特許第6400507号(P6400507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6400507
(24)【登録日】2018年9月14日
(45)【発行日】2018年10月3日
(54)【発明の名称】発熱体の冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6551 20140101AFI20180920BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20180920BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20180920BHJP
   H01M 10/651 20140101ALI20180920BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20180920BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180920BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20180920BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20180920BHJP
【FI】
   H01M10/6551
   H01M10/613
   H01M10/6563
   H01M10/651
   H01M10/652
   H01M2/10 S
   H01M10/625
   B60L11/18 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-34439(P2015-34439)
(22)【出願日】2015年2月24日
(65)【公開番号】特開2016-157579(P2016-157579A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年10月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 英樹
【審査官】 稲葉 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−327795(JP,A)
【文献】 特開2008−243865(JP,A)
【文献】 特開2011−114102(JP,A)
【文献】 特開2008−205421(JP,A)
【文献】 特開2006−100293(JP,A)
【文献】 特開平11−063879(JP,A)
【文献】 特開平11−002498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52−10/667
H01M 2/10
B60L 11/18
H01L 23/34−23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体(2)を冷却するための冷却風が流通する冷却風通路(S)を構成する通路構成部材(10)を備えた発熱体(2)の冷却構造において、
上記発熱体(2)は上記通路構成部材(10)と接触するように配置され、
上記通路構成部材(10)における上記発熱体(2)が接触する側に位置する上記冷却風通路(S)の内面には、該冷却風通路(S)の内方へ向けて突出するとともに、該内面に沿って所定方向に延びる第1凸部(20a)と第2凸部(20b)とが、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸(20c)となるように上記冷却風通路(S)の幅方向に互いに連続することによって構成された第1突出部(20)が設けられ、
上記第1突出部(20)の断面形状は略三角形であり、
上記第1突出部(20)の突出高さは、上記冷却風通路(S)における上記第1突出部(20)の突出方向の寸法の1/2以下とされ、
上記冷却風通路(S)の上記第1突出部(20)が形成された内面には、該冷却風通路(S)の内方へ向けて突出して該冷却風通路(S)の幅方向に延びる一側突出部(21)が、上記第1突出部(20)から上記冷却風通路(S)の幅方向に離れて設けられ、
上記第1突出部(20)の上記第1凸部(20a)の延びる方向と、上記第2凸部(20b)の延びる方向とのなす角度(α)が30°以上150°以下に設定されていることを特徴とする発熱体(2)の冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱体(2)の冷却構造において、
