキ元ローラの回転速度の制御を開始することが好ましい。
【0022】
(5)前記インキキー制御手段は、印刷開始時には、各インキキーのゾーンの画線率に対応して設定された基準開度に基づいて前記各インキキーの開度をプリセットし、その後、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御することが好ましい。
【0023】
(6)前記判定手段は、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減状態から印刷物の色調が安定したか否かを判定することが好ましい。
【0024】
(7)前記判定手段は、前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減量が所定値以内の状態が所定時間継続したら、印刷物の色調が安定したと判定することが好ましい。
【0025】
(8)本発明の印刷システムは、インキ供給装置を備えた印刷装置と、前記印刷装置で印刷される印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置と、前記色調制御装置による設定情報に基づいて前記インキ供給装置によるインキ供給量を制御する、上記のインキ供給制御装置と、を有する。
【0026】
(9)前記色調制御装置は、インラインで印刷後の色の色調を計測する測色手段と、前記測色手段により計測された測色値と、予め設定された色目標値とを比較して、インキ供給量の増減量を設定する設定手段と、を有していることが好ましい。
【0027】
(10)本発明のインキ供給制御方法は、インキ壷を形成するインキ元ローラと複数のインキキーとを備え、前記インキ元ローラの回転速度と前記各インキキーの開度とによって前記インキ壷からのインキ供給量を調整する壺式のインキ供給装置と、印刷物が目標の色調になるようにインキ供給量の増減量を設定する色調制御装置とを有する印刷システムにおいて、前記色調制御装置の設定情報に基づいてインキ供給量を制御するインキ供給制御方法であって、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにより前記制御条件が成立したと判定されると、前記各インキキーの開度の状態に基づいて前記インキ元ローラの回転速度を調整するインキ元ローラ調整ステップとを有する。
【0028】
(11)前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が含まれ、前記インキ元ローラ調整ステップでは、前記判定ステップにより前記第1制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量減少させることが好ましい。
【0029】
(12)前記制御条件には、前記印刷物の色調が安定し且つ前記インキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が含まれ、前記インキ元ローラ調整ステップでは、前記判定ステップにより前記第2制御条件が成立したと判定され且つ前記各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、前記インキ元ローラの回転速度を微少量増加させることが好ましい。
【0030】
(13)印刷開始時には、印刷速度に対応して設定された基準速度に基づいて前記インキ元ローラの回転速度の制御を開始すると共に、各インキキーのゾーンの画線率に対応して設定された基準開度に基づいて前記各インキキーの開度をプリセットする始動ステップと、前記始動ステップの開始後に、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて前記各インキキーの開度を制御する色調制御ステップと、を備え、前記色調制御ステップの実施中に、前記判定ステップ及び前記インキ元ローラ調整ステップを実施することが好ましい。
【0031】
(14)前記色調制御装置は、インラインで印刷後の色の色調を計測する測色手段と、前記測色手段により計測された測色値と、予め設定された色目標値とを比較して、インキ供給量の増減量を設定する設定手段と、を有し、前記測色手段と前記設定手段とを用いて前記色調制御ステップを実施することが好ましい。
【0032】
