(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記金属層が、上記焼結体の上記ベースフィルムとは反対面側に積層される銅めっき層をさらに含む請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板用基材。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の実施形態の説明]
本発明の一態様に係るプリント配線板用基材は、絶縁性を有するベースフィルムと、このベースフィルムの少なくとも一方の面に積層される金属層とを備え、上記金属層が、上記ベースフィルムに固着された銅粒子の焼結体(以下、単に「焼結体」ともいう)を含み、上記金属層の上記ベースフィルムとの界面から50nm以下の領域(以下、「界面近傍層」ともいう)における銅以外の金属の含有率が10at%以下のプリント配線板用基材である。
【0014】
ここで、上記「at%」は、原子組成百分率である。また、上記「銅以外の金属の含有率」は、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray spectrometry、以下「EDX」ともいう)による定量で得られる界面近傍層中の全金属の原子数及び銅以外の金属の原子数から、下記式により算出される含有率を指す。
銅以外の金属の含有率(at%)=(銅以外の金属の原子数/全金属の原子数)×100
【0015】
また、上記「銅以外の金属の含有率」は、さらに、X線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis又はXPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)、電子プローブマイクロアナリシス法(EPMA:Electron Probe Micro Analysis)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS:Time Of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、オージェ電子分光法(AES:Auger Electron Spectroscopy)、電子顕微鏡等を使って測定することもできる。また、これらの手法を組み合わせればさらに精度の高い測定も可能である。
【0016】
当該プリント配線板用基材は、ベースフィルムに固着された銅粒子の焼結体を含む金属層を用いるため、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基材は低コストで製造できる。また、当該プリント配線板用基材は、界面近傍層における銅以外の金属(異種金属)の含有率が10at%以下であるため、導電パターン間の異種金属の残存を抑制できる。
【0017】
上記ベースフィルムと上記金属層との間の剥離強度としては、1N/cm以上が好ましい。上記剥離強度を上記範囲とすることで、電気的な接続信頼性の高いプリント配線板を製造できる。なお、上記「剥離強度」は、JIS−C−6471(1995年)に準拠する180°方向引き剥がし試験で得られる剥離強度である。
【0018】
上記金属層が、上記焼結体内の空隙の少なくとも一部に充填されるめっき銅をさらに含むとよい。この構成によれば、金属層の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合に伝送損失を抑制できる。また、上記めっき銅が電解めっき銅であるとよい。この構成によれば、金属層の抵抗の低減と、異種金属の含有率の低減とを容易に両立させることができる。なお、上記「めっき銅」とは、めっきにより析出した銅又は銅合金を指す。
【0019】
上記銅粒子が、水溶液中で還元剤により銅イオンを還元する液相還元法によって得られたものであるとよい。上記銅粒子が上記液相還元法によって得られた粒子であると、気相法に比べて粒子を得る装置が比較的簡単となり、製造コストをより低減できる。また、水溶液中での攪拌等により、容易に銅粒子の粒子径を均一にすることができる。
【0020】
上記銅粒子の平均粒子径としては、1nm以上500nm以下が好ましい。上記銅粒子の平均粒子径を上記範囲とすることにより、ベースフィルムの一方の面に緻密で均一な焼結体を安定して形成できる。なお、上記「平均粒子径」は、分散液中の銅粒子の粒度分布の体積中心径D50で表される平均粒子径を指す。
【0021】
上記金属層の平均厚みとしては50nm以上が好ましい。この構成によれば、金属層の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合に伝送損失を抑制できる。なお、本明細書において「平均厚み」とは、対象物の厚み方向に切断した断面における測定長さ内の表面側の界面の平均線と、裏面側の界面の平均線との間の距離を指す。ここで、「平均線」とは、界面に沿って引かれる仮想線であって、界面とこの仮想線とによって区画される山の総面積(仮想線よりも上側の総面積)と谷の総面積(仮想線よりも下側の総面積)とが等しくなるような線を指す。
【0022】
