(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年では電気自動車や、エンジンと電動機を併用するハイブリッド自動車に代表されるように、車両に電動機を搭載し、そのトルクによって車両を駆動する形態が一般化してきている。特に近年では小型高出力であることから、電動機には永久磁石を用いた交流電動機、いわゆる同期電動機を適用することが通常となっている。
【0003】
磁石を内包する同期電動機は、電動機のトルクを発生するための磁束を主に永久磁石の磁力によって得ている。このマグネットの磁束密度が電動機の発生トルクに直接的に寄与する。しかしながら、永久磁石は本質的に温度により磁束密度が変化する特性を有しており、永久磁石の温度が低下するのと略比例して磁束密度が上昇する。このため、電動機を常温(おおよそ20℃前後)の条件で駆動制御した場合、電動機の温度すなわち永久磁石の温度が低下するにしたがって、電動機が発生するトルクは常温の時よりも増加する。
【0004】
これは言い換えれば、電動機の温度が低い場合には運転者が意図する駆動力よりも電動機が高いトルクを発生させてしまう虞がある。また、エンジンと電動機を併用するハイブリッド自動車においては、エンジンと電動機の協調制御を行う際に、所望よりも電動機が高いトルクを発生してしまうことにより、ハイブリッド自動車に必要な協調制御の円滑さを損なう虞がある。
【0005】
電動機の温度による特性変化の影響を回避するために、例えば、モータジェネレータの温度を検出する手段を設け、モータジェネレータの温度特性に応じてモータジェネレータの出力目標値を補正する技術が考えられている(特許文献1参照)。この技術によれば、電動機の温度が上昇するに従い低下する電動機のトルクを補正し、不足するトルクを補正して電動機の駆動力が運転者にとって違和感を生じないようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明による電動機制御装置の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態による全体システム構成を示す図である。なお、本実施形態では電動機制御装置を電気自動車に適用した例で説明するがハイブリッド自動車にも同様に適用することができる。
【0012】
図1に示すように、電源3の電力は電力変換部1に供給される。電力変換部1は電源3の電力を直流から交流に変換して電動機2に供給する。電力変換部1はパワー半導体素子を内包しており、制御部5からの駆動信号20によりパワー半導体素子が駆動されて直流を交流に変換する。電源3と制御部5は通信ネットワーク19により相互に接続される。通信ネットワーク19は上位制御部4とも接続されている。
【0013】
上位制御部4には、運転者によるアクセルやブレーキの操作が電気信号に変換されたアクセル信号11、ブレーキ信号12が入力される。これらの信号に応じて上位制御部4は電動機2に発生させるべきトルク指令等を演算して通信ネットワーク19を介して制御部5に伝達指令する。同時に上位制御部4は電源3の状態を通信ネットワーク19に流れている情報を元に監視し、状況や条件に応じて制御部5に伝達するトルク指令等の補正を行う。
【0014】
電動機2には、電動機2の回転角度及び速度を検出するための回転角度検出器6が備えられている。回転角度検出器6による電動機2の回転角度及び速度の検出結果は回転角度検出信号14として制御部5に伝達される。電動機2には、電動機2の温度を検出するための電動機温度検出器7も備えられている。電動機温度検出器7は、電動機2の温度を検出してその検出結果を電動機温度検出信号15として制御部5に伝達する。
【0015】
図1の電動機制御装置では、電力変換部1及び電動機2を冷却するために、液体の冷媒16による冷却方式を採用している。冷媒循環ポンプ9から吐出された管内の冷媒16はまず電力変換部1に入り電力変換部1を冷却する。電力変換部1から出た冷媒16は電動機2に入り、電動機2を冷却する。電動機2を出た冷媒16は放熱器10に入り、ここで冷媒16を所望の温度に冷却する。冷却された冷媒16は再び冷媒循環ポンプ9に入り、電力変換部1及び電動機2を冷却すべく循環する。冷媒16の温度は、冷媒循環ポンプ9の出口に備えられた冷媒温度検出器8により検出され、冷媒温度検出信号13として制御部5に入力される。また、制御部5には電気自動車の外部環境の温度を測定する外気温度検出器17からの外気温度検出信号18が入力される。