(15)前記判定ステップでは、前記色調制御装置の前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減状態から印刷物の色調が安定したか否かを判定することが好ましい。
【0033】
(16)前記判定ステップでは、前記設定情報に基づいて、インキ供給量の増減量が所定値以内の状態が所定時間継続したら、印刷物の色調が安定したと判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、印刷物の色調が安定し且つインキ元ローラの回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立すると、各インキキーの開度の状態に基づいてインキ元ローラの回転速度を調整するので、各インキキーの開度を適切な開度領域で調整することができるようになる。
【0035】
例えば、印刷物の色調が安定し且つインキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が成立し且つ各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、インキ元ローラの回転速度を微少量減少させる。インキ元ローラの回転速度を減少させると単位時間当たりのインキ送り量が減少し、その分、インキキー開度を大きくしてインキ供給量を調整することになるので、画線率の小さい印刷領域であっても、インキキー開度の大きい領域でインキ供給量を調整でき、確実に且つ精度よくインキ供給量を制御することができるようになる。
【0036】
また、印刷物の色調が安定し且つインキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が成立し且つ各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、インキ元ローラの回転速度を微少量増加させる。インキ元ローラの回転速度を増加させると単位時間当たりのインキ送り量が増加し、その分、インキキー開度を小さくしてインキ供給量を調整することになるので、何れのインキキーの開度も上限開度以内に収まるようにすることができ、必要なインキ供給量を確実に得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施形態にかかるインキ供給制御装置及び印刷システムを示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる濃度自動制御システム(色調制御装置)を中心に印刷システムを説明する構成図である。
図3】本発明の一実施形態にかかるインキ元ローラの回転速度の制御を説明する図である。
図4】本発明の一実施形態にかかるインキ元ローラの回転速度の制御を説明するフローチャートである。
図5】一般的な壺式インキング装置(インキ供給装置)を示す模式的側面図である。
図6】インキ元ローラ上のインキ膜厚とインキ供給量との対応関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。以下の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができるとともに、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることが可能である。
【0039】
〔構成〕
本実施形態にかかる印刷システムは、例えば、4×2(4ページ幅で倍胴の版胴)又は4×1(4ページ幅で単胴の版胴)の新聞輪転機に適用されている。
この印刷システムは、図1に示すように、インキ供給装置10を備えた印刷装置Pと、インキ供給制御装置20と、濃度自動制御システム(色調制御装置)30と、を備えて構成される。
【0040】
インキ供給装置10は、インキ元ローラ2及びインキ元ローラ2の軸方向に並設された複数のインキキー3を有し、これらのインキ元ローラ2とインキキー3と図示しない側壁とで区画形成される容器であってインキを蓄えるインキ壷1を有する壺式のインキ供給装置である。インキ供給装置10は、各インキ色の印刷装置Pにそれぞれ装備される。
【0041】
インキ壷1内のインキは、インキ元ローラ2とインキキー3との隙間4からインキ元ローラ2の外周面に供給され、インキ元ローラ2の外周面からこれに隣接するインキ受け渡しローラ5の外周面に供給され、図示しないインキングローラ群に供給される。インキの供給量は、隙間4の大きさ、即ち、インキキー3の開度と、インキ元ローラ2の回転速度に依存し、これらインキキー開度及びインキ元ローラ2の回転速度は、インキ供給制御装置20により制御される。