上記ベースフィルムの主成分としては、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせが好ましい。これらの重合体は上記焼結体との結合力が高いため、上記ベースフィルムの主成分として上記の重合体を用いることにより、電気的な接続信頼性の高いプリント配線板を製造できる。なお、上記「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
【0023】
上記金属層が、上記焼結体の上記ベースフィルムとは反対面側に積層される銅めっき層をさらに含むとよい。この構成によれば、金属層を厚くすることができるため、例えばサブトラクティブ法によるプリント配線板の製造工程への適用が容易となる。
【0024】
本発明の他の一態様に係るプリント配線板は、導電パターンを有するプリント配線板であって、上記導電パターンが上記プリント配線板用基材の上記金属層の一部を含むプリント配線板である。
【0025】
当該プリント配線板は、上記プリント配線板用基材を用いて製造したものであるため、低コストで製造でき、かつ導電パターン間の異種金属の残存を抑制できる。よって、当該プリント配線板によれば、例えば回路の高密度化を低コストで実現できる。
【0026】
本発明のさらに他の一態様に係るプリント配線板用基材の製造方法は、絶縁性を有するベースフィルムの少なくとも一方の面に銅粒子を含むインクの塗布により塗膜を形成する工程、及び上記塗膜の焼成により上記銅粒子の焼結体を含む金属層を形成する工程を備え、上記金属層の上記ベースフィルムとの界面から50nm以下の領域における銅以外の金属の含有率を10at%以下とするプリント配線板用基材の製造方法である。
【0027】
当該プリント配線板用基材の製造方法は、銅粒子を含むインクを用いて金属層を形成するため、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基材の製造方法によれば、プリント配線板用基材を低コストで製造できる。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、界面近傍層における銅以外の金属(異種金属)の含有率を10at%以下とするため、導電パターン間の異種金属の残存を抑制できるプリント配線板用基材を容易かつ確実に製造できる。
【0028】
上記金属層形成工程において、上記焼結体内の空隙の少なくとも一部をめっき銅で充填するとよい。この構成によれば、金属層の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合、伝送損失を抑制できるプリント配線板用基材を容易かつ確実に製造できる。
【0029】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明の好適な実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0030】
<第1実施形態>
図1に、第1実施形態に係るプリント配線板用基材10の模式的断面図を示す。プリント配線板用基材10は、絶縁性を有するベースフィルム1と、ベースフィルム1の一方の面に積層される金属層2とを備える。金属層2は、ベースフィルム1に固着された銅粒子の焼結体3を含む。また、プリント配線板用基材10は、金属層2の界面近傍層2aにおける異種金属の含有率が10at%以下である。プリント配線板用基材10によれば、上記構成を備えるため、上述したように導電パターン間の異種金属の残存を抑制できるプリント配線板用基材を低コストで製造できる。なお、
図1では、説明を分かりやすくするために、焼結体3を構成する銅粒子を誇張して描いている。
【0031】
(ベースフィルム)
ベースフィルム1は絶縁性を有する。このベースフィルム1の主成分としては、例えばポリイミド、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、フッ素樹脂等の軟質材、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラス基材等の硬質材、軟質材と硬質材とを複合したリジッドフレキシブル材などを用いることができる。これらの中でも、焼結体3との結合力が高いことから、ポリイミド、液晶ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、及びこれらの組み合わせが好ましく、ポリイミドがより好ましい。なお、ベースフィルム1は、多孔化されたものでも良く、また、充填材、添加剤等を含んでもよい。また、プリント配線板用基材10をフレキシブルプリント配線板の製造に適用する場合、ベースフィルム1としては可撓性を有するものが好ましい。
【0032】
上記ベースフィルム1の厚みは、特に限定されないが、例えばベースフィルム1の平均厚みの下限としては、5μmが好ましく、12μmがより好ましい。また、ベースフィルム1の平均厚みの上限としては、2mmが好ましく、1.6mmがより好ましい。ベースフィルム1の平均厚みが上記下限未満の場合、ベースフィルム1の強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム1の平均厚みが上記上限を超える場合、薄型化が要求される電子機器への適用が困難となるおそれがある。