【0016】
制御部5は、外気温度検出信号18、電動機温度検出信号15、冷媒温度検出信号13の各信号を元に、電動機2の外部環境、電動機2の温度等を判別する。その結果、電動機の温度が所定のしきい値を下回ると判断した場合には、電動機2の温度を昇温すべく昇温モード制御を実施し、電力変換部1に対する駆動信号20を出力する。昇温モード制御については後述する。これにより電力変換部1から電動機2に供給される電力が電動機2を積極的に昇温させるように作用し、電動機2に内包されている永久磁石の温度を昇温し、磁束密度を低減させて電動機2の出力トルクが所望レベルになるように制御を行う。
【0017】
図2は、電動機2の温度に対する出力トルクτmの特性の関係を示した図である。
図2の横軸に電動機2の温度Tm、縦軸に電動機2の出力トルクτmをとると、電動機2に入力する電圧と電流を一定とした場合には、出力トルクτmは温度Tmの上昇に伴って減少し、温度Tmの低下に伴って増加する特性となる。電動機2の出力トルクτmは電動機2に内包されている永久磁石の磁束φに略比例する。
【0018】
温度Tmに対する出力トルクτmの変化の勾配は永久磁石の特性に応じて定まる。例えば、永久磁石として代表的なネオジム磁石等を用いた場合には、図示のように0.1%/℃程度の勾配となる。
図2に示すように、電動機2は温度が低下するに従い、同じ電圧と電流の入力であっても出力トルクが増加する特性を有している。そのため、電動機2の温度が低い場合に電動機2を駆動すると、所望のトルクよりも多いトルクが出力される場合があるということが分かる。
【0019】
図3は、電動機2の温度に対する出力トルクτmの特性と、システム制限トルクの関係を示した図である。
ハイブリッド自動車等では、一般的にエンジンと電動機2を協調して制御することが必要とされる。エンジンと電動機2との協調制御は上位制御部4によって行われる。上位制御部4には、図示省略しているが、エンジン及びエンジン制御部が接続されている。上位制御部4は、エンジンと電動機2の出力トルクτmを協調制御する役割を果たしている。例えばエンジンと電動機2の間にクラッチを配置した構成のハイブリッド自動車で、クラッチを切った状態で電動機2のみで走行している状態から、走行しながらクラッチを接続して電動機2の出力トルクτmでエンジンを始動し、エンジンと電動機2を併用した走行に遷移する場合を考える。この場合、クラッチ接続、エンジン始動、およびエンジンと電動機2の併用走行の間に駆動トルクに不連続や段差が生じないように電動機2の出力トルクτmを細かく制御する必要がある。また、クラッチの容量等の観点から、電動機2が必要以上の出力トルクτmを出力しないような配慮が必要である。
【0020】
上位制御部4は、制御部5に対してシステム制限トルクの指令を出力する。システム制限トルクとは、上位制御部4がエンジンと電動機2の出力トルクτmを協調制御するために電動機2の出力トルクτmを制限するための指令である。換言すれば、システム制限トルクとは、上位制御部4が、走行条件に応じてエンジンと電動機2のトルク配分を上述の配慮を勘案して導き出した指令である。
【0021】
図3にシステム制限トルクを示す。このシステム制限トルクは、横軸に平行であるが、電動機2の温度等の条件により縦軸方向へ上下する。一般に、システム制限トルクに対する電動機2の出力トルクτmは、常温以上の温度範囲であれば所定の電圧と電流を電動機2に供給した場合にシステム制限トルクを下回るように設計される。しかし、この電動機2の温度が低下している場合には、先に述べたような常温以上の温度範囲での動作と同じ電圧と電流を供給しても、電動機2の出力トルクτmはシステム制限トルクを上回ってしまう場合がある。このシステム制限トルクに対する電動機2の出力トルクτmの超過分は、駆動系におけるクラッチへの負担増や、ハイブリッド制御動作時の駆動力変動を生じさせ、運転者に違和感を生じさせる場合がある。これを避けるため、電動機2の温度が所定の値より低い場合には電動機2の温度を積極的に昇温させて、電動機2の出力トルクτmがシステム制限トルク以下に収まるようにするのが望ましい。具体的には、制御部5は、電動機2の出力トルクτmが上位制御部4から指令されたシステム制限トルクに合致するまで、昇温モード制御を行って電動機2の温度を上げる。これにより、エンジンと電動機2を協調制御する際に、上位制御部4が制限するシステム制限トルクまで電動機2の出力トルクτmを低減する。その結果、円滑な協調制御を実現でき、車両の安全性、走行性能に寄与できる。