【0042】
インキ元ローラ2は、単独駆動用のインキ元ローラモータ(図示略)を備え、このインキ元ローラモータを制御することにより、回転速度を制御される。もちろん、操作パネル23を通じてオペレータの手動でインキ元ローラ2の回転速度を調整することもできる。
インキキー3は印刷幅方向に多数が並べて配置され、それぞれのインキキー3が各アクチュエータにより個別に開度を調整される。もちろん、操作パネル25を通じてオペレータの手動でインキキー3を調整することもできる。
【0043】
インキ供給制御装置20は、コンピュータ等を用いて構成されたインキ制御部(制御装置本体)21と、インキ制御部21に付設された操作パネル23,25とを備えて構成される。インキ制御部21には、インキ元ローラモータを制御するインキ元ローラ制御部(インキ元ローラ制御手段)22と、各インキキー3のアクチュエータをそれぞれ制御するインキキー制御部(インキキー制御手段)24と、をそなえている。
【0044】
インキ元ローラ制御部22は、印刷速度を、これに対応するインキ元ローラ2の回転速度に変換する速度変換関数が記憶されており、印刷速度の情報を常時入力され、速度変換関数を用いて印刷速度からインキ元ローラ2の回転速度(目標回転速度)に関数変換し、インキ元ローラ2の回転速度が、この関数変換した出力(目標回転速度)になるようにインキ元ローラモータを制御する。したがって、印刷速度が定常状態であれば、目標回転速度は一定となり、インキ元ローラ2の一定の回転速度で回転し、印刷速度が変化すれば印刷速度を関数変換した回転速度で回転する(関数常時制御)。
【0045】
なお、速度変換関数は、当然ながら印刷速度が上昇するほどインキ元ローラ2の回転速度も上昇するように設定されているが、印刷装置の特性に応じて設定される。さらに、インキ,印刷用紙等の印刷資材の種類によっても最適な速度変換関数は異なるので、例えば、複数の速度変換関数を用意し、印刷資材の種類等に応じて選択して使用するなどによって対応することができる。
【0046】
インキキー制御部24は、始動時には、画線率に対するインキキー開度を規定した公知のAPI関数(オートプリセットインキング関数)を用いて、画線率に応じた開度にインキキー3の開度をプリセットする。その後は、濃度自動制御システム30の指令(インキ供給量の増減情報)に基づいて、インキキー開度を増減調整する。
【0047】
API関数は、印刷面上に供給されるインキ膜厚が基準膜厚になるようにインキキー開度を設定するもので、やはり、インキ,印刷用紙等の印刷資材の種類によっても印刷面上のインキ膜厚を基準膜厚にするインキキー開度は異なるので、例えば、複数のAPI関数を用意し、印刷資材の種類等に応じて選択して使用することによって対応することができる。
【0048】
濃度自動制御システム30は、図2に示すように、インラインで印刷後の色の色調を計測する測色センサ(測色手段)31と、測色センサ31により計測された測色値と、予め設定された色目標値とを比較して、各インキ(例えば、CMYKの各インキ)のインキ供給量の増減を設定する濃度制御部(設定手段)32と、を有している。
【0049】
そして、印刷されたウェブ100に対して測色センサ31により検出された実際の測色値に基づいて、印刷した紙面200Bの色を印刷見本200Aの色と比較しながら例えばCMYKの各インキキーを制御し、実際の色を目標の色に近づける色調制御を実施する。なお、上記比較時には、紙面200A,200Bの特定の絵柄やその絵柄の一部などの最も色調を合わせたい要部201A,201Bを比較することが好ましい。
【0050】
この濃度自動制御システム30では、印刷幅方向の各領域(例えば、所定数のインキキーグループの領域、或いは、印刷ページ単位)毎に、各色のインキのインキ供給量の増減を設定し、この設定した増減情報(設定情報)をインキ制御部21に出力する。この増減情報は、インキキー開度の増加量情報又は減少量情報であり、インキ供給量が不足していれば増加量情報を、インキ供給量が過剰であれば減少量情報を設定する。
【0051】