【0033】
後述するインクを用いて焼結体3を形成する場合は、ベースフィルム1の焼結体3が固着される面(固着面)に親水化処理を施すことが好ましい。上記親水化処理としては、例えばプラズマを照射して固着面を親水化するプラズマ処理や、アルカリ溶液で固着面を親水化するアルカリ処理を採用することができる。固着面に親水化処理を施すことにより、固着面に対するインクの表面張力が小さくなるので、インクを固着面に均一に塗布することができる。
【0034】
(金属層)
金属層2は、プリント配線板用基材10の導電層を構成する層であり、ベースフィルム1に固着された銅粒子の焼結体3を含む。この焼結体3の好適な形成方法については後述する。
【0035】
金属層2の界面近傍層2aにおける異種金属の含有率の上限としては、10at%であり、5at%が好ましく、1at%がより好ましく、0.5at%がさらに好ましく、0.1at%が特に好ましい。上記含有率を上記上限以下とすることにより、導電パターン間の異種金属の残存をより抑制できる。また、上記含有率を上記上限以下とすることにより、後述する焼結体3を形成する際に酸化銅が生成されやすくなるため、焼結体3とベースフィルム1との間の密着性を向上させることができる。なお、上記含有率の下限については、特に限定されず、例えばEDXによる検出限界値未満であってもよい。
【0036】
金属層2の平均厚みの下限としては、50nmが好ましく、100nmがより好ましい。また、金属層2の平均厚みの上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。金属層2の平均厚みを上記下限以上とすることにより、金属層2の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合に伝送損失を抑制できる。一方、金属層2の平均厚みが上記上限を超える場合、セミアディティブ法による配線形成に適用した際、導電パターン間の金属層2の除去に時間を要する傾向があるため、配線の高さを確保できなくなるおそれがある。
【0037】
(ベースフィルムと金属層との間の剥離強度)
ベースフィルム1と金属層2との間の剥離強度の下限としては、1N/cmが好ましく、1.5N/cmがより好ましく、2N/cmがさらに好ましく、5N/cmが特に好ましい。上記剥離強度を上記下限以上とすることで、電気的な接続信頼性の高いプリント配線板を製造できる。一方、上記剥離強度の上限としては、特に限定されないが、例えば20N/cm程度である。上記剥離強度は、例えばベースフィルム1に固着される焼結体3の量、後述するインク中の銅粒子のサイズ、後述する塗膜を焼成する際の焼成温度及び焼成時間等により制御できる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板用基材について
図2を参照しながら説明する。なお、
図2において、上述した
図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。また、上述した第1実施形態に係るプリント配線板用基材10と重複する内容については説明を省略する。後述する
図3〜
図5についても同様である。
【0039】
図2に示す第2実施形態に係るプリント配線板用基材20は、上述した第1実施形態に係るプリント配線板用基材10の構成において、金属層2がめっき銅4をさらに含むこと以外は同様の構成を有する。つまり、プリント配線板用基材20の金属層2は、焼結体3と、焼結体3の表面及び空隙に形成されためっき銅4とにより構成されている。この構成によれば、金属層2の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合に伝送損失を抑制できる。なお、
図2に示されるめっき銅4は、焼結体3の空隙を充填し、かつ焼結体3の表面(ベースフィルム1とは反対側面)を被覆しているが、焼結体3の空隙にめっき銅4を充填するだけでも金属層2の抵抗を下げることができる。
【0040】
めっき銅4は、無電解めっき銅であっても、電解めっき銅であってもよいが、めっき銅4として電解めっき銅を用いると、金属層2の抵抗の低減と、異種金属の含有率の低減とを容易に両立させることができる。なお、無電解めっき銅を用いる場合、金属層2の界面近傍層2aにおける異種金属の含有率を10at%以下にするために、異種金属ができるだけ少ない触媒及びめっき液によりめっき銅4を形成することが好ましい。
【0041】
焼結体3内の空隙をめっき銅4で充填する際、通常のめっき方法であれば、
図2に示すように焼結体3の表面もめっきされるが、この場合の金属層2の好ましい平均厚みの下限としては、50nmが好ましく、100nmがより好ましい。また、上記平均厚みの上限としては、2μmが好ましく、1.5μmがより好ましい。上記平均厚みを上記下限以上とすることにより、金属層2の抵抗をより低減できる。一方、上記平均厚みが上記上限を超えると、セミアディティブ法による配線形成に適用した際、導電パターン間の金属層2の除去に時間を要する傾向があるため、配線の高さを確保できなくなるおそれがある。