【0022】
なお、
図2に示すように温度Tmに対する電動機2の出力トルクτmの勾配は予め決まっているので、電動機温度検出器7により温度を検出することにより、トルク指令に対する電動機2の出力トルクτmを求めることができる。すなわち、制御部5は、温度Tmに対する電動機2の出力トルクτmの勾配を関数として記憶し、この関数を用いて、電動機温度検出器7に検出された温度に基づいてトルク指令に対する出力トルクτmを求める。
【0023】
図4は、検出した温度に対する昇温動作の実施判定条件を示す図である。制御部5には外気温度検出信号18、冷媒温度検出信号13、電動機温度検出信号15がそれぞれ入力されている。制御部5は、このそれぞれの温度を元に、電動機2を昇温させるための動作が必要か否かを決定して通常の電動機2の制御と昇温モードでの電動機2の制御を切り替えるように構成している。
【0024】
条件1は外気温度Ta、冷媒温度Tw、電動機温度Tmすべてが所定のしきい値La、Lw、Lmよりそれぞれ高い場合である。この場合は電動機2の昇温は必要ないので、制御部5は通常の制御で電動機2を駆動する。
【0025】
条件2はすべての温度が所定のしきい値よりそれぞれ低い場合である。この条件では電動機2を普通に駆動しても電動機2の温度が上昇しにくい。そのため、この場合は動作モードを昇温モードにして、電動機2の温度を速やかに上昇させるように制御を行う。
【0026】
条件3及び条件4は、電動機温度Tmはしきい値Lmより低いが、冷媒温度Twはしきい値Lwより高い場合である。この場合には電動機2の昇温を行わなくても冷媒16により電動機2の温度はすみやかに上昇するため、動作モードは通常モードのままで制御することで電動機2の不必要な昇温を回避することができる。
【0027】
条件5は外気温度Taはしきい値Laより高いが、冷媒温度Tw及び電動機温度Tmはしきい値Lw、Lmよりそれぞれ低い場合である。この場合は外気温度Taが高いとしてもそれが冷媒温度Twや電動機温度Tmには直ぐには反映されないと考えられるため、この場合には電動機2の温度を速やかに上昇させるべく昇温モード制御を行う。
【0028】
条件6、条件7、条件8はいずれも電動機温度Tmが所定のしきい値Lmより既に高い条件であり、この場合は電動機2及び内包する永久磁石の温度は所定の温度以上であるため、通常モード制御で電動機2の制御を行う。
【0029】
このように各温度の条件により判断することで、電動機2の不必要な昇温動作を行うことなく、円滑な動作を行う電気自動車の制御装置を提供することが出来る。なお、外気温度Ta、冷媒温度Tw、電動機温度Tmを全て用いずとも、いずれかの信号を選択的に検出判断することで、同様の昇温モード動作判定を行うこともできる。
【0030】
図5は、制御部5で実行されるモード制御の動作を示すフローチャートである。
制御部5は、まず、処理S11で、外気温度検出器17より外気温度Taを取得する。次に処理S12で、冷媒温度検出器8より冷媒温度Twを取得する。次に処理S13で、電動機温度検出器7より電動機温度Tmを取得する。処理S14で、制御部5は、外気温度Taが所定のしきい値La以下であるかを判断し、以下であれば処理S15に進む。しきい値Laを超えていれば処理S19に進む。処理S15では、電動機温度Tmがしきい値Lmを超えているかどうかを判断し、越えている場合は処理S16に進んで通常モード制御を実行する。これは電動機温度Tmが十分高く、電動機2の昇温が必要ないと判断した場合の処理である。
【0031】
処理S15で電動機温度Tmがしきい値Lmより低い場合は処理S17に進み、冷媒温度Twがしきい値Lw以下であるかどうかを判断する。ここで冷媒温度Twが低い場合は外気温度Ta、冷媒温度Tw、電動機温度Tmが全て所定のしきい値より低い状態であるので電動機2の昇温が必要と判断し、処理S18で昇温モード制御を実行する。なお、電動機温度Tmが低く、かつ外気温度Ta又は冷媒温度Twのいずれか少なくとも一方の検出温度が所定のしきい値より低い条件で処理S18の昇温モード制御を実行してもよい。冷媒温度Twが低くない場合は処理S21に進み通常モード制御を実行する。処理S14で外気温度Taが所定のしきい値Laより高い場合には処理S19に分岐し、冷媒温度Twがしきい値Lwを超えるか否かを判断する。冷媒温度Twが高い場合には処理S21に進み、通常モード制御を実行する。処理S19で冷媒温度Twが低いと判断される場合は処理S20に分岐する。