このとき、濃度自動制御システム30では、インキ元ローラ制御部22から現在値(インキ元ローラ2の回転速度の現在値)を、インキキー制御部24から現在値(各インキキー3の開度の現在値)を、それぞれ取得して、各現在値に応じた各インキキー開度の制御量(増加量又は減少量)を設定し、この設定情報をインキキー制御部24に出力する。インキキー制御部24では、増減にかかる設定情報に基づいて、各インキ色のインキ供給装置10のそれぞれのインキキー開度を個別に制御する。
【0052】
インキ制御部21には、濃度調整支援部26が設けられている。この濃度調整支援部26は、濃度自動制御システム30の動作と連携して、インキ元ローラ制御部22によるインキ元ローラ2の回転速度の制御を支援する。つまり、濃度調整支援部26は、濃度自動制御システム30による制御状況と、インキ元ローラ制御部22からのインキ元ローラ2の回転速度の現在値の情報及びインキキー制御部24からの各インキキー3の開度の現在値の情報に基づいて、インキ元ローラ2の回転速度の制御を支援する。
【0053】
濃度調整支援部26は、濃度自動制御システム30による色調制御中に色調が安定し且つインキ元ローラ2の回転速度が制御可能域にあるという制御条件が成立したか否かを判定する判定部(判定手段)26aを有し、判定部26aにより制御条件が成立したことを判定したら、各インキキーの開度の状態に基づいて、インキ元ローラ2の回転速度の調整情報を設定し、設定結果をインキ元ローラ制御部22に送る。
【0054】
なお、判定部26aにおける印刷物の色調が安定したか否かの判定は、インキ供給量の増減状態に基づいて行なう。ここでは、濃度自動制御システム30により設定されるインキ供給量の変化量(増減量)が微小な所定値以下の状態が所定時間以上続いた場合に、印刷物の色調が安定したと判定する。この微小な所定値や所定時間は、試験結果等から適宜設定する。
【0055】
また、インキ元ローラ2の回転速度が制御可能域にあるとは、インキ元ローラ2の回転速度が調整可能な領域内(調整下限速度よりも大きく且つ調整上限速度よりも小さい)にあることをいう。調整下限速度は、調整が不可能となる下限速度に対して余裕をもった速度、即ち、下限速度に対してやや速い速度とする。また、調整上限速度は、調整が不可能となる上限速度に対して余裕をもった速度、即ち、上限速度に対してやや遅い速度とする。
【0056】
判定部26aでは、インキ元ローラ2の回転速度の操作状況をインキ元ローラ制御部22の現在値から把握して、この回転速度の現在値を、予め設定された調整下限速度及び調整上限速度と比較して、インキ元ローラ2の回転速度が制御可能域にあるかを判定する。
【0057】
濃度調整支援部26は、制御条件が成立したら、インキキー制御部24から各インキキーの開度の現在値を取得して、取得した各インキキーの開度の現在値に基づいて、インキ元ローラ2の回転速度の調整情報を設定するが、具体的には、各インキキー3の開度の現在値を上限開度と比較して、この結果に基づいて、インキ元ローラ2の回転速度の調整を設定する。なお、上限開度は、最大開度(例えば調整目盛100)に対して余裕を持った値(例えば調整目盛80程度)とする。
【0058】
つまり、濃度調整支援部26は、各インキキー3の開度の現在値を上限開度と比較して、各インキキー3の開度の現在値が何れも上限開度以内である場合には、インキ元ローラ2の回転速度を微少量減少させるように調整情報を設定する。一方、各インキキー3の開度の現在値の何れかが上限開度よりも大きな値である場合には、インキ元ローラ2の回転速度を微少量増加させるように調整情報を設定する。
【0059】
例えば、濃度調整支援部26では調整情報として、増減割合(微調%)Rを設定することができる。つまり、インキ元ローラ2の回転速度を微少量減少させる場合には、回転速度を例えば0.01(1%)だけ減少させるように増減割合Rを0.99(99%)とし、インキ元ローラ2の回転速度を微少量増加させる場合には、回転速度を例えば0.01(1%)だけ増加させるように増減割合Rを1.01(101%)とする。
【0060】
したがって、調整情報として増減割合Rを設定した場合には、濃度調整支援部26からインキ元ローラ2の回転速度の調整情報を送られたインキ元ローラ制御部22は、印刷速度を関数出力された目標回転速度に対して増減割合Rを乗算し、この乗算値を新たな目標回転速度としてインキ元ローラモータを制御する。
【0061】
このように、インキ元ローラ制御部22がインキ元ローラ2の回転速度を制御するので、各インキキー3の開度の現在値が何れも上限開度以内である場合には、インキ元ローラ2の回転速度を微少量減少させるため、濃度自動制御システム30による色調制御によって、インキ元ローラ2の回転速度の減少分に応じて各インキキー3の開度が増加されることになり、各インキキー3の開度が上限開度に接近する。