【0042】
なお、
図2では、焼結体3内の全ての空隙がめっき銅4で充填されているが、めっき銅4が上記空隙の一部に充填されるたけでも金属層2の抵抗を下げることができる。一方、焼結体3内に空隙が残存していると、この空隙部分が破壊起点となって金属層2がベースフィルム1から剥離するおそれがあるが、この剥離の防止を目的として焼結体3内の空隙をめっき銅4で充填する場合は、
図2に示すように焼結体3内の全ての空隙をめっき銅4で充填することが好ましい。
【0043】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るプリント配線板用基材について
図3を参照しながら説明する。
【0044】
図3に示す第3実施形態に係るプリント配線板用基材30は、上述した第2実施形態に係るプリント配線板用基材20の構成において、焼結体3のベースフィルム1とは反対面側に銅めっき層5が積層されていること以外は同様の構成を有する。つまり、プリント配線板用基材30の金属層2は、焼結体3及びめっき銅4により形成される層と、銅めっき層5とが積層された構造を有する。この構成によれば、金属層2を厚くすることができるため、例えばプリント配線板用基材30をサブトラクティブ法に用いるプリント配線板用基材に容易に適用できる。なお、
図3では、説明を分かりやすくするために、焼結体3及びめっき銅4により形成される層と、銅めっき層5との界面が明瞭となっているが、必ずしも明瞭となっている必要はない。
【0045】
銅めっき層5のめっき方法は、特に限定されず、無電解銅めっきであっても電解銅めっきであってもよく、めっきの手順についても限定されない。また、焼結体3の空隙をめっき銅4で充填した後、同じめっき処理を引き続き行うことにより銅めっき層5を形成してもよい。中でも、銅めっき層5のめっき方法として電解銅めっきを採用すると、金属層2の厚みの調整を容易かつ正確に行うことができ、また比較的短時間で銅めっき層5を形成することができる。
【0046】
銅めっき層5を含む金属層2の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、2μmがより好ましい。また、上記平均厚みの上限としては、100μmが好ましく、50μmがより好ましい。上記平均厚みが上記下限未満の場合、金属層2が損傷し易くなるおそれがある。一方、上記平均厚みが上記上限を超える場合、薄型化が要求される電子機器への適用が困難となるおそれがある。
【0047】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係るプリント配線板について
図4を参照しながら説明する。
【0048】
図4に示す第4実施形態に係るプリント配線板50は、上述した第3実施形態に係るプリント配線板用基材30を用いて形成されたプリント配線板である。つまり、プリント配線板50の導電パターン40は、プリント配線板用基材30の金属層2をパターニングしたものであり、金属層2の一部を含む。この際のパターニング方法としては、例えば金属層2にレジストパターン等のマスキングを施してエッチングする方法(サブトラクティブ法)を採用することができる。この第4実施形態に係るプリント配線板50によれば、上述したように低コストで製造でき、かつ導電パターン40間の異種金属の残存を抑制できる。よって、プリント配線板50によれば、例えば導電パターン40の間隔を容易に狭めることができるため、回路の高密度化を低コストで実現できる。
【0049】
<プリント配線板用基材の製造方法>
次に、本発明のプリント配線板用基材の製造方法の一実施形態について
図5A〜Dを参照しながら説明する。本実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法は、ベースフィルム1の一方の面に銅粒子6を含むインクの塗布により塗膜7を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう)、及び塗膜7の焼成により銅粒子6の焼結体3を含む金属層2を形成する工程(以下、「金属層形成工程」ともいう)を備え、金属層2の界面近傍層2aにおける異種金属の含有率を10at%以下とする。本実施形態に係るプリント配線板用基材の製造方法によれば、上述したように導電パターン間の異種金属の残存を抑制できるプリント配線板用基材を低コストで容易かつ確実に製造できる。以下、各工程について説明する。
【0050】
〔塗膜形成工程〕
本工程では、
図5Aに示すように、ベースフィルム1の一方の面に銅粒子6を含むインクを塗布し、例えば乾燥することにより塗膜7を形成する。なお、塗膜7には、上記インクの分散媒等が含まれていてもよい。
【0051】
(銅粒子)
上記インクに分散させる銅粒子6は、高温処理法、液相還元法、気相法等で製造することができる。中でも、液相還元法によれば、製造コストをより低減できる上、水溶液中での攪拌等により、容易に銅粒子6の粒子径を均一にすることができる。
【0052】