上記通路構成部材(10)における上記冷却風通路(S)の内面には、該冷却風通路(S)の内方へ向けて突出するとともに、該内面に沿って所定方向に延びる第3凸部(24a)と第4凸部(24b)とが上記冷却風通路(S)の幅方向に互いに連続することによって構成された第2突出部(24)が設けられ、
上記第2突出部(24)の上記第3凸部(24a)の延びる方向と、上記第4凸部(24b)の延びる方向とのなす角度(β)が30°以上150°以下に設定され
上記第2突出部(24)の上記第3凸部(24a)及び上記第4凸部(24b)は、冷却風の流れ方向流側へ向かって凸(24c)となるように互いに連続していることを特徴とする発熱体(2)の冷却構造。
【請求項3】
請求項に記載の発熱体(2)の冷却構造において、
複数の上記第1突出部(20)が上記冷却風通路(S)の幅方向に並ぶように設けられ、
上記第1突出部(20)から冷却風の流れ方向に間隔をあけ、複数の上記第2突出部(24)が上記冷却風通路(S)の幅方向に並ぶように設けられ、
上記第1突出部(20)の凸(20c)と、上記第2突出部(24)の凸(24c)とは、上記冷却風通路(S)の幅方向に互いにずれていることを特徴とする発熱体(2)の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電気自動車等に搭載される走行用モーターに電力を供給する車両用バッテリ等の発熱体の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車やハイブリッド自動車等には、走行用モーターと、該走行用モーターに電力を供給するバッテリとが搭載されている。走行用モーターに電力を供給するバッテリは電力供給時の発熱量が大きいので、従来の電装品用のバッテリとは異なり、冷却構造が要求される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1〜3では、バッテリを収容したケースの内部に冷却風が流れる冷却風通路を形成し、冷却ファンによって冷却風通路に冷却風を送るようにしている。冷却風通路は、バッテリの上方及び下方に形成されており、冷却ファンから送られてきた冷却風がバッテリの上方や下方を流れた後、ケースの外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−71729号公報
【特許文献2】特許第5034316号公報
【特許文献3】特許第5277362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1〜3のように冷却風通路に冷却風を流すようにした場合、通路内には流れを乱すものが存在しないので、乱流が発生しにくく、冷却風による冷却効果が低くなる恐れがある。特に、走行用モーターに電力を供給するバッテリの発熱量は大きく、特許文献1〜3のように冷却風通路に冷却風を流しただけでは冷却不足を招くことが考えられるので、冷却効率をより一層向上させたいという要求がある。
【0006】
また、モーターやインバーター装置を冷却風によって冷却する場合も同様な問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発熱体の冷却性能を全体的に高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、冷却風通路の内面に設ける突出部の形状に工夫を凝らして冷却風に乱流を発生させやすくした。
【0009】
第1の発明は、
発熱体を冷却するための冷却風が流通する冷却風通路を構成する通路構成部材を備えた発熱体の冷却構造において、
上記発熱体は上記通路構成部材と接触するように配置され、
上記通路構成部材における上記発熱体が接触する側に位置する上記冷却風通路の内面には、該冷却風通路の内方へ向けて突出するとともに、該内面に沿って所定方向に延びる第1凸部と第2凸部とが、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸となるように上記冷却風通路の幅方向に互いに連続することによって構成された第1突出部が設けられ、
上記第1突出部の断面形状は略三角形であり、
上記第1突出部の突出高さは、上記冷却風通路における上記第1突出部の突出方向の寸法の1/2以下とされ、
上記冷却風通路の上記第1突出部が形成された内面には、該冷却風通路の内方へ向けて突出して該冷却風通路の幅方向に延びる一側突出部が、上記第1突出部から上記冷却風通路の幅方向に離れて設けられ、
上記第1突出部の上記第1凸部の延びる方向と、上記第2凸部の延びる方向とのなす角度が30°以上150°以下に設定されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、冷却風通路を流れる冷却風は第1突出部に当たる。第1突出部は、内面に沿って延びる第1凸部と第2凸部とが互いに連続して形成されていて、これら第1凸部及び第2凸部のなす角度が30°以上150°以下であることから、平面的に見たときに、第1凸部及び第2凸部がV字に近い形状をなす。これにより、第1突出部における第1凸部に当たった冷却風の流れと、第2凸部に当たった冷却風の流れとが異なる流れになり、冷却風に乱流が発生しやすくなる。