【0062】
また、インキ元ローラ制御部22は、各インキキー3の開度の現在値の何れかが上限開度よりも大きな値である場合には、インキ元ローラ2の回転速度を微少量増加させるため、濃度自動制御システム30による色調制御によって、インキ元ローラ2の回転速度の増加分に応じて各インキキー3の開度が減少されることになり、各インキキー3の開度が上限開度以内に収まるようになる。
【0063】
〔作用及び効果〕
本発明の一実施形態にかかるインキ供給制御装置及びこれを備えた印刷システムは、上述のように構成されているので、例えば図4のフローチャートに示すように、インキ元ローラ2の回転速度を調整することができる。このフローチャートは所定の制御周期で実施される。
【0064】
なお、本実施形態にかかる印刷システムによる印刷開始時には、印刷速度に対応して設定された基準速度に基づいてインキ元ローラ2の回転速度の制御を開始すると共に、各インキキー3のゾーンの画線率に対応して設定された基準開度に基づいて各インキキーの開度をプリセットする(始動ステップ)。この始動ステップの開始後に、濃度自動制御システム30の設定情報に基づいて各インキキーの開度を制御する(色調制御ステップ)。図4に示すインキ元ローラ2の回転速度の調整は、この色調制御ステップの実施中に行われる。
【0065】
つまり、まず、濃度自動制御システム30による自動濃度制御状態をチェックし(ステップS10)、判定部26aで印刷物の色調が安定したか否かを判定する(ステップS20)。色調が安定したら、各インキキー3(例えば、1胴分で全32キー)の開度の現在値をチェックし(ステップS30)、各インキキーの現在値が上限(上限開度)に達しているかを判定する(ステップS40)。以上のステップS10〜S40が判定ステップである。
【0066】
各インキキー3の開度の現在値が何れも上限に達していなければ、インキ元ローラ2の回転速度の現在値をチェックし(ステップS50)、インキ元ローラ2の回転速度の現在値が微調下限(調整下限速度)に達しているかを判定する(ステップS60)。インキ元ローラ2の回転速度の現在値が微調下限に達していなければ、インキ元ローラ2の回転速度を微小量だけ減少させる(ステップS70、インキ元ローラ調整ステップ)。
【0067】
一方、各インキキー3の開度の現在値の何れかが上限に達していれば、インキ元ローラ2の回転速度の現在値をチェックし(ステップS80)、インキ元ローラ2の回転速度の現在値が微調上限(調整上限速度)に達しているかを判定する(ステップS90)。インキ元ローラ2の回転速度の現在値が微調上限に達していなければ、インキ元ローラ2の回転速度を微小量だけ増加させる(ステップS100、インキ元ローラ調整ステップ)。
【0068】
このようにして、色調が安定したと判定され且つインキ元ローラ2の回転速度が調整下限速度よりも大きいという制御条件(第1制御条件)が成立し、各インキキー3の開度の現在値が何れも上限に達していなければ、インキ元ローラ2の回転速度を微少量減少させるので、濃度自動制御システム30による色調制御によって、インキ元ローラ2の回転速度の減少分に応じて各インキキー3の開度が増加されることになり、各インキキー3の開度が上限開度に接近する。
【0069】
また、色調が安定し且つ記インキ元ローラ2の回転速度が調整上限速度よりも小さいという制御条件(第2制御条件)が成立し、各インキキー3の開度の現在値の何れかが上限開度よりも大きな値であれば、インキ元ローラ2の回転速度を微少量増加させるので、濃度自動制御システム30による色調制御によって、インキ元ローラ2の回転速度の増加分に応じて各インキキー3の開度が減少されることになり、各インキキー3の開度が上限開度以内に収まるようになる。
【0070】
この結果、各インキキー3の開度は上限開度以内で且つ上限開度に近い比較的大きい開度状態で濃度自動制御システム30による色調制御を行なわれることになる。したがって、画線率の小さい印刷領域であっても、インキキー開度の大きい領域でインキ供給量を調整でき、確実に且つ精度よくインキ供給量を制御することができるようなる。また、各インキキー3の開度は上限開度以内に収まるので、画線率の大きな印刷領域において、インキキー開度を全開にしても必要なインキ供給量が得られなくなるようなおそれも回避され、確実に且つ精度よくインキ供給量を制御することができるようなる。