液相還元法によって銅粒子6を製造するためには、例えば水に銅粒子6を形成する銅イオンのもとになる水溶性の銅化合物と分散剤とを溶解させると共に、還元剤を加えて一定時間銅イオンを還元反応させればよい。液相還元法で製造される銅粒子6は、形状が球状又は粒状で揃っており、しかも微細な粒子とすることができる。上記銅イオンのもとになる水溶性の銅化合物としては、硝酸銅(II)(Cu(NO
3)
2)、硫酸銅(II)五水和物(CuSO
4・5H
2O)等を挙げることができる。
【0053】
上記還元剤としては、液相(水溶液)の反応系において、銅イオンを還元及び析出させることができる種々の還元剤を用いることができる。この還元剤としては、例えば水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ヒドラジン、3価のチタンイオンや2価のコバルトイオン等の遷移金属のイオン、アスコルビン酸、グルコースやフルクトース等の還元性糖類、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールなどが挙げられる。中でも、還元剤としては3価のチタンイオンが好ましい。なお、3価のチタンイオンを還元剤とする液相還元法は、チタンレドックス法という。チタンレドックス法では、3価のチタンイオンが4価に酸化される際の酸化還元作用によって銅イオンを還元し、銅粒子6を析出させる。チタンレドックス法で得られる銅粒子6は、粒子径が小さくかつ揃っているため、銅粒子6がより高密度に充填され、塗膜7をより緻密な膜に形成することができる。
【0054】
銅粒子6の粒子径を調整するには、銅化合物、分散剤及び還元剤の種類並びに配合割合を調整すると共に、銅化合物を還元反応させる際に、攪拌速度、温度、時間、pH等を調整すればよい。反応系のpHの下限としては7が好ましく、反応系のpHの上限としては13が好ましい。反応系のpHを上記範囲とすることで、微小な粒子径の銅粒子6を得ることができる。このときpH調整剤を用いることで、反応系のpHを上記範囲に容易に調整することができる。このpH調整剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の一般的な酸又はアルカリが使用できるが、特に周辺部材の劣化を防止するために、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン元素、硫黄、リン、ホウ素等の不純物を含まない硝酸及びアンモニアが好ましい。
【0055】
銅粒子6の平均粒子径の下限としては、1nmが好ましく、10nmがより好ましく、30nmがさらに好ましい。また、銅粒子6の平均粒子径の上限としては、500nmが好ましく、300nmがより好ましく、100nmがさらに好ましい。銅粒子6の平均粒子径が上記下限未満の場合、インク中での銅粒子6の分散性及び安定性が低下するおそれがある。一方、銅粒子6の平均粒子径が上記上限を超える場合、銅粒子6が沈殿し易くなるおそれがあると共に、インクを塗布した際に銅粒子6の密度が不均一になるおそれがある。
【0056】
インク中の銅粒子6の含有割合の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。また、インク中の銅粒子6の含有割合の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。銅粒子6の含有割合を上記下限以上とすることで、塗膜7をより緻密な膜に形成することができる。一方、銅粒子6の含有割合が上記上限を超えると、塗膜7の膜厚が不均一になるおそれがある。
【0057】
(その他の成分)
上記インクには、銅粒子6以外に分散剤が含まれていてもよい。この分散剤としては、特に限定されず、銅粒子6を良好に分散させることができる種々の分散剤を用いることができる。分散剤の分子量の下限としては、2,000が好ましく、分散剤の分子量の上限としては、30,000が好ましい。分子量が上記範囲の分散剤を用いることで、銅粒子6をインク中に良好に分散させることができ、塗膜7の膜質を緻密でかつ欠陥のないものにすることができる。上記分散剤の分子量が上記下限未満の場合、銅粒子6の凝集を防止して分散を維持する効果が十分に得られないおそれがある。一方、上記分散剤の分子量が上記上限を超える場合、分散剤の嵩が大きすぎて、塗膜7の焼成時において、銅粒子6同士の焼結を阻害してボイドを生じさせるおそれがある。また、分散剤の嵩が大きすぎると、塗膜7の緻密さが低下したり、分散剤の分解残渣が導電性を低下させるおそれがある。
【0058】
上記分散剤は、周辺部材の劣化防止の観点より、硫黄、リン、ホウ素、ハロゲン及びアルカリを含まないものが好ましい。好ましい分散剤としては、分子量が上記範囲にあるもので、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等のアミン系の高分子分散剤、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース等の分子中にカルボキシ基を有する炭化水素系の高分子分散剤、ポバール(ポリビニルアルコール)、スチレン−マレイン酸共重合体、オレフィン−マレイン酸共重合体、1分子中にポリエチレンイミン部分とポリエチレンオキサイド部分とを有する共重合体等の極性基を有する高分子分散剤などを挙げることができる。