【0011】
尚、第1凸部及び第2凸部のなす角度が30°よりも小さいと、第1凸部と第2凸部とが極めて接近して1つの凸部に近い形状となるので、第1凸部と第2凸部とを設けたことによる乱流発生効果が低減する。また、第1凸部及び第2凸部のなす角度が150°よりも大きいと、第1凸部と第2凸部とが直線に近い形状となるので、乱流発生効果が低減する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
上記通路構成部材における上記冷却風通路の内面には、該冷却風通路の内方へ向けて突出するとともに、該内面に沿って所定方向に延びる第3凸部と第4凸部とが上記冷却風通路の幅方向に互いに連続することによって構成された第2突出部が設けられ、
上記第2突出部の上記第3凸部の延びる方向と、上記第4凸部の延びる方向とのなす角度が30°以上150°以下に設定され、
上記第1突出部の上記第1凸部及び上記第2凸部は、冷却風の流れ方向上流側へ向かって凸となるように互いに連続し、
上記第2突出部の上記第3凸部及び上記第4凸部は、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸となるように互いに連続していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、冷却風通路の内面に、冷却風の流れ方向上流側へ向かって凸となる第1突出部と、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸となる第2突出部とが設けられているので、冷却風に乱流がより一層発生しやすくなる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、複数の上記第1突出部が上記冷却風通路の幅方向に並ぶように設けられ、
上記第1突出部から冷却風の流れ方向に間隔をあけ、複数の上記第2突出部が上記冷却風通路の幅方向に並ぶように設けられ、
上記第1突出部の凸と、上記第2突出部の凸とは、上記冷却風通路の幅方向に互いにずれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、冷却風通路の内面に設けた第1突出部を構成する第1凸部と第2凸部との交差角度が30°以上150°以下に設定されているので、冷却風に乱流が発生しやすくなり、発熱体の冷却性能を全体的に高めることができる。
【0016】
また、第1凸部及び第2凸部が冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸となっているので、冷却風の流れが第1凸部及び第2凸部の間に入り込むように流れて、第1凸部及び第2凸部に確実に当たる。これにより、乱流がより一層発生しやすくなる。
【0017】
第2の発明によれば、冷却風通路の内面に、冷却風の流れ方向上流側へ向かって凸となる第1突出部と、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸となる第2突出部とが設けられているので、冷却風に乱流がより一層発生しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用バッテリユニットの断面図である。
図2図1におけるII−II線に相当する断面図である。
図3図1におけるIII−III線に相当する断面図である。
図4】実施形態2に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明に係る発熱体の冷却構造が適用された車両用バッテリユニット1の断面図である。車両用バッテリユニット1は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車(プラグインハイブリッド自動車を含む)に搭載されるものであり、これら自動車の走行用モーターに電力を供給するように構成されている。
【0021】
車両用バッテリユニット1は、第1〜第7バッテリ2A〜2Gからなるバッテリ(発熱体)2と、バッテリケース3と、ダクト(通路構成部材)10と、送風機(冷却風導入部)Aとを備えている。第1〜第7バッテリ2A〜2Gは、例えばリチウムイオン電池等の二次電池であり、図1における左から右に順に並んでいる。第1〜第7バッテリ2A〜2Gの各々は、図示しないが、複数のバッテリセルと該バッテリセルを収容するケースとを有しており、バッテリセルは電極によって接続されている。また、第1〜第7バッテリ2A〜2Gは、直列または並列に接続されており、外部からの電力供給によって全てのバッテリ2A〜2Gに同時に充電可能となっている。また、走行用モーターに電力を供給する際には、全てのバッテリ2A〜2Gから同時に供給可能となっている。尚、バッテリの数や配置は図示したものに限られず、例えば、バッテリを上下方向に2段や3段に並べて配置してもよい。