【0032】
処理S20では電動機温度Tmが所定のしきい値Lm以下かどうかを判断し、低い場合には処理S22に進み、昇温モード制御を実行する。この処理S22は、外気温度Taは高いものの、冷媒温度Tw及び電動機温度Tmが両方低い状態であり、すぐに電動機2の温度が上昇しない条件にあるとみなせるため、昇温モード制御を行って電動機2の温度を上げる動作を行うものである。処理S20で電動機温度Tmが高い場合には処理S23に進み通常モード制御を行う。
【0033】
処理S16、S18、S21、S22、S23のいずれかの制御を行った後、処理S24を実行する。処理S24では、制御部5は、電動機2の出力トルクτmがシステム制限トルクを下回るか判断し、下回っていなければ、処理S25に進み、昇温モード制御を実行する。すなわち、処理S24、S25で、電動機2の出力トルクτmが、システム制限トルクを下回るまで昇温モード制御で電動機2を駆動する。その後、
図5に示したフローチャートの処理を終了する。
図5に示したフローチャートの各処理は所定周期ごとに実行され、処理S17または処理S20の条件が成立すれば昇温モード制御から通常モード制御へ移行する。
【0034】
このように、外気温度Ta、冷媒温度Tw、電動機温度Tmのそれぞれの状態に応じて必要なだけ電動機2の昇温を行えるようになり、ハイブリッド自動車や電気自動車の円滑な走行を実現することに寄与する。
【0035】
以下、
図6及び
図7を参照して、上述した昇温モード制御について具体的に説明する。
図6はスイッチング制御による昇温モード制御を示す図である。
図7はベクトル制御による昇温モード制御を示す図である。
【0036】
図6を参照して、スイッチング制御による昇温モード制御について説明する。制御部5は、電力変換部1の制御にいわゆるPWM制御を用いている。制御部5は、キャリア周波数と呼ばれる三角波またはのこぎり波と交流電圧指令との比較によりPWMパルスを生成し、駆動信号20として電力変換部1に指令伝達する。電力変換部1は、駆動信号20に応じて内包するパワー半導体素子をスイッチングすることで交流電流を電動機2に供給する。
【0037】
パワー半導体素子のスイッチング速度はこのキャリア周波数を高くするほど早くなり、交流電流一周期あたりのスイッチング回数が増加する。その結果、交流電流の波形はより滑らかな正弦波に近似するようになる。逆にキャリア周波数を低くすると、交流電流一周期あたりのスイッチング回数が減少して交流電流の波形は不連続な波形となる。
【0038】
図6(a)に示す通常モード制御時は、このキャリア周波数を十分高い周波数、例えば10kHz以上に設定して制御を行う。これにより交流電流波形は滑らかなものとなり、交流電流に含まれる高調波成分が減少する。これによって電動機2を通常の動作で制御できる。
【0039】
一方、
図6(b)に示す昇温モード制御では、このキャリア周波数を低い周波数、例えば2kHz以下に設定して動作を行う。これにより交流電流の波形は不連続となり、その結果交流電流に含まれる高調波成分が増加する。この高調波成分は電動機2において鉄損や永久磁石表面の渦電流を増加させるように作用するので、この結果電動機2は通常制御よりも発熱が増加する。この効果を利用することで、昇温モード制御ではより積極的に電動機2を昇温させることができる。このようにして電動機2の永久磁石の温度を所定の温度に昇温することで、電動機2の発生する出力トルクτmを所望のレベルにすることができる。
【0040】
図7を参照して、ベクトル制御による昇温モード制御について説明する。近年の交流電動機制御では一般的にベクトル制御が適用される。ベクトル制御では、3相交流電流を直交座標系のd軸とq軸に座標変換し、磁束を制御するd軸の成分とトルクを制御するq軸の成分それぞれを分離独立制御する。そして、制御結果を再度3相交流に座標変換して3相交流電圧指令を生成する。
【0041】
このベクトル制御による電動機2の出力トルクτmは以下の式により算出できる。
τm =p・φ・iq+p(Ld-Lq)id・iq ・・・・ 式(1)
但し、p:極対数 φ:磁束 iq:q軸電流 id:d軸電流
Ld:d軸インダクタンス Lq:q軸インダクタンス
【0042】