【0059】
上記分散剤は、水又は水溶性有機溶媒に溶解させた溶液の状態でインクに配合することもできる。インクに分散剤を配合する場合、分散剤の含有割合の下限としては、100質量部の銅粒子6に対して1質量部が好ましい。また、分散剤の含有割合の上限としては、100質量部の銅粒子6に対して60質量部が好ましい。上記分散剤の含有割合が上記下限未満の場合、銅粒子6の凝集防止効果が不十分となるおそれがある。一方、上記分散剤の含有割合が上記上限を超える場合、塗膜7の焼成時に過剰の分散剤が銅粒子6の焼結を阻害してボイドが発生するおそれがあり、また、分散剤の分解残渣が不純物として焼結体3中に残存して導電性を低下させるおそれがある。
【0060】
上記インクにおける分散媒としては、例えば水が使用できる。水を分散媒とする場合、水の含有割合の下限としては、100質量部の銅粒子6に対して20質量部が好ましい。また、水の含有割合の上限としては、100質量部の銅粒子6に対して1,900質量部が好ましい。分散媒である水は、例えば分散剤を十分に膨潤させて分散剤で囲まれた銅粒子6を良好に分散させる役割を果たすが、上記水の含有割合が上記下限未満の場合、この分散剤の膨潤効果が不十分となるおそれがある。一方、上記水の含有割合が上記上限を超える場合、インク中の銅粒子6の含有割合が少なくなり、必要な厚みと密度とを有する良好な焼結体3を形成できないおそれがある。
【0061】
上記インクには、粘度調整や蒸気圧調整等のために必要に応じて有機溶媒を配合できる。このような有機溶媒としては、水溶性である種々の有機溶媒が使用可能である。その具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやその他のエステル類;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類などが挙げられる。
【0062】
インクに有機溶媒を配合する場合、有機溶媒の含有割合の下限としては、100質量部の銅粒子6に対して30質量部が好ましい。また、有機溶媒の含有割合の上限としては、100質量部の銅粒子6に対して900質量部が好ましい。有機溶媒の含有割合が上記下限未満の場合、インクの粘度調整及び蒸気圧調整の効果が十分に得られないおそれがある。一方、有機溶媒の含有割合が上記上限を超える場合、例えば水による分散剤の膨潤効果が不十分となり、インク中で銅粒子6の凝集が生じるおそれがある。
【0063】
なお、液相還元法で銅粒子6を製造する場合、液相(水溶液)の反応系で析出させた銅粒子6は、ろ別、洗浄、乾燥、解砕等の工程を経て、一旦粉末状としたものを用いてインクを調製することができる。この場合は、粉末状の銅粒子6と、水等の分散媒と、必要に応じて分散剤、有機溶媒等とを所定の割合で配合し、銅粒子6を含むインクとすることができる。このとき、銅粒子6を析出させた液相(水溶液)を出発原料としてインクを調製することが好ましい。具体的には、析出した銅粒子6を含む液相(水溶液)を限外ろ過、遠心分離、水洗、電気透析等の処理に供して不純物を除去し、必要に応じて濃縮して水を除去する。又は、逆に水を加えて銅粒子6の濃度を調整した後、さらに必要に応じて有機溶媒を所定の割合で配合することによって銅粒子6を含むインクを調製する。この方法では、銅粒子6の乾燥時の凝集による粗大で不定形な粒子の発生を防止することができ、緻密で均一な焼結体3を形成し易い。
【0064】
(インクの塗布方法)
銅粒子6を分散させたインクをベースフィルム1の一方の面に塗布する方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ダイコート法、スリットコート法、ロールコート法、ディップコート法等の従来公知の塗布法を用いることができる。また、スクリーン印刷、ディスペンサ等によりベースフィルム1の一方の面の一部のみにインクを塗布するようにしてもよい。インクの塗布後、例えば室温以上の温度で乾燥することにより塗膜7が形成される。乾燥温度の上限としては、100℃が好ましく、40℃がより好ましい。乾燥温度が上記上限を超えると、塗膜7の急激な乾燥により、塗膜7にクラックが発生するおそれがある。
【0065】
〔金属層形成工程〕
本工程では、塗膜7の焼成により銅粒子6の焼結体3を含む金属層2を形成する。
【0066】
(焼成)
上記焼成により銅粒子6同士が焼結すると共に、焼結体3がベースフィルム1の一方の面に固着される(
図5B参照)。なお、インクに含まれ得る分散剤やその他の有機物は、焼成によって揮発又は分解される。また、焼結体3とベースフィルム1との界面近傍では、焼成によって銅粒子6が酸化されるため、銅粒子6に基づく水酸化銅やその水酸化銅に由来する基の生成を抑えつつ、銅粒子6に基づく酸化銅やその酸化銅に由来する基(以下、これらをまとめて「酸化銅等」ともいう)が生成する。この焼結体3とベースフィルム1との界面近傍に生成した酸化銅等は、ベースフィルム1を構成するポリイミド等の樹脂と強く結合するため、ベースフィルム1と焼結体3との間の密着力が大きくなる。
【0067】