【0022】
バッテリケース3は、第1〜第7バッテリ2A〜2Gを収容する収容空間Rを形成するためのものであり、例えば樹脂材を成形してなる。バッテリケース3の下部には外方へ延出するフランジ3aが形成されている。尚、バッテリケース3は省略することもできる。
【0023】
ダクト10は、第1〜第7バッテリ2A〜2Gを冷却するための冷却風が流通する冷却風通路Sを構成するものであり、収容空間Rの外部においてバッテリケース3の下部に設けられている。ダクト10は扁平な形状である。ダクト10の延びる方向は、第1〜第7バッテリ2A〜2Gの並ぶ方向であり、この実施形態では、冷却風が図1の左側から右側へ向かって流れるようになっている。ダクト10は、第1〜第7バッテリ2A〜2Gの並ぶ方向に延びる上壁部11と、上壁部11と略平行に延びる下壁部12と、図2に示す上壁部11の幅方向両端部から下壁部12まで延びる側壁部13、13とを有している。上壁部11の周縁部にバッテリケース3のフランジ3aが接合され、収容空間Rは、外部の埃や水等が入らないように密閉されている。尚、ダクト10は、バッテリケース3の上部に設けてもよいし、側部に設けてもよい。ダクト10は、直線状に延びる形状であってもよいし、湾曲して延びる形状であってもよい。
【0024】
送風機Aは、ダクト10の上流側に設けられており、冷却風をダクト10の冷却風通路Sに導入するためのものである。冷却風としては、例えば車室外の空気や車室内の空気を使用することができる。送風機Aは、ダクト10の下流側に設けて冷却風を冷却風通路Sに上流側から導入するように構成してもよい。バッテリ2の熱はダクト10の上壁部11に伝わり、ダクト10の冷却風通路Sを流れる冷却風が上壁部11の熱を奪うことによってバッテリ2が冷却される。
【0025】
ダクト10における上壁部11の下面(ダクト10の内面)には、冷却風通路Sの内方へ向けて突出する第1突出部20と、一側突出部21と、他側突出部22とが設けられている。第1突出部20、一側突出部21及び他側突出部22は、冷却風に乱流を発生させるためのものである。第1突出部20は、冷却風通路Sの幅方向に2つ並んで設けられているが、これに限らず、1つであってもよいし、3つ以上並べて設けてもよい。また、第1突出部20、一側突出部21及び他側突出部22の各々は、冷却風の流れ方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。第1突出部20、一側突出部21及び他側突出部22の間隔は、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。
【0026】
第1突出部20は、上壁部11の下面に沿って延びる第1凸部20aと第2凸部20bとが冷却風通路Sの幅方向に互いに連続することによって構成されている。第1凸部20a及び第2凸部20bの各々は直線状に延びているが、多少湾曲させることもできる。
【0027】
第1凸部20aは、冷却風通路Sの幅方向に延び、冷却風通路Sの幅方向一側へ行くほど冷却風の流れ方向下流に位置するように、冷却風の流れ方向に対して傾斜して延びている。また、第2凸部20bは、冷却風通路Sの幅方向に延び、冷却風通路Sの幅方向他側へ行くほど冷却風の流れ方向下流に位置するように、冷却風の流れ方向に対して傾斜して延びている。第1凸部20aにおける冷却風通路Sの幅方向一側の端部に、第2凸部20bにおける冷却風通路Sの幅方向他側の端部が連続している。第1凸部20aの延びる方向と第2凸部20bの延びる方向とのなす角度αは、30°以上150°以下に設定されている。このように角度αを設定することで、第1突出部20の第1凸部20a及び第2凸部20bは、冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸20cとなる。
【0028】
角度αが30°よりも小さいと、第1凸部20aと第2凸部20bとが極めて接近して1つの凸部に近い形状となってしまうので、第1凸部20aと第2凸部20bとを設けたことによる乱流発生効果が低減する。一方、角度αが150°よりも大きいと、第1凸部20aと第2凸部20bとが直線に近い形状となるので、乱流発生効果が低減する。
【0029】