【0071】
特に、色調が安定したことを制御条件に含めているので、色調制御を実施しながらの印刷実施中に、印刷物の色調を適正に保ちながらインキキー開度の大きさを適正な領域に確実に操作することができ、効率よくインキキー開度の大きさを操作することができる。つまり、濃度自動制御システム30による色調制御は、各インキキー3の開度調整で行なうので、この色調制御が安定すると適正なインキ供給量を達成する各インキキー3の開度を把握することができる。
【0072】
そして、この把握した各インキキー3の開度から、各インキキー3の開度が適正な領域にあるかを正確に判定することができる。この判定結果に基づいて、インキ元ローラ2の回転速度を増減制御することによって、各インキキー3の開度を所望の領域で操作することができるようになり、確実に且つ精度よくインキ供給量を制御することができるようなるのである。
【0073】
また、インキ元ローラ2の回転速度の増減制御は、微少量ずつ行っているので、インキ元ローラ2の回転速度の増減に対応して各インキキー3の開度を調整しながら、印刷物の色調を目的の色調領域内に保持しつつ、インキキー開度を、上限開度以内で且つ上限開度に近い比較的大きい開度状態に操作することができる。この結果、インキキー開度を上限開度側に余裕を持ちつつSN比を十分に得た状態でインキキー3の開度制御を行なえるようになり、濃度自動制御システム30による色調制御を安定して行なうことができ、また、手動により色調制御を加える場合にも操作性が向上する。
【0074】
図3(b),(c)は4ページ幅の版胴11[図3(a)]を有する新聞輪転機において、インキ元ローラ2の回転速度を微少量減少させる場合の例を示している。
図3(b)に示すように、低画線率の領域(ここでは、ページ)201a,201bが高画線率の領域(ページ)201c,201dと混在していて、インキキーの現在値が上限に達している領域201dがあると、インキ元ローラ2の回転速度を低下させることはできず、インキ元ローラ2の回転速度を基準速度(±0)とする。
【0075】
一方、図3(c)に示すように、4ページ全てが低画線率の領域(ページ)201a,201b,201c,201dであれば、インキキーの現在値が上限に達しておらず、インキ元ローラ2の回転速度を低下させることができ、ここではインキ元ローラ2の回転速度を基準速度(±0)から50目盛分低下(−50%)させている。ただし、こうして、インキ元ローラ2の回転速度を低下させていっても、インキ元ローラ2の回転速度の低下は微調下限(調整下限速度)で規制される。
【0076】
〔その他〕
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
本発明は、何れかの制御条件が成立したと判定されると、各インキキーの開度の状態に基づいてインキ元ローラの回転速度を調整するものであれよく、上述の実施の形態に限定されない。
【0077】
例えば、上記の実施形態では、印刷物の色調が安定し且つインキ元ローラの回転速度が調整下限速度よりも大きいという第1制御条件が成立したと判定され且つ各インキキーの開度が何れも上限開度以内である場合には、インキ元ローラの回転速度を微少量減少させる第1の制御と、印刷物の色調が安定し且つインキ元ローラの回転速度が調整上限速度よりも小さいという第2制御条件が成立したと判定され且つ各インキキーの何れかの開度が上限開度よりも大きい場合には、インキ元ローラの回転速度を微少量増加させる第2の制御とを行なっているが、これらの制御の一方のみを行なうようにしても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 インキ壷
2 インキ元ローラ
3 インキキー
5 インキ受け渡しローラ
10 インキ供給装置
20 インキ供給制御装置
30 濃度自動制御システム(色調制御装置)
21 インキ制御部(制御装置本体)
22 インキ元ローラ制御部(インキ元ローラ制御手段)
23,25 操作パネル
24 インキキー制御部(インキキー制御手段)
26 濃度調整支援部
26a 判定部(判定手段)
31 測色センサ(測色手段)
32 濃度制御部(設定手段)
P 印刷装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6