上記焼成は、焼結体3とベースフィルム1との界面近傍の銅粒子6の酸化を促進させるため、一定量の酸素が含まれる雰囲気下で行うことが好ましい。この場合、焼成雰囲気の酸素濃度の下限としては、1体積ppmが好ましく、10体積ppmがより好ましい。また、上記酸素濃度の上限としては、10,000体積ppmが好ましく、1,000体積ppmがより好ましい。上記酸素濃度が上記下限未満の場合、焼結体3とベースフィルム1との界面近傍における酸化銅等の生成量が少なくなり、ベースフィルム1と焼結体3との間の密着力を向上させることができなくなるおそれがある。一方、上記酸素濃度が上記上限を超える場合、銅粒子6の過度の酸化により焼結体3の導電性が低下するおそれがある。
【0068】
上記焼成の温度の下限としては、150℃が好ましく、200℃がより好ましい。また、上記焼成の温度の上限としては、500℃が好ましく、400℃がより好ましい。上記焼成の温度が上記下限未満の場合、焼結体3とベースフィルム1との界面近傍における酸化銅等の生成量が少なくなり、ベースフィルム1と焼結体3との間の密着力を向上させることができなくなるおそれがある。一方、上記焼成の温度が上記上限を超えると、ベースフィルム1が変形するおそれがある。なお、焼成時間については、特に限定されないが、例えば30分以上600分以下の範囲とすればよい。
【0069】
(めっき銅による充填)
上記焼成により上述したプリント配線板用基材10(
図5B参照)が得られるが、
図5Cに示すように、焼結体3内の空隙をめっき銅4で充填すると、上述したプリント配線板用基材20が得られる。焼結体3内の空隙をめっき銅4で充填すると、金属層2の抵抗を下げることができるため、例えば高周波信号処理用のプリント配線板の製造に適用する場合、伝送損失を抑制できるプリント配線板用基材を容易かつ確実に製造できる。
【0070】
めっき銅4を形成するためのめっき方法は、特に限定されず、無電解銅めっきであっても電解銅めっきであってもよいが、電解銅めっきを採用すると、金属層2の抵抗の低減と、異種金属の含有率の低減とを容易に両立させることができる。なお、無電解銅めっきを採用する場合、金属層2の界面近傍層2aにおける異種金属の含有率を10at%以下にするために、異種金属ができるだけ少ない触媒及びめっき液によりめっき銅4を形成することが好ましい。
【0071】
電解銅めっきを採用する場合、手順は特に限定されず、例えば公知の電解銅めっき浴及びめっき条件から適宜選択すればよい。
【0072】
無電解銅めっきを採用する場合についても手順は特に限定されず、例えばクリーナ工程、水洗工程、酸処理工程、水洗工程、プレディップ工程、アクチベータ工程、水洗工程、還元工程、水洗工程等の処理と共に、公知の手段で無電解銅めっきを行えばよい。
【0073】
また、焼結体3内の空隙をめっき銅4で充填した後、さらに熱処理を行うことが好ましい。この熱処理により、焼結体3とベースフィルム1との界面近傍における酸化銅等がさらに増加するため、ベースフィルム1と焼結体3との間の密着力をより向上させることができる。
【0074】
(銅めっき層の積層)
上記めっき銅4の形成によりプリント配線板用基材20(
図5C参照)が得られるが、
図5Dに示すように、焼結体3及びめっき銅4により形成される層上に銅めっき層5を積層すると、上述したプリント配線板用基材30が得られる。この構成によれば、金属層2を厚くすることができるため、例えばプリント配線板用基材30をサブトラクティブ法に用いるプリント配線板用基材に容易に適用できる。
【0075】
銅めっき層5のめっき方法は、特に限定されず、無電解銅めっきであっても電解銅めっきであってもよく、めっきの手順についても限定されない。また、焼結体3の空隙をめっき銅4で充填した後、同じめっき処理を引き続き行うことにより銅めっき層5を形成してもよい。中でも、銅めっき層5のめっき方法として電解銅めっきを採用すると、金属層2の厚みの調整を容易かつ正確に行うことができ、また比較的短時間で銅めっき層5を形成することができる。
【0076】
[利点]
当該プリント配線板用基材は、ベースフィルムに固着された銅粒子の焼結体を含む金属層を用いるため、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基材は低コストで製造できる。また、当該プリント配線板用基材は、界面近傍層における銅以外の金属(異種金属)の含有率が10at%以下であるため、導電パターン間の異種金属の残存を抑制できる。
【0077】
当該プリント配線板は、上記プリント配線板用基材を用いて製造したものであるため、低コストで製造でき、かつ導電パターン間の異種金属の残存を抑制できる。よって、当該プリント配線板によれば、例えば回路の高密度化を低コストで実現できる。
【0078】
当該プリント配線板用基材の製造方法は、銅粒子を含むインクを用いて金属層を形成するため、スパッタリング等の物理的蒸着に必要な高価な真空設備を必要としない。そのため、当該プリント配線板用基材の製造方法によれば、プリント配線板用基材を低コストで製造できる。また、当該プリント配線板用基材の製造方法は、界面近傍層における銅以外の金属(異種金属)の含有率を10at%以下とするため、導電パターン間の異種金属の残存を抑制できるプリント配線板用基材を容易かつ確実に製造できる。