すなわち、第1突出部20の第1凸部20a及び第2凸部20bが冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸20cとなっていることで、上流側から流れてきた冷却風は、第1凸部20a及び第2凸部20bに当たって流れの向きが変わり、このときに乱流が発生するとともに、第1凸部20a及び第2凸部20bに沿って第1突出部20の中央部へ向けて流れて両方の流れが衝突し、このことによっても乱流が発生する。よって、角度αを上記の範囲に設定することで乱流発生効果が高まる。角度αのより好ましい範囲は、60°以上120°以下である。
【0030】
また、第1突出部20の断面形状は、下に頂点が位置する略三角形である。第1突出部20の断面形状を略三角形とすることで、第1突出部20における冷却風流れ方向上流側の面は、下側へ行くほど下流側に位置するように傾斜し、第1突出部20における冷却風流れ方向下流側の面は、下側へ行くほど上流側に位置するように傾斜する。これにより、冷却風通路Sの上側を流れる冷却風が第1突出部20の上流側の面に当たって下方へ案内され、その後、下流側の面に沿って上方へ流れて上壁部11の内面に当たり、このような冷却風の流れによって冷却風通路Sの上側で乱流が発生する。冷却風の流れが上壁部11の内面に当たることで、上壁部11の内面近傍を流れる空気に乱流が発生し、これにより、上壁部11の内面近傍の空気の流れをさらに乱し、上壁部11の内面近傍において断熱層となりやすい層流が形成されるのを抑制する。このことによっても冷却効率が向上する。尚、第1突出部20の断面形状は、正三角形であってもよいし、二等辺三角形であってもよい。
【0031】
第1突出部20の最大突出高さは、冷却風通路Sの上下方向の寸法の1/2以下とするのが好ましい。これにより、第2突出部20を形成したことによる冷却風通路Sの圧力損失を抑制して冷却風の流量を十分に確保することができる。
【0032】
また、一側突出部21は、第1突出部20と同様な断面形状を有しており、第1突出部20よりも冷却風通路Sの幅方向一側に配置されている。一側突出部21は、第1突出部20を構成する第1凸部20aと同方向に延びている。一側突出部21における冷却風通路Sの幅方向一側は、ダクト10の側壁部13の内面に連続している。
【0033】
また、他側突出部22は、第1突出部20と同様な断面形状を有しており、第1突出部20よりも冷却風通路Sの幅方向他側に配置されている。他側突出部22は、第1突出部20を構成する第2凸部20bと同方向に延びている。他側突出部22における冷却風通路Sの幅方向他側は、ダクト10の側壁部13の内面に連続している。冷却風通路Sの幅方向両側の冷却風は、一側突出部21及び他側突出部22によって流れが乱される。
【0034】
次に、バッテリ2の冷却について説明する。バッテリ2の冷却時には、冷却風通路Sを流れる冷却風が第1突出部20に当たる。第1突出部20は、冷却風通路Sの内面に沿って延びる第1凸部20aと第2凸部20bとが互いに連続して形成されていて、これら第1凸部20a及び第2凸部20bのなす角度が30°以上150°以下であることから、下方から見たときに、第1凸部20a及び第2凸部20bがV字に近い形状をなしている。これにより、第1突出部20における第1凸部20aに当たった冷却風の流れと、第2凸部20bに当たった冷却風の流れとが異なる流れになり、冷却風に乱流が発生しやすくなる。したがって、バッテリ2の冷却性能を全体的に高めることができる。
【0035】
尚、上記実施形態1では、第1突出部20の第1凸部20a及び第2凸部20bが冷却風の流れ方向下流側へ向かって凸20cとなっているが、これに限らず、第1突出部20の第1凸部20a及び第2凸部20bが冷却風の流れ方向上流側へ向かって凸となっていてもよい。すなわち、第1凸部20aが、冷却風通路Sの幅方向一側へ行くほど冷却風の流れ方向上流に位置するように傾斜し、第2凸部20bが、冷却風通路Sの幅方向他側へ行くほど冷却風の流れ方向上流に位置するように傾斜する。この場合も、第1凸部20aに当たった冷却風の流れと、第2凸部20bに当たった冷却風の流れとが異なる方向に流れることになるので、冷却風に乱流が発生しやすくなる。
【0036】
また、全ての第1突出部20について角度αを同じにしてもよいし、任意の第1突出部20について角度αを変えてもよい。
【0037】
また、第1突出部20は、第1凸部20aと第2凸部20bとが複数幅方向に連続して形成されたものであってもよい。例えば、第1凸部20aと第2凸部20bのどちらか1つと、第1凸部20aと第2凸部20bとが連続する形状であってもよい。
【0038】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2に係る車両用バッテリユニット1の断面図である。実施形態2は、第2突出部24を設けている点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0039】