式(1)に示すように、同じ電動機2の出力トルクτmを出力する場合でも、d軸電流idとq軸電流iqの配分は、ある程度調整代があることが分かる。また、式(1)により磁束φの変化に対し電動機の出力トルクτmは略比例の関係であることが分かる。
制御部5は、このベクトル制御のd軸電流idとq軸電流iqの配分を変化させることにより、電動機2の昇温を行うことができる。
【0043】
通常モード制御時は、
図7(a)に示すように、出来るだけ電動機2が高効率で駆動できるようなd軸電流idとq軸電流iqの配分になるように制御を行う。この配分は電動機2の特性及び電力変換部1からの出力電圧と電動機2の誘起電圧との関係に基づいて、電動機2の回転数及び出力トルクτmに応じて決定される。一般的には位相角βが45°、一次電流I1が最少となるような配分比が理想である。
【0044】
一方、
図7 (b)に示す昇温モード制御時は、通常モード制御に対してd軸電流を大きくすると共にq軸電流を小さくするように設定し、かつ式(1)で示した式に基づいて電動機2の出力トルクτmを通常モード制御と変化しないように制御を行う。この様にすることでd軸電流とq軸電流のベクトル合成である一次電流I1を、出力トルクτmを同等に保ちながら電動機2に大きく通電することが可能となる。これにより電動機2の温度を積極的に昇温することで、電動機2の発生する出力トルクτmを所望のレベルにすることができる。
【0045】
ここで、
図6及び
図7に示した昇温モード制御の動作は、適用する電気自動車の駆動装置の特性や仕様に応じて併用しても良いし、いずれか一方を用いても差し支えない。
【0046】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)本発明による電動機制御装置は、電源3から供給された電力を変換する電力変換部1と、電力変換部1を制御して電動機2に通電する電流を制御する制御部5とを備える。制御部5は、電動機2の温度が所定の第1のしきい値を下回る場合には、電動機2の温度を上昇させて電動機2が発生するトルクを低減させるように、電動機2に通電する電流を制御する。これにより、電動機2を効率良く駆動することができる。例えば、電動機2の温度が第1のしきい値より低い場合に、車両を駆動しながら電動機2の温度をすみやかに昇温させることができ、運転者の意図しないトルク発生を抑制して違和感のない車両を実現できる。
【0047】
(2)制御部5は、電動機2の温度を上昇させるための昇温モード制御と、昇温モード制御以外の通常モード制御を有し、制御部5は、昇温モード制御では、電力変換部1のパワー半導体素子をスイッチングするキャリア周波数を通常モード制御よりも低い周波数に設定して制御する。これにより、電動機2の温度を上昇させて電動機2が発生するトルクを低減させるように、電動機2に通電する電流を制御することができる。
【0048】
(3)制御部5は、電動機2の温度を上昇させるための昇温モード制御と、昇温モード制御以外の通常モード制御を有し、制御部5は、昇温モード制御では、電動機2をベクトル制御するq軸電流指令を通常モード制御よりも小さく設定し、d軸電流指令を通常モード制御よりも大きく設定し、且つ、電動機2が発生するトルクを通常モード制御と略等しくなるように制御する。これにより、電動機2の温度を上昇させて電動機2が発生するトルクを低減させるように、電動機2に通電する電流を制御することができる。
【0049】
(4)電力変換部1と電動機2に冷媒を循環して放熱を行う放熱器10を更に備え、制御部5は、外気の温度、冷媒の温度、電動機2の温度を元に、電動機2の温度が第1のしきい値よりも低く、かつ外気の温度が所定の第2のしきい値よりも低いか、冷媒の温度が所定の第3のしきい値より低い場合に、電動機2の温度を上昇させて、電動機2が発生するトルクを低減させるように、電動機2に通電する電流を制御する。これにより、外気の温度、冷媒の温度、電動機2の温度を元に、電動機2が発生するトルクを制御することができる。
【0050】
(5)制御部5は、電動機2の出力トルクが、エンジンと電動機2の出力トルクを協調制御するための電動機2のシステム制限トルクを下回るまで電動機2が発生するトルクを低減させるように、電動機2に通電する電流を制御する。これにより、電動機2の出力トルクがシステム制限トルクを下回るように制御することができる。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。