【0079】
[その他の実施形態]
上記開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0080】
例えば当該プリント配線板用基材は、
図1に示す第1実施形態のようにベースフィルム1の一方の面に金属層2が積層されたプリント配線板用基材であってもよく、ベースフィルム1の両面に金属層2が積層されたプリント配線板用基材であってもよい。また、当該プリント配線板用基材は、ベースフィルムの一方の面に焼結体を含む金属層が積層され、ベースフィルムの他方の面に焼結体を含まない金属層が積層されていてもよい。
【0081】
また、上記第4実施形態では、当該プリント配線板用基材を用いてサブトラクティブ法により形成されたプリント配線板を例に説明したが、当該プリント配線板は、導電パターンが当該プリント配線板用基材の金属層の一部を含んでいる限り、上記実施形態に限定されない。例えば上述した第1、第2又は第3実施形態のプリント配線板用基材を用いて、セミアディティブ法により導電パターンを形成してもよい。
【0082】
また、上記プリント配線板用基材の製造方法の一実施形態に関する説明では、
図5Aに示すようにベースフィルム1の一方の面に銅粒子6を含むインクを塗布したが、インクを塗布する前に、ベースフィルム1の一方の面に親水化処理を施してもよい。ベースフィルムに親水化処理を施すことにより、インクのベースフィルムに対する表面張力が小さくなるので、インクをベースフィルムに均一に塗り易くなる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
<プリント配線板用基材の作製>
(試験例1)
まず、液相還元法によって得られた平均粒子径60nmの銅粒子を溶媒の水に分散させ、銅濃度が26質量%のインクを調製した。次に、絶縁性を有するベースフィルムとして平均厚み25μmのポリイミドフィルムを用い、上記インクをポリイミドフィルムの一方の面に塗布し、大気中で乾燥して塗膜を形成した。そして、酸素濃度が100体積ppmの窒素雰囲気中で120分間、350℃で上記塗膜を焼成し、ポリイミドフィルムに固着された銅粒子の焼結体からなる金属層(平均厚み150nm)を備えたプリント配線板用基材を得た。
【0085】
(試験例2)
上記試験例1と同様の手順でポリイミドフィルムの一方の面に銅粒子の焼結体を形成した後、パラジウムを含有する触媒溶液に上記焼結体を接触させ、次いで20ppmのNiを含む無電解銅めっき液を用いて上記焼結体内の空隙及び表面をめっき処理し、上記焼結体及び無電解めっき銅からなる金属層(平均厚み400nm)を備えたプリント配線板用基材を得た。
【0086】
(試験例3)
上記試験例1と同様の手順でポリイミドフィルムの一方の面に銅粒子の焼結体を形成した後、パラジウムを含有する触媒溶液に上記焼結体を接触させ、次いで200ppmのNiを含む無電解銅めっき液を用いて上記焼結体内の空隙及び表面をめっき処理し、上記焼結体及び無電解めっき銅からなる金属層(平均厚み400nm)を備えたプリント配線板用基材を得た。
【0087】
得られた各プリント配線板用基材について、下記項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
<界面近傍層の異種金属の含有率>
試験例1〜3のプリント配線板用基材の断面について、EDX(日立ハイテクノロジーズ社の「SU8020」)を用いて、加速電圧6kVで金属原子の原子数を定量し、界面近傍層の銅以外の金属(異種金属)の含有率(at%)を測定した。
【0089】
<エッチング後のポリイミドフィルム表面の異種金属の平均残存量>
試験例1〜3のプリント配線板用基材を塩化鉄含有エッチング液(比重1.33g/cm
3、遊離塩酸濃度0.2mol/L、温度45℃)に2分間浸漬し、水洗及び乾燥した後、金属層が除去されたポリイミドフィルム表面1cm
2当たりの異種金属の平均残存量(μg/cm
2)を測定した。異種金属の平均残存量は、金属層が除去されたポリイミドフィルム表面の1cm四方の領域を任意に3箇所選択し、EDX(日立ハイテクノロジーズ社の「SU8020」)を用いて、各箇所について加速電圧6kVで異種金属の残存量を測定した値の平均値とした。
【0090】
<剥離強度>
試験例1〜3のプリント配線板用基材について、JIS−C−6471(1995年)に準拠する180°方向引き剥がし試験により、ポリイミドフィルムと金属層と間の剥離強度(N/cm)を測定した。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、界面近傍層の異種金属の含有率が10at%以下の試験例1及び2は、上記含有率が10at%を超える試験例3に比べ、エッチング後のポリイミドフィルム表面の異種金属の平均残存量を抑制できた。この結果から、本発明のプリント配線板用基材を用いて導電パターンを形成すると、導電パターン間の異種金属の残存を抑制できることが分かる。なお、剥離強度については、いずれの試験例も1N/cm以上の良好な値を示した。