第2突出部24は、ダクト10における上壁部11の下面から冷却風通路Sの内方へ向けて突出しており、上壁部11の下面に沿って延びる第3凸部24aと第4凸部24bとが冷却風通路Sの幅方向に互いに連続することによって構成されている。第3凸部24aは、冷却風通路Sの幅方向に延び、冷却風通路Sの幅方向一側へ行くほど冷却風の流れ方向上流に位置するように、冷却風の流れ方向に対して傾斜して延びている。また、第4凸部24bは、冷却風通路Sの幅方向に延び、冷却風通路Sの幅方向他側へ行くほど冷却風の流れ方向上流に位置するように、冷却風の流れ方向に対して傾斜して延びている。第3凸部24aにおける冷却風通路Sの幅方向一側の端部に、第4凸部24bにおける冷却風通路Sの幅方向他側の端部が連続している。第3凸部24aの延びる方向と第4凸部24bの延びる方向とのなす角度βは、30°以上150°以下に設定されている。このように角度βを設定することで、第2突出部24の第3凸部24a及び第4凸部24bは、冷却風の流れ方向上流側へ向かって凸24cとなる。
【0040】
角度βが30°よりも小さいと、第3凸部24aと第4凸部24bとが極めて接近して1つの凸部に近い形状となってしまうので、第3凸部24aと第4凸部24bとを設けたことによる乱流発生効果が低減する。一方、角度αが150°よりも大きいと、第3凸部24aと第4凸部24bとが直線に近い形状となるので、乱流発生効果が低減する。これは第1突出部20の場合と同様である。角度βのより好ましい範囲は、60°以上120°以下である。
【0041】
第2突出部24は、冷却風の流れ方向に並ぶ第1突出部20、20の間、同方向に並ぶ一側突出部21、21の間、同方向に並ぶ他側突出部22、22の間に配置される。つまり、第1突出部20と第2突出部24とが冷却風の流れ方向に交互に配置される。また、冷却風の流れ方向に見たときに、第2突出部24は、冷却風通路Sの幅方向に並ぶ第1突出部20、20の間に位置するとともに、一側突出部21と第1突出部20との間、他側突出部22と第1突出部20との間にも位置するように配置される。これにより、第1突出部20、20の間を流れた冷却風と、一側突出部21と第1突出部20との間を流れた冷却風と、他側突出部22と第1突出部20との間を流れた冷却風とが、第2突出部24に確実に当たり、第2突出部24によって乱流を発生させることができる。
【0042】
実施形態2の場合も冷却風に乱流を発生させて、バッテリ2の冷却性能を全体的に高めることができる。
【0043】
実施形態2では、第1突出部20を冷却風流れ方向最上流に配置しているが、これに限らず、第2突出部24を冷却風流れ方向最上流に配置してもよい。
【0044】
また、第1突出部21、一側突出部21、他側突出部22及び第2突出部24の高さは、バッテリ2の高温になりやすい部位に対応する箇所で高くし、低温になりやすい部位に対応する箇所で低くしてもよい。第1突出部21、一側突出部21、他側突出部22及び第2突出部24は、バッテリ2の高温になりやすい部位に対応する箇所で密に配置してもよい。
【0045】
また、第1突出部20と第2突出部24とを冷却風通路Sの幅方向に並べて配置してもよい。また、第1突出部20と第2突出部24をダクト10の下面や側面に設けてもよい。
【0046】
また、全ての第2突出部24について角度βを同じにしてもよいし、任意の第2突出部24について角度βを変えてもよい。
【0047】
また、第2突出部24は、第3凸部24aと第4凸部24bとが幅方向に複数幅方向に連続して形成されたものであってもよい。また、第2突出部24の第3凸部24aと第4凸部24bとによって複数の凸24cが形成されることになるが、これら凸24cは互いに冷却風通路Sの幅方向にずれて配置されていてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、発熱体がバッテリである場合について説明したが、これに限らず、例えばインバーター装置やモーター等を発熱体として冷却するように構成してもよい。
【0049】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明に係る発熱体の冷却構造は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車のバッテリユニットに適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用バッテリユニット
2 バッテリ(発熱体)
10 ダクト(通路構成部材)
20 第1突出部
20a 第1凸部
20b 第2凸部
20c 凸
24 第2突出部
24a 第3凸部
24b 第4凸部
24c 凸
S 冷却風通路
図1
図2
図3
図4